説明

電動ブレーキ装置及びその気密性検出方法

【課題】
本発明は、耐環境性に優れた、信頼性の高い電動ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の電動ブレーキ装置は、回転トルクを発生する電動モータ1311と、前記回転トルクの回転運動を直線運動に変換してブレーキパッド1306,1307を移動させる回転直動変換機構1413と、前記モータと前記回転直動変換機構を備えた筐体と、空気を通すことができる空気連通部材1603を備えたハーネス600とを備え、前記ハーネスの前記空気連通部材を介して、前記筐体の内部の気圧を所定気圧以下に保つことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータによって制動力を発生する電動ブレーキ装置及びその気密性検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチスキッドや車両姿勢制御,車間距離追従制御などの様々なブレーキアプリケーションの制御性を高めるため、従来の油圧制御を電気的制御に置き換えた電動ブレーキ装置が開発されている。
【0003】
この電動ブレーキは、車輪とともに回転するディスクロータに油圧を利用してブレーキパッドを押圧し、制動力を発生する点は機械式ブレーキと同様だが、前述のように油圧を用いることなく、電動モータの出力によって制動力を発生するブレーキである(例えば特許文献1参照)。具体的には、電動モータの出力トルクを直線運動の力に変換し、この直線運動の力に基づき、ブレーキパッドを車輪とともに回転するディスクロータを押圧して制動力を発生する。
【0004】
【特許文献1】特開2003−137081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動ブレーキ装置は、ホイール付近に設置されるため、外部から水などがかかるおそれがある。そのため、水などが電動ブレーキ装置内部に浸入しないように、電動ブレーキ装置を密閉構造とする必要がある。また、電動ブレーキ装置は、ブレーキパッドをディスクロータに押圧することで摩擦熱が発生し、急激な温度変化が発生する。そのため、電動ブレーキ装置は、装置内部の気圧変化に対応した構成とする必要がある。
【0006】
しかしながら、従来技術は密閉構造、及び装置内部の気圧変化に対応した構成については十分に考慮されているとは言えない。
【0007】
そこで本発明は、このような厳しい環境で使用される電動ブレーキ装置の耐環境性を高め、信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動ブレーキ装置は、回転トルクを発生するモータと、回転トルクの回転運動を直線運動に変換してブレーキパッドを移動させる回転直動変換機構と、前記モータと前記回転直動変換機構を備えた筐体と、空気を通すことができる空気連通部材を備えたハーネスとを備え、前記ハーネスの前記空気連通部材を介して呼吸する構造としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐環境性が向上し、信頼性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の電動ブレーキ装置の実施形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図2は、本発明の一実施例をなす電動ブレーキ装置を搭載した車両のブレーキシステムの概略構成図である。
【0012】
第1電動ブレーキ装置1201は、右側の前輪1211側に、車軸1221に近接して搭載される。第2電動ブレーキ装置1202は、左側の前輪1212側に、車軸1221に近接して搭載される。第3電動ブレーキ装置1203は、右側の後輪1213側に、車軸1222に近接して搭載される。第4ブレーキ装置1204は、左側の後輪1214側に、車軸1222に近接して搭載される。
【0013】
各電動ブレーキ装置1201〜1204は基本的な構造は同じであるが、前輪側に対応する第1電動ブレーキ装置1201及び第2電動ブレーキ装置1202は、後輪側に対応する第3ブレーキ装置1203及び第4電動ブレーキ1204より大きな制動力を発生するように構成されることが好ましい。
【0014】
前輪の車軸1221および後輪の車軸1222には、それぞれの車軸に固定されたディスクロータ1231〜1234が設けられる。図2では図示されていないが、各電動ブレーキ装置の機構部1241〜1244は、ディスクロータ1231〜1234の各面に対向する一対のブレーキパッドを備える。さらに、機構部1241〜1244に備えられた電動モータは回転トルクを発生し、回転トルクに基づきブレーキパッドで各ディスクロータ1231〜1234を挟むように押圧することによって制動力を発生させる。
【0015】
各電動ブレーキ装置1201〜1204において、各電動モータを駆動するための電流を制御する電気回路部1251〜1254は、それぞれの機構部1241〜1244に固定される一体構造になっている。電気回路部1251〜1254は、車軸方向において、機構部1241〜1244に対し、ブレーキパッドとは反対側の面に取り付けられる。
【0016】
前輪側の第1電動ブレーキ装置1201および第2電動ブレーキ装置1202には、第1バッテリ1261から第1電源ライン1271を介して電力が供給される。後輪側の第3電動ブレーキ装置1203および第4電動ブレーキ装置1204には、第2バッテリ
1262から第2電源ライン1272を介して電力が供給される。
【0017】
なお、右前輪の第1電動ブレーキ装置1201および左後輪の第4電動ブレーキ装置
1204には第1バッテリ1261から電力が供給され、左前輪の第2電動ブレーキ装置1202および右後輪の第3電動ブレーキ装置1203には第2バッテリ1262から電力が供給されるようにしてもよい。電源ラインを2系統にすることで一方の電源ラインに異常が発生しても他方の電源ラインによる制動が可能で、安全性が向上する。
【0018】
図2に示した車両のブレーキシステムにおいて、ブレーキペダル1281のストロークまたはペダル踏力に関する情報は、ペダル操作量検出器1282により検出され、データ信号線1290を介して上位制御回路1299に入力される。上位制御回路1299は、例えば車室内に配置され、各電動ブレーキの電気回路部に対し、ブレーキシステムとして上位の制御処理を行う。
【0019】
上位制御回路1299は、第1〜第4電動ブレーキ装置1201〜1204から、それぞれデータ信号線1291〜1294を介して、第1〜第4電動ブレーキ装置1201〜1204の状態、たとえば押し付け力の現在値,動作モード現在値の情報等を受信する。さらに電動モータの状態を監視しながら、ブレーキペダル1281のストロークまたはペダル踏力に関する情報に応じた制御信号をデータ信号線1291〜1294を介して、各電動ブレーキ装置1201〜1204に送信し、各電動ブレーキ装置1201〜1204を制御する。なお、上位制御装置1299は、車室内に配置される。
【0020】
上述のように、電動ブレーキ装置は、発生させるべきブレーキ指令を電気信号として取得し、その信号変化に応じてブレーキ力を制御できる。この電気信号は、アナログ信号や通信化された信号など、どのような形態でも実現することが可能である。
【0021】
なお、上位制御回路1299は、各電動ブレーキ装置1201〜1204をそれぞれ単独に制御したり、前輪側の第1電動ブレーキ装置1201と第2ブレーキ装置1202を一グループとするとともに後輪側の第3電動ブレーキ装置1203と第4ブレーキ装置
1204を他のグループとして各グループを制御したり、あるいは前輪側の第1電動ブレーキ装置1201と後輪側の第4電動ブレーキ装置1204を一グループとするとともに前輪側の第2電動ブレーキ装置1202と後輪側の第3電動ブレーキ装置1203を他のグループとして各グループを制御したりしてもよい。グループ分けして制御することで、制御の応答性の改善,制御回路の処理負荷低減,フェールセーフの処理機能の増大といった効果が得られる。
【0022】
このような構成からなる自動車の電動ブレーキ装置1201〜1204は、たとえばサスペンション等を介することなく、車体または車軸に直接取り付けられることから振動による影響を受けやすく、また、雨天時の走行によって水がかかりやすいという環境下で使用されることになる。
【0023】
また、この実施例において電動ブレーキ装置1201〜1204は、上述したように機構部1241〜1244と、多数の半導体装置を含む電気回路部1251〜1254が一体に構成されている。半導体装置は熱によって特性が変化することから、車輪と共に回転するディスクロータ1231,1232に対する機構部1241〜1244内のブレーキパッドの押圧によって発生する高熱の摩擦熱が該電気回路部1251〜1254へ伝導されるのを極力抑制する必要が生じる。また、半導体装置がそれ自体で発生する熱も効率よく放散させる必要が生じる。
【0024】
図3は、図2の電動ブレーキ装置の概念図である。以下、第1電動ブレーキ装置1201を代表例として、電動ブレーキ装置を説明する。
【0025】
電動ブレーキ装置1201は、互いに対向して配置される一対のブレーキパッド1306,1307を備える。各ブレーキパッド1306,1307の間には、車軸の回転に伴って回転するディスクロータ1231の一部が配置される。
【0026】
電動ブレーキ装置1201は、機構部1241と電気回路部1251とを互いに一体化して構成される。機構部1241と電気回路部1251は領域的に独立であるため、機構部1241と電気回路部1251を構造的に分離させることも可能である。
【0027】
機構部1241は、筐体1301内に、たとえば三相モータからなる電動モータ1311と、電動モータ1311の回転を減速する減速機1321と、減速機1321によって減速された電動モータ1311の回転運動を直線運動に変換してピストン1331を進退動させる回転直動変換機構1326を備える。
【0028】
ブレーキパッド1307は、ピストン1331に取り付けられ、ピストン1331の推力によりディスクロータ1231を一方の面側から押圧する。この際に、ディスクロータ1231の一方の面側からの押圧力を反力として電動ブレーキ装置1201が図中矢印α方向に移動することにより、ブレーキパッド1306がディスクロータ1231を他方の面側から押圧する。
【0029】
機構部1241は、パーキングブレーキ(PKB)機構1341を備える。パーキングブレーキ機構1341は、ピストン1331がディスクロータ1231に推力を供給している状態のまま電動モータ1311の回転を止めることにより、電動モータ1311に電力を供給することなく、制動力を保持することができる。
