説明

電動機、アース手段への導電性流体の注入方法

【課題】アース手段である、流体シールの軸心方向側上下側にラビリンス構造を形成し、流体シールの蒸発・発散を防ぎ、長期間使用可能とする。
【解決手段】ブッシュ200とロータハブ300は軸体100の突起部110に半径方向外方側に間隙を持ち対向する。そして軸体100の突起部110とブッシュ200とロータハブ300によって形成される流体シール保持部には、導電性流体が充填される。この流体シール保持部の軸心方向上下側に形成される間隙111、112,211、310は、流体シール保持部の半径方向の間隙より微少となるように形成され、流体シール保持部とその外部の空間との互換性をなくし、流体シールの蒸発・発散を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止部と回転部との間の電気的な導通を行うためのアース手段としての流体シール、およびこの流体シールを有する気体動圧軸受を使用したハードディスクスピンドルモータ、および前記スピンドルモータが採用された記録ディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ディスク駆動装置としての例えばハードディスク駆動装置は、収容室を構成する装置ハウジングと、装置ハウジング内に装着されたスピンドルモータと、スピンドルモータに搭載された磁気記録ディスクと、記録ディスクに記録情報を書き込むおよび/または記録情報を読み取る磁気ヘッドとを備えている。近年、このハードディスク駆動装置によって取り扱われるプログラム量、データ量等が増大し、ハードディスク駆動装置の記憶容量アップ、記録情報の書き込み・読み出し速度の高速化がますます要求され、これに対応するために、スピンドルモータの高精度化が進んでいる。そして、この高精度化に伴い、スピンドルモータを回転自在に支持するための軸受手段も玉軸受から動圧軸受に代わろうとしている。動圧軸受は、相対的に回転する部品間に微少間隙が形成され、その間隙に保持される潤滑流体が、それらの部品が相対回転することにより軸受面に形成された動圧溝により動圧を発生して、一方の部品(静止部)に対して他方の部品(回転部)を非接触にて回転自在に支持するもので、一般的に、液体または気体が用いられ、回転部のラジアル方向を支持するラジアル軸受部と回転部のスラスト方向を支持するスラスト軸受部から構成される。このような動圧軸受を採用した場合、玉軸受と比較してより低騒音かつ高精度にて回転することができる。
【0003】
ところが、近い将来、プログラム量、データ量等が更に増大することが予想され、これに伴って、スピンドルモータの回転数も20000rpm以上の高速回転が求められるようになる。このような高速回転になると、潤滑流体としてオイルを用いた場合、オイルの粘性抵抗に起因して回転中の軸損が大きくなり、20000rpm以上の高速回転に対応することが困難となる。また、オイルの粘性特性は温度によって大きく変化する特性を有するため、周囲温度が大きく変化する環境においては、回転部を安定して回転自在に支持することが困難となる。
【0004】
そこで、更なる高速回転化に対応するために、潤滑流体として空気を用いる気体動圧軸受を採用することが考えられている。潤滑流体として気体を用いた場合、オイルと比して粘性抵抗が非常に小さい(気体の粘性抵抗はオイルの粘性抵抗の約1/1000程度である)ので回転中の軸損が小さく、また温度が変化しても粘性特性が大きく変化せず、回転部を高速で安定して回転支持することができる。
【0005】
しかしながら、軸受手段として気体動圧軸受を採用した場合、磁気ディスクが取り付けられた回転部が圧縮気体層を介して支持されるので、次の問題が新たに発生する。一般に、磁気ディスクが高速回転すると、装置ハウジング内の空気との摩擦によって回転するディスクに静電気が発生する。このように静電気が発生すると、回転中に回転部が圧縮気体層を介して支持されるので、発生した静電気が磁気ディスクから装置ハウジングに流れず、磁気ディスクに貯まるようになる。そしてこのようにして、貯まった静電気が放電した際に、磁気ディスクに記録された情報(磁気的に記録されている)が破損される恐れがある。
【0006】
このような静電気の問題は、ハードディスク駆動装置の磁気ヘッドがMRヘッドから構成されている場合にも発生する。即ち、MRヘッドは静電気に対して耐久性を有しておらず、それ故に、磁気ディスクに静電気が貯まるとMRヘッドが破損する恐れがある。そのため、空気動圧軸受を採用した場合には、回転部と静止部とを電気的に導通するアース手段が必要となる。このアース手段としては、一般的に流体シールが用いられる。(このような従来のスピンドルモータの流体シールとして特許文献1を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−240811
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10は従来のアース手段である流体シール構造図の一例を示す。
【0009】
流体シールZは、軸体Dの突起部の外周面とロータハブEに内嵌されているブッシュFの内周面との間に導電性流体を充填して形成されている。
【0010】
