説明

電動ファン装置

【課題】ブラシレスモータのロータとシロッコファンのディスク部との間の間隙が比較的大きくても、ステータの冷却を十分に行うことができる電動ファン装置を提供すること。
【解決手段】回転可能に立設した回転軸12と同軸に設けられたステータ13と、回転軸12に一体的に設けられてステータ13の周囲を回転するロータ14とを有するブラシレスモータ10と、このブラシレスモータ10を覆うと共に回転軸12に固定されたディスク部21と、このディスク部21の外縁から立設した多数の羽根部22とを有するシロッコファン20とを備えた電動ファン装置Fであって、ロータ12とディスク部21との間に、電気回路基板(基板)11側からロータ14とディスク部21との間に流れ込む空気を遮断する通気制御板(通気制御部材)30を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウタロータ型ブラシレスモータと、このモータを駆動源とする遠心型ファンであるシロッコファンとを備える電動ファン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アウタロータ型のブラシレスモータと、このブラシレスモータを覆うディスク部を有するシロッコファンとを備え、ブラシレスモータのロータにステータ冷却用の排気開口を設けると共に、ディスク部に排気開口からの空気が通る通気開口を設けた電動ファン装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2002−540754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年では、電動ファン装置を軽量化するためにシロッコファンの内部に配置されるブラシレスモータを小型化する傾向があった。
【0004】
一方、出力である送風力は従来と同程度確保する必要があるため、シロッコファンを小型化することは難しかった。
【0005】
そのため、ブラシレスモータのみを小型化して電動ファン装置の軽量化を図ることが考えられるが、この場合では、ブラシレスモータのロータとシロッコファンのディスク部との間の間隙が大きくなってしまい、この間隙に基板側からの空気が流れ込みやすくなるおそれがあった。
【0006】
そして、ロータとステータとの間に空気が流れにくくなり、ステータの冷却を十分に行うことができないという問題が生じることが考えられた。
【0007】
そこで、この発明は、ブラシレスモータのロータとシロッコファンのディスク部との間の間隙が比較的大きくても、ステータの冷却を十分に行うことができる電動ファン装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明に係る電動ファン装置は、基板から回転可能に立設した回転軸と、該回転軸と同軸に設けられたステータと、前記回転軸に一体的に設けられると共に前記基板と所定の間隔をあけて前記ステータの周囲を回転するロータとを有するブラシレスモータと、該ブラシレスモータを覆うと共に前記回転軸に固定されたディスク部と、該ディスク部の外縁から軸方向に立設した多数の羽根部とを有し、前記基板と所定の間隔をあけて回転するシロッコファンとを備え、前記ロータには、前記基板側から前記ステータと前記ロータとの間を通った空気を排出する排気開口が形成され、前記ディスク部には、前記排気開口から流出した空気が通る通気開口が形成され、前記ロータと前記ディスク部との間に、前記基板側から前記ロータと前記ディスク部との間に流れ込む空気を遮断する通気制御部材を設けたことを特徴としている。
【0009】
また、前記通気制御部材は、前記ロータ又は前記ディスク部のいずれか一方と一体的に形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、前記通気制御部材は、前記排気開口の前記基板側部分と、前記通気開口の前記基板側部分との間に架設されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、通気制御部材により基板側からロータとディスク部との間に流れ込む空気を遮断することができるので、ブラシレスモータのロータとシロッコファンのディスク部との間の間隙が比較的大きくても、基板側からの空気をロータとステータとの間に流入させることが可能となる。これにより、ステータの冷却を十分に行うことが可能となる。
【0012】
また、通気制御部材がロータ又はディスク部のいずれか一方に固定されているので、ガタツキが生じず、安定した状態で空気流の制御を行うことが可能となる。
【0013】
