説明

電子写真用ベルトの製造方法

【課題】熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物からなる表面性および形状精度に優れた高品位なシームレス形状の電子写真用ベルトを低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】明細書中に定義される製造装置を用いた電子写真用ベルトの製造方法であり第1及び第2の円筒の対向する端部の間の間隙に環状ダイから熔融体を押し出し樹脂組成物を該環状ダイから該間隙まで連ならせる工程と該樹脂組成物を該対向する端部で挟持して円筒内の気体の連通を遮断する工程と該第1の円筒の内壁に筒状の層を形成する工程と該筒状の層の内面と該第2の円筒の内壁とで少なくとも形成される空間に気体を充填して該筒状の層を該第1の円筒の内壁に密着させる工程と該筒状の層の内側に密閉空間を形成する工程と該密閉空間に気体を充填して該筒状の層を第1の円筒の内壁にさらに密着させる工程と該筒状の層を固化させる工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームプリンター、複写機等の電子写真画像形成装置の中間転写ベルト、転写搬送ベルト、感光ベルト、定着ベルト等に用いられるシームレス形状の電子写真用ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザービームプリンターや複写機等の電子写真画像形成装置において中間転写ベルトや転写搬送ベルト等に用いられるシームレスベルトの製造方法が、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された製造方法では、筒状金型に内接している押出筒金型から熱硬化性樹脂の樹脂溶液を筒状金型内壁の下部から順に上部まで押し出して筒状の樹脂溶液の層を形成する。このとき、樹脂溶液の層の内部に気体を注入して膨張させ、その後、樹脂溶液の層を硬化させることによってシームレスベルトが得られる。この製造方法によれば、筒状金型の内壁に短時間に樹脂溶液を塗布し、且つ塗布スジ、うねり、樹脂溶液残りの発生を抑えることが可能である旨が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−237695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子写真画像装置は高画質かつ低価格化が進んでおり、シームレス形状の電子写真用ベルト(以下、単に、「電子写真用ベルト」ともいう)の品質および価格に対する要求が益々高まっている。
【0005】
そこで、本発明者は、特許文献1に記載の製造方法を、硬化反応プロセスが不要で、熱硬化性樹脂よりも安価な熱可塑性樹脂を主成分とする電子写真用ベルトの製造に適用することについて検討した。その結果、次のような課題を見出すに至った。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の製造方法では、樹脂溶液を筒状金型の底面に流下させて樹脂溶液の層を形成している。このとき、筒状金型の温度が熱可塑性樹脂の融点よりも低いと、熱可塑性樹脂を含む樹脂熔融体は、筒状金型の内壁に触れた時点で固化し始める。そのため、樹脂熔融体と筒状金型の底面との密着性が不十分となることがあり、筒状金型の底面に設けられた注入口より気体が注入されたとき、筒状金型の底面と樹脂熔融体の層との隙間から気体が入り込むことがある。この場合、樹脂熔融体の層の筒状金型の内壁への密着が妨げられ、筒状金型の内壁の表面粗さを樹脂熔融体の層の外面に確実に転写できなくなることがあった。
【0007】
そこで、本発明は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物からなる、表面性および形状精度に優れた高品位なシームレス形状の電子写真用ベルトを低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
中空の第1の円筒と、
該第1の円筒と同一の内径を有し、該第1の円筒と同軸を維持しつつ該第1の円筒に対して軸方向に相対的に移動可能な中空の第2の円筒と、
該第1の円筒及び該第2の円筒の少なくとも一方の内部空間を、該第1の円筒及び該第2の円筒と同軸を維持しつつ該第1の円筒及び該第2の円筒に対して軸方向に相対的に移動可能であり、かつ、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の熔融体を放射方向に吐出可能な環状ダイと、
少なくとも該第1の円筒と同軸に配置可能な二つのOリング、およびOリングを同心円状に伸縮可能なテーパ部材を有し、かつ、該第1の円筒の内壁に形成される該樹脂組成物からなる筒状の層の内部空間を、該第1の円筒と同軸を維持しつつ該第1の円筒に対して軸方向に相対的に移動可能な封止部材と
を具備する電子写真用ベルトの製造装置を用いてシームレス形状の電子写真用ベルトを製造する方法であって、
以下の(1)〜(7)の工程を有することを特徴とする。
