説明

電動車両、車両充電装置および車両充電システム

【課題】充放電可能な蓄電部を搭載する電動車両を外部電源により充電する際に、当該外部電源の充電を司る制御装置を作動させるための電力を確保して、外部電源による蓄電部の充電を確実に実行することのできる電動車両、車両充電装置および車両充電システムを提供する。
【解決手段】車両100は、コネクタ部200の連結によって商用電源と電気的に接続されると、受動的に低圧電力を生成する低圧電力生成部4を搭載する。巻線変圧器12は、一次側に入力される商用電源を所定の変圧比で変圧し、この変圧動作は何らの外部からの制御信号をも必要とすることなく行われる。巻線変圧器12の二次側から出力される降圧後の交流電力は、ダイオード部14によって整流されて低圧電力が生成される。ダイオード部14で生成された低圧電力は、低圧直流補助線SDCLを介して、副バッテリSBおよび制御装置2へ供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、充放電可能な蓄電部を搭載し、外部電源により充電可能な電動車両、およびその電動車両を充電するための車両充電装置、ならびにそれらからなる車両充電システムに関し、特に当該蓄電部を充電する際の制御動作に必要な電力を確保するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題を考慮して、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などのように、電動機を駆動力源とする電動車両が注目されている。このような電動車両は、電動機に電力を供給したり、回生制動時に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄えたりするために、充放電可能な蓄電部を搭載している。
【0003】
従来から、このような電動車両に搭載された蓄電部を商用電源などの外部電源により充電する車両充電システムが存在する。たとえば、特開平08−107606号公報(特許文献1)には、充電器から充電用電圧が供給されている間は、メインスイッチがオン状態であっても電動車両が運転状態になるのを禁止するとともに、バッテリへの充電を継続させる充電優先制御手段を備えたことを特徴とする電動車両用充電装置が開示されている。この電動車両用充電装置によれば、メインスイッチが誤操作されても充電を優先して行なうことができる。
【0004】
特に、ハイブリッド自動車に搭載された蓄電部を外部電源により充電することで、総合的な燃料消費効率を高めることができるため、近年注目が集まっている。
【特許文献1】特開平08−107606号公報
【特許文献2】特開平11−178228号公報
【特許文献3】特開2002−209307号公報
【特許文献4】特開平09−065509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、充電対象となる蓄電部は、車両駆動力の発生に必要な電力を供給するために比較的高電圧のものが採用される。このような高圧蓄電部を効率的に充電するためには、充電電流および充電電圧を最適化することが望ましい。そのため、このような電動車両には、外部電源から当該蓄電部に適した充電電圧および充電電流を生成するための電力変換装置が搭載されることが一般化しつつある。
【0006】
このような電力変換装置は、トランジスタなどのスイッチング素子で構成されているので、電力変換装置での電力変換には、トランジスタでのスイッチング動作を行なわせるための制御信号(たとえば、ゲート電圧やベース電流)が必要となる。多くの場合、このような制御信号は、充電対象となる蓄電部とは別に設けられた、たとえば12Vや24Vといった相対的に低い出力電圧をもつ低圧蓄電部からの低圧電力によって作動する制御装置で生成される。
【0007】
そのため、低圧蓄電部が過放電状態、いわゆる「バッテリ上がり」の状態になってしまうと、たとえ電動車両に外部電源が供給されたとしても、制御装置を起動することができないため、電力変換装置での電力変換動作を実行できず、外部電源による充電を行なうことができないという問題があった。
【0008】
また、電圧変換装置を用いて高圧蓄電部の電圧を降圧し、「バッテリ上がり」状態の低圧蓄電部に供給する構成も考えられるが、このような電圧変換装置を制御するための制御信号も低圧蓄電部からの低圧電力によって作動する制御装置によって生成する必要があるため、問題の解決にならない。
【0009】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、充放電可能な蓄電部を搭載する電動車両を外部電源により充電する際に、当該外部電源の充電を司る制御装置を作動させるための電力を確保して、外部電源による蓄電部の充電を確実に実行することのできる電動車両、車両充電装置および車両充電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従えば、充放電可能な第1蓄電部を搭載し、第1蓄電部を外部電源により充電可能な電動車両である。この局面に従う電動車両は、充電時に車両外部のコネクタ部と連結され、外部電源からの電力を受入れるためのコネクタ受入部と、コネクタ部とコネクタ受入部との連結によって供給される外部電源からの電力を変換して第1充電部を充電する電力変換部と、第1蓄電部に比較して出力電圧の低い充放電可能な第2蓄電部と、第2蓄電部からの電力によって作動し、電力変換部の電力変換動作を制御する制御部と、コネクタ部がコネクタ受入部と連結されると、制御部の作動状態と無関係に第2蓄電部を充電する低圧充電手段とを備える。
【0011】
この局面に従う電動車両によれば、搭載した第1蓄電部が充電されるために、コネクタ部が連結されると、制御部の作動状態と無関係に第2蓄電部が充電される。そのため、コネクタ部と電動車両とが連結された時点で、第2蓄電部が電力を供給できない過放電状態であっても、低圧充電手段から供給される電力によって制御部を作動させることができる。そのため、制御部は、第2蓄電部の充電状態にかかわらず、電力変換部で電力変換動作を実行させることができるので、第1蓄電部を確実に充電できる。
【0012】
好ましくは、低圧充電手段は、外部電源からの電力の少なくとも一部を受けて第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する低圧電力生成部を含む。
【0013】
また好ましくは、コネクタ受入部は、外部電源からの電力に加えて、車両外部で生成された第2蓄電部を充電するための低圧電力を受入れるように構成され、低圧充電手段は、コネクタ受入部を介して受入れた低圧電力で第2蓄電部を充電するための電力線を含む。
【0014】
