説明

電圧電流変換回路及びこれを備えたPLL回路

【課題】電源電圧依存性が小さい電圧電流変換回路及びこれを備えたPLL回路を提供する。
【解決手段】電圧電流変換回路は、第1電圧が供給される第1導電型のトランジスタで構成され、第1電流に基づいて第2電流を生成するカレントミラー回路と、前記第1電流が流れる第2導電型の第1のトランジスタと、一端が前記第1のトランジスタのソースに接続され、他端に第2電圧が供給され、入力された制御電圧に応じて抵抗値が変化する可変抵抗と、前記第2電流が流れ、ドレインとゲートとが前記第1のトランジスタのゲートに接続され、ソースに前記第2電圧が供給され、ゲート幅Wとゲート長Lとの比W/Lが前記第1のトランジスタの比W/Lより小さい第2導電型の第2のトランジスタと、前記第1電流または前記第2電流に基づいて出力電流を出力する電流出力部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧電流変換回路及びこれを備えたPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧電流変換回路は、制御電圧が高くなるに従って出力電流が大きくなる回路である(例えば、非特許文献1参照)。出力電流は、制御電圧が電源電圧と等しい時に最大値となる。従来の電圧電流変換回路では、出力電流の最大値の電源電圧依存性が大きい。そのため、この電圧電流変換回路を用いた回路において、電源電圧が変化した際に不具合が起こる場合があった。
【0003】
例えば、この電圧電流変換回路を用いたPLL(Phase Locked Loop)回路について説明する。PLL回路は、ローパスフィルタからの制御電圧に応じて発振周波数が変化するVCO(電圧制御発振器:Voltage Controlled Oscillator)を備える。VCOは、ローパスフィルタからの制御電圧を電流に変換する電圧電流変換回路と、その電流に応じて発振周波数が変化する電流制御発振器とを備える。電流制御発振器は、例えば、上記電流が大きくなると発振周波数が高くなる。前述のように、電圧電流変換回路では制御電圧が電源電圧と等しい時に出力電流が最大値となるので、この時にVCOは最大発振周波数で発振する。
【0004】
このようなPLL回路において、電圧電流変換回路の出力電流の最大値の電源電圧依存性が大きいため、VCOの最大発振周波数の電源電圧依存性も大きくなっていた。
【0005】
つまり、低電源電圧時には、電圧電流変換回路の出力電流の最大値が小さくなり過ぎるので、VCOの最大発振周波数は必要な周波数よりも低くなっていた。従って、PLL回路は必要な周波数でロックできなかった。
【0006】
一方、高電源電圧時には、電圧電流変換回路の出力電流の最大値が大きくなり過ぎるので、VCOの最大発振周波数は必要な周波数よりも大幅に高くなっていた。そのため、制御電圧が高くなると、VCOの発振周波数がVCOの次段の分周器の動作可能な周波数を超えてしまい、分周器は正常に動作できなかった。従って、PLL回路は誤動作していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Amr M. Fahim, ”Clock Generators for SOC Processors”, Springer, 2005, p.45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電源電圧依存性が小さい電圧電流変換回路及びこれを備えたPLL回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の一態様によれば、第1電圧が供給される第1導電型のトランジスタで構成され、第1電流に基づいて第2電流を生成するカレントミラー回路と、前記第1電流が流れる第2導電型の第1のトランジスタと、一端が前記第1のトランジスタのソースに接続され、他端に第2電圧が供給され、入力された制御電圧に応じて抵抗値が変化する可変抵抗と、前記第2電流が流れ、ドレインとゲートとが前記第1のトランジスタのゲートに接続され、ソースに前記第2電圧が供給され、ゲート幅Wとゲート長Lとの比W/Lが前記第1のトランジスタの比W/Lより小さい第2導電型の第2のトランジスタと、前記第1電流または前記第2電流に基づいて出力電流を出力する電流出力部と、を備えることを特徴とする電圧電流変換回路が提供される。
【0010】
また、本願発明の他の一態様によれば、基準クロックの位相と帰還クロックの位相とを比較し、位相差に応じた出力信号を出力する位相比較器と、前記位相比較器からの前記出力信号を電流に変換するチャージポンプと、前記チャージポンプからの前記電流を前記制御電圧に変換するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタからの前記制御電圧を前記出力電流に変換する上記電圧電流変換回路と、前記電圧電流変換回路からの前記出力電流に応じた周波数の出力クロックを出力する発振器と、前記発振器からの前記出力クロックを分周し、前記帰還クロックを前記位相比較器に出力する分周器と、を備えることを特徴とするPLL回路が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源電圧依存性が小さい電圧電流変換回路及びこれを備えたPLL回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】比較例に係る電圧電流変換回路の回路図である。
