説明

電子または機能デバイスの製造方法

プラスチックまたは他の電子デバイスが、インクジェットプリント法によりフレキシブル基板上に形成される。基板の変形による位置決めの難しさを回避するために、堆積は、リリース層が加えられるリジッド基板上に実施される。常設的なフレキシブル基板として用いられる層を加えた後に、本構造は一時的なリジッド基板からリリースされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子または機能デバイスの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなデバイスがフレキシブル基板上に形成されることは一般的な要件であり、時には“従来”のプリント回路基板と機能的に類似するフレキシブルプリント回路基板の形状に形成され、時には、電子デバイスの支持が基板の補助機能であるような形状に形成される。このような基板の形状の例としては、プラスチックのクレジットカード、“紙状”の保証書やチケットや他の書類が挙げられる。
【0003】
電子デバイスの形成において、インクジェットプリントの分野の技術を用いて材料を堆積させることは既に提案されている。この堆積された材料は事実上金属的なものであってもよく、導電トラックを形成するのに用いられる。誘電体材料を堆積させることも可能である。例えば高分子導電体や半導体の利点を利用して、デバイス全体を堆積された材料から形成することも提案されている。この場合、堆積される材料は、誘電体、半導体、ドーパント、導電体や、前もって材料が堆積された領域にホールを形成するためのエッチング剤や溶剤である。これに関連して、参考文献として特許文献1が挙げられる。特許文献1には、プラスチックや他の基板上にプラスチックの電子デバイスを形成するためのインクジェットプリントに類似する技術の詳細について開示されている。
【0004】
インクジェットプリント法を用いてフレキシブル基板上に電子デバイスを形成することの難しさが生じるのは、堆積された液体と基板の相互作用が基板の配置の変化につながり、引き続いて堆積される領域の配列の難しさにつながるような場合である。一例として、堆積された流体は基板の膨張を生じさせ得る。これは一例に過ぎず、フレキシブル基板の配列の難しさは、多種多様な熱的、湿気的、化学的、機械的影響により生じ得る。
【0005】
この難しさは、基板の配置の変化に妨げられずに後続の製造プロセスの位置決めと配列を維持する際の複雑さとコストの増加につながる。代わりにまたは更に、この難しさは、採用される基板の性質、基板の厚さや固有のフレキシビリティ、用いられる堆積プロセスにおける制約に委ねられている。
【特許文献1】国際公開第2001/46987号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一つは、上述の難しさの複数または全てを回避または改善するフレキシブル基板上の電子デバイスの新規製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、一つの側面として、本発明はフレキシブル基板上への複数の電子または機能デバイスを有する電子または機能装置の製造方法に関するものであり、堆積表面を有するリジッド基板を提供する段階と、前記堆積表面上にリリース層を形成する段階と、前記リリース層上に複数の材料領域を堆積させ、デバイスのアレイを形成する段階と、前記堆積表面から前記デバイスのアレイをリリースする段階と、前記アレイにフレキシブル基板を接合する段階とを備える。好ましくは、前記複数の材料領域の少なくとも幾つかは液体粒子として堆積される。
【0008】
好ましくは、前記堆積表面から前記デバイスのアレイをリリースする段階は、前記アレイにフレキシブル基板を接合する段階の後で行われる。
【0009】
他の側面として、本発明はプラスチック基板上への複数の電子または機能デバイスを有する電子または機能装置の製造方法に関するものであり、堆積表面を有するリジッド基板を提供する段階と、液体粒子を堆積させてデバイスのアレイの少なくとも一部を形成する段階と、前記アレイにプラスチック基板を接合する段階と、前記アレイにプラスチック基板を接合する段階の後に前記堆積表面から前記アレイをリリースする段階とを備える。
【0010】
好ましくは、前記デバイスは実質的に高分子材料から形成される。
【0011】
好ましくは、前記基板を接合する段階は、流体状の基板材料を加えて、前記流体を凝固させ基板を形成する段階を備える。
【0012】
好ましくは、前記フレキシブルまたはプラスチック基板は、前記デバイスにアクセス可能にするために開口が設けられている。
【0013】
本発明の側面は、特に基板の安定性の問題を最小化するインクジェットを介した材料堆積についてのプロセスシーケンスを提供するが、これに限定されるものではない。
【0014】
本発明においては、再利用可能な安定な基板が選択され、ガラス、セラミックまたは金属材料であってもよい。リリース層は一方の面に加えられる。リリース層は、リリース剤、または、エッチングや加熱やピーリング(機械的)や他の材料除去プロセスにより後で除去可能な材料である。湿式めっき法、スピン法、インクジェット堆積法または他の方法により、リリース層が加えられる。リリース層は基板の堆積表面の全体に加えられるので、低コストなプロセスが採用可能であるし、採用されるはずである。その後で、プラスチックの電子装置を形成するための液体材料領域がリリース層の上面上に堆積される。基板がリジッドであるので、多層のこのような層が、複雑な測定及び配列装置を用いることなく容易に形成可能である。完成すると、堆積された構造を基板からリリースすることができて、その後フレキシブル基板が加えられる。代わりに、特に多層の堆積された層が繊細な場合には、リジッド基板から構造をリリースするのに先立って、フレキシブル基板をリジッド基板に対向する構造の面に取り付けることができる。
【0015】
流体スプレー法、バーコーティング法、スピン法や他の適切な方法により、基板層を加えることができる。
【0016】
更なる実施例においては、フレキシブル基板は、第1段階としてインクジェット堆積法またはスプレー法や他の方法により、リジッド基板に取り付けられる。好ましくは、リリース層も形成される。好ましくは、このフレキシブル基板は、処理や保管という後続の製造作業に起因する欠陥や汚染が無いものである。これにより歩留まりが高まる。その後、インクジェット材料が、この“未使用”のフレキシブル基板の上面上に、電子または機能デバイスを形成するための複数の層として堆積される。更には、リリースすることに先立って、他のフレキシブル層をこの構造に加えることが可能である。
【0017】