【0030】
電動モータ1311の近傍には、電動モータ1311の回転角を検出する回転角検出センサ1351,電動モータ1311の駆動力によって生じる推力を検出する推力センサ
1353、及び電動モータ1311の温度を検出する温度センサ1355が配置される。回転角検出センサ1351,推力センサ1353、及び温度センサ1355の出力信号は、電気回路部1251内に配置される下位制御回路1399に出力される。
【0031】
電気回路部1251は、車体側に配置されるバッテリ1261から電力供給を受ける。また、エンジンコントロールユニット1381,ATコントロールユニット1383,ペダル操作量検出器1282等が接続されたCAN(Controller Area Network) を介して、あるいは該CANから上位制御回路1299を介して、種々の制御信号を取得する。
【0032】
電気回路部1251は、インバータ回路1391及び下位制御装置1399を備える。インバータ回路1391は、電動モータ1311に通電する電流を制御するための回路である。下位制御回路1399は、CAN経由により制御信号を取得し、さらに機構部1241側からの回転角検出センサ1351,推力センサ1353、及び温度センサ1355等の出力情報信号を取得し、これらの信号に基づいてインバータ回路1391を制御する。
【0033】
電動モータ1311は、インバータ回路1391から電力の供給を受け、回転トルクを発生し、減速機1321及び回転直動変換機構1326を介して、ピストン1331に所定の推力を発生させる。なお、図中符号1395は車両側の構造物を示している。
【0034】
図4は、図3の電気回路部1251の回路構成図である。
【0035】
図中、太線枠1251は図3に示された電気回路部1251に相当し、一点鎖線枠1391は図3に示されたインバータ回路1391に相当する。図中、点線枠1503は、機構部1241に相当する。
【0036】
図4に示された機構部1241内回路及び電気回路部は、金属製の筐体で被われ、飛び石等の外的傷害の要因から保護される。また、伝熱性の高い金属製の筐体を用いることにより、各回路等から発生する熱の放熱を図ることができる。さらに、遮蔽性の高い金属製の筐体を用いることにより、電磁波等に対するシールド効果を備える。
【0037】
電気回路部1251には、車両内の電源ラインを介して供給される電力が供給される。フィルタ回路1521は、リレー1519を介して電気回路部1251内に供給される電力のノイズを除去し、ノイズが除去された電力を三相モータインバータ回路1517に供給する。
【0038】
電源回路1511により安定化された電力(VCC,VDD)は、中央制御回路(CPU)1599に供給される。なお、電源回路1511からの電源(VCC)は、VCC高電圧検知回路1513によって検知される。VCC高電圧検知回路1513は、電気回路部
1251内の素子が誤作動を生じる程度の高電圧を検知した場合、フェールセーフ回路
1515を動作させ、三相モータインバータへの電力供給を遮断する。
【0039】
フェールセーフ回路1515は、後述の三相モータインバータ回路1517に供給する電力をスイッチングするリレー1519を動作させる。VCC高電圧検知回路1513によって高電圧が検知された場合、電力の供給をOFF状態にする。
【0040】
中央制御回路1599は、上位制御回路1299からの制御信号を、CAN通信インターフェース回路1523を介して取得し、また機構部1241側に配置された推力センサ1353,回転角検出センサ1351及び温度センサ1355からの出力信号を、それぞれ、推力センサインターフェース回路1525,回転角検出センサインターフェース回路1527及び温度センサインターフェース回路1529を介して取得する。電動モータ
1311の作動状態に関する情報等を各種センサから取得し、上位制御回路1299からの制御信号に基づきフィードバック制御をすることにより、電動モータ1311に適切な回転トルクを発生させる。
【0041】
三相モータインバータ回路1517には、相電流モニタ回路1533および相電圧モニタ回路1535が具備される。相電流モニタ回路1533および相電圧モニタ回路1535は、それぞれ相電流および相電圧を監視し、監視結果を中央制御回路1599に出力する。中央制御回路1599は、監視結果に応じて、三相モータプリドライバ回路1531を適切に動作させる。
【0042】
なお、三相モータインバータ回路1517は、電動モータ1311を駆動させる電流および電圧を制御することから、出力が比較的大きな半導体装置を内蔵する。このため、半導体装置の動作によって高熱が発生することになるが、後に詳述する構成によってその対策がなされる。
【0043】
また、中央制御回路1599は、上位制御回路1299からの制御信号、および各センサの検出値等に基づいて、パーキングブレーキ(以下、PKB)ソレノイドドライバ回路1537を介して、機構部1241内のPKBソレノイド1342を動作させ、パーキングブレーキを作用させる。PKBソレノイドドライバ回路1537は、三相モータインバータ回路1517に供給される電力の一部が供給される。
【0044】
また、電気回路部1251は、中央制御回路1599との間で信号の送受がなされる監視用制御回路1539、たとえば故障情報等が格納されたEEPROMからなる記憶回路1541を備える。
【0045】
電気回路部1251は、機構部1241との間での結線は多いが、機構部1241以外の回路(バッテリ1261,上位制御装置1299)との間の結線は極めて少ない。従って、機構部1241と電気回路部1251との一体構造からなる電動ブレーキ装置1201の製造工程において、機構部1241と電気回路部1251との間の複雑な結線を行うことができる。そして、電動ブレーキ装置1201が完成した後に、電動ブレーキ装置1201を車体に取り付ける際には、バッテリ1261あるいは上位制御装置1299との間の結線を極めて容易に行うことができる。
【0046】
図1は、図3の電動ブレーキ装置の具体的な内部構成の断面図である。
【0047】
図1中の線分X−Xは、機構部1241と電気回路部1251の境界を示し、線分X−Xの左側は機構部1241を、右側は電気回路部1251である。
【0048】
太線枠1341内は図3に示されたパーキングブレーキ機構1341に、太線枠1321内は図3に示された減速機1321に、太線枠1326内は回転直動変換機構1326に相当する。図1において、図3において付した符号と同一の符号の部分は、図3で示した部材と同一の部材を示す。
【0049】
電動モータ1311は、ブラシレスの三相モータであり、筐体1301に固定されたステータと、このステータ内に配置されたロータ1342とを備える。なお、ステータは、ステータ自体が発熱した際に効率的に放熱できるように、金属製筐体1301と接触するように配置される。
【0050】
電動モータ1311は、上位制御装置1299からの指令に応じてロータ1342を所望トルクで所望角度だけ回転させるように作動する。ロータ1342の回転角は、減速機1321と電動モータ1311との間に設置され、回転角度センサ1351によって検出される。
【0051】
減速機1321は、電動モータ1311の回転を減速し、トルクを増大させる。そのため、電動モータ1311は小型のものを用いることができる。
【0052】
スラストプレート1421は、機構部1241内の電気回路部1251側に配置され、ピストン1331の推力を反力として受ける機能を有する。推力センサ1353は、スラストプレート1241の中央部に配置される。
【0053】
さらに、スラストプレート1421は、筐体1301の端面(図中線分X−Xの部分)に対して、ブレーキパッド部側へ若干奥まった箇所に配置される。筐体1301を除いた機構部1241の構成部材と電気回路部1251との間には、隙間(空間)が形成される。一方、推力センサ1353は、筐体1301の端面(図中線分X−Xの部分)を越えて電気回路部1251側に若干突出する。このため、電気回路部1251に備えられたインターフェイスモジュール(以下、I/Fモジュール)200には、推力センサ1353との干渉を回避するように凹陥部が形成される。
【0054】
電動ブレーキ装置ではブレーキパッドをディスクロータに押圧することで摩擦熱が発生する。一方これらの摩擦熱を外部に放熱する構造となっているため、急速に冷却できる構造とすることが必要である。筐体1301を含む機構部1241の各構成部材の大部分は、金属製であり、熱の伝導効率が高い。そのため、ブレーキパッド部(ブレーキパッド
1306,1307およびその周辺部)からの熱は、周辺の機構部1241に伝達され、筐体1301を介して外部へ放熱され易い。
【0055】
また、電気回路部1251は、機構部1241を間にして、ブレーキパッド部と反対側の面に設けられるため、電気回路部1251へ熱の伝達が少なくなる。さらに、機構部
1241の構成部材と電気回路部1251との間には、上述した隙間(空間)が形成されるため、機構部1241から電気回路部1251への熱の伝達はさらに少なくなる。
【0056】
また道路上に水溜りが有ると、水が電動ブレーキ装置にかかることが起こりうる。このため他の機器と異なり、急激な温度変化が発生する。このことにより電動ブレーキ装置の内部の空気が膨張または収縮し、電動ブレーキ装置内の気圧が急変する。電動ブレーキ装置は外部から水などがかかるような厳しい条件で使用されるので、電動ブレーキ装置自体は機密構造であることが望ましい。一方、装置内の気圧の急変は他の機器に比べ非常に激しく、筐体を密閉構造とするための手段、例えばシール材等の密閉機能を低下させるおそれがある。また、急激な温度変化による装置内の気圧の変動幅が大きく、電動ブレーキ装置内部に水蒸気の問題が発生する恐れがある。
【0057】
電動ブレーキ装置1201の内部には空気を有する複数の空間が存在する。例えば、図1に示すスラストプレート1421とI/Fモジュール200との間の空間Aや、I/Fモジュール200と後述するインナーケース300との間の空間Bや、後述する電気回路部1251の電子部品搭載領域316等である。
【0058】
これらの空間内に外気,水及び泥等が浸入しないように、電動ブレーキ装置の内部は密閉構造としている。例えば、移動部材(ピストン)1331を摺動させるための孔部と移動部材1331との間に設置されたシール部材1340や、I/Fモジュール200と機構部1241とを気密にするためのシール202や、蓋800とアウターケース500とを気密にするための接着等によって電動ブレーキ装置内部は密閉構造とされている。
