説明

電子写真プリント配線板の作製方法

【課題】電子写真プリント配線板の作製方法において、感光層の帯電量が変化した基板では正常な静電潜像が形成できず、また静電潜像の形成に失敗した基板では良好な画像形成ができないため不良基板となり無駄になっていた。
【解決手段】電子写真プリント配線板の作製方法において、静電潜像形成前に熱処理を行う工程を設けることで前記課題が解決できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真プリント配線板の作製方法に関し、より詳しくは静電潜像を安定に形成でき、また一度静電潜像形成に失敗した基板でも容易に再生できる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器の軽薄短小化や多様化に伴い、プリント配線板においても高密度化、工期の短縮化が要求されている現在、レジスト材料として電子写真感光体の応用が検討されている。
【0003】電子写真法を利用したプリント配線板(以下、電子写真プリント配線板という)の作製方法としては、西独特許第1117391号、同第2526720号、同第3210577号、特開昭52−2437号、同57−48736号、同59−168462号公報等に提案されており、特開昭63−129689号公報では特にレーザーの波長に感度を有する電子写真感光体を利用したプリント配線板作製法が提案されている。電子写真法を利用して基板上にレーザー直接描画し画像を形成する例は、電子写真平版印刷版等に使用されている電子写真感光体で既に実用化されており、レーザー走査露光によりフォトマスクを使用せずにコンピューターから直接画像データを送り、高密度の画像を形成することが実用化されている。
【0004】電子写真法を利用したプリント配線板では、感光性フィルムや液状フォトポリマーと異なり、レジスト膜厚を少なく設定することが可能なことから、塗布乾燥条件、アルカリ現像条件、エッチング液の液まわり等に有利であり、細線再現性、生産性に優れている。また液状レジストであるためレジスト膜が基板の凹凸に追従し断線やクワレ等の欠陥を少なくすることが可能である。また、アルカリ現像液のメンテナンス性、塗布後基板の取り扱い性、スルーホール一括保護可能等々、他のレジスト材料に比べ優れた特性が多いため、実用化への期待が注がれている。
【0005】従来の電子写真プリント配線板の作成プロセスのフローチャートを図2に示す。まず、絶縁性基板上に金属導電層を設けた導電性基板上に感光層を形成する。次に感光層表面に配線パターンに沿った静電潜像を形成し、その後液体現像を行い配線パターン上にトナーのレジスト層を形成し、次にトナー画像部以外の感光層をアルカリ現像により溶出除去した後、トナー画像以外の金属導線層をエッチングにより除去し、最後にレジストであるトナーを剥離してプリント配線板が作製できる。
【0006】静電潜像の形成は感光層表面を帯電した後に配線パターンに沿った露光をする場合と、配線パターンに沿った露光をした後に感光層表面を帯電する場合の2通りの方法があり、後者として特願2000−269543号に記載の如きフォトメモリー性感光層による電子写真プリント配線板が提案されている。また該フォトメモリー性感光層用に好適に用いられるトナー現像装置として特願2000−379742号が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこのような電子写真プリント配線板の作製方法において、感光層の帯電量が変化し正常な静電潜像が形成できない場合がある。例えば湿気などの影響や、受光などの影響により帯電量が変化する場合が考えられる。このような場合、正常な静電潜像が形成できず、したがってトナー現像で良好な画像が得られない。また、帯電した感光層の表面電位は時間とともに減衰するため帯電してから次のトナー現像をするまでの時間間隔を一定にすることが重要である。しかしながら静電潜像形成からトナー現像までの間に装置トラブル等で処理が一端停止した場合など、静電潜像が正常に形成された基板であっても、装置復帰までの間に感光層の表面電位は減衰してしまうためその基板を引き続きトナー現像しても良好な画像は得られない。また一度静電潜像を形成した基板に再度正常な静電潜像を形成しようとしても感光層の帯電特性が復帰できないため基板を再利用することができず、これらの基板は廃棄処分となっていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】電気絶縁性基板に金属導電層を設けた導電性基板上に感光層を設け、感光層表面に静電潜像を形成し、液体現像により感光層上にトナー画像を形成させ、トナー画像部以外の感光層を溶出除去してレジスト画像を形成し、レジスト画像以外の金属導電層をエッチング除去する電子写真プリント配線板の作製方法に於いて、静電潜像形成前に熱処理の工程を設けることで前記課題が解決できる。