(1)該第1の円筒と該第2の円筒とを間隔をあけて同軸に配置し、該第1の円筒及び該第2の円筒の対向する端部の間の間隙に、該第1の円筒及び該第2の円筒と同軸に配置した該環状ダイから該樹脂組成物の熔融体を押し出し、該樹脂組成物を該環状ダイから該間隙まで連ならせる工程、
(2)連ならせた該樹脂組成物を、該第1の円筒及び該第2の円筒の対向する端部で挟持して、第1の円筒内と第2の円筒内との気体の連通を遮断する工程、
(3)該気体の連通を遮断した状態で、該環状ダイを該第1の円筒及び該第2の円筒と同軸を維持しつつ該第1の円筒及び該第2の円筒に対して軸方向に相対移動させて、該第1の円筒の内壁に該熔融体を塗布して該筒状の層を形成する工程、
(4)該筒状の層の内面と、該第2の円筒の内壁とで少なくとも形成される空間に気体を充填し、第1の圧力で該筒状の層を該第1の円筒の内壁に密着させる工程、
(5)該筒状の層を形成した第1の円筒に該封止部材を嵌合し、該第1の円筒と同軸に配置した該二つのOリングを同心円状に押し広げて該筒状の層の内面に密着させて、該筒状の層の内側に、該筒状の層の内面に接する密閉空間を形成する工程、
(6)該密閉空間に気体を充填し、該第1の圧力より高い第2の圧力で該筒状の層を第1の円筒の内壁にさらに密着させる工程、
(7)該筒状の層を固化させる工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物からなる、表面性および形状精度に優れた高品位なシームレス形状の電子写真用ベルトを低コストで製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に用いる電子写真用ベルトの製造装置の一例を説明するための断面図である。
【図2】本発明に用いる電子写真用ベルトの製造装置の一例を説明するための断面図である。
【図3】本発明の電子写真用ベルトの製造方法の一実施形態を説明するための断面図である。
【図4】本発明の電子写真用ベルトの製造方法の一実施形態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔電子写真用ベルトの製造装置〕
本発明に係る電子写真用ベルトの製造方法では、中空の第1の円筒と、中空の第2の円筒と、環状ダイと、封止部材とを具備する電子写真用ベルトの製造装置を用いる。また、この製造装置は、アクチュエータや、加熱手段であるヒータや、各部材を軸方向(円筒の高さ方向)に相対的に移動させる手段であるガイド等を有することもできる。
【0012】
以下、この製造装置について詳しく説明する。本発明に用いる製造装置は、第1及び第2の円筒や、環状ダイや、封止部材等の各部材を必要に応じて同軸上に配置することができる。本発明の工程(1)〜(4)は、図1に示すように、同軸上に配置した第1の円筒と、第2の円筒と、環状ダイとを用いて行うことができ、工程(5)〜(7)は、図2に示すように、同軸上に配置した第1の円筒と、封止部材とを用いて行うことができる。
【0013】
図1に示す製造装置101は、第1の円筒である筒状金型4と、第2の円筒である把持部材7と、環状ダイ2と、ピストン3と、ガイド5と、ステージ6と、断熱ベース9と、ヒータ10とを有している。また、図1には、筒状金型4の内壁に、電子写真用ベルトとなる筒状の層1が形成されている状態が示されている。
【0014】
筒状金型4の上端部(紙面上方の端部)および下端部(紙面下方の端部)はいずれも開口しており、さらに下端はステージ6に支持されている。ステージ6は、ガイド移動部5bを介して軸方向(図1では鉛直方向)に延びるガイド5に支持されている。ステージ6はガイド5に沿って鉛直方向に移動し、それによって、筒状金型4は昇降可能となっている。また、筒状金型4の外周面には、ヒータ10が配置されており、このヒータによって筒状金型は所望の温度に調整可能である。
【0015】
筒状金型4の上方には、筒状金型4と同一の内径を有する把持部材7が、ガイド移動部5aを介してガイド5に支持された状態で、筒状金型4と同軸に配置されている。また、把持部材7は、ガイド5に沿って軸方向、即ち鉛直方向に、筒状金型4と同軸を維持しつつ筒状金型4に対して相対的に移動可能になっている。なお、把持部材7は、上端部に底(上底部)を有しており、筒状金型4の上端開口と対向するこの把持部材7の上底部には気体注入口7aが設けられている。気体注入口7aは、不図示の気体注入手段に連結されており、気体が気体注入口7aを通じて把持部材7の内側に注入可能となっている。なお、工程(4)において、気体を充填させることで筒状の層を筒状金型の内壁に密着させることができれば、把持部材7とは異なる部材で気体注入口を有する上底部が形成されていても良い。
【0016】
環状ダイ2は、筒状金型4および把持部材7の少なくとも一方の内部空間を、筒状金型4および把持部材7と同軸を維持しつつ筒状金型4および把持部材7に対して軸方向に相対的に移動可能である。環状ダイ2の最大外径は、筒状金型4および把持部材7の内径よりも小さく、筒状金型4の内壁に形成される筒状の層1の内径よりも小さい。また、環状ダイ2は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の熔融体を放射方向に吐出可能である。なお、ここでいう放射方向とは、円筒(筒状金型および把持部材)の半径方向にベクトルを有していれば良く、熔融体の吐出方向は、水平方向や、仰角方向や、俯角方向であってもよい。しかし、後述するように、筒状金型および把持部材で熔融体を挟持する観点から、水平方向であることが好ましい。
