説明

電動パワーステアリング装置

【課題】簡素な構成にて効果的に車両の偏向が抑えられ、快適な操舵フィーリングを得ることができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【解決手段】電流指令値演算部22には、ローパスフィルタ処理後トルクTの変化量が所定値以内であり、かつローパスフィルタ処理後トルクTの変化量が所定値以内である時間が、所定時間以上継続した場合には、操舵トルクτを低減するための補正成分としてのリードプル補正量Iip*を演算するリードプル補正制御部27が設けられている。そして、電流指令値演算部22は、このリードプル補正制御部27の演算するリードプル補正量Iip*を、加算器28において、基本アシスト制御部26の演算する基礎成分としての基本アシスト制御量Ias*に重畳することにより、そのパワーアシスト制御における目標アシスト力としての電流指令値Iq*を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のパワーステアリング装置には、モータを駆動源とする電動パワーステアリング装置(EPS)がある。そして、通常、このようなEPSでは、検出される操舵トルクに基づいて、操舵系に付与するアシスト力の基礎成分(基本アシスト制御量)が演算される。
【0003】
ところで、実際の走行時には、直進状態であるにも関わらず、車両の偏向(リードプル)を抑えるためのステアリング操作が必要となる状況がある。例えば、図12に示すように、車両40の走行路41には、多くの場合、排水性向上等の理由から幅方向に傾斜(カント)が付けられており、このようなカント路42、43を走行する際には、その重力による偏向を抑えるための操舵トルクが必要となる。そして、こうしたカント路走行が長時間に亘る場合には、その継続的な負荷が、疲労として運転者に蓄積されることになる。
【0004】
このような問題を解決すべく、従来、車両走行路のカント状態を判定し、その判定結果に基づいて、車両の偏向を抑制するための制御成分を演算する方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載の車両制御装置は、車速や横方向加速度、或いは、操舵状態および走行環境情報等、検出される複数の状態量に基づいて、車両走行路のカント状態を学習する。そして、その学習結果を用いたニューラルネットワーク演算を行なうことにより、カント状態を判定し、そのカントの存在に起因する車両の偏向を抑制するための制御成分を演算する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−22169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の場合のように精緻なカント状態判定を行う構成では、その演算負荷の増大に伴うコスト上昇が不可避であり、また併せて、その構成の複雑さを考慮するならば、これが現実的な解決手段であるとは言い難い虞があり、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、簡素な構成にて効果的に車両の偏向が抑えられ、快適な操舵フィーリングを得ることのできる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、操舵系にアシスト力を付与するためのモータ(12)を有する操舵力補助装置(13)と、前記モータ(12)に電力を供給し、前記操舵力補助装置(13)の作動を制御する制御手段(21)と、操舵トルクを検出するトルクセンサ(15)と、車速を検出する車速センサ(16)と、前記トルクセンサ(15)から検出された操舵トルクの高周波成分を除去し、処理後トルクを出力するローパスフィルタ(30)と、前記処理後トルクの変化量を検出する変化量検出手段(21)と、を備え、前記制御手段(21)は、前記操舵トルクと前記車速に基づき基本アシスト力を算出し、前記基本アシスト力に応じて前記操舵力補助装置(13)の作動を制御する通常制御を実行し、前記制御手段(21)は、前記変化量が所定値以内であり、かつ前記変化量が所定値以内である時間が所定時間以上継続した場合には、前記基本アシスト力に対して、前記アシスト力を漸増するように前記操舵力補助装置(13)の作動を制御するリードプル制御を実行すること、を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、ローパスフィルタにより高周波成分が除去されたローパスフィルタ処理後トルク(以下、処理後トルクと記述する)の変化量を検出することで、運転者の操舵意図を推定することができる。即ち、処理後トルクの変化量が所定値以内であり、且つ所定値以内である時間が所定時間以上継続することで、運転者の直進しようとする意図を推定することができる。この際に、アシスト力を漸増することで、カント路での重力偏向を抑えるための操舵トルクをアシストすることが可能になる。その結果、カント路において操舵系に一定の操舵トルクが長時間かかっている場合には、操舵トルクを減少させることができるので、快適な操舵フィーリングを得ることができる。また、ローパスフィルタによる高周波成分の除去を採用することで、ニューラルネットワーク演算などに比較して、簡単な構成により効果を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記制御手段(21)は、リードプル制御において、時間経過とともに漸増する付加アシスト力を演算し、前記基本アシスト力に前記付加アシスト力を加算した値に応じて前記操舵力補助装置(13)の作動を制御すること、を要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、リードプル制御において、時間経過とともに漸増する付加アシスト力を演算し、基本アシスト力に付加アシスト力を加算した値に応じて制御する。
