説明

電子キーシステム

【課題】車室内の電子キーの位置を正確に特定することができる電子キーシステムを提供する。
【解決手段】電子キーシステム10では、車室内に向けてLFを送信するLF送信部42を備えた車載器30が車両に設けられ、電子キー20には、LFを受信するLF受信部22と、当該LF受信部22によって受信されたLFの強度を測定するLF受信強度測定部24と、当該LF受信強度測定部24によって測定されたLFの電波強度Vに応じたLFの強度情報を発信するUHF送信部26とを備える。この電子キーシステム10では、LFの強度情報に基づいて電気キー20の位置を特定することができ、車室内の電子キー20の位置を正確に特定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に存在する電子キーの位置を特定する電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車関連技術の分野においては、車両内に搭載される車載器と、ユーザが携帯する電子キーとで構成される電子キーシステムが実用化されている。この種の電子キーシステムでは、車載器と電子キーとの間で無線通信による認証が成立すれば、機械式キーでの操作を行わなくても、ドアのロック/アンロックやエンジン始動等の制御を実行できる仕組みになっている。つまり、ユーザは、これらの制御を実行する際に、電子キーを携帯しさえすればその位置を確認する必要がない。そのため、車室内において電子キーを紛失してしまうことがあり、電子キーが車室内にあるものの、車室内のどこにあるか分からないという事象が起こり得る。これに対して、従来、車室内の電子キーの位置を特定することができる電子キーシステムが、既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電子キーシステムでは、車載器に含まれる送信器から送信領域(照合エリア)に電波を送信し、電子キーからの返信を受け取った場合には、照合エリアに電子キーが有ると判断し、ユーザにその情報を知らせる。しかしながら、従来の電子キーシステムでは、車載器が照合エリアにおける電子キーの有無のみを判断しているために、車室内の比較的広い範囲を照合エリアとする車載器を使用した場合、その照合エリアのどこに電子キーが存在しているかを特定することが難しい。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、車室内の電子キーの位置を正確に特定することができる電子キーシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子キーシステムでは、前記車室内に向けて第1電波を送信する車載側送信手段を備えた車載器が前記車両に設けられ、前記電子キーは、前記第1電波を受信するキー側受信手段と、前記キー側受信手段によって受信された前記第1電波の強度を測定する電波強度測定手段と、前記電波強度測定手段によって測定された電波強度に応じた電波強度情報を発信する応答手段とを備える。
【0007】
この発明では、電子キーが電波強度測定手段を備えており、受信した第1電波の強度を測定する。第1電波の強度は、送信元(車載器であり、さらに詳しくは車載器のアンテナ)からの距離に応じて減衰する。そのため、電子キーは、第1電波の強度を測定することで、車載器からの距離に関する情報(距離情報)を取得することができ、応答手段を用いてその距離情報を車載器やユーザへと発信することができる。電子キー又は車載器から距離情報を取得したユーザは、その距離情報を用いて車室内の電子キーの位置を正確に特定することができ、電子キーを容易に検出することができる。
【0008】
本発明の電子キーは、前記電波強度測定手段によって測定された電波強度に応じた情報を含んだ第2電波を送信するキー側送信手段を備えることが好ましく、本発明の車載器側には、前記キー側送信手段からの電波を受信する車載側受信手段と、前記車載側受信手段により受信された前記第2電波から前記電波強度情報を取得する検波手段と、前記検波手段により取得された前記電波強度情報に基づいて前記電子キーの位置を報知する報知手段とが設けられていることが好ましい。これによって、電子キーは、取得した距離情報を車載器に伝達することができ、車載器はこの距離情報を用いて車室内の電子キーの位置をユーザに正確に報知することができる。
【0009】
