説明

電動機

【課題】 本発明は、独立して回転する複数のロータを備えつつ簡易な構造で十分な機械的強度を確保できる構造の電動機を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の電動機1は、ハウジング3と、該ハウジング3に形成された第1室5と、該ハウジング3に形成された第2室7と、該第1室5に配設された第1ステータ10と、該第1室5に配設され該第1ステータ10に対向する第1ロータ11と、該第1ロータ11を回転可能に支持する第1ロータ支持部材12と、該1ロータ支持部材12に固定された第1回転軸13と、該第2室7に配設された第2ステータ21と、該第2室7に配設され該第2ステータ21に対向する第2ロータ23と、該第2ロータ23に固定された第2回転軸25と、該第2回転軸25及び該第1ロータ支持部材12を互いに回転可能な状態で、該第2回転軸25を該第1ロータ支持部材12に支持する二重軸受9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立して回転する二つのロータを備える電動機(モーター)に関し、より詳細にはこれらのロータを、二重軸受を介して支持する構造の電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車搭載の燃料電池の開発が急速に進む現在、車の駆動出力源となるモーターの研究は意外に遅れている。これは、発電機、モーターが完成されたものであり改良の余地が少ない、と考えられていることに原因があると思われる。
【0003】
しかし、2003年10月に開催された第37回東京モーターショーにて、日産自動車株式会社がスーパーモーターと称するモーターを発表した。このスーパーモーターは、1つのステータの内側と外側にそれぞれロータを配し、電磁石に複合電流を流す技術により、モーターの左右に配したそれぞれの出力軸の回転を個別に制御するものであった。この場合に、ステータが一つで済む理由は、複合電流を使用するためと説明されている。スーパーモーターは、独立したモーターを2つ搭載する場合に比べ小型化と高効率化が図ることを目的としたものであった。なお、同社からはこのスーパーモーターに関連するものとして、同社から特許文献1の他多数の特許出願がされている。
【0004】
また、同様の技術は、株式会社デンソーから特許文献2として特許出願がされている。車両用駆動装置は、ハウジングに固定されているステータと、ステータの内側に配置され駆動輪と接続される第2ロータと、第2ロータの内側に配置されエンジンの出力軸と接続される第1ロータとを有する。そして、第1ロータと第2ロータとの間に内周磁気回路が形成され、第2ロータとステータとの間に外周磁気回路が形成されてトルクの授受が行われることにより、軸出力の伝達が行われる。
【0005】
これらの技術は、主に燃料電池車やハイブリッド車に適用すること目的としており、両輪を駆動する両軸モーターが開発され両軸の独立制御が可能になれば、駆動部品の低減に直接寄与する。そのため、その効果は大きく環境問題の低減に寄与する可能性が高く、実用化できた場合には、燃料電池車の駆動モーターとして主流を占めることが出来るものと予想される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−299270号公報
【特許文献2】特開平11−187614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したスーパーモーターは電気的に制御が可能であるとしてもその構造は、特許文献1の記載を分析すると機械的な構造に問題があることが分かる。具体的に機械的な構造の問題とは、特許文献1に記載の電動機では、ステータが片持ち構造であり、さらにロータの軸受を配置する位置が回転構造としては不適切なことである。従って、特許文献1に記載の電動機では、自動車を駆動するための出力(スーパーモーターの場合は左右で30KW、これは換算すると約40馬力となる)に耐えられない構造となるため、実用化までの課題は大きいと言わざるを得ない。
【0008】
また、特許文献1及び2の何れにおいても、二つのロータ及び一つのステータを全て一重の軸受のみで支持しているため、電動機の構造が複雑になり組立が困難になるばかりでなく部品の精度も高いものが要求されることとなり、これらの技術が目的としている軽量小型化を図れないおそれも生じる。
【0009】