一般的には、電子または機能デバイスの基板は誘電体であると考えられるし、この場合も本発明の実施例としては好ましい。しかしながら、特定のデバイスにおいては、外側の層が導電性であることが要求される(例えば、EMCの目的でシールド層を形成するために、または、ヒートシンクを提供する手段として)。従って、フレキシブル基板は金属的であり、電解または無電解めっき法、真空法、インクジェット堆積法、または他の方法で堆積されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付した図面を参照して、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0019】
図面を参照すると、基板10として、リジッドな材料が採用される。基板は、ガラスやセラミックや金属材料から形成されてもよく、再利用可能なように配置される。基板はリジッドかつ安定であり、多くの応用においては平坦である。しかしながら、バッチ型ではなく連続的な製造プロセスを可能にするために円筒基板が採用されるような配置が考慮される。
【0020】
リリース層12は基板の堆積表面に加えられる。このリリース層は、湿式めっき法、スピン法またはインクジェット堆積法等の様々な方法により堆積された材料の形状をとってもよく、基板10の安定性を維持するが、後続のエッチング、加熱または他の除去プロセスの際には除去可能である層が形成される。リリース層は周知のリリース剤の形でもよい。リリース層は、堆積された材料の一時的な接着を提供する堆積表面を基板上に与える表面処理の形でもよい。一時的な接着は、基板の安定性を維持するのに十分なものではあるが、堆積された構造を後でリリースすることが可能なものである。
【0021】
14に示されているように、複数の材料領域は電子デバイスを形成するために多層に堆積される。デバイスの厳密な性質やこの材料領域が形成される方法は本発明の本質的な特徴ではなく、当業者は、多種多様な配置や方法を利用可能である。例えば、特許文献1を参照されたい。
【0022】
図2を参照すると、多層14が完成すると、常設的なキャリア基板16が堆積される。これは、多層14の上側表面に接合された固体基板層の形状をとってもよい。好ましくは、常設的なキャリア基板層は、(ガス状、粒子状または液状の)流体を堆積させることにより形成され、流体は後で凝固または凝集してフレキシブル基板を形成する。キャリア基板は例えばスプレー法、バーコーティング法、スピン法により形成されてもよい。
【0023】
図3を参照すると、18で概略的に示されるような更なる構成要素を、一時的な基板からリリースされた多層構造14の表面に接合することが可能である。更には、20のような開口を常設的な基板に形成することができ、22で概略的に示されるような構成要素を、多層構造14の反対側の表面に接続させることができる。
【0024】
本発明は例示的に説明されたが、特許請求の範囲から逸脱することなく、多様な変形が可能であることは理解されたい。従って、例として、半導体のまたは他のスイッチングデバイスを含む電子デバイスや、ディスプレイ素子や光センサー等の光電子デバイスや、多様な電子変換器が挙げられる。本発明は、必ずしも電子デバイスではなく、磁気、光、化学または機械デバイスを含む機能デバイスの形成に幅広く適用可能であり、複数の材料領域の堆積により、好ましくはインクジェット法により形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による方法の段階を示す断面図である。
【図2】本発明による方法の段階を示す断面図である。
【図3】変形版の同様な断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 リジッド基板
12 リリース層
14 多層構造
16 フレキシブル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積表面を有するリジッド基板を提供する段階と、
前記堆積表面上にリリース層を形成する段階と、
前記リリース層上に複数の材料領域を堆積させ、デバイスのアレイを形成する段階と、
前記堆積表面から前記デバイスのアレイをリリースする段階と、
前記アレイにフレキシブル基板を接合する段階とを備える
フレキシブル基板上への複数の電子または機能デバイスを有する電子または機能装置の製造方法。
【請求項2】
前記複数の材料領域の少なくとも幾つかは液体粒子として堆積される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記堆積表面から前記デバイスのアレイをリリースする段階は、前記アレイにフレキシブル基板を接合する段階の後で行われる請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記フレキシブル基板を接合する段階は、前記堆積表面上にリリース層を形成する段階の直後に行われる請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
堆積表面を有するリジッド基板を提供する段階と、
液体粒子を堆積させてデバイスのアレイの少なくとも一部を形成する段階と、
前記アレイにプラスチック基板を接合する段階と、
前記アレイにプラスチック基板を接合する段階の後に前記堆積表面から前記アレイをリリースする段階とを備える
プラスチック基板上への複数の電子または機能デバイスを有する電子または機能装置の製造方法。
【請求項6】
前記デバイスは実質的に高分子材料から形成される請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記基板を接合する段階は、流体状の基板材料を加えて、前記流体を凝固させ基板を形成する段階を備える請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フレキシブルまたはプラスチック基板は、前記デバイスにアクセス可能にするために開口が設けられている請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−504709(P2008−504709A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518686(P2007−518686)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002540
【国際公開番号】WO2006/000821
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(301055608)ザール テクノロジー リミテッド (31)
【Fターム(参考)】