説明

電動車両充電制御システム及び電動車両充電制御方法

【課題】駆動力を十分に発生させることができ、しかも、バッテリの耐久性が低下するのを抑制することができるようにする。
【解決手段】充電要素と、電動機械と、充電施設の電源と選択的に接続された充電回路65と、電動車両の走行を開始する予定の時刻より前に設定時刻で充電要素の充電を開始し、電動車両の走行を開始する予定の時刻までに、所定の充電停止条件が成立したときに、充電要素の充電を停止させる充電制御処理手段と、設定時刻から更に所定の時間が経過した後に、電動車両の始動が確認されない場合に、充電要素の放電を開始する放電制御処理手段とを有する。電動車両の走行を開始する前に充電要素を充電し、その後、充電要素を放電させるようになっているので、電動車両を走行させるのに必要な駆動力を十分に発生させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両充電制御システム及び電動車両充電制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、ハイブリッド型車両等の電動車両においては、駆動モータにバッテリが接続され、該バッテリを放電させることによって発生させられた電力を駆動モータに供給して、駆動モータを駆動したり、制動時等において駆動モータで電力を回生し、回生した電力をバッテリに供給してバッテリを充電したりすることができる。また、例えば、自宅等に電動車両を置き、充電設備のコンセントにプラグを差し込むことによって外部電源からバッテリを充電することができるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−116019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の電動車両においては、電動車両を急に走行させる必要が生じたときに、バッテリ残量が小さいと、発生する電気量が小さいので、EV走行モードを優先して電動車両を走行させる場合に、航続距離が短くなり、場合によっては、電動車両を走行させるのに必要な車両要求トルク、すなわち、駆動力を十分に発生させることができなくなってしまう。そこで、次回、電動車両を急に走行させる必要が生じたときに、航続距離を長くすることができ、駆動力を十分に発生させることができるように、電動車両の運転を停止させる前に、バッテリ残量を大きい状態に保持しておくことが考えられる。ところが、バッテリ残量を大きい状態に保持する場合、バッテリの電解液、電極等が劣化し、バッテリの耐久性がその分低くなってしまう。
【0004】
本発明は、前記従来の電動車両の問題点を解決して、EV走行モードを優先して電動車両を走行させる場合で、電動車両を急に走行させる必要が生じたときに、航続距離を長くすることができ、駆動力を十分に発生させることができ、しかも、バッテリの耐久性が低下するのを抑制することができる電動車両充電制御システム及び電動車両充電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の電動車両充電制御システムにおいては、充電要素と、該充電要素から電力が供給されて駆動される電動機械と、充電施設の電源と選択的に接続され、前記充電要素を充電するための充電回路と、電動車両の走行を開始する予定の時刻より所定の時間前に設定された設定時刻で充電要素の充電を開始し、前記電動車両の走行を開始する予定の時刻までに、所定の充電停止条件が成立したときに、充電要素の充電を停止させる充電制御処理手段と、前記設定時刻から更に所定の時間が経過した後に、電動車両の始動が確認されない場合に、充電要素の放電を開始し、充電残量が小さくなって、あらかじめ設定された値になると、充電要素の放電を停止させる放電制御処理手段とを有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電動車両充電制御システムにおいては、充電要素と、該充電要素から電力が供給されて駆動される電動機械と、充電施設の電源と選択的に接続され、前記充電要素を充電するための充電回路と、電動車両の走行を開始する予定の時刻より所定の時間前に設定された設定時刻で充電要素の充電を開始し、前記電動車両の走行を開始する予定の時刻までに、所定の充電停止条件が成立したときに、充電要素の充電を停止させる充電制御処理手段と、前記設定時刻から更に所定の時間が経過した後に、電動車両の始動が確認されない場合に、充電要素の放電を開始し、充電残量が小さくなって、あらかじめ設定された値になると、充電要素の放電を停止させる放電制御処理手段とを有する。
