説明

電動パワーステアリング装置

【課題】良好な操舵フィーリングを損ねることなく、ラック軸及びピニオン軸の耐久性を高めることができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、モータを駆動源としてピニオン軸にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する。ラックガイド機構は、ラック軸の軸方向に往復動可能に支持する。操舵力補助装置としてのモータ23には、ピニオン軸の回転に抵抗を付与する抵抗付与機構51が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックアンドピニオン式の電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のステアリング装置には、モータを駆動源とした電動パワーステアリング装置がある。このような電動パワーステアリング装置には、ピニオン軸とラック軸とを噛合させることにより、そのステアリング操作に伴うピニオン軸の回転をラック軸の往復動に変換するものがある。通常、このようなラックアンドピニオン式の電動パワーステアリング装置には、ラック軸を支持するラックガイド機構によってラック軸をピニオン軸に噛合しつつ軸方向に往復動可能に支持するラックガイド機構が設けられている(例えば、特許文献1参照)。特に、このラックガイド機構は、ラック軸のラック歯とピニオン軸のピニオン歯とのバックラッシュを適正に保つために、サポートヨークの外周にOリング等の弾性部材が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−41251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような電動パワーステアリング装置では、例えば路面等から転舵輪を通じた逆入力応力の印加により生じる振動等により、良好な操舵フィーリングを損なうおそれがあった。このため、サポートヨークの外周における弾性部材の弾性力を強めることで、ラック軸をピニオン軸に押し付けて、逆入力振動の発生を抑制し、良好な操舵フィーリングを保っている。
【0005】
しかしながら、逆入力の印加により生じる振動等を抑制することができるが、ラック軸をピニオン軸に過剰に押し付けてしまうこととなり、ラック軸のラック歯とピニオン軸のピニオン歯とのバックラッシュを適正に保つことができず、ラック軸、ピニオン軸の耐久性を損ねてしまうおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、良好な操舵フィーリングを損ねることなく、ラック軸及びピニオン軸の耐久性を高めることができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ステアリング操作により回転するピニオン軸と、前記ピニオン軸に噛合されたラック軸と、該ラック軸の軸方向に往復動可能に支持するラックガイド機構と、モータを駆動源として該ピニオン軸にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、を備えた電動パワーステアリング装置において、前記操舵力補助装置から前記ピニオン軸までにアシスト力を伝達する動伝達経路に、前記ピニオン軸の回転に抵抗を付与する抵抗付与機構が設けられたことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、操舵力補助装置からピニオン軸までにアシスト力を伝達する動伝達経路に、ピニオン軸の回転に抵抗を付与する抵抗付与機構が設けられた。このため、ラック軸とピニオン軸との位置関係を保ちつつ、逆入力応力の印加により生じる振動等を抑制することができ、良好な操舵フィーリングを損ねることなく、ラック軸及びピニオン軸の耐久性を高めることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、前記ラック軸は、該ラック軸に形成されたラック歯の背面を平面状に形成し、前記ラックガイド機構は、前記ラック軸のラック歯の背面に当接し、前記ラック軸の軸方向に往復動可能に応じて回転するローラを含む構成であることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、ラック軸に形成されたラック歯の背面を平面状に形成するとともに、その背面を回転するローラで支持することで、ラック軸を軸方向に円滑に往復動可能にすることができる。