説明

電子写真機器用スポンジロールおよび電子写真機器用スポンジロールの製造方法

【課題】現像ロールや感光ドラムなどの相手部材に付着するトナーなどの掻き取り性を長期に渡って維持できる電子写真機器用スポンジロールおよび電子写真機器用スポンジロールの製造方法を提供すること。
【解決手段】軸体の外周に形成されたポリウレタンのスポンジ層14の複数のセル14bは連通しており、スポンジ層14はロール成形型内で発泡成形され、スポンジ層14の表面にはスポンジ層14のセル14bに連通して外部に開口しているスキン層14aが形成されており、下記の成分を含有する液をスポンジ層14の表面から進入させることにより、スポンジ層14の表面およびセル14bの内面のポリウレタンに、a成分のポリウレタン樹脂がb成分の架橋剤により結合されている。ただし、(a)水を分散媒とするポリウレタン樹脂のエマルジョン、(b)架橋剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用スポンジロールおよび電子写真機器用スポンジロールの製造方法に関し、さらに詳しくは、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真機器のトナー供給ロールやクリーニングロール等に用いて好適な電子写真機器用スポンジロールおよび電子写真機器用スポンジロールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真機器における複写は、次のようにして行われる。図8に示すように、トナーボックス100内のトナー102を、トナー供給ロール104を介して現像ロール106の表面に供給し、このトナー102を、さらに現像ロール106とトナー層形成ブレード108との摩擦帯電により帯電させる。そして、帯電ロール110により感光ドラム112の表面を帯電させ、露光により感光ドラム112の表面に形成された静電潜像に、帯電したトナー102を付着させてトナー像を形成し、これを転写部114を経由させることにより、複写紙116上に転写定着させる。
【0003】
静電潜像に付着されずに現像ロール106の表面に残ったトナー102は、トナー供給ロール104により掻き取られ、トナーボックス100内に回収されて再使用に供される。また、感光ドラム112の表面に残ったトナー102は、クリーニングロール118により掻き取られ、感光ドラム112表面は清浄化される。
【0004】
トナー供給ロールやクリーニングロールは、通常、軸体と、軸体の外周に形成されたスポンジ層とを有するスポンジロールで構成されている。スポンジ層は、ポリウレタンフォームにより形成されることが多い。
【0005】
この種のスポンジロールの製造方法としては、1)ポリウレタンフォームの原料をスラブ発泡あるいは型発泡して得られたフォーム材からロール形状に切り出したロール体に軸体を通した後、ロール体の表面を研磨して所定の寸法となるように仕上げを行う方法、2)ロール成形型内で軸体の外周にポリウレタンフォームの原料を発泡成形して、スキン層を表面に有するロール状のスポンジ層を形成する方法、3)2)で形成したスポンジ層の表面のスキン層を研磨してスポンジ層の表面にセルを開口させる方法、4)型内面にフッ素樹脂コーティングされたロール成形型内で軸体の外周にポリウレタンフォームの原料を発泡成形することにより、表面にセルが開口されたスポンジ層を形成する方法(特許文献1)、などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3881719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1)および3)の方法では、スポンジ層の表面を研磨する工程があるため、製造工程が煩雑である。また、研磨によりスポンジ層の表面が毛羽立つため、トナーの掻き取り量が安定しないことで画質に影響するおそれがある。また、スポンジ層の表面から毛羽が脱落すると、毛羽が電子写真機器内の異物となって画質に影響を与えたり、故障の原因となったりするおそれがある。2)の方法では、スポンジ層の表面にセルが開口していないため、トナーの掻き取り性能が低い。また、現像ロールや感光ドラムなどの相手部材との摩擦によりスキン層が破壊されやすいため、耐久性が低い。
【0008】
1)〜3)の方法に対し、4)の方法は、スポンジ層の表面を研磨しなくても表面にセルが開口しているため、トナーの掻き取り性能は高く、スポンジ層の表面の毛羽立ちによる画質への影響もない。しかしながら、長期に渡って電子写真機器を使用すると、スポンジロールのスポンジ層の表面にトナーの掻き取り時の圧縮応力が繰り返しかかることにより、表面のセルの骨格が破壊されやすく、これによりトナーの掻き取り性能が低下するという問題がある。
【0009】
この問題に対し、スポンジ層の耐久性を向上させることだけを考えるなら、例えば、セルの骨格の密度を上げることによりスポンジ層の強度を上げる方法や、材料の改良でポリウレタンフォームの物性(抗張力、伸び、硬さ)を上げることによりスポンジ層の強度を上げる方法などの方法を取り得る。しかしながら、これらの方法は、いずれもスポンジ層を硬くしすぎて、ロール成形型からスポンジ層を脱型できなくするおそれがある。したがって、このような方法を用いなくてもトナーの掻き取り性能を長期に渡って維持できる方策が求められる。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、現像ロールや感光ドラムなどの相手部材に付着するトナーなどの掻き取り性を長期に渡って維持できる電子写真機器用スポンジロールおよび電子写真機器用スポンジロールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用スポンジロールは、軸体と、前記軸体の外周に形成されたポリウレタンのスポンジ層とを有する電子写真機器用スポンジロールにおいて、前記スポンジ層の複数のセルは連通しており、前記スポンジ層はロール成形型内で発泡成形され、前記スポンジ層の表面には前記スポンジ層のセルに連通して外部に開口しているスキン層が形成されており、下記の成分を含有する液を前記スポンジ層の表面から進入させることにより、前記スポンジ層の表面およびセルの内面のポリウレタンに、a成分のポリウレタン樹脂がb成分の架橋剤により結合されていることを要旨とするものである。
