説明

電子写真装置用ブレードの製法および電子写真装置用ブレード

【課題】電子写真装置に用いる部分的に異なる種類の多層化した合成樹脂製ブレード素材及びブレードを生産する方法、品質の安定した多層ブレード素材及びブレードを提供する。
【解決手段】電子写真装置用多層ブレードの製造法において、割り金型の一方の金型に、部分層を形成する液状合成樹脂をビード状に注型した後、金型を組み、ベース層を形成する液状合成樹脂を注型して、加熱硬化してブレード素材を形成するブレードの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂製の弾性ゴムを利用した電子写真装置用の多層ブレードに関する。電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等において、用いられるブレードおよびその製造方法に関し、特に、熱硬化型ポリウレタンからなるブレードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来電子写真方式でのトナークリーニングには、装置の小型化、コスト等のメリットのある合成樹脂製のブレードクリーニング方式が広く使用されている。
ブレードには長寿命(耐摩耗性)、低トルク化=消費電力の低下(低μ化)、小径トナーのクリーニング、使用環境範囲の拡大による高温での異音対策、低温でのクリーニング性低下の対策、高温下の長期圧接状態でのヘタリによるクリーニング性低下の対策等が求められる。
また近年、カラー化に伴う画質向上などの理由により略球形状のトナーである所謂球形トナーを用いる機種が増えており、この球形トナーはクリーニングエッジの楔上の隙間に入り込みやすく、エッジを押し上げてすり抜けやすくなってきている。
装置が高速化するに伴い、ますますそのクリーニングブレードに対する要求は複雑で厳しくなってきている。
【0003】
これらの要求に対して、ブレードを単一、単層の材料ですべてを満足することは困難であり、過去クリーニングブレードを複層構造にして、複数種類の材料で要求特性を分けて受け持たせることが好ましい方法であるとして、種々の方法が提案されてきている。
【0004】
クリーニングブレードを複層構造にする方法を分類して下記に示す。
表面コーティング法
表面をコーティング剤で処理し、改質したものが提案されている(例えば、特許文献1:特開2001−356566号公報)。これは、遠心成形法で成形した板状のポリウレタンシート(第1層)の表層に、液状の原料を塗布し、加熱硬化することにより第2層を積層したブレード用ゴム部材とした例である。このブレード素材の成形工程は2工程になり、コストがかかる。また、生産性が従来の単層のブレードより落ちる。
コーティング方法としてディッピング方式を用いる方法(例えば、特許文献2:特開2004−46145号公報)がある。この方法は、同じコーティング液を繰り返し使用するために、コーティング液のポットライフが長くなくてはならない。コーティング液の物性(粘度、固形分比率等)を一定に保つために設備が大規模なものになる。マスキングが必要であり、コーティング液の塗布、乾燥の前後にマスキングの着脱作業が必要となり、自動化が困難である。スプレー塗布方式は、コーティング液が使いきりでポットライフの点ではディッピングより優れるが、塗布効率が悪く、マスキングも必要となる。また温湿度等の環境により皮膜にばらつきを生じやすい。ディスペンサーを用いた塗布法では皮膜層の幅や厚みを均一にするのが難しい。特にクリーニングブレードに使用する場合、エッジ精度に問題を生じやすい。
【0005】
遠心成型法、貼り合わせ法
遠心成形で2層になるように成形する方法(例えば、特許文献3:特開2004−184462号公報 [0074]参照)がある。また、別々に作ったゴム部材を接着して張り合わせる方法(例えば、特許文献4:特開昭60−165682号公報)がある。別々に成形したゴム部材を張り合せる方法は、接着加工では均一に貼り合わせが難しい。遠心成形の場合、遠心成形機の回転ブレや、注入する材料の量のバラツキ、硬化反応速度の影響による平面性の不安定さ等により、各層の厚さ精度が低い。(通常遠心成形での厚さバラツキはレンジで0.1mmは発生する。)
遠心成形では全面2層のブレードとなるが、バラツキが大きいと、高硬度部分と低硬度部分の2層の設計などでは、高硬度部分のバラツキが圧接力のバラツキに繋がる。
【0006】
割型法
型組み後に別々の素材を注型する方法では、前後に接するものができるが、表面の一部に部分的に設けることは不可能である。ブレードとしては、物性変化が大きく、ブレードとして圧接力が高い・低い部分ができて安定しない。
【0007】
ゴムに別素材含浸・改質法
ポリウレタンブレードの処理不必要な部分にマスキングを行い、ポリシアノアクリレートやイソシアネート、水、シリコンなどをポリウレタンブレードに含浸させ、その後加熱等で反応硬化させ、ブレードエッジ近傍の質を変える(硬度を上げる、粘弾性特性を変える、摩擦係数を変える等)ことにより、クリーニングブレードとしての性能を改良する方法が提案されている(例えば、特許文献2:特開2004−46145号公報、特許文献5:特開2004−233818号公報)。
この製法では、工程が追加されコストがかかるばかりか、生産性に問題がある。品質の点でも、液状物を含浸させる場合、ゴムの深さ方向で浸透している量が変化してしまう。そのためマスキングしているとしても不必要な部分が処理されたり、処理されている濃度が深さ方向で傾斜していたり、ムラが生じたりしてしまう。微妙な調整が難しい。またゴムの膨潤現象を利用しているため、処理している部分は膨らみ、処理していない部分とのバランスがくずれ、エッジが波打つ、反る、変形するなどがおきやすい。
本出願人も多層ブレードについて例えば、特許文献6:特開平9−127846号公報、特許文献7:特開2002−214990号公報、特許文献8:特開平11−212414号公報に例示される表面コーティング法、遠心成型法、含浸法等を研究開発して提案してきた。
【0008】
