説明

電子デバイス

【課題】 樹脂の充填を容易にして、生産性を向上させる圧電デバイスを提供する。
【解決手段】
基部11とこの基部11の主面に設けられる枠部12とでキャビティ13が形成される基体10と、キャビティ13内に設けられる集積回路素子20と、基体10と集積回路素子20との間に充填される樹脂30とから構成される電子デバイス101であって、集積回路素子20の基部11側と対向する面に側面まで伸びる溝部21を4方向に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭スペースでの樹脂の充填に適した電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器に圧電発振器等の電子デバイスが用いられている。例えば、図6に示すように、圧電デバイスAHには、発振周波数の環境変化における周波数安定度を改善する目的で集積回路素子220が搭載された電子デバイス200と圧電振動子ASとからなり、集積回路素子220の回路形成面に樹脂230を充填するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、この圧電デバイスAHは、内部に圧電振動素子SSが収容されている圧電振動子ASと、基体210に設けられたキャビティ213内に圧電振動素子SSの振動に基づいて発振出力を制御する集積回路素子220やコンデンサ等の電子部品素子を収容した基体210とから構成される電子デバイス200とからなり、電子デバイス200のキャビティ213を塞ぐように圧電振動子ASを基体210上に取着させている。ここで、集積回路素子220は回路形成面を基体210の表面側に向けて基体210に取着させているため、集積回路素子220と基体210との間には樹脂230を充填して、回路形成面を保護するようにしている。
かかる圧電デバイス200をマザーボード等の外部配線基板上に載置させた上、基体210の下面に設けられている外部端子を外部配線基板の配線に半田接合することにより外部配線基板上に実装される。
【0004】
なお、圧電振動子ASや基体210は、通常、セラミック材料によって形成されており、その内部や表面には配線導体が形成され、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。
【0005】
また、前記集積回路素子220の内部には、圧電振動素子SSの温度特性に応じて作成された温度補償データに基づいて圧電デバイス200の発振周波数を補正するための温度補償回路が設けられており、圧電デバイス200を組み立てた後、上述の温度補償データを集積回路素子220のメモリ内に格納すべく、基体210の下面や外側面等には温度補償データ書込用の書込制御端子が設けられていた。この書込制御端子に温度補償データ書込装置のプローブ針を当てて集積回路素子220内のメモリに温度補償データを入力することにより、温度補償データが集積回路素子220のメモリ内に格納される。
【0006】
しかしながら、上述した従来の圧電デバイス200の集積回路素子220が基体210のキャビティ(凹状の開口部)223に配置させてある場合、圧電デバイス200が小型化するにつれ、基体210の凹状の開口部223と集積回路素子220間の隙間が狭くなり、集積回路素子220の回路形成面(下面)と基体210の枠部間に樹脂230を充填するのが困難となり、圧電デバイスの生産性が著しく低下するという欠点を有していた。
【特許文献1】特開2004−112031号公報(段落0002〜0006、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、樹脂の充填を容易にして、生産性を向上させる圧電デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子デバイスは、基部とこの基部の主面に設けられる枠部とでキャビティが形成される基体と、前記キャビティ内に設けられる集積回路素子と、前記基部と前記集積回路素子との間に充填される樹脂とから構成される電子デバイスであって、前記集積回路素子の前記基部側と対向する面に側面まで伸びる溝部を4方向に設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電子デバイスは、前記各溝部が、前記集積回路素子の前記基部側と対向する面の中心で連通し、前記各溝部が中心から側面に向かうにつれて前記基部の主面から離れるように傾斜がつけられていても良い。
【0010】
また、本発明の電子デバイスは、前記集積回路素子の前記溝部を形成される面とは反対側の面において、当該面の外周縁部がR加工されていても良い。
【0011】
また、本発明の電子デバイスは、基部とこの基部の主面に設けられる枠部とでキャビティが形成される基体と、前記キャビティ内に設けられる集積回路素子と、前記基部と前記集積回路素子との間に充填される樹脂とから構成される電子デバイスであって、前記集積回路素子の前記溝部を形成される面とは反対側の面において、当該面の外周縁部がR加工されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧電デバイスによれば、集積回路素子の側面まで伸びる溝部を経由して樹脂が基部と集積回路素子との間に入り込むので、樹脂の充填が容易に行え、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態において、同一の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
また、本実施形態における集積回路素子を、単結晶シリコン等から成る基体の下面に、周囲の温度状態を検知する感温素子(サーミスタ)、圧電振動素子の温度特性を補償する温度補償データを格納するとともに該温度補償データに基づいて圧電振動素子の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、該温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等の電子回路が設けられているものとして説明する。