(a)水を分散媒とするポリウレタン樹脂のエマルジョン
(b)架橋剤
【0012】
この際、前記a成分およびb成分を含有する液は、さらに導電剤を含有することが好ましい。
【0013】
一方、本発明に係る電子写真機器用スポンジロールの製造方法は、ロール成形型内で軸体の外周にポリウレタンを発泡成形して、連通する複数のセルで構成されるスポンジ層を形成するとともに、前記スポンジ層の表面に前記スポンジ層のセルに連通して外部に開口するスキン層を形成する工程と、前記ロール成形型から前記スポンジ層を脱型した後、下記の成分を含有する液を前記スポンジ層の表面から進入させて、前記スポンジ層の表面およびセルの内面を下記の成分を含有する液で覆う工程と、前記スポンジ層の表面およびセルの内面のポリウレタンに、a成分のポリウレタン樹脂をb成分の架橋剤により結合させる工程と、を有することを要旨とするものである。
(a)水を分散媒とするポリウレタン樹脂のエマルジョン
(b)架橋剤
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電子写真機器用スポンジロールによれば、スポンジ層の表面およびセルの内面のポリウレタンに、a成分のポリウレタン樹脂がb成分の架橋剤により結合されているから、スポンジ層のセルの骨格が補強されている。これにより、長期に渡って電子写真機器を使用した場合にも、表面のセルの骨格は破壊されにくくされたため、トナーの掻き取り性能を長期に渡って維持できる。そして、このスポンジ層は、ロール成形型で成形された後、a成分のポリウレタン樹脂により補強されるものであるから、成形されたポリウレタンが脱型前から硬すぎてスポンジ層が脱型できなくなることを回避できる。
【0015】
ここで、電子写真機器用スポンジロールは、その用途から、体積抵抗率を所定の範囲に制御することが多い。したがって、a成分およびb成分を含有する液がさらに導電剤を含有することにより、ロール全体の抵抗を下げて電気的にコントロールしやすくできる。これにより、種々の用途に応じて使用することができる。
【0016】
そして、本発明に係る電子写真機器用スポンジロールの製造方法によれば、スポンジ層の表面およびセルの内面のポリウレタンに、a成分のポリウレタン樹脂をb成分の架橋剤により結合させるため、スポンジ層のセルの骨格を補強できる。これにより、長期に渡って電子写真機器を使用した場合にも、表面のセルの骨格は破壊されにくくなるため、トナーの掻き取り性能を長期に渡って維持できる。そして、このスポンジ層は、ロール成形型で成形された後、a成分のポリウレタン樹脂により補強されるため、成形されたポリウレタンが脱型前から硬すぎてスポンジ層が脱型できなくなることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態に係るスポンジロールの周方向断面図である。
【図2】図1のスポンジロールのスポンジ層を拡大して模式的に示した図である。
【図3】図1のスポンジロールの硬度を測定する方法を説明する図である。
【図4】図1のスポンジロールの製造に好適なロール成形型を模式的に示した軸方向の断面図である。
【図5】図1のスポンジロールの製造工程を説明する図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係るスポンジロールの周方向断面図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係るスポンジロールの周方向断面図である。
【図8】電子写真機器における一般的な複写原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の構成について具体的に明らかにする。
【0019】
図1は、本発明の第一実施形態に係るスポンジロールの周方向断面図である。第一実施形態に係るスポンジロール10は、図1に示す構造が軸方向に連続する構成を備えている。図2は、図1のスポンジロール10のスポンジ層14を拡大して模式的に示した図である。図1に示すように、本発明の第一実施形態に係るスポンジロール10は、中実棒状の軸体12と、軸体12の外周にロール状に形成されたポリウレタンのスポンジ層14とにより構成されている。
【0020】
図2に示すように、スポンジ層14は、多数のセル14bにより構成されている。各セル14bは、セル壁となるセルの骨格14cにより形成されている。スポンジ層14はいわゆる連続気泡型の構造になっており、スポンジ層14の隣り合うセル14bどうしは連通している。スポンジ層14の複数のセル14bが連通しているため、セル14bに入り込んだトナーのセル14b間の移動が許容され、トナーの掻き取り量を多くできるとともに、トナーによるセル14bの詰まりを低減できる。
【0021】
スポンジ層14は、ロール成形型内で発泡成形されている。このスポンジ層14の表面には、薄皮状のスキン層14aが形成されている。このスキン層14aには、スポンジ層14の表面に存在するセル141bをスポンジ層14の外部に連通させる開口部14eが形成されており、スキン層14aは、スポンジ層14の表面のセル141bが存在する位置で表面のセル141bに連通して外部に開口している。すなわち、スキン層14aは、外部に開口している部分を有しており、穴あきの状態になっている。この開口部14eは、セル14bの存在によってスキン層14aの厚さが薄くなっている部分に形成されており、このため、スキン層14aの破れが発生しにくくなっている。このスキン層14aの開口部14eにより、スポンジ層14の表面に存在するセル141bは、スポンジ層14の外部に開口している。
【0022】
スキン層14aの開口部14eは、スポンジ層14の表面全体に多数分布している。開口部14eの開口径は、使用されるトナーの大きさに応じて所定の大きさに設定することができる。好適な開口径としては、100〜800μmの範囲内である。スポンジ層14の表面全体に占める開口部14eの面積割合は特に限定されるものではないが、トナーの掻き取り性能を確保するなどの観点から、20%以上が好ましい。より好ましくは30%以上である。また、スポンジ層14の表面の平滑性を確保するなどの観点から、90%以下が好ましい。より好ましくは80%以下である。
【0023】
