説明

電子デバイスのための化合物

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の改善に関し、式(1)で表される化合物が、特に正孔注入層または正孔輸送層における正孔注入材料または正孔輸送材料として使用される。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、新規化合物および電子デバイスにおけるその使用に関する。
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子の一般的な構造は、例えば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461およびWO 98/27136に記載されている。しかしながら、これらの素子は、早急な改善を必要とする重要な問題を有している:
1.特に蛍光OLEDにおいては、効率が未だに低く、改善されるべきである。
【0003】
2.特に青色発光の場合においては、動作寿命の改善に対する必要性が未だにある。
【0004】
3.特に蛍光OLEDにおいては、動作電圧が非常に高いため、さらに低くして電力効率を改善するべきである。これは、特にモバイル用に対して非常に重要である。特に電荷輸送材料において、さらなる改善が望まれている。
【0005】
4.先行技術による正孔輸送材料の場合、電圧は、正孔輸送層の厚さに依存する。実際に、相対的に厚い正孔輸送層が一般的に望ましい。しかしながら、付随する電圧の上昇のため、先行技術による材料を用いて達成することは困難である。
【0006】
5.先行技術による正孔輸送材料の場合、これらの材料が蒸着源の縁において結晶化すし、蒸着源の動作を妨げるため、加工可能性に関する問題がしばしば生じる。それ故、このタイプの材料は、技術的な複雑性が増大した大量生産においてのみ使用され得る。
【0007】
正孔注入材料および正孔輸送材料についての最も近い先行技術は、WO 06/100896およびWO 06/122630における、1または2のジアリールアミノ基により置換されたシスおよびトランスインデノフルオレン誘導体である。置換されたインデノフルオレン誘導体も、一般的にそこに含まれるが、非置換のインデノフルオレン骨格を有するインデノフルオレンのみが明確に開示されている。置換されたインデノフルオレン構造を有する例は開示されておらず、特に良好な結果を生じる置換基の位置および改善を生じる置換基については開示されていない。特に、非置換のインデノフルオレンが特に好ましいことについて、単に開示されているのみである。しかしながら、後者は、正孔注入層または正孔輸送層において使用した場合に、高い動作電圧を生じることが見出されている。さらに、このタイプの材料は、結晶化により蒸着源の動作を妨げるため、頻繁に問題が生じる。
【0008】
驚くべきことに、今回、インデノフルオレン骨格が所定の位置において置換された、1または2のジアリールアミノ置換基を有するインデノフルオレン誘導体が、有意に改善された効果を有することを見出した。インデノフルオレン骨格の所定の位置における個々のC原子が窒素で置換された場合にも、同様の改善が達成される。これらの化合物は、対応する非置換の化合物と比較して動作電圧を低くすることができると同時に、常に良好な効率および寿命を示す。本発明は、それ故、これらの化合物およびOLEDにおけるその使用に関する。
【0009】
本発明は、以下の式(1)で表される化合物に関する:
【化1】

【0010】
式中に使用されている記号および表示の定義を以下に示す;
Yは、それぞれ同じまたは異なり、B、N、P、P=O、PF2、C=O、O、S、S=OまたはSO2である;
Arは、それぞれ同じまたは異なり、5〜40の芳香環原子を有する芳香環または芳香族複素環構造であり、1以上の基R1で置換されてよい;
Xは、それぞれ同じまたは異なり、B(R1)、C(R1)2、-CR1=CR1-、-CR1=N-、Si(R1)2、C=O、C=NR1、C=C(R1)2、O、S、SO2、N(R1)、またはP(=O)R1から選択される基であるか、これらの基の2つ、3つまたは4つの組み合わせである;
Zは、Xが基Zに結合する場合にCであり、基Xが基Zに結合しない場合には、それぞれ同じまたは異なり、CRまたはNである;
Wは、それぞれ同じまたは異なり、CHまたはNである;
Rは、それぞれ同じまたは異なり、H、D、F、CN、B(OR2)2、Si(R2)3、N(Ar)2、C(=O)Ar、P(=O)Ar2、S(=O)Ar、S(=O)2Ar、CR2=CR2Ar、1〜40の炭素原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40の炭素原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基である(これらはそれぞれ1以上の基R2で置換されてよく、1以上の隣接しないCH2基は、-R2C=CR2-、Si(R2)2、C=O、C=S、C=NR2、-O-、-S-、-COO-または-CONR2-で置換されてよく、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO2で置換されてよい)か、または1以上の非芳香族基R1で置換されてよい、5〜40の芳香環原子を有する芳香環または芳香族複素環であるか、または1以上の非芳香族基R1で置換されてよい、5〜40の芳香環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であるか、またはこれらの組み合わせであり;ここでの2以上の隣接する置換基Rは、互いに単環式または多環式の構造を形成してもよい;
Eは、それぞれ同じまたは異なり、単結合、N(R1)、O、S、C(R1)2、C(R1)2-C(R1)2、Si(R1)2またはB(R1)である;
R1は、それぞれ同じまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO2、B(OR2)2、Si(R2)3、1〜40の炭素原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40の炭素原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基である(これらはそれぞれ1以上の基R2で置換されてよく、1以上の隣接しないCH2基は、-R2C=CR2-、-C≡C-、Si(R2)2、Ge(R2)2、Sn(R2)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR2、-O-、-S-、-COO-もしくは-CONR2-で置換されてよく、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO2で置換されてよい)か、または1以上の非芳香族基R1で置換されてよい、5〜40の芳香環原子を有する芳香環もしくは芳香族複素環であるか、または1以上の非芳香族基R1で置換されてよい、5〜40の芳香環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であるか、またはこれらの組み合わせであり;ここでの2以上の置換基R1は、互いに単環式または多環式の構造を形成してもよい;
R2は、それぞれ同じまたは異なり、Hまたは1〜20の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基である;
m、nは、0または1であり、ただしm+n=1である;
qは、それぞれ、基Yの対応する中心原子が主基(main group)3または5に由来する要素である場合に1であり、基Yの対応する中心原子が主基4または6に由来する要素である場合には0である;
sは、1、2または3である;
tは、それぞれ同じまたは異なり、0または1であり、t=0の場合には、基R1が基Eの代わりに結合することを意味し;さらに、q=0の場合にt=0である;
vは0または1であり、v=0の場合、水素または基Rが基Yの代わりに結合してよい;
少なくとも1の基Rは、HまたはD以外の置換基を意味することを特徴とする。
【0011】
本発明の目的のために、隣接する置換基は、同じ原子に結合する置換基(すなわち、例えばC(R1)2基における2つの置換基R1)であるか、または直接隣接する原子に結合する置換基(すなわち、例えばC(R)-C(R)基における2つの置換基R)を意味する。
【0012】
本発明の目的のために、アリール基またはヘテロアリール基は、それぞれ通常の芳香族電子系を有する芳香族基またはヘテロ芳香族基を意味し、アリール基は6〜24の炭素原子を含み、ヘテロアリール基は2〜24の炭素原子を含み、全体で少なくとも5の芳香環原子を含む。へテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。本発明の目的のために、これは、単一の単素環または複素環、例えば、ベンゼン、ピリジン、チオフェン等であってよく、または、少なくとも2の芳香環または芳香族複素環(例えばベンゼン環)が互いに融合した縮合芳香環構造であってよく、すなわち環化により相互に縮合し、すなわち少なくとも1の共通の端部を有し、それ故共通の芳香族構造を有するものであってよい。このアリール基またはヘテロアリール基は、置換されても置換されなくてもよく;いずれかの置換基は、同様に、さらなる環構造を形成してよい。例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等の構造は、本発明の目的のためにアリール基とみなされ、キノリン、アクリジン、ベンゾチオフェン、カルバゾール等は、本発明の目的においてヘテロアリール基とみなされる一方、例えば、ビフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン等は、分離した芳香族電子系が存在するため、アリール基とはみなさない。
【0013】
本発明の目的のために、芳香環構造は、環構造中に6〜40の炭素原子を含む。本発明の目的のために、芳香族複素環構造は、2〜40の炭素原子を含み、環構造中に少なくとも1のヘテロ原子を含み、ただし、炭素原子およびヘテロ原子の総数は少なくとも5である。へテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。本発明の目的のために、芳香環または芳香族複素環構造は、必ずしもアリール基またはヘテロアリール基を含むもののみならず、複数のアリール基またはヘテロアリール基が、短い、非芳香族性の単位(H以外の原子の10%未満、好ましくはH以外の原子の5%未満)(例えば、C、NまたはO原子)により中断されてもよい。それ故、例えば、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル等の構造も、本発明の目的のために、芳香環構造としてみなされる。
【0014】
本発明の目的のために、個々のH原子またはCH2基が上述した基で置換されてもよいC1〜C40アルキル基は、特に好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、tert-ペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、tert-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、ヘプチニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルまたはオクチニルを意味する。C1〜C40-アルコキシ基は、特に好ましくは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシまたは2-メチルブトキシを意味する。C2〜C24-アリールまたは-ヘテロアリール基は、使用に応じて一価または二価であってよく、いずれの場合も上述した基R1で置換されてよく、いずれかの望ましい位置を介して芳香環または芳香族複素環構造に結合してよく、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ぺリレン、フルオロアントラセン、ベンズアントラセン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントリミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、ベンゾチアジアゾールに由来する基を意味する。本発明の目的のために、芳香環および芳香族複素環構造は、上述したアリール基およびヘテロアリール基に加えて、特に、ビフェニレン、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、テトラヒドロピレンまたはシス-もしくはトランス-インデノフルオレンを意味する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、記号WはCHを意味する。
本発明の好ましい実施形態において、式(1)の化合物における2つ以下の記号ZはNを意味し、他の記号ZはCまたはCRを意味する。本発明の特に好ましい実施形態において、全ての記号ZがCもしくはCRを意味するか、またはちょうど2つの記号ZはNを意味し、他の記号ZはCもしくはCRを意味する。
【0016】
記号s=1またはs=2である式(1)の化合物がさらに提供されることが好ましい。s=1である化合物が提供されることが非常に好ましい。
【0017】
本発明の好ましい実施形態は、以下の式(2)〜(5)で表される化合物である。
【化2】