そこで、本発明は、独立して回転する複数のロータを備えつつ簡易な構造で十分な機械的強度を確保できる構造の電動機及び発電兼電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動機は、上記課題を解決するものであって、請求項1に記載の発明は、ハウジング3と、該ハウジング3に形成される第1室5と、該ハウジング3に形成される第2室7と、該第1室5に配設される第1ステータ10と、該第1室5に配設され該第1ステータ10に対向する第1ロータ11と、該第1ロータ11を回転可能に支持する第1ロータ支持部材12と、該1ロータ支持部材12に固定される第1回転軸13と、該第2室7に配設される第2ステータ21と、該第2室7に配設され該第2ステータ21に対向する第2ロータ23と、該第2ロータ23に固定される第2回転軸25と、該第2回転軸25及び該第1ロータ支持部材12を互いに回転可能な状態で、該第2回転軸25を該第1ロータ支持部材12に支持する二重軸受9と、を備えることを特徴とする電動機1、201、301である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記二重軸受が、外輪9aと、該外輪9aの内側に配設される中間輪9bと、該中間輪9bの内側に配設される内輪9cとを備え、該外輪9aと該中間輪9bとの間及び該中間輪9bと該内輪9cとの間には複数の転動体9d、9eがそれぞれ配設されることを特徴とする請求項1記載の電動機1、201、301である。請求項3に記載の発明は、前記外輪9aは前記第1ロータ支持部材12に固定され、前記内輪9cは前記第2回転軸25に固定されることを特徴とする請求項2記載の電動機1、201、301である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記中間輪9bは前記ハウジング3(ストッパー3e)に固定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動機201、301である。請求項5に記載の発明は、前記第1回転軸13は前記ハウジング3の一端面(左端面)から外部に突出し、前記第2回転軸25は前記ハウジング3の他端面(右端面)から外部に突出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電動機1、201である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記第1回転軸13は円筒状であり前記ハウジング3の一端面(左端面)から外部に突出し、前記第2回転軸25は円筒状の該第1回転軸13を介して前記ハウジング3の該一端面(左端面)から外部に突出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電動機301である。
【0014】
さらに、請求項7に記載の発明は、エンジンと発電機又は蓄電池により駆動される電動機とを備え、該エンジン及び該電動機による駆動力を組み合わせて走行し、減速時に該発電機によって発電して該蓄電池に充電するハイブリッド車において、ハウジング403と、該ハウジング403に形成される第1室405と、該ハウジング403に形成される第2室407と、該第1室405に配設される第1ステータ410と、該第1室405に配設され該第1ステータ410に対向する第1ロータ411と、該第1ロータ411を回転可能に支持する第1ロータ支持部材412と、該1ロータ支持部材412に固定される第1回転軸13と、該第2室407に配設される第2ステータ421と、該第2室407に配設され該第2ステータ421に対向する第2ロータ423と、該第2ロータ423に接続される第2回転軸25と、該第2回転軸25及び該第1ロータ支持部材412を互いに回転可能な状態で該第2回転軸25を該第1ロータ支持部材423に支持する二重軸受9とを備え、該発電機を該第1室405側の該第1ステータ410及び該第1ロータ411から構成し、該電動機を該第2室407側の該第2ステータ421及び該第2ロータ423から構成することを特徴とするハイブリッド車用発電兼電動機401である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、第1室405と第2室407とを非対称とすることを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド車用発電兼電動機401である。