【0017】
図1には、断熱ベース9に支持された環状ダイ2が、筒状金型4の内壁に近接して配置された状態が図示されている。この環状ダイ2は、上記熔融体を放射状に吐出可能な環状スリットである吐出口2bと、熱可塑性樹脂組成物からなるペレットの投入口2cと、このペレットを熔融する流路2aとを有する。環状ダイの温度を樹脂組成物の融点以上に設定して、ペレットを熔融することができる。投入口2cから投入されたペレットは、環状ダイ2内の環状の流路2a内にて熔融され、吐出口2bから放射方向に吐出される。環状ダイ2の流路2aには、環状ダイ2の流路2aに嵌合する環状の押圧面3aを備えたピストン3が嵌合されている。ピストン3は、矢印61の方向に動いて環状ダイ2の流路2a内の熔融体を加圧することにより、この熔融体を吐出口2bから放射方向に押し出すことができる。環状ダイ2の流路2aには分岐点および合流点がなく、ピストン3が環状の押圧面3aを具備しているので、流路2aにおける圧力および流速分布を均一にすることができる。これにより、吐出口2bから熔融体が筒状金型4の内壁の全周に均一に吐出することができ、筒状の層1を形成する際に流れの不連続により発生する線、いわゆるウェルドラインの発生を避けることが可能となる。したがって、強度と厚みが均一なシームレス形状の電子写真用ベルトの製造が可能になる。
【0018】
図2に示す製造装置102は、筒状の層1が形成された筒状金型4と、ガイド5と、ステージ6と、ヒータ10と、封止部材を含む封止機構20とを有している。
【0019】
封止機構20は、封止部材と、アクチュエータ15および16とを有する。封止部材は、筒状金型4と同軸に配置可能な二つのOリング11および12と、これらのOリングを同心円状に伸縮可能なテーパ部材13および14と、封止部材ベース18と、気体注入口17とを有する。筒状金型4の内壁に形成される上記樹脂組成物からなる筒状の層1の内部空間に、封止部材、より具体的には、後述する円筒状の部材18cおよびOリング11、12が、筒状金型4と同軸に配置されている。また、封止部材、より具体的には二つのOリングが、筒状金型4の内壁に形成した筒状の層1の内側に嵌合されている。さらに、封止部材の封止部材ベース18は、ガイド移動部5cを介してガイド5に支持されており、ガイド5に沿って軸方向、即ち鉛直方向に、筒状金型4と同軸を維持しつつ筒状金型4に対して相対的に移動可能である。
【0020】
封止部材ベース18は、アクチュエータ15および16と繋がっており、Oリング11および12を支持する平面部18aおよび18bと、平面部18aと18bとを繋ぐ円筒状の部材18cとを有している。この円筒状の部材18cの側面に気体注入口17が設けてある。気体注入口17には不図示の気体注入手段が連結されており、筒状の層の内面に向かって気体を噴出可能となっている。テーパ部材は、筒状の層の内側であって、かつ筒状の層の両端(上端および下端)の軸方向の位置にそれぞれ配置することができ、Oリングはテーパ部材の円錐面に接触させて筒状の層の両端の軸方向の位置にそれぞれ配置することができる。図2では、筒状の層の内部空間に、Oリング11および12と、テーパ部材13および14と、平面部18aおよび18bと、円筒状の部材18cと、気体注入口17とが配置されている。Oリング11は、テーパ部材13と平面部18aとの間で張力を維持して支持されている。テーパ部材13は、封止部材ベース18に搭載されたアクチュエータ15に連結されており、アクチュエータ15により矢印63および64の鉛直方向へ移動可能となっている。テーパ部材13が矢印63の方向へ移動することでOリング11は同心円状に押し広げられ、テーパ部材13が矢印64の方向へ移動することでOリング11は同心円状に収縮することが可能となっている。同様に、Oリング12は、テーパ部材14と平面部18bとの間で張力を維持して支持されており、アクチュエータ16によりテーパ部材14が鉛直方向へ移動することで、同心円状に伸縮可能となっている。
【0021】
封止部材は、このOリングを同心円状に拡径させることにより、樹脂組成物からなる筒状の層の内側を封止し、筒状の層の内側に、筒状の層の内面に接する密閉空間を形成することができる。
【0022】
〔電子写真用ベルトの製造方法〕
次に、本発明に係る電子写真用ベルトの製造方法について説明する。なお、本発明に係る電子写真用ベルトの製造方法は、上述した製造装置を用いて電子写真用ベルトを製造する方法であり、下記(1)〜(7)の工程を有するものである。
【0023】