【図2】比較例に係る電圧電流変換回路の電圧電流特性を示す図である。
【図3】比較例に係るGM一定バイアス回路の回路図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る電圧電流変換回路の回路図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る電圧電流変換回路の電圧電流特性を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る電圧電流変換回路の回路図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る電圧電流変換回路の電圧電流特性を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る電圧電流変換回路を備えたPLL回路の回路図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るPLL回路のVCOの制御電圧−周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態についての説明に先立ち、発明者が知得する比較例の電圧電流変換回路とGM一定バイアス回路とについて説明する。
【0014】
図1は、比較例に係る電圧電流変換回路の回路図である。
【0015】
図1に示す様に、PMOSトランジスタP11,P12の各ソースには電源電圧VDDAが供給される。PMOSトランジスタP11のゲート及びドレインは、PMOSトランジスタP12のゲートと、NMOSトランジスタN11のドレインとに接続されている。NMOSトランジスタN11のゲートには、制御電圧Vinが入力される。抵抗11は、NMOSトランジスタN11のソースと接地電圧との間に接続される。PMOSトランジスタP12のドレインは、出力電流Ioutを出力する。
【0016】
NMOSトランジスタN11は、制御電圧Vinがその閾値Vth以上になるとオンする。これにより、電流IがPMOSトランジスタP11とNMOSトランジスタN11と抵抗11とに流れる。PMOSトランジスタP11,P12は、電流Iをミラーして出力電流Ioutを出力する。また、制御電圧Vinに応じて、NMOSトランジスタN11の抵抗値が変化して電流Iが制御される。よって、出力電流Ioutも制御電圧Vinに応じて制御される。
【0017】
図2は、比較例に係る電圧電流変換回路の電圧電流特性を示す図である。
【0018】
図2の横軸は制御電圧Vinを示し、縦軸は出力電流Ioutを示す。同図は、一例として、低電源電圧(VDDA=1.0V)時の電圧電流特性と、中間の電源電圧(VDDA=1.2V)時の電圧電流特性と、高電源電圧(VDDA=1.4)時の電圧電流特性とを示す。なお、低電源電圧時と高電源電圧時の特性は、それぞれの電源電圧においてワースト特性となるプロセス条件のものである。
【0019】
この回路では、例えば、電源電圧が1.0Vから1.4Vに高くなった時に制御電圧Vinを1.0V以上に設定すると、NMOSトランジスタN11の抵抗値は電源電圧が1.0Vの時より低くなる。そのため、電流Iが増加して、出力電流Ioutも増加する。つまり、制御電圧Vinが電源電圧と等しい時における出力電流Ioutの最大値は、電源電圧に応じて大きく変化する。
【0020】
次に、GM一定バイアス回路について説明する。
【0021】
図3は、比較例に係るGM一定バイアス回路の回路図である。
【0022】
図3に示す様に、PMOSトランジスタP13,P14の各ソースには電源電圧VDDAが供給される。PMOSトランジスタP13のゲート及びドレインは、NMOSトランジスタN13のドレインと、PMOSトランジスタP14のゲートとに接続されている。抵抗11は、NMOSトランジスタN13のソースと接地電圧との間に接続される。NMOSトランジスタN13のゲートは、NMOSトランジスタN14のドレイン及びゲートと、PMOSトランジスタP14のドレインとに接続されている。NMOSトランジスタN14のソースには接地電圧が供給される。NMOSトランジスタN13の大きさ(ゲート幅W/ゲート長L)は、NMOSトランジスタN14の大きさのK倍である。
【0023】
PMOSトランジスタP13,P14は、PMOSトランジスタP13に流れる電流Iをミラーして、これと等しい電流IをPMOSトランジスタP14に流すように機能する。よって、この回路の動作点は、PMOSトランジスタP13とNMOSトランジスタN13と抵抗11とを流れる電流Iが、PMOSトランジスタP14とNMOSトランジスタN14とを流れる電流Iと等しくなるように決定される。