また、ローラで支持されることで、ラック軸の磨耗を防止することができ、ラック軸の耐久性を高めることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置において、前記抵抗付与機構は、前記モータのモータ軸に当接する樹脂部材と、前記モータのモータ軸に対して該樹脂部材を押圧する弾性部材とを有することを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、弾性部材の弾性力によりモータのモータ軸に樹脂部材を押圧させることで、ステアリング操作に応じたピニオン軸の回転に抵抗を付与し、モータ軸を介してピニオン軸に対するラック軸からの振動を抑制することができる。特に、駆動源としてのモータでピニオン軸の回転に抵抗を付与し、ピニオン軸の振動を抑制させることで、効率よくピニオン軸の回転を調整することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、前記樹脂部材は、テーパ形状であり、前記抵抗付与機構は、前記弾性部材の弾性力を調整する弾性力調整機構を有することを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、樹脂部材をテーパ形状とし、弾性部材の弾性力を調整可能とすることで、樹脂部材を過度に押圧することがなく、モータ軸のロックを防止することができるとともに、各種モータ毎に回転の微調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、良好な操舵フィーリングを損ねることなく、ラック軸及びピニオン軸の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】ラックアンドピニオン機構の概略構成を示す構成図。
【図3】EPSアクチュエータの概略構成を示す構成図。
【図4】モータの概略構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング(ステアリングホイール)2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラム軸8、中間軸9、及びピニオン軸10を連結してなる。そして、ステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、そのラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0018】
ピニオン軸10には操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ21が連結されており、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する。EPSアクチュエータ21は、駆動源であるモータ23が減速機構24を介してピニオン軸10と駆動連結された所謂ピニオンアシスト型のEPSアクチュエータとして構成されている。そして、EPSアクチュエータ21は、モータ23の回転を減速機構24により減速してピニオン軸10に伝達することにより、モータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成となっている。
【0019】
また、EPSアクチュエータ21には制御手段としてのECU22が接続されており、EPSアクチュエータ21の作動を制御する。
図示しないトルクセンサが接続されたECU22は、トルクセンサから出力されるトルク信号に基づいて、ステアリングシャフト3を介して伝達されるトルクを検出する。なお、本実施形態において、トルクセンサは、図3に示すように、ピニオン軸10のステアリング2側に連結されたトーションバー30がトルクの入力により捻れることで、その捩れに応じたトルク信号をECU22に出力する構成となっている。
【0020】
また、図1に示すように、車速センサ25が接続されたECU22は、車速センサ25から出力される車速信号に基づいて、車両の走行速度を検出する。なお、本実施形態における車速センサ25は、車両における左右の後輪(図示略)に固定され、車輪の回転に応じた車速信号をECU22に出力する構成となっている。
【0021】
そして、ECU22は、このようにして検出されるトルク及び車両の走行速度に基づいて目標アシスト力を演算し、その目標アシスト力をEPSアクチュエータ21に発生させるべく、モータ23に対する駆動電力の供給を通じて、そのEPSアクチュエータ21の作動を制御する構成となっている(パワーアシスト制御)。
【0022】
次に、ラックアンドピニオン機構4の構成について説明する。