【0018】
式中に使用されている記号および表示は、上述した意味を有し、式(2)、(3)、(4)および(5)における少なくとも1つの基Rは、水素または重水素以外の置換基を意味する。
【0019】
好ましくは、式(1)〜(5)の化合物において、記号Yは同じまたは異なり、窒素、C=O、リンまたはP=Oを意味することが好ましく、特に好ましくは、記号Yは窒素、C=OまたはP=Oを意味する。非常に好ましくは、Yは窒素を意味する。
【0020】
式(1)〜(5)の化合物において、添え字v=1であることがさらに好ましい。
【0021】
好ましくは、さらに、式(1)〜(5)の化合物において、記号Arは、それぞれ同じまたは異なり、5〜16の芳香環原子を有する芳香環もしくは芳香族複素環構造、トリアリールアミンまたはスピロビフルオレンを意味し、それぞれ1以上の基R1で置換されてよく、特に好ましくは、芳香環または芳香族複素環構造は、ベンゼン、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンズアントラセン、ピリジン、ピレン、チオフェン、トリフェニルアミン、ジフェニル-1-ナフチルアミン、ジフェニル-2-ナフチルアミン、フェニルジ(1-ナフチル)アミンおよびフェニルジ(2-ナフチル)アミンから選択され、それぞれR1で置換されてよい。記号Arは、非常に好ましくは、それぞれ同一または異なり、フェニル、1-ナフチルまたは2-ナフチルを意味し、それぞれが1以上の基R1で置換されてよい。
【0022】
好ましくは、さらに、添え字t=0または添え字t=1であり、対応する記号Eは、単結合、C(R1)2、SまたはN(R1)である式(1)〜(5)の化合物が提供される。特に好ましくは、式(1)〜(5)の化合物において、添え字t=0または添え字t=1であり、対応する記号Eは、単結合またはC(R1)2を意味する。
【0023】
好ましくは、さらに、式(1)〜(5)の化合物において、記号R1は、それぞれ同じまたは異なり、H、F、CN、1〜5の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3〜5の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基を意味し、それぞれの場合において、1以上の隣接しないCH2基は、-R2C=CR2-、-O-もしくは-S-で置換されてよく、1以上のH原子は、F、または1以上の非芳香族性基R1で置換されてよい5〜16の芳香環原子を有する一価のアリールもしくはヘテロアリール基で置換されてよい。ここで、2つ以上の基R1は、相互に環構造を形成してよく;特に好ましくは、R1は、H、F、CN、メチル、tert-ブチルを意味するか、または1以上の非芳香族性基R1で置換されてよく、2つの芳香族性基R1が互いに環を形成してもよい、4〜6の炭素原子を有する一価のアリールもしくはヘテロアリール基を意味する。
【0024】
R1は、基Xと結合する場合、さらに好ましくは、1〜10の炭素原子を有する直鎖アルキル基または3〜10の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは環状のアルキル基であり、それぞれの場合において、1以上の隣接しないCH2基は、-R2C=CR2-、-O-または-S-で置換されてよく、1以上のH原子は、F、または1以上の非芳香族性基R1で置換されてよい5〜16の芳香環原子を有する一価のアリールもしくはヘテロアリール基で置換されてよい。ここで、2以上の隣接する基R1は、互いに環構造を形成してもよい。基R1は、特に好ましくは、1〜4の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3〜4の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基から選択され、特に、メチル基またはフェニル基であり;ここでの2以上の基R1は、互いに環構造を形成してよい。複数の基R1が互いに環構造を形成する場合、スピロ構造が形成される。これは特に、基R1がフェニル基を意味する場合に好ましい。
【0025】
式(2)、(3)、(4)および(5)の化合物において、少なくとも1の置換基Rは、HまたはD以外である。ここでは、複数の置換基RがHまたはD以外であることも可能である。好ましくは、2つの基Rは、HまたはD以外である。式(2)、(3)、(4)および(5)の好ましい構造は、以下に示す式(6)〜(11)の構造である。
【化3−1】