【0009】前記手段により、帯電量の変化した基板でも熱処理を行うことで正常な帯電量に復帰でき、また一度静電潜像を形成した基板でも熱処理を行うことで感光層の帯電量を復帰でき、再びこれらの基板を用いて良好な電子写真プリント基板が作製できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明の電子写真プリント配線板の作製方法について詳細に説明する。
【0011】図1に本発明の電子写真プリント配線板の作製フローチャートを示す。まず電気絶縁性基板に金属導電層を設けた導電性基板上に感光層を形成する。次に感光層の形成された基板を熱処理した後、感光層上に配線パターンに沿った静電潜像を形成し、その後液体現像を行い配線パターン上にトナーのレジスト層を形成する。次にトナー画像部以外の感光層をアルカリ現像により溶出除去した後、トナー画像以外の金属導線層をエッチングにより除去し、最後にレジストであるトナーを剥離してプリント配線板が作製できる。
【0012】以上の工程において静電潜像の形成に失敗した場合や、静電潜像形成途中又は静電潜像形成後トナー現像までの間に処理が停止した場合は、再度熱処理から処理を行う。この場合帯電している基板をすぐ熱処理しても良いし、又は帯電している基板に光を当てて電位を下げてから熱処理しても良い。いずれの方法で処理するかにより感光層の帯電量が復帰するまでの熱処理時間が変わる。短時間で復帰させるためには、後者の方法が良い。
【0013】また、本発明に係わる電気絶縁性基板としては、ガラス基材エポキシ樹脂板、紙基材フェノール樹脂板、紙基材エポキシ樹脂板、ガラス基材ポリイミド樹脂板、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、及びポリふっ化ビニルフィルム等が挙げられる。また、絶縁性基板の厚さは60μm〜3.2mm程度であり、プリント配線板としての最終使用形態により、その材質と厚さが選定される。
【0014】本発明に係わる金属導電層は、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニクロム、及びタングステン等が挙げられる。金属導電層の厚さは5〜35μmが一般的であるが、前処理時のソフトエッチングやメッキ処理により厚さは調整される。
【0015】本発明に係わる感光体は、一般的な電子写真感光体でも良いし、特願2000−366644号に記載の如き感光体であっても良い。
【0016】本発明に係わる感光層を導電性基板上に設ける手段としては、ディップコート法、バーコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スピナーコート法、電着法等が利用できる。
【0017】本発明に係わる熱処理は、感光層を帯電させた時の表面電位が感光層形成直後の適正な表面電位になるまで熱処理を行うことを条件とする。熱処理温度及び熱処理時間は熱処理前の感光層の表面電位によって変わるが、少なくとも50℃以上で30秒以上、望ましく80〜120℃で60秒以上である。
【0018】本発明に係わる電子写真プリント配線板の作製方法における露光方法は、以下のものが利用できる。すなわち、UV蛍光灯、キセノンランプ、高圧水銀灯等を光源として反射画像露光、透明陽画フィルムを通した密着露光、マスクを通した直接投影露光や、UVレーザー光による走査露光が挙げられる。走査露光を行う場合には、He−Neレーザー、He−Cdレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンイオンレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、窒素レーザー、色素レーザー、エキシマレーザー等のレーザー光源を発光波長に応じてSHG波長変換して走査露光する、あるいは液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用した走査露光によって露光する事ができる。
【0019】本発明に係わる電子写真プリント配線板の作製に於ける帯電手段としては、コロトロン方式およびスコロトロン方式等の非接触帯電方法、また導電ブラシ帯電や導電ロール帯電等の接触帯電方法等の公知の技術を用いる事ができ、本発明に係わる感光層が一様に帯電できれば何れの方式を採用しても良い。