(1)第1の円筒と第2の円筒とを間隔をあけて同軸に配置し、第1の円筒及び第2の円筒の対向する端部の間の間隙に、第1の円筒及び第2の円筒と同軸に配置した環状ダイから熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の熔融体を押し出し、その樹脂組成物を環状ダイから間隙まで連ならせる工程。
(2)連ならせたこの樹脂組成物を、第1の円筒及び第2の円筒の対向する端部で挟持して、第1の円筒内と第2の円筒内との気体の連通を遮断する工程。
(3)気体の連通を遮断した状態で、環状ダイを第1の円筒及び第2の円筒と同軸を維持しつつ第1の円筒及び第2の円筒に対して軸方向に相対移動させて、第1の円筒の内壁に熔融体を塗布して樹脂組成物からなる筒状の層を形成する工程。
(4)筒状の層の内面と、第2の円筒の内壁とで少なくとも形成される空間に気体を充填し、第1の圧力で筒状の層を第1の円筒の内壁に密着させる工程。
(5)筒状の層を形成した第1の円筒に封止部材を嵌合し、第1の円筒と同軸に配置した二つのOリングを同心円状に押し広げて筒状の層の内面に密着させて、筒状の層の内側に、筒状の層の内面に接する密閉空間を形成する工程。
(6)密閉空間に気体を充填して、第1の圧力より高い第2の圧力で筒状の層を第1の円筒の内壁にさらに密着させる工程。
(7)筒状の層を固化させる工程。
【0024】
なお、本発明に用いる熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は特に限定されない。しかしながら、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロックまたはランダム共重合体、ゴムまたはラテックス成分が望ましい。また、熱可塑性樹脂としては、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体または、その水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリアミドイミドが望ましい。また、熱可塑性樹脂としては、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンが望ましい。また、熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルが望ましい。また、熱可塑性樹脂としては、エチレンテトラフロロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が望ましい。また、熱可塑性樹脂としては、アクリル、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体が望ましい。また、耐久性を考慮すると、熱可塑性樹脂としては、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されるものが望ましい。具体的には、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが特に好ましい。これらの熱可塑性樹脂は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0025】
また、製造される電子写真用ベルトの用途に応じて様々な添加剤を樹脂組成物に添加して機能を付与することができる。例えば、電子写真用ベルトを転写搬送ベルトや中間転写ベルトなどに使用する場合には、特に抵抗率制御を目的として無機添加剤を添加することが好ましい。無機添加剤としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、金属、金属酸化物の微粉末が挙げられる。金属としては、例えば、銅、スズ、アルミニウム、インジウム等を挙げることができる。また、金属酸化物の微粉末としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム等が挙げられる。無機添加剤としては、カーボンブラックが特に好ましい。このカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。また、滑り性の付与を目的として二硫化モリブデン等の潤滑性粒子を添加することもでき、硬度向上等を目的として二酸化ケイ素、酸化チタン等を添加することもできる。これらの添加剤は一種のみを用いても良く、二種以上を併用することもできる。なお、樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を主成分として含むことができる。
【0026】
続いて、図3および4を用いて本発明の各工程を詳しく説明する。図3(a)〜(c)は、上述した工程(1)〜(4)の各工程における製造装置101の状態を示す断面図である。また、図4(a)〜(d)は、上述した工程(5)〜(7)における製造装置102の状態を表す断面図である。
【0027】
・工程(1)
