説明

電動モータ

【課題】4極モータにおいて、ブラシホルダーの位置決め精度を向上させた場合にも、モータ内を十分に冷却することができる4極モータを提供する。
【解決手段】電動モータは、円筒形のフレーム1と、一対のブラシ23が取り付けられるホルダ2と、フレーム1の一端を覆うエンドカバー3とを備える。ホルダ2は、放射状に少なくとも3方向に伸びた脚部21と、脚部21により支持される中空円形の環状枠22と、環状枠22に一対のブラシ23が直角に支持されるブラシカバー部24とを有する。エンドカバー3は、フレーム1に嵌合する複数のフランジ片32を有し、複数のフランジ片32の間にコネクタ部33および通風孔34のいずれかが設けられる。フレーム1は、その一端側にホルダ2の脚部21がそれぞれ嵌合するホルダ嵌合溝11と、エンドカバー3の複数のフランジ片32がそれぞれ嵌合する複数のエンドカバー嵌合溝12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側面に4つの永久磁石が相対向して設けられた円筒形のフレームと、一対のブラシが取り付けられるホルダと、該フレームの一端を覆うエンドカバーとを備えた電動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動モータとしては、円筒形のフレームに2つの永久磁石が相対向して設けられた2極モータと、4つの永久磁石が相対向して設けられた4極モータとがある。2極モータと4極モータとを比較した場合、4極モータは、2極モータに比して、振動および騒音が発生し易いことが知られている。
【0003】
振動および騒音の防止のためには、下記特許文献1および特許文献2に示すように、ブラシホルダーを弾性部材を介して、フレームまたはエンドカバーに取り付けた電動モータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平4−502400号公報
【0005】
【特許文献2】実開平6−44362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、4極モータでは、フレームの永久磁石に対して、ブラシホルダーの位置決め精度を高める必要があるため、上記特許文献1のように、ブラシホルダーをフレームに(エンドカバーを介さず)直接接続されることが望ましい。
【0007】
しかし、ブラシホルダーをフレームに(エンドカバーを介さず)直接接続した場合には、フレームに、エンドカバーの接続部位を設ける必要があるのみならず、ブラシホルダーの接続部位も設ける必要が生じ、電動モータ内を冷却するための通風孔を十分に確保することができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、4極モータにおいて、ブラシホルダーの位置決め精度を向上させた場合にも、モータ内を十分に冷却することができる4極モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1発明の電動モータは、
内側面に4つの永久磁石が相対向して設けられた円筒形のフレームと、一対のブラシが取り付けられるホルダと、該フレームの一端を覆うエンドカバーとを備えた電動モータであって、
前記ホルダは、放射状に少なくとも3方向に伸びた脚部と、該脚部により支持される中空円形の環状枠と、該環状枠に前記一対のブラシが直角に支持されるブラシカバー部とを有し、
前記エンドカバーは、前記フレームに嵌合する複数のフランジ片を有し、該複数のフランジ片の間にコネクタ部および通風孔のいずれかが設けられ、
前記フレームは、その一端側に前記ホルダの脚部がそれぞれ嵌合する少なくとも3つのホルダ嵌合溝と、前記エンドカバーの複数のフランジ片がそれぞれ嵌合する複数のエンドカバー嵌合溝とを有することを特徴とする。
【0010】
第1発明の電動モータによれば、ホルダが少なくとも3本の脚部によりフレームに直接接続されるため、4極モータにおいて要求されるホルダの高い位置決め精度を満足することができる。
【0011】
さらに、エンドカバーに複数のフランジ片を設けることで、フランジ片をエンドカバー嵌合溝に嵌合させて固定できると共に、フランジ片の間にコネクタ部および通風孔のいずれかを形成することができる。これにより、電動モータ内を冷却するために十分な通風孔を確保することができる。
【0012】
このように、第1発明の電動モータによれば、4極モータにおいて、ブラシホルダーの位置決め精度を向上させた場合にも、モータ内を十分に冷却することができる。
【0013】
第2発明の電動モータは、第1発明において、
前記フレームのホルダ嵌合溝およびエンドカバー嵌合溝とは、
ホルダ嵌合溝に嵌合した前記脚部をエンドカバー嵌合溝に嵌合したフランジ片が覆うように、ホルダ嵌合溝がエンドカバー嵌合溝に形成されることを特徴とする。
【0014】
第2発明の電動モータによれば、電動モータ内を冷却するために十分な通風孔を確保しつつ、ホルダ嵌合溝をエンドカバー嵌合溝に形成することで、フレームの一端側にホルダ嵌合溝およびエンドカバー嵌合溝を同時に形成することができると共に、エンドカバー嵌合溝に嵌合したフランジ片によりホルダ嵌合溝に嵌合したホルダの脚部がホルダ嵌合溝から脱離することを防止することができる。
