説明

電動トラクタ

【課題】作業状態等を的確に把握してエネルギ回収効果の高い電動トラクタを具現しようとする。
【解決手段】機体1に耕耘作業機41を昇降自在に装着し、バッテリーに接続され後輪出力軸12に駆動出力する後輪用モータ10と前輪出力軸25に駆動出力する前輪用モータ11を夫々設け、前輪用モータ11を前輪出力軸25側からの発電出力を受けて発電状態に切換わる構成とする。前輪用モータ11の回路に充電器を接続し、前輪出力軸25側からの発電出力を受けて発電し前記バッテリーを充電する。発電作用により前輪2にブレーキ作用を付与し、耕耘作業機41のロータリ爪の回転による所謂ダッシングを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動力源としてバッテリと電動モータとを備えた電動トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】

走行用車輪を駆動する走行用電動モータと、作業機駆動用PTO軸を駆動するPTO用電動モータを備えた構成が公知である(特許文献1)。特許文献1には、機体を走行させて作業を行う場合には走行用電動モータとPTO用電動モータを駆動し、PTO用電動モータでPTO軸を回転させ、走行用電動モータで後輪及び前輪を駆動して機体を走行させる。ところで、引用文献1は、走行系電動モータから車輪へ至る動力伝動系にPTO系動力を合流させる構成であるため、走行負荷が増大して機体の前進速度が落ちてきた場合にはPTO電動モータの動力の一部を走行系に合流させ、走行トルクの不足分を補わせることができ、作業内容や圃場の土質条件に応じた効率的な動力伝達が可能とさせる。
【特許文献1】特開2002−356116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】

ところが、機体の後部に耕耘作業機を装着して耕耘作業を行う場合、耕耘作業機を駆動する駆動力で耕耘軸を回転させると耕耘爪が土壌を耕耘する際に生じる回転力が機体を前進側に押す力を生じて、走行車輪はこの押す力に抗して寧ろブレーキ状態となる。したがって、引用文献1の構成に基づく走行トルクの不足を補う構成とすると却って非効率となり易い。
【0004】
この発明は上記に鑑み、作業状態等を的確に把握してエネルギ回収効果の高い電動トラクタを具現しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は前記課題に鑑み、次のような技術的手段を講じた。
即ち、請求項1の発明では、前後に走行用の車輪2,5を備えた機体1に耕耘作業機41を昇降自在に装着し、該機体1にはバッテリー45,65を備え、該バッテリー45に接続され後輪出力軸12に駆動出力する後輪用モータ10と前輪出力軸25に駆動出力する前輪用モータ11を夫々設け、前輪用モータ11を前輪出力軸25側からの発電出力を受けて発電状態に切換わる構成とした電動トラクタとする。
請求項2に記載の発明は、前輪用モータ11の回路に充電器49を接続することにより、前輪出力軸25側からの発電出力を受けて発電し前記バッテリー45,65を充電する構成とした請求項1に記載の電動トラクタとする。
このように構成し、後輪用モータ10を起動し適宜に回転駆動される耕耘作業機41を降下して作業姿勢に接地する。このとき前輪用モータ11を非駆動状態としておくことにより、前輪2は接地によって回転し、非駆動状態におかれた前輪用モータ11は発電機に切り替わる。この発電作用により前輪2にブレーキ作用を付与し、耕耘作業機41のロータリ爪の回転による所謂ダッシングを防止する。そして、前輪用モータ11の発電作用により充電器49を介してバッテリー45,65を充電する。
請求項3に記載の発明は、発電機能を備えた前記前輪用モータ11は、耕耘作業機41を非作業状態とする昇降機構38に対する上昇指令信号に基づき電力供給による前輪出力軸25を起動するモータ状態とし、逆に耕耘作業機41を作業状態とする下降指令信号に基づき前輪出力軸25側からの発電出力による発電状態に切り換える切換手段48を構成した請求項1又は請求項2に記載の電動トラクタとする。
このように構成することによって、自動的にモータ状態と発電状態に切り換わる。ダッシングを惹き起こし易い作業状態では発電状態として前輪2をブレーキ状態とする。
請求項4に記載の発明は、発電機能を備えた前記前輪用モータ11のモータ電流を検出する電流検出手段61を設け、この電流検出結果に基づき前輪用モータ11をモータ状態から発電状態に切り換える構成とした請求項1又は請求項2に記載の電動トラクタとする。
電流検出手段61により、ダッシング現象によって前輪の負荷電流が所定以下に低下することを判定すると、前輪用モータ11はモータ状態から発電状態に自動的に切り換わる。