スポンジ層14の表面全体およびセル14bの内面全体には、下記の成分を含有する液(以下、特定の含浸液ということがある。)をスポンジ層14の表面から進入させることにより、特定の含浸液のポリウレタン樹脂からなる塗膜16が形成されている。この塗膜16のポリウレタン樹脂(下記のa成分のポリウレタン樹脂)は、スポンジ層14の表面およびセル14bの内面のポリウレタンに、下記のb成分の架橋剤によって結合されている。
(a)水を分散媒とするポリウレタン樹脂のエマルジョン
(b)架橋剤
【0024】
この塗膜16によってスポンジ層14のセルの骨格14cが補強されるため、セル14bの破壊が起こりにくくなっている。このため、長期の使用によってもセル14bは破壊されず、トナーの掻き取り性能を長期に渡って維持できる。なお、塗膜16の厚さは、セルの空隙部14dを完全には埋めない程度の厚さとなるようにすれば良い。
【0025】
b成分(架橋剤)としては、カルボジイミド、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0026】
特定の含浸液は水を分散媒とするものであるため、ポリウレタンのスポンジ層14を膨潤させないで特定の含浸液を進入させることができる。すなわち、特定の含浸液を進入させたときにスポンジ層14の膨潤による変形が抑えられるため、スポンジロール10の寸法精度を維持することができる。
【0027】
特定の含浸液に含まれている樹脂はポリウレタン樹脂であり、スポンジ層14の樹脂もポリウレタンであるため、塗膜16のスポンジ層14の表面およびセル14bの内面への密着性にも優れている。
【0028】
a成分のポリウレタン樹脂としては、伸びが100〜800%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは200〜700%の範囲内、さらに好ましくは250〜650%の範囲内である。ポリウレタン樹脂の伸びが100%未満では、スポンジ層14の柔軟性が損なわれ、ロール硬度が高くなりすぎる傾向がある。一方、ポリウレタン樹脂の伸びが800%を超えると、柔らかすぎてスポンジ層14のセルの骨格14cを補強する効果が低い傾向がある。
【0029】
また、a成分のポリウレタン樹脂としては、100%モジュラスが1〜50MPaの範囲内であることが好ましい。より好ましくは2〜45MPaの範囲内、さらに好ましくは2.5〜40MPaの範囲内である。ポリウレタン樹脂の100%モジュラスが1MPa未満では、柔らかすぎてスポンジ層14のセルの骨格14cを補強する効果が低い傾向がある。一方、ポリウレタン樹脂の100%モジュラスが50MPaを超えると、硬すぎて所望の用途に用いられにくい傾向がある。
【0030】
ポリウレタン樹脂の伸びは、JIS K 6251に準拠して、JIS7号ダンベル(厚み1mm)の破断伸びにより測定できる。また、ポリウレタン樹脂の100%モジュラスは、JIS K 6251に準拠して、JIS7号ダンベル(厚み1mm)の100%伸長時の応力により測定できる。
【0031】
特定の含浸液は、上記a成分およびb成分に加えて、さらに導電剤を含有していても良い。スポンジロール10は、その用途から、体積抵抗率を所定の範囲に制御することが多い。したがって、a成分およびb成分を含有する液がさらに導電剤を含有することにより、ロール全体の抵抗を下げて電気的にコントロールしやすくできる。これにより、種々の用途に応じて使用することができる。導電剤としては、電子導電剤(カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は、導電性を意味する。))や、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)を挙げることができる。
【0032】
特定の含浸液は、a成分、b成分、導電剤の他に、他の添加剤を含有していても良い。配合可能な添加剤としては、増量剤、補強剤、加工助剤、硬化剤、架橋促進剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シリコーンオイル、滑剤、助剤、界面活性剤などを挙げることができる。
【0033】
特定の含浸液におけるb成分の配合割合は、a成分100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは1〜20質量部の範囲内、さらに好ましくは3〜15質量部の範囲内である。b成分の配合割合が0.1質量部未満では、a成分のポリウレタン樹脂の架橋が満足されないおそれがある。一方、b成分の配合割合が30質量部を超えると、スポンジロール10が硬くなりすぎるおそれがある。
【0034】
特定の含浸液における電子導電剤の配合割合は、a成分100質量部に対して、1〜50質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは5〜40質量部の範囲内、さらに好ましくは10〜30質量部の範囲内である。b成分の配合割合が1質量部未満では、スポンジロール10の体積抵抗率を所望の範囲まで低下させにくい傾向がある。一方、b成分の配合割合が50質量部を超えると、スポンジロール10の硬度が高くなるとともに、樹脂成分(a成分)の割合が少量になりすぎるため、電子導電剤が脱落しやすくなるおそれがある。なお、スポンジロール10の体積抵抗率は、1×10〜1×1010Ω・cmの範囲内に設定されることが好ましい。
【0035】
スポンジロール10は、用途に応じて所定の硬度であることが好ましい。例えばトナー供給ロールに用いる場合、硬度は100〜300gfの範囲内に設定されることが好ましい。また、例えばクリーニングロールに用いる場合、硬度は150〜850gfの範囲内に設定されることが好ましい。また、例えば滑剤などを塗布するための塗布用ロールとして用いる場合、硬度は500〜1000gfの範囲内に設定されることが好ましい。スポンジロール10の硬度は、ポリウレタンの原料の配合組成やロール成形型への投入量、スポンジ層14の厚さなどによって調整できる。なお、スポンジ層14の厚さは、通常、0.1〜10mmの範囲内に設定される。
【0036】
