説明

電子レンジ対応容器

【課題】 加熱により内圧を逃がすことのできる電子レンジ対応容器を低コストで実現すると共に、マイクロ波の過照射により包材が発火したり、焦げたりすることを防止する。
【解決手段】 容器本体1に密封される蓋体10の容器本体との接触箇所に、導電性の印刷インキまたはコーティング剤14をコーティングすることにより、マイクロ波照射に伴って印刷インキまたはコーティング剤付近のシーラント層を加熱融解して加熱によって上昇する内圧を逃がす電子レンジ対応容器において、印刷インキまたはコーティング剤を電気抵抗値が10-7Ωm以下の物質と電気抵抗値が104 Ωm以上の物質のブレンドにより構成して、ブレンド比率により発熱温度を調整すると共に、容器本体と蓋体との接触面を容器本体の上面に突設される環状突起3箇所として、環状突起の幅の設定により内圧を逃がすのに必要なシーラント層の融解のための加熱容量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品を電子レンジで加熱可能な容器内に収容された状態で流通に供する際に使用される電子レンジ対応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジに対応するカップ状の容器に食品を収容し、蓋体を被蓋・密封した状態で流通に供される容器詰め食品が公知である。この場合、食品を購入した消費者は蓋体を被蓋・密封した状態でそのまま電子レンジにかけて内部の食品を加熱するが、加熱による食品からの水分の蒸散により容器の内圧が高まり、容器が変形あるいは破裂し、レンジ内に食品等が散乱する事故の危険があった。
【0003】
この事故を防止するためには、予めその容器に前記加熱で発生する圧力を逃がすための弁体を装着する必要があるが、装着する手間、工程、費用などがかかり、一回限りで使い捨てされる包装用容器においては実用化し難い状況にあった。そのため、ヒートシールにより容器本体に密封される蓋体の容器本体との接触箇所に、マイクロ波により発熱可能な導電性発熱部を設けることにより、電子レンジによるマイクロ波照射に伴って上記導電性発熱部付近のシーラント層を加熱融解して容器内部の食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす電子レンジ対応容器が提案されていた(特許文献1、2)。
【特許文献1】実公平6−15881号公報
【特許文献2】特開2007−119064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術の発明においては、食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす構造として弁体を装着する必要がないので低コストで電子レンジ対応容器を実現できる。しかしながら、電子レンジの加熱時間を誤って長時間マイクロ波を照射すると導電性発熱部が高温になり過ぎて包材が発火したり、焦げて異臭が発生するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は以上の従来技術の問題点を解消するための電子レンジ対応容器を提供することを目的として創作されたものである。
【0006】
この発明はヒートシールにより容器本体に密封される蓋体の容器本体との接触箇所に、マイクロ波により発熱可能な導電性の印刷インキまたはコーティング剤をコーティングすることにより、電子レンジによるマイクロ波照射に伴って上記印刷インキまたはコーティング剤付近のシーラント層を加熱融解して容器内部の食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす電子レンジ対応容器において、マイクロ波を照射し過ぎても包材が焦げたり、発火するような温度まで上昇しないように導電性発熱部の属性を調整すると共に、シーラント層の融解が必要最小限のレベルで内圧により蓋体が容器本体から剥離するように機械的な属性を調整することに意を払ったものである。
【0007】
すなわち、この発明の電子レンジ対応容器は、印刷インキまたはコーティング剤を電気抵抗値が10-7Ωm以下の物質と電気抵抗値が104 Ωm以上の物質のブレンドにより構成してブレンド比率により発熱温度を調整可能とすると共に、容器本体と蓋体との接触面を容器本体の上面に突設される環状突起箇所として、環状突起の幅の設定により内圧を逃がすのに必要なシーラント層の融解のための加熱容量を調整可能とし、上記の印刷インキまたはコーティング剤の構成物質のブレンド比率と環状突起の幅の設定により、シーラント層を加熱融解して内圧を逃がす作用を実現しながら、焦げたり発火点に達するまでの過剰加熱を防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