工程(1)では、筒状金型4と把持部材7の対向する端部の間に設けられた間隙30(図3(a)参照)に向かって、環状ダイの吐出口2bから熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の熔融体40を半径方向に吐出する。そして、樹脂組成物を、環状ダイの外周に、環状ダイ、より具体的には吐出口2bから間隙30まで連ならせる。この際、環状ダイ、筒状金型及び把持部材の配置は、間隙30に向かって環状ダイから熔融体40を吐出することができ、かつ連ならせた樹脂組成物41を筒状金型と把持部材とで挟持することができる位置から適宜選択することができる。しかし、樹脂組成物41を速やかに挟持する観点から、図3(a)のように、環状ダイ、筒状金型4および把持部材7を環状ダイの吐出口2bと間隙30とが同等の高さとなる同軸上の位置にそれぞれ配置することが好ましい。
【0028】
具体的な操作としては、まず、環状ダイの投入口2cより常温のペレット(樹脂材料)を投入し、このペレットを、環状ダイの流路2aで熔融し、熔融体とする。この際、ピストン3は、投入された熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物のペレットを熔融する空間を確保できる高さまで押し上げておくことができる。次に、ピストン3を押し下げることにより、熔融体を吐出口2bより間隙30に向かって連続して放射状に吐出する。なお、このように、投入口2cに投入した樹脂組成物のペレットを、環状ダイの流路2aで熔融する構成であっても良いし、樹脂組成物の熔融体を環状ダイに投入する構成であっても良い。
【0029】
・工程(2)
次に、工程(2)では、図3(b)に示すように、間隙30に吐出された熔融体40、即ち樹脂組成物41を筒状金型4と把持部材7とで挟持して、筒状金型内と把持部材内との気体の連通を遮断する。なお、図3に示す環状ダイは、流路2a、吐出口2bおよび投入口2cを有し、さらに中心部が軸方向に貫通しているが、中心部には不図示のパッキンが設けてあり、環状ダイの内部で内部空間50と51とは連通していない。このため、把持部材と筒状金型の対向する端部で樹脂組成物41を挟持することにより、筒状金型4の内部空間51と把持部材7の内部空間50との間での気体の連通を遮断することができる。
【0030】
なお、樹脂組成物41を筒状金型4と把持部材7で挟持する際に、筒状金型4のみを把持部材7に近づくように軸方向に移動(図3(a)では上昇)させてもよいし、把持部材7のみを筒状金型4に近づくように軸方向に移動(図3(a)では下降)させてもよい。また、筒状金型4および把持部材7の両者を互いに近づくように軸方向に移動させてもよい。すなわち、工程(2)では、筒状金型4及び把持部材7から選ばれる少なくとも一方を互いに近づく方向に移動させて樹脂組成物41を筒状金型4と把持部材7とで挟持することができる。
【0031】
また、筒状金型4と把持部材7とを予め適切な間隔をあけて同軸に配置しておくことで、筒状金型と把持部材を軸方向に移動させることなく環状ダイから間隙まで連なる樹脂組成物41を挟持することもできる。この場合、樹脂組成物を環状ダイから間隙まで連ならせると同時に、筒状金型と把持部材の対向する端部に樹脂組成物41が挟持される。このように、工程(2)は、工程(1)と並行して行っても良いし、工程(1)に引き続いて行っても良い。
【0032】
・工程(3)
次に、工程(3)では、筒状金型4と把持部材7とで樹脂組成物41の一端を挟持した状態、すなわち、筒状金型4の内部空間51と把持部材7の内部空間50との間での気体の連通を遮断した状態を維持する。その状態からさらに、ピストン3を所望の速度で動かし(図3では矢印61の方向へ押し下げて)、環状ダイから熔融体を半径方向に放射状に連続して吐出させつつ、筒状金型4及び把持部材7に対して環状ダイを軸方向に相対移動させる。これによって、熔融体を筒状金型4の内壁に塗布し、図3(c)に示すように、筒状の層1を筒状金型4の内壁に形成する。筒状の層1は、間隙30から環状ダイの吐出口まで連続する層により形成されている。
【0033】
なお、工程(3)では、筒状の層1を形成する際、環状ダイのみを軸方向に移動(図3では矢印61の方向に下降)させてもよいし、筒状金型4及び把持部材7のみを軸方向に移動(図3では矢印62の方向に上昇)させてもよい。また、筒状金型4および把持部材7と、環状ダイとを両者とも軸方向に移動させてもよい。すなわち、工程(3)では、筒状金型4及び把持部材7と、環状ダイの少なくとも一方を軸方向、より具体的には環状ダイを筒状金型4の把持部材7側の端部から筒状金型4のもう一方の端部へと向かう方向に相対移動させることによって、筒状の層1を筒状金型4の内壁に形成することができる。
【0034】
また、工程(3)では、ピストン3を動かす速度を吐出口2bからの熔融体の流出速度に対応させることができ、この流出速度と筒状金型4の相対的な移動速度を制御することによって、筒状の層1の厚みを制御することができる。
【0035】
・工程(4)
次に、上記の工程(3)に引き続いて、または工程(3)と並行して、筒状の層1を筒状金型4の内壁に第1の圧力で密着させる(工程(4))。具体的には、図3(c)に示すように、内部空間50に不図示の気体注入手段から気体注入口7aより気体を注入し、内部空間50を第1の圧力に保つ。この際、内部空間50は、筒状の層の内面と、把持部材7の内壁とで少なくとも形成される空間であり、より具体的には、筒状の層の内面、把持部材、および環状ダイによって囲まれた空間である。内部空間50と51との気体の連通は遮断されているため、筒状金型4の内壁と筒状の層1との隙間に気体が入り込まず、さらに内部空間50を第1の圧力で加圧することで、筒状の層1を筒状金型4の内壁に密着させることが可能となる。