図2に示すように、ラックアンドピニオン機構4において、ラック歯5aとピニオン歯10aとが噛合し、所定の交叉角をもって配置される上記ラック軸5及びピニオン軸10が、有底筒状のラックハウジング31に収容されている。ピニオン軸10は、軸受33,34により支持される部分の間にピニオン歯10aが形成された構成となっており、その軸受33,34に支持されることにより、ラックハウジング31内において回転可能に収容されている。
【0023】
一方、ラック軸5は、ピニオン軸10のピニオン歯10aに相対するようにラック歯5aが形成されており、そのラック歯5aの背面5bが平面状に形成された構成となっている。ラック軸5は、そのラック歯5aがピニオン軸10のピニオン歯10aに噛合されることによりそのピニオン軸10に駆動連結されており、ピニオン軸10に噛合した状態で、ラック歯5aの背面5bがラックガイド機構35で摺動可能に支持されることにより、ラックハウジング31内において往復動可能に収容されている。
【0024】
次に、ラックガイド機構35の構成について説明する。
ラックガイド機構35は、主としてローラ36と一対のニードル軸受37,38とからなり、これらはラックハウジング31に収容されている。一対のニードル軸受37,38に回転可能に支持されるローラ36は、略円柱状に形成されるとともに、ラック軸5をピニオン軸10に噛合しつつ軸方向に往復動可能に支持する。また、一対のニードル軸受37,38は、ラックハウジング31の内周面に固定されており、ローラ36を回転可能にしつつ、ピニオン軸10とラック軸5とが適正に噛合する位置関係となるように調整する。
【0025】
次に、EPSアクチュエータ21の構成について説明する。
図3に示すように、EPSアクチュエータ21において、減速機構24を収納するハウジング26の外周面に駆動源であるモータ23が固定され、モータ23のモータ軸46の端部に固定されたモータギア27が減速機構24のリダクションギア28と噛合する。
【0026】
また、EPSアクチュエータ21において、ハウジング26の内周面に減速機構24が固定されている。この減速機構24は、ピニオン軸10に連結されたリダクションギア28から構成されている。このリダクションギア28は、その一端側で噛合されたモータ軸46のモータギア27の回転を減速させて、同行回転可能に軸着されているピニオン軸10に伝達する。
【0027】
次に、モータ23の構成について説明する。
図4に示すように、モータ23は、ケーシング41からモータ軸46の先端46aと基端46bとが突出するように構成されており、特に、ケーシング41には、モータ軸46の基端46bが突出する外周面41aが凹形状に形成されており、モータ軸46の回転に抵抗を付与する抵抗付与機構51が収納される凹部41bが設けられている。
【0028】
モータ23は、ケーシング41に設けられた軸受42,43を介してステータ44の内側にロータ45が回転自在に軸支された構成となっている。このロータ45には、モータ軸46が、ケーシング41から両端側に突出するとともに、ロータ45と同軸状で一体回転可能に固定されている。また、ロータ45には、モータ軸46とともに一体回転するロータコア47の外周に複数のマグネット48が固定されている。
【0029】
また、モータ23は、そのケーシング41の内周面にモータコイル等からなるステータ44が固定された構成となっている。ステータ44は、駆動電力が供給された場合には、マグネット48との相互作用によりロータ45にトルクを付与する。
【0030】
ケーシング41内には、モータ23のモータ軸46の回転角を検出するモータ角センサ(レゾルバ)49が上記ロータ45と同軸に併置されている。モータ角センサ49は、ロータ45の回転角を検出し、ステータ44には該回転角に応じた駆動電力が供給される。
【0031】
モータ軸46の先端46aには、モータ軸46と一体回転するとともに、減速機構24に回転を伝達するモータギア27が軸支されている。一方、モータ軸46の基端46b側には、ケーシング41の凹部41bに抵抗付与機構51が収納されている。
【0032】
次に、抵抗付与機構51の構成について説明する。
抵抗付与機構51は、モータ軸46の基端46bに向かって順番に、モータ軸46に当接する樹脂部材52と、樹脂部材52をモータ軸46に対して押圧するためのコイルバネ53と、コイルバネ53の弾性力(付勢力)を調整するための調整ナット54と、調整ナット54を固定する固定ナット55と、が配置された構成となっている。
【0033】
