説明

電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物、電子写真装置の弾性部材、電子写真装置

【課題】環境変動、経時安定性、耐オゾン性を持つ電子写真ローラー、ベルト用の導電性ゴム材料。
【解決手段】ウレタンゴムと、エピクロロヒドリンゴムと、エチレン−酢酸ビニル共重合体とからなるゴム混合物を、含有し、 ウレタンゴムとエピクロロヒドリンゴムとの含有比率(質量比)が、95:5〜5:95の範囲内にあり、 かつ、ウレタンゴム及びエピクロロヒドリンゴムの合計含有量と、エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量との含有比率(質量比)が、100:10〜100:50の範囲内にあることを特徴とする電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物とする。そして、これを利用した導電性弾性部材、及び電子写真装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置において使用される、例えば、ベルト部材、ロール部材、発泡部材の材料として利用する弾性部材用エラストマー組成物に関するものである。また、これを利用した電子写真装置の弾性部材、及び電子写真装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置にあっては、転写ベルト、中間転写ベルト、定着ベルト、現像ベルト等のベルト部材や、転写ロール、定着ロール等のロール部材が使用されている。上記転写ベルトあるいは転写ロールは、感光体上に形成されたトナー像を被印刷体上に転写させる部材であり、上記定着ベルトあるいは定着ロールは、上記被印刷体上に転写されたトナー像を上記被印刷体上に定着させる部材である。
【0003】
したがって上記ベルト部材やロール部材は静電気によってトナーの離脱が阻害されないようにするために、導電性が付与されている。これら部材の体積固有抵抗率の常用対数値は装置のタイプによって、例えば、6〜8logΩcmあるいは11〜13logΩcmの範囲に設定されるのが一般的である。
【0004】
また、一般的に難燃性をもつハロゲン系エラストマー類では、NBR(アクリルニトリルブタジエンゴム)やCR(クロロプレン)などが使用されているが、オゾン劣化や脱ハロゲン化現象によりベルトクラックや汚染、侵食、腐食などが発生しやすく、その使用には問題がある。
【0005】
ところで、従来、印刷紙を感光体に接触させてトナーを転写させるとともに静電力によって印刷紙を搬送する転写ベルトやロールが知られている。上記ベルト部材やロール部材の材料としては、例えばクロロプレンゴム(CR)やアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが使用されている。CRやNBRは体積固有抵抗率の常用対数値が10〜12logΩcmであるから、これを6〜8logΩcmに調節するには、カーボン粉末やイオン導電剤やイオン性ポリマーのような導電性添加剤を混合する手段が用いられている。またかかる転写ベルトや転写ロールにおいては導電性のみならず、用紙の剥離や転写時の放電現象に伴うオゾン発生及びシステム内における帯電現象によるオゾン雰囲気下にさらされやすく2重結合を分子内に有するこれらの材料においてはベルト・ローラ寿命を磨耗や劣化・クラックなどによりさらに短くすることが懸念される(例えば特許文献1参照)
【0006】
また、金属塩加硫や硫黄加硫系では脱ハロゲン化が起こりやすく、ブリード現象やベルト張架・保持・ドライブロールの腐食などが起こりやすいため長期の保管時の取り扱いが困難である。さらに使用時の劣化による電気抵抗の劣化やイオン性物質の内部の蓄積により抵抗の安定性が失われ、感光体やロールでの圧接によるニップ痕や永久伸びによる変形、周長変化によるベルトスピード変動など十分な寸法維持が困難である。
【0007】
また、例えば、特許文献2に記載されているウレタン系導電性ゴム材料においてはその抵抗制御性が不十分なため、イオン配合量やカーボンブラック配合量に依存した適性の抵抗使用領域の再現性や安定性、さらにベルト間での抵抗バラツキなどが大きく、低分子のイオンと導電性粉末の配合のみではその相溶性及びブレンド性が大きく異なり、安定した抵抗保持が困難である。
【0008】
特に、カーボン粉末は上記ゴムには非常に混りにくく、多量のカーボン粉末をゴムに均一に混合することは困難である。その他カーボンブラックのわずかな分散性の違いでベルトの張架やロールのニップ量の変化に伴い抵抗が変化し、さらにオゾン劣化等によるゴム疲労に伴う抵抗が経時的に不安定にあるなどの問題が生じる。
【0009】
一方、イオン導電剤はゴムと均一に混練し易いが、吸湿性があり、多量に添加すると導電性が温度、湿度等の環境要因に影響され易くなる。更にイオン導電剤は均一に混合してもその後転写による電圧印加により除々にマイグレーションし易いと云う問題点がある。
【0010】
さらに、CRや各種NBR、H−NBR等に、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)或いはエピクロロヒドリンゴム(ECO)をブレンドした、2成分ブレンド系が提案されているが、該2成分ブレンド系においては、導電剤の偏りや分散不良が海島構造形成により発生しやすく、又CRにおいては、結晶性があることから、EPDMとの2成分ブレンド系物ではその相溶性が変化し電気抵抗の大幅な変化が経時的に見られることが判明している。更に、耐ゾン性については、H−NBRやEPDMなどは耐オゾン性は良好であるものもの難燃性が十分得られず、吸湿性の無機難燃材などを多量配合しないとカーボンブラックなどの添加で返って難燃性が悪化する場合もある(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平9−222809号公報