請求項9に記載の発明は、前記二重軸受9は、外輪9aと、該外輪9aの内側に配設される中間輪9bと、該中間輪9bの内側に配設される内輪9cとを備え、該外輪9aと該中間輪9cとの間及び該中間輪9bと該内輪9cとの間には複数の転動体9d、9eがそれぞれ配設されることを特徴とする請求項7又は8に記載のハイブリッド車用発電兼電動機401である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、前記外輪9aは前記第1ロータ支持部材412に固定され、前記内輪9cは前記第2回転軸25に固定されることを特徴とする請求項7乃至9の何れか一項に記載のハイブリッド車である。請求項11に記載の発明は、前記中間輪9bは前記ハウジング403(ストッパー3e)に固定されることを特徴とする請求項9又は10に記載のハイブリッド車用発電兼電動機401である。
【0017】
また、請求項12に記載の発明は、ハウジング503と、該ハウジング503に配設されるアウターロータ505と、該ハウジング503に対して該アウターロータ505を回転可能に支持するアウターロータ支持部材506と、該アウターロータ支持部材506に固定される第1回転軸513と、該アウターロータ505に対向するように該アウターロータ支持部材506内に配設されるステータ507と、該アウターロータ支持部材506内でステータ507を支持するステータ支持部材508と、該ステータ支持部材508内で該ステータ507に対向するように配設されるインナーロータ523と、該インナーロータ523に固定される第2回転軸525と、該アウターロータ支持部材506及び該第2回転軸525を互いに回転可能な状態で該第2回転軸525を該アウターロータ支持部材506に支持する二重軸受509a、509bと、を備えることを特徴とする電動機501である。
【0018】
請求項13に記載の発明は、前記二重軸受は、前記アウターロータ支持部材506の一端(左側面)側に配設される第1二重軸受509aと、該アウターロータ支持部材506の他端(右側面)側に配設される第2二重軸受509bとを含む請求項12記載の電動機501である。請求項14に記載の発明は、前記二重軸受は、外輪9aと、該外輪9aの内側に配設される中間輪9bと、該中間輪9bの内側に配設される内輪9cとを備え、該外輪9aと該中間輪9bとの間及び該中間輪9bと該内輪9cとの間には複数の転動体9d、9eがそれぞれ配設されることを特徴とする請求項12又は13に記載の電動機501である。
【0019】
請求項15に記載の発明は、前記外輪9aは前記アウターロータ支持部材506に固定され、前記内輪9cは前記第2回転軸525に固定されることを特徴とする請求項14に記載の電動機501である。請求項16に記載の発明は、前記中間輪9bは前記ステータ支持部材506(ストッパー506a、506b)に固定されることを特徴とする請求項14又は15に記載の電動機501である。請求項17に記載の発明は、請求項1乃至6又は請求項12乃至16の何れか一項に記載の電動機を備えることを特徴とする電気自動車である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電動機によれば、同一のハウジング内で二重軸受を介して第1ロータと第2ロータとを互いに回転可能な状態で支持することができるため、2つの電動機を設ける場合に比べて、大幅な省スペース化を図ることが出来る。また、第1ロータ側の回転数と第2ロータ側の回転数とが異なる場合であっても二重軸受により差動による影響を低減できる。さらに、二重軸受の中間輪をハウジングに対して固定することにより、差動による影響を完全になくすことも可能となる。
【0021】
また、本発明の電動機によれば、従来のように電動機の出力軸が一つの場合には、電動機を使用する自動車等の車両において、進行方向を変更する場合に左右の車輪の回転を変えるために、デファレンシャルギア(差動歯車)が必要になるが、本発明の電動機であれば、左右の車輪をそれぞれ独立して制御できるため、デファレンシャルギア等の機械部品が不要になり電動機の小型化、車両の軽量化に寄与する。
【0022】
さらに、本発明のハイブリッド車用発電兼電動機によれば、同一のハウジング内で二重軸受を介して第1ロータと第2ロータとを互いに回転可能な状態で支持することができるため、発電機と電動機とを個別に設ける場合に比べて、大幅な省スペース化を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の電動機の各実施形態を図面に従って説明する。なお、同一部材には同一符号を付しその説明は省略する。