また好ましくは、低圧充電手段は、第1蓄電部の出力電圧を降圧して第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する降圧部と、第1蓄電部と降圧部との間に接続され、両者を電気的に接続または遮断するリレー部とを含み、リレー部は、コネクタ部がコネクタ受入部に連結されて発せられる駆動指令に応答して、第1蓄電部と降圧部とを電気的に接続する。
【0015】
この発明の別の局面に従えば、充放電可能な第1蓄電部を搭載する電動車両に対して、第1蓄電部を外部電源により充電するための車両充電装置である。そして、電動車両は、充電時に外部電源から供給される電力を変換して第1蓄電部を充電する電力変換部と、第1蓄電部に比較して出力電圧の低い充放電可能な第2蓄電部と、第2蓄電部からの電力によって作動し、電力変換部の電力変換動作を制御する制御部とを備える。さらに、この局面に従う車両充電装置は、充電時に電動車両と連結され、外部電源と電動車両とを電気的に接続するコネクタ部と、コネクタ部が電動車両に連結されると、電動車両の制御部の作動状態と無関係に第2蓄電部を充電する低圧充電手段とを備える。
【0016】
この局面に従う車両充電装置によれば、電動車両に搭載された第1蓄電部を充電するために、電動車両にコネクタ部が連結されると、制御部の作動状態と無関係に電動車両の第2蓄電部が充電される。そのため、コネクタ部と電動車両とが連結された時点で、第2蓄電部が電力を供給できない過放電状態であっても、低圧充電手段から供給される電力によって制御部を作動させることができる。そのため、制御部は、第2蓄電部の充電状態にかかわらず、電力変換部で電力変換動作を実行させることができるので、第1蓄電部を確実に充電できる。
【0017】
好ましくは、低圧充電手段は、前記外部電源からの電力を受けて第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する低圧電力生成部を含み、コネクタ部は、外部電源からの電力に加えて、低圧電力を電動車両へ供給するように構成される。そして、この局面に従う電動車両は、コネクタ部を介して供給される低圧電力で第2蓄電部を充電するための電力線を含む。
【0018】
好ましくは、この局面に従う電動車両は、第1蓄電部の出力電圧を降圧して第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する降圧部と、第1蓄電部と降圧部との間に接続され、両者を電気的に接続または遮断するリレー部とをさらに備える。そして、低圧充電手段は、コネクタ部と電動車両との連結に応答して、リレー部が第1蓄電部と降圧部とを電気的に接続するための駆動指令を電動車両のスイッチ部へ与える指令生成部を含む。
【0019】
この発明のさらに別の局面に従えば、充放電可能な第1蓄電部を搭載する電動車両と、電動車両に搭載された第1蓄電部を外部電源により充電するための車両充電装置とを備えた車両充電システムである。そして、車両充電装置は、充電時に電動車両と連結され、外部電源と電動車両とを電気的に接続するコネクタ部を含み、電動車両は、充電時に外部電源から供給される電力を変換して第1蓄電部を充電する電力変換部と、第1蓄電部に比較して出力電圧の低い充放電可能な第2蓄電部と、第2蓄電部からの電力によって作動し、電力変換部の電力変換動作を制御する制御部とを含む。さらに、この局面に従う車両充電システムは、コネクタ部が電動車両に連結されると、制御部の作動状態と無関係に第2蓄電部を充電する低圧充電手段を備える。
【0020】
この局面に従う車両充電システムによれば、電動車両に搭載された第1蓄電部を充電するためにコネクタ部が電動車両に連結されると、制御部の作動状態と無関係に第2蓄電部が充電される。そのため、コネクタ部と電動車両とが連結された時点で、第2蓄電部が電力を供給できない過放電状態であっても、低圧充電手段から供給される電力によって制御部を作動させることができる。そのため、制御部は、第2蓄電部の充電状態にかかわらず、電力変換部で電力変換動作を実行させることができるので、第1蓄電部を確実に充電できる。
【0021】
好ましくは、低圧充電手段は、外部電源からの電力を受けて第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する低圧電力生成部を含む。
【0022】
さらに好ましくは、低圧電力生成部は、電動車両に搭載されるとともに、コネクタ部の連結によって電動車両に供給された外部電源からの電力の少なくとも一部を受取るように構成される。
【0023】
また、さらに好ましくは、低圧電力生成部は、コネクタ部に含まれ、電動車両へ供給されるべき外部電源からの電力の少なくとも一部を受けて低圧電力を生成するとともに、低圧電力がコネクタ部を介して電動車両の第2蓄電部へ供給されるように構成される。
【0024】
また好ましくは、低圧充電手段は、第1蓄電部の出力電圧を降圧して第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する降圧部と、第1蓄電部と降圧部との間に接続され、両者を電気的に接続または遮断するリレー部とを含み、リレー部は、コネクタ部が電動車両に連結されると、第1蓄電部と降圧部とを電気的に接続する。
【0025】
さらに好ましくは、低圧充電手段は、コネクタ部と電動車両との連結に応答して、リレー部が第1蓄電部と降圧部とを電気的に接続するための駆動指令を発する指令生成部をさらに含み、指令生成部は、コネクタ部に設けられ、外部電源からの電力を受けて作動する。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、充放電可能な蓄電部を搭載する電動車両を外部電源により充電する際に、当該外部電源の充電を司る制御装置を作動させるための電力を確保して、外部電源による蓄電部の充電を確実に実行することのできる電動車両、車両充電装置および車両充電システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0028】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従う車両充電システム1の全体構成図である。
【0029】
図1を参照して、この発明の実施の形態1に従う車両充電システム1は、電動車両100と、車両充電装置210とからなる。
【0030】
電動車両100は、駆動力源である電動機と、当該電動機に電力を供給するための蓄電部とを備える車両を総称したものであり、少なくとも、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などを含む。本実施の形態では、電動機とエンジンとを搭載し、それぞれからの駆動力を最適な比率に制御して走行するハイブリッド自動車である電動車両100(以下、単に「車両」とも記す)について説明する。
