説明

電動車椅子、電動カートの水素ボンベへの水素製造充填装置

【課題】電動車椅子P、電動カートDの水素ボンベBへの水素供給を容易になし得るようにする。
【解決手段】 家庭用燃料電池システムMに組み込まれ、そのシステムMは、脱硫器11、改質器12、PEFCスタック13、インバータ14、熱交換器15、貯湯タンク16及びバックアップ電源17とからなる。この家庭用燃料電池システムMに三方弁21を介してCO除去器22、水素(H)ストッカー23が接続され、この水素ストッカー23に主開閉弁24を介して所用数の副開閉弁25が接続されており、常時、システムMの駆動によって、水素ストッカー23に所要量の水素dを適宜に充填しておく。電動車椅子等の使用によって、その水素ボンベBが空になれば、その水素ボンベBを電動車椅子等から外して、水素スットカー23に副開閉弁を介し接続して水素dを充填する。この水素充填は、家庭用燃料電池システムを有する各家庭に於いて行い得るので、非常に便利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動用電源として燃料電池システムを搭載した電動車椅子、電動カートの水素ボンベへの水素製造充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池システムの開発に伴い、身障者や高齢者向け移動手段としての電動車椅子や電動カートの駆動用電源として燃料電池システムが検討されつつある。
例えば、図3に示す電動車椅子Pは、車椅子本体1の下部に駆動用モータを、その後側に燃料電池2をそれぞれ設け、その燃料電池2の燃料である水素を供給する水素ボンベBの収納箱3を背もたれの後面に設けたものである。
また、図4に示す電動カートDは、座席7の下部に、駆動用モータ、燃料電池2及び水素ボンベBの収納部を搭載している。
これらの電動車椅子P又は電動カートDは、特許文献1、2又は3に詳細を記載のように、操作盤4における操作信号が制御器(図示せず)に送られ、その制御器でもって走行、停止等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2006/019030号公報
【特許文献2】特開2008−142177号公報
【特許文献3】特開2007−275280号公報
【特許文献4】特開2007−187174号公報
【特許文献5】特開平10−139401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この電動車椅子Pや電動カートD(以下、両者を「電動車椅子等」と言う。)は、水素ボンベBを搭載し、その水素ボンベBが空になれば、水素満充填の水素ボンベBに取り替えることによって、燃料補給を行っており、当然のこととして、その空になった水素ボンベBには燃料である水素を充填する必要がある。
その水素ボンベBには、純水素を充填するため、その純水素供給源としては、高圧ガスボンベ(特許文献4 参照)や水素ステーション(特許文献5 参照)からの配管供給が必要であった。
しかし、これらの高圧ガスボンベや水素ステーションの設置場所は、高圧水素に関する法規制や立地条件などから限られており、燃料電池システムを搭載した電動車椅子等の普及が遅れている原因にもなっている。
【0005】
この発明は、この様な実情の下、燃料電池システムを搭載した電動車椅子等の水素ボンベへの供給を容易になし得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、この発明は、まず、近年、家庭用燃料電池が普及し始めており、その家庭用燃料電池に着目したのである。家庭用燃料電池は、都市ガス又は液化石油ガス(LPG)等の商用ガスを燃料とし、その燃料を、改質器を用いて、水素:約80%、二酸化炭素(CO):約20%の改質ガス(水素リッチガス)とし、その改質ガスを用いて、電気を生成するとともに、発熱を利用した給湯などをするシステムである。
つぎに、この発明は、この家庭用燃料電池システムにおいて生成される上記改質ガスから、二酸化炭素(CO)を除去した水素をストックし、そのストックした水素を上記水素ボンベに供給することとしたのである。
このようにすれば、電動車椅子等の所有者宅、又はその使用者宅において、家庭用燃料電池システムが導入されれば、その所有者宅等において、その電動車椅子等の燃料用水素の製造充填装置を設置し得ることとなる。使用者宅には、電動車椅子等が訪れる、市役所、区役所、公民館、劇場等の人が集まる各種の建物が含まれる。
【0007】
この発明の構成としては、燃料電池システムを搭載した電動車椅子又は電動カートの所有者宅、又はその使用者宅に設置される、前記電動車椅子又は電動カートの水素ボンベへの水素製造充填装置であって、都市ガス又は液化石油ガスからなる燃料を改質して水素リッチガスを生成する改質手段と、その改質手段で生成した水素リッチガスから水素を分離して水素ガスを得る水素純化手段と、その水素純化手段で分離した水素の貯蔵手段と、その貯蔵手段の水素を電動車椅子又は電動カートの水素吸蔵合金ボンベに供給する手段とからなり、その改質手段を家庭用燃料電池の改質手段からなるものとした構成を採用することができる。
【0008】
この構成において、上記家庭用燃料電池が上記改質手段の後段に水素純化手段を有するものの場合は、上記水素純化手段もその家庭用燃料電池の水素純化手段からなるものとし得る。
また、上記水素純化手段と貯蔵手段が水素吸蔵合金法によるものにあっては、一方を他方で兼用することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、以上のように構成して、一般家庭においても、水素を製造できて貯蔵できるようにしたので、電動車椅子等の所有者又は使用者等の自宅において、自己の電動車椅子等の燃料たる水素の供給が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態の概略図
【図2】この発明の他の実施形態の概略図
【図3】電動車椅子の斜視図