本発明の報知手段は、二次元図形を表示可能な平面ディスプレイであって、その平面ディスプレイには前記車室内の空間に関連づけられた車室内図形と、その車室内図形中に前記車載側送信手段のアンテナ位置を基準とする前記電子キーの存在可能領域とが表示されることが好ましい。これによって、報知手段は、電波強度情報に基づいて電子キーの位置を報知する際に、取得した距離情報に対応する存在可能領域を、他の存在可能領域と異なる様式で表示することができ、平面ディスプレイを視認したユーザは、この表示に基づいて電子キーを容易に検出することができる。
【0010】
本発明の車載側送信手段のアンテナは、前記車室内において車両の前後方向に離れた位置に複数個設けられていることが好ましい。本発明は、車載側送信手段のアンテナを車両の中央部に配置することで、1つのアンテナを用いて車室内の電子キーの位置を正確に特定することができるものの、複数個のアンテナを用いることで、車載側送信手段のアンテナを車両の端部に配置した場合でも、車室内の電子キーの位置を正確に特定することができる。また、一般に、車両の車室の形状は、車両の幅方向に比べて車両の前後方向に広いことが多く、アンテナを車室内の車両の前後方向に離れた位置に複数個設けておくことで、車室内の電子キーの位置を正確に特定しやすい。
【0011】
本発明の第1電波は、LFであることが好ましい。電波は、送信元からの距離に応じて強度が減衰する共通の性質を有しており、その中でもLF(長波)は、距離の3乗に反比例して電波の強度が減衰する性質を有している。つまりLFは、距離の変化に対する電波強度の変化が他の電波に比べて大きく、測定した電波強度の情報から距離情報を精度よく取得することができる。この発明では、第1電波としてLFを用いることで、精度よく取得された距離情報を用いて、車室内の電子キーの位置をより正確に特定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車室内に存在する電子キーの位置を特定する電子キーシステムにおいて、電子キーの位置を正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電子キーシステム10を示すブロック図
【図2】モニタ28の表示を示す図
【図3】電気キー20が領域Ea1に存在する場合のモニタ28の表示を示す図
【図4】基準電圧Vkと強度範囲Hkの関係を示す図
【図5】強度範囲Hkと信号パターンUpの関係を示す図
【図6】LFの距離と強度の関係を示す図
【図7】BCMにおける処理を示すフローチャート
【図8】電子キーにおける処理を示すフローチャート
【図9】電気キー20が領域Rに存在する場合のモニタ28の表示を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
1.電子キーシステムの構成
図1に示すように、本実施形態の電子キーシステム10は、ユーザが形態する電子キー20と車両に設けられた車載器30と、によって構成される。この電子キーシステム10は、電子キー20と車載器30との間で無線通信を行うことで、ドアロック、ドアアンロック、エンジン始動などの処理を実行するとともに、車室内の電子キー20の位置を検出する処理を実行する。
【0015】
(電子キー20について)
電子キー20は、LF(長波)受信アンテナ21と、LF受信部(キー側受信手段の一例)22と、LF受信強度測定部(電波強度測定手段の一例)24と、UHF送信部(応答手段及びキー側送信手段の一例)26と、UHF送信アンテナ28を含む。
【0016】
LF受信部22は、LF受信アンテナ21を介して車載器30から送信されるLF(第1電波の一例)を受信するためのワイヤレスレシーバ(チューナ)である。LF受信強度測定部24は、LF受信部22に接続されており、LF受信部22が受信したLFの強度Vを測定する。LF受信強度測定部24はメモリを内蔵しており、そのメモリには、複数の基準強度Vkが記憶されている(図4参照)。LF受信強度測定部24は、受信したLFの強度Vを複数の基準強度Vkと比較し、受信したLFの強度Vが、複数の基準強度Vk(Vk1>Vk2>Vk3)の間に存在する複数の強度範囲Hkのうち、どの強度範囲Hkに属するかを判定する。
【0017】
UHF送信部26は、LF受信強度測定部24に接続されており、LF受信強度測定部24が測定したLFの強度Vを取得し、その強度Vに応じたUHFを生成する。UHF送信部26はメモリを内蔵しており、そのメモリには、複数の強度範囲Hkの各々に対応付けられて複数の信号パターンUpが記憶されている(図5参照)。UHF送信部26は、LF受信強度測定部24が判定した強度範囲Hkを取得し、その強度範囲Hkに対応して記憶されている信号パターンUpを選出する。UHF送信部26はUHF送信アンテナ28に接続されており、選出した信号パターンUpのUHFを、UHF送信アンテナ28を介して車載器30へと送信する。