【0007】
この場合、電動車両の走行を開始する前に充電要素を充電し、その後、所定の設定時刻で、充電要素の放電を開始するようになっているので、充電要素の放電を利用して電動車両を走行させるモードを優先して電動車両を走行させる場合で、電動車両を急に走行させる必要が生じたときに、航続距離を長くすることができ、駆動力を十分に発生させることができ、しかも、バッテリの耐久性が低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、電動車両としてのハイブリッド型車両について説明する。
【0009】
図1は本発明の実施の形態における電動駆動制御装置のブロック図である。
【0010】
図において、11はエンジン、12は図示されないクランクシャフトと接続され、前記エンジン11を駆動することによって発生させられた回転が出力される出力軸、13は該出力軸12を介して入力されたトルクを分配する差動回転装置としてのプラネタリギヤユニット、16は、伝達軸17を介して前記プラネタリギヤユニット13と連結され、プラネタリギヤユニット13によって分配されたトルクを受ける第1の電動機械としての発電機(G)、25は出力軸14を介して前記プラネタリギヤユニット13と連結され、プラネタリギヤユニット13によって分配されたトルクを受ける第2の電動機械としての駆動モータ(M)である。前記エンジン11、発電機16及び駆動モータ25は、互いに差動回転自在に、かつ、機械的に連結されるとともに、更に出力軸18を介して車輪である駆動輪37と機械的に連結される。
【0011】
そして、前記プラネタリギヤユニット13は、少なくとも、第1の差動要素としての図示されないサンギヤ、該サンギヤと噛(し)合する図示されないピニオン、該ピニオンと噛合する第2の差動要素としての図示されないリングギヤ、及び前記ピニオンを回転自在に支持する第3の差動要素としての図示されないキャリヤを備え、前記サンギヤは前記伝達軸17を介して発電機16と、リングギヤは、出力軸14及び図示されない所定のギヤ列を介して駆動モータ25と、キャリヤは出力軸12を介してエンジン11と連結される。
【0012】
また、前記キャリヤと図示されないケースとの間に図示されないワンウェイクラッチが配設され、該ワンウェイクラッチは、エンジン11から正方向の回転がキャリヤに伝達されたときにフリーになり、発電機16又は駆動モータ25から逆方向の回転がキャリヤに伝達されたときにロックされ、エンジン11が逆方向に回転させられるのを阻止する。
【0013】
前記発電機16は発電機インバータとしてのインバータ28に、駆動モータ25は駆動モータインバータとしてのインバータ29に接続され、各インバータ28、29は、いずれも、複数の、例えば、6個のスイッチング素子としての図示されないトランジスタを備え、該各トランジスタは、一対ずつユニット化されて各相のトランジスタモジュール(IGBT)を構成し、第1の電源としての、かつ、充電要素としてのバッテリ43と接続される。なお、バッテリ43に代えて、又はバッテリ43に加えて図示されないキャパシタを充電要素して接続することができる。
【0014】
前記発電機16は、バッテリ43から電力が供給されて駆動され、発電機16のトルク、すなわち、発電機トルクを発生させ、発電時に電力を発生させ、バッテリ43に送る。
【0015】
前記駆動モータ25は、バッテリ43から電力が供給されて駆動され、駆動モータ25のトルク、すなわち、駆動モータトルクを発生させて駆動輪37に送り、回生時に駆動輪37の回転を受けて電力を回生し、バッテリ43に送る。
【0016】