よって、この発明の電子レンジ対応容器によれば、密封容器のまま電子レンジで加熱できるため、内容物の温度上昇に時間が比較的かからず、温められた気体が外部へ出ることもないので、香りや水分を消失することなく、食品が固くなったり、風味を失うという問題も起こさない。
【0009】
この場合、食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす構造として弁体でなく、マイクロ波により発熱可能な導電性の印刷インキまたはコーティング剤をコーティングすることにより、電子レンジによるマイクロ波照射に伴って上記印刷インキまたはコーティング剤付近のシーラント層を加熱融解する手段を採用しているので低コストで電子レンジ対応容器を実現できる。
【0010】
一方、印刷インキまたはコーティング剤を電気抵抗値が10-7Ωm以下の物質と電気抵抗値が104 Ωm以上の物質のブレンドにより構成して、ブレンド比率により発熱温度を調整することにより、誤ってマイクロ波を照射し過ぎても包材が焦げたり、発火するような温度まで上昇することを防止している。この場合、発熱温度を低下させると、シーラント層の融解度合い低下して、内圧により蓋体が容器本体から剥離しなかったり、剥離するまで時間を要するおそれがある。この発明においては、容器本体と蓋体との接触面を容器本体の上面に突設される環状突起箇所として、環状突起の幅の設定により内圧を逃がすのに必要なヒートシール箇所の融解のための加熱容量を調整可能としているので、ヒートシール箇所の融解が必要最小限のレベルで内圧により蓋体が容器本体から剥離するように機械的な属性を調整することによりこのような事態を防止している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1はこの発明の電子レンジ対応容器の一例を示す図である。図中符号1は内部に食品(図示せず)が収容される容器本体である。容器本体としてここではカップ状のものを図示しているが、形状はこれに限られないことは勿論である。上記容器本体1の開口部周側にはフランジ状の張り出し部2が延設され、この張り出し部の上面には環状突起3が突設され、この環状突起の上面が蓋体10との接触部となる(図2参照)。上記の環状突起として、ここでは幅が0. 5〜5. 0mm、高さが0. 3〜10. 0mmの範囲内のものを想定している。
【0012】
図2は蓋体10の構造を示す図である。蓋体10は基材層11の裏面にシーラント層13を積層した構成よりなり、基材層とシーラント層の間にはインキ層12が形成される。図中符号14はパートコートされるマイクロ波により発熱可能な導電性の印刷インキまたはコーティング剤であり、基材層11とシーラント層13の間にして容器本体1の環状突起3に接するに箇所付近に部分的にコーティングされる。ここでは、その面積は30mm2 〜3000mm2 の範囲内を想定している。
【0013】
前記の基材層11の素材としては例えばPE(ポリエチレンテレフタレート) が、またシーラント層の素材としてはLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)が挙げられるが、素材はこれらに限定されないことは勿論である。
【0014】
前記の導電性の印刷インキまたはコーティング剤において、電気抵抗値が10-7Ωm以下の物質としてカーボンブラックまたはアルミニウムなどが、電気抵抗値が104 Ωm以上の物質としてウレタン樹脂またはジルコニアーアルミナなどが想定されるが、物質はこれらに限定されないことは勿論である。この場合、ここでは電気抵抗値が10-7Ωm以下の物質は30〜75wt%の範囲にあり、かつ電気抵抗値が104 Ωm以上の物質は少なくとも25wt%以上を含み、好ましくは30wt%以上を含むことを想定している。
【0015】
図3は異なる積層構造の蓋体20を示す図である。ここでは基材層21の裏面にナイロンなどからなる中間層23を介してシーラント層24を積層した構成よりなる。基材層21と中間層23の間にはインキ層22が形成され、導電性の印刷インキまたはコーティング剤25はここにコーティングされる。
【実施例】
【0016】
以下、この発明の電子レンジ対応容器の具体的実施例を一覧表をもって開示する。
【0017】
【表1】

【0018】
以下は比較例である。
【0019】
【表2】

【0020】
比較例1: 電気抵抗の小さいカーボンブラックが多いため、マイクロ波が集中しすぎて、発火点に達するほど発熱温度が上昇する。
比較例2: 電気抵抗の小さいアルミニウムが多いため、マイクロ波が集中しすぎて、発火点に達するほど発熱温度が上昇する。
比較例3: 電気抵抗の小さいカーボンブラックがやや多いため、マイクロ波が集中しすぎて、発火点に達するほど発熱温度が上昇する。
比較例4: 環状突起の幅が大きいため、加熱容量が大きくなり、発火点に達するほど発熱温度が上昇する。また蒸気が抜け出す距離が長いため、シーラントが溶融して、一時的にシーラントが再溶着して、蒸気が抜け切れない場合がある。