【特許文献2】特開平5−107932号公報
【特許文献3】特開平10−129876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、主たる本発明の目的は上述の問題点を解決し、本発明は、電気抵抗のバラツキが少なく、かつ湿度や温度等の環境変動や経時に対する安定性、及び耐オゾン性を悪化させることなく、電気抵抗の調整が容易な電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物、及びそれを用いて製造される導電性部材、並びに該導電性部材を備えてなる電子写真装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、以下の本発明により達成される。即ち、本発明は、
<1>ウレタンゴムと、エピクロロヒドリンゴムと、エチレン−酢酸ビニル共重合体とからなるゴム混合物を、含有し、
前記ウレタンゴムと前記エピクロロヒドリンゴムとの含有比率(質量比)が、95:5〜5:95の範囲内にあり、
かつ、前記ウレタンゴム及びエピクロロヒドリンゴムの合計含有量と、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量との含有比率(質量比)が、100:10〜100:50の範囲内にあることを特徴とする電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物。
【0013】
<2> 更に、導電剤を含有することを特徴とする<1>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<3> 前記導電剤が、カーボン粉末及び/又はイオン導電剤であることを特徴とする<2>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0014】
<4> 前記ゴム混合物100質量部に対する前記カーボン粉末の含有量が、1〜80質量部の範囲内であることを特徴とする<3>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<5> 前記カーボン粉末が、平均粒径60μm以下、DBP吸油量が180ml/100g以下のカーボン粉末であることを特徴とする<3>又は<4>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0015】
<6> 前記ゴム混合物100質量部に対する前記イオン導電剤の含有量が、0.1〜5質量部の範囲内であることを特徴とする<3>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<7> 前記イオン導電剤が、第4級アンモニウム塩であることを特徴とする<6>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0016】
<8> 前記第4級アンモニウム塩が、1分子中に少なくとも1個のフェニル基を含んでいることを特徴とする<7>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<9> 前記エラストマー組成物100質量部に、更に1〜200質量部の無機充填材が配合されていることを特徴とする<1>〜<8>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0017】
<10> 前記無機充填材の表面が、シランカップリング剤によって処理されていることを特徴とする<9>に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<11> 体積固有抵抗率の常用対数値が、500V印加時6〜13[logΩcm]である<1>〜<10>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
【0018】
<12> 前記エラストマー組成物100質量部に、更に0.1〜10質量部の有機化酸化物、及び5〜20質量部の共加硫剤が配合されていることを特徴とする<1>〜<11>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物である。
<13> ベルト形状であり、<1>〜<12>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されることを特徴とする導電性部材である。
<14> ロール形状であり、<1>〜<12>の何れか1つに記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されることを特徴とする導電性部材である。