【0059】
しかし、電動ブレーキ装置は、車両の制動時におけるブレーキパッド1306,1307とディスクロータ1231との摩擦熱により非常に高温となり、また非制動時には、時間とともに外気温まで冷やされる。このような温度変化に連動して、前述の電動ブレーキ装置内部の空間の気圧が大きく変化する。
【0060】
気圧が大きく変化する使用環境下では、電動ブレーキ装置の内部の空間を満たす空気が膨張または収縮を繰り返すことにより、前述のシール部材による密閉機能を低下させるおそれがある。また、電動ブレーキ装置内部における種々の金属部材を腐食させる水蒸気の問題が発生する場合がある。そこで、本実施例の電動ブレーキ装置は、ハーネス600に備えられた空気連通部材を介して呼吸することができる構造とした。
【0061】
図5は、電気回路部1251の各構成部材の分解斜視図である。
【0062】
I/Fモジュール200は、機構部1241の筐体1301に取り付けられ、機構部
1241側に配置された端子(図示せず)と電気回路部1251の端子と電気的に接続するための中継機能を有する。また、I/Fモジュール200の素材は合成樹脂であるため、ブレーキパッド部からの熱の伝達を少なくすることができる。
【0063】
さらに、I/Fモジュール200は、機構部1241の側に配置された端子を貫通させるための開口部を有する。この開口部は、電気回路部1251と機構部1241の内部空間を、I/Fモジュール200を介して同一空間とする連通孔としての機能を有する。
【0064】
シール202は、I/Fモジュール200の機構部1241側の面の周辺に、I/Fモジュール200の中央部を囲むように配置され、I/Fモジュール200は、シール202を介して機構部1241の筐体に取り付けられるため、機構部1241とI/Fモジュール200との間からの水分や異物等の浸入が阻止される。
【0065】
インナーケース300は、I/Fモジュール200に取り付けられる。また、インナーケース300の素材は合成樹脂であるため、ブレーキパッド部からの熱の伝達が極力少なくすることができる。インナーケース300は、シール302を介してI/Fモジュール200に取り付けられるため、インナーケース300とI/Fモジュール200との間からの水分や異物等の浸入を阻止することができる。
【0066】
インナーケース300は、後述する電子部品を搭載する基板としての機能を有する。インナーケース300のI/Fモジュール200の側の面には、アルミ製の金属板402および制御回路基板404が、順次搭載される。アルミ製の金属板402により、捻り等による制御回路基板404の損傷を回避することができる。
【0067】
インナーケース300とI/Fモジュール200とが互いに対向する面には、シール
302を含む周辺部を除く部分に凹陥部(図示せず)が形成される。この凹陥部内に、金属板402および制御回路基板404は配置される。
【0068】
壁部305は、インナーケース300のI/Fモジュール200と反対側の面において、その面の領域をほぼ二分割した一方の領域を囲むように形成される。壁部305に囲まれた領域(以下、電子部品搭載領域)には、比較的大型の電子部品406、たとえばコンデンサあるいはリアクタンス等が搭載される。壁部305の外側の領域には、領域の一部に比較的面積の大きな透孔306が形成される。透孔306の内部には、パワーモジュール408が配置される。
【0069】
パワーモジュール408は、図5に示された三相モータインバータ回路118,相電流モニタ回路134、および相電圧モニタ回路136を樹脂モールドによりモジュール化したものである。
【0070】
さらに、インナーケース300のI/Fモジュール200と反対側の面には、アウターケース500が取り付けられる。アウターケース500は、開口部504を備える。この開口部504により、インナーケース300の電子部品搭載領域316が外部から目視可能となり、作業性が向上する。さらに、アウターケース500は、インナーケース300の周側面,壁部305の周側面,透孔306,透孔306の周辺をそれぞれ被うように取り付けられる。アウターケース500は、金属製、たとえば表面にアルマイト処理がなされたアルミ合金で形成され、電気回路部1251の外周面の大部分を被い、外部の衝撃から回路を保護する。
【0071】
アウターケース500のインナーケース300側の面であって、透孔306および透孔306の周囲に対向する部分には、シール502が透孔306を囲むように配置される。シール502は、開口部504から透孔306を通して、インナーケース300のI/Fモジュール200側の面に水分が浸入するのを防止する。
【0072】
電源あるいは制御信号等を供給するハーネス600は、電動ブレーキ装置の外部側からハーネスストッパ602によって、アウターケース500に固定される。ハーネス600内の各配線(図示せず)は、インナーケース300の壁部305に形成される透孔(図示せず)を通して、壁部305内の電子部品搭載領域316に導かれる。
【0073】
I/Fモジュール200,インナーケース300,アウターケース500は、それぞれの四隅に形成されたねじ孔に、アウターケース500側から挿入されるボルト700a,700b(図示せず),700c,700dによって一体化され、かつ機構部1241に取り付けられる。
【0074】
カバー800は、アウターケース500の開口部504を被うように、アウターケース500にねじ止めされる。カバー800の素材は、金属、たとえばアルミ合金である。これにより、外的な障害(たとえば飛び石)に対する損傷の防止を図ることができる。
【0075】
図6は、アウターケース500の詳細な構成図である。また、図6(a)は、インナーケース300側から観た斜視図であり、図6(b)は、インナーケース300の反対側から観た斜視図である。
【0076】
アウターケース500の外輪郭は、インナーケース300の外輪郭とほぼ同様の形状である。大径孔512a,512b,512c,512dが、アウターケース500のそれぞれの四隅に形成される。この大径孔に前述のボルト700a,700b,700c,
700dが挿入され、電気回路1251を機構部1241に固定される。
【0077】
図6(a)に示されるアウターケース500の内側面の開口部504を除く部分には、略矩形状の溝502aが形成され、前述のシール502(図示せず)が埋め込まれる。溝502aで囲まれる領域内には、後述するパワーモジュール408を固定するためのねじ孔510a,510bが形成される。
【0078】
ねじ孔511a,511bは、ねじ孔510a,510bのそれぞれに近接するように形成される。ねじ孔511a,511bを溝502aで囲まれる領域内に位置づけるため、溝502aは、ねじ孔511a,511bの箇所を迂回するように形成される。ねじ孔511a,511bは、図7にて示されるねじ孔310a,310bと同軸配置される。さらに、図9にて示されるねじ320a,320bによって、アウターケース500は、インナーケース300に固定される。
【0079】
アウターケース500の外面には、図6(b)に示される突出体508が形成される。このため、アウターケース500の外気と触れる表面積が大きくなり。放熱効果を増大させることができる。
【0080】
壁部505は、インナーケース300の壁部305の外方に、壁部305と当接して形成され、インナーケース300の壁部305とともに電子部品搭載領域316の外枠となる。これにより、電子部品搭載領域316の外枠の機械的強度が向上する。
【0081】
開口部505bが形成された壁部505には、上端面が連結されるブリッジ505aが形成される。アウターケース500をインナーケース300に組み込んだ場合、図7にて後述するようにインナーケース300の突壁部305aが、開口部505bに位置づけられる。さらに、ブリッジ505aは、突壁部305aの周側面を被っている。
【0082】
壁部505の周囲の一部には、開口部504を塞ぐカバー800をねじ止めするためのねじ孔512a,512b,512cが、形成される。
【0083】
図6(b)に示されるように、後述するハーネス600を固定するハーネス固定部506が、アウターケース500の外側面に形成される。また、突出した台部の中央には、開口部504側に指向するように溝506aが形成される。ハーネス固定部506には、後述するハーネスストッパ602により、ハーネス600が固定され、またハーネス固定部
506には、溝506aの両脇に、ハーネスストッパ602を固定させるためのねじ孔
507a,507bが形成されている。
【0084】
図7は、インナーケース300の一実施例を示す構成図である。図7(a)は、インナーケース300をI/Fモジュール200側から観た斜視図である。図7(b)は、I/Fモジュール200とは反対側から観た斜視図であり、内部に埋設された配線も示される。
【0085】
インナーケース300は、後述する電子部品を搭載する基板としての機能を有する。インナーケース300は、合成樹脂製であり、機構部1241からの熱の伝達を抑制することができる。
【0086】
図7(a)に示されるように、インナーケース300の外輪郭は、I/Fモジュール
200の外輪郭とほぼ同様の形状をしている。また、大径孔304a,304b,304c,304dが、インナーケース300の四隅のそれぞれに形成される。大径孔304a,304b,304c,304dにボルト700a,700b,700c,700dを挿入することによって、インナーケース300を含む電気回路部1251は、機構部1241に固定される。孔308a,308bには、I/Fモジュール200に形成された突注体208a,208bが挿入される。
【0087】
矩形状の比較的大きな透孔306は、インナーケース300の中央部から若干ずれた位置に形成される。透孔306には、後述するパワーモジュール408が配置される。
【0088】
端子312a,312bは、透孔306の各周辺のうち対辺関係にある二辺に並設され、パワーモジュール408から突出して形成されている電極(端子)と溶接によって接続される。端子314は、電子部品搭載領域316の裏面側に形成される。小型の電子部品が、端子314付近に配置され、この電子部品の電極と端子314とが接続される。
【0089】
透孔306の周辺において、端子312a,312bが並設された部分を除いた残りの対辺関係にある各二辺の付近に、透孔310a,310bが形成される。透孔310a,310bは、アウターケース500に、インナーケース300及びパワーモジュール408を固定させる際のねじ孔となる。
【0090】