図10に示されるような従来の流体シール構造において、流体シールZの界面付近は循環する空気流Aが流体シールZの下側界面Bに衝突することとなる。この際、循環する空気流Aと下側界面Bを構成する流体との分子間衝突が激しく、下側界面Bを構成する流体が持つエネルギーが増大し、下側界面B付近の流体分子は液相の分子間力を振り切ってしまう。その結果、下側界面Bにおいて液相から気相への状態変化(蒸発)を生じてしまう。加えて流体シールZは、モータ外部より外気Cにさらされることで、上側界面B付近の流体分子は蒸発を引き起こす。外気Cは大気に繋がっているため、蒸発した流体分子で飽和することがなく、したがって、上側界面Bでは永久に蒸発を引き起こすこととなる。また循環する空気流Aは外気Cよりも運動エネルギーが高く、その循環する空気流Aと下側界面Bとの衝突による下側界面B付近の流体の蒸発は、空気流Aが有する運動エネルギーの下側界面B付近の流体への移動により、下側界面Bのエネルギーが増大し、より一層下側界面B付近の流体の蒸発は促進されてしまう。そのため、流体シールZの導電性流体の保持量が急速に減少してしまい、長期間十分な導電性流体の保持量を確保することができなくなり、流体シールとして機能する寿命が短くなってしまう。
【0011】
また通常は上側界面Bの表面張力(シール耐圧)と外気Cの圧力は釣り合っている。しかしながらモータ内部若しくはモータ外部に急激な圧力変化が起こった場合、この釣り合い状態は崩れ、外気Cの圧力がシール耐圧を超えた場合、流体シールとして充填した導電性流体が周囲に飛散してしまう。またモータ駆動開始時においても、一時的に空気流入量が空気流出量を上回るので、モータ内部の圧力が増大する。その結果、モータ内部の圧力が流体シールZのシール耐圧を超えた場合、導電性流体が外部に飛散してしまうことになる。
【0012】
本発明は、従来のディスク駆動装置におけるスピンドルモータの上記のような問題に鑑み行われたものであり、その目的とするところは、気体動圧軸受を採用した際に使用される導電性を持つアース手段である流体シールに保持された導電性流体の蒸発や飛散を抑えることである。
【0013】
また本発明のもう一つの目的とするところは、モータ回転部とモータ静止部を電気的に導通するアース手段である流体シールにおいて、流体シールにて保持している導電性流体を所定位置に所定量を確実に注入する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に記載のスピンドルモータは、モータ回転部とモータ静止部とをモータの回転軸心周りで相互に回転自在に保持する気体動圧軸受と、モータ回転部と前記モータ静止部との電気的な導通を行うために導電性流体を保持したアース手段とを具備するスピンドルモータにおいて、アース手段の回転軸心方向上側および下側に、それぞれ回転部の一部と静止部の一部とが微少間隙を介して対抗するラビリンス構造を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項1に従えば、アース手段の回転軸方向上側および下側にラビリンス構造部を有するので、下側のラビリンス構造部では、流体シールと気体動圧において循環されている空気との間にその間隔が非常に狭いラビリンス部が設けられているため、モータ内部の循環する空気の流入を防ぐ役目を果たす。その結果、循環する空気は、容易にアース手段との接触をすることが出来なくなり、アース手段の導電性流体の蒸発を押さえることが出来る。そして同様に上側のラビリンス構造部でも外気との接触を容易に出来ない構造となっている。従って、ラビリンス構造部内の空気はその外と隔離していることとなる。すなわち、外気との互換性がない。そのため、ラビリンス構造部内側の空気は、外側には移動しないので導電性流体の蒸発に対して直ぐに飽和してしまう。その結果、それ以上導電性流体に対して蒸発促進をすることができなくなり、導電性流体は蒸発しなくなる。またこのラビリンス構造部が飛散防止機構も兼ね備えるので、アース手段の導電性流体の飛散も抑えることができる。また外部衝撃等の圧力変化により、例え流体シールの充填した導電性流体が飛散したとしても、この微少間隙が流体シールの外部に飛散しようとする導電性流体を通さないので導電性流体量が減少することはない。
【0016】
本発明の請求項2に記載のスピンドルモータは、請求項1に係り、ラビリンス構造部は、回転部の一部と回転半径方向に微少間隙を介して対向する静止部の一部との少なくともどちらか一方が突形状を有することにより形成されることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項2に従えば、回転軸方向の上側および下側のラビリンス構造部におけるモータ回転部とモータ静止部との部品の組み合わせが同じであることから、部品点数を削減でき、コストダウンにつながる。
【0018】
本発明の請求項3に記載のスピンドルモータは、請求項1に係り、2つのラビリンス構造部は、回転部の一部と回転半径方向に微少間隙を介して対向する異なる2つの部材で形成された静止部とによってそれぞれ形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項3に従えば、回転軸方向の上側および下側のラビリンス構造部におけるモータ回転部とモータ静止部との部品の組み合わせが異なることから、ラビリンス構造部を形成するのに静止部と回転部を複雑な加工を行わなくてもよく、単純形状の組み合わせにより,ラビリンス構造部を形成することができる。
【0020】