<15> <13>又は<14>に記載の導電性部材を備えてなることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気抵抗のバラツキが少なく、かつ湿度や温度等の環境変動や経時に対する安定性、及び耐オゾン性を悪化させることなく、電気抵抗の調整が容易な電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物、及びそれを用いて製造される導電性部材、並びに該導電性部材を備えてなる電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物(以下、「本発明のエラストマー組成物」という。)は、ウレタンゴム(PU)と、エピクロロヒドリンゴム(ECO)と、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)とからなるゴム混合物を含有し、PUとECOとの含有比率(質量比)が、95:5〜5:95の範囲内にあり、かつ、PU及びECOの合計含有量と、EVAの含有量との含有比率(質量比)が、100:10〜100:50の範囲内にあることを特徴とする。EVAとしては酢酸ビニル配合量が40〜80%含有され,非ハロゲン系ゴムの難燃性をさらに向上させ,水酸化アルミニウムなどの無機難燃材との併用でV−0化対応可能である。
【0021】
PUは、可撓性に優れ、体積固有抵抗率が高く(500V印加時の常用対数値で概ね9〜12[logΩcm]である。)、一方、ECOは、体積固有抵抗率が低い(500V印加時の常用対数値で概ね5.5〜7[logΩcm]である。)。
そして、高い体積固有抵抗率を有するPUと、低い体積固有抵抗率を有するECOとを95:5〜5:95の比率で含有することにより、PUとECOの間の体積固有抵抗率(500V印加時の常用対数値で、5.5〜7[logΩcm]から11〜12[logΩcm])を任意に得ることができる。
【0022】
また、耐オゾン性が高く、永久ひずみによる変形、ベルト時の弾性回復性に優れるPUに対して、これよりポリエーテル成分を含み、PUとの相溶性の優れ、且つ電気抵抗の低いECOを混合して、共加硫することによって、均一に混合することができるので、電気抵抗のバラツキを小さくすることができ、劣化や電気抵抗値の安定な領域の制御が可能となり、加工性も向上する。
【0023】
尚、本発明において、体積固有抵抗率の測定は、アドバンテスト社製超高抵抗/微小電流計により三菱油化製HRプローブを用いて、JIS−K6911に準じて、測定環境23℃55%RH,印加電圧500v,10秒値で抵抗を計測して求めた。
【0024】
また、本発明のエラストマー組成物は、PUとECOとを95:5〜5:95の比率で含有させることにより、後述するカーボン粉末或いはイオン導電剤等の導電剤を含有させない、或いは少ない含有量であっても、後述する電子写真装置のベルト部材或いはロール部材として好ましい体積固有抵抗率(500V印加時の常用対数値で6〜13[logΩcm])が得られる。
この結果、カーボン粉末を大量に含有することによる混練・分散不均一が防げる。また、イオン導電剤を大量に含有することによる環境要因に対する不安定さや、マイグレーションが防げる。したがって、カーボン粉末を含有する場合においても、該カーボン粉末が均一に分散され、環境要因に影響されずマイグレーションを起さないエラストマー組成物が得られる。
【0025】
また、導電剤(特にイオン導電剤)の配合量を減少させることで、加硫時の反応阻害を抑え、低分子成分のブリード性も分子内のエーテル成分やヒドリン成分による静電的結合により安定的に取り込み抵抗の長期保持化も図れる。
【0026】
本発明のエラストマー組成物においては、PUとECOとの含有比率(質量比)は、90:10〜10:90であることが好ましく、80:20〜20:80であることがより好ましく、25:75〜75:25であることが更に好ましい。
【0027】
また、本発明のエラストマー組成物は、PU及びECOの合計含有量との含有比率(質量比)が、100:10〜100:50となる量のEVAを含有するが、EVAを含有することにより、耐オゾン性が向上する。更に、EVAを含有すると難燃性も向上する。
本発明のエラストマー組成物においては、PU及びECOの合計含有量と、EVAの含有量との含有比率(質量比)が、100:20〜100:40の範囲内にあることが好ましく、100:20〜100:30の範囲内にあることがより好ましい。
【0028】
ウレタンゴム(PU)としては、例えば、液状ポリエーテルウレタンやミラブルポリエステルウレタン系ゴム等が例示できる。具体的には、液状脂肪族ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールにTDIやポリメリックMDI等のイソシアネートを混合して120〜140℃で数時間キュアしてウレタンゴムを得る製法により遠心成形、射出成形等によるベルト状、ロール状に成形加工される。また、固形成形ミラブルウレタンゴムに添加剤、フィラー等のドライブレンドしてペレット化して押し出し成形,射出成形,トランスファー成形やプレス機により成形加工可能である。この場合は架橋に硫黄のほか,過酸化物,イソシアネートなど2種併用される場合もある。
【0029】
また、ウレタンゴムは、射出成形、カレンダー成形、押し出し成形、プレス成形、トランスファー成形などその形状、用途、方式によってシート状、ロール状、ベルト状などに成形できるように、アジペート系エステルタイプ、エーテルタイプ、カプロラクトンタイプ、ポリ炭酸タイプなどの処理を施し、原料ベースで、耐寒性、耐加水分解性、耐熱性、では導電性、難燃性、耐磨耗性などを付与してもよい。また、架橋材として、硫黄加硫、パーオキサイド加硫や専用のウレタン架橋材を用いることによりウレタンゴム中に網目構造ができ耐磨耗性、圧縮永久歪などがさらに改善できる。
【0030】