【0015】
第3発明の電動モータは、第1および第2発明において、
前記ホルダは、前記脚部が防振ゴムを介して前記フレームのホルダ嵌合溝に嵌合されることを特徴とする。
【0016】
第3発明の電動モータによれば、電動モータ内を冷却するために十分な通風孔を確保しつつ、ホルダ嵌合溝に嵌合するホルダの脚部に防振ゴムを設けることで、4極モータにおける振動および騒音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電動モータの構成を示す分解図。
【図2】図1の電動モータを組み立てた状態を示す説明図。
【図3】他の実施形態の電動モータの構成を示す分解図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、本実施形態の電動モータの構成について説明する。
【0019】
本実施形態の電動モータは、フレーム1と、ホルダ2と、エンドカバー3とを備える。
【0020】
フレーム1は、円筒形状の金属製の部材であって、内側面に4つの永久磁石10が相対向して設けられている。すなわち、本実施形態のモータは、4つの永久磁石10を有する4極モータである。
【0021】
フレーム1は、一端側に、ホルダ2を固定するための複数のホルダ嵌合溝11と、エンドカバー3を固定するための複数のエンドカバー嵌合溝12とを備える。なお、ホルダ嵌合溝11およびエンドカバー嵌合溝12の詳細は後述する。
【0022】
フレーム1の他端側は、前側の軸受けをなす金属製のブラケット13により閉蓋されており、ブラケット13には、複数の貫通孔からなる通風孔13aが形成されている。
【0023】
ホルダ2は、一対のブラシが取り付けられる合成樹脂製のホルダであって、放射状に3方向(120度間隔)に伸びた脚部21と、脚部21により支持される中空円形の環状枠22とを備える。
【0024】
環状枠22には、一対のブラシ23を直角に支持するように、一対のブラシカバー部24が設けられている。なお、ブラシ23は、図示しない付勢手段(例えば、コイルバネ)により周方向内方に付勢されると共に、ピグテル線を介して、後述するコネクタに電気的に接続される。
【0025】
ここで、脚部21の先端部には、防振ゴム21aが取り付けられている。防振ゴム21aの後端側には、脚部21の先端に形成された突出部21bが嵌合する嵌合溝21cが形成されている。また、必要に応じて、突出部21bと嵌合溝21cのいずれか一方または両方には抜け止めのための係合部等が形成される。さらに、防振ゴム21aの後端側には、外周が拡径した鍔部21dとなっている。
【0026】
エンドカバー3は、フレーム1の一端側を閉蓋するための金属製の部材であって、後ろ側の軸受けとしての貫通孔31と、フレームに嵌合する3つのフランジ片32を有する。
【0027】
3つのフランジ片32は、ホルダ2の脚部21と同様、エンドカバーの外周部分に120度間隔で形成され、隣接するフランジ片32の間には、コネクタ部33および通風孔34のいずれかが設けられる。また、フランジ片32の先端部は周方向外方に僅かに突出した鍔部32aとなっている。
【0028】
より具体的には、コネクタ部33は、隣接するフランジ片32の間のエンドカバー3の外周縁に切欠き33aが形成された部位に接続され、通風孔34は、これ以外の隣接するフランジ片32の間に形成される。
【0029】
コネクタ部33は、切欠き33aに嵌合する凸部33bと、凸部33bを挟む上側と下側の挟持片33c,33dとを有する。これにより、コネクタ部33は、凸部33bを切欠き33aに嵌合させると、エンドカバー3の外周縁が挟持片33c,33dに挟持された状態で固定される。
【0030】
次に、説明を後回しにしたフレーム1に形成されたホルダ嵌合溝11およびエンドカバー嵌合溝12について説明する。
【0031】
ホルダ嵌合溝11は、ホルダ2の脚部21がそれぞれ嵌合する凹溝であって、特に、脚部21の防振ゴム21aが凹溝に嵌合するようになっている。
【0032】
エンドカバー嵌合溝12は、エンドカバー3のフランジ片32がそれぞれ嵌合する凹溝であって、特に、フランジ片32の鍔部32aがこの凹溝に嵌合するようになっている。
【0033】
ここで、ホルダ嵌合溝11およびエンドカバー嵌合溝12とは、ホルダ嵌合溝11に嵌合した脚部21をエンドカバー嵌合溝12に嵌合したフランジ片32が覆うように、ホルダ嵌合溝11がエンドカバー嵌合溝12の底部に形成されている。
【0034】
次に、図2を参照して、電動モータを組み立てた状態、すなわち、フレーム1にホルダ2およびエンドカバー3を取り付けた状態について説明する。
【0035】
まず、フレーム1の3つのホルダ嵌合溝11には、ホルダ2の3つの脚部21が防振ゴム21aを介してそれぞれ嵌合している。より正確には、このとき、防振ゴム21aの鍔部21dが、フレーム1の内側面に当接し、かつ、防振ゴム21aの先端部分がホルダ嵌合溝11に嵌合している。
【0036】