【0024】
このとき、電流Iは次の式(1)で近似的に表される。
【数1】

ここで、β=(1/2)μCox(W/L)である。Wはゲート幅、Lはゲート長、μは移動度、Coxは単位面積のゲート酸化膜容量であり、これらはNMOSトランジスタN14の物性値である。また、抵抗11の抵抗値をRとしている。また、式(1)では各トランジスタの出力抵抗は無限大であると仮定している。
【0025】
式(1)から分かるように、電流Iは、定数β,R,Kのみにより決定される一定値となる。実際には、各トランジスタの出力抵抗は有限であるが、十分大きいので、電源電圧の変動やプロセス条件の変動による電流Iへの影響は小さい。つまり、電源電圧が変動しても、電流IとNMOSトランジスタの相互コンダクタンスgmとは、ほぼ一定となる。
【0026】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。これらの実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0027】
(第1の実施形態)
図4,5を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態では、GM一定バイアス回路の電流値を決定する抵抗の値を制御電圧により制御するようにしている。
【0028】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る電圧電流変換回路の回路図である。
【0029】
図4に示すように、この電圧電流変換回路は、PMOSトランジスタP1(第4のトランジスタ)と、PMOSトランジスタP2(第5のトランジスタ)と、PMOSトランジスタP3(第6のトランジスタ)と、NMOSトランジスタN1(第1のトランジスタ)と、NMOSトランジスタN2(第2のトランジスタ)と、NMOSトランジスタN3(第3のトランジスタ)と、抵抗1とを備える。この実施形態では、第1導電型をP型とし、第2導電型をN型とする。PMOSトランジスタP1,P2の各ゲート幅は等しい。PMOSトランジスタP3のゲート幅は、PMOSトランジスタP1のゲート幅のM倍である。NMOSトランジスタN1のゲート幅は、NMOSトランジスタN2のゲート幅のK倍である。PMOSトランジスタP1,P2,P3の各ゲート長は等しく、NMOSトランジスタN1,N2の各ゲート長は等しい。つまり、NMOSトランジスタN2のゲート幅Wとゲート長Lとの比W/Lは、NMOSトランジスタN1の比W/Lよりも小さい。
【0030】
PMOSトランジスタP1、P2,P3の各ソースには、電源電圧VDDA(第1電圧)が供給される。PMOSトランジスタP1のゲート及びドレインは、NMOSトランジスタN1のドレインと、PMOSトランジスタP2,P3の各ゲートとに接続されている。NMOSトランジスタN1のソースは、NMOSトランジスタN3のドレインに接続されている。NMOSトランジスタN3のゲートには、制御電圧Vinが入力される。抵抗1は、一端がNMOSトランジスタN3のソースに接続され、他端に接地電圧(第2電圧)が供給される。NMOSトランジスタN1のゲートは、NMOSトランジスタN2のドレイン及びゲートと、PMOSトランジスタP2のドレインとに接続されている。NMOSトランジスタN2のソースには接地電圧が供給される。PMOSトランジスタP3のドレインは電流Ioutを負荷(図示せず)に出力する。
【0031】
NMOSトランジスタN3と抵抗1は、入力された制御電圧Vinに応じて抵抗値が変化する可変抵抗2を構成している。可変抵抗2の抵抗値Rは、NMOSトランジスタN3の抵抗値R(mos)と、抵抗1の抵抗値R(poly)との和である。つまり、R=R(mos)+R(poly)と表せる。
【0032】
カレントミラー回路として機能するPMOSトランジスタP1,P2は、PMOSトランジスタP1に流れる参照電流としての電流I(第1電流)と等しい電流I(第2電流)を、PMOSトランジスタP2に流す。よって、この電圧電流変換回路の動作点は、PMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1,N3と抵抗1とを流れる電流Iが、PMOSトランジスタP2とNMOSトランジスタN2とを流れる電流Iに等しくなるように決定される。
【0033】
また、NMOSトランジスタN2のゲート・ソース間電圧VGSN2は、NMOSトランジスタN1のゲート・ソース間電圧VGSN1より大きく、VGSN2=VGSN1+RIと表せる。
【0034】
また、PMOSトランジスタP3(電流出力部)は、PMOSトランジスタP1に流れる電流IをM倍して出力電流Ioutを出力する。
【0035】
これらの関係から、出力電流Ioutは次の式(2)で近似的に表される。
【数2】

【0036】
前述のように、βはNMOSトランジスタN2の物性値により決まる。また、各トランジスタの出力抵抗は無限大であると仮定している。