そして、発電機16及び駆動モータ25の制御を行うために第1の制御装置としての駆動部制御装置49が、前記エンジン11の制御を行うために第2の制御装置としてのエンジン制御装置46が配設され、前記駆動部制御装置49及びエンジン制御装置46が主制御装置としての車両制御装置50に接続される。前記エンジン制御装置46、駆動部制御装置49及び車両制御装置50は、いずれも、図示されないCPU、記録装置等によって構成され、所定のプログラム、データ等に基づいて各種の演算を行い、コンピュータとして機能する。また、前記エンジン制御装置46及び駆動部制御装置49は、車両制御装置50に対して下位の制御装置を構成し、車両制御装置50は、前記エンジン制御装置46及び駆動部制御装置49に対して上位の制御装置を構成する。なお、前記エンジン制御装置46、駆動部制御装置49及び車両制御装置50によって電動車両充電制御システムが構成される。
【0017】
前記駆動部制御装置49は、発電機16を駆動するための駆動信号をインバータ28に、駆動モータ25を駆動するための駆動信号をインバータ29にそれぞれ送る。
【0018】
前記インバータ28は、駆動信号に従って駆動され、発電機16の力行時にバッテリ43から電力、すなわち、直流の電流を受けて、各相の電流を発生させ、各相の電流を発電機16に供給し、発電機16の発電時に発電機16から各相の電流を受けて、直流の電流を発生させ、バッテリ43に供給する。
【0019】
また、前記インバータ29は、駆動信号に従って駆動され、駆動モータ25の力行時にバッテリ43から電力、すなわち、直流の電流を受けて、各相の電流を発生させ、各相の電流を駆動モータ25に供給し、駆動モータ25の回生時に駆動モータ25から各相の電流を受けて、直流の電流を発生させ、バッテリ43に供給する。なお、本実施の形態においては、発電機16による発電を駆動モータ25による回生として説明する。
【0020】
そして、48はバッテリ43の電圧を制御用の電圧に変換して前記車両制御装置50に印加するDC/DCコンバータ、52はバッテリ43の電流、すなわち、バッテリ電流Ibを検出する電流検出部としてのバッテリ電流センサ、53はバッテリ43の電圧、すなわち、バッテリ電圧Vbを検出する電圧検出部としてのバッテリ電圧センサであり、車両制御装置50の図示されないバッテリ残量検出処理手段は、バッテリ残量検出処理を行い、前記バッテリ電流Ib及びバッテリ電圧Vbに基づいて、充電残量としてのバッテリ残量SOCを検出する。なお、該バッテリ残量SOCは、バッテリ43の容量(電池容量)に対する充電された電気量を百分率で表した値である。
【0021】
また、54はバッテリ43の温度、すなわち、バッテリ温度tbを検出する第1の温度検出部としてのバッテリ温度センサ、55は、加速操作部としての図示されないアクセルペダルの加速操作量を表すアクセルペダルの位置(踏込量)、すなわち、アクセル開度を検出する加速操作量検出部としてのアクセル開度センサ、56は、減速操作部としての図示されないブレーキペダルの減速操作量を表すブレーキペダルの位置(踏込量)、すなわち、ブレーキ踏込量を検出する減速操作量検出部としてのブレーキセンサ、57は車速vを検出する車速検出部としての車速センサ、58はエンジン11の温度、すなわち、エンジン温度teを検出する第2の温度検出部としてのエンジン温度センサ、59は車室内の温度、すなわち、室内温度trを検出する第3の温度検出部としての車内温度センサである。本実施の形態においては、車速検出部として車速センサ57が配設されるようになっているが、駆動モータ25に配設された位置センサによって検出されたロータの位置に基づいて車速vを検出することもできる。
【0022】
そして、前記バッテリ43の充電及び放電を切り換えるために、切換要素としての電源スイッチ61が配設される。該電源スイッチ61によって、バッテリ43と、発電機16、駆動モータ25及び第2の電源としての100〔V〕の商用電源(交流電源AC)64とを選択的に接続する切換部が構成される。前記商用電源64は、家庭、オフィス等のようにバッテリ43を充電することができる施設、すなわち、充電施設に配設される。また、ハイブリッド型車両に、バッテリ43を充電するための充電回路65が配設され、前記商用電源64と選択的に接続される。
【0023】
なお、該商用電源64と充電回路65との間に図示されないAC/DCコンバータが配設され、該AC/DCコンバータにおいて、交流の電流が直流の電流に変換される。また、商用電源64に配設された図示されないコンセントと、ハイブリッド型車両に配設された図示されないプラグとが接離させられる。なお、前記コンセント及びプラグによって連結部材が構成される。
【0024】