これにより、ホルダ2が3本の脚部21によりフレーム1に直接接続されるため、4極モータにおいて要求されるホルダ2の高い位置決め精度を満足することができると共に、防振ゴム21aにより4極モータにおける振動および騒音の低減を図ることができる。
【0037】
なお、この状態で、フレーム1のそれぞれのエンドカバー嵌合溝12の底部は、ホルダ嵌合溝11に嵌合した脚部21と水平となっている。そして、フレーム1の3つのエンドカバー嵌合溝12には、エンドカバー3の3つのフランジ片32が嵌合している。
【0038】
これにより、エンドカバー嵌合溝12に嵌合したフランジ片32によりホルダ嵌合溝11に嵌合したホルダの脚部21がホルダ嵌合溝11から脱離することを防止することができると共に、ホルダ2およびエンドカバー3が取り付けられるフレーム1の一端側において、冷却のための通風孔を確保することができる。
【0039】
すなわち、この組立て状態では、隣接するフランジ片の間にコネクタ部33および通風孔34のいずれかを形成することができると共に、ホルダ嵌合溝11をエンドカバー嵌合溝12に形成することで、このフランジ片32の間にホルダ2の脚部21が配置されて通風が阻害されることを回避することができる。
【0040】
このように、本実施形態の電動モータによれば、4極モータにおいて、ホルダ2をフレーム1に直接接続してブラシホルダーの位置決め精度を向上させた場合にも、隣接するフランジ片32の間に形成された通風孔34によりモータ内を十分に冷却することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、ホルダ2が放射状に3方向(120度間隔)に伸びた脚部21を有し、フレーム1が3つのホルダ嵌合溝11を有して、これら3つの脚部21が3つのホルダ嵌合溝11に嵌合すると共に、エンドカバー3が3つのフランジ片32を有し、フレーム1が3つのエンドカバー嵌合溝12を有して、これら3つのフランジ片32が3つのエンドカバー嵌合溝12に嵌合する構成について説明したが、これら脚部21、ホルダ嵌合溝11、フランジ片32およびエンドカバー嵌合溝12は、3つから構成されるものに限定されるものではなく、3以上あれば4つや5つであってもよい。
【0042】
例えば、図3に分解図で示すように、ホルダ2が放射状に4方向(約90度間隔)に伸びた脚部21を有し、フレーム1が4つのホルダ嵌合溝11を有して、これら4つの脚部21が4つのホルダ嵌合溝11に嵌合すると共に、エンドカバー3が4つのフランジ片32を有し、フレーム1が4つのエンドカバー嵌合溝12を有して、これら4つのフランジ片32が4つのエンドカバー嵌合溝12に嵌合するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0043】

1…フレーム、2…ホルダ、3…エンドカバー、11…ホルダ嵌合溝、12…エンドカバー嵌合溝、21…脚部、21a…防振ゴム、22…環状枠、23…ブラシ、24…ブラシカバー部、32…フランジ片、33…コネクタ部、34…通風孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側面に4つの永久磁石が相対向して設けられた円筒形のフレームと、一対のブラシが取り付けられるホルダと、該フレームの一端を覆うエンドカバーとを備えた電動モータであって、
前記ホルダは、放射状に少なくとも3方向に伸びた脚部と、該脚部により支持される中空円形の環状枠と、該環状枠に前記一対のブラシが直角に支持されるブラシカバー部とを有し、
前記エンドカバーは、前記フレームに嵌合する複数のフランジ片を有し、該複数のフランジ片の間にコネクタ部および通風孔のいずれかが設けられ、
前記フレームは、その一端側に前記ホルダの脚部がそれぞれ嵌合する少なくとも3つのホルダ嵌合溝と、前記エンドカバーの複数のフランジ片がそれぞれ嵌合する複数のエンドカバー嵌合溝とを有することを特徴とする電動モータ。
【請求項2】
請求項1記載の電動モータにおいて、
前記フレームのホルダ嵌合溝およびエンドカバー嵌合溝とは、
ホルダ嵌合溝に嵌合した前記脚部をエンドカバー嵌合溝に嵌合したフランジ片が覆うように、ホルダ嵌合溝がエンドカバー嵌合溝に形成されることを特徴とする電動モータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の電動モータであって、
前記ホルダは、前記脚部が防振ゴムを介して前記フレームのホルダ嵌合溝に嵌合されることを特徴とする電動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−253875(P2012−253875A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123565(P2011−123565)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000242127)北芝電機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】