【0037】
式(2)から分かるように、出力電流Ioutは定数β,K,Mと、変数である抵抗値Rのみにより決定される。実際には、各トランジスタの出力抵抗は有限であるが、十分大きいので、電源電圧の変動やプロセス条件の変動による出力電流Ioutへの影響は小さい。
【0038】
ここで、制御電圧Vinに応じて抵抗値R(mos)が変化する。抵抗値R(poly)は一定なので、制御電圧Vinに応じて抵抗値Rが変化する。よって、出力電流Ioutは、式(2)に従って制御電圧Vinにより制御される。
【0039】
制御電圧Vinが所定の電圧以上の場合、抵抗値R(poly)はほぼ0となり、抵抗値Rはほぼ一定となる。よって、出力電流Ioutは、式(2)に従って、ほぼ一定となる。
【0040】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る電圧電流変換回路の電圧電流特性を示す図である。
【0041】
図5の横軸は制御電圧Vinを示し、縦軸は出力電流Ioutを示す。図5は、一例として、低電源電圧(VDDA=1.0V)時の電圧電流特性と、中間の電源電圧(VDDA=1.2V)時の電圧電流特性と、高電源電圧(VDDA=1.4)時の電圧電流特性とを示す。なお、各特性のプロセス条件は比較例と同一である。
【0042】
これらの電圧電流特性から分かるように、制御電圧Vinが約0.2Vから約0.6Vの範囲では、図2の比較例の電圧電流変換回路の特性と同様のほぼ線形の特性となっている。つまり、この範囲では抵抗値Rは可変である。
【0043】
ほぼ線形の特性となる理由は、制御電圧Vinが大きくなるとNMOSトランジスタN3が流す電流Iはゲート・ソース間電圧の2乗に比例して増加しようとするが、その電流Iが流れる抵抗1の一端の電圧が高くなり、NMOSトランジスタN3のゲート・ソース間電圧が減少するように、動作点が決定されるためである。
【0044】
制御電圧Vinが約0.6Vより高い範囲では、図3の比較例のGM一定バイアス回路の特性(出力電流Ioutが制御電圧Vinに依存せず、出力電流Ioutの電源電圧依存性が小さい特性)に近づいている。つまり、この範囲では抵抗値Rはほぼ一定となっている。
【0045】
このように、図2の比較例の電圧電流変換回路の電圧電流特性と比較して、出力電流Ioutの最大値の電源電圧依存性が、約1/3に小さくなっている。
【0046】
以上で説明した様に、本実施形態によれば、GM一定バイアス回路の電流値を決定する抵抗の値を制御電圧Vinで制御するようにしたので、制御電圧Vinに応じて出力電流Ioutを変化させることができ、且つ、出力電流Ioutの最大値の電源電圧依存性を比較例のものより小さくできる。
【0047】
(第2の実施形態)
図6,7を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、電源電圧に依存しない一定電流を出力電流に加えている点が第1の実施形態と異なる。
【0048】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る電圧電流変換回路の回路図である。
【0049】
この電圧電流変換回路は、図4の第1の実施形態の電圧電流変換回路に加え、図3の比較例と同様なGM一定バイアス回路60を備える。
【0050】
GM一定バイアス回路60は、PMOSトランジスタP4,P5,P6と、NMOSトランジスタN4,N5と、抵抗3と、を備える。PMOSトランジスタP4,P5,P6の各大きさ(W/L)は同一である。NMOSトランジスタN4のゲート幅は、NMOSトランジスタN5のゲート幅のK2倍である。NMOSトランジスタN4,N5の各ゲート長は等しい。
【0051】
PMOSトランジスタP4,P5,P6の各ソースには電源電圧VDDAが供給される。PMOSトランジスタP4のゲート及びドレインは、NMOSトランジスタN4のドレインと、PMOSトランジスタP5,P6の各ゲートとに接続されている。抵抗3は、一端がNMOSトランジスタN4のソースに接続され、他端に接地電圧が供給される。NMOSトランジスタN4のゲートは、NMOSトランジスタN5のドレイン及びゲートと、PMOSトランジスタP5のドレインとに接続されている。NMOSトランジスタN5のソースには接地電圧が供給される。PMOSトランジスタP6のドレインはPMOSトランジスタP3のドレインに接続されている。その他の回路構成は、図4の第1の実施形態と同一であるため、同一の要素に同一の符号を付して説明を省略する。なお、この実施形態では、第1導電型をP型とし、第2導電型をN型とする。
【0052】
比較例で述べた様に、GM一定バイアス回路60は電源電圧にほとんど依存しない一定電流Iminを生成する。出力電流Ioutは、第1の実施形態の電圧電流変換回路からの電流I*Mと、GM一定バイアス回路60からの電流Iminとの和となり、次の式(3)で表される。
【数3】

【0053】