また、通気制御部材が排気開口の基板側部分と、通気開口の基板側部分との間に架設されたので、排気開口から流出した空気を円滑に通気開口へと向かわせることが可能となり、空気の流れがスムーズになって、ステータの冷却をより効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る電動ファン装置の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示す本発明に係る電動ファン装置Fは、図外の自動車のラジエータやコンデンサ等の冷却を行うために用いられている。
【0016】
この電動ファン装置Fは、図1に示すように、ブラスレスモータ10と、このブラシレスモータ10により駆動されるシロッコファン20とを備えている。
【0017】
ブラシレスモータ10は、電気回路基板(基板)11から回転可能に立設した回転軸12と、この回転軸12と同軸に設けられたステータ13と、回転軸12に一体的に設けられると共に電気回路基板11と所定の間隔をあけてステータ13の周囲を回転するロータ14とを有している。
【0018】
すなわち、このブラシレスモータ10は、回転子であるロータ14が固定子であるステータ13の外方に配置された、いわゆるアウタロータ型ブラシレスモータとなっている。
【0019】
電気回路基板11は、図示しない駆動回路や制御回路等の配線パターンや、電解コンデンサ11a等が設けられ、回路保護ケース11b内に収容されている。
【0020】
この回路保護ケース11bのアッパケース11b´にはボス部11cが形成され、このボス部11cには回転軸12の一端部12aが挿入されている。
【0021】
回転軸12は、回路保護ケース11bのボス部11cから立ち上がった軸保持部11dに軸受部12bを介して回転自在に保持されており、これにより、この回転軸12は、電気回路基板11に対して回転可能に立設している。
【0022】
なお、回路保護ケース11b内に挿入された回転軸12の一端部12aには、センサ磁石15が固定されている。このセンサ磁石15は、電気回路基板11に実装された図示しないホール素子と協働して後述するロータ14の永久磁石14aの回転位置を検出するようになっている。
【0023】
ステータ13は、金属薄板を積層させたコア13aと、このコア13aに巻かれたコイル13bとを有している。
【0024】
ここで、コア13aは、軸受部12bを介して回転軸12を回転自在に支持する軸保持部11dの外周に固定されている。これにより、ステータ13は、回転軸12と同軸に設けられることとなる。
【0025】
ロータ14は、ステータ13の外側に近接配置された複数の永久磁石14a,…と、これらの永久磁石14a,…を保持すると共に、ステータ13を覆って回転軸12に固定されたヨーク14bとを有している。
【0026】
ヨーク14bは、円筒状の本体部16aと、この本体部16aの一方の端部を閉鎖する閉鎖端部16bと、本体部16aと閉塞端部16bとの間を面取りするように傾斜した傾斜面部16cとを有している。
【0027】
そして、このヨーク14bは、本体部16aの他方の端部である開放端17を回路保護ケース11bに向けると共に、所定の間隔をおいた状態で、閉鎖端部16bの中心部16b´が回転軸12に固定されている。
【0028】
また、閉鎖端部16bと傾斜面部16cには、それぞれ複数の排気開口18,…が形成されている。
【0029】
この排気開口18は、電気回路基板11側であるヨーク14bの開放端17からステータ13とロータ14との間、すなわちヨーク14bの内部を通った空気が排出される部分である。
【0030】
一方、複数の永久磁石14aは、ステータ13を取り巻く本体部16aの内周面に、この本体部16aの周方向に沿って相異なる磁極を交互に配列された状態で取り付けられている。
【0031】
これにより、ロータ14は、回転軸12及びステータ13と同軸的に配置されると共に、永久磁石14aとステータ13との磁気相互作用により、ヨーク14bの開放端17と回路保護ケース11bとの間に間隔をおいた状態で、回転軸12と一体的に回転可能となっている。
【0032】
すなわち、ロータ14は、回転軸12に一体的に設けられると共に、回路保護ケース11b内の電気回路基板11と所定の間隔をあけてステータ13の周囲を回転することとなる。
【0033】
さらに、ヨーク14bの本体部16aと傾斜面部16cとの間には、シロッコファン20の後述するディスク部21に向かって突出した通気制御板(通気制御部材)30が設けられている。
【0034】
この通気制御板30は、本体部16aの外周面に一体的に固定されており、ヨーク14bを取り巻く環状を呈している。また、通気制御板30の先端部31は、ディスク部21の内周面に近接しており、ロータ14とディスク部21との間は通気制御板30により閉鎖されている。