本発明の第1実施形態の電動機1を図1乃至図3を用いて説明する。本実施形態では、二重軸受をハウジングの中央に配し、二つの電動機を一つのハウジングに収容したものである。
【0024】
図1において、ハウジング3は円筒形であり、その内部は隔壁3aによりハウジング3の左側に位置する第1室5と、ハウジング3の右側に位置する第2室7との二つに分割されている。第1室5には、ハウジング3の円筒内面の全周にわたって第1ステータ10が配設され、第1ステータ10の内面側には、当該第1ステータ10に対向するように第1ロータ11が配設されている。第1ロータ11は第1ロータ支持部材12により支持されている。第1ロータ支持部材12の左端には円筒状の第1回転軸13が一体に形成されており、第1回転軸13は第1ロータ11と一体となって回転する。
【0025】
また、第1回転軸13の左端部は、ハウジング1の左端面に形成された円形開孔3bからハウジング3の外部に突出するように配置されている。なお、第1回転軸13と円形開孔3bとの間には、複数の軸受15が配設されており、これによって、第1回転軸13がハウジング3に対して回転可能に支持されている。一方、第1ロータ支持部材12の右端には円筒支持部17が一体に形成されており、円筒支持部17と、隔壁3aに形成された円形開孔3cとの間には複数の軸受19が配設されており、これによって、円筒支持部17がハウジング3に対して回転可能に支持されている。このように、第1室5側で、第1ステータ10、第1ロータ11、第1回転軸13から第1電動機が構成される。
【0026】
さらに、図1に基づいて第2室7側を説明する。ハウジング3の円筒面内側に全周にわたって第2ステータ21が配設され、第2ステータ21の内面側には当該第2ステータ21に対向するように第2ロータ23が配設されている。第2ロータ23は第2ロータ支持部材24により支持されている。第2ロータ23の回転中心には第2回転軸25が形成されており、第2回転軸25は第2ロータ23及び第2ロータ支持部材24と一体となって回転する。また、第2回転軸25の右端部は、ハウジング3の右端面に形成された円形開孔3dからハウジング3の外部に突出するように配置されている。なお、第2回転軸25と円形開孔3dとの間には、複数の軸受27が配置されおり、これによって第2回転軸25の右端部はハウジング3に対して回転可能に支持されている。一方、第2回転軸25の左端部は二重軸受9に支持されている。また、二重軸受9は円筒支持部17内に配置されている。従って、隔壁3aの円形開孔3cには、外周側から順に軸受19、円筒支持部17、二重軸受9、第2回転軸25が、それぞれの回転中心が一致するように配置される。このように、第2室7側で、第2ステータ21、第2ロータ23、第2回転軸25から第2電動機が構成される。
【0027】
次に、二重軸受9の構造について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、図1の二重軸受9を回転軸13方向から見た図である。二重軸受9は、円筒支持部17内面に固定される環状の外輪9aと、この外輪9aの内側に配設される環状の中間輪9bと、この中間輪9bの内側に配設され第2回転軸25に固定される環状の内輪9cとから構成されている。また、外輪9aと中間輪9bとの間に複数のボール(転動体)9dが適宜配置され、中間輪9bと内輪9cとの間にも複数のボール9eが適宜配置されている。
【0028】
図3は、図2に示した二重軸受9のA−A方向の断面図である。図3(a)では、外輪9aの内面には複数のボール9dを収容するためその全周にわたって溝部90aが形成され、外輪9aの内面に対向する中間輪9bの外面には当該複数のボール9dを収容するためにその全周にわたって溝部90bが形成され、外輪9cの内面に対向する中間輪9bの外面には複数のボール9eを収容するためにその全周にわたって溝部90cが形成され、内輪9cの外面には当該複数のボール9eを収容するためにその全周にわたって溝部90dが形成されている。
【0029】