その結果、カント路での重力偏向を抑えるための操舵トルクをゆっくり減少させていけるので、快適な操舵フィーリングを得ることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記制御手段(21)は、リードプル制御により前記アシスト力の漸増を開始した後に、前記操舵トルクが零となった時点で、前記アシスト力をその時点の値に固定すること、を要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、リードプル制御によりアシスト力を漸増した結果、操舵トルクが零となった時点で、アシスト力をその時点の値に固定する。
その結果、操舵トルクをほぼ零とした状態を継続することができるので、快適な操舵フィーリングを得ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記制御手段は、リードプル制御中に前記アシスト力を固定した後、前記変化量が所定値より大きくなった場合には、通常制御を実行すること、を要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、リードプル制御中にアシスト力を固定した後、変化量が所定値より大きくなった場合には、運転者が切り込みを行なったと判断し、リードプル制御を中断して、通常制御に移行する。
その結果、リードプル制御により、操舵トルクがほぼ零の保舵状態から、切り込み状態に移り、大きなアシスト力が必要になった場合でも、アシスト制御に滑らかに移行することができるので、快適な操舵フィーリングを得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡素な構成にて効果的に車両の偏向が抑えられ、快適な操舵フィーリングを得ることができる電動パワーステアリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】EPSの制御ブロック図。
【図3】リードプル補正制御部の構成を示す説明図。
【図4】ローパスフィルタの原理を表す説明図。
【図5】操舵トルク値のサンプリング構成を表す説明図。
【図6】操舵トルクを低減すべく演算されるリードプル補正量の一例を示す説明図。
【図7】リードプル補正判定部の処理手順を示すフローチャート。
【図8】リードプル補正開始判定サブルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図9】リードプル補正量演算サブルーチン(1/2)の処理手順を示すフローチャート。
【図10】リードプル補正量演算サブルーチン(2/2)の処理手順を示すフローチャート。
【図11】リードプル補正制御サブルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図12】車両走行路の傾斜を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、コラム型の電動パワーステアリング装置1(以下、EPSという)に具体化した本発明の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態のEPS1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。
【0019】
尚、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト8、インターミディエイトシャフト9、及びピニオンシャフト10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド6を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪7の舵角が変更される。
【0020】
また、EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ13と、EPSアクチュエータ13の作動を制御する制御手段としてのECU11とを備えている。
【0021】
本実施形態のEPSアクチュエータ13は、コラム型のEPSアクチュエータであり、その駆動源であるモータ12は、減速機構14を介してコラムシャフト8と駆動連結されている。EPSアクチュエータ13は、モータ12の回転を減速機構14により減速してコラムシャフト8に伝達することによって、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する。
【0022】
ECU11には、車速センサ16、トルクセンサ15、モータ回転角センサ18及び前後左右車輪速センサW1〜W4が接続されている。尚、車輪速センサW1、W2は前輪の車輪速を検出するセンサであり、車輪速センサW3、W4は後輪の車輪速を検出するセンサである。そして、ECU11は、これら各センサの出力信号に基づいて、車速V、操舵トルクτ、モータ回転角θ及び前後左右車輪速w1〜w4を検出する。例えば、本実施形態のトルクセンサ15は、一対のレゾルバが図示しないトーションバーの両端に設けられたツインレゾルバ型のトルクセンサである。また、ECU11は、これらの検出される各状態量に基づいて目標アシスト力を演算し、モータ12への駆動電力の供給を通じて、EPSアクチュエータ13の作動、即ち、操舵系に付与するアシスト力を制御する。
【0023】
次に、本実施形態のEPSにおけるアシスト制御の態様について説明する。