【0036】
筒状の層1が筒状金型4の内壁に密着することで熔融体を用いて形成された筒状の層1は筒状金型4に熱を奪われ、筒状金型4の温度にならう。一般的に、熱可塑性樹脂を含む熔融体が冷却に伴って固化する際は、相変化による収縮が起こるため、筒状の層1は筒状金型内壁から剥がれやすくなる。筒状を維持しつつ、筒状金型内壁からの剥れを抑制する観点から、工程(4)では、筒状金型4の温度は、不図示の温度センサ及びその検出結果に基づいて制御可能なヒータ10によって樹脂組成物のガラス転移点以上に調整することが好ましい。なお、気体注入口7aから注入される気体は、いかなる気体でも構わないが、樹脂組成物の劣化を抑える上で、窒素ガスに代表される不活性ガスが好ましい。
【0037】
・工程(5)
次に、図4(a)〜(c)に示すように、工程(5)において、筒状の層1を形成した筒状金型4に封止部材を嵌合し、筒状金型4と同軸に配置したOリング11および12を同心円状に押し広げて筒状の層1の内側空間52を封止する。具体的には、まず、工程(1)〜(4)にて筒状金型4の内壁に筒状の層1を形成したのち、筒状金型4を、環状ダイ2および把持部材7と離間させ、筒状金型4と封止機構20とを同軸上に隣り合わせて配置する(図4(a))。次に、Oリング11および12が筒状の層1の内側へ配されるように、封止部材を筒状金型4に嵌合させる(図4(b))。封止部材、より具体的には、Oリング11および12が筒状の層1の内面に近接して配置されている。このとき、テーパ部材13および14は、必要に応じてそれぞれ矢印64および63の方向に移動させて、Oリング11および12が筒状の層1に触れないように配置する。
【0038】
続いて、アクチュエータ15および16にて、テーパ部材13および14をそれぞれ矢印63および64の方向へ移動させ、Oリング11および12を同心円状に押し広げて筒状の層1の内面に密着させる(図4(c))。これにより、筒状の層1と封止部材、より具体的には、筒状の層1、Oリング11、12、および封止部材ベース18の平面部18a、18b、円筒状の部材18cにより囲まれた内側空間52を封止し、密閉空間とすることができる。なお、Oリング11および12は、テーパ部材13および14とは円錐面で接触しており、封止部材ベース18とは水平面(平面部18aおよび18b)で接触している。これにより、Oリングの中心位置を変化させることなく容易に拡径させることができ、筒状の層1に軸方向の圧縮力が加わることを容易に防ぐことができ、筒状の層が座屈することを容易に防ぐことができる。さらに、Oリングを同心円状に押し広げることで、Oリングを筒状の層の両端内面に均一に密着させることができる。
【0039】
なお、工程(5)では、筒状金型4の温度は、不図示の温度センサ及びその検出結果に基づいて制御可能なヒータ10によって樹脂組成物のガラス転移点以上に調整することが好ましい。
【0040】
・工程(6)
次に、工程(6)において、不図示の気体注入手段から気体注入口17より気体を注入し(図4(d))、内側空間52を第1の圧力より高い第2の圧力に保つことで、筒状の層1を筒状金型4の内壁にさらに密着させる。なお、工程(6)では、アクチュエータ15および16を用いて、Oリング11および12を筒状の層1の内面に任意の力で密着させることができ、これにより、第2の圧力を任意に選択することができる。
【0041】
一方、工程(4)においては、熔融体が吐出口2bから流出してから筒状金型4に密着するまでの間は、何物にも支持されていないため、第1の圧力は諸条件に応じて設定することが求められる。諸条件としては、例えば、樹脂組成物41の粘度、膜厚、吐出速度等を挙げることができる。従って、諸条件に応じて設定する第1の圧力に対して、第2の圧力は任意に設定することが可能であり、筒状の層1を筒状金型4へ十分に密着させることが可能となる。具体的には、第1の圧力(ゲージ圧)としては、2kPa以上50kPa以下、特には、5kPa以上20kPa以下が好ましい。また、第2の圧力(ゲージ圧)としては、2kPaより大きく、200kPa以下、特には、50kPa以上150kPa以下が好ましい。なお、工程(4)同様、注入する気体はいかなる気体でも構わないが、樹脂組成物の劣化を抑える上で、窒素ガスに代表される不活性ガスが好ましい。また、工程(1)から(6)まで、筒状金型4の温度を樹脂組成物のガラス転移点以上に設定することができる。
【0042】
・工程(7)
次に、工程(7)において、筒状の層1を固化させる。工程(7)は、工程(6)に引き続いて、または工程(6)と並行して行うことができ、筒状金型4を不図示の冷却手段により冷却して、樹脂組成物のガラス転移点未満まで冷却することで、筒状の層1を冷却固化させることができる。
【0043】