また、前記電源スイッチ61において、端子a、b間が接続されると、バッテリ43と商用電源64とが充電回路65を介して接続され、これに伴い、商用電源64の電力をバッテリ43に供給し、該バッテリ43を充電することができる。そして、端子a、c間が接続されると、インバータ28、29とバッテリ43とが充電回路66を介して接続され、これに伴い、発電機16によって発電された電力及び駆動モータ25によって回生された電力をバッテリ43に供給し、バッテリ43を充電することができる。さらに、端子a、d間が接続されると、インバータ28、29とバッテリ43とがダイオードD1を介して接続され、バッテリ43を放電させ、発電機16及び駆動モータ25を駆動するのに必要な電力を、バッテリ43から出力し、発電機16及び駆動モータ25に供給することができる。
【0025】
なお、62は車室内を冷暖房する空調機器としてのエアコン、63は、エンジン11の本体(ケース)の直下に配設され、エンジン11を暖機(予熱)するための加熱体としてのヒータであり、エアコン62及びヒータ63は、DC/DCコンバータ67を介してバッテリ43と接続されるとともに、前記プラグを介して商用電源64と直接接続される。前記エンジン11、バッテリ43及びエアコン62は、暖機の対象となる暖機対象装置を構成する。
【0026】
ところで、バッテリ43は温度によってその特性が変化し、低温時においては、バッテリ43の単位重量当たりの出力することができる電力を表す出力密度、及びバッテリ43の単位重量当たりの入力することができる電力を表す入力密度を十分に高くすることができない。したがって、ハイブリッド型車両を寒冷期に走行させる場合に、バッテリ43の有する電力を使い切れないので、航続距離を長くすることができなかったり、ハイブリッド型車両を走行させる際の駆動力を十分に発生させることができなかったりする。また、ハイブリッド型車両の走行を開始する前に、エンジン11を十分に暖機することなくハイブリッド型車両を走行させてしまうと、走行させながらエンジン11を暖機することになり、その場合、暖機が終了するまでの間、エンジン11の燃料噴射の制御、点火時期の制御等を、暖機用に変更することになり、通常時と異なる制御のまま走行することになるので、燃費が悪くなるだけでなく、排気ガスによって大気を汚染してしまう。
【0027】
そこで、本実施の形態においては、ハイブリッド型車両の走行を開始する前に、バッテリ43及びエンジン11の暖機を終了するようにしている。なお、この場合、ハイブリッド型車両は、バッテリ43の放電を利用して走行させられるEV走行モードを優先して走行させられ、充電施設となる最初の出発地、例えば、自宅から走行を開始し、種々の経由地(目的地)を経た後、最終の目的地、例えば、自宅で走行を終了することとする。また、自宅を出発する際のバッテリ43において、バッテリ残量SOCは100〔%〕であるとし、自宅に到着したときのバッテリ残量SOCは30〔%〕であるとする。
【0028】
なお、バッテリ43を繰り返し経済的に使用するためには、連続して長時間維持することができる最大のバッテリ残量SOCmaxを80〔%〕程度とし、最小のバッテリ残量SOCminを30〔%〕程度とするのが好ましいが、例えば、10分程度の極めて短い時間だけ維持する場合の最大のバッテリ残量SOCmaxは100〔%〕であり、バッテリ43を満充電することができる。なお、最大のバッテリ残量SOCmax及び最小のバッテリ残量SOCminは、バッテリ43の性能、材質等によって異なる。
【0029】
次に、電動駆動制御装置の動作について説明する。
【0030】
図2は本発明の実施の形態における電動駆動制御装置の前工程の動作を示すフローチャート、図3は本発明の実施の形態における電動駆動制御装置の本工程の動作を示すフローチャート、図4は本発明の実施の形態における電動駆動制御装置の本工程の動作を示すタイムチャートである。
【0031】
まず、ハイブリッド型車両の走行を開始すると、車両制御装置50(図1)の図示されない駆動条件取得処理手段は、駆動条件取得処理を行い、前記アクセル開度、ブレーキ踏込量、車速v、バッテリ残量SOC等の駆動条件を読み込み、車両制御装置50の図示されない駆動制御処理手段は、駆動制御処理を行い、前記駆動条件に基づいて、エンジン制御装置46及び駆動部制御装置49に指示を送り、エンジン11、発電機16及び駆動モータ25を駆動する。