なお、ここでは、可変抵抗2の抵抗値をR1とし、NMOSトランジスタN3の抵抗値をR1(mos)とし、抵抗1の抵抗値をR1(poly)とし、抵抗3の抵抗値をR2としている。また、NMOSトランジスタN1の大きさは、NMOSトランジスタN2の大きさのK1倍としている。
【0054】
式(3)において、第1項は第1の実施形態の式(2)と同様であり、第2項は比較例の式(1)と同様である。つまり、第1項は制御電圧Vinに応じて値が変化するが、第2項は制御電圧Vinによらず一定値である。よって、制御電圧VinがNMOSトランジスタN3の閾値Vthより低い時、出力電流Ioutは第2項で決まる一定値となる。
【0055】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る電圧電流変換回路の電圧電流特性を示す図である。
【0056】
図7は、低電源電圧(VDDA=1.0V)時の電圧電流特性と、中間の電源電圧(VDDA=1.2V)時の電圧電流特性と、高電源電圧(VDDA=1.4)時の電圧電流特性とを示す。なお、各特性のプロセス条件は第1の実施形態と同一である。
【0057】
これらの電圧電流特性から分かるように、制御電圧Vinが電源電圧に近い領域では、図5の第1の実施形態の電圧電流特性と同様に、出力電流Ioutの最大値の電源電圧依存性は小さい。制御電圧Vinが閾値より低い領域では、出力電流Ioutは最小値となり、電源電圧依存性はほとんどない。
【0058】
以上で説明した様に、本実施形態によれば、第1の実施形態の電圧電流変換回路の出力電流に、電源電圧にほとんど依存しない一定電流を加えるようにしたので、制御電圧Vinが低く第1の実施形態の電圧電流変換回路の出力電流が流れない時にも、電源電圧依存性がほとんどない出力電流Ioutを流すことができる。
【0059】
また、第1の実施形態と同様に、出力電流Ioutの最大値の電源電圧依存性も比較例のものより小さくできる。
【0060】
(第3の実施形態)
図8,9を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、第2の実施形態の電圧電流変換回路を用いてPLL回路を構成したものである。
【0061】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る電圧電流変換回路を備えたPLL回路の回路図である。
【0062】
このPLL回路は、位相比較器(PD)81と、チャージポンプ(CP)82と、ローパスフィルタ(LPF)83と、電圧制御発振器(以下、VCOと称す)84と、分周器(DIV)85とを備える。VCO84は、電圧電流変換回路(VIC)86と、電流制御発振器(ICO)87とを備える。電圧電流変換回路86は、第2の実施形態の電圧電流変換回路である。電流制御発振器87は、例えば、リングオシレータで構成される。
【0063】
位相比較器81は、入力クロック(基準クロック)CLKiの位相と帰還クロックCLKfの位相とを比較し、位相差に応じた出力信号up,dnを出力する。チャージポンプ82は、位相比較器81からの出力信号up,dnを電流に変換する。ローパスフィルタ83は、チャージポンプ82からの電流を制御電圧Vcに変換する。電圧電流変換回路86は、ローパスフィルタ83からの制御電圧Vcを出力電流Ioutに変換する。なお、制御電圧Vcは、第1の実施形態、第2の実施形態における、制御電圧Vinに相当する。電流制御発振器87は、電圧電流変換回路86からの出力電流Ioutに応じた周波数の出力クロックCLKoを出力する。分周器85は、電流制御発振器87からの出力クロックCLKoを分周し、帰還クロックCLKfを位相比較器81に出力する。
【0064】
これにより、PLL回路は、入力クロックCLKiの周波数と帰還クロックCLKfの周波数とが等しくなるように電流制御発振器87の発振周波数を制御してロック状態となり、所望の周波数の出力クロックCLKoを出力する。
【0065】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るPLL回路のVCOの制御電圧−周波数特性を示す図である。
【0066】
図9の横軸は制御電圧Vcを示し、縦軸は発振周波数fを示す。制御電圧−周波数特性91は低電源電圧(VDDA1)時の特性を表し、特性92は高電源電圧(VDDA2)時の特性を表す。
【0067】
前述の様に、第2の実施形態の電圧電流変換回路では、出力電流Ioutの最大値の電源電圧依存性は比較例のものよりも約1/3に小さくなっている。また、出力電流Ioutの最小値の電源電圧依存性はほとんどない。よって、この出力電流Ioutに応じて発振周波数fが変化する電流制御発振器87において、最大発振周波数fmaxの電源電圧依存性は、比較例の電圧電流変換回路を用いた場合よりも約1/3に小さくなる。また、制御電圧Vcが閾値より小さくなっても、電源電圧依存性がほとんどない最小発振周波数fminで発振できる。
【0068】