エピクロロヒドリンゴム(ECO)は、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アクリルグリシジルエーテル三元共重合体が挙げられる。
【0031】
エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)は、耐オゾン性、難燃性及び低発煙性に優れたゴム材料で、ミラブルウレタンゴムとのブレンド性も良好である。また、ビニールアセテート成分が共重合されている点で低融点でかつ結晶性も低いため柔軟性に富み共加硫も可能である。EVAの体積固有抵抗率(常用体数値)は、例えば、レバプレン(バイエル社製)の場合、7〜11[logΩcm]である。ハロゲンフリーで永久歪が少なく、フィラー類の高充填も可能である。
【0032】
本発明のエラストマー組成物は、体積固有抵抗率をより精度よく制御する為に、導電剤を添加してもよい。本発明においては、導電剤としてカーボン粉末及び/又はイオン導電剤を用いることが好ましい。
【0033】
カーボン粉末としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられ、平均粒径70nm以下でDBP吸油量が180ml/100g以下であることが好ましく、平均粒径60nm以下でDBP吸油量が150ml/100g以下であることがより好ましく、平均粒径50nm以下でDBP吸油量が100ml/100g以下であることがより更に好ましい。尚、DBP(ジブチルフタレート)吸油量とは、ASTM D2414−6TTに定義されており、カーボンブラック100gに吸収されるDBP量(ml)が多いか少ないかを表すものである。このDBP吸油量の多いカーボンブラックほど、長い連鎖結合を形成するものとされている。
また、本発明のエラストマー組成物にカーボン粉末を添加する場合には、ゴム混合物100質量部に対するカーボン粉末の含有量が、1〜80質量部の範囲内であることが好ましく、5〜50質量部の範囲内であることがより好ましく、10〜30質量部の範囲内であることが更に好ましい。
【0034】
イオン導電剤としては、例えば、含過塩素酸リチウムのエステル系可塑剤のような金属塩含有可塑剤;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルアミンアセテート、イミダゾリン誘導体アセテート、ポリアルキレンポリアミン誘導体、又はそれらの塩;オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアミノエチルアルキルアミドハロゲニド、アルキルピリジニウム硫酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲニド等のカチオン性界面活性剤等が挙げられ、この中でも第4級アンモニウム塩が好ましく、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドのような1分子中に少なくとも1個のフェニル基を含んでいる第4級アンモニウム塩がより好ましい。このような第4級アンモニウム塩は、フェニル基による立体障害のため、エラストマー組成物中でマイグレーションを起しにくい。
【0035】
また、本発明のエラストマー組成物が、イオン導電剤を含有する場合、ゴム混合物100質量部に対するイオン導電剤の含有量が、0.1〜5.0質量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜30質量部の範囲内であることがより好ましく、1.0〜20質量部の範囲内であることが更に好ましい。
【0036】
また、本発明のエラストマー組成物は、カーボン粉末とイオン導電剤とを併用する場合には、カーボン粉末:イオン導電剤の質量比率が1:50〜1000:1の範囲内であることが好ましく、10:1〜50:1の範囲内であることがより好ましい。
本発明のエラストマー組成物の電気抵抗値の調整は、主としてカーボン粉末の添加量で行い、イオン導電剤は微調整のために添加することが好ましい。
【0037】
本発明のエラストマー組成物は、難燃性、耐熱性、機械的強度等を組成物に付与するために、無機充填剤を更に配合することが好ましい。該無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、カーボン繊維、ケイ酸カルシウム、ベンナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填剤が好ましい。
【0038】
また、無機充填剤の表面がシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。無機充填剤の表面をシランカップリング剤で処理しておけば、無機充填剤はゴムとの親和性が向上し、より均一に混合し易くなる。
【0039】
本発明のエラストマー組成物に無機充填剤を更に配合する場合のエラストマー組成物100質量部に対する無機充填剤の配合量が、1〜200質量部の範囲内であることが好ましく、1〜100質量部の範囲内であることがより好ましく、5〜50質量部の範囲内であることが更に好ましい。
【0040】
また、無機充填剤が金属水酸化物の場合には、更に難燃性が付与される。
本発明のエラストマー組成物は、難燃度がはV−2以上であることが好ましい。
尚、難燃度(U−L規格)は、米国のUNDERWRITERS LABORATORIES INC.社が制定、認可している電気機器に関する安全性の規格であり、UL燃焼試験法による垂直燃焼試験により規定された規格である。難燃性の程度によりV−0、V−1、V−2がありV−0に近づくほど高難燃性材料であることを示している。燃焼時間が10秒以下から30秒以下で燃焼しながら落ちる溶融物がない場合でV−0〜V−1レベル,及び燃焼しながら落下する溶融物のある場合はV−2である。