スポンジロール10の硬度(gf)は、図3に示す方法で測定することができる。すなわち、スポンジロール10の両端の軸体12でスポンジロール10を支持し、スポンジ層14の表面を板状押圧面を有する治具40(幅50mm、厚さ7mm)にて10mm/minの速度で押圧した時の、1mm変位時の荷重(g)で表すことができる。この数値が大きくなる程、スポンジロール10の硬度が高い、すなわち硬いことを示している。測定ポイントは、図3に示すように、軸方向の2ヶ所×周方向の90°毎に4ヶ所の、計8ヶ所とする。スポンジロール10の硬度は、その平均値である。
【0037】
スポンジ層14のポリウレタンの原料は、ポリオール成分およびポリイソシアネート成分を含むもので構成される。ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールなどを挙げることができる。ポリマーポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソブチレンポリオールなどを挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0038】
ポリイソシアネート成分としては、2官能以上のポリイソシアネートであれば特に限定されるものではない。例えば、2,4−(または2,6−)トリレンジイソシアネート(TDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0039】
スポンジ層14の形成材料には、さらに、必要に応じて、上記ポリオール成分およびイソシアネート成分に加えて、架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、界面活性剤、触媒、難燃剤、充填剤、導電性付与剤、帯電防止剤等を適宜に配合することができる。
【0040】
軸体12は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したもの等の金属、またはポリアセタール(POM)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックが挙げられる。また、軸体12の外周面には、必要に応じて、接着剤やプライマー等が塗布されていても良い。
【0041】
このような構成のスポンジロール10は、例えば、本発明に係る電子写真機器用スポンジロールの製造方法(以下、本製造方法ということがある。)により製造することができる。以下に、本製造方法について説明する。図4は、ロール成形型の一例を模式的に示した軸方向の断面図である。図5は、スポンジロールの製造工程を説明する図であり、図5(a)は、型成形により軸体12の外周にスポンジ層14を形成した状態を示したものであり、図5(b)は、スポンジ層14に塗膜16を形成した状態を示したものである。本製造方法は、ロール成形型を用いて軸体12の外周にスポンジ層14を形成する工程と、スポンジ層14を特定の含浸液で処理する工程とを有する。
【0042】
ロール成形型50は、図4に示すように、スポンジ層14の軸方向の長さに略等しい長さの円筒型52(パイプ)と、この円筒型52の両端に取り付けられてこの円筒型52の両端を閉塞するキャップ54とから構成されている。円筒型52内に軸体12を円筒型52と同軸に配置させた状態で、円筒型52の両端をキャップ54で閉塞し、型締すると、軸体12がキャップ54によって円筒型52と同軸に支持され、円筒型52内に目的とするスポンジロール10の最終ロール形状を与える成形キャビティ56が形成される。そして、このロール成形型50の成形キャビティ56内に、スポンジ層14の形成材料(ポリウレタンの原料および各種添加剤)を注入し、発泡硬化させてスポンジ層14を軸体12の周囲に一体成形した後、脱型する。
【0043】
ロール成形型50は、円筒型52の内面が撥水性を有することが好ましい。より具体的には、例えば、円筒型52の内面を少なくとも含む部分がフッ素樹脂で形成されているか、あるいは、円筒型52の内面に少なくともフッ素樹脂によるコーティング層が形成されていることが好ましい。これにより、発泡成形されるスポンジ層14の表面のスキン層14aに開口部14eを形成しやすい。前者の場合、例えば、ロール成形型50のうち、円筒型52のみがフッ素樹脂で形成されていても良いし、円筒型52やキャップ54を含むロール成形型50全体がフッ素樹脂で形成されていても良い。後者の場合、円筒型52の内面のみに、フッ素樹脂によるコーティング層が形成されていても良いし、円筒型52の全面に、フッ素樹脂によるコーティング層が形成されていても良いし、円筒型52やキャップ54を含むロール成形型50全体に、フッ素樹脂によるコーティング層が形成されていても良い。
【0044】
フッ素樹脂としては、公知のいずれのものも使用することができる。このようなフッ素樹脂としては、、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)3元共重合体(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン交互共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン交互共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)などを挙げることができる。
【0045】
そして、このような構成の円筒型52の内面は、例えばショットブラスト加工などの公知の粗面化方法により所定の表面粗さを有していることが好ましい。表面粗さ(Rz)としては、5〜20μmの範囲内であることが好ましい。表面粗さ(Rz)が5μ m未満では、発泡成形されるスポンジ層14の表面のスキン層14aに十分な大きさの開口部14eを形成しにくくなる。一方、表面粗さ(Rz)が20μmを超えると、スポンジ層14の脱型が難しく、スポンジ層14が破断しやすくなる。なお、表面粗さ(Rz)は、十点平均粗さであり、JIS B0601に準拠して周方向に円筒型52の内面を測定することにより算出できる。
【0046】