図3(b)に示すように、外輪9aと中間輪9bとの間に、複数のボール9dを2列に配置すると共に中間輪9bと内輪9cとの間に、複数のボール9eを2列に配置してもよい。なお、このボールの配置に対応してそれぞれ外輪9aの内側、中間輪9bの両側、内輪9cの外側には溝部が2列づつ形成されている。この場合にはボール9dやボール9eに加わる荷重が分散される。図3(b)においては、中間輪9bの外面には2列の溝部90bがそれぞれ形成され、中間輪9bの内面には2列の溝部90cがそれぞれ形成されていたが、図3(c)に示すように、図3(b)に示した中間輪9bの2列の溝部を一体として、2列のボール9dをそれぞれ収容する溝部90b’を中間輪9bの外面に設け、2列のボール9eをそれぞれ収容する溝部90d’を中間輪9bの内面に設けてもよい。
【0030】
このような二重軸受9の動作を説明する。図2に示す中心の内輪9cが時計回りに回転すると、内輪9cの溝部90cに接触しているボール9eが反時計方向に回転し、ボール9eは中間輪9bの内面側の溝部90bと接触しているため、中間輪9bも反時計方向に回転する。
【0031】
なお、本発明において用いる二重軸受には、ブッシュ等を利用して軸受を二重構造にした構造や、中間輪を有さず転動体の収容部が一つで内輪と外輪とが相対運動をする構造を意味するものではない。
【0032】
一般的に軸受(ベアリング)は、図1に示した軸受15、19、27のように、外輪と内輪の間に配される転動体は一重か、多重であっても環状に配され、その使用に当たっては、内輪か外輪どちらか一方を固定して使用するものであるが、本発明の二重軸受は内輪と外輪の間に中間輪を持ち、中間輪と内輪、中間輪と外輪の間に転動体を配置したものである。
【0033】
本発明の電動機は自動車等に用いるものであり高速回転を前提としているので、使用する二重軸受は深溝玉軸受が好ましい。また、転動体の種類は電動機の重さ、回転数により適切な形状と潤滑方式を選択することが望ましい。なお、差動滑りの問題は、内輪側転動体の径で差動差分を補正し、合わせて十分な潤滑で差動差の影響である差動滑りを抑えることが可能である。
【0034】
次に、第1実施形態の電動機1を電気自動車に適用した場合の動作を説明する。交流電源を第1ステータ9のコイルに供給して回転磁界を発生させて、第1ロータ11を回転させる。第1ロータ11の回転により第1回転軸15は第1ロータ11と一体となって回転する。第1回転軸15の回転はデファレンシャルギアを介在せずに伝達機構によって第1駆動輪に伝達される。同様に、交流電源を第2ステータ21のコイルに供給して回転磁界を発生させて、第2ロータ23を回転させる。第2ロータ23の回転により第2回転軸25は第2ロータ23と一体となって回転する。第2回転軸25の回転はデファレンシャルギアを介在せずに伝達機構によって第2駆動輪に伝達される。ここで、第1回転軸11と第2回転軸25との回転数は、交流電流をインバータ制御により独立してそれぞれ変更可能であるため、例えば第1駆動輪を左の駆動輪とし、第2駆動輪を左の駆動輪とした場合に、デファレンシャルギアを備えることなく、左右の駆動輪の回転数を容易に変えることが可能となる。
【0035】
なお、第1室5側に配設される第1電動機、第2室7側に配設される第2電動機は、それぞれ小形で瞬時トルクの大きいSPMモーター(マグネット表面配置形モーター:Surface Permanent Magnet Motor)とすれば、ブレーキング時の回生も同時に行える利点があり好ましい。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態の電動機201を図4に基づき説明する。本実施形態では、円形開孔3cに配設された二重軸受9の中間輪9bを、ハウジング3に対して固定するものである。具体的には、中間輪9cを固定するために、円形開孔3cの右側面側で、隔壁3aから第2回転軸25に向かって延長されたストッパー3eを設ける。ストッパー3eの先端部と中間輪9bの右側面と接続することにより、中間輪9cをハウジング3に対して固定することができる。なお、ストッパー3eは円形開孔3cの右側面側で、円形開孔3cの全周にわたって設けるか、等間隔で複数リブ状に設けてもよい。なお、構造上、ストッパー3eには大きな力が加わらないため、中間輪9cを支えられる程度の強度が有ればよい。本実施形態では、このように二重軸受の中間輪を固定しているため、外輪側と内輪側とで回転差が生じてもこれらの間に配置されるボール(転動体)に加わる負担が少なくなる。
【0037】