インナーケース300をI/Fモジュール200と対向させて定位置に配置される。端子孔群318にはI/Fモジュール200に形成された二股端子210がそれぞれ挿入され、また端子孔群320には、二股端子212がそれぞれ挿入される。これら端子孔は、各二股端子210,212の二股部に当接される端子を内蔵する。
【0091】
図7(b)に示されるように、インナーケース300の外側面には、透孔306と電子部品搭載領域316が設けられる。電子部品搭載領域316は、壁部305によって囲まれるように形成される。電子部品搭載領域316に形成された凹陥部322は、コンデンサ等の電子部品を搭載し、この凹陥部322の形状は、コンデンサ等の電子部品の形状に合わせられる。凹陥部322の近傍には、端子324が植設される。端子324は、前述の電子部品の電極と接続される。このため、インナーケース300に埋設された配線層と誤りなく電気的に接続させることができる。インナーケース300に埋設された配線層は、信号の送受を行う比較的線幅の小さい配線層(通信系バス)と、高電圧となる電源が供給される線幅の大きな配線層(パワー系バス)とを有している。
【0092】
大径孔304a,304b,304c,304dが形成されるインナーケース300の周辺部と、この周辺部から若干内側に及んだ中央部との間には、段差部310が形成され、中央部には、凹陥部が形成される。この凹陥部には、後述する制御回路基板404等が配置され、また、インナーケース300とI/Fモジュール200との間に空気層が形成される。この空気層により、機構部1241から電子部品への熱伝達を抑制することができる。
【0093】
溝302aは、大径孔304a,304b,304c,304dを外側に配置するように、かつインナーケース300の中央部を囲むように形成される。この溝302aには、前述したシール302が組み込まれる。このため、インナーケース300とI/Fモジュール200との間の空気層に、水分や異物等の浸入することを防止することができる。
【0094】
透孔326a,326bには、インナーケース300をI/Fモジュール200と対向させて定位置に配置させる。そして、I/Fモジュール200に形成された端子214a,214bが挿入される。そして、端子214a,214bの先端は、透孔326a,
326bを通してインナーケース300の外側面(電子部品搭載領域316)に突出する。
【0095】
また、透孔326a,326bの大きさは、挿入される端子214a,214bよりも大きく形成される。そのため、電動ブレーキ内の空気を、透孔326a,326bを介して、充分に対流させることができる。したがって、電動ブレーキ装置内の局所的な気圧変動を抑え、シール等の密閉機能の低下を抑制することができる(気圧調整機能)。
【0096】
壁部305の肉厚を大きくした突壁部305aは、透孔306と対向する壁部305に形成される。突壁部305aには、透孔305bが、透孔306側から電子部品搭載領域316側へ貫通するように形成される。この肉厚となっている突壁部305aに、後述するハーネス600の先端に取り付けられたフランジ606を固定することより、ハーネス600の先端部が固定される。ハーネス600内の各配線は、透孔305bを通して、電子部品搭載領域316に導かれる。
【0097】
図8は、インナーケース300にアウターケース500を組み込む工程を示した図である。
【0098】
図8(a)は、図7にて説明したインナーケース300を示す。
【0099】
ハーネス600のフランジ606を固定させるためのねじ孔305c,305dが、透孔305bの両側に形成される。また、透孔305bの周辺には、リング状のシール305Sが、透孔305bを囲むように配置される。これにより、フランジ606を突壁部305aに当接して配置させ、突壁部305aとフランジ606との界面からの水分や異物等の浸入を防止することができる。
【0100】
図8(b)は、電子部品搭載領域316に電子部品を搭載したインナーケース300を示す。電子部品328a〜328dは、たとえばコンデンサあるいはリアクタンス等であり、これら電子部品328a〜328dの近傍に植設されている端子324等と、たとえば溶接によって、互いに電気的に接続される。
【0101】
図8(c)は、図6にて説明したアウターケース300を示す。
【0102】
図8(d)は、インナーケース300がアウターケース500に組み込まれた後の状態を示す。アウターケース500は、その開口部504によってインナーケース300の電子部品搭載領域316を露出させるが、その他の領域を被うようにしてインナーケース
300に組み込まれる。すなわち、アウターケース500の壁部505は。インナーケース300の壁部305の外壁面側に位置付けられるように配置される。また、アウターケース500の壁部505に形成されたブリッジ505aは、インナーケース300の突壁部305aを囲むように配置され、ハーネス固定部506の側の面において、突壁部305の面と壁部505の面とが、ほぼ面一となる。
【0103】
図9は、インナーケース300へパワーモジュール408,金属板402、および制御回路基板404を取り付ける際の工程を示す図である。
【0104】
まず、図9(a)に示すように、後述するハーネス600を取り付けた電子部品搭載基板900の内側面に、電子部品328a〜328dよりも比較的小型の電子部品328e,328fが搭載される。さらに、電子部品搭載基板900の内側面の透孔306の部分には、パワーモジュール408が配置される。パワーモジュール408は、ねじ孔(図示せず)を備え、ねじ410a,410bを、このねじ孔を通してアウターケース500に形成されているねじ孔510a,510b(図示せず)に螺入して、パワーモジュール
408を固定する。
【0105】
なお、パワーモジュール408を搭載する前のインナーケース300の裏面は、アウターケース500によって閉塞されたインナーケース300の透孔306が凹陥部として形成され、この凹陥部にパワーモジュール408が収納される。この場合、凹陥部の底面は金属で形成されたアウターケース500の一部であり、パワーモジュール408はこのアウターケース500に接触するようにして配置される。このため、パワーモジュール408の発生熱がアウターケース500を介して放熱され、制動力制御の信頼性が向上する。さらに、図示されていないが、アウターケース500とパワーモジュール408との間には、放熱グリスあるいは放熱シートが介在させ、パワーモジュール408からアウターケース500への熱伝達の効率向上を図るようにしてもよい。
【0106】
また、パワーモジュール408は、その側面にパワーモジュール408の電極となる端子を備える。パワーモジュール408がインナーケース300上の定位置に配置されると、パワーモジュール408の端子は、インナーケース300の端子312a,312bと接触する。パワーモジュール408の端子とインナーケース300の端子は、たとえば溶接によって互いに電気的に接続される。なお、パワーモジュール408の端子とインナーケース300の端子の先端部は、略90度折り曲げられ、その折り曲げられた先端部の面同士が接触する。そのため、インナーケース300の内側面からの溶接作業が容易になり、組立作業性が向上する。
【0107】
次に、図9(b)に示すように、絶縁シート400が、パワーモジュール408の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される。これにより、パワーモジュール408の各端子部と、次に説明する金属板402との電気的な絶縁が図られる。絶縁シート400の材料として、たとえばポリイミド樹脂が用いられるため、パワーモジュール408の各端子部と金属板402との間は、150℃以上の耐熱性を有し、かつ200kV/mmの絶縁性を有する。
【0108】
なお、絶縁シート400は、パワーモジュール408の端子部を被うようして延在し、パワーモジュール408の上面に接着されている。また、絶縁シート400は、パワーモジュール408をアウターケース500に固定させたねじ410a,410bの頭部を被うことなく、ねじ410a,410bの頭部を回避するための切り欠き400aを有するパターンを有して形成される。
【0109】
次に、図9(c)に示すように、たとえばアルミプレートからなる金属板402が、絶縁シート400の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される。これにより、金属板402の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される制御回路基板404を機械的に補強することができる。さらに、制御回路基板404の発生熱を効率的に放熱することができる。
【0110】
金属板402は、パワーモジュール408および絶縁シート400を充分に被う大きさである。そして、金属板402に形成された透孔408a,408bは、パワーモジュール408のアウターケース500への固定用のねじ410a,410bの頭部を、この透孔408a,408bから突出させることなく、露出させている。これにより、金属板
402を絶縁シート400に密着させて配置でき、かつ、金属板402の上面に後述する制御回路基板404を密着させて配置させることができるため、電動ブレーキ装置の小型化に寄与する。
【0111】
さらに、金属板402の、後述する制御回路基板404と対向する面には、パターン化された凹部402dが形成される。一方、制御回路基板404は、金属板402と対向する面において、たとえば検査チェック用の端子(図示せず)が露出している。凹部402dは、検査チェック用の端子が凹部402dの形成領域内に対向するように形成され、検査チェック用の端子と金属板402との直接の接触を回避している。これにより、検査チェック用の各端子が金属板402と電気的に接続されるのを防止するとともに、電動ブレーキ装置の小型化に寄与する。さらに、凹部402dは、金属板402の上面に制御回路基板404を接着材を用いて接着させる際の接着剤の逃しの機能をも有する。
【0112】
そして、図9(d)に示すように、制御回路基板404が、金属板402の上面(I/Fモジュール200側の面)に配置される。制御回路基板404は、その基板がたとえばセラミックで形成され、その上面(金属板402と反対側の面)に、比較的大きな電子部品328gが搭載される。制御回路基板404の基板がセラミックであることにより、制御回路基板の耐熱性及び耐振動性が向上する。また、制御回路基板404は金属板404の上面に配置されることから、何らかの原因、たとえばピストン1331からの過大な反力によって、たとえばインナーケース300等に歪みが生じた場合でも、制御回路基板