【0032】
そのために、車両制御装置50の図示されない充電残量判定処理手段としてのバッテリ残量判定処理手段は、充電残量判定処理としてのバッテリ残量判定処理を行い、バッテリ残量SOCが30〔%〕より大きいかどうかを判断する。
【0033】
そして、バッテリ残量SOCが30〔%〕より大きい場合、前記駆動制御処理手段は、バッテリ43から駆動モータ25に電力を供給し、駆動モータ25を駆動し、発電機16を必要に応じて駆動して、ハイブリッド型車両を、例えば、EV走行モードで走行させる。その間、バッテリ残量SOCは次第に小さくなり、バッテリ温度tbは次第に高くなり、エンジン温度teは50〔℃〕から徐々に高くなる。
【0034】
そして、ハイブリッド型車両の走行に伴って、バッテリ残量SOCが30〔%〕まで小さくなると、前記駆動制御処理手段は、エンジン11及び駆動モータ25を駆動し、ハイブリッド型車両をHV走行モードで走行させる。それに伴って、バッテリ残量SOCは30〔%〕で推移し、エンジン温度teは、ピーク値まで高くなった後、一定温度になる。その間、バッテリ43から供給された電力によってエアコン62が作動させられ、室内温度trを、所定の温度、本実施の形態においては、25〔℃〕に保つ。
【0035】
次に、自宅に到着し、ハイブリッド型車両を停車させ、始動スイッチをオフにすると、前工程が開始される。このとき、バッテリ温度tb及びエンジン温度teは次第に低くなる。また、室内温度trは、外気温度が高い場合は、25〔℃〕から次第に高くなり、外気温度が低い場合は、25〔℃〕から次第に低くなり、外気温度と等しくされる。
【0036】
そして、運転者が前記プラグをコンセントに差し込むと、第1の所定の設定時刻、本実施の形態においては、図示されないタイマで設定され、深夜電力の提供が開始されるタイミングで、前記車両制御装置50の図示されない充電残量監視処理手段としてのバッテリ残量監視処理手段は、充電残量監視処理としてのバッテリ残量監視処理を行い、バッテリ残量SOCを読み込み、前記車両制御装置50の図示されない充電制御処理手段は、充電制御処理を開始し、バッテリ残量SOCに基づいてバッテリ43の充電の制御を行う。
【0037】
そのために、前記充電制御処理手段は、バッテリ残量SOCが、閾(しきい)値SOCth1、本実施の形態においては、80〔%〕以下であるかどうかを判断する。バッテリ残量SOCが80〔%〕以下である場合、前記充電制御処理手段は、電源スイッチ61の端子a、b間を接続し、バッテリ43を充電し、バッテリ残量SOCが80〔%〕より大きくなると、バッテリ43の充電を停止する。なお、前記閾値SOCth1は、バッテリ43の所定の耐久性を確保することができるように設定されたバッテリ残量SOCの範囲において、最大値に設定される。
【0038】
そして、充電が進むのに伴って、バッテリ残量SOCが次第に大きくなり、これに伴って、商用電源64からの入力が徐々に小さくなる。また、この間、充電によってバッテリ43が、バッテリ43自体が有する内部抵抗により、発熱し、バッテリ温度tbが次第に高くなる。
【0039】
そして、所定のタイミングでバッテリ残量SOCが80〔%〕に到達すると、前記充電制御処理手段は、充電を停止させ、前工程の処理を終了する。
【0040】
このように、前工程でバッテリ残量SOCが80〔%〕に到達すると、その後、タイミングt1で本工程が開始されるまでの間、バッテリ残量SOCは80〔%〕に保持される。したがって、本工程が開始されるまでの間にハイブリッド型車両を急に走行させる必要が生じても、直ちにハイブリッド型車両をEV走行モードを優先して走行させることができる。
【0041】
ところで、本実施の形態においては、ハイブリッド型車両を走行させる予定がある場合、運転者は、第2の所定の設定時刻、本実施の形態においては、タイミングt2を、ハイブリッド型車両の走行を開始する予定の時刻として設定する。
【0042】
その場合、前記タイミングt2より、所定の時間、本実施の形態においては、10分前のタイミングt1で本工程が開始され、前記充電制御処理手段はバッテリ43の充電を開始する。なお、タイミングt1からタイミングt2までの期間を、満充電制御区間として設定する。仮に、運転者が満充電制御区間でハイブリッド型車両を走行させる目的でコンセントからプラグを引き抜くと、前記充電制御処理手段は、充電を中止し、その時点のバッテリ残量SOCでバッテリ43の放電を利用してハイブリッド型車両を走行させることができる。