本発明の第3実施形態の電動機301を図5に基づき説明する。第3実施形態では、出力軸を同一方向に配置したものである。図5において、ハウジング3の左端の円形開孔3b側で、円筒状の第1回転軸13の内側から、第2回転軸325の端部が突出している。第2回転軸325は基本的には第1実施形態の第2回転軸25と同様に第2室7内に配設されているが、第1実施形態とは異なりハウジング3の右側面側から突出せず、その左端が延長され第1室3を貫きハウジング3の左端面(一端面)側で突出するものである。これによって、第1回転軸13及び第2回転軸325の回転を同一方向から取り出すことが出来る。
【0038】
本発明の第4実施形態の発電兼電動機401を図6に基づき説明する。本実施形態では、第1室405を第2室407より小さくして両者を非対称とし、さらに、第1ステータ409及び第1ロータ411と、第2ステータ421及び第2ロータ423とを非対称とするものである。この場合には第1室405側の第1ステータ409及び第1ロータ411を発電機とし、第2室407側の第2ステータ421及び第2ロータ423を電動機として使用することにより、ハイブリッド車用の発電兼電動機として用いることができる。
【0039】
なお、ハイブリッド車としては、例えば株式会社トヨタによって実用化された「プリウス」(商標)が知られている。一般に、このようなハイブリッド車は、内燃エンジンと、発電機又は蓄電池により駆動される電動機とを備えており、内燃エンジン及電動機による駆動力を組み合わせて走行し、減速時に発電機によって発電して、これを蓄電池に充電することにより、低燃費を実現したものである。しかし、プリウスにおいても、発電機と電動機とは、それぞれ別個のハウジングに収容され完全に独立したものとして構成されている。これに対し、第4実施形態の発電兼電動機は、二重軸受を介して発電機と電動機とを接続することにより、同一のハウジングにこれらを収容することが可能となり省スペース化が図れる。
【0040】
本発明の第5実施形態の電動機は、上記第1乃至第4実施形態とは異なり、左右に第1室及び第2室を設けたものではない。第5実施形態の電動機501を図7に基づき説明する。ハウジング503の円筒面内側にはアウターロータ505が配設され、アウターロータ505はかご型のアウターロータ支持部材506によって支持され、アウターロータ支持部材506はハウジング503に対して回転可能に支持されている。
【0041】
アウターロータ支持部材506の左端には円筒状の第1回転軸513が形成されており、第1回転軸513はアウターロータ503及びアウターロータ支持部材506と一体となって回転する。また、第1回転軸513の左端部は、ハウジング503の左端面に形成された円形開孔503bから外部に突出するように配置されている。なお、第1回転軸513と円形開孔503bとの間に複数の軸受515が配設されており、これによって第1回転軸515はハウジング503に対して回転可能に支持されている。一方、アウターロータ支持部材506の右端面には円筒支持部517が突出形成されており、円筒支持部517はハウジング503の右端側面に形成された環状凹部503c内に配置され、円筒支持部517と環状凹部503cとの間には複数の軸受519が配設されるため、ハウジング503の右端部でアウターロータ支持部材506はハウジング503に対して回転可能に支持されている。
【0042】
さらに、アウターロータ支持部材506の左端内面に形成された凹部506aには第1二重軸受509aが配設され、アウターロータ支持部材506の右端に形成された円筒支持部517内には第2二重軸受509bがそれぞれ配設されている。第1二重軸受509a、第2二重軸受509bの構造は、第1実施形態で説明した二重軸受9と同じ構造であり、第1二重軸受509aの外輪が凹部506aに、第2二重軸受509bの外輪が円筒支持部517に固定されている。
【0043】
また、アウターロータ505の内側には当該アウターロータ505に対向するようにステータ507が配設されている。ステータ507はかご型のステータ支持部材508によって支持されている。ステータ支持部材508はその左端部に形成された第1ステータステー508aによって第1二重軸受509aの中間輪に固定され、同様に、ステータ支持部材508はその右端部に形成された第2ステータステー508bによって第2二重軸受509aの中間輪に固定されている。
【0044】