【0031】
車両充電装置210は、車両100に搭載された蓄電部を外部電源の一例である商用電源により充電するための装置であり、コネクタ部200と、充電ステーション202とを含む。コネクタ部200は、キャブタイヤケーブルなどからなる電力線ACLを介して充電ステーション202と接続される。充電ステーション202は、外部電源線PSLを介して住宅204に供給される商用電源を取り出して、コネクタ部200へ供給する。そして、コネクタ部200は、充電時に車両100と連結され、外部電源である商用電源と車両100とを電気的に接続する。一方、車両100には、コネクタ部200と連結され、商用電源を受入れるためのコネクタ受入部(図示しない)が設けられる。
【0032】
なお、コネクタ部200を介して車両100に供給される外部電源は、住宅204の屋根などに設置された太陽電池パネルの発電電力などであってもよい。
【0033】
また、充電ステーション202は、コネクタ部200の収納機構やコネクタ部200と繋がる電力線ACLの巻取機構(いずれも図示しない)を備えていてもよい。さらに、充電ステーション202には、使用者に対するセキュリティ機構や課金機構などを備えてもよい。
【0034】
図2は、この発明の実施の形態1に従う車両充電システムの要部を示す概略構成図である。
【0035】
図2を参照して、車両100は、主バッテリMB1,MB2と、第1コンバータ(CONV1)8−1と、第2コンバータ(CONV2)8−2と、第1インバータ(INV1)30−1と、第2インバータ(INV2)30−2と、第1モータジェネレータ(MG1)34−1と、第2モータジェネレータ(MG2)34−2と、副バッテリSBと、DC−DCコンバータ10と、制御装置2とを備える。
【0036】
主バッテリMB1,MB2は、充放電可能な直流電力の貯蔵要素であり、走行時に車両100の駆動力を発生するために、モータジェネレータ34−1,34−2との間で電力授受を行なう。主バッテリMB1,MB2は、一例として、ニッケル水素電池からなる。代替的に、リチウムイオン電池といった他の種類の二次電池、もしくは電気二重層キャパシタで構成してもよい。そして、主バッテリMB1,MB2の各々は、モータジェネレータ34−1,34−2で駆動力を発生するための比較的大きな電力を供給できるように、多数の電池セルを直列接続して、定格出力電圧が相対的に高電圧、たとえば300V〜500Vとなるように構成されている。
【0037】
なお、車両100に搭載される主バッテリの数は車両100に要求される走行性能に応じて決定すればよく、2個に限られず、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【0038】
主バッテリMB1は、正線PL1および負線NL1を介して、第1コンバータ8−1と電気的に接続される。また、主バッテリMB2は、正線PL2および負線NL2を介して、第2コンバータ8−2と電気的に接続される。そして、正線PL1,負線NL1および正線PL2,負線NL2には、それぞれシステムリレーSMR1およびSMR2が介挿される。
【0039】
システムリレーSMR1,SMR2は、制御装置2からのシステムイネーブル信号SE1,SE2に応じて、それぞれ主バッテリMB1,MB2とコンバータ8−1,8−2との間を電気的に接続または遮断する。より詳細には、システムリレーSMR1,SMR2は、制御装置2からシステムイネーブル信号SE1,SE2が与えられたときに、導通状態になる。
【0040】
コンバータ8−1,8−2は、対応する主バッテリMB1,MB2と、主正母線MPLおよび主負母線MNLとの間に配置され、それぞれの間で電圧変換動作を行なうための電圧変換部である。すなわち、コンバータ8−1および8−2は、主正母線MPL,主負母線MNLに対して並列接続され、それぞれ主バッテリMB1およびMB2と主正母線MPL,主負母線MNLとの間での電力授受量を制御する。
【0041】
より具体的には、コンバータ8−1および8−2は、それぞれ主バッテリMB1およびMB2の放電電力(出力電力)を昇圧した後に主正母線MPL,主負母線MNLへ供給可能である一方、主正母線MPL,主負母線MNLから供給される回生電力を降圧した後にそれぞれ主バッテリMB1およびMB2へ供給可能である。これは、モータジェネレータ34−1,34−2への供給電圧を高くすることで、モータジェネレータ34−1,34−2の運転範囲(回転数範囲)を拡大させるためである。
【0042】
一例として、コンバータ8−1,8−2は、スイッチング素子によるスイッチング(回路開閉)によって昇圧動作および降圧動作のいずれもが可能な「チョッパ」型の昇降圧回路で構成される。そして、このような電圧変換動作は、それぞれ後述する制御装置2からのスイッチング指令PWC1およびPWC2により制御される。
【0043】
主正母線MPLと主負母線MNLとの線間には、平滑コンデンサCが接続され、主正母線MPL,主負母線MNLを介して授受される電力に含まれる変動成分が低減される。
【0044】
主正母線MPL,主負母線MNLの他方端には、インバータ30−1および30−2が電気的に並列接続される。インバータ30−1および30−2は、それぞれモータジェネレータ34−1および34−2と電気的に接続され、主正母線MPL,主負母線MNLとの間で電力変換を行なう。インバータ30−1および30−2の各々は、三相分のアーム回路を含むブリッジ回路で構成され、各々の電力変換動作は、後述する制御装置2からのスイッチング指令PWM1およびPWM2により制御される。
【0045】
より具体的には、車両100の走行時において、インバータ30−1および30−2は、運転者の運転操作や走行状況に応じて必要な電力をそれぞれモータジェネレータ34−1および34−2との間で授受する。また、車両100の充電時において、インバータ30−1および30−2は互いに連携動作することで、後述するようにモータジェネレータ34−1および34−2を介して供給される商用電源(単相交流)を直流電力に変換し、主正母線MPL,主負母線MNLを介して主バッテリMB1,MB2へ供給する(主バッテリMB1,MB2の充電)。
【0046】
モータジェネレータ34−1および34−2は、電力と回転駆動力とを相互に変換可能な回転電機であり、モータジェネレータ34−1および34−2で発生された回転駆動力は、駆動力分配機構および駆動軸などを介して駆動輪(いずれも図示しない)に伝達される。具体的には、モータジェネレータ34−1および34−2は、それぞれインバータ30−1および30−2から供給される交流電力から回転駆動力を発生可能であるとともに、車両100の回生制動時やエンジン(図示しない)からの回転駆動力を受けて電力を発生可能(発電可能)である。
【0047】