【化3−2】

【0026】
式中の記号および添え字は上述した意味を有し、基Rは水素または重水素以外である。
【0027】
水素または重水素以外の好ましい基Rは、それぞれ同じまたは異なり、1〜20の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基または3〜20の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは環状のアルキル基であり、これらのそれぞれは、1以上の基R2で置換されてよく、1以上のH原子は、F、または1以上の非芳香族性基R1で置換されてよい5〜20の芳香環原子を有する芳香環もしくは芳香族複素環構造、あるいはこれらの構造の組み合わせにより置換されてよく;ここでの2以上の隣接する置換基Rは、互いに単環または多環構造を形成してもよい。特に好ましい基Rは、それぞれ同じまたは異なり、1〜10の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基または3〜10の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは環状のアルキル基であり、これらのそれぞれは、1以上の基R2で置換されてよい。非常に好ましいアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、tert-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、tert-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチルまたは3-(3,7-ジメチル)オクチルである。アルキル基がキラルである場合、鏡像異性的に純粋な基もしくはジアステレオ異性的に純粋な基として使用されるか、またはエナンチオマーの混合物、特にラセミ化合物、またはジアステレオマーの混合物として使用されてよい。特に、デバイスの製造の間にガス相から蒸着される化合物については、非常に好ましいアルキル基はメチルである。
【0028】
好ましくは、さらに、記号Xはそれぞれ同じまたは異なり、C(R1)2、C(=C(R1)2)、C=O、C=NR1、O、S、SO2またはN(R1)から選択される、式(1)〜(11)の化合物が提供される。非常に好ましくは、式(1)〜(11)の化合物において、記号Xは、それぞれ同じまたは異なり、C(R1)2、N(R1)およびSから選択され、非常に好ましくはC(R1)2である。
【0029】
それ故、非常に好ましくは、式(6a)〜(11a)の化合物が提供される。
【化4−1】

【化4−2】

【0030】
式中に使用されている記号および添え字は、上述した意味を有し、Rは、水素および重水素以外である。
【0031】
好ましくは、さらに、記号Yが同様に選択される式(1)〜(11)または(6a)〜(11a)の化合物が提供される。非常に好ましくは、上記化合物において、存在する場合、両方の基Eもさらに同様に選択される。
【0032】
上記において、使用する記号および添え字の好ましい実施形態は、それぞれの事例において示す。特に好ましくは、式(1)〜(11)または(6a)〜(11a)の化合物において、上記好ましい実施形態は、互いに組み合わされる。
【0033】
式(1)の好ましい化合物の例は、以下に示す構造(1)〜(320)である。
【表A−1】

【表A−2】

【表A−3】

【表A−4】

【表A−5】

【表A−6】

【表A−7】

【表A−8】

【表A−9】

【表A−10】

【表A−11】

【表B−1】

【表B−2】

【表B−3】

【表B−4】

【表B−5】

【表B−6】

【表B−7】

【表B−8】

【表B−9】

【表B−10】

【表B−11】

【表B−12】

【表B−13】

【表B−14】

【表B−15】

【表C−1】

【表C−2】

【表C−3】

【表C−4】

【表C−5】

【表C−6】

【表C−7】

【0034】
本発明による化合物は、例えば、臭素化、スズキカップリング、Hartwig-Buchwaldカップリング等のような、当業者に既知の合成方法により製造することができる。式(6a)の化合物は、合成スキーム1に示すように製造することができる。対応する2,3-置換1,4-ベンゼンジボロン酸誘導体は、パラジウム触媒の存在下で、2-ブロモ安息香酸塩と結合する。他のカップリング反応も、同様に使用することができる。環化によりインデノフルオレンを得た後、有機化学の分野における当業者に既知の標準的な条件下、後者はブロモ化されてよい。ブロモ化された化合物は、標準的な条件下、ブーフヴァルトカップリングにより芳香族アミンに結合し得る。
【0035】
合成スキーム1:
【化5】

【0036】
式(7a)の化合物の合成は、合成スキーム2に示す。置換シス−インデノフルオレン骨格は、対応する置換ジフェニルブタジエン誘導体とアセチレンジカルボン酸誘導体のディールス-アルダー反応、続く芳香族化、エステル基の還元および環化によりインデノフルオレンを得ることにより得られる。任意に、インデノ架橋の置換後、有機化学の分野における当業者に既知の標準的な条件下でブロム化されてよい。ブロム化化合物は、合成スキーム3に示すように、標準的な条件下で、ブーフヴァルトカップリングにより芳香族アミンと結合してよい。
【0037】
合成スキーム2:
【化6】