図2に示すように、ECU11は、モータ制御信号を出力するマイコン21と、そのモータ制御信号に基づいて、モータ12に駆動電力を供給する駆動回路24とを備えて構成されている。
【0024】
本実施形態では、ECU11には、モータ12に通電される実電流値Iを検出するための電流センサ25、及びモータ12の回転角θを検出するためのモータ回転角センサ18(図1参照)が接続されている。そして、マイコン21は、上記各車両状態量、並びにこれら電流センサ25及びモータ回転角センサ18の出力信号に基づき検出されたモータ12の実電流値I及びモータ回転角θに基づいて、駆動回路24に出力するモータ制御信号を生成する。
【0025】
尚、以下に示す各制御ブロックは、マイコン21が実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。そして、同マイコン21は、所定のサンプリング周期で上記各状態量を検出し、所定周期毎に以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行することにより、モータ制御信号を生成する。
【0026】
詳述すると、本実施形態のマイコン21は、モータ12に対する電力供給の目標値である電流指令値Iq*を演算する電流指令値演算部22と、電流指令値演算部22により演算された電流指令値Iq*に基づいてモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力部23とを備えている。
【0027】
電流指令値演算部22には、上記アシスト力目標値の基礎成分としての基本アシスト制御量Ias*を演算する基本アシスト制御部26が設けられており、本実施形態では、この基本アシスト制御部26には、車速V、および操舵トルクτが入力されるようになっている。そして、基本アシスト制御部26は、操舵トルクτの絶対値が大きいほど、また車速Vが小さいほど、より大きなアシスト力を付与すべき旨の基本アシスト制御量Ias*を演算する構成となっている。
【0028】
モータ制御信号出力部23には、この電流指令値演算部22が出力する電流指令値Iq*とともに、電流センサ25により検出された実電流値I、およびモータ回転角センサ18により検出されたモータ回転角θが入力される。そして、モータ制御信号出力部23は、この電流指令値Iq*に実電流値Iを追従させるべく電流フィードバック制御を実行することによりモータ制御信号を演算する。
【0029】
具体的には、本実施形態では、モータ12には、三相(U,V,W)の駆動電力の供給により回転するブラシレスモータが用いられている。そして、モータ制御信号出力部23は、実電流値Iとして検出されたモータ12の相電流値(Iu,Iv,Iw)をd/q座標系のd、q軸電流値に変換(d/q変換)することにより、上記電流フィードバック制御を行う。
【0030】
即ち、電流指令値Iq*は、q軸電流指令値としてモータ制御信号出力部23に入力され、モータ制御信号出力部23は、モータ回転角センサ18により検出されたモータ回転角θに基づいて相電流値(Iu,Iv,Iw)をd/q変換する。また、モータ制御信号出力部23は、そのd、q軸電流値およびq軸電流指令値に基づいてd、q軸電圧指令値を演算する。そして、そのd、q軸電圧指令値をd/q逆変換することにより相電圧指令値(Vu*,Vv*,Vw*)を演算し、当該相電圧指令値に基づいてモータ制御信号を生成する。
【0031】
このようにして生成されたモータ制御信号は、マイコン21から駆動回路24へと出力され、同駆動回路24によりモータ制御信号に基づく三相の駆動電力がモータ12へと供給される。そして、その操舵トルクτに基づくアシスト力目標値としての電流指令値Iq*に相当するモータトルクが発生することにより、アシスト力目標値に対応するアシスト力が操舵系に付与される構成となっている。
【0032】
(リードプル補正制御)
次に、本実施形態におけるリードプル補正制御の態様について説明する。
上述のように、カント路走行等、車両の偏向を誘引する因子、(例えば、走行路面の傾斜)を打ち消すための操舵トルクの入力が長時間に亘る場合、その継続的な負荷が、疲労として運転者に蓄積されることになる。
【0033】
そこで、本実施形態では、マイコン21の電流指令値演算部22には、車両が直進状態にあると判定される場合に検出される操舵トルクτを低減するための補正成分としてのリードプル補正量Iip*を演算するリードプル補正制御部27が設けられている。そして、電流指令値演算部22は、このリードプル補正制御部27の演算するリードプル補正量Iip*を、加算器28において、基本アシスト制御部26の演算する基礎成分としての基本アシスト制御量Ias*に重畳することにより、そのパワーアシスト制御における目標アシスト力としての電流指令値Iq*を演算する。
【0034】
そして、本実施形態では、そのリードプル補正量Iip*に基づき発生するアシスト力によって、車両の偏向を誘引する因子である走行路面の傾斜による影響(重力)を打ち消すことにより、その偏向を抑制して運転者の負担の軽減を図る構成となっている。
【0035】
更に、リードプル補正制御部27の詳細について図3を用いて説明する。
リードプル補正制御部27には、操舵トルクτ、車速V、前後左右車輪速ω1〜ω4およびモータ回転角θが入力される。操舵トルクτは、ローパスフィルタ30を経由してリードプル補正判定部31に入力される。リードプル補正判定部31には、前後左右車輪速w1〜w4も入力される。リードプル補正判定部31は、入力された処理後トルクTおよび前後左右車輪速w1〜w4から、リードプル補正量Tconを演算し、リードプル補正制御開始フラグFLGkrsのオン/オフを判定し、切替部32に出力する。
【0036】