モータジェネレータ34−1,34−2は、一例として、永久磁石が埋設されたロータを備える三相交流回転電機である。そして、モータジェネレータ34−1,34−2のステータには、Y(スター)結線された3相分のステータコイルが設けられ、各相のステータコイルは、それぞれインバータ30−1および30−2の対応する相と電気的に接続される。さらに、各ステータコイルの中性点N1およびN2は、コネクタ部200が車両100に連結されて、電力線ACLを構成するそれぞれ正供給線ACLpおよび負供給線ACLnと電気的に接続される。
【0048】
DC−DCコンバータ10は、正線PL1,負線NL1に対して、コンバータ8−1と並列に接続され、正線PL1,負線NL1を介して授受される電力の一部を降圧して低圧電力を生成した後に、当該低圧電力(正極)を低圧直流母線MDCLへ出力する。なお、DC−DCコンバータ10の出力端子の負極側は、車体(ボディ)アースに接続される。ここで、「低圧電力」とは、主バッテリMB1,MB2の出力電圧に比較して、電圧が低いことを意味するものであり、一例として、その電圧値は12V(もしくは24V)に設定される。
【0049】
一例として、DC−DCコンバータ10は、直流電力を交流電力に変換した上で巻線変圧器(トランス)を用いて電圧変換を行い、電圧変換後の交流電力を直流電力に再変換する、いわゆる「トランス型」の電圧変換回路からなる。そして、このような電圧変換動作は、それぞれ後述する制御装置2からのスイッチング指令SWPにより制御される。
【0050】
副バッテリSBは、充放電可能な直流電力の貯蔵要素であり、低圧直流母線MDCLと車体アースとの間に接続される。そして、副バッテリSBは、低圧直流母線MDCLを介して供給されるDC−DCコンバータ10からの低圧電力で充電される一方で、DC−DCコンバータ10からの低圧電力の供給が開始される前(たとえば、車両100のシステム起動時)などにおいて、低圧電力を制御装置2へ供給する。副バッテリSBは、一例として鉛蓄電池などからなり、その定格出力電圧が約12Vとなるように構成されている。なお、副バッテリSBの定格出力電圧が12Vとなるように構成される場合には、副バッテリSBを浮動充電できるように、DC−DCコンバータ10の出力電圧を14V程度にしてもよい。
【0051】
制御装置2は、車両100の制御動作を総合的に司る制御部であり、一例として、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶部とを含むマクロコンピュータを主体として構成される。そして、制御装置2は、低圧直流母線MDCLに接続された低圧直流線DCLを介して供給される低圧電力によって作動する。
【0052】
具体的には、運転者の操作によってイグニッションオン指令(図示しない)が与えられると、制御装置2は、システムイネーブル信号SE1,SE2を発し、主バッテリMB1,MB2とコンバータ8−1,8−2との間を電気的に接続するとともに、コンバータ8−1,8−2にスイッチング指令PWC1,PWC2を与えて、主正母線MPL,主負母線MNLを所定の電圧まで充電する。このとき、制御装置2は、DC−DCコンバータ10にスイッチング指令SWPを与えて低圧電力の供給を開始する。このようにして、車両100がシステム起動される。このシステム起動後、制御装置2は、運転者の操作に応じた必要な駆動力を発生するために、インバータ30−1,30−2にスイッチング指令PWM1,PWM2を与える。
【0053】
一方、車両100のシステム停止時において、車両100にコネクタ部200が連結されると、制御装置2は主バッテリMB1,MB2を充電するための動作を開始する。具体的には、制御装置2は、システムイネーブル信号SE1,SE2を与えて、主バッテリMB1,MB2とコンバータ8−1,8−2との間を電気的に接続する。そして、制御装置2は、インバータ30−1,30−2にスイッチング指令PWM1,PWM2を与えるとともに、コンバータ8−1,8−2にスイッチング指令PWC1,PWC2を与える。
【0054】
このように、制御装置2は、車両100のシステム起動および主バッテリMB1,MB2の充電動作のいずれにおいても、その制御処理の全体を司る。
【0055】
次に、主バッテリMB1,MB2の充電動作について説明する。
図3は、インバータ30−1,30−2およびモータジェネレータ34−1,34−2の概略構成図である。
【0056】
図3を参照して、インバータ30−1は、それぞれU相,V相,W相アーム回路を構成するトランジスタQ1Up,Q1Un、トランジスタQ1Vp,Q1Vn、トランジスタQ1Wp,Q1Wnを含み、各アーム回路は、主正母線MPLと主負母線MNLとの間に接続される。そして、各アーム回路におけるトランジスタ間の接続点N1U,N1V,N1Wがモータジェネレータ34−1の対応するステータコイルに接続され、モータジェネレータ34−1へ対応する相電圧が供給される。なお、トランジスタQ1Up,Q1Un,Q1Vp,Q1Vn,Q1Wp,Q1Wnは、一例として、IGBT(Insulated Gated Bipolar Transistor)などのスイッチング素子からなる。
【0057】
さらに、インバータ30−1は、ダイオードD1Up,D1Un,D1Vp,D1Vn,D1Wp,D1Wnを含み、各ダイオードは、同じ符号を有するトランジスタのエミッタ側からコレクタ側に帰還電流を流すことができるように、対応のトランジスタに並列接続される。
【0058】
インバータ30−1では、スイッチング指令PWM1に応じて、各トランジスタがスイッチング動作することで、直流電力と交流電力との電力変換動作が実現される。より具体的には、主正母線MPLに接続された上アーム側(正側)のトランジスタQ1Up,Q1Vp,Q1Wpと、主負母線MNLに接続された下アーム側(負側)のトランジスタQ1Un,Q1Vn,Q1Wnとのうち、上アーム側および下アーム側からそれぞれ1個ずつ順次選択され、当該選択された2個のトランジスタがオン状態に駆動される。なお、同一のアーム回路を構成する2個のトランジスタが同時に選択されることはない。
【0059】
このように選択されるトランジスタの組合せは、6通り存在する。さらに、各トランジスタが導通される期間(デューティ比)および位相(タイミング)を調整することで、電力変換量および電力変換方向(直流電力から交流電力、もしくは交流電力から直流電力)が制御される。
【0060】
インバータ30−2は、インバータ30−1と同様に、それぞれU相,V相,W相アーム回路を構成するトランジスタQ2Up,Q2Un、トランジスタQ2Vp,Q2Vn、トランジスタQ2Wp,Q2Wnを含む。そして、各アーム回路におけるトランジスタ間の接続点N2U,N2V,N2Wがモータジェネレータ34−2の対応するステータコイルに接続され、モータジェネレータ34−2へ対応する相電圧が供給される。また、インバータ30−2は、ダイオードD2Up,D2Un,D2Vp,D2Vn,D2Wp,D2Wnを含む。電力変換動作については、上述のインバータ30−1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0061】