【0038】
合成スキーム3:
【化7】

【0039】
ブロム化化合物は、同様に、本発明によるさらなる誘導体のための中間体として適している。対応するホスフィンの合成は、リチオ化(lithiation)によってジブロモインデノフルオレンから行われ、ジアリールクロロホスフィンと反応させる。その後の酸化により、対応するホスフィンオキシドを得る。ここでは、例えば、AsCl3、アリールPCl2、SOCl2、Ar2S2等の他の求電子試薬も同様に使用され得る。本発明によるさらなる化合物は、これらの合成スキームおよび有機合成の分野における当業者に既知の方法における同様の合成スキームにより、容易に合成され得る。
【0040】
本発明はさらに、本発明による化合物の製造方法に関し、該方法は、以下の工程を含む:
a)所定の位置において基Yの代わりに水素を有するインデノフルオレン骨格または対応する複素環誘導体を合成することと;
b)ハロゲン化により、所定の位置において基Yの代わりにハロゲンで置換されたインデノフルオレンまたは対応する複素環誘導体を得ることと;
c)ハロゲン化インデノフルオレンをジアリールアミンと反応させるか、またはメタレーションし、求電子試薬と反応させること。
【0041】
本発明による式(1)の化合物は、電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED、PLED)における使用に適している。置換に依存して、化合物は種々の機能および層において使用される。化合物の的確な使用は、特に、基Yの選択のみならず基Xの選択に依存する。
【0042】
それ故、本発明はさらに、電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセンス素子における本発明の式(1)の化合物の使用にも関する。
【0043】
本発明はさらに、少なくとも1の式(1)の化合物を含む有機電子デバイス、特に、アノード、カソードおよび少なくとも1の発光層を具備する有機エレクトロルミネッセンス素子に関し、発光層または他の層であってよい少なくとも1の有機層は、少なくとも1の式(1)の化合物を含むことを特徴とする。
【0044】
カソード、アノードおよび発光層とは別に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、さらなる層を含んでもよい。これらは、例えば、それぞれの場合において、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔遮断層、電子輸送層、電子注入層、電子遮断層、励起子遮断層、電荷発生層(IDMC 2003, Taiwan; Session 21 OLED (5), T. Matsumoto, T. Nakada, J. Endo, K. Mori, N. Kawamura, A. Yokoi, J. Kido, Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)および/または有機もしくは無機のp/n遷移から選択される。しかしながら、これらの層のそれぞれは、必ずしも存在する必要はなく、層の選択は、常に、使用される化合物および特にそれが蛍光のエレクトロルミネッセンス素子であるかリン光のエレクトロルミネッセンス素子であるかに依存することを指摘するべきである。
【0045】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、複数の発光層を含んでもよく、少なくとも1の有機層は、少なくとも1の式(1)の化合物を含む。これらの発光層は、特に、全体として、総合的に白色の発光を生じる380nm〜750nmの間に複数の発光極大を有していることが好ましく、すなわち、蛍光またはリン光を発し、青色および黄色、オレンジ色または赤色の光を発する種々の発光化合物が発光層において使用される。3層構造、すなわち3つの発光層を有する構造が特に好ましく、これらの層の少なくとも1つは、少なくとも1の式(1)の化合物を含み、3つの層は、青色、緑色およびオレンジ色または赤色の発光を示す(基本的な構造、例えばWO 05/011013を参照されたい)。広帯域の発光域を有し、それ故白色発光を示す発光体も、白色発光に同様に適している。
【0046】
式(1)で表される化合物は、正孔輸送材料および/または正孔注入材料および/または電子遮断材料として使用することが特に好ましい。これは、特に、記号Yおよび/または記号Xが窒素を意味する場合に当てはまる。それ故、前記化合物は、正孔輸送層および/または正孔注入層において使用されることが好ましい。本発明の目的のために、正孔注入層は、アノードに直接隣接する層である。本発明の目的のために、正孔輸送層は、正孔注入層と発光層の間に位置する層である。式(1)の化合物が正孔輸送材料または正孔注入材料として使用される場合、例えばF4-TCNQのような電子受容化合物またはEP 1476881もしくはEP 1596445に記載されているような化合物にドープすることが好ましい。正孔輸送層中の正孔輸送材料として式(1)の化合物を使用する場合、100%の割合、すなわち純粋な材料としてその化合物を使用することも好ましい。
【0047】
式(1)の化合物を、蛍光またはリン光OLEDの電子輸送材料および/または正孔遮断材料として使用すること、および/またはリン光OLEDの三重項マトリックス(triplet matrix)材料として使用することがさらに好ましい。これは、特に、基YがC=O、P=OまたはS=Oを意味する化合物に適用される。
【0048】
好ましくは、さらに、1以上の層が昇華工程によりコートされたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。これにおいて、材料は、最初の圧力が通常10-5 mbar未満であり、好ましくは10-6 mbar未満である減圧昇華ユニットにおいて蒸着される。しかしながら、最初の圧力は、より低く(例えば10-7 mbar未満)することも可能である。
【0049】
同様に、1以上の層がOVPD(有機気相蒸着)法により、またはキャリアガス昇華の助けを受けてコートされたことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子が提供されることが好ましい。ここで、材料は、10-5 mbar〜1 barの圧力で塗布される。この方法の特別な場合は、OVJP(有機気相ジェットプリンティング)であり、材料がノズルを通して直接塗布され、構築される(例えば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0050】
好ましくは、さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子において、1以上の層は、例えば、スピンコーティング、または望ましい印刷工程(例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷もしくはオフセット印刷)により、溶液から形成されてよく、特に好ましくは、LITI(光誘起熱画像化;light-induced thermal imaging、熱転写印刷;thermal transfer printing)またはインクジェット印刷により形成される。式(1)の可溶性化合物が、この目的のために必要である。高い溶解性は、化合物の適切な置換により達成することができる。
【0051】
有機エレクトロルミネッセンス素子における使用について、本発明による化合物は、以下に示すような先行技術と比較した驚くべき利点を有している:
1.正孔輸送層および/または正孔注入層における正孔輸送材料として本発明の化合物を使用する場合、本発明の化合物におけるいずれかの位置にいずれかの置換基Rを含まないか、またはインデノフルオレン骨格に窒素を含まない先行技術の化合物と比較して、必要とされる電圧が低い。
【0052】
2.正孔輸送層および/または正孔注入層における正孔輸送材料として本発明の化合物を使用する場合、有機エレクトロルミネッセンス素子の動作電圧は、先行技術の化合物を使用した場と比較して、さらに相当低い。
【0053】
3.正孔輸送層および/または正孔注入層における正孔輸送材料として本発明の化合物を使用する場合のさらなる利点は、薄い(例えば20 nm)正孔輸送層と厚い(例えば110 nm)正孔輸送層との間の電位差が小さくなることである。これにより、電力効率の有意な低下を生じることなく、より厚い正孔輸送層に本発明による化合物を使用することが可能になる。光カップリングアウト効率(Optical coupling-out efficiency)は、正孔輸送層の厚さを変化させることにより、決定的な様式で制御される。0.1 Vの領域における改善も、ここでは有意な利点とみなす。
【0054】
4.対応する素子の効率、寿命およびカラーコーディネートは、先行技術による構造に匹敵する。
【0055】
5.本発明の化合物の加工性(processibility)は、同様の構造を有するが、水素または重水素以外のいずれかの置換基Rを含まない先行技術による材料と比較して、明らかに優れている。それ故、本発明の化合物は、蒸着源の縁において結晶化を示さず、それ故、蒸着源の詰まりも起こらない。本発明の化合物は、それ故、先行技術の材料よりも大量生産に適している。
【0056】
本明細書本文および以下に示す実施例は、OLEDならびに対応するディスプレイおよび照明素子における本発明の化合物の使用に向けられている。この限定された記載にかかわらず、当業者は、さらなる独創的な工程を用いることなく、本発明の化合物をさらに他の電子デバイスにおいて使用することができ、例えば、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電気化学電池(LEC)、有機感光体または有機レーザーダイオード(O-laser)である。
【0057】
本発明は、同様に、対応するデバイスにおける本発明の化合物の使用およびそのデバイス自体に関する。
本発明は、限定することなく、以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0058】
以下の合成は、特に示さない限り、保護性の気体の雰囲気下において、乾燥溶媒中で行う。出発物質は、ALDRICHから購入することができる。
【0059】
例1:4,6,6,10,12,12-ヘキサメチル-N,N,N',N'-テトラフェニル-6H,12H-インデノ[1,2-b]フルオレン-2,8-ジアミン
a)ジエチル 2,2''-ジメチル[1,1';4',1'']テルフェニル-2',5'-ジカルボキシレート
【化8】