【0041】
本発明のエラストマー組成物は、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジイソノニルフタレート(DINP)等のフタル酸系可塑剤;トリメリット酸トリ−2エチルヘキシル(TOTM)等のトリメリット酸系可塑剤;ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソノニルジオクチルアジペート(DINA)等の二塩基酸系可塑剤;トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリフェニルフォスフェート(TPP)等のリン酸系可塑剤;エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等の可塑剤、柔軟剤、その他老化防止剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0042】
本発明のエラストマー組成物は、後述するベルト形状又はロール形状の導電性部材の材料として用いる場合、更に加硫剤を添加することが好ましい。加硫剤としては有機過酸化物が好ましい。このような加硫剤としての有機過酸化物は、例えば、2、5−ジメチル(t−−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2、5ジメチル2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2、2−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジーt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルベンゾエート、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5トリミチルヘキサン、2、4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ケタールパーオキサイドなどが上げらる。さらに、加硫剤に加え、硫黄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイドそれに加えて所望なればテトラメチルチウラムモノスルフィド、ジ−O−トリグアニジン、チオウレア等を加硫促進剤として併用することも可能である。
【0043】
この加硫剤としての有機過酸化物の配合量は、エラストマー組成物100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜6質量部、さらに好ましくは0.3〜4質量部である。この配合量が0.2質量部未満だと架橋が不十分になり、引っ張り強さなどが低下することがあり、逆に6質量部を越えると伸びの落ちるゴムとなりやすいことがある。
【0044】
そして、さらに、加硫剤としての有機過酸化物と共に、共加硫剤を併用することがよい。共加硫材としてはサルファー、ヂペンタメチレンチウラムペンタスルフィド、メルカプトベンゾチアソール、GM、DGM、N−メチル、N‘−4ジニトロソアニリン、ジニトロソベンゼン、エチレングリコールジニトロソベンゼン、アリルメチルアクリレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート、ジビニルアジペ^ト、マレイカハイドレート、NN’−M−pヘニレンビスマレイミド、トリメチロールプロパンートリメチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリールミラミン、ヂフェニルグアニジン、ブトン150(液状ポリブタジエン)、液状SBR、アンチオキシダント2246などが挙げられる。その配合量はエラストマー組成物100質量部に対して5〜20質量部が好ましい。5質量部未満だと架橋密度が小さくなり、所望の剛性を得ることができないことがあり、また25質量部以上では架橋度が小さく、引き裂き力が著しく低下することが好ましくないことがある。
【0045】
本発明のエラストマー組成物の体積固有抵抗率は、500V印加時の常用体数値で6〜13[logΩcm]であることが好ましく、8〜11[logΩcm]であることがより好ましい。また、本発明のエラストマー組成物の体積固有抵抗率は、常用体数値で100V印加時と1000V印加時とではその差が3以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
本発明のエラストマー組成物は、更に熱可塑性樹脂を添加する場合には、該熱可塑性樹脂の添加量は、ゴム混合物100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。
【0046】
本発明のエラストマー組成物は、所望の量のPU、ECO、EVA、その他の添加物を混合することにより得られる。混合する方法は、特に限定されるものではないが、2本または3本ロール、加圧ニーダー、及び大スケール用ではバンバリミキサーを用いたゴム混練する方法があり、各種充填材やフィラーなどをゴムと合わせてニーダーやバンバリミキサーで予備混練しておき、成形使用時に添加材・加硫剤等の配合薬品をロールにより混合する方法が好ましく挙げられる。
【0047】