【0043】
また、本実施の形態において、タイミングt1は、例えば、運転者が、図示されないリモコンスタータ(例えば、建物内からエンジン11を始動するための遠隔操作器としてのリモコン)を操作し、それに伴って発生させられた動作信号をハイブリッド型車両が動作信号を受信したときのタイミングとされるが、タイマによって設定することができる。
【0044】
次に、前記充電制御処理手段は、バッテリ43の充電を停止させる条件、すなわち、充電停止条件が成立したかどうかを判断する。そのために、前記充電制御処理手段は、第1の条件が成立したかどうかを、バッテリ残量SOCが100〔%〕であるかどうかによって判断し、第2の条件が成立したかどうかを、タイミングt1から所定の時間、例えば、10分が経過したかどうかによって判断し、第1、第2の条件のうちの少なくとも一方が成立すると、充電停止条件が成立したと判断する。
【0045】
なお、図4に示されるように、タイミングt1からタイミングt2までの間、前記充電制御処理手段の電圧制御処理手段は、電圧制御処理を行い、充電回路65に指示を送り、商用電源64によってバッテリ43を充電する際のバッテリ電圧Vbの目標値を、タイミングt1で所定の第1の値Vb1にし、その後、一定の傾きを有する一次曲線(直線)を描いて高くし、タイミングt2で第2の値Vb2にする。
【0046】
また、その間、バッテリ電流Ibは、タイミングt1で値Ib1になった後、二次曲線(時間の経過と共に傾きが大きくなる放物線)を描いて小さくなり、タイミングt2で零(0)〔C〕になり、また、バッテリ残量SOCは二次曲線(時間の経過と共に傾きが小さくなる放物線)を描いて大きくなり、100〔%〕になる。なお、1〔C:シーレイト〕は、バッテリ残量SOCを1時間で100〔%〕にするために必要とされる充電電流を表す。
【0047】
そして、前記充電制御処理手段は、充電停止条件が成立すると、充電電圧の印加を停止させ、バッテリ43の充電を停止させる。したがって、運転者がハイブリッド型車両の走行を開始する時刻であるタイミングt2までにはバッテリ43を満充電にすることができる。
【0048】
続いて、タイミングt2で前記車両制御装置50の図示されない待機処理手段は、待機処理を行い、所定の時間、本実施の形態においては、バッテリ43の充電が停止させられた状態で10分が経過し、前記タイマによって設定された第3の所定の設定時刻、本実施の形態においては、タイミングt3になるのを待機する。そのために、タイミングt2からタイミングt3までの時間が、運転者の行動の誤差を含む意味であらかじめ出発時間帯として、かつ、運転準備区間として設定される。
【0049】
この間、充電回路65はバッテリ43に電圧を印加しないが、バッテリ電圧Vbは第2の値Vb2に維持される。また、バッテリ残量SOCは100〔%〕に維持される。したがって、バッテリ43の入力密度を高くすることができるので、出発時間帯の間に、運転者がハイブリッド型車両の走行を開始すると、バッテリ残量SOCが100〔%〕の状態でバッテリ43の使用を開始することができる。
【0050】
その結果、ハイブリッド型車両の航続距離を長くすることができるだけでなく、ハイブリッド型車両の駆動力を十分に発生させることができる。
【0051】
ところで、タイミングt2から10分が経過し、出発時間帯を過ぎても、運転者がハイブリッド型車両を始動せず、ハイブリッド型車両の走行が開始されないことがある。その場合、その後も、バッテリ残量SOCが100〔%〕の状態が維持されることになり、バッテリ43の電解液、電極等が劣化するのが加速され、その結果、バッテリ43の耐久性が低下するのが加速されてしまう。
【0052】
そこで、本実施の形態においては、ハイブリッド型車両の始動が確認されない場合、タイミングt3になると、車両制御装置50の図示されない放電制御処理手段は、放電制御処理を行い、ハイブリッド型車両を走行させる予定が変更されたと判断し、バッテリ残量SOCを80〔%〕程度まで小さくするために、バッテリ43の強制的な放電(強制放電)を開始する。そのために、前記放電制御処理手段は、ヒータ63を通電させてエンジン11の暖機を開始したり、エアコン62の作動を開始したりして、バッテリ43を放電させる。なお、前記ハイブリッド型車両が始動されたかどうかは、例えば、始動スイッチがオンにされたかどうかによって判断することができる。