このような構成のロール成形型50を用いることにより、図5(a)に示すように、スポンジ層14の表面には、スポンジ層14の表面のセル141bが存在する位置で表面のセル141bに連通して外部に開口しているスキン層14aが形成される。そして、スポンジ層14の複数のセル14bは連通されたものとなる。これは、ロール成形型50の少なくとも型内面(成形キャビティ56内面)を構成するフッ素樹脂の撥水作用あるいは表面張力の作用に加えて、型内面の表面粗さにより、液状のポリウレタン原料の発泡成形にて生じるセル14bの型内面に最も近接する部分、換言すればスキン層14aの厚さが最も薄くなるセル14bの中央部相当部位に、ポリウレタン原料の不存在部分が生じ、これによって、形成されるスポンジ層14の表面のスキン層14aに開口部14eが生じるためと推察される。なお、開口部14eの大きさは、円筒型52の内面のフッ素樹脂の撥水性や表面粗さ(Rz)を調整するなどにより、調整することができる。
【0047】
ロール成形型50の型内面には、さらに、シリコーン樹脂あるいはフッ素樹脂などの離型剤が塗布されていても良い。これにより、ロール成形型50の型内面には、より一層の撥水作用あるいは表面張力の作用が付与され、より一層、スキン層14aに開口部14eを形成しやすくできる。
【0048】
ロール成形型50からスポンジ層14を脱型した後は、スポンジ層14を特定の含浸液で処理する。具体的には、スポンジ層14全体に特定の含浸液を含浸させる。含浸方法としては、スプレー方式によりスポンジ層14全体に特定の含浸液を含浸させる方法や、圧縮ローラーによりスポンジ層14を特定の含浸液に浸漬させる方法などを挙げることができる。スポンジ層14に含浸させた含浸液は、スポンジ層14の表面からセル14b内に進入される。スポンジ層14に含浸させた含浸液のうち、余分な含浸液は、絞り機などを用いて絞り処理を行うことにより、スポンジ層14から除去できる。これにより、所定の厚さで、スポンジ層14の表面全体およびセル14bの内面全体に、特定の含浸液のポリウレタン樹脂よりなる塗膜16が形成される。その後、必要に応じて、乾燥、熱処理を行うことにより、塗膜16のポリウレタン樹脂(上記のa成分のポリウレタン樹脂)は上記のb成分の架橋剤によって、スポンジ層14の表面およびセル14bの内面のポリウレタンに結合される。
【0049】
以上の構成のスポンジロール10によれば、スポンジ層14の表面およびセル14bの内面のポリウレタンに、a成分のポリウレタン樹脂がb成分の架橋剤により結合されているから、スポンジ層14のセルの骨格14cが補強される。これにより、長期に渡って電子写真機器を使用した場合にも、表面のセル141bの骨格は破壊されにくくされたため、トナーの掻き取り性能を長期に渡って維持できる。
【0050】
また、スポンジ層14の表面やセル14bの内面のポリウレタンに架橋させたa成分のポリウレタン樹脂が壁となり、スポンジ層14のポリオールなどの未反応成分や導電剤などの成分がスポンジ層14の表面から染み出すのが抑えられる。これにより、スポンジロール10が接触される感光体などの相手部材へのこれらの成分による汚染が防止される。
【0051】
そして、このスポンジ層14は、ロール成形型50で成形された後、a成分のポリウレタン樹脂により補強されるものであるから、成形されたポリウレタンが脱型前から硬すぎてスポンジ層14が脱型できなくなることを回避できる。
【0052】
また、スポンジロール10の製造に際し、型成形によりスポンジ層14を成形しており、スポンジ層14の表面を研磨する工程がないため、スポンジ層14の表面は平滑であり、スポンジ層14の表面が毛羽立つおそれがない。
【0053】
このような構成のスポンジロール10は、トナーの掻き取り性に優れることなどから、例えば、電子写真機器のトナー供給ロールやクリーニングロールなどに好適に用いられる。
【0054】
次に、本発明の第二実施形態に係るスポンジロール20について説明する。第二実施形態に係るスポンジロール20は、第一実施形態に係るスポンジロール10と同様、中実棒状の軸体12と、軸体12の外周にロール状に形成されたポリウレタンのスポンジ層14とにより構成されている。
【0055】
図6は、第二実施形態に係るスポンジロール20のスポンジ層14を拡大して模式的に示した図である。第二実施形態に係るスポンジロール20は、第一実施形態に係るスポンジロール10と比較して、スポンジ層14全体に特定の含浸液を含浸させるのではなく、スポンジ層14の表面のみに特定の含浸液を塗工している点で相違している。これ以外の構成については、第一実施形態に係るスポンジロール10と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
第二実施形態に係るスポンジロール20の製造に際しても、上記のロール成形型50を用いて型成形によりスポンジ層14を成形しており、スポンジ層14の表面を研磨する工程がないため、スポンジ層14の表面は平滑であり、スポンジ層14の表面が毛羽立つおそれがない。このため、スポンジ層14の表面のみに特定の含浸液を均一に塗工することができる。仮に、スポンジ層の表面を研磨するなどによりスポンジ層の表面が毛羽立つ場合には、スポンジ層の表面が平滑ではないため、スポンジ層の表面のみに特定の含浸液を均一に塗工することは困難である。
【0057】
この塗工方法により、特定の含浸液は、スポンジ層14の内部のセル14bまでは進入しないで、スポンジ層14の表面側の一部のセル14b内に進入することができる。より具体的には、スポンジ層14の表面から1mm程度の深さまでセル14b内に進入することができる。なお、スポンジ層14の表面への特定の含浸液の塗工は、例えば、ロールコート法あるいはリングコート法などにより行うことができる。
【0058】
このような相違点により、第二実施形態に係るスポンジロール20では、スポンジ層14の表面全体と、スポンジ層14の表面側の一部のセル14bの内面に、特定の含浸液のポリウレタン樹脂よりなる塗膜16が形成されている。
【0059】
このような構成の第二実施形態に係るスポンジロール20によれば、含浸液が塗工されていないスポンジ層14の内部はもとのポリウレタンの硬さを保っているため、含浸液の塗工による硬度の上昇が抑えられている。そして、このような構成においても、スポンジ層14の表面に存在するセル14bの骨格が補強されているため、長期の使用によってもセル14bは破壊されず、トナーの掻き取り性能を長期に渡って維持できる。
【0060】
次に、本発明の第三実施形態に係るスポンジロール30について説明する。
【0061】