本発明の請求項4に記載のスピンドルモータは、アース手段の回転軸心方向上側および下側におけるそれぞれのラビリンス構造は、アース手段の回転軸心方向上側および下側にそれぞれ環状の円板が微少間隙を有して狭着されることにより形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項4に従えば、上述した請求後1の効果をより確実に達成するためには、ラビリンス構造部の長さは長い方が、ラビリンス構造部両端の空気の流通をより少なくすることができる。ラビリンス構造部をモータの軸方向にとる場合、モータの軸方向の高さが大きくなり、より小型のモータが求められている環境下では、限界がある。そこで本発明では、モータの大きさに実質的に関係しない半径方向部分を活用して、ラビリンス構造部を形成することで、小型で寿命の長いアース手段を有する気体動圧軸受スピンドルモータを実現している。
【0022】
本発明の請求項5に記載のスピンドルモータは、モータ静止部に含まれるシャフトを有し、アース手段はアース手段回転部とアース手段静止部とにより構成され、シャフトに固定されたアース手段静止部には半径方向に向かう突出部を有し、突出部に対向してアース手段回転部に凹部を有し、対向部分に導電性流体を保持することを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項6に記載のスピンドルモータは、モータ回転部に含まれるシャフトを有し、アース手段はアース手段静止部とアース手段回転部とにより構成され、シャフトに固定されたアース手段回転部には半径方向に向かう突出部を有し、突出部に対向してアース手段静止部に凹部を有し、対向部分に導電性流体を保持することを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項5と請求項6とに従えば、高速回転による遠心力に対して優れた耐性をもつアース手段を実現することができる。すなわち、遠心力は半径方向外方に力がかかるが、本発明の構造である半径方向内側に向う凹部とこれに対向する突出部により、導電性流体は遠心力により半径方向外方に力がかかることによってアース手段の中心に集まるようになり、少なくとも回転時にはこの遠心力が導電性流体に作用するため、アース手段外部の飛散することはない。したがって、モータの回転数が上がるほど、このアース手段の中心に向う導電性流体の流れは強くなり、高速回転でも安定したアース性能をもつスピンドルモータを実現できる。
【0025】
本発明の請求項7に記載のスピンドルモータは、アース手段を形成する突出部および凹部により形成される対向面が、アース手段の軸心方向の中心に向かうほど対向部分の半径方向間隙が狭くなるテ−パ構造を形成していることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項7に従えば、アース手段における突出部とこれに対向する凹部との間の対向面がテ−パシール構造となるので、モータ静止時の外部からの衝撃に対しても、保持されている導電性流体の外部への飛散を、このテーパシ−ル部が防止する。また仮に一部が飛散しても、モータが回転した際作用する遠心力により、飛散した導電性流体は凹部に集められることとなり、元の正常な状態に戻ることになる。これにより静止時および回転時の双方で導電性流体の飛散が防止される。
【0027】
本発明の請求項8に記載のスピンドルモータは、モータ回転部とモータ静止部とをモータの回転軸心周りで相互に回転自在に保持する気体導圧軸受と、モータ回転部とモータ静止部との電気的な導通を行うために導電性流体を保持したアース手段と、アース手段の回転軸心方向上側および下側に、それぞれ回転部の一部と静止部の一部とが微少間隙を介して対抗するラビリンス構造部を有するスピンドルモータにおいて、モータ回転部とモータ静止部とを組み立てラビリンス構造部を形成する前に、モータ回転部とモータ静止部のラビリンス構造部に該当する部分に撥油剤を塗布する工程と、モータ回転部とモータ静止部とを組み立て前記ラビリンス構造部を形成した後に、ラビリンス構造部からアース手段に導電性磁性流体を注入する工程と、ラビリンス構造部に付着した導電性磁性流体を拭き取る工程とを有することを特徴とする。
【0028】
請求項1乃至請求項7に記載のアース手段部に導電性流体を注入し流体シールを形成する際には次のような問題がある。
【0029】
図11は回転軸方向上側および下側に微少間隙を介して対向するラビリンス構造部を有するアース手段部に導電性流体を注入する場面を示している。
【0030】
導電性流体をアース手段部に注入するためには、シリンジ針aを使用する。そしてアース手段である流体シールを形成する所定位置bに直接導電性流体を注入するためには、シリンジ針aの外径は、ラビリンス部の間隙eより細いことが望ましい。他方ラビリンス構造部が十分な効果を発揮するためには、その間隙は狭いほど良く、通常数10μmから100μm程度が望ましく、これに対応するシリンジ針を実現することは困難である。
【0031】
また間隙eをシリンジ針aの直径以上にできないので、間隙eを形成する前に、アース手段部に導電性流体を注入しようとすると、ブッシュdとロータハブfが内嵌される前にブッシュdと軸体cとの間隙e1に導電性流体を注入する方法、すなわち、ロータハブfと軸体cとの間隙に導電性流体を注入する方法が考えられる。しかしながら前記方法では、完全にアース手段部を形成していないため、所定量の導電性流体を保持することができない。さらにロータハブfのブッシュdが内嵌される部分gに導電性流体が付着してしまう可能性がある。そしてロータハブfにブッシュdを固定するために、内嵌部分gに接着剤を使用する際、導電性流体が付着しているため接着剤が硬化しない可能性があり、その結果、未硬化部により導電性流体が漏れてしまい流体シールとしての機能を果たさなくなる可能性がある。