【0053】
また、必要に応じて、バッテリ43と図示されない可変抵抗とを接続し、所定の電流を可変抵抗に供給することによってバッテリ43を放電させたり、所定の電流を商用電源64を介して充電施設に供給することによって放電させたりすることができる。
【0054】
このとき、前記放電制御処理手段の電流制御処理手段は、電流制御処理を行い、エアコン62及びヒータ63に供給される電流、すなわち、放電電流を一定の値Ib2にして電流制御を行う。それに伴って、バッテリ電圧Vbは、二次曲線(時間の経過と共に傾きが小さくなる放物線)を描いて低くなり、タイミングt4で4.0〔V〕にされ、バッテリ残量SOCが、一次曲線(直線)を描いて小さくなり、タイミングt4で80〔%〕になる。
【0055】
このように、本実施の形態においては、タイミングt2からタイミングt3までの出発時間帯の間だけバッテリ残量SOCが100〔%〕に保持され、タイミングt1より前及びタイミングt4以降においては、バッテリ残量SOCが80〔%〕に保持されるので、バッテリ43の耐久性が低下するのを抑制することができる。
【0056】
また、仮に、運転者が出発時間帯以外に急にハイブリッド型車両を使用したとしても、バッテリ残量SOCは80〔%〕に保持されているので、十分な距離をバッテリ43の放電を利用して走行させるEV走行モードで走行させることができる。
【0057】
そして、タイミングt1からタイミングt2までの間に充電が行われるので、その間に、バッテリ43が発熱する。したがって、タイミングt2までにバッテリ43を暖機し、バッテリ温度tbを高くすることができるので、ハイブリッド型車両の走行を開始するまでに、バッテリ43の出力密度を高くすることができる。その結果、ハイブリッド型車両を寒冷期に始動させた場合でも、その直後に、ハイブリッド型車両の駆動力を十分に発生させることができる。
【0058】
しかも、出発時間が経過した後、タイミングt3からタイミングt4までの間、バッテリ43からヒータ63及びエアコン62に電力が供給され、車両の走行を開始する前にエンジン11及びエアコン62を暖機することができる。したがって、出発時間帯が経過して運転者がハイブリッド型車両の走行を開始した場合、エンジン11の燃料噴射の制御、点火時期の制御等を、暖機用に変更する必要がなくなり、エンジン11をコールドスタートさせるのを防止することができる。したがって、ハイブリッド型車両の走行を開始する際の燃費を良くすることができ、エネルギー効率を高くすることができるだけでなく、排気ガスの成分を十分に浄化することができ、排気ガスによって大気が汚染されるのを防止することができる。
【0059】
さらに、ハイブリッド型車両の走行を開始する前にエアコン62の暖機が行われるので、走行を開始した後にエアコン62によってハイブリッド型車両に加わる負荷を小さくすることができる。したがって、燃費を良くすることができる。
【0060】
次に、図2のフローチャートについて説明する。
ステップS1 コンセントに差し込む。
ステップS2 所定の設定時刻で充電を開始する。
ステップS3 バッテリ残量SOCを読み込む。
ステップS4 バッテリ残量SOCが80〔%〕以下であるかどうか判断する。バッテリ残量SOCが80〔%〕以下である場合はステップS5に、バッテリ残量SOCが80〔%〕より大きい場合はステップS6に進む。
ステップS5 バッテリ43を充電をする。
ステップS6 バッテリ43を充電しないで処理を終了する。
ステップS7 バッテリ残量SOCが80〔%〕より大きいかどうか判断する。バッテリ残量SOCが80〔%〕より大きい場合はステップS8に進み、バッテリ残量SOCが80〔%〕以下である場合はステップS5に戻る。
ステップS8 バッテリ43の充電を停止させ、処理を終了する。
【0061】
次に、図3のフローチャートについて説明する。
ステップS11 所定の設定時刻で充電を開始する。
ステップS12 バッテリ残量SOCが100〔%〕になるのを待機し、バッテリ残量SOCが100〔%〕になった場合はステップS14に進む。