請求項5に記載の発明は、後輪用モータ10によって後部装着の作業機用伝動軸17を駆動する構成とした請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の電動トラクタとする。このように構成すると、後輪駆動とともに作業機を駆動することとなり、モータを兼用できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、前記の如く構成したので、以下の効果を奏する。
即ち、請求項1及び請求項2に記載の発明によると、耕耘作業機41を開始すると、前輪用モータ11を非駆動状態としておくことにより、前輪2は接地によって回転し、非駆動状態におかれた前輪用モータ11は発電状態となり、前輪2にブレーキ作用を付与し、耕耘作業機41のロータリ爪の回転による所謂ダッシングを防止できる。また、前輪用モータ11の発電作用により充電器49を介してバッテリー45を充電できる。
請求項3及び請求項4に記載の発明は、請求項1,2に記載の効果に加え、自動的にモータ状態と発電状態に切り換わるのでオペレータの操作負担を軽減できる。
【0007】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の効果に加え、後輪駆動とともに作業機を駆動することとなり、モータを兼用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】トラクタの全体平面図
【図3】伝動関係概要図
【図4】制御ブロック図
【図5】制御ブロック図
【図6】バッテリー装着状態を示す側面図(A)、その展開斜視図(B)、ヒッチ部材斜視図(C)
【図7】バッテリー装着状態を示す側面図
【図8】フローチャート
【図9】フローチャート
【図10】フローチャート
【図11】フローチャート
【図12】フローチャート
【図13】フローチャート
【図14】フローチャート
【図15】フローチャート
【図16】フローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
本実施例の電動トラクタの側面図を図1に、その平面図を図2にそれぞれ示す。
機体1の前部下側に左右一対の前輪2を有したフロントアクスル3をセンタピボット4周りに揺動自在にして支架し、後部下側に左右一対の後輪5を有したリヤアクスルケース6を機体1構成一部の伝動ケース7の左右に夫々支架する。
伝動ケース7内とボンネット8内には夫々後輪用モータ10、前輪用モータ11を備えている。
後輪用モータ10の出力軸12のピニオンギヤ13は後輪デフ機構14のリングギヤを連動し、該出力軸12の途中から中間ギヤ群15を介して伝動を分岐しPTO伝動軸17を駆動する構成である。さらに、該中間ギヤ15を介して油圧ポンプ18を駆動する構成としている。
前記後輪デフ機構14から左右に後車軸19を延出し、差動出力はブレーキ機構20,減速ギヤ機構21を経て後車輪軸22を連動する構成としている。
また、前記前輪用モータ11の出力軸25のピニオンギヤ26は、前輪デフ機構27のリングギヤ28を駆動する構成である。さらに、フロントアクスル3内に支架された左右の前車軸29を差動回転駆動する構成としている。前車軸28と前輪軸30との間の最終減速部には前輪2を操向可能に縦伝動軸31を備えている。
機体1を構成する伝動ケース7の後部には一対のロアリンク35と単一のトップリンク36とからなる3点リンク機構37を設け、昇降機構としての油圧式昇降シリンダ機構38によって昇降連動可能に構成している。すなわち、油圧式昇降シリンダ機構38のリフトアーム39とロアリンク35とをリフトロッド40で連結しており、昇降シリンダへの圧油の給排により、リフトアーム39を回動し、3点リンク機構37はその後部側を昇降連動する。なお、昇降シリンダへの圧油は、操作席31近傍の昇降レバー32の操作を往復操作することにより、前記油圧ポンプ18にて所定の作動油を図外バルブの切換えに基づいて供給又は排出できる構成としている。
3点リンク機構37の後部には耕耘作業機41を装着している。該作業機41はロータリ耕耘爪42を配設した耕耘軸43や各種カバー類を備えて、耕耘爪42は回転によって土壌中に打ち込まれ耕耘する公知の構成である。なお、耕耘軸43は図例の矢印D方向に回転し、耕耘爪42は耕耘作業機41機体の前側から打ち込まれて後方より耕耘土壌を跳ね上げるように作用する。
なお、前記PTO伝動軸17の後端は伝動ケース7の後部に延出してPTO取出軸部17aを形成し、自在継手軸を介して耕耘作業機41を駆動できる構成である。