図7は、第三実施形態に係るスポンジロール30の周方向断面図である。第三実施形態に係るスポンジロール30は、図7に示す構造が軸方向に連続する構成を備えている。第三実施形態に係るスポンジロール30は、第一実施形態に係るスポンジロール10と同様、中実棒状の軸体12と、軸体12の外周にロール状に形成されたポリウレタンのスポンジ層14とにより構成されている。
【0062】
第三実施形態に係るスポンジロール30は、第一実施形態に係るスポンジロール10と比較して、さらに、スポンジ層14の表面に凹凸形状が付与されている点で相違している。これ以外の構成については、第一実施形態に係るスポンジロール10と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
スポンジ層14の表面の凹凸形状は、軸方向に沿って形成されている複数の凸条18aと、凸条18aと凸条18aとの間に形成されている複数の溝部18bとにより構成されている。凸条18aは、断面で見ると台形状に形成されている。スポンジ層14の表面のスキン層14aは、この凹凸形状の表面に沿って形成されている。スキン層14aの開口部14eは、凸条18aの表面および溝部18bの表面の両方に形成されていても良いし、凸条18aの表面および溝部18bの表面のいずれか一方に形成されていても良い。
【0064】
スポンジ層14の表面の凹凸形状は、例えば、ロール成形型の型転写により形成することができる。具体的には、例えば、円筒型52の内面に軸方向に沿って溝あるいは凸条を形成したロール成形型を用い、このロール成形型にスポンジ層14のポリウレタン原料を注入し、発泡硬化させることにより、このような凹凸形状をスポンジ層14の表面に形成することができる。
【0065】
このような構成の第三実施形態に係るスポンジロール30によれば、スポンジ層14の表面の凹凸形状により、第一実施形態に係るスポンジロール10よりもさらにトナーの掻き取り性能を向上させることができる。
【0066】
スポンジ層14の表面の凸条18aの高さあるいは溝部18bの深さとしては、トナーの掻き取り性の向上などの観点から、100〜600μmの範囲内であることが好ましい。また、凸条18aの幅としては、150〜600μmの範囲内であることが好ましい。さらに、凸条18aと凸状との間の距離を表す凸条18aのピッチとしては、400〜1500μmの範囲内であることが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0068】
<ロール成形型の構成>
(ロール成形型1)
パイプ型を用い、型内面に相当する金属製パイプの内面にフッ素樹脂(PTFE)コーティングを施した後、さらにその内面をショットブラスト加工にて粗面化した(Rz=10〜20μm)。なお、表面粗さRzは、東京精密社製、「Surfcom 1400D」により測定した。
(ロール成形型2)
型内面の軸方向に複数の溝が形成されて型内面に凹凸形状を有するパイプ型を用い、型内面に相当する金属製パイプの内面にフッ素樹脂(PTFE)コーティングを施した後、さらにその内面をショットブラスト加工にて粗面化した(Rz=10〜20μm)。
(ロール成形型3)
パイプ型を用い、型内面に相当する金属製パイプの内面をショットブラスト加工にて粗面化した(Rz=10〜20μm)。なお、型内面に相当する金属製パイプの内面にはフッ素樹脂(PTFE)コーティングを施さなかった。
【0069】
<軸体>
直径5mmのSUM22製中実円柱状の軸体を準備した。
【0070】
<ロール体用のポリウレタン原料の調製>
ポリエーテルポリオール(三洋化成工業社製、「FA−718」、OH価=28)90質量部と、ポリマーポリオール(三井化学社製、「POP−31−28」、OH価=28)10質量部と、ジエタノールアミン0.5質量部と、第三級アミン触媒(花王社製、「カオライザーNo.1」)0.5質量部と、第三級アミン触媒(東ソー社製、「トヨキャットHX−35」)0.1質量部と、水2.0質量部と、シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング社製、「SZ−3601」)1.0質量部と、イソシアネート(住友バイエルウレタン社製、「スミジュールVT−80」、NCO%=44.5)30.1質量部と、を混合することにより、ポリウレタン原料を調製した。
【0071】
<ロール体の作製>
ロール成形型のパイプ型内に軸体を同軸に配置し、パイプ型の両端をキャップにて閉塞するとともに軸体を支持した。この状態において、成形キャビティ内に調製した上述のポリウレタン原料を所定量注入し、60℃×30分間の条件にて発泡硬化させ、軸体の周りにポリウレタンのスポンジ層(厚み3mm)が一体的に形成されてなるロール体を作製した。なお、成形キャビティ内へのポリウレタン原料の注入量を変えることによって、スポンジ層の硬度が異なるロール体を作製した。
【0072】
(実施例1)
<含浸液の調製>
水を分散媒とするポリウレタン樹脂エマルジョン(水系樹脂エマルジョン、第一工業製薬社製、「スーパーフレックス470」、表1のA−1)100質量部、導電性カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、「ケッチェンブラックEC300J」)20質量部、架橋剤としてカルボジイミド(日清紡績社製、「カルボジライトV−02」)5質量部を配合し、サンドミルを用いて分散処理することにより、含浸液を調製した。
【0073】
<スポンジロールの作製>
ロール成形型1を用いて硬度150gfのロール体を作製した。作製したロール体は、図2に示すように、スポンジ層の複数のセルが連通している。また、スポンジ層の表面には、スポンジ層の表面のセルが存在する位置でこの表面のセルに連通して外部に開口しているスキン層が形成されている。作製したロール体を、調製した上述の含浸液に浸漬した。次いで、含浸液からロール体を引き上げ、絞り機にかけた後、130℃で30分間加熱することにより、含浸液のポリウレタン樹脂をロール体の表面のポリウレタンに架橋させた。これにより、実施例1のスポンジロールを作製した。
【0074】
(実施例2〜3)
実施例1の含浸液において、架橋剤を表1に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜3のスポンジロールを作製した。
メラミン樹脂:住友化学社製「スミテックスレジンM3」
エポキシ樹脂:ナガセケムテックス社製「デナコール EX−841」