【0018】
(車載器30について)
車載器30は、UHF(超短波)受信アンテナ31と、UHF受信部(車載側受信手段及び検波手段の一例)32と、BCM(Body electronic Control Machine:車体制御装置)34と、モニタ(報知手段の一例)36と、スピーカ(報知手段の他の例)38と、操作部40と、LF送信部(車載側送信手段の一例)42と、LF送信アンテナ44を含む。
【0019】
操作部40は、始動ボタン40A、リクエストボタン40B等の複数のボタンを備え、ユーザによってエンジン始動、車室内の電子キー20の検出などの各種の入力操作が可能である。
【0020】
LF送信部42は、BCM34に接続されており、BCM34からの指示に基づいてLFを送信する。LF送信部42は、車両内に設けられた2つのLF送信アンテナ44A、44Bを有しており、これらのLF送信アンテナ44A、44Bを介してLFを車室内に向けて送信する。
【0021】
図2に示すように、LF送信アンテナ44Aは車室内のインパネ内に配置されており、LF送信アンテナ44Bは車室内の後部座席内に配置されている。つまり、LF送信アンテナ44A、44Bは、車室内において車両の前後方向に離れた位置に設けられており、車室内の異なる位置からLFを送信することができる。またLF送信アンテナ44A、44Bは、異なる配線によってLF送信部42に接続されている。そのためLF送信部42は、LF送信アンテナ44A、44Bから異なるタイミングで、LFを送信することができる。
【0022】
UHF受信部32は、UHF受信アンテナ21を介して電子キー20から送信されるUHF(第2電波の一例)を受信するためのワイヤレスレシーバ(チューナ)である。UHF受信部32は、受信したUHFから、電子キー20が測定したLFの強度情報を取得する処理を実行する。UHF受信部32はメモリを内蔵しており、そのメモリには、上述した複数の信号パターンUpが記憶されている。UHF受信部32は、受信したUHFを複数の信号パターンUpと比較することで受信したUHFの信号パターンUpを特定し、この特定した信号パターンUpから電子キー20が測定したLFの強度情報を取得する。
【0023】
BCM34は、車載器30に含まれる上記各部に接続されており、これらを制御して、ドアロック等の処理を実行する。
またBCM34は、上記各部と共働して、車室内の電子キー20の位置を検出する処理を実行する。BCM34はモニタ36に接続されており、取得したLFの強度情報に基づいて電子キー20の位置を報知する。モニタ36は、図2に示す二次元図形を表示する平面ディスプレイであり、車室内のメータ部に組み込まれている。つまり、メータ部の一部によって、モニタ36が構成されている。図2に示すように、モニタ36には、ルーフを取り除いた車両を上面視した図が示されており、当該車両の外形を模した外形図形Z1の内部に、車室内の空間に関連づけられた車室内図形Z2が示されている。
【0024】
また、モニタ36には、上述したLF送信アンテナ44A、44Bの位置が示されており、LF送信アンテナ44Aの位置を基準とする同心円(図2の点線)La1、La2、La3、及びLF送信アンテナ44Bの位置を基準とする同心円(図2の一点鎖線)Lb1、Lb2、Lb3が示されている。
【0025】
同心円La1、La2、La3は、LF送信アンテナ44Aから送信されるLFの強度Vが基準強度Vk1、Vk2、Vk3(図4参照)となる位置を示している。図6に示すように、LFの強度Vは、送信元(この場合、LF送信アンテナ44A)からの距離Lの3乗に反比例して減衰する。そのため、LF送信アンテナ44Aから同心円La1までの領域Ea1は、LF送信アンテナ44Aから送信されるLFの強度Vが強度範囲Hk1に含まれる領域に相当する。つまり、LF送信アンテナ44AからLFが送信された場合において、BCM34が取得したLFの強度情報が強度範囲Hk1に含まれる場合には、電子キー20が領域Ea1に存在していることが解かる。
【0026】