最後に、筒状金型4の内壁に形成され、固化した筒状の層1を取り出して、シームレス形状の電子写真用ベルトを得る。具体的には、まず、気体注入口17からの気体の注入を停止し、アクチュエータ15および16によりOリング11および12を同心円状に収縮させ、封止機構20を筒状金型4から相対的に軸方向へ離れさせる。続いて、冷却固化した筒状の層1を筒状金型4から抜き去り、両端を所望の長さに切り取ることにより、電子写真用ベルトを得ることができる。なお、その際、電子写真用ベルトは軸方向にわたって均一な直径を有し、かつ、均一な物性であることが好ましいため、筒状の層1のうち、第2の圧力によって筒状金型4に密着された領域を切り出すことが好ましい。
【0044】
上述した製造工程により得られた電子写真用ベルトは、形状寸法および表面粗さが筒状金型4の形状および表面粗さが転写されるため、均一で斑の少ない電子写真用ベルトを低コストで製造できる。
【0045】
また、本発明により製造された電子写真用ベルトは、例えば、電子写真画像形成装置(レーザービームプリンタ、複写機等)の中間転写ベルト、転写搬送ベルト、感光ベルト、定着ベルト等に用いることができる。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
工程(1)〜(4)は、図1および図3に示す製造装置101を用い、工程(5)〜(7)は、図2および図4に示す製造装置102を用いて、電子写真用ベルトを製造した。
【0047】
前準備として、ポリエーテルエーテルケトン(商品名:VICTREX PEEK;ビクトレックス(Victrex)社製)にアセチレンブラック(電気化学工業社製)を混合し、2軸成形機にて均一に混練して、樹脂ペレットを製造した。この樹脂ペレットの体積抵抗率は1×1010〜5×1010Ωcmであった。この樹脂ペレットを構成する樹脂組成物のガラス転移点は約150℃、融点は約340℃であった。なお、ガラス転移点および融点は、示差式熱量計DSC2910(商品名、ティー・エイ・インスツルメント社製)により測定し、体積抵抗率は、抵抗率計MCP−HT450(商品名、三菱化学アナリテック社製)により測定した。
【0048】
筒状金型4は、内径が290mm、軸方向の長さ(高さ)が420mmである。また、筒状金型4の内壁の表面には、作製した電子写真用ベルトの表面が、所定の表面粗さ[十点平均粗さ(Rzjis、JIS B0601−2001)=0.4μm]を有するように、この表面粗さに対応した表面粗さを有するように表面処理した。また、不図示の温調手段により、筒状金型4の温度は、320℃に制御してある。
【0049】
把持手段7は、内径が290mm、軸方向の長さが250mmである。環状ダイ2のサイズは、最外径282mm、流路2aの幅10mm、吐出口2bの幅(スリット幅)1mmである。環状ダイ2の流路2aから外側に向かって斜め上方に貫通する投入口2cは、ピストン3を環状ダイの上方に動かした際に流路2aと連通するようにしてある。また、環状ダイ2は不図示の温調手段により約380℃に制御してある。封止部材のOリング11および12は、両者の間の軸方向の間隔を380mm隔てて配置しており、アクチュエータ15および16により各Oリングの外径は275〜295mmに同心円状に変形可能である。
【0050】
まず、図3(a)に示すように、ピストン3を上昇させ流路2aに空間を確保し、環状ダイ2の投入口2cより流路2aに常温のペレットを適量投入してペレットを熔融させ、熔融体40とした。つぎに、筒状金型4および把持部材7を、対向する両端部の間に10mmの間隙30をあけて配置すると共に、この間隙の位置と、環状ダイ2の吐出口2bの位置とが概略一致するように高さを調整した。
【0051】
次いで図3(b)に示すように、ピストン3を押し下げることにより、熔融体40を吐出口2bより間隙30に向かって連続して放射状に吐出した(工程(1))。そして、把持部材7を下降させて、間隙30に吐出された熔融体40、即ち樹脂組成物41を筒状金型4と把持部材7とで挟持した(工程(2))。
【0052】
次いで図3(c)に示すように、樹脂組成物41を筒状金型4と把持部材7とで挟持した状態で、ピストン3を0.2mm/秒で下降させつつ、筒状金型4および把持部材7を15mm/秒で上昇させ、筒状金型4の全長にわたり筒状の層1を形成した(工程(3))。また、工程(3)と同時に把持部材7の気体注入口7aから窒素ガスを注入し、把持部材7、筒状の層1、環状ダイ2で囲まれた内部空間50をゲージ圧10kPaに保ち、筒状の層1を筒状金型4の内壁に密着させた(工程(4))。
【0053】
その後、ピストン3を上昇させて熔融体40の流出を停止し、筒状金型4および把持部材7をさらに上昇させて吐出口2bから連続していた筒状の層1を切断した。このとき、筒状金型4は、樹脂組成物のガラス転移点以上である320℃に温調されていたため、筒状の層1は、冷却固化の収縮に伴う剥離が起きることなく筒状金型4の内壁に形成されていた。
【0054】