【0060】
60 g (160 mmol)のジエチルジブロモテレフタレート、43 g (320 mmol)のo-トリルボロン酸、365 mg (0.32 mmol)のPd(PPh3)4および92 g (660 mmol) のK2CO3を、300 mlのトルエンおよび300 mlの水中において、4時間煮沸する。続いて、混合物を、トルエンと水に分配し、有機相を水で3回洗浄し、Na2SO4を用いて乾燥する。残った残留物を、ヘプタンから2回再結晶し、無色の結晶を得る。収量は51 g (127 mmol, 81%)である。
【0061】
b)2-[5'-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2,2''-ジメチル[1,1';4',1'']テルフェニル-2'-イル]プロパン-2-オール
【化9】

【0062】
39 g (97 mmol) のジエステルを、500 mlの乾燥THF中に最初に投入し、195 ml (580 mmol) のTHF中の3 M メチルマグネシウムクロリド溶液を懸濁液に5℃で加え、混合物を5℃で6時間撹拌する。その後、200 mlの飽和NH4Cl溶液を加え、反応混合物を水とトルエンに分配し、水相をトルエンで3回抽出し、混合性の有機相をNa2SO4を用いて乾燥する。真空中で溶媒を除去することにより、TLCおよび1H-NMRによると均質な36 g (96 mmol, 99%) の無色の固体が残り、さらなる精製を行うことなく、その後の反応に使用することができる。
【0063】
c)4,6,6,10,12,12-ヘキサメチル-6,12-ジヒドロインデノ[1,2-b]フルオレン
【化10】

【0064】
33.7 g (90 mmol) のジオールを300 mlのジクロロメタン中に溶解し、溶液を5℃に冷却し、55 mlのメタンスルホン酸中の80 gのポリリン酸の混合物を加える。5℃にて30分後、300 mlのEtOHを添加し、混合物を1時間煮沸する。無色の沈殿がろ過され、EtOHおよびヘプタンで2回洗浄し、クロロベンゼンで1回再結晶し、無色の固体としてジメチルインデノフルオレンが得られ (28.5 g, 84 mmol, 93%)、RP-HPLCによると、純度>99.8%である。
【0065】
d)2,8-ジブロモ-4,6,6,10,12,12-ヘキサメチル-6,12-ジヒドロインデノ[1,2-b]フルオレン
【化11】

【0066】
33.8 g (100 mmol) のジメチルインデノフルオレンを1250 mlのジクロロメタンに溶解し、溶液を0℃まで冷却し、825 mlの水中における33 g (266 mmol) のNa2CO3の溶液と混合する。11.3 mlの臭素 (220 mmol)を添加した後、懸濁液を5℃で6時間撹拌し、無色の固体がろ過され、水、EtOHおよびヘプタンで洗浄し、乾燥することにより、38.3 g (77 mmol, 77%)、純度>99.5% (1H-NMR)が得られる。
【0067】
e)4,6,6,10,12,12-ヘキサメチル-N,N,N',N'-テトラフェニル-6H,12H-インデノ[1,2-b]フルオレン-2,8-ジアミン
【化12】

【0068】
38 g (77 mmol) のジブロミドを1400 mlの乾燥トルエン中に溶解し、31.1 g (183 mmol) のジフェニルアミンを添加し、混合物をArで30分間飽和させる。23.5 g (245 mmol) のNaOtBu、3.9 ml (3.9 mmol) のトリ-tert-ブチルホスフィンのトルエンにおける1 M溶液および515 mgのPd(OAc)2を続いて加える。混合物を4時間煮沸し、500 mlの水、50 mlの濃HClおよび500 mlのEtOHを懸濁液に加え、沈殿を吸引ろ過し、水およびMeOHで2回洗浄し、乾燥する。無色の固体を沸騰させたジクロロベンゼン中に溶解し、シリカゲルの層を通してろ過し、沸騰させたジクロロベンゼンで洗浄し、ろ液中の固体の沈殿を吸引ろ過し、NMPから3回再結晶する。真空中で2回昇華させることにより (360℃, 1×10-5 mbar) 、ジアミン (40.2 g, 60 mmol, 78%) が淡黄色の粉末の形態で得られ、RP-HPLCにより測定した純度は、99.9%より高い。
【0069】
例2:5,6,11,11,12,12-ヘキサメチル-N,N,N',N'-テトラフェニル-11H,12H-インデノ[2,1-a]フルオレン-2,9-ジアミン
a)1,4-ジブロモ-2,3-ジメチルベンゼン
【化13】

【0070】
前記化合物は、Cachia, Wahl, Bull. Soc. Chim. Fr. 1958, 1418-1420に従って作られる。
【0071】
b)ピナコリル2,3-ジメチルベンゼン-1,4-ビスボロネート
【化14】

【0072】
100 g (380 mmol) の1,4-ジブロモ-2,3-ジメチルベンゼンを1500 mlの乾燥ジエチルエーテルに溶解し、420 ml (840 mmol) のシクロヘキサン中のn-ブチルリチウム2 M溶液を70℃で滴下し、1時間後、130 mlのトリメチルボレート (1140 mmol) を滴下し、混合物を1時間の間にRTに達するようにし、溶媒を除去し、90 g (76 mmol) のピナコールおよび1000 mlのトルエンを加え、混合物を2時間煮沸し、溶媒を再び除去し、1H-NMR によると均質である残留物は、さらに精製することなくその後の反応に使用する。
【0073】
c)ジメチル 2',3'-ジメチル[1,1';4',1'']テルフェニル-2,2''-ジカルボキシレート
【化15】