図4又は図5のブロック図において、前記後輪用モータ10及び前輪用モータ11は、共にバッテリー45,65に電気的に接続され電力供給を受けて後輪用インバータ46及び前輪用インバータ47で設定された回転数Nf,Nrで回転し、後輪5及び前輪2を駆動できる構成としている。なお、後輪用インバータ46、前輪用インバータ47への変更入力は、アクセルペダル51の検出踏込量出力、及び前後進レバー52の機体前後進切換出力、起動・停止スイッチ53操作出力等に基づく。
ところで、前記前輪用モータ11は、出力軸25側からの駆動によって発電出力する発電機としての機能を併せ有する発電機能型電動機とされ、前輪2の回転を前車軸29を介して該前輪用モータ11に伝え、発電原理に基づき発電できる構成としている。詳細には前輪用モータ11とバッテリー45との間に切換スイッチ手段48(切換手段)を設け、一方は前輪用インバータ47に選択接続され、他方は充電器49に選択接続される構成である。切換スイッチ手段48のこれらへの切換は図外手動切換レバーによるほか、後記のように自動制御を行わせてもよい。
なお、回路途中に介在するバッテリーコントローラ50はバッテリー45,65からの電力供給を制御しあるいはバッテリー45,65への充電出力を制御するものである。
次いで、バッテリー45の機体への搭載構成について説明する。従来の農業用トラクタと比較すると、エンジンが不要であり、伝動ケース7内では各種変速機構が不要となるため当該箇所を利用してバッテリー45を装着することもある。ところが、重量が大であるため次のように構成してもよい。すなわち、機体1の前部又は後部(図例では前部)に平行リンク機構55を装着し、この平行リンク機構55にヒッチ部材56を構成しバッテリー45を搭載する。具体的には機体1の前部に平行リンク機構55を上下回動自在に装着し電動伸縮シリンダ57の伸縮作動によって前側のヒッチ部材56を平行に上下できる構成である。ヒッチ部材56にはバッテリー45の一側に形成する山形凹部45cを係合できる山形凸部56vを形成し、両者を係合すると共にフック形態のロック手段58をもって前後のずれ動きを規制してバッテリー45を機体1に装着する構成である。
このように構成すると、重量の大きいバッテリー45を地面に置き、平行リンク機構55を降下しヒッチ部材56の山形凸部56vをバッテリー45の山形凹部45cに下方側から進入して係合させ、さらに平行リンク機構55及びヒッチ部材56を上昇させてバッテリー45を所定の高さに維持する。この場合、平行リンク機構55にて平行上下させるものであるから水平姿勢を維持でき、バッテリー45が鉛蓄電池のように電解液を封入する形態にあっても当該電解液を偏らせることなく機体1に装着できる。なお、平行リンク機構55の機体1側への装着にあたり、平行リンク機構55を機体前後方向周りに回動調整できる構成とすると機体の左右傾いた状態で作業を行う場合であっても機体ローリング角度を補正して常時水平を維持できるため一層効果的である。
また、図6に示すように、第2のバッテリー45X、第3のバッテリー45Y…は、前後面に前記ヒッチ部材56の山形凸部56vや、バッテリー45の山形凹部45cに相当する山形凹部45cとこれに係合する山形凸部45vを構成してなり、バッテリー45本数を連続して装着できる構成としている。なお、これら山形凹部と山形凸部との間に、電極端子を備えており、順次接続されるバッテリー45X,45Y…は、第1のバッテリー45に対して所謂並列接続の構成となっている。
図7の構成は、積層状態に装着するバッテリー45,45X,45Yにおいて、発電機58を装着できる構成としている。該発電機58は箱体に構成されたフレーム内に小型エンジンを備え発電回路を組み込む構成とし、出力端子は前記積層状態に接続されるバッテリー45X,45Y…と同様に山形凹部58cを形成している。このためバッテリー45に形成される山形凸部45vと係合し合う関係に設けられ、機体1への装着することができる。このため作業中、発電機58を駆動することにより簡易に充電することができる。また、バッテリー45の一対で機体1から外し、適宜の場所で充電作業を行うことができる。
前記のように構成した電動トラクタで耕耘作業を行う。起動・停止スイッチ53を「起動」側に操作し、機体1各部を回転しながら圃場内で昇降レバー32を降下側に操作すると、非作業姿勢にある耕耘作業機41を圃場面に接地させる。この接地によってロータリ耕耘爪42の打ち込み作用が継続し、耕耘作業機41はダッシングしようとし、この作用力によって機体1は所定回転数で作業しようとしても後方から突っ掛けるように耕耘作業機41は所謂ダッシングしようとし、オペレータは昇降レバー32の微調整などで対応するが、この耕耘作業開始にあたり、切換スイッチ手段48を充電器49に選択接続することにより前輪用モータ11は前輪2側からの駆動力で発電状態となり発電出力はバッテリー45の充電に当てられる。この場合、前輪2には駆動力は伝達されないばかりでなく、前輪2への伝動系路を逆に辿って前輪用モータ11を回転駆動するものであるから、前輪2にブレーキ作用が働いて前記ダッシングを防止し、所期の耕耘作業を実施できる(図8)。