404の破損を防止することができる。
【0113】
制御回路基板404には、各電子部品414が搭載され、また配線層412a〜412cが基板表面にあるいは基板内に埋設される。この配線層と接続される端子340a〜340cが、制御回路基板404の周辺の一部に並列に形成される。これら対応する端子間、たとえば端子340aと端子412aは、アルミニウムからなるワイヤのボンディングによって互いに電気的に接続される。
【0114】
そして、制御回路基板404の電子部品が搭載された側に、ゲル状の部材(図示しない)が塗布される。これにより、制御回路基板404の電子部品414やワイヤボンディングを塵や結露等から保護することができ、さらに振動の伝達を緩和させることもできる。
【0115】
図10は、本実施例に使用されるハーネス600の詳細図である。
【0116】
電力線1600aは、電動ブレーキ装置に搭載された電動アクチュエータを動作させるための電力を供給する。グランド線1600bは、電力線1600aと対になる。電力線用被覆部材1606は、電力線1600a及びグランド線1600bを被覆し、電力線
1600aを外部からの衝撃から保護する。
【0117】
信号線1601a〜1601dは、ブレーキペダルの踏込量等に応じた推力指令信号や、電動ブレーキ装置の起動終了命令信号等を伝送する。
【0118】
通信線用被覆部材1605は、通信線1601a〜1601dを被覆し、通信線を外部からの衝撃から保護する。さらに、シールド材により、通信線用被覆部材1605を覆うことにより、通信線1601a〜1601dからのラジオノイズの放射を低減してもよい。
【0119】
空気連通部材1603は、空気を通すことができる部材である。ハーネス600の両端部に露出された空気連通部材1603の気圧差が、所定値以上となったときに、気圧が高いハーネス600の端部から、気圧が低いハーネス600の端部へ空気が流れる。このため、ハーネス600によって繋がれた両空間の気圧差は、所定範囲内に抑えられる。なお、空気連通部材1603の素材は、高分子化合物、例えば植物や科学的プロセスによって製造される繊維材料が適している。
【0120】
シールド材1604は、ノイズの放射を防止するために空気連通部材1603の外側を覆う。車体と電動ブレーキ装置とを繋ぐハーネス600は、ばね下という振動が多い環境で使用され、また車体に固定されるために厳しい屈曲性が要求される。シールド材1604に金属製の細線を編んだシート状のものを使用することにより、ハーネス600の耐振動性及び屈曲性を向上させることができる。
【0121】
被覆部材1602は、シールド材1604外側を覆い、外部の衝撃による、シールド材の破損や、通信線及び電源線の断線を防止する。被覆部材1602の素材は、防水機能さらに屈曲性に優れた高分子化合物が使用される。
【0122】
図11は、図9にて説明した電子部品搭載基板900にハーネス600を取り付ける際の工程を示す図である。
【0123】
図11(a)は、電子部品搭載基板900の外側面を示す。電子部品搭載基板900は、インナーケース300に形成された突壁部305aに、透孔305bの周囲を囲むようにしてリング状のシール305sが備えつけられる。
【0124】
図11(b)は、ハーネス600が定位置に配置された電子部品搭載基板900を示す。フランジ606は、ハーネス600を挿入する透孔(図示せず)と、この透孔を間にして形成されるねじ孔610c,610を備える。
【0125】
なお、ハーネス600は、フランジ606の端部から若干離間した個所において、ハーネス固定部506の溝506a内に配置される。この溝506aにより、ハーネス600の長手方向に交叉する方向の移動が規制される。
【0126】
次に、図11(c)に示すように、ハーネス600のフランジ606は、ボルト614c,614dにより突壁部305aに固定される。この際、ハーネス600のフランジ606は、リング状シール305sを介して突壁部305aに密着される。このため、水分が突壁部305aとフランジ606の界面を通して壁部305の内部の電子部品搭載領域316に浸透するのを防止できる。
【0127】
さらに、図11(c)に示すように、ハーネスストッパ602が、ハーネス固定部506の上方に、ハーネスストッパ602とハーネス固定部506とでハーネス600を挟持するように載置される。
【0128】
ハーネスストッパ602の挟持部の形状は、ハーネス600に形状に合わせるように、たとえば半円筒状である。また、ハーネス600を間にしたハーネスストッパ602の各両端部には、ねじ孔610a,610bが形成される。
【0129】
次に、図11(d)に示すように、ハーネスストッパ602は、ボルト612a,612bによりハーネス固定部506に固定される。ボルト612a,612bは、ハーネスストッパ602のねじ孔610a,610bからハーネス固定部506の対応するねじ孔に螺入されて、ハーネス600を固定する。ハーネス600は、ハーネス固定部506とハーネスストッパ602との間に挟持され、この挟持による押圧力によって、その軸方向の移動が規制される。
【0130】
なお、アウターケース500に取り付けられるハーネス600の装置本体からの引き出しは、制動時の電動ブレーキ装置の移動におけるその方向に対して、一旦直角方向に延在され、その後は自由な方向に延在される。そのため、制動時の電動ブレーキ装置の移動に対し、ハーネス600に常時遊びを有するようにハーネス600の引き回しを行うことができる。したがって、ハーネス600の緊張状態にともなう断線を防止することができる。
【0131】
そして、図11(e)に示すように、ハーネス600から電子部品搭載領域316に引き出された各配線608が、各端子324に、たとえば溶接により接続される。各端子
324は、インナーケース300に植設された配線層を接続され、電子部品搭載領域316の表面に突出して形成される。
【0132】
なお、フランジ606に替えて、電動ブレーキ装置と着脱自在なコネクタを用いるようにしてもよい。電子部品搭載基板900側のコネクタは、電子部品搭載領域316付近、たとえば壁部305に設置され、電子部品搭載領域316内の電子部品328a〜328dと導線等により電気的に接続される。そして、ハーネス600側のコネクタが、前述の電子部品搭載基板900側のコネクタに嵌合され、電気的に接続される。
【0133】
図12は、I/Fモジュール200の詳細構成図である。図12(a)は、インナーケース300側から観た、I/Fモジュール200斜視図である。図12(b)は、図12(a)と反対側から見た斜視図である。
【0134】
I/Fモジュール200は、植設された配線と、この配線と一体に形成された端子とを有する配線回路基板としての機能を有する。この配線を被う基板の材料は、合成樹脂である。合成樹脂は一般的に熱伝導率が小さく、機構部1241からの熱の伝達を、I/Fモジュール200によって抑制することができる。
【0135】
図12(a)に示すように、I/Fモジュール200の周辺部の肉厚が、この周辺部を除く中央部の肉厚よりも大きく形成される。そのため、I/Fモジュール200の外輪郭から若干内側に至る部分において、段差部202は形成される。
【0136】
肉厚となっている周辺部の四隅において、大径孔204a〜204dが形成される。大径孔204a〜204dは、I/Fモジュール200をインナーケース300,アウターケース500とともに機構部1241へ固定するためのねじ孔である。
【0137】
大径孔204a〜204dにそれぞれ近接した、I/Fモジュール200の肉薄部に、小径孔206a〜206dが形成される。小径孔206a〜206dは、I/Fモジュール200を機構部1241へ仮固定するためのねじ孔である。
【0138】
突柱体208a,208bは、大径孔204a〜204dのうちたとえば2つの大径孔204a,204bに近接して形成される。突柱体208a,208bは、I/Fモジュール200に対してインナーケース300を対向配置させるときに、I/Fモジュール
200とインナーケース300との位置あわせとしての機能を有する。
【0139】
I/Fモジュール200の内部には、配線層216a〜216dが埋設される。図13(a)に示される配線層216a〜216dは透視して示したものである。配線層216a〜216dは、端子214と電気的に繋がっている。なお、配線層216a〜216dは、I/Fモジュール200の表面に形成されてもよく、必ずしもI/Fモジュール200内に埋設されなくてもよい。
【0140】
透孔220には、回転角センサ1353から延びた端子106が挿入される。この端子106は、I/Fモジュール200に植設された端子218と、たとえば溶接により接続される。端子218は、配線層216aを介してI/Fモジュール200の中央右側の辺部にまで引き出され、I/Fモジュール200に植設された二股端子210と接続される。
【0141】
透孔222には、推力センサ1353から延びた端子108が挿入される。この端子
108は、I/Fモジュール200に植設された端子224と、たとえば半田により接続される。端子224は、配線層216bを介してI/Fモジュール200の中央左側の辺部にまで引き出され、I/Fモジュール200に植設された二股端子212と接続される。透孔228には、PKB用ソレノイド1342から延びた端子110が挿入される。この端子110は、I/Fモジュール200に植設された端子230と、たとえば溶接により接続される。端子230は、配線層216cを介してI/Fモジュール200の中央左側の辺部にまで引き出され、I/Fモジュール200に植設された二股端子226と接続される。
【0142】
透孔232には、温度センサ1355から延びた端子112が挿入される。この端子
112は、I/Fモジュール200に植設された端子234と、たとえば溶接により接続される。端子234は、配線層(図示せず)を介してI/Fモジュール200の中央右側の辺部にまで引き出され、I/Fモジュール200に植設された二股端子236と接続される。
【0143】
さらに透孔232には、三相の電動モータ1311から延びた端子114が挿入される。この端子114は、I/Fモジュール200に植設された端子238と、たとえば溶接により接続される。端子238は、配線層216dを介してI/Fモジュール200の中央部にまで引き出され、I/Fモジュール200に植設された端子214a,214bに接続される。
【0144】
配線層216dの線幅は、他の配線層216a〜216cの線幅と比較して、大きく形成される。これは、配線層216dは電源の供給を行うパワー系バスであり、配線層216a〜216cは信号の送受を行う通信系バスだからである。