【0020】本発明に係わる電子写真プリント配線板の液体現像装置は特願2000−379742号に記載の様な帯電部をともにもった様な液体現像装置を好適に用いる事ができる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0022】実施例1感光層の作製下記の処方1に基づいた塗液を調液し、両面銅張積層板(三菱ガス化学製、CCL−E170)を使用し、340mm×510mm(厚み0.6mm)の長方形状基板にディップ塗布法により塗布し、120℃で20分間乾燥を行い感光層を形成した後、一晩放置した。
【0023】


【0024】
【化1】


【0025】感光層の熱処理感光層を100℃で2分間熱処理を行った。
【0026】感光層の露光吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置;ユニレックURM300(ウシオ電機(株)製)を用いて、画像パターンを描画したフィルムマスクを用いて30秒間紫外線露光を行った。
【0027】性感層の帯電コロトロン方式のコロナ帯電機を用いて帯電を行った。
【0028】レジスト画像の形成特願2000−379742号に記載の液体現像装置を用いてトナー現像を行った。
【0029】アルカリ現像及びエッチング処理その後、トナー画像部以外の感光層を1%炭酸ナトリウム水溶液を用いたアルカリ現像により溶出除去し、トナー画像及び感光層からなる回路部レジストを形成した。さらに、残存するトナー画像と感光層をエッチングレジストとして、積層板に45℃に加熱された塩化第二鉄溶液をスプレー圧2.5kg/cm2で2分間スプレーする事により金属導電層をエッチング除去した。その後、10%水酸化ナトリウム水溶液でエッチングレジストを除去した。
【0030】以上の処理により電子写真プリント基板を作製した結果、良好な回路パターンが得られた。帯電後の未露光部表面電位をモニターしたところ230Vで適正な電位であった。
【0031】実施例2実施例1において、熱処理前に感光層基板を湿度80%の環境に1日間放置した以外は実施例1と同様にして電子写真プリント基板を作製した結果、良好な回路パターンが得られた。帯電後の未露光部表面電位をモニターしたところ230Vで適正な電位であった。
【0032】実施例3実施例1において、熱処理前に感光層表面を一度露光する作業を行った以外は実施例1と同様にして電子写真プリント基板を作製した結果、良好な回路パターンが得られた。帯電後の未露光部表面電位をモニターしたところ230Vで適正な電位であった。
【0033】比較例1実施例2において、熱処理を行わなかった以外は実施例2と同様にして電子写真プリント基板を作製したところ、全面にわたってトナーのカブリが生じ、良好な画像が得られなかった。帯電後の未露光部表面電位をモニターしたところ70Vと低く適正な電位ではなかった。
【0034】比較例2実施例3において、熱処理を行わなかった以外は実施例3と同様にして電子写真プリント基板を作製したところ、全面にわたってトナーのカブリが生じ、良好な画像が得られなかった。帯電後の未露光部表面電位をモニターしたところ60Vと低く適正な電位ではなかった。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、保存状態などの影響により感光層の帯電量が変化した基板でも良好な電子写真プリント基板が作製でき、また静電潜像の形成に失敗した基板でも再生することができるので基板の無駄が削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真プリント基板の作製プロセスのフローチャート
【図2】従来の電子写真プリント基板の作製プロセスのフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気絶縁性基板に金属導電層を設けた導電性基板上に感光層を設け、感光層表面に静電潜像を形成し、液体現像により感光層上にトナー画像を形成させ、トナー画像部以外の感光層を溶出除去してレジスト画像を形成し、レジスト画像以外の金属導電層をエッチング除去する電子写真プリント配線板の作製方法に於いて、静電潜像形成前に熱処理を行うことを特徴とする電子写真プリント配線板の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−309345(P2003−309345A)
【公開日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−113444(P2002−113444)
【出願日】平成14年4月16日(2002.4.16)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】