摩擦係数が少なく、耐磨耗性に優れたポリアセタールを含有し、弾性を有する樹脂部材52は、その中心にモータ軸46の外径よりも大きい径で筒状の挿通孔52aが形成され、外周面がテーパ形状に形成されている。樹脂部材52は、その挿通孔52aにモータ軸46を挿通させた状態で、モータ軸46の先端46aに向かって外周面が縮径となるように、テーパ形状に形成されたケーシング41の外周面41aと当接させて配置する。また、樹脂部材52は、挿通孔52aの全周面がモータ軸46に沿って配置し、更にはモータ軸46よりも、凹部41bが設けられたケーシング41の外周面41aに対して密に当接するように形成されている。
【0034】
樹脂部材52は、モータ軸46の基端46b側からコイルバネ53からの弾性力が付加されることにより、ケーシング41の外周面41aとコイルバネ53とにより挟まれて挿通孔52aが形成された方向に変形することで、モータ軸46をその軸方向に対して垂直方向から押圧する。また、樹脂部材52は、コイルバネ53から弾性力が付加された状態でモータ軸46が回転する場合、モータ軸46による摩擦よりも、ケーシング41の外周面41aによる摩擦のほうが大きくなり、モータ軸46の回転に応じて回転せずに、モータ軸46を摺接するように構成されている。
【0035】
弾性部材としてのコイルバネ53は、凹部41bに収納可能な外径であり、その中心にモータ軸46を挿通させた状態で、樹脂部材52と調整ナット54との間に挟持されて配置されている。このコイルバネ53は、モータ軸46と当接しないため、モータ軸46の回転に応じて回転しないように構成されている。また、コイルバネ53は、モータ軸46の基端46b側から調整ナット54が当接することにより樹脂部材52を付勢する。
【0036】
コイルバネ53の弾性力を調整するための弾性力調整機構としての調整ナット54は、凹部41bに収納可能な外径であり、その中心にモータ軸46を挿通させた状態で、コイルバネ53と固定ナット55との間に挟持されて配置されている。この調整ナット54も、モータ軸46と当接しないため、モータ軸46の回転に応じて回転しないように構成されている。調整ナット54は、モータ軸46の基端46b側から固定ナット55と当接し、コイルバネ53を押圧する。調整ナット54は、その厚み(配置しない場合も含む)が異なる部材を用いることで、モータ23の種類や車両の種類に応じてコイルバネ53の弾性力を調整可能に構成されている。
【0037】
また、固定ナット55は、凹部41bを覆うように調整ナット54のモータ軸46の基端46b側に配置され、図示しない螺穴が形成されたケーシング41に対して螺合されている。固定ナット55は、調整ナット54と当接することで、調整ナット54を介してコイルバネ53からの弾性力を樹脂部材52に付加させる。
【0038】
なお、本実施形態において、モータ軸46、モータギア27、リダクションギア28、ピニオン軸10がモータ23からピニオン軸10までのアシスト力の動伝達経路に相当し、その動伝達経路の中からモータ軸46に抵抗付与機構51が設けられていることとなる。
【0039】
ここで、上述したように構成されたEPS1の作用について説明する。
ステアリング操作に応じてピニオン軸10が回転すると、ラック軸5が背面5bからローラ36により支持されているため、そのピニオン歯10aとラック歯5aとが適正に噛合し、ラック軸5が軸方向に往復動(往復直線運動)を行う。そして、それに伴い、ラック軸5の往復動に応じてローラ36が回転する。
【0040】
モータ23は、ECU22から駆動電力が供給されるとモータ軸46を回転させる。モータ軸46が回転すると、抵抗付与機構51は、モータ軸46の基端46b側からモータ軸46の回転に対して抵抗を付与する。
【0041】
具体的には、固定ナット55が調整ナット54に当接した状態でケーシング41に螺合されており、調整ナット54がコイルバネ53と当接することで、コイルバネ53が樹脂部材52を付勢する。
【0042】
樹脂部材52は、ケーシング41の外周面41aに当接した状態で、モータ軸46の基端46b側からコイルバネ53により付勢されると、挿通孔52a方向に変形し、モータ軸46を軸方向に対して垂直に押圧する。また、樹脂部材52は、モータ軸46よりもケーシング41の外周面41aに対して密に当接するため、モータ軸46の回転に応じて回転せず、モータ軸46と摺接し、モータ軸46に摩擦を加え、モータ軸46の回転に抵抗を付与することとなる。なお、コイルバネ53、調整ナット54、固定ナット55は、モータ軸46とは当接していないため、モータ軸46の回転に応じて回転しない。
【0043】
また、路面等から転舵輪を通じた逆入力応力は、ナックル、タイロッド11を介して、ラック軸5に印加されることがある。この場合、ラック軸5は、ピニオン軸10と適正に噛合するようにローラ36により調整されているため、その逆入力応力を顕著には抑制させることなく、ピニオン軸10に伝達させる。ピニオン軸10に伝達された逆入力応力は、中間軸9、コラム軸8を介してステアリング2に伝達するとともに、リダクションギア28、モータギア27を介して、モータ23のモータ軸46にも伝達する。