ステータ507の内側には当該ステータ507に対向するようにインナーロータ523が配設されており、インナーロータ523の回転軸には第2回転軸525が配設されている。第2回転軸525の左端部は第1二重軸受509aの内輪に固定され、第2回転軸525の右端側は第2二重軸受509bの内輪に固定されている。さらに、第2回転軸525の右端部は、ハウジング503の右側面の開孔から外部に突出している。従って、第2回転軸525はその左右で二重軸受509a、509bによって回転可能に軸支されており、インナーロータ523及び第2回転軸525は一体となって回転する。本実施形態では、入れ子式にアウターロータ505、ステータ507、インナーロータ523が収容されており、従来例のように片持ち式で支持するものではなく、それぞれが両端部で支持されているため、自動車用に用いても十分な強度が確保できる。
【0045】
本発明の各実施形態にて説明した電動機は、福祉車両等に好適な電気自動車や、電動式車いすに用いることができる。また、本発明の電動機で左右の前輪を駆動し、さらに本発明の電動機で左右の後輪を駆動することにより、省スペースで4輪の全ての回転を独立して制御することが可能となり、中心位置を固定した状態で車両を容易に旋回することや微妙な位置調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の電動機の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の電動機に用いる二重軸受の正面図である。
【図3】図2の二重軸受のA−A線での断面図である。
【図4】本発明の電動機の第2実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電動機の第3実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明をハイブリッド車用発電兼電動機に適用した第4実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の電動機の第5実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 電動機
3 ハウジング
3a 隔壁
5 第1室
7 第2室
9 二重軸受
9a 外輪
9b 中間輪
9c 内輪
10 第1ステータ
11 第1ロータ
12 第1ロータ支持部材
13 第1回転軸
17 円筒支持部
21 第2ステータ
23 第2ロータ
24 第2ロータ支持部材
25 第2回転軸
201 電動機
3e ストッパー
301 電動機
325 第2回転軸
401 電動機
403 ハウジング
405 第1室
407 第2室
409 第1ステータ
411 第1ロータ
421 第2ステータ
423 第2ロータ
501 電動機
503 ハウジング
505 アウターロータ
506 アウターロータ支持部材
513 第1回転軸
517 円筒支持部
503c 環状凹部
509a 第1二重軸受
509b 第2二重軸受
507 ステータ
508 ステータ支持部材
508a 第1ステータステー
508b 第2ステータステー
523 インナーロータ
525 第2回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに形成される第1室と、該ハウジングに形成される第2室と、該第1室に配設される第1ステータと、該第1室に配設され該第1ステータに対向する第1ロータと、該第1ロータを回転可能に支持する第1ロータ支持部材と、該1ロータ支持部材に固定される第1回転軸と、該第2室に配設される第2ステータと、該第2室に配設され該第2ステータに対向する第2ロータと、該第2ロータに固定される第2回転軸と、該第1ロータ支持部材及び該第2回転軸を互いに回転可能な状態で該第2回転軸を該第1ロータ支持部材に支持する二重軸受と、を備えることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記二重軸受が、外輪と、該外輪の内側に配設される中間輪と、該中間輪の内側に配設される内輪とを備え、該外輪と該中間輪との間及び該中間輪と該内輪との間には複数の転動体がそれぞれ配設されることを特徴とする請求項1記載の電動機。
【請求項3】
前記外輪は前記第1ロータ支持部材に固定され、前記内輪は前記第2回転軸に固定されることを特徴とする請求項2記載の電動機。
【請求項4】
前記中間輪は前記ハウジングに固定されることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動機。
【請求項5】