【0145】
また、I/Fモジュール200から突出した端子214a,214bの高さは、他の端子218等の高さと比較して、大きく形成される。これは、インナーケース300に形成された透孔(図7(a)の符号326a及び326bで示す)に挿入させ、インナーケース300の反対側の表面にまで突出させるためである。
【0146】
なお、I/Fモジュール200に植設された端子のうち、前述した二股端子を除く端子は、いずれも平板状の形状をなし、それらの面積の広い主表面(側面を除く面)同士が互いに対向され、溶接により接続される。このため、電気的接続の確実性を図ることができる。
【0147】
なお、図12(b)に示すように、I/Fモジュール200は、推力センサ1353に対向する部分において、凹陥部244が形成される。凹陥部244の深さは、I/Fモジュール200の肉厚よりも大きく形成される。そのため、図12(a)に示すように、I/Fモジュール200は、反対側の面においては突起部240として形成される。これにより、機構部1241側に設けられた推力センサ1353を枠体100aの端面から若干突出して配置させても、I/Fモジュール200と干渉せず、電動ブレーキ装置を小型化できる。
【0148】
凹陥部246は、突起部240の周囲に、突起部240を中心とした円弧状に形成される。凹陥部246は、インナーケース300に搭載されている電子部品等と対向する部分である。この凹陥部246により、電子部品等がI/Fモジュール200に干渉することを回避しつつ、電子部品等が収納することできる。凹陥部246の深さは、I/Fモジュール200の肉厚よりも大きく形成されることから、図12(b)に示すように、反対側の面においては突起部242として形成される。
【0149】
また、突起体248a,248bは、I/Fモジュール200を機構部1241の枠体100aに当接させたとき、枠体100aの内側面側に当接して配置され、枠体100aに対するI/Fモジュール200の位置決め機構として機能する。
【0150】
図12(b)に示すように、溝202aは、機構部1241に取り付けられる側の面の周辺部において、大径孔204a〜204dを外側に配置するように、かつ中央部を囲むように、形成される。溝202aには、シール202(図示せず)が組み込まれる。I/Fモジュール200を機構部1241の枠体100aに当接させたとき、シール202が、I/Fモジュール200と枠体100aとの界面に介在し、この界面を通した水分や異物等の浸入を阻止することができる。
【0151】
図13は、機構部1241に、図12にて説明したI/Fモジュール200を取り付ける際の工程を示す図である。図13(a)は、機構部1241の斜視図であり、I/Fモジュール200が取り付けられる面を示す。また、図13(b)は、I/Fモジュール
200の斜視図であり、機構部1241に取り付けられる面と反対側の面(インナーケース300と対向する側の面)を示す。図13(c)は、I/Fモジュール200を機構部1241に取り付けた場合の斜視図である。
【0152】
図13(a)に示すように、スラストプレート1421は、機構部1241のI/Fモジュール200が取り付けられる面側に、かつ枠体100aの内部に目視できるようになっている。スラストプレート1421は、ピストン1331の直動運動による反力を受けるもので、その中央部には推力センサ104が配置される。スラストプレート1421および推力センサ104の形状は、いずれも円形であり、枠体100aの形状は、ほぼ矩形状である。
【0153】
枠体100aは、スラストプレート1421よりもI/Fモジュール200の側へ若干突出するように形成され、スラストプレート1421は、枠体100aの端面(I/Fモジュール200と当接する面)よりも奥まった個所に配置される。このため、スラストプレート1421(および推力センサ104)とI/Fモジュール200との間に隙間(空気層)が形成され、ブレーキパッド部を熱源とする熱が機構部1241内を伝導した場合でも、この隙間(空気層)によって電気回路1251の側へ熱伝達を抑制することができる。
【0154】
機構部1241には、端子106,108,110,112,114が、スラストプレート1421の周囲の一部に植設され、これら端子により電気回路部1251から電力あるいは信号を取得する。スラストプレート1421を目視できる側から観た場合に、機構部1241の上部にPKB用ソレノイドの端子324、機構部1241の右上部に三相端子114と温度センサ端子112、機構部1241の下部に回転角センサ端子106等が配置される。また、推力センサ104の端子108は、スラストプレート1421の中央部付近に配置される。これら各端子は、それぞれ平板状の導体であり、その先端は、枠体100aの端面(I/Fモジュール200と当接する面)を充分に超えて伸張する。これにより、各端子の先端部は、I/Fモジュール200に形成された透孔222等に挿入され、I/Fモジュール200のインナーケース300側の面に至るまで突出させることができる。
【0155】
図13(c)に示すように、I/Fモジュール200が機構部1241に取り付けられると、PKB用ソレノイドの端子110は透孔228から、三相端子114と温度センサ端子112は透孔232から、回転角センサ端子106は透孔220から、推力センサ
104の端子108は透孔222からそれぞれ突出する。
【0156】
なお、I/Fモジュール200の各透孔は、それに挿通される端子の周りに充分な隙間を有する程度に大きく形成される。これにより、各透孔は、機構部1241内と電気回路部1251との間において空気の出入り孔として機能し、電動ブレーキ装置内において外気の変化に追随させた気圧調整を行うことができる。
【0157】
図14は、図13にて説明した機構部アセンブリ810と、図11にて説明した電気回路部アセンブリ820とを組み立てる際の工程を示す図である。
【0158】
図14(a)は、機構部アセンブリ810と電気回路部アセンブリ820との対向すべき各面を示す。
【0159】
図14(b)に示すように、比較的大きく突出した3本のリード状の端子214a,
214bが、I/Fモジュール200植設される。3本の端子のうち2本の端子は、互いに隣接し、残りの1本は離間して配置される。これにより、各端子214a,214bを、電子部品搭載領域316の所定の個所に突出させることができる。
【0160】
これらの3本の端子214a,214bは、I/Fモジュール200に埋設された配線層216dと一体に形成され、さらにこの配線層216dがI/Fモジュール200内で屈曲されることにより、I/Fモジュール200の表面に突出されて形成される。
【0161】
図14(c)に示すように、インナーケース300には、透孔326a,326bが形成される。この透孔326a,326bには、端子214a,214bが挿入される。これらの端子は、インナーケース300の反対側の面に形成される電子部品搭載領域316にまで突出し、電子部品搭載領域316において他の端子と接続される。
【0162】
また、図14(d)に示すように、I/Fモジュール200には、二股端子210,
234が並列に植設される。これら二股端子も、I/Fモジュール200内に埋設された配線層と一体に形成される。この配線層は、信号の伝達を担当することから比較的細く形成される。さらに、配線層は、I/Fモジュール200内であって二股端子210,234に至る部分で太く形成され、この部分で屈曲されることにより、I/Fモジュール200の表面に導出されて形成される。
【0163】
そして、図14(e)に示すように、二股端子210,234と対向するインナーケース300には、溝354が形成され、この溝354に各二股端子が挿入される。溝354内部には、端子352が並設される。端子352は、各二股端子210,234の各分岐部の間に挟持され、またインナーケース300に埋設された配線に接続される。
【0164】
図14(a)〜(e)から明らかとなるように、機構部アセンブリ810に対して電気回路部アセンブリ820を組み立てた場合、I/Fモジュール200側の端子214a,214bは、インナーケース300の電子部品搭載領域316に現出させることができるとともに、二股端子210等は、端子352を介してインナーケース300内の配線に接続させることができる。
【0165】
次に、図14(f)に示すように、機構部アセンブリ810に対して電気回路部アセンブリ820を対向接触させて組み立てる。このとき、I/Fモジュール200の側に突出して形成された突柱体208a,208bは、インナーケース300の側に形成された孔308a,308bに挿入されて、位置決めがなされる。そして、電気回路部アセンブリ820の四隅に形成されているねじ孔を通して機構部アセンブリ810のねじ孔に螺入させるボルト700a,700b,700c,700dによって互いに固定される。
【0166】
図14(g)に示すように、透孔326a,326bに挿入された端子214a,214bが、電子部品搭載領域316内に突出し、さらにインナーケース300に植設された各端子350a,350bと電気的に接続される。この段階で、端子214a,214bと端子350a,350bとをたとえば溶接によって互いに電気的に接続する。
【0167】
また、図14(h)に示すように、インナーケース300側の端子352は、I/Fモジュール200側の二股端子234に挟持され、二股端子234と電気的に接続される。
【0168】
そして、図14(i)に示すように、カバー800が、露出している電子部品搭載領域316を被うように取り付けられている。カバー800は、カバー800に形成されているねじ孔を通して、アウターケース500に形成されているねじ孔に、ねじ804a,
804b,804cを螺入することにより、アウターケース500に固定される。
【0169】
ここで、図14(i)に示された電動ブレーキ装置は、機構部1241の金属製の筐体1301と、電気回路部1251の金属製のアウターケース500及びカバー800とが互いに接続されることはなく、合成樹脂製のI/Fモジュール200を間にして互いに分離されている。これにより、機構部1241側で発生した熱は、電気回路部1251側へ伝達されにくくなる。機構部1241内で発生した熱は、機構部1241の筐体1301を通して大気側に放散され、一方電気回路1251内で発生した熱はアウターケース500およびカバー800を通して大気側に放散される。これにより、機構部1241と電気回路1251を熱的にほぼ独立させることができる。
【0170】
図15は、アウターケース500に対するハーネス600の取り付け構造をハーネス