【0032】
これに対して、本発明の請求項8に従えば、ラビリンス構造部を形成する前にモータ回転部およびモータ静止部のラビリンス構造部を形成する場所に予め撥油剤を塗布することにより、容易にラビリンス構造部に撥油剤を塗布することができる。またアース手段に導電性流体を注入する部分以外にラビリンス構造部にも導電性流体は付着するが、ラビリンス構造部に撥油剤を塗布することにより、容易に拭き取ることができ、所定位置のみに導電性流体が注入されることとなる。
【0033】
本発明の請求項9に記載のスピンドルモータは、ラビリンス構造部からアース手段に導電性流体を注入する前のモータ重量を測定する工程と、請求項8における、アース手段に導電性流体を注入する工程およびラビリンス構造部に付着した導電性流体を拭き取る工程、を実行した後のモータ重量を測定することにより、所定量の導電性流体を注入したか否かを確認する工程とを更に含むことができることを特徴とする。
【0034】
本発明の請求項9に従えば、導電性流体注入前のモータ重量と導電性流体注入後、アース手段以外に付着した導電性流体を拭き取った後のモータ重量とを測定することにより、アース手段に注入した導電性流体量を把握することができるので、所定量のオイルを正確に注入することができる。
【0035】
本発明の請求項10に記載のスピンドルモータは、請求項8に記載の導電性流体の注入方法であって、前記アース手段には、前記上下のラビリンス構造部の一方のラビリンス構造部に前記アース手段の外側で隣接する、注入する導電性流体を一時的に保持する円環状の注入流体保持部を設け、前記導電性流体を注入する工程が、前記注入流体保持部に所定量の導電性流体を供給する工程と、前記導電性流体を前記注入流体保持部とは反対側の他方のラビリンス構造部の前期アース手段の外側から、所定量の空気を吸い込むことで、前記導電性流体を前記アース手段の軸線方向中央部に引き込む工程と、によりなる。
【0036】
本発明の請求項10に従えば、請求項1乃至請求項7記載の発明におけるシール手段に、的確に導電性流体を注入することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、気体動圧軸受に使用される導電性を持つアース手段である流体シールに保持された導電性流体の蒸発や飛散を抑えることができる。また、流体シールにて保持している導電性流体を所定位置に所定量を確実に注入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に従うスピンドルモータおよび本発明に従う記録媒体駆動装置の一実施形態について説明する。図1は、本発明に従う記録媒体駆動装置の一実施形態を簡略的に示す断面図であり、図2は、本発明に従うスピンドルモータの一実施形態を示す断面図である。
【0039】
図1において、記録媒体駆動装置は直方体状の装置ハウジング2を備え、装置ハウジング2は下部ハウジング4とカバー部材6から構成されている。下部ハウジング4はベース部8と、このベース部8の下部ハウジング4側壁部から上方に延びる側壁部10を有し、側壁部10によって規定される矩形状の上面開口を覆うようにカバー部材6が下部ハウジング4に取り付けられ、下部ハウジング4およびカバー部材6が実質上密閉された収容室12を構成する。
【0040】
装置ハウジング2の収容室12内には、記録媒体装置としての磁気ディスク14と、磁気ディスク14を回転駆動させるためのスピンドルモータ16と、記録情報を書き込みおよび/または読み出すための書き込みおよび/または読み出し手段としての磁気ヘッド18と、磁気ヘッド18を磁気ディスク14に対して所要の通りに移動させるためのヘッド移動機構20が収容されている。ヘッド移動機構20は、各磁気ディスク14の上下に配設されたアーム部材22を備え、これらアーム部材22の先端部に磁気ヘッド18が装着されている。ヘッド移動機構20は、更に、ボイスコイルモータの如きアクチュエータ24を備え、かかるアクチュエータ24によってアーム部材22が磁気ディスク18に近接および離隔する方向に旋廻される。
【0041】
このような記録媒体駆動装置では、スピンドルモータ16が後述するように回転することによって、磁気ディスク14が所定方向に回転駆動される。アクチュエータ24はアーム部材22を旋廻し、それらに装着された磁気ヘッド18は対応する磁気ディスク14の略径方向に移動し、磁気ヘッド18の作用によって記録すべき記録情報が磁気ディスク14に磁気的に記録され、また磁気ディスク14に記録された記録情報が磁気ヘッド18によって読み取られる。
【0042】
次に、図2を参照して、図示のスピンドルモータ16に関して説明すると、このスピンドルモータ16は略円形状のブラケット700を備え、このブラケット700の略中央部に軸体100が軸方向に例えば圧入によって立設されている。このブラケット700および軸体100は、例えば鉄、ステンレス鋼等の導電性および磁性を有する材料から形成される。またブラケット700と軸体100は、一体成形でもよい。ブラケット700から実質上垂直に延びる軸本体部102と、この軸本体部102の上端から延びる先端軸部101を有する。軸体100の軸本体部102には、下端から上端に向けて(図2において下から上に向けて)下環状部材810、スリーブ部材800および上環状部材820がこの順序で装着され、上環状部材820および下環状部材810の外周部は、スリーブ部材800から半径方向外方に突出している。軸体100が設けられたブラケット700は、記録媒体駆動装置の装置ハウジング2のベース部8に取付用ねじ(図示せず)によって図2に示すように取り付けられる。尚、ブラケット700を省略し、軸体100を装置ハウジング2のベース部8に直接的に装着するようにしてもよい。