次に、インバータ30−1,30−2およびモータジェネレータ34−1,34−2を用いて、商用電源により主バッテリMB1,MB2を充電する構成について説明する。なお、インバータ30−1,30−2が本願発明の「電力変換部」に相当する。
【0062】
商用電源により主バッテリMB1,MB2を充電する場合には、インバータ30−1,30−2は、上述した通常のスイッチング動作とは異なる「零電圧モード」で動作する。「零電圧モード」は、上アーム側および下アーム側の各々において、3個のトランジスタを一括してスイッチング(オンまたはオフ)させるモードである。この動作モードでは、上アーム側の3個のスイッチング素子は、いずれも同じスイッチング状態(すべてオン、または、すべてオフ)となり、また、下アーム側の3個のトランジスタについてもいずれも同じスイッチング状態となる。
【0063】
図4は、零電圧モードにおけるインバータ30−1,30−2およびモータジェネレータ34−1,34−2の零相等価回路である。
【0064】
図4を参照して、インバータ30−1,30−2が上述のような零電圧モードで動作する場合には、インバータ30−1における上アーム側の3個のトランジスタQ1Up,Q1Vp,Q1WpおよびダイオードD1Up,D1Vp,D1Wpは、上アームARM1pとしてまとめて示され、インバータ30−1における下アーム側の3個のトランジスタQ1Un,Q1Vn,Q1WnおよびダイオードD1Un,D1Vn,D1Wnは、下アームARM1nとしてまとめて示される。同様に、インバータ30−2における上アーム側の3個のトランジスタおよびダイオードは上アームARM2pとしてまとめて示され、インバータ30−2における下アーム側の3個のトランジスタおよびダイオードは下アームARM2nとしてまとめて示されている。
【0065】
すなわち、各アームARM1p,ARM1n,ARM2p,ARM2nは、それぞれ3個のトランジスタをまとめたトランジスタQと、3個のダイオードをまとめたダイオードDとを含む。したがって、この零相等価回路は、主正母線MPL,主負母線MNLを介して供給される直流電力を単相交流電力へ変換可能であるとともに、正供給線ACLp,負供給線ACLnを介して中性点N1,N2に入力される単相交流電力を直流電力へ変換可能な単相インバータとみることができる。
【0066】
そこで、インバータ30−1,30−2が単相インバータとして動作するようにスイッチング指令PWM1,PWM2を連携して制御することによって、商用電源から供給される単相交流電力を直流電力に変換して、主正母線MPL,主負母線MNLへ供給できる。この直流電力によって、主バッテリMB1,MB2を充電できる。
【0067】
なお、商用電源により主バッテリMB1,MB2を充電する場合には、主バッテリMB1,MB2の充電状態(SOC:State Of Charge)に応じて、適切な充電電流および充電電圧が供給されるように、コンバータ8−1,8−2に与えられるスイッチング指令PWC1,PWC2も制御される。
【0068】
上述のように、商用電源による主バッテリMB1,MB2の充電を実現するためには、制御装置2の作動が必須である。そのため、コネクタ部200が車両100に連結されたとしても、制御装置2が作動できなければ、主バッテリMB1,MB2を充電できない。
【0069】
再度、図2を参照して、制御装置2は、副バッテリSBからの低圧電力によって作動するように構成されているが、副バッテリSBを充電する低圧電力は、主バッテリMB1の電力をDC−DCコンバータ10で降圧して生成される。そのため、副バッテリSBが過放電状態にあれば、制御装置2がスイッチング指令SWPを生成できず、DC−DCコンバータ10は電力変換動作を実行できない。そのため、制御装置2の動作不能状態が継続するので、主バッテリMB1,MB2を充電することもできない。
【0070】
特に、本実施の形態においては、外部電源の一例である商用電源の電圧値は100V(もしくは200V)であるので、300V〜500Vに設計される主バッテリMB1,MB2を充電するためには、インバータ30−1,30−2を用いて昇圧する必要がある。すなわち、商用電源を単純に整流しただけでは、主バッテリMB1,MB2を充電することはできない。
【0071】
これに対して、副バッテリSBの電圧値は12Vもしくは24Vに設計されるので、商用電源の電圧値に比較して低い。そのため、副バッテリSBを充電するための直流電力は、商用電源を降圧することで比較的容易に得ることができる。
【0072】
そこで、本実施の形態1に従う車両100は、コネクタ部200が車両100に連結されると、制御装置2の作動状態と無関係に副バッテリSBを充電する機構を備える。本明細書に記載の実施の形態において、制御装置2の「作動状態と無関係に」とは、「制御装置2における制御動作が実行中および停止中のいずれであっても」という意味であり、言い換えれば、「制御装置2が動作不能状態に維持されたまま」という意味である。さらに別の言い方をすれば、「スイッチング指令といった制御装置2からの制御指令に依存することなく自律的に」副バッテリSBを充電できる構成を意味する。
【0073】
具体的には、本実施の形態1に従う車両100は、コネクタ部200の連結によって商用電源と電気的に接続されると、受動的に低圧電力を生成する低圧電力生成部4を搭載する。
【0074】
低圧電力生成部4は、正供給線ACLpおよび負供給線ACLnと電気的に接続され、コネクタ部200およびコネクタ受入部40を介して車両100に入力される商用電源からの電力を供給されることで、低圧電力を生成する。
【0075】
より詳細には、低圧電力生成部4は、巻線変圧器12と、ダイオード部14とを含む。巻線変圧器12は、一次側に入力される商用電源を所定の変圧比(巻数比)で変圧して二次側に出力する電圧変換装置である。この巻線変圧器12での変圧動作は、交流電力を入力することで当然に生じるものであり、何らの外部からの制御信号をも必要としない。そのため、巻線変圧器12での変圧動作は、受動的かつ自発的なものとなる。
【0076】
巻線変圧器12の二次側から出力される降圧後の交流電力は、ダイオード部14によって整流されて低圧電力が生成される。一例として、ダイオード部14は、4個のダイオードからなる全波整流ブリッジ回路であり、ダイオード部14に電圧が供給されるだけで、低圧電力が出力される。ダイオード部14で生成された低圧電力は、低圧直流補助線SDCLを介して、副バッテリSBおよび制御装置2へ供給される。