600の側から観た斜視図である。
【0171】
フランジ606は、その中央部にフランジ606の主表面と垂直方向に突出する筒体
620が一体的に形成される。また、ハーネス600は、筒体620の側からその孔に挿入されたハーネス600の被覆部材1602の外周面を、筒体620の孔の内周面に固定することによって取り付けられる。そして、被覆部材1602に内包されている各配線
(電源線1及び通信線)が、フランジ606の筒体620が形成された側と反対側にまで、導かれる。
【0172】
フランジ606の主表面は、ハーネス600の軸方向と直交する面内において長円状又は長方形状である。そして、筒体620の孔の両側にそれぞれ一対のねじ孔が設けられる。すなわち、フランジ606は、筒体620の孔およびねじ孔の並設方向に比較的大きな幅を有するように形成され、一方この幅方向に直交する高さ方向の長さを小さくするように形成される。このため、インナーケース300の壁部305にハーネス600の先端部を信頼性よく固定するとともに、電動ブレーキ装置の小型化に寄与する。
【0173】
なお、本実施例では、フランジ606の高さ方向の長さは、壁部305(ブリッジ部
505a以外の部分の壁部305)の高さよりも大きく形成される。ブリッジ部505aの高さは、フランジ606と当接して壁部305に固定できるように、壁部305よりも大きく設定される。
【0174】
ハーネス600のフランジ606の固定個所は、平面的に観たアウターケース500のほぼ中央に位置する。すなわち、図15に示すようにアウターケース500の幅をW、高さをHとした場合、フランジ606が、幅Wの約半分、高さHの約半分の位置に位置づけられる。図14(i)に示すように、電動ブレーキ装置を全体的に観た場合にも、電動ブレーキ装置の幅はほぼW、高さはほぼHである。電動ブレーキ装置が振動した場合、フランジ606の取り付け位置は、振動(図15において矢印T方向の振動)が最も小さくなる電動ブレーキ装置の中心軸周りの位置となる。このため、電動ブレーキ装置の振動に対して、フランジ606の壁部305への取り付け、及びハーネス600のフランジ606への固定が安定する。
【0175】
さらに、ハーネス600は、フランジ606から僅かに離間した位置において、アウターケース500と一体に形成されたハーネス固定部506と、ハーネス固定部506とは別体として形成されたハーネスストッパ602によって挟持されることによって固定される。これにより、ハーネス固定部506より車体側のハーネス600部分においてハーネス600に加わる力が、壁部305に固定されたフランジ606に伝達されなくなり、フランジ606の壁部305に対する取り付けが安定する。
【0176】
図16は、ハーネス600の構成図を示す。ハーネス600は、車両ばね下に搭載された電動ブレーキ装置から引き回され、一方の端部が車室内に取り込まれる。ハーネス600の引き回しの経路の途中において、あらかじめ定められた経路を保持するためにハーネス600は固定冶具1610によって固定される。この固定冶具1610が、ハーネス600の外周の一部を押しつぶすことにより、前述の空気連通部材1603の一部も押しつぶされることになり空気の連通性を低下し、もしくは空気の流れが断たれるおそれがある。そこで、図16に示すように、固定冶具1610による締付け個所の空気連通部材1603を増やし、電線の径を大きくする。これにより、固定冶具1610の締付けによる、空気の流量低下を防止することができる。また、前述の被覆部材1602と固定冶具1610との摩擦による、ハーネス600の損傷も防ぐことができる。
【0177】
次に、ハーネス600の車両接続側の端部と車両側ハーネス(図示しない)とを接続する場所について説明する。
【0178】
なお、後輪に設置された電動ブレーキ装置のハーネス600の車両接続側の端部は、例えば、車両ボディとトランクルームとの間の空間、またはトランクルーム内において、車両側ハーネスと接続される。このような構成とすることにより、ハーネスの接続部分に水や泥が付着するおそれは少なく、ハーネス600の車両接続側の端部の空気連通部材1603を外気と接触している状態とすることができる。
【0179】
一方、前輪に設置された電動ブレーキ装置のハーネスにおいては、ハーネスの引き回しの距離が長くならないように、エンジンルーム内で車両側ハーネスと接続するようにする。しかし、エンジンルーム内は、水や油が多量にあるため、空気連通部材の空気を通す空気孔が水や油によって塞がれてしまうおそれがある。そこで、エンジンルーム内においては、水や外気が浸入しないように、ハーネス600の車両接続側の端部と車両側ハーネスとの接続部を密閉構造とする。そして、車両側ハーネスのうちコラムルームまで引き回されるハーネスの部材に空気連通部材を使用し、コラムルーム内で電動ブレーキ装置内部からの空気の流入出をできるようにする。
【0180】
以上説明した実施例によれば、電動ブレーキ装置内部の気圧調整をするために、前述の電動ブレーキ装置内部の空間を満たす空気を、空気連通部材1603を備えるハーネス
600を介して、外気と連通させることができる。具体的には、図7に示す電気回路部
1251の部品搭載領域316を満たす空気に、空気連通部材1603を接するように構成する。
【0181】
さらに、図12(a)に示すスラストプレート1421とI/Fモジュール200との間の空間は、図13(b)に示すI/Fモジュール200に形成された透孔110,232,106,222を介して、図5に示すI/Fモジュール200とインナーケース300との間の空間と繋がる。また、図5に示すI/Fモジュール200とインナーケース300との間の空間は、図7に示すインナーケース300に形成された透孔326a,326bを介して、図7に示す電気回路部1251の部品搭載領域316と繋がる。このように、電動ブレーキ装置内部の空間同士が透孔を介して繋がることにより、電動ブレーキ装置内部において局所的な気圧変化が発生しない。
【0182】
また、回転直動変換機構1326や減速機1321の動作を滑らかにするために、これらの可動部には潤滑油が塗られている。この潤滑油は、経年変化により流れ落ち、電動ブレーキ装置内の下部に溜まり、電動ブレーキ装置内における空気の流入出する穴を塞いてしまうおそれがある。
【0183】
そこで、本実施例では、電動ブレーキ装置内部の複数の空間を繋ぐ透孔を複数設けている。さらに、透孔の位置を潤滑油が溜まる位置とは、離れた位置に設けるようにしている。例えば、透孔110,232,106,222は潤滑油が溜まる位置よりも地面から遠い位置に設けられる。
【0184】
また、本実施例のように、電動ブレーキ装置内がI/Fモジュール200で複数の空間で仕切られ、かつ潤滑油が溜まる位置とは離れた位置に透孔を設けることにより、潤滑油がハーネス600の空気連通部材1603まで流れることはなく、空気連通部材1603の空気の流入出を妨げることはない。
【0185】
さらに、本実施例の気圧調整機能によって、電動ブレーキ装置内部の空気が外部に流出したり、外気が電動ブレーキ装置内部に流入したりする。そのため、空気の対流が電動ブレーキ装置内部に発生する。この対流によって、電動ブレーキ装置のうち熱に弱い部品を熱から保護することができる。
【0186】
例えば、電動ブレーキ装置の中で熱に弱い部品は、制御回路基板404に設置された電子部品である。この電子部品を、図5に示すI/Fモジュール200とインナーケース
300との間の空間に接するように配置する。そのため、この電子部品は、空気の対流によって冷やされ、熱から保護することができる。
【0187】
また、以上説明した気圧調整機能を利用した、電動ブレーキ装置の気密試験の方法について説明する。
【0188】
従前は、電動ブレーキ装置の気密試験のために、電動ブレーキ装置の内部の空間と通じる特別な開口を電動ブレーキ装置に設け、その開口部に気密試験用の管を接続したり、電動ブレーキ装置のハーネス接続用の開口に気密試験用の管を接続したりしていた。そして、電動ブレーキ装置を液体例えば水に浸し、気密試験用の管に接続した高圧ポンプ等の気圧調整装置によって、電動ブレーキ装置内部の気圧を上昇させ、電動ブレーキ装置が密閉状態となっているか確認する。この場合、気圧調整装置が所定の気圧を示しても、電動ブレーキ装置から気泡が発生しなければ、密閉状態に保たれていることが確認できる。
【0189】
しかし、電動ブレーキ装置に気密試験用の特別な開口を設けたり、その開口部に気密試験用の管を接続する必要があり、製造のための工数や気密試験の工数の増大を招いていてしまう。
【0190】
そこで、図10で説明したように、外気を空気連通部材1603を備えるハーネス600を介して電動ブレーキ装置内部に流入できる構成とする。そしてハーネス600の端部に、気圧調整装置1800を接続し、ハーネス600を介して電動ブレーキ装置内部の気圧を調整して、前述の気密試験を実施する。
【0191】
このような構成とすることにより、電動ブレーキ装置に気密試験用の特別な開口を設けたり、その開口部に気密試験用の管を接続する必要がなくなり、製造のための工数や気密試験の工数の増大を抑えることができる。さらに、電動ブレーキ装置1201とともにハーネス600も、気密試験用の水に浸して、ハーネス600の被覆部材1602の破れ等を出荷前に確認することができる。
【実施例2】
【0192】
本実施例においては、機構部1706がばね下に設置され、機構部を制御する電気回路部が車体内部に設置された構成の電動ブレーキ装置における、機構部1706の気圧調整機能について説明する。
【0193】
図17(a)は、本発明の第2の実施例における電動ブレーキ装置の具体的な内部構成の断面図であり、図17(b)は、図17(a)のαの方向から見た内部構成の断面図である。図17における機構部1706の内部構成のうち、図1と同じ番号が付された部品については、第1の実施例において対応する図1の部品と同様の機能を有するので説明を省略する。
【0194】
実施例1と実施例2との相違点は、空気連通部材を備えるハーネス1704及び1705を、機構部1706に直接接続したことにある。このような構成としたことで、気圧変化が激しい環境であるばね下に設置された機構部1706内の気圧を調整することができる。
【0195】
また、ハーネス1704及び1705を2本を備えている。本実施例においては、ハーネス1704はモータに電力を供給するための電力線であり、ハーネス1705は車体に設置された電気回路部と制御信号の送受信を行う信号線である。このように複数のハーネス1704及び1705を機構部に接続する場合、どちらか一方のハーネスのみに空気連通部材を使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】本発明の一実施例をなす電動ブレーキ装置の具体的な内部構成の断面図を示す。