【0043】
軸体100にロータハブ300が回転自在に支持されている。ロータハブ300は円筒スリーブ状のハブ本体301を有し、このハブ本体301の下部には半径方向外方に突出する環状フランジ302が一体的に設けられている。このハブ本体301は、例えばアルミニウムまたはアルミ合金等の導電性材料から形成される。環状フランジ302には、複数枚(この形態では、例えば3枚)の磁気ディスク14(図1参照)が環状スペーサ303を介して載置され、ロータハブ300にクランプ手段304を装着することによって、これら磁気ディスク14が固定される。尚、ロータハブ300に取り付けられる磁気ディスク14の枚数は、記録媒体駆動装置の記憶容量に関連して1枚、2枚または4枚以上の適宜の枚数に設定することができる。
【0044】
ハブ本体300の内周面には、軸体100のスリーブ部材800に対応して軸受スリーブ830が例えば圧入によって装着されている。図2に示すように、軸受スリーブ830の内周面はスリーブ部材800の外周面に対向して配置され、その下端面は下環状部材810の内周端面外周部に対向して配置され、またその上端面は上環状部材820の内周端面外周部に対向して配置される。このロータハブ300は、気体動圧軸受手段を介して軸体100に回転自在に支持されている。この実施形態では、気体動圧軸受手段は一対のラジアル気体動圧軸受部831、832と一対のスラスト気体動圧軸受部811,821から構成されている。ロータハブ300に作用するラジアル荷重を支持するためのラジアル気体動圧軸受部831、832は、軸体100のスリーブ部材800の外周部とロータハブ300の軸受スリーブ830の内周面との間に軸線方向(図2において上下方向)に間隔をおいて設けられ、この形態では軸受スリーブ830の内周面に形成された軸受グルーブ833、834から構成されている。この軸受グルーブ833,834は、軸受スリーブ830の内周面に設けることに代えて、またはこれに加えてスリーブ部材800の外周面に設けるようにしてもよい。また、ロータハブ300に作用するスラスト荷重を支持するためのスラスト気体軸受部811、821のうち上側の軸受部821は、上環状部材820の内側端面と軸受スリーブ830の上端面との間に設けられ、この形態では上環状部材820の内側端面に形成された軸受グルーブ822から構成されている。また、下側の軸受部811は、下側環状部材810の内側端面に形成された軸受グルーブ812から形成されている。軸受グルーブ812,822は、上環状部材820および下環状部材810の内側端面に設けることに代えて、またはこれに加えて軸受スリーブ830の上端面および下端面に設けるようにしてもよい。
【0045】
ロータ本体301の下端部外周面には、環状のロータマグネット350が装着されている。また、このロータマグネット350に対向してその半径方向外方にステータ900が配設されている。ステータ900はコアプレートを積層することによって形成されるステータコア910と、このステータコア910に所要の通りに巻かれたコイル920から構成され、かかるステータコア910がブラケット本体700の外周部に設けられた周側壁710の内周面に取り付けられている。
【0046】
上述のように構成されているので、コイル920に駆動電流を供給すると、ステータコア910が所要の通りに磁化され、ステータコア910とロータマグネット350との相互磁気作用によってロータハブ300およびこれに取り付けられた磁気ディスク14(図1参照)が所定方向に回転駆動される。ロータハブ300が上述のように回転駆動すると、一対のラジアル気体動圧軸受部831、832においては、スリーブ部材800と軸受スリーブ830との間隙に存在する気体が軸受グルーブ833,834の作用によって圧縮されてその圧力が高められ、また一対のスラスト気体軸受部811、821においては、軸受スリーブ830と上環状部材820および下環状部材810との間隙に存在する空気が軸受グルーブ812,822の作用によって圧縮されてその圧力が高められることにより、ハブ本体301は圧縮空気層を介して回転自在に支持される。
【0047】
このスピンドルモータ16においては、ロータハブ300と軸体100との間の電気的導通を確保するために、アース手段である流体シールが設けられており、そのアース手段の回転軸方向上側および下側にはラビリンス構造部が形成されている。以下に実施形態に沿ってこのラビリンス構造部に関して詳述する。
【0048】
1)流体シールのラビリンス構造部における第一の実施形態
図3に本発明の流体シールの回転軸方向上側および下側に設けられたラビリンス構造部における第一の実施形態の断面図を示す。
【0049】