【0075】
(実施例4〜6)
硬度250gfのロール体とし、実施例1の含浸液において、水系樹脂エマルジョンを表1に記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4のスポンジロールを作製した。また、硬度350gfのロール体とし、実施例1の含浸液において、水系樹脂エマルジョンを表1に記載のものに変更し、導電剤を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、実施例5〜6のスポンジロールを作製した。
ポリウレタン樹脂(A−2):ADEKA社製「アデカボンタイターHUX561」
ポリウレタン樹脂(A−3):ADEKA社製「アデカボンタイターHUX350」
ポリウレタン樹脂(A−4):ADEKA社製「アデカボンタイターHUX320」
【0076】
(実施例7〜8)
ロール成形型1に代えてロール成形型2を用いた以外は、それぞれ実施例1、6と同様にして、実施例7、8のスポンジロールを作製した。実施例7〜8で作製したロール体は、図5に示すように、スポンジ層の複数のセルが連通している。また、スポンジ層の表面には、スポンジ層の表面のセルが存在する位置でこの表面のセルに連通して外部に開口しているスキン層が形成されている。さらに、スポンジ層の表面には、ロール成形型2の型内面の凹凸形状が転写されて形成された凹凸形状を備えている。
【0077】
(実施例9〜10)
含浸液にロール体を浸漬する方法に代えて、ロールコート法によりロール体の表面のみに含浸液を塗工した以外は実施例7と同様にして、実施例9のスポンジロールを作製した。また、硬度250gfのロール体とし、含浸液において水系樹脂エマルジョンを表1に記載のものに変更し、含浸液にロール体を浸漬する方法に代えて、ロールコート法によりロール体の表面のみに含浸液を塗工した以外は実施例7と同様にして、実施例10のスポンジロールを作製した。
【0078】
(比較例1〜4)
含浸液による処理を行わなかった以外はそれぞれ実施例1、4、9、10と同様にして、比較例1〜4のスポンジロールを作製した。
【0079】
(比較例5)
含浸液に架橋剤を配合しなかった以外は実施例4と同様にして、比較例5のスポンジロールを作製した。
【0080】
(比較例6)
含浸液の水系樹脂エマルジョンをアクリル系ラテックスに変更した以外は実施例4と同様にして、比較例6のスポンジロールを作製した。
アクリル系ラテックス:日本ゼオン社製「ニポールLX−852」
【0081】
(比較例7)
ロール成形型1に代えてロール成形型3を用い、実施例1と同様にしてロール体を作製した。次いで、ロール体のスポンジ層の表面のスキン層を研磨することにより、スポンジ層の外周表面にセルを開口させた。これにより、比較例7のスポンジロールを作製した。比較例7では、ロール体に対して含浸液による処理を行わなかった。
【0082】
(比較例8)
比較例7のスポンジロール(研磨品)を用い、実施例4の含浸液に浸漬した以外は実施例4と同様にして、比較例8のスポンジロールを作製した。
【0083】
(比較例9)
比較例7のスポンジロール(研磨品)を用い、含浸液の水系樹脂エマルジョンをアクリル系のラテックスに変更した以外は実施例4と同様にして、比較例9のスポンジロールを作製した。
【0084】
(比較例10)
比較例7のスポンジロール(研磨品)を用い、ロールコート法により表面のみに実施例4の含浸液を塗工した以外は実施例4と同様にして、比較例10のスポンジロールを作製した。
【0085】
作製したロール体およびスポンジロールの硬度を測定した。また、含浸液の水系樹脂エマルジョンの物性を調べた。さらに、トナーの掻き取り性、汚染性、追随性の項目について製品評価を行った。これらの結果を表1、2に示した。測定方法、評価方法は以下の通りである。
【0086】
(硬度)
図3に示すように、スポンジロールの両端の軸体でスポンジロールを支持し、スポンジ層の表面を板状押圧面を有する治具(幅50mm、厚さ7mm)にて10mm/minの速度で押圧した時の、1mm変位時の荷重(g)で表した。測定ポイントは、軸方向の2ヶ所×周方向の90°毎に4ヶ所の、計8ヶ所とした。スポンジロールの硬度(gf)は、その平均値とした。
【0087】
(伸び、100モジュラス)
ポリウレタン樹脂の伸びは、JIS K 6251に準拠して、JIS7号ダンベル(厚み1mm)の破断伸びにより測定した(23℃)。また、ポリウレタン樹脂の100%モジュラスは、JIS K 6251に準拠して、JIS7号ダンベル(厚み1mm)の100%伸長時の応力により測定した(23℃)。なお、ポリウレタン樹脂は、固形分濃度30質量%に希釈した水系ポリウレタン樹脂をガラス板に均一に塗布し、室温下で乾燥させ、厚み1mmのフィルムを作製した。このフィルムを120℃×60分の条件で乾燥させたものを用いた。測定結果を表3に示す。
【0088】
(掻き取り性)
市販のカートリッジにスポンジロールをクリーニングロールとして組み込み、当該カートリッジを市販のプリンター(ブラザー工業株式会社製、商品名「HL4040CN」)に装着した。当該プリンターを用いて5%印字画像を150,000枚印刷した。初期の掻き取り性は10枚印刷した時点で、耐久後の掻き取り性は150,000枚印刷した時点で、カートリッジを取り出し、スポンジロールで回収できなかったすり抜けたトナーを目視にて確認した。すり抜けたトナーを目視にて確認できなかった場合を掻き取り性が良好であるとして「◎」と評価し、目視では軽微に確認できるが画像には影響無いものを「○」、同様に目視で確認でき画像にも軽微な影響あるものを「△」、すり抜けたトナーが目視にて明らかに確認でき画像にも重度のクリーニング不良起因の画像不具合が発生したものを掻き取り性に劣るとして「×」と評価した。
【0089】
(塗膜のロール変形時追随性)
トナーを用いないこと以外は掻き取り性の評価と同様の条件で、150,000枚相当のベンチ空回転耐久試験を行った。試験後、含浸させた樹脂の塗膜16が剥離欠落しなかったものを「○」、軽微な剥離がみられたものを「△」、多量に剥離したものを「×」と評価した。
【0090】
(感光体汚染性)