【0014】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係る圧電デバイスの一例を示す断面図である。図2は、集積回路素子の一例を示す斜視図である。図3は、本発明の第一の実施形態に係る電子デバイスに圧電振動子を接続した一例を示す断面図である。
【0015】
本発明の第一の実施形態に係る電子デバイス101は、基部11とこの基部11の主面に設けられる枠部12とでキャビティ13が形成される基体10と、前記キャビティ13内に設けられる集積回路素子20と、集積回路素子20と基体10との間に充填される樹脂30とから主に構成されている。
【0016】
図1に示すように、基体10は、図1に示すように、矩形形状となる板状の基部11と、この基部11の形状に対応する枠部12とから構成され、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から形成されている。
【0017】
基部11は、その一方の主面に枠部12を設け、他方の主面に外部接続電極端子14が設けられており、また、枠部12を設ける主面であって、当該枠部12の内部側に後述する集積回路素子20、電子部品素子(図示せず)等を搭載するための複数個の電極パッド15を設けている。
これら電極パッド15に集積回路素子20の接続パッド22(図2参照)をバンプBや半田、異方性導電接着材等の導電性接合材を介して電気的、及び機械的に接続させることによって集積回路素子20を基体10上の所定位置に取着させることができる。
【0018】
枠部12は、その外側面に複数個の書込制御端子(図示ぜず)が形成されている。
この枠部12は、集積回路素子20や電子部品素子(不図示)等を配置させるのに必要な所定の間隔を確保しつつ、例えば、圧電振動子を電気的に接続するための接続用パッド16が基部11側とは反対側となる面(上面)に設けられている。
【0019】
集積回路素子20は、図1及び図2に示すように、基部11側と対向する面に側面まで伸びる溝部21が4方向に設けられている。
具体的には、集積回路素子20が平面視矩形形状に形成されている場合、この平面視矩形形状の中心位置から各側面(4方向)に向けて溝部21が設けられている。そして、この溝部21は、中心位置で連通しており、その中心位置から側面に向かうにつれて溝部21の深さが増すようになっている。
【0020】
なお、集積回路素子20が平面視矩形形状に形成されている場合、この平面視矩形形状の中心位置から各側面であって角となる部分に向けて溝部21を設けても良い。
これにより、集積回路素子20の上面側から充填する樹脂30を、集積回路素子20の側面まで伸びる溝部21を経由して、集積回路素子20と基体10との間にスムーズに充填することが可能となる。
なお、集積回路素子20の溝部21が設けられる回路形成面(下面)において、当該回路は、配線の引き回しのために、溝部21の表面を這わして設けても良い。
【0021】
ここで、集積回路素子20は、例えば、単結晶シリコンのインゴットを所定厚みにスライスして得られたシリコンウエハの一主面に従来周知の半導体製造技術によって、発振回路等の電子回路や電極パッド等を形成することによって製作されたものでも良い。
【0022】
樹脂30は、図1に示すように、エポキシ樹脂等からなり、集積回路素子20と基体10との間に充填され、集積回路素子20の回路形成面(下面)と側面を被覆して、回路形成面(下面)を保護する役割を果たす。
【0023】
これにより、集積回路素子20を収容する基体10に対する集積回路素子20の取着強度が向上されるとともに、集積回路素子20の回路形成面(下面)が樹脂30によって良好に被覆され、回路形成面(下面)の電子回路が大気中の水分等によって腐食されるのを有効に防止することが可能となる。
【0024】
このような電子デバイス101は、後述する方法により製造することができる。
例えば、樹脂30を充填する圧電デバイス101の外形寸法を2520タイプ(2.5*2.0mm)以下、高さ1.0mm程度とする。また、樹脂充填用ノズル15は、樹脂充填用ノズルJのノズル径D1(図1参照)を直径0.45mm程度、ノズル先端部分のノズル径D2(図1参照)を0.23mm程度とする。
これにより、2520タイプ(2.5*2.0mm)圧電デバイス101の集積回路素子20のチップサイズは1.4*1,2mm程度のため、枠部12の厚み0.3mm程度を考慮すると、集積回路素子20と枠部12との間隔W(図1参照)は0.1mm程度となり、樹脂充填用ノズルJを集積回路素子20と枠部12との間に入れるのは不可能な状態となる。
【0025】
したがって、前記の2520タイプ(2.5*2.0mm)以下の小型の圧電デバイス101においては、樹脂30の充填を集積回路素子20の上面から部分的に行うことになる。その際、図1に示すように集積回路素子20の基部11側と対向する面に側面まで伸びる溝部21を4方向に設けたことで、充填される樹脂30が集積回路素子20の上面から側面に伝わり溝部21へ達する。この溝部21に案内されるように樹脂30が集積回路素子20と基体10との間に入り込む。これにより、樹脂30の充填を容易かつ確実に行うことができる。
【0026】
この電子デバイス101は、枠部12の上面に設けた電極パッド16に、例えば、圧電振動子ASを接続することで圧電発振器AH(図3参照)として用いることができる。
【0027】
この圧電振動子ASは、例えば、振動子基部SKと振動子枠部SYとでキャビティSCが設けられた振動子基体SBと、このキャビティSC内に設けられる圧電振動素子SSと、キャビティSCを塞いで気密封止する蓋体SFとから構成されている。