本発明の導電性部材は、既述の本発明の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されるベルト形状又はロール形状の導電性部材である。
本発明の導電性部材の製造方法としては、特に限定されず、例えば、射出成形、鋳型成形等によってベルト形状又はロール形状に成形する方法が挙げられる。この場合成形温度は120〜180℃に設定され、成形と同時に加硫が行われることが好ましい。
また、本発明の導電性部材は、上述のようにベルト形状又はロール形状に成形されたエラストマー組成物をそのまま導電性部材として用いてもよいし、更にベルト形状又はロール形状に成形されたエラストマー組成物を弾性層として、該弾性層上に、トナーに対する離型性の向上、オゾン劣化防止、摩擦係数の低下を目的として、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の表面層を1層又は2層以上設けてもよい。
更に、本発明の導電性部材がロール形状の場合は、SUS等の金属芯金にチューブ状に押し出し被覆成形する場合や予め型内にゴムシートを仕込んでおき、加圧熱プレスによりローラ状に成形し,表面研摩することによりローラ形状に成形する場合等からなる基材上に、
本発明のエラストマー組成物を形成してもよい。
【0048】
また、本発明の導電性部材は、ベルト形状又はロール形状に成形後(加硫後)のアスカC硬度(高分子計器社製アスカーC硬度計にて、荷重1Kg,測定温度23℃、にて測定した。)が30度〜80度の範囲内に、マイクロ硬度(高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD−1型を用いて23℃の条件下において測定した。)が30〜90度の範囲内にあることが好ましい。
本発明の導電性部材がベルト形状の場合には、厚みが0.2〜2.0mm、周長30〜2000mm、幅100〜600mmであることが好ましく。本発明の導電性部材がロール形状の場合には、本発明のエラストマー組成物による弾性層が基材の周りに形成され、外径が8〜30mm、弾性層厚みが0.5〜12mmであることが好ましい。
【0049】
本発明の電子写真装置は、上述の導電性部材を備えてなる電子写真装置である。本発明の電子写真装置は、本発明の導電性部材がベルト形状の場合には転写ベルトとして、本発明の導電性部材がロール形状の場合には転写ロールとして用いることが好ましい。
以下に、ベルト形状の本発明の導電性部材を備えてなる電子写真装置の1実施形態を図1を用いて説明する。図1は本発明の電子写真装置の1実施形態を説明するための概略構成図である。
図1において、符号10は感光ドラム(像担持体)であり、矢印A方向に回転するようになっている。そして、この感光ドラム10の周囲には、そのドラム表面(感光層)を一様に帯電する帯電器11、帯電された感光ドラム10に所定の画像情報に応じた光学像を露光して静電潜像を形成する像露光装置12、感光ドラム10の表面に現像剤を供給して静電潜像を現像してトナー像とする現像装置13、トナー像Tを記録用紙(最終記録媒体)Pに転写させるベルト方式の転写装置18、転写後の感光ドラム10に残留付着するトナー等を除去するクリーニング装置14等が配設されている。
【0050】
また、符号15は記録用紙Pを積層して収容する給紙トレイ、15aは給紙トレイ15から記録用紙Pを1枚ずつ送り出すフィードロール、16は給紙トレイ15から送り出された記録用紙Pを感光ドラム10と転写装置18の間に所定のタイミングで送り出すレジストロール、17は転写されたトナー像を記録用紙Pに定着させるロール方式の定着装置を示している。
【0051】
本実施形態において、転写装置18は、ベルト形状の本発明の導電性部材からなる転写ベルト(無端ベルト、最終転写媒体搬送ベルト)20と、この転写ベルト20を張架した状態で感光ドラム10と同期して矢印B方向に回転走行するように支持する支持ロール21,22と、転写ベルト20に転写トナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写バイアスを供給するバイアス電源(転写手段)23と、このバイアス電源23から出力される転写バイアスを転写ベルト20に印加する給電ロール(転写手段)24と、転写ベルト20に付着するトナー等を除去するクリーニングブレード25とでその主要部が構成されている。
【0052】
転写ベルト20は、2本の支持ロール21,22により張架された状態で感光ドラム10に当接して転写ニップ部(転写部分)Nを形成するように配設されている。少なくとも転写ニップ部Nの上流側の支持ロール21は接地された状態で配設されており、また2本の支持ロールのうちいずれか一方の支持ロールは転写ベルト20の駆動ロールになっている。(本実例では支持ロール21)は転写ベルト20の駆動ロールになっている。
【0053】
また、給電ロール24は、感光体ドラム1と当接する面を支持する二本の支持ロール20,21間に、転写ベルト20の裏面側に当接するように配設されている。バイアス電源23は、矩形パルスから構成されるバイアス波形からなる転写バイアスを出力するようになっている。
【0054】
更に、感光体ドラム1を駆動する駆動元となるモータ30及び転写ベルト20の支持ロールで且つ転写ベルト20の回転を行うドライブロールを駆動する駆動元となるモータ(ベルト駆動手段)31が装備されている。モータ30、モータ31は内部にエンコーダ等の回転状態を出力できる構造を備え、その出力は随時駆動コントローラ70に送られる。駆動コントローラ(回転駆動制御手段)70は、モータ30、モータ31から送られてくる回転状態をモニターし更に、二つのモータの回転速度を比較する比較回路を備え、その比較した値をもとにモータ30、モータ31の回転を制御している。