そして、切替部32は、リードプル補正制御開始フラグFLGkrsが「1」の場合は、接点32a、32cを接続し、リードプル補正判定部31で演算されたリードプル補正量Tconを、前段リードプル補正量Iip**生成マップ34に出力する。一方、切替部32は、リードプル補正制御開始フラグFLGkrsが「0」の場合は、接点32b、32cを接続し、メモリ33に記憶されているデータ「0」を、前段リードプル補正量Iip**生成マップ34に出力する。そして、前段リードプル補正量Iip**生成マップ34で生成された前段リードプル補正量Iip**は、乗算器38に出力される。
【0037】
また、車速Vは、車速ゲインKv生成マップ36に入力され、車速ゲインKv生成マップ36で生成された車速ゲインKvは、乗算器38に出力される。更に、モータ回転角θは微分器37で微分され、モータ回転角速度ωが生成される。そして、モータ回転角速度ωは、モータ回転角速度ゲインKω生成マップ35に入力され、モータ回転角速度ゲインKω生成マップ35で生成されたモータ回転角速度ゲインKωは、乗算器38に出力される。前段リードプル補正量Iip**、モータ回転角速度ゲインKωおよび車速ゲインKvは、乗算器38で乗算され、リードプル補正量Iip*としてリードプル補正制御部27から出力され、上述した基本アシスト制御量Ias*と加算器28で加算される。
【0038】
次に、ローパスフィルタ30の機能の詳細を、図4と図5を用いて説明する。
図4で示すように、リードプル補正制御部27に入力される操舵トルクτは、ローパスフィルタ入力側30pでは、高周波成分を含んでいる(図30p参照)。この信号を上記ローパスフィルタ30を通過させると、ローパスフィルタ出力側30qでは、高周波成分は除去されて滑らかな曲線になる(図30q参照)。この滑らかな処理後トルクTが、リードプル補正判定部31に入力される。図5は、図4で示した処理後トルクTの変化図である。図5で示すように、処理後トルクTは、所定のサンプリング時間でサンプリングされ(例えば、T(1)、T(2)等)、リードプル補正判定部31内で処理される。
【0039】
本実施形態では、サンプリングされる処理後トルクTの変化量を測定している。具体的には、処理後トルクTの変化量が、所定値以内に所定時間(図5ではリードプル補正開始判定タイマ所定値Tf)経過した場合、車両の偏向を抑制するための保舵状態に運転者がはいったと判定して、リードプル補正量Tconの演算を開始する。リードプル補正量Tconの演算を実行する時間は、リードプル補正量演算タイマ所定値Trで決定されている。
【0040】
そして、リードプル補正量演算タイマTrがタイムアップするまでサンプリングした処理後トルクTを積算し、その平均値が、車両の偏向を抑制するための保舵状態に運転者が要している操舵トルクτと判定する。そして、その前記平均値を何分割した処理後トルクTをリードプル補正量Iip*として、基本アシスト制御量Ias*に加算する。
【0041】
詳述すると、本実施形態のリードプル補正制御部27は、リードプル補正を実行すべきと判定した場合には、その検出される操舵トルクTの方向(符号)を判定し、判定された方向と同一方向、即ち、検出される処理後トルクTを低減する方向にリードプル補正量Iip*を漸次増加させる(図6(L2)参照)。尚、本実施形態では、車両の進行方向に向かって左方向が「+」、右方向が「−」と定義されている。そして、その処理後トルクTを徐々に低減(図6(L1)参照)して、最終的に「0」とすることにより、運転者に違和感を与えることなく、そのリードプル補正を実行する構成となっている。
【0042】
次に、上記のように構成されたリードプル補正制御部27におけるリードプル補正判定部31の処理手順について説明する。
図7のフローチャートに示すように、マイコン21は、リードプル補正開始判定を行う(ステップS101)。次に、リードプル補正量を演算する(ステップS102)。そして、リードプル補正制御を行い(ステップS103)、処理を終える。
【0043】
次に、上記ステップS101からステップS103の内容を詳細に説明する。
まず、リードプル補正開始判定(ステップS101)の詳細を図8のフローチャートに基づいて説明する。
最初に、マイコン21は、処理後トルク値取込みカウンタPをリセットする(ステップS201)。次に、マイコン21は、リードプル補正開始判定タイマT1をリセットする(ステップS202)。更に、マイコン21は、リードプル補正開始判定カウンタKfをリセットする(ステップS203)。
【0044】
そして、マイコン21は、処理後トルク値取込みカウンタPが、処理後トルク値取込みカウンタ所定値Ps以下か否かを判定する(ステップS204)。そして、マイコン21は、処理後トルク値取込みカウンタPが、処理後トルク値取込みカウンタ所定値Ps以下の場合(P≦Ps、ステップS204:YES)、サンプリングP点の処理後トルク値T(P)を取り込む(ステップS205)。
【0045】
次に、マイコン21は、サンプリングP点の処理後トルク値T(P)の絶対値が、処理後トルク値の所定値Tps以上か否かを判定する(ステップS206)。そして、マイコン21は、サンプリングP点の処理後トルク値T(P)の絶対値が、処理後トルク値の所定値Tps以上の場合(|T(P)|≧Tps、ステップS206:YES)、サンプリングP点と(P−1)点の差分処理後トルク値ΔT(P)を演算する(ステップS207)。
【0046】
次に、マイコン21は、サンプリングP点と(P−1)点の差分処理後トルク値ΔT(P)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTs以下か否かを判定する(ステップS208)。そして、マイコン21は、サンプリングP点と(P−1)点の差分処理後トルク値ΔT(P)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTs以下の場合(|ΔT(P)|≦ΔTs、ステップS208:YES)、リードプル補正開始判定カウンタKfをインクリメントする(Kf=Kf+1、ステップS210)。