また、圃場の端部に達し旋回動作に入るときには前記切換スイッチ手段48を前輪用インバータ47に切換える。これに伴い、前輪用モータ11にバッテリー45側からの電力供給を受け前輪2は駆動される。したがって、前輪を駆動することにより小回り旋回に寄与できる。旋回後耕耘作業再開に当たっては、再度切換スイッチ手段48を充電器49側に切り換える(図8)。
上記のように構成すると、ダッシングを防止でき、然も不要のエネルギーを回収できる効果がある。
前記の実施例では、切換スイッチ手段48の切換えを手動操作で行う形態としたが、以下のように自動的に行う構成でもよい。すなわち、昇降レバー32の上昇操作又は下降操作に基づくものである。昇降レバー32の移動範囲に上昇側検出センサと下降側検出センサを備え、これらの検出結果に基づき、耕耘作業機41が上昇されたか、又は下降されたかを判定し、前輪用モータ11の接続を充電器49側又は前輪用インバータ47側に自動切換えする構成である(図9(切換スイッチ自動選択1))。こうすることにより、旋回時に必須の作業機昇降操作に基づいて自動的に切換スイッチの選択が行われオペレータの負担を軽減する。なお、昇降レバー32が下降側検出センサの位置から上昇側検出センサで検出することに基づいて作業機上昇を判定し、逆の場合に作業機下降を判定できる構成としている。
また、前記昇降シリンダ機構38のリフトアーム39に該アーム角を検出するポテンショメータ型の検出器60を設け、耕耘作業機41の昇降手段としての昇降シリンダ機構38に上昇指令信号が出力し、上記検出器60でリフとアーム39の検出角θが耕耘作業機41の非作業位置への上昇を検出すると、すなわち、あらかじめ設定した所定角度αを越えると、前記切換スイッチ手段48を電力供給により駆動モータとしての機能を有して前輪デフ機構27のリングギヤ28を駆動するモータ状態とし、逆に耕耘作業機41の作業位置への降下を検出すると前輪2及び前車軸29等を経由した出力軸25側からの発電出力を受けて発電状態に切り換わる構成である(図10(切換スイッチ自動選択2))。このように構成すると、上記と同様にオペレータが意識せずとも自動的に選択できるため負担軽減できる。
さらに、以下のように構成することもできる。前輪用モータの電流値Iを検出する電流検出器61を設け、この検出電流値Iがあらかじめ設定した設定電流値Isを越えるか否かに基づき、例えば前輪2の負荷が軽くなって、電流値Iが設定電流値Is以下になるとダッシングを惹起していると判定し、充電器49側に切り換える(図11(切換スイッチ自動選択3))。又は、後輪用モータ10の検出電流値Irに対する前輪用モータ11の検出電流値Ifの比があらかじめ設定した値β以下になるか否かでダッシングを受けているか否かを判定し、充電器49側に切り換える(図12(切換スイッチ自動選択4))。いずれの場合もモータ電流の監視により、前輪用モータ11を電力の供給を受けて出力軸を駆動するモータ状態か、あるいはこの前輪用モータ11を前輪2側からの駆動力を受ける発電状態かを自動的に切換でき、オペレータの操作負担を軽減する。
ついで、複数のバッテリー45,45X,45Y…を装着する構成の放電等制御について説明する。図13のように、トラクタ機体1の外装状態に着脱しうる外付け型のバッテリー45に対し、トラクタ機体1のボンネット8内に内蔵型のバッテリー65を設けている。以下、内蔵型バッテリー65を第1バッテリー65、外付け型バッテリー45を第2バッテリー45と称する。ブロック図(図5)のように、第1,第2バッテリー65,45、前・後輪用インバータ46,47、充電器49、バッテリーコントローラ50を接続する。まず、外付けの第2バッテリー45を装着する場合には、外付けのため交換可能な第2バッテリー45から内蔵の第1バッテリー65に充電可能に構成している。交換可能の第2バッテリー45から交換の容易でない内蔵型の第1バッテリー65に充電可能に構成することで内蔵型の第2バッテリー65を常時満充電状態とすることができ、作業性を向上できる。
また、第1,2のバッテリー45,65の放電制御について、バッテリーコントローラ50は、接続されるバッテリー45,65につき、前・後輪用モータ10,11への電力供給の順番制御を行う。すなわち、第2バッテリー45の使用(放電消費)を優先し、この第2バッテリー45が放電完了すると第1バッテリーからの電力供給を受けるようバッテリーコントローラ50は順序制御する。これによって、交換可能のバッテリー45から使用することで内蔵の第2バッテリー65の使用状況を見て外付けの第1バッテリーの充電時期を明確化できる。