次いで図4(a)に示すように、筒状の層1を形成した筒状金型4を、環状ダイ2および把持部材7と離間させ、筒状金型4と封止機構20とを同軸上に隣り合わせて配置した。このとき、テーパ部材13および14をそれぞれ矢印64および63の方向へ移動させ、Oリング11および12を筒状の層1の内径よりも収縮させておいた。
【0055】
次いで図4(b)に示すように、Oリング11および12が筒状の層1の内側に配するように、筒状金型4に対して封止部材を嵌合させた。次いで図4(c)に示すように、テーパ部材13および14をそれぞれ矢印63および64の方向へ移動させ、Oリング11および12を同心円状に押し広げて筒状の層1の内面に密着させた(工程(5))。
【0056】
次いで図4(c)に示すように、気体注入口17より窒素ガスを充填して内側空間52をゲージ圧100kPaに保ち、筒状の層1を筒状金型4の内壁にさらに密着させた(工程(6))。続いて、圧力を維持したまま、筒状金型4を不図示の冷却手段により320℃から常温まで冷却し、筒状の層1を冷却固化した(工程(7))。
【0057】
最後に、上述した工程(1)〜(7)により得られた筒状の層1を筒状金型4から取り出し、上下端を切除して幅360mmの電子写真用ベルトを得た。
【0058】
上述した手順にて得られたシームレス形状の電子写真用ベルトは、肉厚100μmの安定した形状をしており、2本の平行ローラで張架しても歪みが見られなかった。また、流路に分岐および合流点がないことでウェルドラインの発生がなく、ベルト内の全面において均一な強度を示し、体積抵抗率としても面内に斑のない均一なシームレスベルトが得られた。更に、シームレスベルト表面の粗さは十点平均粗さ(Rz:JIS B0601−2001)0.4μmで全面にわたって均一であり、筒状金型4の内面粗さを良好に転写していることがわかった。また更に、2本の平行ローラで張架した状態で、ローラを回転させてベルトの寄りを確認したところ、1時間以上寄ることなく安定して回転しており、形状精度も高いことが確認された。
【符号の説明】
【0059】
1 筒状の層
2 環状ダイ
4 筒状金型
7 把持部材
11、12 Oリング
13、14 テーパ部材
30 間隙
40 熔融体
41 樹脂組成物
50 内部空間
52 内側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の第1の円筒と、
該第1の円筒と同一の内径を有し、該第1の円筒と同軸を維持しつつ該第1の円筒に対して軸方向に相対的に移動可能な中空の第2の円筒と、
該第1の円筒及び該第2の円筒の少なくとも一方の内部空間を、該第1の円筒及び該第2の円筒と同軸を維持しつつ該第1の円筒及び該第2の円筒に対して軸方向に相対的に移動可能であり、かつ、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の熔融体を放射方向に吐出可能な環状ダイと、
少なくとも該第1の円筒と同軸に配置可能な二つのOリング、およびOリングを同心円状に伸縮可能なテーパ部材を有し、かつ、該第1の円筒の内壁に形成される該樹脂組成物からなる筒状の層の内部空間を、該第1の円筒と同軸を維持しつつ該第1の円筒に対して軸方向に相対的に移動可能な封止部材と、
を具備する電子写真用ベルトの製造装置を用いてシームレス形状の電子写真用ベルトを製造する方法であって、
以下の(1)〜(7)の工程を有することを特徴とするシームレス形状の電子写真用ベルトの製造方法:
(1)該第1の円筒と該第2の円筒とを間隔をあけて同軸に配置し、該第1の円筒及び該第2の円筒の対向する端部の間の間隙に、該第1の円筒及び該第2の円筒と同軸に配置した該環状ダイから該樹脂組成物の熔融体を押し出し、該樹脂組成物を該環状ダイから該間隙まで連ならせる工程、
(2)連ならせた該樹脂組成物を、該第1の円筒及び該第2の円筒の対向する端部で挟持して、第1の円筒内と第2の円筒内との気体の連通を遮断する工程、
(3)該気体の連通を遮断した状態で、該環状ダイを該第1の円筒及び該第2の円筒と同軸を維持しつつ該第1の円筒及び該第2の円筒に対して軸方向に相対移動させて、該第1の円筒の内壁に該熔融体を塗布して該筒状の層を形成する工程、
(4)該筒状の層の内面と、該第2の円筒の内壁とで少なくとも形成される空間に気体を充填し、第1の圧力で該筒状の層を該第1の円筒の内壁に密着させる工程、
(5)該筒状の層を形成した第1の円筒に該封止部材を嵌合し、該第1の円筒と同軸に配置した該二つのOリングを同心円状に押し広げて該筒状の層の内面に密着させて、該筒状の層の内側に、該筒状の層の内面に接する密閉空間を形成する工程、
(6)該密閉空間に気体を充填し、該第1の圧力より高い第2の圧力で該筒状の層を第1の円筒の内壁にさらに密着させる工程、
(7)該筒状の層を固化させる工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−179793(P2012−179793A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43858(P2011−43858)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】