【0035】
これにより、通気制御板30により、電気回路基板11側からロータ14とディスク部21との間に流れ込む空気は遮断されることとなる。
【0036】
なお、ここでは、ロータ14は磁性金属材料により形成され、通気制御板30は合成樹脂材料により形成されており、通気制御板30は、例えば接着剤等により固定されている。
【0037】
シロッコファン20は、ブラシレスモータ10を覆うと共に回転軸12に固定された円形のディスク部21と、このディスク部21の開放した円形縁部21aから軸方向に立設した多数の羽根部22,…とを有している。
【0038】
ディスク部21は、全体に碗状を呈しており、回路保護ケース11bに向かって開放し、閉鎖端部16b側からロータ14のヨーク14bを覆うように配置されている。また、このディスク部21は、円形縁部21aと回路保護ケース11bとの間に所定の間隔をおいた状態で、中心部21bが回転軸12に固定されている。なお、この中心部21bは、ヨーク14bの閉塞端部16bの中心部16b´よりも、回転軸12の先端部12c側で固定されている。
【0039】
さらに、このディスク部21には、複数の通気開口23,…が形成されている。
【0040】
通気開口23は、ヨーク14bに形成された排気開口18から流出した空気が通る部分であり、各通気開口23は、ロータ14を取り巻くようにディスク部21の周方向に沿って配置されている。また、この通気開口23は、ディスク部21に近接した通気制御板30の先端部31よりも中心部21b側に形成されると共に、通気制御板30の先端部31近傍に位置している。
【0041】
なお、図1に示すディスク部21では、中央部21b及びその近傍に、ヨーク14bの閉鎖端部16bとの間で内方へ張り出した複数の第一補強リブ24a,…が設けられている。この第一補強リブ24a,…により、ディスク部21の回転軸12への取り付け強度を高めることができる。
【0042】
また、ディスク部21の円形縁部21aと通気開口23との間には、内方へ張り出した複数の第二補強リブ24b,…が設けられている。この第二補強リブ24b,…により、ディスク部21の円形縁部21aの強度を高めることができる。
【0043】
羽根部22は、ディスク部21の円形縁部21aに一端が保持され、この円形縁部21aの周方向へ相互に間隔をおいて回転軸12と平行に配置されている。
【0044】
次に、本発明に係る電動ファン装置Fの作用について説明する。
【0045】
この電動ファン装置Fでは、回転軸12に固定されたセンサ磁石15により検出されたロータ14の永久磁石14aの位置に基づいて、電気回路基板11からステータ13のコイル13bに交番的に通電される。これにより、ロータ14の永久磁石14aに回転磁界が発生し、ヨーク14bと回転軸12とシロッコファン20とが一体的に回転する。
【0046】
このとき、シロッコファン20の回転に伴って、ヨーク14bの開放端17及びシロッコファン20のディスク部21の円形縁部21aと、回路保護ケース11bとの間の空間(以下、吸込空間という)S1が高圧になり、ディスク部21と複数の羽根部22,…との間の空間(以下、排気空間という)S2が負圧になる。
【0047】
そのため、高圧である吸込空間S1から、負圧である排気空間S2に向かって空気が移動する流れが生じる。
【0048】
このとき、空気は、回路保護ケース11bに向けて開放した本体部16aの開放端17から、ヨーク14bの本体部16a内に流入し、閉鎖端部16b及び傾斜面部16cに形成された複数の排気開口18,…からディスク部21に形成された複数の通気開口23,…を経て移動することとなる。
【0049】
ここで、ロータ14のヨーク14bには、ディスク部21に向かって突出した通気制御板30が設けられており、この通気制御板30によりロータ14とディスク部21との間は閉塞されて、この間に流れ込む空気は遮断される。
【0050】
これにより、ロータ14とディスク部21との間の間隙が比較的大きくても、吸込空間S1からの空気は、ディスク部21との間に入り込みにくくなってロータ14の内側に流れ込み、このロータ14に覆われたステータ13に向かって流入させることが可能となる。そして、ステータ13の冷却を十分に行うことができる。
【0051】
また、上述の実施の形態では、通気制御板30がロータ14の本体部16aの外周面に一体的に固定されている。
【0052】
これにより、通気制御板30が安定してロータ14と共に回転することができ、ガタツキが生じず、安定した状態で空気流の制御を行うことが可能となる。
【0053】