【0074】
57 g (160 mmol) のピナコリル 2,3-ジメチルベンゼン-1,4-ビスボロネートを、1150 mlのEtOH、1150 mlのトルエン、600 mlの2 M Na2CO3溶液、45 ml (320 mmol) のメチル 2-ブロモベンゾエートおよび7.5 g (7 mmol) のPd(PPh3)4の混合物中において、4時間煮沸する。その後、バッチを氷水/MeOH/HCl 1:1:1の混合物中に注ぎ、無色の沈殿を吸引ろ過し、水およびEtOHで洗浄し、乾燥する。沸騰させたトルエンに固体を溶解し、シリカゲルの層を通して溶液をろ過し、ヘプタンをろ液に加え、沈殿生成物を吸引ろ過し、55.4 g (148 mmol, 92%) のジエステルを無色の粉末として得る。
【0075】
d)2-[2''-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-2',3'-ジメチル[1,1';4',1'']テルフェニル-2-イル]プロパン-2-オール
【化16】

【0076】
55.4 g (148 mmol) のジエステルを850 mlのTHFに溶解し、300 ml (600 mmol) のジエチルエーテル中のメチルリチウム2 M溶液を−75℃で加え、混合物を−75℃で3時間撹拌する。RTまで温めた後、NH4Cl溶液を用いて混合物を加水分解し、酢酸エチルで抽出し、真空中で乾燥して溶媒を除去する。無色の固体の残留物をトルエン/EtOHから2回再結晶することにより、42.7 g (114 mmol, 77%) のジオールを無色の結晶の形態で得る。
【0077】
e)5,6,11,11,12,12-ヘキサメチル-11,12-ジヒドロインデノ[2,1-a]フルオレン
【化17】

【0078】
41.2 g (110 mmol) のジオールを500 mlの酢酸中に懸濁し、1 mlの濃HClを加え、混合物を強く撹拌しながら4時間煮沸する。RTまで冷却した後、淡黄色の沈殿を吸引ろ過し、水、MeOHおよびヘプタンで洗浄し、クロロベンゼンから再結晶し、99%より高い純度(RP-HPLC)を有する33.9 g (100 mmol, 91%) のシス-インデノフルオレンを得る。
【0079】
f)2,9-ジブロモ-5,6,11,11,12,12-ヘキサメチル-11,12-ジヒドロインデノ[2,1-a]フルオレン
【化18】

【0080】
26.9 g (79.4 mmol) のジメチル-シス-インデノフルオレンを870 mlのジクロロメタンに溶解し、580 mlの水中における23.6 g (190 mmol) のNa2CO3水和物の溶液を加え、40 ml ジクロロメタン中の9 ml (176 mmol) の臭素を5℃で15分間にわたって滴下する。懸濁液を5℃で6時間撹拌し、無色の固体をろ過し、水およびMeOHで洗浄し、乾燥することにより、37.8 g (76.2 mmol, 96%) のジブロミドを無色の粉末として得る(1H-NMRで測定した場合の純度>99%)。
【0081】
g)5,6,11,11,12,12-ヘキサメチル-N,N,N',N'-テトラフェニル-11H,12H-インデノ[2,1-a]フルオレン-2,9-ジアミン
【化19】

【0082】
28.5 g (57.4 mmol) のシス-インデノフルオレンジブロミドを1000 mlの乾燥トルエンに溶解し、溶液をArで注意深く飽和し、23.3 g (137.83 mmol) のジフェニルアミンを添加する。17.7 gのナトリウムtert-ブトキシド、3 mlのトルエン中のトリ-tert-ブチルホスフィン 1 M溶液および385 mgのPd(OAc)2を添加した後、混合物を3時間煮沸し、その後冷却し、100 mlの水、50 mlの濃HClおよび500 mlのEtOHを添加し、沈殿を吸引ろ過し、トルエン中に溶解し、溶液をシリカゲルを通して濾過し、真空中で蒸発させる。クロロベンゼンから6回再結晶した後、無色の固体を真空中で昇華させる (p = 1×10-5mbar, T = 375℃)。ガラス様物質として得られた無色の生成物 (26.2 g, 68%) は、RP-HPLCで測定した場合の純度>99.9%である。
【0083】
例3:4,7,11,11,12,12-ヘキサメチル-N,N,N',N'-テトラフェニル-11H,12H-インデノ[2,1-a]フルオレン-2,9-ジアミン
【化20】

【0084】
a)O-メチル桂皮アルデヒド
【化21】

【0085】
前記化合物は、Battistuzzi et al., Organic Letters 2003, 5(5), 777-780に従って合成することができる。
【0086】
b)ジエチル2-メチルベンジルホスホネート
【化22】

【0087】
前記化合物は、de Meijere et al., Eur. J. Org. Chem. 1998, 2289-2299に従って合成することができる。
【0088】
c)2,2’-ジメチル-トランス-スチルベン
【化23】

【0089】
前記化合物は、de Meijere et al., Eur. J. Org. Chem. 1998, 2289-2299に従って合成することができる。
【0090】
5.99 g (パラフィンオイル中の149.9 mmol, 60%懸濁液) のNaHを、アルゴン雰囲気下で250 mlのTHF中に懸濁する。混合物を0℃に冷却し、20 mlのTHF中のジエチル2-メチルベンジルホスホネート37.28 g (153.9 mmol)を15分間にわたって添加する。その後、20 mlのTHF中に溶解した19.74 g (135.0 mmol) のo-桂皮アルデヒドを加える。その後、反応系を数日間RTで撹拌し、24.0 g (77%) の生成物を白色固体として得る。
【0091】
d)1,2-ジカルボキシメチル-3,6-ジ-o-トリル-1,2,4,5-シクロヘキサジエン
【化24】

【0092】
20.0 g (85.3 mmol) の2,2'-ジメチル-トランス-スチルベンを、還流下で20時間、トルエン中の11.5 ml (93.8 mmol) ジメチルアセチレンジカルボキシレートと共に撹拌し、熱いヘプタンと共に撹拌することにより洗浄された固体を得る。生成物は、収率87%の淡黄色の固体として得られる。
【0093】
e)1,2-ジカルボキシメチル-3,6-ジ-o-トリルベンゼン
【化25】

【0094】
2.00 g (5.31 mmol) の1,2-ジカルボキシメチル-3,6-ジ-o-トリル-1,2,4,5-シクロヘキサジエンを、250mlのo-ジクロロベンゼン中における9.23 g (10.62 mmol) のMnO2 と共に、水セパレータ(water separator)において180℃で20時間撹拌する。セライトを通して混合物をろ過し、1.3 g (65%) の固体生成物を得る。
【0095】
f)1,2-ジ[ヒドロキシメチル]-3,6-ジ-o-トリルベンゼン
【化26】