ステップS13 10分が経過するのを待機し、10分が経過した場合はステップS14に進む。
ステップS14 バッテリ43の充電を停止させる。
ステップS15 10分が経過したかどうかを判断する。10分が経過した場合はステップS16に進み、経過していない場合はステップS14に戻る。
ステップS16 バッテリ43を放電させる。
ステップS17 バッテリ残量SOCが80〔%〕以下であるかどうかを判断する。バッテリ残量SOCが80〔%〕以下である場合はステップS18に進み、バッテリ残量SOCが80〔%〕より大きい場合はステップS16に戻る。
ステップS18 バッテリ43の放電を停止させ、処理を終了する。
【0062】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態における電動駆動制御装置のブロック図である。
【図2】発明の実施の形態における電動駆動制御装置の前工程の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における電動駆動制御装置の本工程の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における電動駆動制御装置の本工程の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0064】
16 発電機
25 駆動モータ
43 バッテリ
46 エンジン制御装置
49 駆動部制御装置
50 車両制御装置
64 商用電源
65 充電回路
SOC バッテリ残量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電要素と、該充電要素から電力が供給されて駆動される電動機械と、充電施設の電源と選択的に接続され、前記充電要素を充電するための充電回路と、電動車両の走行を開始する予定の時刻より所定の時間前に設定された設定時刻で充電要素の充電を開始し、前記電動車両の走行を開始する予定の時刻までに、所定の充電停止条件が成立したときに、充電要素の充電を停止させる充電制御処理手段と、前記設定時刻から更に所定の時間が経過した後に、電動車両の始動が確認されない場合に、充電要素の放電を開始し、充電残量が小さくなって、あらかじめ設定された値になると、充電要素の放電を停止させる放電制御処理手段とを有することを特徴とする電動車両充電制御システム。
【請求項2】
前記充電制御処理手段は、所定の条件が成立したかどうかを、充電要素が満充電になったかどうかによって判断し、充電要素が満充電になり、前記所定の条件が成立したときに、前記充電停止条件が成立したと判断し、充電要素の充電を停止させる請求項1に記載の電動車両充電制御システム。
【請求項3】
前記充電制御処理手段は、所定の条件が成立したかどうかを、充電要素の充電が開始されてから所定の時間が経過したかどうかによって判断し、所定の時間が経過し、所定の条件が成立したときに、前記充電停止条件が成立したと判断し、充電要素の充電を停止させる請求項1に記載の電動車両充電制御システム。
【請求項4】
充電要素、該充電要素から電力が供給されて駆動される電動機械、及び充電施設の電源と選択的に接続され、前記充電要素を充電するための充電回路を有する電動車両の電動車両充電制御方法において、電動車両の走行を開始する予定の時刻より所定の時間前に設定された設定時刻で充電要素の充電を開始し、前記電動車両の走行を開始する予定の時刻までに、所定の充電停止条件が成立したときに、充電要素の充電を停止させ、前記設定時刻から更に所定の時間が経過した後に、電動車両の始動が確認されない場合に、充電要素の放電を開始し、充電残量が小さくなって、あらかじめ設定された値になると、充電要素の放電を停止させることを特徴とする電動車両充電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−278585(P2008−278585A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117008(P2007−117008)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】