【0047】
次に、マイコン21は、リードプル補正開始判定カウンタKfが、リードプル補正開始判定カウンタ所定値Kfs以上か否かを判定する(ステップS211)。そして、マイコン21は、リードプル補正開始判定カウンタKfが、リードプル補正開始判定カウンタ所定値Kfs以上の場合(Kf≧Kfs、ステップS211:YES)、リードプル補正開始判定フラグFLGkrをセット(FLGkr=「1」、ステップS212)し、処理を終わる。
【0048】
一方、マイコン21は、リードプル補正開始判定カウンタKfが、リードプル補正開始判定カウンタ所定値Kfs未満の場合(Kf<Kfs、ステップS211:NO)、リードプル補正開始判定タイマT1がリードプル補正開始判定タイマ所定値Tf以上か否かを判定する(ステップS213)。そして、マイコン21は、リードプル補正開始判定タイマT1がリードプル補正開始判定タイマ所定値Tf以上の場合(T1≧Tf、ステップS213:YES)、リードプル補正開始判定フラグFLGkrをリセット(FLGkr=「0」、ステップS214)し、処理を終わる。
【0049】
また、マイコン21は、リードプル補正開始判定タイマT1がリードプル補正開始判定タイマ所定値Tf未満の場合(T1<Tf、ステップS213:NO)、リードプル補正開始判定タイマT1をインクリメントする(T1=T1+1、ステップS215)。更に、マイコン21は、処理後トルク値取込みカウンタPをインクリメント(P=P+1、ステップS216)し、ステップS204に移行する。
【0050】
また、マイコン21は、サンプリングP点と(P−1)点の差分処理後トルク値ΔT(P)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTsより大きい場合(|ΔT(P)|>ΔTs、ステップS208:NO)、処理後トルク値取込みカウンタPをインクリメント(P=P+1、ステップS216)し、ステップS204に移行する。
【0051】
更に、マイコン21は、サンプリングP点の処理後トルク値T(P)の絶対値が、処理後トルク値の所定値Tps未満の場合(|T(P)|<Tps、ステップS206:NO)、リードプル補正開始判定フラグFLGkrをリセット(FLGkr=「0」、ステップS214)し、処理を終わる。
【0052】
次に、リードプル補正量演算(ステップS102)の詳細を図9のフローチャートに基づいて説明する。
まず、マイコン21は、リードプル補正開始判定フラグFLGkrがセットされているか否かを判定する(ステップS301)。そして、マイコン21は、リードプル補正開始判定フラグFLGkrがセットされている場合(FLGkr=「1」、ステップS301:YES)、リードプル補正量演算用処理後トルク値取込みカウンnに「1」をセットする(ステップS302)。
【0053】
次に、マイコン21は、リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタKrをリセットする(ステップS303)。そして、更に、マイコン21は、リードプル補正量演算用全処理後トルク加算値Tsumをリセットする(ステップS304)。
【0054】
次に、マイコン21は、リードプル補正量演算用処理後トルク値取込みカウンタnが、リードプル補正量演算用処理後トルク値取込みカウンタ所定値ns以下か否かを判定する(ステップS305)。そして、マイコン21は、リードプル補正量演算用処理後トルク値取込みカウンタnが、リードプル補正量演算用処理後トルク値取込みカウンタ所定値ns以下の場合(n≦ns、ステップS305:YES)、サンプリングn点の処理後トルク値T(n)を取り込む(ステップS306)。
【0055】
次に、マイコン21は、サンプリングn点の処理後トルク値T(n)の絶対値が、処理後トルク値の所定値Tps以上か否かを判定する(ステップS306a)。そして、マイコン21は、サンプリングn点の処理後トルク値T(n)の絶対値が、処理後トルク値の所定値Tps以上の場合(|T(n)|≧Tps、S306a:YES)、前後左右車輪速w1(n)〜w4(n)を取り込む(ステップS307)。
【0056】
次に、マイコン21は、 サンプリングn点と(n−1)点の差分処理後トルク値ΔT(n)を演算する(ステップS308)。そして、マイコン21は、サンプリングn点と(n−1)点の差分処理後トルク値ΔT(n)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTs以下か否かを判定する(ステップS309)。そして、マイコン21は、サンプリングn点と(n−1)点の差分差分処理後値ΔT(n)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTs以下の場合(|ΔT(n)|≦ΔTs、ステップS309:YES)、前輪左右車輪速差w1(n)−w2(n)の絶対値が、左右車輪速差所定値ws1以下か否かを判定する(ステップS310)。
【0057】
そして、マイコン21は、前輪左右車輪速差w1(n)−w2(n)の絶対値が、左右車輪速差所定値ws1以下の場合(|w1(n)−w2(n)|≦ws1、ステップS310:YES)、後輪左右車輪速差w3(n)−w4(n)の絶対値が、左右車輪速差所定値ws1以下か否かを判定する(ステップS311)。そして、マイコン21は、後輪左右車輪速差w3(n)−w4(n)の絶対値が、左右車輪速差所定値ws1以下の場合(|w3(n)−w4(n)|≦ws1、ステップS311:YES)、リードプル補正量演算用全処理後トルク加算値前回値Tsum(n−1)に、サンプリングn点の処理後トルク値T(n)を加算して、リードプル補正量演算用全処理後トルク加算値今回値Tsum(n)を算出する(ステップS312)。