比較例5: 電気抵抗の小さい物質(カーボンブラック)が少ないため、マイクロ波が集中せずに、シーラントが融解点に達しない。
比較例6: アルミナは、電気抵抗が比較的大きいため、マイクロ波が集中せずに、シーラントが融解点に達しない。
比較例7: シーラント面に塗布されていると、密封時におけるシーラントの溶融を直接影響を受け、発熱の安定性を欠く。
比較例8: コーティング剤が直接シールバーにあたると、その一部がシールバーに取られたりして、発熱の安定性に欠く。
比較例9: 環状突起の幅が狭く、シール圧力により突起が潰されて、結果的に蒸気が抜け出す距離が長くなるため、蒸気が抜け切れない場合がある。
比較例10:マイクロ波が集中する面積が小さすぎて、一時的にシーラントが再溶着して、蒸気が抜け切れない場合がある。
比較例11:マイクロ波が集中する面積が大きすぎて、所定の電子レンジ加熱時間内では、シーラントの融解点に達しない場合がある。一方、電子レンジ加熱時間が長過ぎた場合、発火点に達するほど、発熱温度が上昇する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の電子レンジ対応容器の被蓋前の示す斜視図。
【図2】同上、要部の断面図。
【図3】同上、異なる実施例の要部の断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 容器本体
3 環状突起
10 蓋体
11 基材層
13 シーラント層
14 導電性の印刷インキまたはコーティング剤
20 蓋体
21 基材層
23 シーラント層
25 導電性の印刷インキまたはコーティング剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシールにより容器本体に密封される蓋体の容器本体との接触箇所に、マイクロ波により発熱可能な導電性の印刷インキまたはコーティング剤をコーティングすることにより、電子レンジによるマイクロ波照射に伴って上記印刷インキまたはコーティング剤付近のシーラント層を加熱融解して容器内部の食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす電子レンジ対応容器において、印刷インキまたはコーティング剤を電気抵抗値が10-7Ωm以下の物質と電気抵抗値が104 Ωm以上の物質のブレンドにより構成して、ブレンド比率により発熱温度を調整可能とすると共に、容器本体と蓋体との接触面を容器本体の上面に突設される環状突起箇所として、環状突起の幅の設定により内圧を逃がすのに必要なシーラント層の融解のための加熱容量を調整可能とし、上記の印刷インキまたはコーティング剤の構成物質のブレンド比率と環状突起の幅の設定により、シーラント層を加熱融解して内圧を逃がす作用を実現しながら、過剰加熱を防止することを特徴とする電子レンジ対応容器。
【請求項2】
マイクロ波により発熱可能な導電性の印刷インキまたはコーティング剤において電気抵抗値が10-7Ωm以下の物質としてカーボンブラックまたはアルミニウムを、電気抵抗値が104 Ωm以上の物質としてウレタン樹脂またはジルコニアーアルミナを採用した請求項1記載の電子レンジ対応容器。
【請求項3】
マイクロ波により発熱可能な導電性の印刷インキまたはコーティング剤において電気抵抗値が10-7Ωm以下の物質が30〜75wt%の範囲にあり、かつ電気抵抗値が104 Ωm以上の物質が少なくとも25wt%以上を含み、好ましくは30wt%以上を含む請求項1または2記載の電子レンジ対応容器。
【請求項4】
容器本体の上面に突設される環状突起は、幅が0. 5〜5. 0mm、高さが0. 3〜10. 0mmの範囲内にある請求項1から3の何れかに記載の電子レンジ対応容器。
【請求項5】
マイクロ波により発熱可能な導電性の印刷インキまたはコーティング剤は、蓋体の最内面または最外面以外の積層内部に施される請求項1から4の何れかに記載の電子レンジ対応容器。
【請求項6】
マイクロ波により発熱可能な導電性の印刷インキまたはコーティング剤は、蓋体のヒートシール層中の容器本体の上面に突設される環状突起に接するに箇所付近に部分的に施されるパートコートであり、その面積は30mm2 〜3000mm2 の範囲内にある請求項1から5の何れかに記載の電子レンジ対応容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−67418(P2009−67418A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235938(P2007−235938)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(598095101)株式会社カナオカ (20)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】