同様に、LF送信アンテナ44AからLFが送信された場合において、BCM34が取得したLFの強度情報が強度範囲Hk2に含まれる場合には、電子キー20が同心円La1から同心円La2までの領域Ea2に存在していることが解かり、BCM34が取得したLFの強度情報が強度範囲Hk3に含まれる場合には、電子キー20が同心円La2から同心円La3までの領域Ea3に存在していることが解かる。つまり、領域Ea1ないしEa3は、BCM34が取得したLFの強度情報に基づいて決定され、LF送信アンテナ44Aの位置を基準とする電子キー20の存在可能領域を示している。
【0027】
また、基準強度Vk3は、電子キー20がLFを測定可能な限界強度を示している。そのため、電子キー20が同心円La3よりも遠方の領域Ea4に存在する場合、電子キー20はLF送信アンテナ44Aから送信されるLFの強度Vを測定することができず、BCM34はLFの強度情報を取得することがない。
【0028】
同様に、同心円Lb1、Lb2、Lb3は、LF送信アンテナ44Bから送信されるLFの強度Vが基準強度Vk1、Vk2、Vk3(図4参照)となる位置を示している。そのため、LF送信アンテナ44BからLFが送信された場合において、BCM34が取得したLFの強度情報が強度範囲Hk1に含まれる場合には、電子キー20がLF送信アンテナ44Bから同心円Lb1までの領域Eb1に存在していることが解かり、BCM34が取得したLFの強度情報が強度範囲Hk2に含まれる場合には、電子キー20が同心円Lb1から同心円Lb2までの領域Eb1に存在していることが解かり、BCM34が取得したLFの強度情報が強度範囲Hk3に含まれる場合には、電子キー20が同心円Lb2から同心円Lb3までの領域Eb3に存在していることが解かる。つまり、領域Eb1ないしEb3は、BCM34が取得したLFの強度情報に基づいて決定され、LF送信アンテナ44Bの位置を基準とする電子キー20の存在可能領域を示している。
【0029】
また、電子キー20が同心円Lb3よりも遠方の領域Eb4に存在する場合、電子キー20はLF送信アンテナ44Bから送信されるLFの強度Vを測定することができず、BCM34はLFの強度情報を取得することがない。
【0030】
モニタ36では、領域Ea1ないしEa3を個別に表示可能に構成されているとともに、領域Eb1ないしEb3を個別に表示可能に構成されている。そのためBCM34は、取得したLFの強度情報に基づいて電子キー20の位置を報知する場合に、対応する領域を表示する。例えば、LF送信アンテナ44AからLFが送信された場合にBCM34が取得したLFの強度情報がHk1である場合、図3に示すように領域Ea1を表示する。
【0031】
BCM34はさらにスピーカ38に接続されており、取得したLFの強度情報に基づいて電子キー20の位置を報知する場合に、対応する領域を音声表示する。例えば、BCM34は、取得したLFの強度情報に基づいて図3の領域Ea1に電子キー20が存在していると判断した場合には、スピーカ38を介して「電子キーは、インパネ付近です」等と音声表示をする。
【0032】
2.車室内の電子キーの位置特定
次に、図7、8を参照して、車両の車室内に存在する電子キー20の位置を特定する工程を説明する。
ユーザによって検出開始ボタン36が押されると、BCM34はLF送信部42を用いてLF送信アンテナ44AからLFを車室内に向けて送信する(ステップS2:図7、図8の線A参照)。電子キー20のLF受信部22は、基準時間毎にLFを受信する処理(ステップS22)を実行しており、LFを受信しない場合(ステップS22でNO)に、処理を終了する。一方、LFを受信した場合(ステップS22でYES)に、LF受信強度測定部24が受信したLFの強度Vを測定する(ステップS24)。詳細には、LF受信強度測定部24は、基準強度Vkを用いて、受信したLFの強度がどの強度範囲Hkに属するかを判定する。
【0033】
次に電子キー20では、UHF送信部26が、LF受信強度測定部24が測定したLFの強度を取得し、その強度に応じたUHFを車載器30へと送信する(ステップS26:図7、図8の線B参照)。詳細には、UHF送信部26は、LF受信強度測定部24が判定した強度範囲Hkを取得し、取得した強度範囲Hkに対応して記憶されている信号パターンUpのUHFを送信する。
【0034】
車載器30では、BCM34が、UHF受信部32を制御して、LFを送信(ステップS2)した後、一定期間に亘ってUHFを受信する処理(ステップS4)を実行しており、UHFを受信した場合(ステップS4でYES)に、受信したUHFから、電子キー20が測定したLFの強度情報を取得する(ステップS14)。詳細には、UHF受信部32は、受信したUHFの信号パターンUpを特定し、特定した信号パターンUpから電子キー20が測定したLFの強度情報を取得する。