【0077】
なお、巻線変圧器12の変圧比は、一次側に入力される商用電源の電圧値(たとえば、100Vもしくは200V)と、ダイオード部14の回路構成(全波整流もしくは半波整流)とに応じて、低圧電力(たとえば、12V)を生成するのに適した値に設定される。
【0078】
このように、低圧電力生成部4は、コネクタ部200が車両100(コネクタ受入部40)に連結されることで、制御装置2からの制御指令を必要とすることなく副バッテリSBを充電する。そのため、コネクタ部200が車両100に連結された際に、副バッテリSBが過放電状態のため制御装置2が作動不能であっても、低圧電力を供給することで制御装置2を確実に作動させることができるため、主バッテリMB1,MB2を商用電源により充電することができる。
【0079】
この発明の実施の形態1によれば、車両100に搭載された主バッテリMB1,MB2を充電するためにコネクタ200が車両100に連結されると、制御装置2の作動状態と無関係に低圧電力生成部4から供給される低圧電力によって、制御装置2を作動させることができる。そのため、副バッテリSBの充電状態にかかわらず、制御装置2がインバータ30−1,30−2およびコンバータ8−1,8−2における電圧変換動作を制御できるので、主バッテリMB1,MB2を確実に充電できる。
【0080】
[実施の形態2]
上述の実施の形態1では、低圧電力を受動的に生成するための低圧電力生成部4が車両100側に搭載される構成について説明したが、実施の形態2では、低圧電力生成部4が車両充電装置側に配置される構成について説明する。
【0081】
図5は、この発明の実施の形態2に従う車両充電システムの要部を示す概略構成図である。
【0082】
図5を参照して、この発明の実施の形態2に従う車両充電システムを構成する車両100Aは、図2に示す車両100において、低圧電力生成部4を除くとともに、コネクタ受入部40に代えて、商用電源に加えて車両充電装置で生成された低圧電力を受入れ可能なコネクタ受入部40Aを設けたものである。また、本実施の形態2に従う車両充電装置を構成するコネクタ部200Aは、図2に示すコネクタ部200に低圧電力生成部4を内蔵したものである。その他については、図2に示す車両充電システムと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0083】
コネクタ部200Aは、上述の低圧電力生成部4を含み、電力線ACL(正供給線ACLpおよび負供給線ACLn)を介して供給される商用電源からの電力を供給されることで低圧電力を生成する。
【0084】
そして、コネクタ部200Aおよびコネクタ受入部40Aの接合面の各々には、商用電源および低圧電力を伝送するための導電性の接触部が設けられ、コネクタ部200Aとコネクタ受入部40Aとの連結によって、それぞれの接触部が互いに電気的に接続される。これにより、電力線ACL(正供給線ACLpおよび負供給線ACLn)を介して供給される商用電源がモータジェネレータ34−1,34−2の中性点N1,N2に供給される第1経路、およびコネクタ部200Aで生成された低圧電力が低圧直流補助線SDCLを介して、副バッテリSBおよび制御装置2へ供給される第2経路が形成される。
【0085】
このように、低圧電力生成部4は、コネクタ部200Aが車両100A(コネクタ受入部40A)に連結されることで、何らの制御指令を必要とすることなく副バッテリSBを充電できる。そのため、コネクタ部200Aが車両100Aに連結された際に、副バッテリSBが過放電状態のため制御装置2が作動不能であっても、低圧電力を供給することで制御装置2を確実に作動させることができるため、主バッテリMB1,MB2を商用電源により充電することができる。
【0086】
この発明の実施の形態2によれば、車両100Aに搭載された主バッテリMB1,MB2を充電するためにコネクタ200Aが車両100Aに連結されると、制御装置2の作動状態と無関係にコネクタ部200Aに内蔵された低圧電力生成部4から供給される低圧電力によって、制御装置2を作動させることができる。そのため、副バッテリSBの充電状態にかかわらず、制御装置2がインバータ30−1,30−2およびコンバータ8−1,8−2における電圧変換動作を制御できるので、主バッテリMB1,MB2を確実に充電できる。
【0087】
[実施の形態3]
上述の実施の形態1では、車両100側に搭載された低圧電力生成部4が低圧電力を受動的に生成する構成について説明したが、実施の形態3では、主バッテリの出力電圧を降圧することで低圧電力が生成される構成について説明する。
【0088】
図6は、この発明の実施の形態3に従う車両充電システムの要部を示す概略構成図である。
【0089】
図6を参照して、この発明の実施の形態3に従う車両100Bは、図2に示す車両100において、降圧部5と、システムリレーSMR3,SMR4と、識別タグ42を含むコネクタ受入部40Bとを追加したものである。また、この発明の実施の形態3に従うコネクタ部200Bは、識別タグ42を検出するための検出部44と、車両100BのシステムリレーSMR3,SMR4を駆動するためのシステムイネーブル信号SE3を発する指令生成部46とを追加したものである。その他については、図2に示す車両充電システムと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0090】
車両100の降圧部5は、主バッテリMB1の出力側に電気的に接続され、主バッテリMB1の出力電圧を降圧して低圧電力を受動的に生成し、低圧直流補助線SDCLを介して、生成した低圧電力を副バッテリSBおよび制御装置2へ供給する。
【0091】
具体的には、降圧部5は、主バッテリMB1とシステムリレーSMR1との間で、正線PL1および負線NL1と電気的に接続される。そのため、システムリレーSMR1の状態にかかわらず、主バッテリMB1の出力電圧は降圧部5へ供給される。さらに、主バッテリMB1と降圧部5との間には、両者を電気的に接続または遮断するシステムリレーSMR3が介挿される。後述するように、システムリレーSMR3は、コネクタ部200Bに設けられる指令生成部46からのシステムイネーブル信号SE3によって駆動され、両者を電気的に接続する。すなわち、システムイネーブル信号SE3は駆動指令に相当する。
【0092】
そして、降圧部5では、正線PL1から供給される電位(主バッテリMB1の正極電位)が直列接続された分圧抵抗R1およびR2を介して車体アースへ接続される。また、正線PL1から供給される電位(主バッテリMB1の正極電位)が車体アースへ直接的に接続される。そのため、分圧抵抗R1と分圧抵抗R2との接続点VNに生じる車体アースを基準とした電圧VLは、主バッテリMB1の出力電圧を分圧抵抗R1と分圧抵抗R2との比率で分圧された値となる。具体的には、電圧VL=主バッテリMB1の出力電圧×R2/(R1+R2)の関係が成立する。主バッテリMB1からは直流電力が供給されるので、電圧VLが低圧電力に相当する値(たとえば、12V)となるように、分圧抵抗R1,R2の値が適切に選択される。