【0044】
モータ23は、上記抵抗付与機構51によりモータ軸46の回転に抵抗が付与されるため、逆入力応力の振動を抑制し、モータギア27、リダクションギア28を介してピニオン軸10の逆入力応力の振動を抑制する。これによって、抵抗付与機構51は、ステアリング操作に応じたピニオン軸10の回転に抵抗を付与することで、ピニオン軸10に対する振動を抑制し、ピニオン軸10、中間軸9、コラム軸8を介してステアリング2の逆入力応力の振動を抑制することとなる。
【0045】
以上詳述したように、本実施形態は、以下の効果を有する。
(1)モータ23のモータ軸46に、ステアリング操作に応じたピニオン軸10の回転に抵抗を付与する抵抗付与機構51が設けられた。このため、ラック軸5とピニオン軸10との噛合を適正に調整することでラック軸5とピニオン軸10との位置関係を適正に保ちつつ、逆入力応力の印加により生じる振動等を抑制することができ、良好な操舵フィーリングを損ねることなく、ラック軸5及びピニオン軸10の耐久性を高めることができる。
【0046】
(2)ラック軸5に形成されたラック歯5aの背面5bを平面状に形成するとともに、その背面5bを回転するローラ36で支持することで、ラック軸5を軸方向に円滑に往復動可能にすることができる。また、ローラ36で支持されることで、ラック軸5の磨耗を防止することができ、ラック軸5の耐久性を高めることができる。
【0047】
(3)ローラ36を回転可能に支持するニードル軸受37,38は、ラックハウジング31に固定されているため、ローラ36とラック軸5との位置関係を一定に保つことができる。このため、ラック軸5とピニオン軸10との噛合を一定かつ適正に調整することでラック軸5とピニオン軸10との位置関係を一定かつ適正に保つことができ、ラック軸5及びピニオン軸10の耐久性を高めることができる。
【0048】
(4)コイルバネ53の弾性力によりモータ23のモータ軸46に樹脂部材52を押圧させることで、ステアリング操作に応じたピニオン軸10の回転に抵抗を付与し、モータ軸46を介してピニオン軸10に対するラック軸5からの振動を抑制することができる。特に、駆動源としてのモータ23でピニオン軸10の回転に抵抗を付与し、ピニオン軸10の振動を抑制させることで、効率よくピニオン軸10の回転を調整することができる。また、モータ23に樹脂部材52、コイルバネ53を設けることで、組み立てが容易となり、安価に製造することもできる。
【0049】
(5)樹脂部材52をテーパ形状とし、コイルバネ53の弾性力を調整可能とすることで、樹脂部材52を過度に押圧することがなく、モータ軸46のロックを防止することができるとともに、各種モータ毎にトルクの微調整を行うことができる。
【0050】
(6)樹脂部材52は、ポリアセタールを含有しているため、耐磨耗性に優れ、樹脂部材52の耐久性を高めることができるとともに、モータ軸46のロックを防止することができる。
【0051】
尚、上記実施形態は、次のような別の実施形態(別例)にて具体化できる。
・上記実施形態において、減速機構24に回転を伝達するモータギア27が軸支されるモータ軸46の先端46a側に抵抗付与機構51を設けてもよい。もちろん、モータ軸46の先端46aと基端46bとの両方に抵抗付与機構51を設けてもよい。
【0052】
・上記実施形態において、トーションバー30よりもラック軸5側にピニオン軸10の回転に抵抗を付与する機構が設けられていればよい。具体的には、リダクションギア28からなる減速機構24や、ピニオン軸10の回転軸にピニオン軸10の回転に対して抵抗を付与する抵抗付与機構が設けられていればよい。つまり、モータ23からピニオン軸10までのアシスト力の動伝達経路の何れの箇所で、ピニオン軸10の回転に抵抗を付与する機構が設けられていればよい。
【0053】
・上記実施形態において、コラム軸8と駆動連結された所謂コラムアシスト型のEPSアクチュエータに抵抗付与機構51を設けてもよい。この場合、トーションバーよりもラック軸5側に、ピニオン軸10の回転に抵抗を付与する機構が設けられていればよい。例えば、コラム軸8のステアリング2側にトーションバーが連結され、モータ23からの動力がコラム軸8、中間軸9を介してピニオン軸10に伝達される構成となり、トーションバーよりもラック軸5側であるコラム軸8や中間軸9に抵抗付与機構51を設けてもよい。なお、この場合、モータ軸46、モータギア27、リダクションギア28、コラム軸8、中間軸9、ピニオン軸10が動伝達経路に相当する。