【0055】
一方、給電ロール24にバイアスを印加するバイアス電源23は、バイアス電源の制御部であるコントローラ(電界判断手段)19によって制御されている。給電ローラ24にはコントローラ19による制御によって、適確なタイミングで適正なバイアス値が印加される。給電ロール24に印加された電圧値はコントローラ19でモニターされ、その情報(転写電界)は前述の駆動コントローラ70に送られることとなる。
【0056】
次に本発明の電子写真装置の1実施形態における画像形成プロセスについて説明する。
先ず、回転する感光ドラム10の感光層を帯電器11により一様に帯電し、その帯電面に像露光装置12により原稿からの反射光を収束した光学像もしくは画像変調されたレーザビームからなる光学像が照射されて静電潜像が形成される。続いて、現像装置13からトナーが供給されて感光ドラム10の静電潜像のみに付着することによりトナー像Tが形成される。この例では、感光ドラム10は負極性に一様帯電されて反転現像用の静電潜像が形成された後、負極性に帯電したトナーにより現像されるため、負極性に帯電したトナー像Tが形成されるようになっている。
【0057】
続いて、このトナー像Tの形成タイミングにあわせて、給紙トレイ15からは所定のサイズや種類の記録用紙Pが1枚ずつフィードロール15aにて送り出され、レジストロール16によりタイミング調整された後に転写ニップ部Nにむけて送り出される。この転写ニップNを記録用紙Pの先端が通過する直前にコントローラ19からの指示に基づいて、バイアス電源23から所定の電圧(V0)又は所定の電流(I0)が印加される。
【0058】
これにより、記録用紙Pは、感光ドラム10と対向する転写ニップ部Nに送り込まれた後、転写ベルト20表面に静電吸着され感光ドラム10に対し適正な速度でこの転写ニップ部Nにおいて感光ドラム10からトナー像Tが静電的に転写される。トナー像Tが転写された記録用紙Pは、支持ロール22により支持される転写ベルト20の部分でそのベルトから分離して剥離された後、定着装置17に送り込まれてトナー像Tの定着処理が施され、最後に装置外部に排出される。以上により画像が形成される。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0060】
[実施例1〜10、比較例1]
下記表1に記載の配合の試料を、ニーダー混練(55Lスケール,加圧ニーダー使用、100℃,20分混練)し、プレス加圧成形(真空、50tプレス、160℃,15分成形)したことにより、厚み2mm、縦150mm、横200mmのテストピースを成形し、実施例1〜10及び比較例1のサンプルとした。
尚、表中の数字は質量部を表す。また、イオン導電剤であるトリエチルベンジルクロライド(和光純薬製)は、1質量部を水5mlに溶解させて用いた。
【0061】
【表1】

【0062】
得られたサンプルの表面にオーバーコート層(OC層)を表3及び表4に従った膜厚で形成し、下記の評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0063】
(機械特性)
−破断強度−
破断強度はJISK6301に準拠して測定した。
【0064】
−伸び−
伸びはJISK6301に準拠して測定した。
【0065】
−引裂強度−
引裂強度はJISK6301に準拠して測定した。
【0066】
−硬度−
硬度は、JISK7312に記載されているアスカーC硬度測定の方法に準拠して測定した。
【0067】
−永久伸び−
永久伸びは、JISK6301に準拠して100%伸張時(24時間)保持したあとの開放30分後の変化量を測定した。
【0068】
(電気特性)
−体積固有抵抗率−
アドバンテスト社製超高抵抗/微小電流計により三菱油化製HRプローブを用いて、JIS−K6911に準じて、測定環境23℃55%RH,印加電圧500v,10秒値で抵抗を計測して、体積固有抵抗率を求めた。その値を基に体積固有抵抗率の常用体数値を求めた。
【0069】
−低温低湿環境下(LL:10℃15%RH)と高温高湿環境(HH:28℃85%RH)との体積固有抵抗率の差−
低温低湿下と高温高湿下での体積固有抵抗率を上記の方法にて測定しその差を求めた。
【0070】
―体積固有抵抗率のバラツキ(最大抵抗Max−最小抵抗minとの差)―
上記体積抵抗率をベルト周方向・長手方向に各3点計測し、その間の電気抵抗値により算出した体積固有抵抗率の常用対数値の最大値(最大抵抗Max)と最小値(最小抵抗min)の差より、体積固有抵抗率の常用対数値のバラツキを算出した。
【0071】
(オゾン(O3)劣化試験)
得られたテストピースから、(JISK6259(旧JISK6301))に規定の長さ100mm×幅25mm×厚さ3mmの試験片を、40℃、オゾン濃度50pphmの条件下で、30回/分で30%伸張させ元に戻す(0%伸張)というサイクルを繰り返し、初期亀裂が入った時間により、耐オゾン性を評価した。
【0072】
【表2】

【0073】
これら結果から、本実施例においては、エピクロロヒドリンゴム増量にしたがって抵抗値は下がり、耐オゾン性は安定性を示した。なお、実施例6〜10においては難燃性V−2レベル(UL規格)を満たしており、導電性カーボンブラックの併用による環境変動の低減も見られ、同一カーボン配合でもゴム比率による抵抗調整能をしめした。
【0074】