以下の例は、前進から後進、あるいはその逆の操作を行う場合の安全を図る。前後進レバー52があっても直ちにこれにしたがって前輪用モータ11や後輪用モータ10を切り換えることとせず、アクセルペダル51の踏込量検出センサ66、前後進レバー52の前進・後進位置検出スイッチ67f,67r等の検出結果に基づき、一定の条件が整うときに適正にモータを正転または逆転に切換るものである。図13に示すように、前後進レバー52の操作があったとき、アクセルペダル51の踏込量検出センサ66がほぼゼロの状態、つまりオペレータがアクセルペダル51の踏み込みを解除することを条件に前後進レバー52で設定した方向に前進用モータ11、後進用モータ10を切換作動する(前後進切換制御1)。したがって、前後進レバー52操作後直ちに逆方向に発進する恐れがなく安全である。また、図14の例は、車速センサ68を設け、検出車速が所定低速Vm以下にならないと前後進レバー52で設定した方向に発進しない構成として安全を確保する(前後進切換制御2)。なおこれら例では、前輪用モータ11の発電状態は必ずしも必要ではない。
また図15は、旋回時前輪・後輪比制御を示し、ハンドル70操作によって旋回操作を行うが、このとき、前輪切れ角検出手段71によって旋回角度を検出し、この旋回角に応じたモータ回転となるよう前・後輪用インバータ46,47に回転補正出力し、旋回角度毎のあらかじめ設定した前輪・後輪回転比で旋回を行うものである。このように構成すると、小さな旋回半径で旋回動作を行うことができる。
さらに、図16は、片ブレーキ時前輪増速制御を示し、左・右ブレーキ検出スイッチ72L,72Rの検出結果に基づき、所謂片ブレーキ操作を行うときは、前輪用インバータ47に増速指令信号を出力する構成である。片ブレーキ操作は小回り旋回を行うときに用いられるが、機体1の回転中心が後輪軸線になって前輪と後輪の回転半径が異なり、前輪が却ってブレーキとなる。ところが、上記のように前輪を増速することで小回りを容易に行うことができる。図15、16の例も前輪用モータ11の発電状態は必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0010】
1 機体
2 前輪
5 後輪
10 後輪用モータ
11 前輪用モータ
12 出力軸(後輪出力軸)
25 出力軸(前輪出力軸)
38 昇降シリンダ機構(昇降機構)
41 耕耘作業機
45 バッテリー
48 切換スイッチ手段(切換手段)
49 充電機
61 電流検出手段
65 バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に走行用の車輪(2,5)を備えた機体(1)に耕耘作業機(41)を昇降自在に装着し、該機体(1)にはバッテリー(45,65)を備え、該バッテリー(45,65)に接続され後輪出力軸(12)に駆動出力する後輪用モータ(10)と前輪出力軸(25)に駆動出力する前輪用モータ(11)を夫々設け、前輪用モータ(11)を前輪出力軸(25)側からの発電出力を受けて発電状態に切換わる構成とした電動トラクタ。
【請求項2】
前輪用モータ(11)の回路に充電器(49)を接続することにより、前輪出力軸(25)側からの発電出力を受けて発電し前記バッテリー(45,65)を充電する構成とした請求項1に記載の電動トラクタ。
【請求項3】
発電機能を備えた前記前輪用モータ(11)は、耕耘作業機(41)を非作業状態とする昇降機構(38)に対する上昇指令信号に基づき電力供給による前輪出力軸(25)を起動するモータ状態とし、逆に耕耘作業機(41)を作業状態とする下降指令信号に基づき前輪出力軸(25)側からの発電出力による発電状態に切り換える切換手段(48)を構成した請求項1又は請求項2に記載の電動トラクタ。
【請求項4】
発電機能を備えた前記前輪用モータ(11)のモータ電流を検出する電流検出手段(61)を設け、この電流検出結果に基づき前輪用モータ(11)をモータ状態から発電状態に切り換える構成とした請求項1又は請求項2に記載の電動トラクタ。
【請求項5】
後輪用モータ(10)によって後部装着の作業機用伝動軸(17)を駆動する構成とした請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の電動トラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−32039(P2013−32039A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167866(P2011−167866)
【出願日】平成23年7月30日(2011.7.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】