【0054】
・上記実施形態において、ラックガイド機構として、2つ以上のローラ36を用いてもよい。また、上記実施形態において、ラック軸5をピニオン軸10に対して適正な位置に配置されるように支持できれば、ラック軸5の軸方向に対して垂直方向ではない方向から、ローラ36がラック軸5に当接してもよい。この場合、ラック軸5において、ローラ36に当接する箇所を平面状に形成することが好ましい。
【0055】
・上記実施形態において、ラックガイド機構としては、ピニオン軸に対してラック軸を適正な位置に支持することができれば、ローラ36をバネ等の弾性部材でラック軸5に対して押し付けてもよい。また、上記実施形態において、ローラ36を用いずに、サポートヨークとバネ等の弾性部材とを用いてもよい。
【0056】
・上記実施形態において、ラック軸5の一端側にラック歯5aを形成し、他端側を平面状に形成したが、これに限らず、例えば円弧状など他端側を平面状に形成しなくてもよい。
【0057】
・上記実施形態において、調整ナット54を用いて、その調整ナット54の厚みでコイルバネ53の弾性力を調整したが、これに限らず、例えば、固定ナット55の螺合度合いにより、固定ナットを変位可能に構成し、コイルバネ53の弾性力を調整してもよい。
【0058】
・上記実施形態において、コイルバネ53以外の別の弾性部材であってもよい。また、コイルバネ53等を用いることなく、固定ナット55が螺合されることで、弾性力を有する樹脂部材52が変形し、モータ軸46を押圧するように構成してもよい。
【0059】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、樹脂部材52は、ポリアセタールを含有していることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【0060】
(ロ)請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、前記ラックガイド機構は、前記ローラを回転可能に支持する軸受を含む構成であり、ラックハウジングに収納され、前記軸受は、前記ラックハウジングに固定されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【符号の説明】
【0061】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、4…ラックアンドピニオン機構、5…ラック軸、5a…ラック歯、10…ピニオン軸、10a…ピニオン歯、23…モータ、24…減速機構、35…ラックガイド機構、36…ローラ、46…モータ軸、51…抵抗付与機構、52…樹脂部材、53…コイルバネ、54…調整ナット、55…固定ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング操作により回転するピニオン軸と、前記ピニオン軸に噛合されたラック軸と、該ラック軸の軸方向に往復動可能に支持するラックガイド機構と、モータを駆動源として該ピニオン軸にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、を備えた電動パワーステアリング装置において、
前記操舵力補助装置から前記ピニオン軸までにアシスト力を伝達する動伝達経路に、前記ピニオン軸の回転に抵抗を付与する抵抗付与機構が設けられたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記ラック軸は、該ラック軸に形成されたラック歯の背面を平面状に形成し、
前記ラックガイド機構は、前記ラック軸のラック歯の背面に当接し、前記ラック軸の軸方向に往復動可能に応じて回転するローラを含む構成であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記抵抗付与機構は、前記モータのモータ軸に当接する樹脂部材と、前記モータのモータ軸に対して該樹脂部材を押圧する弾性部材とを有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記樹脂部材は、テーパ形状であり、
前記抵抗付与機構は、前記弾性部材の弾性力を調整する弾性力調整機構を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−183983(P2012−183983A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50322(P2011−50322)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】