振動子基部SKの振動子枠部SYが設けられる側の主面に圧電振動素子SSの振動電極(不図示)に接続される一対の搭載パッドSP等が設けられ、他方の主面には電子デバイスの枠部12に設けられた接続用パッド16に接続される複数個の接続用端子STがそれぞれ設けられている。これらの搭載パッドSPや接続用端子STは振動子基体SK表面の配線パターンや振動子基体SK内部に埋設されているビアホール等(図示せず)を介して、対応するもの同士、相互に電気的に接続されている。
【0028】
このように、従来の電子デバイスでは樹脂の充填に手間がかかってしまい、その後に行われる工程までに時間を要していたが、本発明の第一の実施形態に係る電子デバイス101であれば、樹脂30の充填を容易に行うことができるため、例えば、圧電発振器AHを製造する場合に、圧電振動子ASの接続に至るまでの時間を短縮することができる。
したがって、電子デバイス101の生産性を向上させつつも、その後に行われる種々部品を接続・搭載工程や基板への実装等の着手を早めることができるため、各種デバイスの生産性を向上させることもできる。
【0029】
(第二の実施形態)
図4は、本発明の第二の実施形態に係る電子デバイスの一例を示す部分断面図である。
次に本発明の第二の実施形態に係る電子デバイスについて説明する。
図4に示すように、この電子デバイス102は、集積回路素子20において、溝部21を形成する主面側とは反対側の主面側であって、外周縁部23が所定の半径でR加工されている点で第一の実施形態と異なる。
このように、外周縁部23がR加工されていることで集積回路素子20の上面側から充填する樹脂30をよりスムーズに集積回路素子20の側面の溝部21へ誘導することができる。
【0030】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態に係る電子デバイスの一例を示す部分断面図である。
次に本発明の第三の実施形態に係る電子デバイスについて説明する。
図5に示すように、この電子デバイス103は、基部11と対向する主面側と反対側の主面側であって、外周縁部23を所定の半径でR加工されている点で第一の実施形態と異なる。
このように、外周縁部23がR加工されていることで集積回路素子20の上面側から充填する樹脂30をよりスムーズに集積回路素子20の側面へ誘導することができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、第一の実施形態に係る電子デバイス101においては、溝部21の形状をU字形状としているがこれに限られるものではなく、V字型、W型、断面視多角形状、円弧状等としても構わない。この場合も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでも無い。
【0032】
また、例えば、図5においては、集積回路素子20と圧電振動素子SSを別々の基体10、SBに形成し、上下に積み重ねた構造(所謂、親亀子亀構造)としていたが、集積回路素子20と圧電振動素子SSと基体の上下面に配置した構造(所謂H型構造)に用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る圧電デバイスの一例を示す断面図である。
【図2】集積回路素子の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る電子デバイスに圧電振動子を接続した一例を示す断面図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る電子デバイスの一例を示す部分断面図である。
【図5】本発明の第三の実施形態に係る電子デバイスの一例を示す部分断面図である。
【図6】従来の圧電デバイスを含めた圧電発振器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
101 電子デバイス
10 基体
11 基部
12 枠部
13 キャビティ
20 集積回路素子
21 溝部
23 外周縁部
B バンプ
30 樹脂
J 樹脂充填用ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部とこの基部の主面に設けられる枠部とでキャビティが形成される基体と、
前記キャビティ内に設けられる集積回路素子と、
前記基部と前記集積回路素子との間に充填される樹脂とから構成される電子デバイスであって、
前記集積回路素子の前記基部側と対向する面に側面まで伸びる溝部を4方向に設けたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
前記各溝部が、前記集積回路素子の前記基部側と対向する面の中心で連通し、
前記各溝部が中心から側面に向かうにつれて前記基部の主面から離れるように傾斜がつけられていることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記集積回路素子の前記溝部を形成される面とは反対側の面において、当該面の外周縁部がR加工されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
基部とこの基部の主面に設けられる枠部とでキャビティが形成される基体と、
前記キャビティ内に設けられる集積回路素子と、
前記基部と前記集積回路素子との間に充填される樹脂とから構成される電子デバイスであって、
前記集積回路素子の前記溝部を形成される面とは反対側の面において、当該面の外周縁部がR加工されていることを特徴とする電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−180256(P2007−180256A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376762(P2005−376762)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】