【0093】
このように降圧部5で生成された低圧電力は、低圧直流補助線SDCLを介して、副バッテリSBおよび制御装置2へ供給される。なお、低圧直流補助線SDCLには、非充電時に副バッテリSBから車体アースへ電流が逆流しないように、システムリレーSMR4が介挿される。システムリレーSMR4は、システムリレーSMR3と同様に、システムイネーブル信号SE3によって駆動される。そのため、降圧部5は、システムイネーブル信号SE3が発せられる期間、すなわちコネクタ部200Bが車両100に連結されて充電が行われる期間に限って、副バッテリSBおよび制御装置2と電気的に接続される。
【0094】
一方、コネクタ部200Bでは、検出部44がコネクタ部200Bとコネクタ受入部40Bとの連結を監視し、連結が検出されると指令生成部46へ連結を通知する信号を発する。検出部44がコネクタ部200Bとコネクタ受入部40Bとの連結を監視する方法は、公知の方法を用いることができるが、一例として、コネクタ受入部40Bに車両100の固有の情報を格納する識別タグ42を設け、検出部44が定期的に当該識別タグ42の内容を電気的に(たとえば、電波を用いて)読出すような処理を実行し、その読出し結果に基づいて、コネクタ部200Bとコネクタ受入部40Bとの連結を判断する。
【0095】
指令生成部46は、検出部44からの連結通知信号に応答して、システムイネーブル信号SE3を発する。コネクタ受入部40Bは、商用電源に加えて車両充電装置で生成されたシステムイネーブル信号SE3を車両100B内に受入れる。車両100Bでは、コネクタ受入部40Bを介して受入れられたシステムイネーブル信号SE3がシステムリレーSMR3,SMR4へ伝達される。
【0096】
ここで、指令生成部46は、モータジェネレータ34−1,34−2と並列に正供給線ACLpおよび負供給線ACLnに接続され、商用電源からの電力を受けて作動するため、車両100の動作状態にかかわらず、システムイネーブル信号SE3を出力することができる。また、指令生成部46は、商用電源からの電力を受けてシステムイネーブル信号SE3を生成するので、システムイネーブル信号SE3として、システムリレーSMR3,SMR4を電気的に駆動可能な電力を供給できる。
【0097】
このように、コネクタ部200Bの指令生成部46は、コネクタ部200Bと車両100B(コネクタ受入部40B)との連結に応答して、車両100Bの外部から車両100Bにシステムイネーブル信号SE3を与え、車両100Bに搭載されたシステムリレーSMR3,SMR4を駆動する。これにより、車両100Bの内部で何らの制御指令を生成することなく副バッテリSBを充電できる。そのため、コネクタ部200Bが車両100Bに連結された際に、副バッテリSBが過放電状態のため制御装置2が作動不能であっても、低圧電力を供給することで制御装置2を確実に作動させることができるため、主バッテリMB1,MB2を商用電源により充電することができる。
【0098】
この発明の実施の形態3によれば、車両100Bに搭載された主バッテリMB1,MB2を充電するためにコネクタ200Bが車両100Bに連結されると、制御装置2の作動状態と無関係に降圧部5が主バッテリMBの出力電圧を降圧して低圧電力を供給する。そのため、副バッテリSBの充電状態にかかわらず、制御装置2を作動させることができる。そのため、制御装置2によるインバータ30−1,30−2およびコンバータ8−1,8−2における電圧変換動作を維持でき、主バッテリMB1,MB2を確実に充電できる。
【0099】
なお、上述の実施の形態1〜3では、2つのモータジェネレータの中性点に入力される外部電源(単相交流)を2つのインバータを用いて直流電力に変換して、主バッテリを充電する構成について例示したが、この構成に限られことはない。本願発明は、外部電源により主バッテリを充電するに際して、制御装置を作動させる必要がある構成について同様に適用可能である。たとえば、商用電源から供給される100V(もしくは200V)の電圧値をもつ交流電力を直流電力に変換する整流機能と、整流された直流電力の電圧値より高く設定される主バッテリの定格電圧値を超える電圧値まで昇圧可能な直流昇圧機能と、を備える電力変換装置(インバータなど)を別に設けた車両においても適用できる。
【0100】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】この発明の実施の形態1に従う車両充電システムの全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に従う車両充電システムの要部を示す概略構成図である。
【図3】インバータおよびモータジェネレータの概略構成図である。
【図4】零電圧モードにおけるインバータおよびモータジェネレータの零相等価回路である。
【図5】この発明の実施の形態2に従う車両充電システムの要部を示す概略構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3に従う車両充電システムの要部を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0102】
1 車両充電システム、2 制御装置、4 低圧電力生成部、5 降圧部、8−1,8−2 コンバータ、10 DC−DCコンバータ、12 巻線変圧器、14 ダイオード部、30−1,30−2 インバータ、34−1,34−2 モータジェネレータ、40,40A,40B コネクタ受入部、42 識別タグ、44 検出部、46 指令生成部、100,100A,100B 電動車両(車両)、200,200A,200B コネクタ部、202 充電ステーション、204 住宅、210 車両充電装置、ACL 電力線、ACLn 負供給線、ACLp 正供給線、ARM1n,ARM2n 下アーム、ARM1p,ARM2p 上アーム、C 平滑コンデンサ、D,D1Up,D1Un,D1Vp,D1Vn,D1Wp,D1Wn ダイオード、DCL 低圧直流線、MB1,MB2 主バッテリ、MDCL 低圧直流母線、MNL 主負母線、MPL 主正母線、N1,N2 中性点、N1U,N1V,N1W,N2U,N2V,N2W 接続点、NL1,NL2 負線、PL1,PL2 正線、PSL 外部電源線、Q,Q1Up,Q1Un,Q1Vp,Q1Vn,Q1Wp,Q1Wn トランジスタ、R1,R2 分圧抵抗、SB 副バッテリ、SDCL 低圧直流補助線、SMR1,SMR2,SMR3,SMR4 システムリレー、VN 接続点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な第1蓄電部を搭載し、前記第1蓄電部を外部電源により充電可能な電動車両であって、