【0058】
次に、マイコン21は、リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタKrをインクリメントする(Kr=Kr+1、ステップS313)。そして、マイコン21は、リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタKrが、リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタ所定値Krs以上か否かを判定する(ステップS314)。
【0059】
そして、マイコン21は、リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタKrが、リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタ所定値Krs以上の場合(Kr≧Krs、ステップS314:YES)、リードプル補正量演算用全処理後トルク加算値今回値Tsum(n)をリードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタKrで除算することにより、リードプル補正量演算用全処理後トルク平均値Taveを算出する(ステップS315)。
【0060】
更に、マイコン21は、リードプル補正量演算用全処理後トルク平均値Taveを所定の定数R(Rは、リードプル補正量制御を実施するうえで、良好な操舵フィーリングを得られる値に決定する)で除算することにより、リードプル補正量Tconを算出する(ステップS316)。そして、マイコン21は、リードプル補正制御開始フラグFLGkrsをセット(FLGkrs=「1」、ステップS317)し、処理を終わる。
【0061】
一方、マイコン21は、リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタKrが、リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタ所定値Krs未満の場合(Kr<Krs、ステップS314:NO)、リードプル補正量演算タイマT2がリードプル補正量演算タイマ所定値Tr以上か否かを判定する(ステップS318)。
そして、マイコン21は、リードプル補正量演算タイマT2がリードプル補正量演算タイマ所定値Tr以上の場合(T2≧Tr、ステップS318:YES)、リードプル補正制御開始フラグFLGkrsをリセット(FLGkrs=「0」、ステップS319)し、処理を終わる。
【0062】
また、マイコン21は、リードプル補正量演算タイマT2がリードプル補正量演算タイマ所定値Tr未満の場合(T2<Tr、ステップS318:NO)、リードプル補正量演算タイマT2をインクリメントする(T2=T2+1、ステップS320)。更に、マイコン21は、リードプル補正量演算用処理後トルク値取込みカウンタnをインクリメント(n=n+1、ステップS321)し、ステップS305に移行する。
【0063】
また、マイコン21は、サンプリングn点と(n−1)点の差分処理後トルク値ΔT(n)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTsより大きい場合(|ΔT(n)|>ΔTs、ステップS309:NO)、または前輪左右車輪速差w1(n)−w2(n)の絶対値が、左右車輪速差所定値ws1より大きい場合(|w1(n)−w2(n)|>ws1、ステップS310:NO)、または後輪左右車輪速差w3(n)−w4(n)の絶対値が、左右車輪速差所定値ws1より大きい場合(|w3(n)−w4(n)|>ws1、ステップS311:NO)、リードプル補正量演算用処理後トルク値取込みカウンタnをインクリメント(n=n+1、ステップS321)し、ステップS305に移行する。
【0064】
更に、マイコン21は、サンプリングn点の処理後トルク値T(n)の絶対値が、処理後トルク値の所定値Tps未満の場合(|T(n)|<Tps、ステップS306a:NO)、リードプル補正制御開始フラグFLGkrsをリセット(FLGkrs=「0」、ステップS319)し、処理を終わる。
【0065】
次に、リードプル補正制御(ステップS103)の詳細を図11のフローチャートに基づいて説明する。
まず、マイコン21は、リードプル補正制御開始フラグFLGkrsがセットされているか否かを判定する(ステップS401)。そして、マイコン21は、リードプル補正制御開始フラグFLGkrsがセットされている場合(FLGkrs=「1」、ステップS401:YES)、リードプル補正制御カウンタmをリセットする(m=「0」、ステップS402)。次に、マイコン21は、前段リードプル補正量Iip**の初期値をリセットする(Iip**(0)=「0」、ステップS403)。更に、マイコン21は、処理後トルク値の差分ΔTの初期値をリセットする(ΔT(1)=「0」、ステップS404)。
【0066】
そして、マイコン21は、サンプリングm点の処理後トルク値T(m)を取り込む(ステップS405)。次に、マイコン21は、サンプリングm点の処理後トルク値T(m)の絶対値が、処理後トルク値の所定値Tps以上か否かを判定する(ステップS406a)。そして、マイコン21は、サンプリングm点の処理後トルク値T(m)の絶対値が、処理後トルク値の所定値Tps以上の場合(|T(m)|≧Tps、ステップS406a:YES)、サンプリングm点と(m−1)点の差分処理後トルク値ΔT(m)を演算する(ステップS406)。