一方、比較例においてはECOを添加しない系では耐オゾン性は低下し、ECO成分のない系では成形バラツキや分散不良による抵抗バラツキは悪化し、安定した抵抗は得られなかった。また、3成分系でも配合比率が本発明の範囲外のものは、同様な結果となった。
【0075】
このように、本実施例のエラストマー組成物を材料とするベルトやロール等の弾性部材は、その用途に望ましい機械的性質や電気的性質を有し、かつ湿度や温度等の環境変化や経時によってもその性質が殆ど変化しない。本発明のエラストマー組成物は、通常の2成分系ゴムでは得られなかった、経時変化や相溶性及び耐久性(劣化・磨耗・耐候性)、寿命がのび、高抵抗〜低抵抗まで広い範囲で活用できる導電性ゴム組成物とすることがでできる。
【0076】
また、ウレタンゴムでは抵抗制御が単独の場合、母材ウレタン樹脂の抵抗がたかく、低抵抗エラストマー(エピクロロヒドリンゴム)とブレンドし共加硫することによって、導電性フィラーの配合量を少なく保ち、かつ加工性に優れる。
【0077】
また、カーボン粉末と共に、イオン導電剤を併用することによりその電気的特性を安定化(印加電圧依存性や電気抵抗バラツキ)を促し、配合量を少なく保つことによって、加硫時の反応阻害を抑え、かつ低分子成分のブリード性も分子内エーテル成分やヒドリン成分による静電的結合により安定に分子内に取り込み抵抗の長期保持することができる。
【0078】
また、成形時の反応速度を有機過酸化物加硫での加硫均一性を促し、加工ムラを軽減し、硫黄加硫などによる反応速度調整も行うことにより、ゴムブレンド性の優れた抵抗ムラの少なくなる。
【0079】
また、イオン導電剤とカーブン粉末のみでのハイブリッド化においてはそのフィラー分散性が安定していないと練りスケールアップ時や成形サイズ、さらに配合誤差による抵抗フレと分散安定性が確保できず、電気特性の再現性が得られないため、十分抵抗の低いエピクロロヒドリンゴムとのブレンドではポリマーブレンドと共加硫剤の変容で安定した分散性とフィラー類の分散性もこれに合わせて安定化され、再現性やスケールアップによる影響を受けにくく常に電気抵抗や機械強度的にも安定した特性を示し、これに表面層処理を施したベルト構成の材料においてもコーテング層の変形や剛性に追従した機械特性の維持が可能となっている。
【0080】
ま、た共加硫剤を併用させることにより加硫均一性を保持し、加硫剤の偏りによる剛性ムラや研磨時の偏肉、凹凸の抑制、表面性の維持をより安定した条件で後加工も可能となる。
【0081】
そして、これまでのハロゲン系材料ではO3劣化によるベルト剛性の低下、亀裂、表面クラックなどが発生しやすくなり、2重結合や極性部位を有するゴム材料は長期安定性の確保は難しいのに対し、エーテル系ウレタンやポリエチレングリコール、ポリポロピレングリコールユニットをもつウレタンゴム及びエピクロロヒドリンゴムのブレンドゴムに、エチレン−酢酸ビニル共重合体を所定量配合することで、イオン導電性剤との静電的相互作用による電気特性(電圧依存性)が安定になり、かつ耐O3が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の電子写真装置の1実施形態を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
【0083】
10・・・感光ドラム、11・・・帯電器、12・・・像露光装置、13・・・現像装置、14・・・クリーニング装置、15・・・給紙トレイ、15a・・・フィードロール、16・・・レジストロール、17・・・ロール方式の定着装置、18・・・転写装置、19・・・コントローラ、20・・・転写ベルト、21,22・・・支持ロール、23・・・バイアス電源、24・・・給電ロール、25・・・クリーニングブレード、30、31・・・モータ、70・・・駆動コントローラ、T・・・トナー像、P・・・記録用紙、N・・・転写ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンゴムと、エピクロロヒドリンゴムと、エチレン−酢酸ビニル共重合体とからなるゴム混合物を、含有し、
前記ウレタンゴムと前記エピクロロヒドリンゴムとの含有比率(質量比)が、95:5〜5:95の範囲内にあり、
かつ、前記ウレタンゴム及びエピクロロヒドリンゴムの合計含有量と、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量との含有比率(質量比)が、100:10〜100:50の範囲内にあることを特徴とする電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物。
【請求項2】
ベルト形状であり、請求項1に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されることを特徴とする導電性部材。
【請求項3】
ロール形状であり、請求項1に記載の電子写真装置の弾性部材用エラストマー組成物を用いて製造されることを特徴とする導電性部材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の導電性部材を備えてなることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−84573(P2006−84573A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267312(P2004−267312)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】