以上で説明した様に、本実施形態によれば、VCO84における電圧電流変換回路86として、出力電流の最大値と最小値の電源電圧依存性が小さい第2の実施形態の回路を用いるようにしたので、VCO84の最大発振周波数fmaxと最小発振周波数fminの電源電圧依存性を小さくできる。これにより、電源電圧が変化しても、VCO84は仕様の周波数範囲を大きく超えずその範囲内の全周波数で発振できる。従って、VCO84の発振信号を受ける分周器85が正常に動作でき、且つ、PLL回路は仕様の周波数範囲でロックできる。
【0069】
なお、VCO84における電圧電流変換回路86として、第1の実施形態の電圧電流変換回路を用いても良い。この場合も、最大発振周波数fmaxの電源電圧依存性は、比較例の電圧電流変換回路を用いた場合よりも約1/3に小さくなる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【0071】
例えば、第1及び第2の実施形態において、ゲートがNMOSトランジスタN1,N2の各ゲートに接続され、ソースに接地電圧が供給されるNMOSトランジスタ(電流出力部)を用いて、NMOSトランジスタN2に流れる電流Iに基づいて出力電流を出力するようにしても良い。
【0072】
また、第1及び第2の実施形態の電圧電流変換回路は、PLL回路以外にも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
N1〜N5 NMOSトランジスタ
P1〜P6 PMOSトランジスタ
1,3 抵抗
2 可変抵抗
81 位相比較器
82 チャージポンプ
83 ローパスフィルタ
84 電圧制御発振器
85 分周器
86 電圧電流変換回路
87 電流制御発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧が供給される第1導電型のトランジスタで構成され、第1電流に基づいて第2電流を生成するカレントミラー回路と、
前記第1電流が流れる第2導電型の第1のトランジスタと、
一端が前記第1のトランジスタのソースに接続され、他端に第2電圧が供給され、入力された制御電圧に応じて抵抗値が変化する可変抵抗と、
前記第2電流が流れ、ドレインとゲートとが前記第1のトランジスタのゲートに接続され、ソースに前記第2電圧が供給され、ゲート幅Wとゲート長Lとの比W/Lが前記第1のトランジスタの比W/Lより小さい第2導電型の第2のトランジスタと、
前記第1電流または前記第2電流に基づいて出力電流を出力する電流出力部と、
を備えることを特徴とする電圧電流変換回路。
【請求項2】
前記可変抵抗は、
ドレインが前記第1のトランジスタの前記ソースに接続され、ゲートに前記制御電圧が入力される第2導電型の第3のトランジスタと、
一端が前記第3のトランジスタのソースに接続され、他端に前記第2電圧が供給される抵抗と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電圧電流変換回路。
【請求項3】
前記カレントミラー回路は、
ソースに前記第1電圧が供給され、ドレインとゲートとが前記第1のトランジスタのドレインに接続された第1導電型の第4のトランジスタと、
ソースに前記第1電圧が供給され、ゲートが前記第4のトランジスタの前記ゲートに接続され、ドレインが前記第2のトランジスタの前記ドレインに接続された第1導電型の第5のトランジスタと、を備え、
前記電流出力部は、
ソースに前記第1電圧が供給され、ゲートが前記第4のトランジスタの前記ゲートに接続され、前記ソースとドレインとの間に前記出力電流が流れる第1導電型の第6のトランジスタを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電圧電流変換回路。
【請求項4】
前記第1電圧と前記第2電圧とに依存しない一定電流を生成して前記出力電流に加えるバイアス回路を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の電圧電流変換回路。
【請求項5】
基準クロックの位相と帰還クロックの位相とを比較し、位相差に応じた出力信号を出力する位相比較器と、
前記位相比較器からの前記出力信号を電流に変換するチャージポンプと、
前記チャージポンプからの前記電流を前記制御電圧に変換するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタからの前記制御電圧を前記出力電流に変換する、請求項1に記載の電圧電流変換回路と、
前記電圧電流変換回路からの前記出力電流に応じた周波数の出力クロックを出力する発振器と、
前記発振器からの前記出力クロックを分周し、前記帰還クロックを前記位相比較器に出力する分周器と、
を備えることを特徴とするPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−205202(P2011−205202A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68054(P2010−68054)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】