軸体100は図3に示されるように軸体100の回転軸方向上側および下側に半径方向外方側に向かう突部である上方突部110と下方突部120が設けられている。軸体100の上方突部110と半径方向に対向しているブッシュ200は、ハブ300に内嵌される。ブッシュ200の内周面は、回転軸方向上側および下側で半径方向に長さが異なって凹んでおり、内周面上端部220は、微少間隙をもって軸体100と対向するラビリンス構造部を形成している。またブッシュ200の軸方向の下面では、突部230が形成されており、軸体100の下方側突部120と微少間隙をもって対向してラビリンス構造部を形成している。なおブッシュ200の内周側の下端部240の内周直径は、軸体100の上方突部110の先端部直径より大きい。これによりブッシュ200を軸体100の所定位置に挿入し組み立てることが可能となる。
【0050】
2)流体シールのラビリンス構造部における第二の実施形態
図4に本発明の流体シールの回転軸方向上側および下側に設けられたラビリンス構造部における第二の実施形態の断面図を示す。
【0051】
軸体100は図4に示されるように半径方向外側に向かう突部110が設けられている。軸体100の突部110の回転軸方向上側と半径方向に対向しているブッシュ200は、軸体100の回転軸方向に対してほぼ垂直に配置されてロータハブ300に内嵌される。ブッシュ200の内周面部210では、軸体100の突部110の中央部を対称中心として回転軸心方向に離れるほど、対向する面の最短間隙が徐々に広がっていく、いわゆるテ−パシール構造が設けられている。そして内周テ−パ部210の上端部211では、軸体100の外周面にテーパシール部よりも微少な間隙を有して対向する上部ラビリンス構造部が形成されている。また軸体100の突部110の中央部の軸方向下方側では、ロータハブ300が軸体100の突部110に半径方向に対向して配置されている。ロータハブ300の内周テ−パ部310では、ブッシュ200の内周テ−パ部210と同様に軸体100の突部110の中央部を対称中心として回転軸方向に離れるほど、対向する面の最短間隙が徐々に広がっていく、いわゆるテ−パシール構造が設けられている。そして内周面部310の下端部311では、軸体100の外周面にテ−パシール構造部よりも微少な間隙を有して対向している下部ラビリンス構造部が形成されている。このブッシュ200とロータハブ300のテ−パシール構造部には、導電性流体400が、図4に示されるような気液界面であるメニスカス構造を形成して保持される。この構造により、流体シールには安定した表面張力が働き、外部衝撃等による流体の飛散を防止し、流体が長期間量的に安定して保持される。そしてブッシュ200の上端部211とロータハブ300の下端部311とに設けられている上下のラビリンス構造部の微少間隙により、モータ内外部より流体シール構造部への外気流入を防ぐことができ、これにより導電性流体の蒸発を防ぐことができる。また上下のラビリンス構造部にて囲まれた空間は外部より隔離されることとなるので、空間内部の空気は導電性流体の蒸発に対してすぐに飽和してしまい、それ以上流体シールが蒸発しなくなる。したがって、導電性流体の蒸発を抑えることができ、長期間安定した流体シールを形成することができる。そして外部衝撃等の圧力変化により、たとえ導電性流体が飛散したとしても、このラビリンス構造部が飛散流体シールの外部への流出を抑えるため、導電性流体量が減少することはない。また図3に示されるような流体シール形状では、流体シール自体が長く形成されることから、充填できる導電性流体量を多くすることができる。したがって、許容できる流体シールの蒸発量、すなわち流体シールが機能しなくなるまで導電性流体が蒸発してもよい量が多くなり、長期的に安定した流体シールを形成することができる。
【0052】
3)流体シールのラビリンス構造における第三の実施形態
図4に本発明の流体シールの軸方向上側および下側に設けられたラビリンス構造における第三の実施形態の断面図を示す。
【0053】
軸体100は図5に示されるように半径方向外方側に向かう突部110が設けられている。ブッシュ500は、軸体100の突部110と半径方向に対向して配置され、ロータハブ300に内嵌されている。ブッシュ500の内周面510と軸体100の突部110の外周面とで形成される間隙には、流体シールが形成されている。そしてこの流体シールを挟むようにブッシュ500の軸方向上下側には、環状の円板600,610が設けられる。この環状の円板600、610とロータハブ300とで形成された間隙および環状の円板600、610とブッシュ500とで形成された間隙は微少であり、モータ内外部より流体シールへ侵入しようとする空気を流体シールに接触させない機能を有する。本実施形態は流体シールの回転軸方向上側および下側を環状の円板600、610で挟んだ形状となるので、間隙の距離が長く、その距離分より一層外部の空気との接触を防ぐことができる。したがって流体シールと空気との接触にて発生する蒸発をより一層防ぐことができる。またこれらの間隙にて囲まれた空間は空間外部より隔離されることとなるので、空間内外の空気の循環がなくなる。すなわち、空間内の空気は飽和してもそれを飛散するところがなくなる。したがって、空間内の空気は常に飽和しており、空間内の空気はある一定以上流体シールの蒸発を促進することができなくなる。よって、流体シールの蒸発を抑えることができ、長期間安定した流体シールを形成することができる。そして外部衝撃等の圧力変化により、たとえ流体シールの充填した導電性流体が飛散したとしても、この微少間隙が流体シールの外部に飛散した導電性流体を通さないので導電性流体量が減少することはない。
【0054】
次に、例えば実施形態2のようなラビリンス構造をもつ流体シール部の導電性流体の注入方法について図6及至図8を参照し、述べる。
【0055】