充電時に車両外部のコネクタ部と連結され、前記外部電源からの電力を受入れるためのコネクタ受入部と、
前記コネクタ部と前記コネクタ受入部との連結によって供給される前記外部電源からの電力を変換して前記第1充電部を充電する電力変換部と、
前記第1蓄電部に比較して出力電圧の低い充放電可能な第2蓄電部と、
前記第2蓄電部からの電力によって作動し、前記電力変換部の電力変換動作を制御する制御部と、
前記コネクタ部が前記コネクタ受入部と連結されると、前記制御部の作動状態と無関係に前記第2蓄電部を充電する低圧充電手段とを備える、電動車両。
【請求項2】
前記低圧充電手段は、前記外部電源からの電力の少なくとも一部を受けて前記第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する低圧電力生成部を含む、請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記コネクタ受入部は、前記外部電源からの電力に加えて、車両外部で生成された前記第2蓄電部を充電するための低圧電力を受入れるように構成され、
前記低圧充電手段は、前記コネクタ受入部を介して受入れた前記低圧電力で前記第2蓄電部を充電するための電力線を含む、請求項1に記載の電動車両。
【請求項4】
前記低圧充電手段は、
前記第1蓄電部の出力電圧を降圧して前記第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する降圧部と、
前記第1蓄電部と前記降圧部との間に接続され、両者を電気的に接続または遮断するリレー部とを含み、
前記リレー部は、前記コネクタ部が前記コネクタ受入部に連結されて発せられる駆動指令に応答して、前記第1蓄電部と前記降圧部とを電気的に接続する、請求項1に記載の電動車両。
【請求項5】
充放電可能な第1蓄電部を搭載する電動車両に対して、前記第1蓄電部を外部電源により充電するための車両充電装置であって、
前記電動車両は、
充電時に前記外部電源から供給される電力を変換して前記第1蓄電部を充電する電力変換部と、
前記第1蓄電部に比較して出力電圧の低い充放電可能な第2蓄電部と、
前記第2蓄電部からの電力によって作動し、前記電力変換部の電力変換動作を制御する制御部とを備え、
前記車両充電装置は、
充電時に前記電動車両と連結され、前記外部電源と前記電動車両とを電気的に接続するコネクタ部と、
前記コネクタ部が前記電動車両に連結されると、前記電動車両の前記制御部の作動状態と無関係に前記第2蓄電部を充電する低圧充電手段とを備える、車両充電装置。
【請求項6】
前記低圧充電手段は、前記外部電源からの電力を受けて前記第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する低圧電力生成部を含み、
前記コネクタ部は、前記外部電源からの電力に加えて、前記低圧電力を前記電動車両へ供給するように構成され、
前記電動車両は、前記コネクタ部を介して供給される前記低圧電力で前記第2蓄電部を充電するための電力線を含む、請求項5に記載の車両充電装置。
【請求項7】
前記電動車両は、
前記第1蓄電部の出力電圧を降圧して前記第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する降圧部と、
前記第1蓄電部と前記降圧部との間に接続され、両者を電気的に接続または遮断するリレー部とをさらに備え、
前記低圧充電手段は、前記コネクタ部と前記電動車両との連結に応答して、前記リレー部が前記第1蓄電部と前記降圧部とを電気的に接続するための駆動指令を前記電動車両の前記スイッチ部へ与える指令生成部を含む、請求項5に記載の車両充電装置。
【請求項8】
車両充電システムであって、
充放電可能な第1蓄電部を搭載する電動車両と、
前記電動車両に搭載された前記第1蓄電部を外部電源により充電するための車両充電装置とを備え、
前記車両充電装置は、充電時に前記電動車両と連結され、前記外部電源と前記電動車両とを電気的に接続するコネクタ部を含み、
前記電動車両は、
充電時に前記外部電源から供給される電力を変換して前記第1蓄電部を充電する電力変換部と、
前記第1蓄電部に比較して出力電圧の低い充放電可能な第2蓄電部と、
前記第2蓄電部からの電力によって作動し、前記電力変換部の電力変換動作を制御する制御部とを含み、
前記車両充電システムは、前記コネクタ部が前記電動車両に連結されると、前記制御部の作動状態と無関係に前記第2蓄電部を充電する低圧充電手段をさらに備える、車両充電システム。
【請求項9】
前記低圧充電手段は、前記外部電源からの電力を受けて前記第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する低圧電力生成部を含む、請求項8に記載の車両充電システム。
【請求項10】
前記低圧電力生成部は、前記電動車両に搭載されるとともに、前記コネクタ部の連結によって前記電動車両に供給された前記外部電源からの電力の少なくとも一部を受取るように構成される、請求項9に記載の車両充電システム。
【請求項11】
前記低圧電力生成部は、前記コネクタ部に含まれ、前記電動車両へ供給されるべき外部電源からの電力の少なくとも一部を受けて前記低圧電力を生成するとともに、前記低圧電力が前記コネクタ部を介して前記電動車両の前記第2蓄電部へ供給されるように構成される、請求項9に記載の車両充電システム。
【請求項12】
前記低圧充電手段は、
前記第1蓄電部の出力電圧を降圧して前記第2蓄電部を充電するための低圧電力を受動的に生成する降圧部と、
前記第1蓄電部と前記降圧部との間に接続され、両者を電気的に接続または遮断するリレー部とを含み、
前記リレー部は、前記コネクタ部が前記電動車両に連結されると、前記第1蓄電部と前記降圧部とを電気的に接続する、請求項8に記載の車両充電システム。
【請求項13】
前記低圧充電手段は、前記コネクタ部と前記電動車両との連結に応答して、前記リレー部が前記第1蓄電部と前記降圧部とを電気的に接続するための駆動指令を発する指令生成部をさらに含み、
前記指令生成部は、前記コネクタ部に設けられ、前記外部電源からの電力を受けて作動する、請求項12に記載の車両充電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−206300(P2008−206300A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39327(P2007−39327)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】