市販のカートリッジにスポンジロールを組み込み、感光体に当接させ、温度40℃、湿度95%の環境下で5日間放置した。その後、当接部分をビデオマイクロスコープで観察し、感光体表面に変色、割れが無い場合を「○」、感光体表面に変色が軽微に観測できるが画像には影響ないものを「△」、感光体表面に割れが観測でき画像に影響ある場合に汚染有り「×」と判断した。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
実施例1〜10のスポンジロールは、スポンジ層の複数のセルは連通しており、スポンジ層の表面には、スポンジ層のセルに連通して外部に開口しているスキン層が形成されている。このため、初期のトナーの掻き取り性能に優れることが確認された。また、実施例1〜10のスポンジロールは、所定の含浸液を上記構成のスポンジ層の表面から進入させた後、含浸液のポリウレタン樹脂をロール体の表面のポリウレタンに架橋させているため、セルの骨格14cが補強されることにより、耐久後においても初期と同等のトナーの掻き取り性能が維持されることが確認された。さらに、ロール体の表面のポリウレタンに架橋させたポリウレタン樹脂により、ロール体中のポリオールなどの未反応成分や導電剤などの成分がスポンジ層の表面から染み出すのが抑えられて、接触される感光体などの相手部材への汚染が防止されていることが確認された。
【0095】
実施例どうしを比較すると、実施例1〜6に対し、実施例7〜10のスポンジロールは、図5に示すように、さらに、スポンジ層の表面に凹凸形状を有するため、実施例1〜6のスポンジロールと比べて、さらにトナーの掻き取り性能に優れることがわかる。
【0096】
また、実施例9〜10から、含浸液の処理がロールコートなどによりスポンジ層の表面のみで行われ、スポンジ層全体に行われない場合には、含浸液が塗工されていないスポンジ層の内部はロール体のポリウレタンの硬さを保っているため、含浸液の塗工による硬度の上昇が抑えられている。そして、このような構成においても、トナーの掻き取り性能に優れることが確認された。
【0097】
これに対し、比較例1〜4のスポンジロールは、含浸液による処理を行わないで、実施例のロール体をスポンジロールとして用いたものであるため、初期のトナーの掻き取り性能は実施例と同等であったが、耐久後にはトナーの掻き取り性能が低下している。また、比較例5のスポンジロールは、実施例のロール体に、架橋剤を配合していない含浸液を処理したものであるため、初期のトナーの掻き取り性能は実施例と同等であったが、耐久後にはトナーの掻き取り性能が低下している。さらに、比較例6のスポンジロールは、実施例のロール体に、ポリウレタン樹脂ではなくアクリル系ラテックスを配合した含浸液を処理したものであるため、初期のトナーの掻き取り性能は実施例と同等であったが、耐久後にはトナーの掻き取り性能が低下している。また、比較例6のスポンジロールでは、塗膜の剥がれも観察された。すなわち、塗膜の密着性に劣っている。
【0098】
そして、比較例7〜10のスポンジロールは、従来のいわゆる研磨品であるため、実施例と比較して、初期のトナーの掻き取り性能が劣っている。また、比較例10から、いわゆる研磨品では、表面が平滑ではないため、表面のみに含浸液を均一に塗工することができなかった。
【0099】
以上のとおり、比較例のスポンジロールでは、トナーの掻き取り性を長期に渡って維持することはできないことがわかった。また、比較例のスポンジロールでは、スポンジ層のポリオールなどの未反応成分や導電剤などの成分がスポンジ層の表面から染み出すのが抑えられにくいことがわかった。
【0100】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0101】
例えば上記実施形態において、軸体12は中実体で示されているが、軸体12は中空体であっても良い。また、第三実施形態のスポンジロール30において、スポンジ層14の表面の凸条18aは台形状(斜面を有する)で示されているが、四角形状などの多角形状や半球状であっても良い。
【符号の説明】
【0102】
10 スポンジロール
12 軸体
14 スポンジ層
14a スキン層
14b セル
14c セルの骨格
14d セルの空隙部
14e 開口部
16 塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周に形成されたポリウレタンのスポンジ層とを有する電子写真機器用スポンジロールにおいて、
前記スポンジ層の複数のセルは連通しており、
前記スポンジ層はロール成形型内で発泡成形され、前記スポンジ層の表面には前記スポンジ層のセルに連通して外部に開口しているスキン層が形成されており、
下記の成分を含有する液を前記スポンジ層の表面から進入させることにより、前記スポンジ層の表面およびセルの内面のポリウレタンに、a成分のポリウレタン樹脂がb成分の架橋剤により結合されていることを特徴とする電子写真機器用スポンジロール。
(a)水を分散媒とするポリウレタン樹脂のエマルジョン
(b)架橋剤
【請求項2】
前記a成分およびb成分を含有する液は、さらに導電剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用スポンジロール。
【請求項3】
ロール成形型内で軸体の外周にポリウレタンを発泡成形して、連通する複数のセルで構成されるスポンジ層を形成するとともに、前記スポンジ層の表面に前記スポンジ層のセルに連通して外部に開口するスキン層を形成する工程と、
前記ロール成形型から前記スポンジ層を脱型した後、下記の成分を含有する液を前記スポンジ層の表面から進入させて、前記スポンジ層の表面およびセルの内面を下記の成分を含有する液で覆う工程と、
前記スポンジ層の表面およびセルの内面のポリウレタンに、a成分のポリウレタン樹脂をb成分の架橋剤により結合させる工程と、を有することを特徴とする電子写真機器用スポンジロールの製造方法。
(a)水を分散媒とするポリウレタン樹脂のエマルジョン
(b)架橋剤

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−118273(P2012−118273A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267631(P2010−267631)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】