【図4】電動カートの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、この発明の一実施形態を示し、この実施形態の水素製造充填装置は、固体高分子形の家庭用燃料電池(PEFC)システムMに組み込んだものである。
この燃料電池システムMは、脱硫器11、改質器12、PEFCスタック13、インバータ14、熱交換器15、貯湯タンク16及びバックアップ電源17とからなる。その脱硫器11に都市ガスaが送り込まれており、この脱硫器11において、付臭剤に含まれる硫黄が取り除かれた都市ガスaは、水蒸気bとともに改質器12に送り込まれて、700〜1000℃の高温下で反応させて、水素(H)とCOの改質ガス(水素リッチガス)cとなり、この改質ガスcはPEFCスタック13に送られる。
【0012】
PEFCスタック13では、送られた改質ガスc中の水素dと空気の酸素でもって、電気と熱と水が生み出され、電気はインバータ14により直流から交流に変換されて家庭用電源として使用される。水は発生熱によって水蒸気となり、この水蒸気は改質器12への水蒸気bとされたり、熱交換器15に送られて貯湯タンク16内の水(湯)と熱交換されたりする。貯湯タンク16内の湯は、家庭用の給湯として利用される。貯湯タンク16内の湯がなくなれば、バックアップ電源17でもって加熱して湯を作って供給する。改質ガスc中の不要なCOは適宜に大気に放出される。
【0013】
この家庭用燃料電池システムMにおいて、改質器12の下流に三方弁21が介設されて、その三方弁21の一口に改質器12、二口にPEFCスタック13、三口にCO除去器22と水素(H)ストッカー23が接続されている。
この水素ストッカー23は、水素吸蔵合金を充填したボンベ又は高圧ボンベであって、CO除去器22からの水素dの充分な量を充填可能なものであり、この水素ストッカー23に主開閉弁24を介して所用数の副開閉弁25が接続されている。この副開閉弁25に、電動車椅子等の水素ボンベBを接続して水素dを充填する。水素吸蔵合金を充填したボンベからなる水素ストッカー23には加冷温器が付設されており、その加冷温器の冷却作用によって水素dを吸蔵(ストック)し、加熱作用によって吸蔵した水素dを送り出す。また、高圧ボンベからなる水素ストッカー23は、周知の水素充填機でもってCO除去器22からの水素dを適宜に充填する。これらの水素ストッカー23と水素ボンベBの接続態様は、例えば、特許文献4に記載のものとする。
【0014】
この実施形態は以上の構成であって、その家庭用燃料電池システムMにおいて水素ストッカー23に所要量の水素dを適宜に充填しておく。電動車椅子等の使用によって、その水素ボンベBが空になれば、又は、空近くになれば、その水素ボンベBを電動車椅子等から外して、水素ストッカー23にその水素ボンベBを接続して水素dを充填する。
この水素充填は、家庭用燃料電池システムMを有する各家庭に於いて行い得るので、非常に便利である。
【0015】
この実施形態において、図2に示すように、CO除去器22を家庭用燃料電池システムMに設けることができる。この場合、三方弁21はそのCO除去器22の下流に設けられ、その一口にCO除去器22、二口にPEFCスタック13、三口に水素(H)ストッカー23が接続される。CO除去器22には、圧力スイング式吸着(PSA)法や水素吸蔵合金法等が採用できる。後者の水素吸蔵合金法を採用した場合、水素ストッカー23が水素吸蔵合金を充填したものであれば、そのCO除去器22と水素ストッカー23は水素吸蔵合金を充填した同一構成物となるため、CO除去器22と水素ストッカー23の一方で他方を兼用することもでき、他方を省略できる。このとき、図2の実施形態では、三方弁21の三口に主開閉弁24を接続する。
【符号の説明】
【0016】
B 水素ボンベ
D 電動カート
M 家庭用燃料電池システム
P 電動車椅子
a 都市ガス
b 水蒸気
c 改質ガス(水素リッチガス)
d 水素
11 脱流器
12 改質器
13 PEFCスタック
14 インバータ
15 熱交換器
16 貯湯タンク
21 三方弁
22 CO除去器
23 水素(H)ストッカー
24 主開閉弁
25 副開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムを搭載した電動車椅子(P)又は電動カート(D)の所有者宅、又はその使用者宅に設置される、前記電動車椅子(P)又は電動カート(D)の水素ボンベ(B)への水素製造充填装置であって、
都市ガス又は液化石油ガスからなる燃料(a)を改質して水素リッチガス(c)を生成する改質手段(12)と、その改質手段(12)で生成した水素リッチガス(c)から水素を分離して水素ガス(d)を得る水素純化手段(22)と、その水素純化手段(22)で分離した水素(d)の貯蔵手段(23)と、その貯蔵手段(23)の水素(d)を上記電動車椅子(P)又は電動カート(D)の水素吸蔵合金ボンベ(B)に供給する手段とからなり、前記改質手段(12)が家庭用燃料電池の改質手段からなる水素製造充填装置。
【請求項2】
上記家庭用燃料電池が上記改質手段(12)の後段に水素純化手段(22)を有するものにあっては、上記水素純化手段(22)もその家庭用燃料電池の水素純化手段(22)からなるものとしたことを特徴とする請求項1に記載の水素製造充填装置。
【請求項3】
上記水素純化手段(22)と貯蔵手段(23)が水素吸蔵合金法によるものにあっては、一方を他方で兼用するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素製造充填装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−254485(P2010−254485A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102943(P2009−102943)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】