【0096】
250 mlのTHFを10.13 g (267.3 mmol) の水酸化リチウムアルミニウムにゆっくりと加え、その後、450 mlのTHFに溶解した71.5 g (190.9 mmol) の1,2-ジカルボキシメチル-3,6-ジ-o-トリルベンゼンを、温度が40℃を超えないような速度でゆっくりと加える。必要な場合、ドライアイスを用いて混合物を冷却する。添加が終了したら、懸濁液を還流下で2時間加熱する。変換が完了したら、120 mlの酢酸エチルと340 mlのTHFとの混合物を0℃に冷却しながらゆっくりと加える (過剰な水酸化リチウムアルミニウムと酢酸エチルとの反応)。クエンチングが完了したら、300 mlのエタノールを注意深く加え、混合物を水性の状態にする。200 mlの水を加え、沈殿を吸引ろ過し、母液を少し蒸発させ、酢酸エチルおよびジクロロメタンで抽出し、MgSO4を用いて乾燥し、蒸発させ、次の変換に直接使用できる61 gの粗生成物を得る。
【0097】
g)4,7-ジメチルインデノ[2,1-a]フルオレン
【化27】

【0098】
934 gのポリリン酸を最初に投入し、1500 mlのクロロホルムに溶解した61.0 g (192 mmol) の1,2-ジ[ヒドロキシメチル]-3,6-ジ-o-トリルベンゼンを加える。その後、混合物を還流下で2.5時間加熱する。冷却した反応溶液を氷水に投入し、メチレンクロリドで抽出し、乾燥して蒸発させる。得られた固体を煮沸した酢酸エチル中で撹拌することにより洗浄し、吸引ろ過し、ヘプタンで洗浄することにより、27 g (54%) の生成物を白色固体として得る。
【0099】
h)4,7,11,11,12,12-ヘキサメチル-11,12-ジヒドロインデノ[2,1-a]フルオレン
【化28】

【0100】
30.0 g (63.74 mmol) の4,7-ジメチルインデノ[2,1-a]フルオレンを最初に700 mlのDMSO中に投入し、36.76 g (382.47 mmol) のNaOtBuを加える。混合物を65℃の内部温度まで加熱し、その後、23.8 ml (382.47 mmol) のヨードメタンを、内部温度が65℃を超えないような速度で滴下する。変換が完了したら、100 mlの26% NH3溶液を冷却した反応溶液に加え、混合物を室温で16時間撹拌する。沈殿した反応生成物を吸引ろ過し、トルエンを用いて共沸性に乾燥する。反応生成物をカラムクロマトグラフィー (トルエン/ヘプタン 1:5)により精製し、18 g (83%) の生成物を白色固体として得る。
【0101】
この化合物の臭素化およびHartwig-Buchwaldカップリングは、例1f)およびg)と同様に行う。
【0102】
例4:OLEDの作製
本発明によるOLEDは、ここに記載した条件(層の厚みの変化、使用する材料)に適応したWO 04/058911に記載されている一般的な方法により作製される。
【0103】
以下の例5〜18において、種々のOLEDについての結果を示している。構造化ITO(インジウム錫酸化物)でコートされたガラス板は、OLEDの基板を形成する。加工性を改善するために、20 nmのPEDOT (水からのスピンコーティング; H. C. Starck, Goslar, Germanyから購入; ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン))を基板に塗布する。OLEDは、以下に示す層配列からなる: 基板 / PEDOT 20 nm / HIL1 5 nm / 正孔輸送層 (HTM) 20または110 nm / NPB 20 nm / 発光層 (EML) 30 nm / 電子輸送層 (ETM) 20 nm および最後にカソード。PEDOTから離れている材料は、真空チャンバーにおいて熱的に蒸着される。ここでの発光層は、常に、マトリックス材料(ホスト)およびドーパントからなり、共蒸着によりホストと混合される。カソードは、厚さ1 nmのLiF層および一番上に積層される厚さ100 nmのAl層により形成される。表1に、使用する材料の化学構造を示す。
【0104】
これらのOLEDは、標準的な方法により特徴付けられ;この目的のために、エレクトロルミネッセンススペクトル、効率(cd/Aで測定)、輝度の関数としての電力効率(lm/Wで測定、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算)、および寿命が測定される。寿命は、最初の輝度が25,000 cd/cm2から半分に低下するまでの時間として定義される。使用電圧は、OLEDが1 cd/m2の輝度を達成する電圧として定義される。
【0105】
図2は、いくつかのOLEDに対する結果を示す(例5〜18)。本発明に使用される正孔輸送材料は、表1に示したように、化合物HTM3(合成例1)、HTM4(合成例2)およびHTM5(合成例3)である。比較のために、最も近い先行技術によるHTM1およびHTM2を使用する。化合物HTM3、HTM4およびHTM5は、使用電圧の低下、動作電圧の低下、および特に厚さ20 nmのHTM層と厚さ110 nmのHTM層との間の輝度1000 cd/m2における電圧の低下の違いにより、対応する非置換型の化合物HTM1およびHTM2と区別される。光カップリングアウト効率は、正孔輸送層の厚さを変化させることにより決定的な態様で制御されるため、このことは適用において重要である。本発明による化合物HTM3、HTM4およびHTM5の使用における寿命、効率およびカラーコーディネートは、予想通り、対応する対照材料であるHTM1およびHTM2を使用した場合と非常に類似している。
【表1】

【表2】

【0106】
例19:加工性の比較
加工性の検討のために、先行技術におけるHTM1と本発明による化合物としてのHTM3とを、同一の蒸着条件下において、0.1 nm/sの速度で蒸着する。この工程の間に、1時間および2時間の蒸気コーティングの後で蒸着源を調べる。1時間蒸着しただけで、HTM1の透明な結晶が蒸着源の縁に現れ、2時間蒸着した後には蒸着源は完全に塞がれる。対照的に、HTM3を用いた場合、2時間蒸着した後であっても蒸着源の縁には全く結晶が現れず、蒸着源を詰まらせる傾向は全くない。本発明による化合物HTM4およびHTM5を使用した場合にも、同様の結果が得られる。本発明による化合物は、それ故、先行技術による化合物HTM1と比較して、大量生産における使用に対して有意に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表される化合物:
【化1】