【0035】
一方、一定期間にUHFを受信しない場合(ステップS4でNO)に、BCM34はLF送信部42を用いてLF送信アンテナ44BからLFを車室内に向けて送信する(ステップS6)。この時の電子キー20の処理(ステップS22ないしステップS26)は、上記と同一であり、重複した説明を省略する。
【0036】
車載器30では、BCM34が、UHF受信部32を制御して、LFを送信(ステップS6)した後、一定期間に亘ってUHFを受信する処理(ステップS8)を実行しており、UHFを受信した場合(ステップS8でYES)に、受信したUHFから、電子キー20が測定したLFの強度情報を取得する(ステップS14)。BCM34は、LFの強度情報を取得(ステップS14)した場合に、その強度情報に対応した領域Ea、Ebをモニタ36に表示し(ステップS16)、スピーカ38を用いてユーザに電子キー20の存在可能領域を報知する(ステップS18)。
【0037】
一方、一定期間にUHFを受信しない場合(ステップS4でNO)に、BCM34は電子キー20が車両の車室内に存在しないと判断する。BCM34は、モニタ36の領域Ea、Ebを表示せず(ステップS10)、スピーカ38を用いてユーザに電子キー20が車室内に存在しないことを伝達する(ステップS12)。
【0038】
3.本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態の電子キーシステム10では、電子キー20がLFを受信した場合に、LF受信強度測定部24が受信したLFの強度Vを測定する。LFの強度Vは、LF送信部42のLF送信アンテナ44A、44Bと電子キー20の間の距離Lと相関しており、LFの強度Vを測定することで、LF送信部42のLF送信アンテナ44A、44Bと電子キー20の間の距離Lを取得することができる。この電子キーシステム10では、取得された上記距離Lを用いて車室内の電子キー20の位置を正確に特定することができ、電子キー20を容易に検出することが可能となる。
【0039】
(2)本実施形態の電子キー20では、LF受信強度測定部24が受信したLFの強度Vを測定した場合に、UHF送信部26が測定されたLFの強度情報を含んだUHFを車載器30に送信する。これによって、電子キー20は、取得した距離情報を車載器30に伝達することができ、車載器30はこの距離情報を用いて車室内の電子キー20の位置をユーザに正確に報知することができる。
【0040】
(3)本実施形態の車載器30は、二次元図形を表示可能な平面ディスプレイであるモニタ36を有しており、モニタ36にはLF送信アンテナ44A、44Bの位置を基準とする複数の領域Ea、Ebが個別表示可能に構成されている。これによって、車載器30は、伝達された距離情報に基づいて電子キー20の位置を報知する際に、取得した距離情報に対応する領域Ea、Ebを、他の領域Ea、Ebと異なる様式で表示することができ、平面ディスプレイを視認したユーザは、この表示に基づいて電子キーを容易に検出することができる。
【0041】
(4)本実施形態の車載器30は、LF送信アンテナ44A、44Bが、車室内において車両の前後方向に離れた位置に配置されている。これによって、LF送信アンテナ44A、44Bを、インパネ内部や後部座席内部など、ユーザが使用することを前提としない車両の端部に配置した場合でも、車室内の電子キー20の位置を正確に特定することができる。また、一般に、車両の車室の形状は、車両の幅方向に比べて車両の前後方向に広いことが多く、LF送信アンテナ44A、44Bを車室内の車両の前後方向に離れた位置に配置しておくことで、車室内の電子キー20の位置を正確に特定しやすい。
【0042】
(5)本実施形態の車載器30では、電子キー20を検出する際に、車室内に向けてLFを送信する。LFは、距離の3乗に反比例して電波の強度が減衰する性質を有しており、距離の変化に対する電波強度の変化が他の電波に比べて大きく、測定したLFの強度Vの情報から距離情報を精度よく取得することができる。本実施形態では、LFを用いて電子キー20を検出することで、車室内の電子キー20の位置をより正確に特定することができる。