さらに、上述の実施の形態では、通気制御板30がヨーク14bの本体部16aと傾斜面部16cとの間から突出し、先端部31がディスク部21に形成された通気開口23の近傍に位置している。
【0054】
ここで、排気開口18は傾斜面部16cに形成され、通気開口23は通気制御板30の先端部31よりも中心部21b側に形成されている。
【0055】
すなわち、通気制御板30は、排気開口18の電気回路基板11側の部分と、通気開口23の電気回路基板11側の部分との間に架設されている。
【0056】
そのため、排気開口18から流出した空気を円滑に通気開口23へと向かわせることが可能となり、空気の流れがスムーズになって、ステータ13の冷却をより効率的に行うことができる。
【0057】
以上、この発明にかかる実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0058】
例えば、上述の実施の形態では、通気制御板30がロータ14のヨーク14bに一体的に固定されているが、これに限らない。
【0059】
図2に示すシロッコファン40では、ディスク部41に形成された複数の通気開口43,…の電気回路基板11側の縁部43aに、通気制御部材としての通気制御壁44が形成されている。
【0060】
この通気制御壁44は、ディスク部41からロータ14に向かって延在されており、先端部44aが、ヨーク14bの傾斜面部16cに形成された排気開口18に近接している。
【0061】
この場合であっても、通気制御壁44によりロータ14とディスク部41との間に、吸込空間S1から流れ込む空気が遮断され、ロータ14の内側に十分な空気が流れ込んでステータ13の冷却を行うことができる。
【0062】
さらに、通気制御壁44をディスク部41の通気開口43の縁部43aから延在させたことにより、樹脂の射出成形等で一体に形成することができて、生産性を向上させることが可能となる。
【0063】
さらに、上述の実施の形態では、電動ファン装置Fが自動車のラジエータ等の冷却用に用いられるものを示したが、本発明に係る電動ファン装置Fは、自動車用のものに限定されるものではなく、電車等の他の車両や、車両以外の産業機器等に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る電動ファン装置を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る電動ファン装置の他の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 ブラシレスモータ
11 電気回路基板(基板)
12 回転軸
13 ステータ
14 ロータ
20 シロッコファン
21 ディスク部
22 羽根部
30 通気制御板(通気制御部材)
F 電動ファン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板から回転可能に立設した回転軸と、該回転軸と同軸に設けられたステータと、前記回転軸に一体的に設けられると共に前記基板と所定の間隔をあけて前記ステータの周囲を回転するロータとを有するブラシレスモータと、
該ブラシレスモータを覆うと共に前記回転軸に固定されたディスク部と、該ディスク部の外縁から軸方向に立設した多数の羽根部とを有し、前記基板と所定の間隔をあけて回転するシロッコファンとを備え、
前記ロータには、前記基板側から前記ステータと前記ロータとの間を通った空気を排出する排気開口が形成され、
前記ディスク部には、前記排気開口から流出した空気が通る通気開口が形成された電動ファン装置であって、
前記ロータと前記ディスク部との間に、前記基板側から前記ロータと前記ディスク部との間に流れ込む空気を遮断する通気制御部材を設けたことを特徴とする電動ファン装置。
【請求項2】
前記通気制御部材は、前記ロータ又は前記ディスク部のいずれか一方と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動ファン装置。
【請求項3】
前記通気制御部材は、前記排気開口の前記基板側部分と、前記通気開口の前記基板側部分との間に架設されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動ファン装置。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−177945(P2009−177945A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13741(P2008−13741)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】