【0067】
次に、マイコン21は、サンプリングm点と(m−1)点の差分処理後トルク値ΔT(m)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTss以下か否かを判定する(ステップS407)。そして、マイコン21は、サンプリングm点と(m−1)点の差分処理後トルク値ΔT(m)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTss以下の場合(|ΔT(m)|≦ΔTss、ステップS407:YES)、サンプリングm点の処理後トルク値T(m)が正か否かを判定する(ステップS408)。
【0068】
次に、マイコン21は、サンプリングm点の処理後トルク値T(m)が正の場合(T(m)>0、ステップS408:YES)、前段リードプル補正量の前回値Iip**(m−1)にリードプル補正量Tconを加算することにより、前段リードプル補正量の今回値Iip**(m)を演算する(Iip**(m)=Iip**(m−1)+Tcon、ステップS409)。そして、マイコン21は、リードプル補正制御カウンタmをインクリメント(m=m+1、ステップS410)し、ステップS401に移行する。
【0069】
一方、マイコン21は、サンプリングm点の処理後トルク値T(m)が負の場合(T(m)<0、ステップS411:YES)、前段リードプル補正量の前回値Iip**(m−1)からリードプル補正量Tconを減算することにより、前段リードプル補正量の今回値Iip**(m)を演算する(Iip**(m)=Iip**(m−1)−Tcon、ステップS412)。そして、マイコン21は、リードプル補正制御カウンタmをインクリメント(m=m+1、ステップS410)し、ステップS401に移行する。
【0070】
更に、マイコン21は、サンプリングm点の処理後トルク値T(m)が0の場合(T(m)=0、ステップS411:NO)、前段リードプル補正量の前回値Iip**(m−1)を、前段リードプル補正量の今回値Iip**(m)とする(Iip**(m)=Iip**(m−1)、ステップS413)。そして、マイコン21は、リードプル補正制御カウンタmをインクリメント(m=m+1、ステップS410)し、ステップS401に移行する。
【0071】
更に、マイコン21は、サンプリングm点の処理後トルク値T(m)の絶対値が、処理後トルク値の所定値Tps未満の場合(|T(m)|<Tps、ステップS406a:NO)、またはサンプリングm点と(m−1)点の差分処理後トルク値ΔT(m)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTssより大きいの場合(|ΔT(m)|>ΔTss、ステップS407:NO)、リードプル補正制御開始フラグFLGkrsをリセット(FLGkrs=「0」、ステップS414)し、処理を終える。
【0072】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
電流指令値演算部22には、処理後トルクTの変化量が所定値以内であり、かつ処理後トルクTの変化量が所定値以内である時間が、所定時間以上継続した場合には、処理後トルクTを低減するための補正成分としてのリードプル補正量Iip*を演算するリードプル補正制御部27が設けられている。そして、電流指令値演算部22は、このリードプル補正制御部27の演算するリードプル補正量Iip*を、加算器28において、基本アシスト制御部26の演算する基礎成分としての基本アシスト制御量Ias*に重畳することにより、そのパワーアシスト制御における目標アシスト力としての電流指令値Iq*を演算する。
【0073】
そして、本実施形態では、そのリードプル補正量Iip*に基づき発生するアシスト力によって、車両の偏向を誘引する因子である走行路面の傾斜による影響(重力)を打ち消すことにより、その偏向を抑制して運転者の負担の軽減を図る構成となっている。
【0074】
その結果、操舵系に一定の操舵トルクτが長時間かかっている場合には、操舵トルクτを減少させることができるので、簡素な構成にて効果的に車両の偏向が抑えられ、快適な操舵フィーリングを得ることができる。
【0075】
尚、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を、所謂コラム型のEPS1に具体化したが、本発明は、所謂ピニオン型やラックアシスト型のEPSに適用してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、本発明を、ブラシレスモータを駆動源とするEPSに具体化したが、本発明は、ブラシ付の直流モータを駆動源とするEPSに適用してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、本発明を、前段リードプル補正量Iip**に、モータ回転角速度ゲインKωおよび車速ゲインKvを積算することで、リードプル補正量Iip*を演算する構成とした。しかし、モータ回転角速度ゲインKωおよび車速ゲインKvはどちらか一方のみでも、またどちらもなくても勿論よい。
【0078】
・上記実施形態では、本発明を、リードプル補正量演算(ステップS102)の前に、リードプル補正開始判定(ステップS101)を行なう構成とした。しかし、リードプル補正開始判定(ステップS101)を行なわず、サンプリングn点と(n−1)点の差分処理後トルク値ΔT(n)の絶対値が、差分処理後トルク値の所定値ΔTs以下になった場合に、直ちにリードプル補正量演算(ステップS102)を行なう構成にしても勿論よい。
【符号の説明】