まず、ロータハブ300とブッシュ200とを内嵌する。その際、ロータハブ300とブッシュ200とを半径方向と軸心方向とにそれぞれ内嵌する箇所212、213には、接着材を使用し、ロータハブ300とブッシュ200との接合部分の間隙が完全になくなるように固着する。これは流体シールの導電性流体を注入した際、ロータハブ300とブッシュ200との接合部212、213にオイルが封止できるような効果をもつ。次に図6に示されるようにロータハブ300およびブッシュ200と軸体100との間隙部111、112、211、310に撥油剤を塗布する。そして、ロータハブ300およびブッシュ200と軸体100とを組立て、ラビリンス構造部を形成する。
【0056】
次に図7に示されるようにシリンジ針を軸方向上側のラビリンス構造部410に接近させ、導電性流体を注入する。注入された導電性流体はまずラビリンス構造部410に充填される。そしてさらに導電性流体を注入することにより、軸体100の突部110を軸心方向上側および下側で囲んだラビリンス構造内の空間に導電性流体を注入することができる。この状態では、導電性流体は軸方向上側のラビリンス構造部410と軸体100の突部110を軸方向上側および下側で囲んだラビリンス構造内の空間420の2箇所に分断された状態となる。しかしながら、上記ラビリンス構造部410には、撥油剤が塗布してあるので、容易に拭き取ることができる。すなわち、図8に示されるように軸体100の突部110を軸方向上側および下側で囲んだラビリンス構造内の空間420に注入された導電性流体量のみとなる。そして図6で示される導電性流体注入前のモータ重量と図8で示される導電性流体注入後のモータ重量との差を取ることにより、正確に所定量の導電性流体量を注入することができる。更に導電性流体注入前のモータ重量と導電性流体注入後のモータ重量との差をとることで回転軸方向の上側と下側とで囲んだラビリンス構造内に注入した導電性流体量が把握できるので、所定位置に注入した導電性流体量の管理が容易である。
【0057】
上記のラビリンス構造部を有する流体シール部への導電性流体の注入方法は、実施形態1に関しても同様に行うことができる。実施形態2に関しては、流体シール部へ導電性流体を注入後、環状の円板を流体シールの回転軸方向上側および下側に狭着することにより、ラビリンス構造部を形成すればよい。
【0058】
また図9に示されるように軸体100とブッシュ200にて形成されるラビリンス構造部410の軸方向上側に円環状の注入する導電性流体の保持部430を形成した場合の導電性流体の注入方法を記述する。基本的には、上述の導電性流体の注入方法と同様である。ここでは、上記注入方法と異なる点について記述する。軸体100とブッシュ200との対向部分の一部を面取りすることにより、保持部430を形成する。その保持部430に所定量の導電性流体を注入する。そして、軸体100とロータハブ300とで形成されるラビリンス構造部440より空気を吸気することにより、導電性流体を軸体100の突部110を軸方向上側および下側で囲んだラビリンス構造内の空間420に移動させる。
【0059】
以上、本発明のラビリンス構造部およびアース手段部とスピンドルモータとラビリンス構造部への潤滑流体の注入方法とについて説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】記録媒体駆動装置を示す図である。
【図2】本発明のスピンドルモータの一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の流体シールのラビリンス構造の第二実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の流体シールのラビリンス構造の第二実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の流体シールのラビリンス構造の第三実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明のオイル注入方法のオイル注入前を示す断面図である。
【図7】本発明のオイル注入方法のオイル注入後を示す断面図である。
【図8】本発明のオイル注入方法のオイル拭き取り後を示す断面図である。
【図9】本発明のオイル注入方法の別形態を示す断面図である。
【図10】従来の流体シール構造を示す断面図である。
【図11】本発明のオイル注入を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
2 装置ハウジング
12 収容室
16 スピンドルモータ
100 軸体
110 軸体突部
200、500 ブッシュ
210、510 ブッシュ内周部
300 ロータハブ
310 ロータハブ内周部
400 流体シール
410 ラビリンス構造部
600、610 ラビリンスシール
700 ブラケット
800 スリーブ部材
810 下環状部材
820 上環状部材
830 軸受スリーブ
831、832 ラジアル気体動圧軸受部
811、821 スラスト気体動圧軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ回転部とモータ静止部とを当該モータの回転軸周りで相互に回転自在に保持する気体動圧軸受と、前記モータ回転部と前記モータ静止部との電気的な導通を行うために導電性流体を保持したアース手段とを具備するスピンドルモータにおいて、