【0043】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、LF送信部42からLFを送信して電子キー20を検出する際に、LF送信アンテナ44AからLFを送信して、BCM34がUHFを受信しなかった場合に、LF送信アンテナ44BからLFを送信する例を用いて説明を行ったが、これに限られない。LF送信アンテナ44AからLFを送信して、BCM34がUHFを受信したか否かに関わらず、LF送信アンテナ44BからLFを送信してもよい。この場合、モニタ36では、領域Ea1ないしEa3及び領域Eb1ないしEb3を個別に表示可能に構成されるとともに、同心円La、Lbで閉じられた領域毎に表示可能に構成されていることが好ましい。
【0044】
この場合、例えば、LF送信アンテナ44AからLFが送信された場合にBCM34が取得したLFの強度情報がHk3であり、LF送信アンテナ44BからLFが送信された場合にBCM34が取得したLFの強度情報がHk2である場合、ECM34は、図9に示すように領域Ea3と領域Eb2の和集合である領域Rを表示する。ユーザにとっては、電子キーを検出する範囲が狭まることで、電子キーを容易に検出することができる。
【0045】
(2)上記実施形態では、LF送信アンテナ44A、44Bをインパネ内部や後部座席内部に配置していたが、LF送信アンテナ44A、44Bが配置される場所はこれらに限られない。例えば、通常ドア付近にはドアロック等の処理に対応したアンテナが設けられていることが多く、このアンテナと兼用されることで、電子キーシステム10のコストが増大してしまうことを抑制することができる。
【0046】
(3)上記実施形態では、電子キー20が車載器30にLFの強度情報を送信する信号としてUHFを用いて説明を行ったが、これに限られず、他の電波を使用してもよい。しかし、通常電気キー20には、ドアロック等を指示するためのUHF送信ICが予め格納されていることが多く、LFの強度情報を送信する信号としてUHFを用いることで、電子キー20に他の電波を送信するためのICを内蔵しておく必要がなく、電子キーシステム10のコストが増大してしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
10...電子キーシステム
20...電子キー
22...LF受信部
24...LF受信強度測定部
26...UHF送信部
30...車載器
32...UHF受信部
34...BCM
36...モニタ
38...スピーカ
42...LF送信部
44...LF送信アンテナ
Z2...車室内図形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に存在する電子キーの位置を特定する電子キーシステムであって、
前記車室内に向けて第1電波を送信する車載側送信手段を備えた車載器が前記車両に設けられ、前記電子キーは、前記第1電波を受信するキー側受信手段と、前記キー側受信手段によって受信された前記第1電波の強度を測定する電波強度測定手段と、前記電波強度測定手段によって測定された電波強度に応じた電波強度情報を発信する応答手段とを備える電子キーシステム。
【請求項2】
前記応答手段は、前記電波強度測定手段によって測定された電波強度に応じた情報を含んだ第2電波を送信するキー側送信手段を備え、前記車載器側には前記キー側送信手段からの電波を受信する車載側受信手段と、前記車載側受信手段により受信された前記第2電波から前記電波強度情報を取得する検波手段と、前記検波手段により取得された前記電波強度情報に基づいて前記電子キーの位置を報知する報知手段とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステム。
【請求項3】
前記報知手段は二次元図形を表示可能な平面ディスプレイであって、その平面ディスプレイには前記車室内の空間に関連づけられた車室内図形と、その車室内図形中に前記車載側送信手段のアンテナ位置を基準とする前記電子キーの存在可能領域とが表示されることを特徴とする請求項2に記載の電子キーシステム。
【請求項4】
前記車載側送信手段のアンテナは、前記車室内において車両の前後方向に離れた位置に複数個設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電子キーシステム。
【請求項5】
前記第1電波はLFであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−52375(P2012−52375A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196888(P2010−196888)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】