式中、Yは、それぞれ同じまたは異なり、B、N、P、P=O、PF2、C=O、O、S、S=OまたはSO2であり;
Arは、それぞれ同じまたは異なり、5〜40の芳香環原子を有する芳香環または芳香族複素環構造であり、1以上の基R1で置換されてよく;
Xは、それぞれ同じまたは異なり、B(R1)、C(R1)2、-CR1=CR1-、-CR1=N-、Si(R1)2、C=O、C=NR1、C=C(R1)2、O、S、SO2、N(R1)、またはP(=O)R1から選択される基であるか、これらの基の2つ、3つまたは4つの組み合わせであり;
Zは、Xが基Zに結合する場合にCであり、基Xが基Zに結合しない場合には、それぞれ同じまたは異なり、CRまたはNであり;
Wは、それぞれ同じまたは異なり、CHまたはNであり;
Rは、それぞれ同じまたは異なり、H、D、F、CN、B(OR2)2、Si(R2)3、N(Ar)2、C(=O)Ar、P(=O)Ar2、S(=O)Ar、S(=O)2Ar、CR2=CR2Ar、1〜40の炭素原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40の炭素原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基である(これらはそれぞれ1以上の基R2で置換されてよく、1以上の隣接しないCH2基は、-R2C=CR2-、Si(R2)2、C=O、C=S、C=NR2、-O-、-S-、-COO-または-CONR2-で置換されてよく、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO2で置換されてよい)か、または1以上の非芳香族基R1で置換されてよい5〜40の芳香環原子を有する芳香環または芳香族複素環であるか、または1以上の非芳香族基R1で置換されてよい5〜40の芳香環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であるか、またはこれらの組み合わせであり;ここでの2以上の隣接する置換基Rは、互いに単環式または多環式の構造を形成してもよく;
Eは、それぞれ同じまたは異なり、単結合、N(R1)、O、S、C(R1)2、C(R1)2-C(R1)2、Si(R1)2またはB(R1)であり;
R1は、それぞれ同じまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO2、B(OR2)2、Si(R2)3、1〜40の炭素原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2〜40の炭素原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、または3〜40の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基である(これらはそれぞれ1以上の基R2で置換されてよく、1以上の隣接しないCH2基は、-R2C=CR2-、-C≡C-、Si(R2)2、Ge(R2)2、Sn(R2)2、C=O、C=S、C=Se、C=NR2、-O-、-S-、-COO-もしくは-CONR2-で置換されてよく、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO2で置換されてよい)か、または1以上の非芳香族基R1で置換されてよい5〜40の芳香環原子を有する芳香環もしくは芳香族複素環であるか、または1以上の非芳香族基R1で置換されてよい5〜40の芳香環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基であるか、またはこれらの組み合わせであり;ここでの2以上の置換基R1は、互いに単環式または多環式の構造を形成してもよく;
R2は、それぞれ同じまたは異なり、Hまたは1〜20の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素基であり;
m、nは、0または1であり、ただしm+n=1であり;
qは、それぞれ、基Yの対応する中心原子が主基(main group)3または5に由来する要素である場合に1であり、基Yの対応する中心原子が主基4または6に由来する要素である場合には0であり;
sは、1、2または3であり;
tは、それぞれ同じまたは異なり、0または1であり、t=0の場合には、基R1が基Eの代わりに結合することを意味し;さらに、q=0の場合にt=0であり;
vは0または1であり、v=0の場合、水素または基Rが基Yの代わりに結合してよく;
少なくとも1の基Rは、HまたはD以外の置換基を意味する。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、式(1)の化合物における最大2つの記号ZはNを意味し、他の記号ZはCまたはCRを意味することを特徴とする化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物であって、以下の式(2)〜(5)の化合物から選択される化合物:
【化2】

式中に使用されている記号および表示は、請求項1に記載した意味を有し、少なくとも1つの基Rは、水素または重水素以外の置換基を意味する。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物であって、記号Yは、同じまたは異なり、窒素、C=O、リンまたはP=Oを意味し、好ましくは窒素を意味することを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物であって、記号Arは、それぞれ同じまたは異なり、5〜16の芳香環原子を有する芳香環もしくは芳香族複素環構造、トリアリールアミンまたはスピロビフルオレンを意味し、それぞれ1以上の基R1で置換されてよく、特に好ましくは、芳香環または芳香族複素環構造は、ベンゼン、オルト-、メタ-もしくはパラ-ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ベンズアントラセン、ピリジン、ピレン、チオフェン、トリフェニルアミン、ジフェニル-1-ナフチルアミン、ジフェニル-2-ナフチルアミン、フェニルジ(1-ナフチル)アミンおよびフェニルジ(2-ナフチル)アミンから選択され、それぞれR1で置換されてよいことを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物であって、前記添え字t=0または添え字t=1であり、対応する記号Eは、単結合、C(R1)2、SまたはN(R1)であることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物であって、以下の式(6)〜(11)の化合物から選択される化合物:
【化3−1】

【化3−2】

式中に使用されている記号および表示は、請求項1に記載した意味を有し、基Rは、水素または重水素以外である。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物であって、水素または重水素以外の基Rは、それぞれ同じまたは異なり、1〜20の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基または3〜20の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは環状のアルキル基であり、これらのそれぞれは、1以上の基R2で置換されてよく、1以上のH原子は、F、または1以上の非芳香族性基R1で置換されてよい5〜20の芳香環原子を有する芳香環もしくは芳香族複素環構造、あるいはこれらの構造の組み合わせにより置換されてよく;ここでの2以上の隣接する置換基Rは、互いに単環または多環構造を形成してもよいことを特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項8に記載の化合物であって、水素以外の基Rは、それぞれ同じまたは異なり、1〜10の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基または3〜10の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは環状のアルキル基であり、これらのそれぞれは、1以上の基R2で置換されてよく、特に、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、tert-ペンチル、2-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、tert-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、シクロヘプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチルまたは3-(3,7-ジメチル)オクチルであることを特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物であって、記号Xは、それぞれ同じまたは異なり、C(R1)2、C(=C(R1)2)、C=O、C=NR1、O、S、S=O、SO2またはN(R1)から選択されることを特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物であって、以下の式(6a)〜(11a)の化合物から選択される化合物:
【化4−1】

【化4−2】

式中に使用されている記号および表示は、請求項1に記載した意味を有する。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
a)所定の位置において基Yの代わりに水素を有するインデノフルオレン骨格または対応する複素環誘導体を合成することと;
b)ハロゲン化により、所定の位置において基Yの代わりにハロゲンで置換されたインデノフルオレンまたは対応する複素環誘導体を得ることと;
c)ハロゲン化インデノフルオレンをジアリールアミンと反応させるか、またはメタレーションし、求電子試薬と反応させること。
【請求項13】
電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセンス素子における請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含む有機電子デバイスであって、特に、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電気化学電池(LEC)、有機感光体および有機レーザーダイオード(O-laser)からなる群より選択される有機電子デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、記号Yおよび/またはXは窒素を意味し、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物は、正孔輸送材料および/または正孔注入材料として使用され、および/または基YはC=O、P=OもしくはS=Oを意味し、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物は、蛍光またはリン光OLEDの電子輸送材料および/または正孔遮断材料、および/またはリン光OLEDの三重項マトリックス(triplet matrix)材料として使用されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公表番号】特表2011−523943(P2011−523943A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509866(P2011−509866)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001554
【国際公開番号】WO2009/141026
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】