前記アース手段の回転軸方向上側および下側に、それぞれ前記回転部の一部と前記静止部の一部とが微少間隙を介して対抗するラビリンス構造部を有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のスピンドルモータの前記ラビリンス構造部は、前記回転部の一部と回転半径方向に微少間隙を介して対向する前記静止部の一部との少なくともどちらか一方が突形状を有することにより形成されることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項3】
請求項1に記載のスピンドルモータの2つの前記ラビリンス構造部は、前記回転部の一部と回転半径方向に微少間隙を介して対向する異なる2つの部材で形成された前記静止部とによってそれぞれ形成されることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項4】
請求項1に記載のスピンドルモータにおいて、前記アース手段の回転軸方向上側および下側におけるそれぞれの前記ラビリンス構造は、前記アース手段の回転軸方向上側および下側にそれぞれ環状の円板が微少間隙を有して狭着されることにより形成されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のスピンドルモータにおいて、前記アース手段はアース手段回転部とアース手段静止部とにより構成され、前記アース手段静止部は半径方向に向かう突出部を有し、該突出部に対向して前記アース手段回転部に凹部を有し、該対向部分に導電性流体を保持することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項6】
請求項1〜4に記載のスピンドルモータにおいて、前記アース手段はアース手段静止部とアース手段回転部とにより構成され、前記アース手段回転部は半径方向に向かう該突出部を有し、該突出部に対向して前記アース手段静止部に凹部を有し、該対向部分に導電性流体を保持することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のスピンドルモータにおいて、前記アース手段を形成する前記突出部および前記凹部が、前記アース手段の軸方向の中心に向かうほど前記対向部分の半径方向間隙が狭くなるテ−パ構造を形成していることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項8】
モータ回転部とモータ静止部とを当該モータの回転軸周りで相互に回転自在に保持する気体動圧軸受と、前記モータ回転部と前記モータ静止部との電気的な導通を行うために導電性流体を保持したアース手段と、該アース手段の前記回転軸方向上側および下側に、それぞれ前記回転部の一部と前記静止部の一部とが微少間隙を介して対抗するラビリンス構造部を有するスピンドルモータにおいて、
前記モータ回転部と前記モータ静止部とを組み立て前記ラビリンス構造部を形成する前に、前記モータ回転部と前記モータ静止部の前記ラビリンス構造部に該当する部分に撥油剤を塗布する工程と、前記モータ回転部と前記モータ静止部とを組み立て前記ラビリンス構造部を形成した後に、前記ラビリンス構造部からアース手段に導電性磁性流体を注入する工程と、前記ラビリンス構造部に付着した導電性磁性流体を拭き取る工程とを有することを特徴とする導電性流体の注入方法。
【請求項9】
請求項8に記載の導電性流体の注入方法であって、前記ラビリンス構造部から前記アース手段に導電性流体を注入する前のモータ重量を測定する工程と、前記アース手段に導電性流体を注入する工程および前記ラビリンス構造部に付着した導電性流体を拭き取る工程を実行した後の当該モータ重量を測定する工程と、これらのモータ重量を比較することにより、所定量の導電性流体を注入したか否かを確認する工程とを更に含むことを特徴とするアース手段への導電性流体の注入方法。
【請求項10】
請求項8に記載の導電性流体の注入方法であって、前記アース手段には、前記上下のラビリンス構造部の一方のラビリンスに前記アース手段の外側で隣接する、注入導電性流体を一時的に保持する円環状の注入流体保持部を設け、
前記導電性流体を注入する工程が、前記注入流体保持部に所定量の導電性流体を供給する工程と、前記導電性流体を前記注入流体保持部とは反対側の他方のラビリンスの前記アース手段の外側から、所定量の空気を吸込むことで、前記導電性流体を前記アース手段の軸線方向中央部に引き込む工程と、によりなることを特徴とする。
【請求項11】
情報を記録できる円板状記録ディスクが装着される記録ディスク駆動装置において、
ハウジングと、前記ハウジング内部に固定され、前記記録媒体を回転させるスピンドルモータと、前記記録ディスクの所要の位置に情報を書き込みまたは読み出しのための情報アクセス手段と、を有する記録ディスク駆動装置であって、
前記スピンドルモータは、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載したスピンドルモータであることを特徴とする記録ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−187135(P2006−187135A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378660(P2004−378660)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】