前記第1回転軸は前記ハウジングの一端面から外部に突出し、前記第2回転軸は前記ハウジングの他端面から外部に突出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電動機。
【請求項6】
前記第1回転軸は円筒状であり前記ハウジングの一端面から外部に突出し、前記第2回転軸は円筒状の該第1回転軸を介して該ハウジングの該一端面から外部に突出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電動機。
【請求項7】
エンジンと発電機又は蓄電池により駆動される電動機とを備え、該エンジン及び該電動機による駆動力を組み合わせて走行し、減速時に該発電機によって発電して該蓄電池に充電するハイブリッド車において、
ハウジングと、該ハウジングに形成される第1室と、該ハウジングに形成される第2室と、該第1室に配設される第1ステータと、該第1室に配設され該第1ステータに対向する第1ロータと、該第1ロータを回転可能に支持する第1ロータ支持部材と、該1ロータ支持部材に固定される第1回転軸と、該第2室に配設される第2ステータと、該第2室に配設され該第2ステータに対向する第2ロータと、該第2ロータに接続される第2回転軸と、該第1ロータ支持部材及び該第2回転軸を互いに回転可能な状態で該第2回転軸を該第1ロータ支持部材に支持する二重軸受と、を備え、
該発電機を該第1室側の該第1ステータ及び該第1ロータから構成し、該電動機を該第2室側の該第2ステータ及び該第2ロータから構成することを特徴とするハイブリッド車用発電兼電動機。
【請求項8】
前記第1室と前記第2室とを非対称とすることを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド車用発電兼電動機。
【請求項9】
前記二重軸受は、外輪と、該外輪の内側に配設される中間輪と、該中間輪の内側に配設される内輪とを備え、該外輪と該中間輪との間及び該中間輪と該内輪との間には複数の転動体がそれぞれ配設されることを特徴とする請求項7又は8に記載のハイブリッド車用発電兼電動機。
【請求項10】
前記外輪は前記第1ロータ支持部材に固定され、前記内輪は前記第2回転軸に固定されることを特徴とする請求項7乃至9の何れか一項に記載のハイブリッド車用発電兼電動機。
【請求項11】
前記中間輪は前記ハウジングに固定されることを特徴とする請求項9又は10に記載のハイブリッド車用発電兼電動機。
【請求項12】
ハウジングと、該ハウジングに配設されるアウターロータと、該ハウジングに対して該アウターロータを回転可能に支持するアウターロータ支持部材と、該アウターロータ支持部材に固定される第1回転軸と、該アウターロータに対向するように該アウターロータ支持部材内に配設されるステータと、該アウターロータ支持部材内でステータを支持するステータ支持部材と、該ステータ支持部材内で該ステータに対向するように配設されるインナーロータと、該インナーロータに固定される第2回転軸と、該アウターロータ支持部材及び該第2回転軸を互いに回転可能な状態で該第2回転軸を該アウターロータ支持部材に支持する二重軸受と、を備えることを特徴とする電動機。
【請求項13】
前記二重軸受は、前記アウターロータ支持部材の一端側に配設される第1二重軸受と、該アウターロータ支持部材の他端側に配設される第2二重軸受とを含む請求項12記載の電動機。
【請求項14】
前記二重軸受は、外輪と、該外輪の内側に配設される中間輪と、該中間輪の内側に配設される内輪とを備え、該外輪と該中間輪との間及び該中間輪と該内輪との間には複数の転動体がそれぞれ配設されることを特徴とする請求項12又は13に記載の電動機。
【請求項15】
前記外輪は前記アウターロータ支持部材に固定され、前記内輪は前記第2回転軸に固定されることを特徴とする請求項14に記載の電動機。
【請求項16】
前記中間輪は前記ステータ支持部材に固定されることを特徴とする請求項14又は15に記載の電動機。
【請求項17】
請求項1乃至6又は請求項12乃至16の何れか一項に記載の電動機を備えることを特徴とする電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−14477(P2006−14477A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187677(P2004−187677)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(503336637)
【Fターム(参考)】