【図2】本発明の一実施例をなす電動ブレーキ装置を搭載した車両のブレーキシステムの概略構成図を示す。
【図3】図2の電動ブレーキ装置の概念図を示す。
【図4】図2の電動ブレーキ装置の回路構成図を示す。
【図5】図1の電動ブレーキ装置の電気回路部における各構成部材の分解斜視図を示す。
【図6】図5の電動ブレーキ装置のアウターケースの構成図を示す。
【図7】図5の電動ブレーキ装置のインナーケースの構成図を示す。
【図8】図5のアウターケースとインナーケースの組み込み工程図を示す。
【図9】図5のインナーケースに電子部品を搭載する工程図を示す。
【図10】本発明の一実施例をなすハーネスの構成図を示す。
【図11】図5のインナーケースにハーネスを取り付ける際の工程図を示す。
【図12】図5のI/Fモジュールの構成図を示す。
【図13】図5のI/Fモジュールが取り付けられた機構部の構成図を示す。
【図14】機構部とI/Fモジュールの一体化からなるアセンブリと、インナーケース,アウターケース、およびハーネスの一体化からなるアセンブリの組み立み工程図を示す。
【図15】アウターケースに対するハーネスの取り付け構造の一実施例をハーネス側から観た斜視図である。
【図16】本発明の一実施例をなすハーネスの構成図を示す。
【図17】本発明の一実施例をなす電動ブレーキ装置の具体的な内部構成図を示す。
【図18】本発明の一実施例をなす電動ブレーキ装置気密試験方法の概略図を示す。
【符号の説明】
【0197】
305b 透孔
305s リング状シール
600 ハーネス
1201 電動ブレーキ装置
1231 ディスクロータ
1301 筐体
1306及び1307 ブレーキパッド
1311 電動モータ
1326 回転直動変換機構
1331 移動部材
1340 シール部材
1603 空気連通部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するディスクロータを押圧するブレーキパッドと、
回転トルクを発生するモータと、
前記回転トルクの回転運動を直線運動に変換する回転直動変換機構と、
前記回転直動変換機構による直線運動に基づき前記ブレーキパッドを移動させる移動部材と、
車体の内部機器と接続されるハーネスと、
前記モータと前記回転直動変換機構とを収める空間と、前記移動部材を摺動可能とする第1の孔部と、前記ハーネスを挿入するための第2の孔部とを有する筐体と、
前記第1の孔部と前記移動部材との隙間を密閉する第1のシール部材と、
前記第2の孔部と前記ハーネスとの隙間を密閉する第2のシール部材と、
を備え、
前記ハーネスは、前記筐体内部の空気と外気とを連通させる空気連通部材を有する電動ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記モータは、三相モータであり、
前記ハーネスは、三相モータの電力供給線を備え、
前記電力供給線は、前記三相モータと車体に設置されたインバータとを接続する電動ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記ハーネスの双方の端部は空気連通部材が露出し、前記ハーネスの一方の端部は、前記筐体の前記空間に設置され、もう一方の端部は外気と接するように設置される電動ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記ハーネスの一方の端部は前記筐体の前記空間に設置され、前記ハーネスのもう一方の端部は車両ボディとトランクルームとの間の空間に設置される電動ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記ハーネスの一方の端部は前記筐体の前記空間に設置され、前記ハーネスのもう一方の前記端部はトランクルーム内の空間に設置される電動ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記ハーネスは、前記モータを制御するための信号を送受信する信号線を備え、
前記信号線は前記空気連通部材により覆われている電動ブレーキ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記ハーネスを複数備え、
前記筐体は、前記複数の前記ハーネスを挿入するための前記複数の第2の孔部を有し、
前記筐体の前記複数の前記第2の孔部と挿入された前記複数の前記ハーネスとの隙間を密閉する前記複数の第2のシール部材とを備え、
前記複数のハーネスのうち少なくとも一つが前記モータに電力を供給する電力線を備える電動ブレーキ装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電動ブレーキ装置の気密検出方法であって、
前記気圧調整装置により、前記筐体内部の気圧を、前記ハーネスを介して所定気圧となるように調整し、
前記所定気圧が所定時間、所定変化の幅以内であるとき、前記筐体の気密が保たれていると判定する電動ブレーキ装置の気密性検出方法。
【請求項9】
車輪と共に回転するディスクロータを押圧するブレーキパッドと、
回転トルクを発生するモータと、
前記モータの回転運動を直線運動に変換する回転直動変換機構と、
前記回転直動変換機構による直線運動に基づき前記ブレーキパッドを移動させる移動部材と、
前記モータの回転トルクを制御するための電子部品と、
車体の内部機器と接続されるハーネスと、
前記モータと前記回転直動変換機構とを収める第1の空間と、前記第1の空間に対して前記ブレーキパッドとは反対側に存在し、前記電子部品を収める第2の空間と、前記移動部材を摺動可能とする第1の孔部と、前記ハーネスを挿入するための第2の孔部を有する筐体と、
前記第1の孔部と前記移動部材との隙間を密閉する第1のシール部材と、
前記第2の孔部と前記ハーネスとの隙間を密閉する第2のシール部材と、
を備え、
前記ハーネスは、前記筐体内部の空気と外気とを連通させる空気連通部材を有する電動ブレーキ装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記ハーネスの双方の端部は空気連通部材が露出し、前記ハーネスの一方の端部は前記第2の空間に設置され、もう一方の端部は外気と接するように設置される電動ブレーキ装置。
【請求項11】
請求項9に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記筐体は、前記ハーネスを前記第2の孔部に固定する第1の固定部と、前記ハーネスを該筐体に固定し、該第1の固定部とは離間して設けられる第2の固定部を備える電動ブレーキ装置。
【請求項12】
請求項9に記載の電動ブレーキ装置の気密検出方法であって、
前記気圧調整装置により、前記筐体内部の気圧を、前記ハーネスを介して所定気圧となるように調整し、
前記所定気圧が所定時間、所定変化の幅以内であるとき、前記筐体の気密が保たれていると判定する電動ブレーキ装置の気密性検出方法。
【請求項13】
車輪と共に回転するディスクロータを押圧するブレーキパッドと、
回転トルクを発生するモータと、
前記モータの回転運動を直線運動に変換する回転直動変換機構と、
前記回転直動変換機構による直線運動に基づき前記ブレーキパッドを移動させる移動部材と、
前記モータの回転トルクを制御するための制御回路基板と、
車体の内部機器と接続するハーネスと、
前記モータと前記回転直動変換機構と収める第1の空間と前記制御回路基板を収める第2の空間と前記移動部材を摺動可能とする第1の孔部と前記ハーネスを挿入するための第2の孔部を有する筐体と、
前記第1の孔部と前記移動部材との隙間を密閉する第1のシール部材と、
前記第2の孔部と前記ハーネスとの隙間を密閉する第2のシール部材と、
前記第1の空間と前記第2の空間との間に設置され、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する中空穴を備える樹脂製板と、
を備え、
前記ハーネスは、前記筐体内部の空気と外気とを連通させる空気連通部材を有する電動ブレーキ装置。
【請求項14】
請求項13に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記ハーネスの双方の端部は空気連通部材が露出し、前記ハーネスの一方の前記端部は前記第2の空間に設置され、もう一方の前記端部は外気と接するように設置される電動ブレーキ装置。
【請求項15】
請求項13に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記モータの電力供給線は、前記樹脂製板の前記中空穴に挿入され、前記中空穴と前記電力供給線との隙間を介して、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する電動ブレーキ装置。
【請求項16】
請求項13に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記制御回路基板は、前記制御回路基板の電子回路の実装面が前記樹脂製板と対向するように設置され、前記実装面と前記樹脂製板との間に空気層が設けた電動ブレーキ装置。
【請求項17】
請求項13に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記筐体は、前記ハーネスを前記第2の孔部に固定する第1の固定部と、前記ハーネスを該筐体に固定し、該第1の固定部とは離間して設けられる第2の固定部を備える電動ブレーキ装置。
【請求項18】
請求項13に記載の電動ブレーキ装置であって、
前記制御回路基板は、直流電流を交流電流に変換するインバータ素子を有するパワーモジュールを備え、
前記樹脂製板は、前記パワーモジュールと前記モータとを接続する電力供給線を固定する電動ブレーキ装置。
【請求項19】
請求項13に記載の電動ブレーキ装置の気密検出方法であって、
前記気圧調整装置により、前記筐体内部の気圧を、前記ハーネスを介して所定気圧となるように調整し、
前記所定気圧が所定時間、所定変化の幅以内であるとき、前記筐体の気密が保たれていると判定する電動ブレーキ装置の気密性検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−207640(P2008−207640A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44842(P2007−44842)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】