【0079】
1:電動パワーステアリング装置(EPS)、2:ステアリング、
3:ステアリングシャフト、4:ラックアンドピニオン機構、5:ラック軸、
6:タイロッド、7:転舵輪、8:コラムシャフト、
9:インターミディエイトシャフト、10:ピニオンシャフト、11:ECU、
12:モータ、13:EPSアクチュエータ(操舵力補助装置)、14:減速機構、
15:トルクセンサ、16:車速センサ、18:モータ回転角センサ、
21:マイコン、22:電流指令値演算部、23:モータ制御信号出力部、
24:駆動回路、25:電流センサ、26:基本アシスト制御部、
27:リードプル補正制御部、28:加算器、30:ローパスフィルタ、
30p:ローパスフィルタ入力側、30q:ローパスフィルタ出力側、
31:リードプル補正判定部、32:切替部、接点:32a、32b、32c、
33:メモリ、34:前段リードプル補正量Iip**生成マップ、
35:モータ回転角速度ゲインKω生成マップ、36:車速ゲインKv生成マップ、
37:微分器、38:乗算器、40:車両、41:走行路、42、43:カント路、
W1〜W4:前後左右車輪速センサ、
V:車速、τ:操舵トルク、θ:モータ回転角、
w1(n)〜w4(n):前後左右車輪速、
I:実電流値、ω:モータ回転角速度、ws1:左右車輪速差所定値、
Iq*:電流指令値、Ias*:基本アシスト制御量、
Iip*:リードプル補正量、Iip**:前段リードプル補正量、
Iu,Iv,Iw:相電流値、Vu*,Vv*,Vw*:相電圧指令値、
Kω:モータ回転角速度ゲイン、Kv:車速ゲイン、
T:処理後トルク、T(P):サンプリングP点の処理後トルク値、
Tps:処理後トルク値の所定値、
ΔT(P):サンプリングP点と(P−1)点の差分処理後トルク値、
ΔTs:差分処理後トルク値の所定値、
T(n):サンプリングn点の処理後トルク値、
ΔT(n):サンプリングn点と(n−1)点の差分処理後トルク値、
T(m):サンプリングm点の処理後トルク値、
ΔT(m):サンプリングm点と(m−1)点の差分処理後トルク値、
ΔTss:差分処理後トルク値の所定値、
P:処理後トルク値取込みカウンタ、Ps:処理後トルク値取込みカウンタ所定値、
T1:リードプル補正開始判定タイマ、Tf:リードプル補正開始判定タイマ所定値、
T2:リードプル補正量演算タイマ、Tr:リードプル補正量演算タイマ所定値、
Kf:リードプル補正開始判定カウンタ、
Kfs:リードプル補正開始判定カウンタ所定値、
FLGkr:リードプル補正開始判定フラグ、
FLGkrs:リードプル補正制御開始フラグ、
n:リードプル補正量演算用処理後トルク値取込みカウンタ、
ns:リードプル補正量演算用処理後トルク値取込みカウンタ所定値、
m:リードプル補正制御カウンタ、
Kr:リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタ、
Krs:リードプル補正量演算用適用処理後トルク値取込みカウンタ所定値、
Tsum:リードプル補正量演算用全処理後トルク加算値、
Tave:リードプル補正量演算用全処理後トルク平均値、
R:リードプル補正量制御を実施するうえで、良好な操舵フィーリングを得られる値、
Tcon:リードプル補正量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵系にアシスト力を付与するためのモータを有する操舵力補助装置と、
前記モータに電力を供給し、前記操舵力補助装置の作動を制御する制御手段と、
操舵トルクを検出するトルクセンサと、
車速を検出する車速センサと、
前記トルクセンサから検出された操舵トルクの高周波成分を除去し、処理後トルクを出力するローパスフィルタと、
前記処理後トルクの変化量を検出する変化量検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記操舵トルクと前記車速に基づき基本アシスト力を算出し、前記基本アシスト力に応じて前記操舵力補助装置の作動を制御する通常制御を実行し、
前記制御手段は、前記変化量が所定値以内であり、かつ前記変化量が所定値以内である時間が所定時間以上継続した場合には、前記基本アシスト力に対して、前記アシスト力を漸増するように前記操舵力補助装置の作動を制御するリードプル制御を実行すること、
を特徴とした電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記制御手段は、リードプル制御において、時間経過とともに漸増する付加アシスト力を演算し、前記基本アシスト力に前記付加アシスト力を加算した値に応じて前記操舵力補助装置の作動を制御すること、を特徴とした請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記制御手段は、リードプル制御により前記アシスト力の漸増を開始した後に、前記操舵トルクが零となった時点で、前記アシスト力をその時点の値に固定すること、を特徴とした請求項1又は請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記制御手段は、リードプル制御中に前記アシスト力を固定した後、前記変化量が所定値より大きくなった場合には、通常制御を実行すること、を特徴とした請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−82424(P2013−82424A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61560(P2012−61560)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】