【特許文献1】特開2001−356566号公報
【特許文献2】特開2004−46145号公報
【特許文献3】特開2004−184462号公報
【特許文献4】特開昭60−165682号公報
【特許文献5】特開2004−233818号公報
【特許文献6】特開平9−127846号公報
【特許文献7】特開2002−214990号公報
【特許文献8】特開平11−212414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電子写真装置に用いる部分的に異なる種類の多層化した合成樹脂製ブレード素材及びブレードを生産する方法を提供し、品質の安定した多層ブレード素材及びブレードを提供するものである。すなわち、各種ブレード素材及びブレードの製造方法の中でベースとなる合成樹脂と部分層の合成樹脂材質を大幅に改変することが可能な方法は、貼り合わせ法しかなく、他の方法ではベース樹脂の一部あるいは表面を改質する程度の改変であり、ブレードに機能を付与したり、クリーニング性を大幅に改善することは困難であった。しかるに、貼り合わせ法では、材質の異なる合成樹脂を接着加工により安定して均一に貼り合わせることが困難であり、一体成型と比べて異種合成樹脂間の界面における強度が劣るため、ブレードの耐久性が劣る。そこで、部分的に種類の異なる合成樹脂で2層化したブレード素材を容易に生産することが望まれており、本技術が完成すればブレードに新たな機能を付与したり、クリーニング性を大幅に改善することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる問題を解決するために本発明は、2種以上の異なる液状合成樹脂を成形用原料とする電子写真装置用ブレードを成形する方法において、部分層に相当する位置に部分層形成用の液状合成樹脂をビード状に塗布、注型した後、金型を組み、異なるベース形成用の液状合成樹脂を注型して、両樹脂を同時に加熱硬化して得られるブレード素材およびブレードを製造するものである。
この出願では、支持部材と結合していないテープ状の合成樹脂製弾性材をブレード素材と言い、支持部材と結合した状態をブレードと称する。
本発明の主な解決手段は次のとおりである。
【0011】
(1) 電子写真装置用多層ブレードの製造法において、割り金型の一方の金型に、部分層を形成する液状合成樹脂をビード状に注型した後、金型を組み、ベース層を形成する液状合成樹脂を注型して、加熱硬化してブレード素材を形成することを特徴とするブレードの素材の製造方法。
(2) 支持体を挿入して金型組みを行った後、ベースとなる液状合成樹脂を注型するブレード素材を支持体に一体成型することを特徴とするブレードの製造方法。
(3) 部分層形状を弧状の横断面形状に形成することを特徴とする(1)記載のブレード素材又は(2)記載のブレードを製造する方法。
(4) クリーニングブレードであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のブレード素材又はブレードを製造する方法。
(5) 現像ブレードであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のブレード素材又はブレードを製造する方法。
(6) 帯電ブレードであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のブレード素材又はブレードを製造する方法。
(7) 割り金型を用いるブレード素材又はブレードを製造する方法であって、原料の液状合成樹脂を一方の金型表面へビード状に注型・塗布する吐出ヘッドとベースとなる液状合成樹脂を吐出する吐出ヘッドとを有する合成樹脂供給手段、ビード状に注型・塗布する吐出ヘッドを定位置に固定してブレード用金型を長手方向に搬送するか、あるいはブレード用金型を固定してビード状に注型・塗布する吐出ヘッドを長手方向に搬送する手段を有するブレード素材又はブレードを製造する方法。
(8) 液状合成樹脂が、非溶剤型の熱硬化性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のブレード素材又はブレードを製造する方法。
(9) 異なる組成の液状の合成樹脂原料を一体に成形硬化積層してなる電子写真装置用ブレード素材又は電子写真用ブレード。
(10) 液状合成樹脂として、非溶剤型の熱硬化性ポリウレタンを用いることを特徴とする(9)記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
(11) 長手方向に弧状の部分層とそれ以外のベース層を異なる合成樹脂素材としたことを特徴とする(9)又は(10)に記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
(12) 長手方向に弧状の部分層は、ニップ部であることを特徴とする(10)又は(11)に記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
(13) 異形断面であることを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
(14) ブレードは、クリーニングブレード現像ブレード、帯電ブレードのいずれかであることを特徴とする(9)〜(13)のいずれかに記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
(15) (9)〜(14)のいずれかに記載の電子写真装置用ブレード素材と金属製支持部材とを電子写真装置用ブレード素材形成用液状樹脂の硬化に伴い、一体成型した電子写真装置用ブレード。
【発明の効果】
【0012】
1.多層を形成する液状合成樹脂が一体的に硬化形成されるので、ブレード素材に用いる異種合成樹脂間の接着強度を大幅に向上させることが可能である。
2.金型表面で作りこまれるのでブレードの当接部分の平滑性及びエッジ精度が得られ、クリーニング性が改善できた。
3.芯金と一体成型した多層ブレードを製造することにより、支持部材と多層ブレード、精度のよいブレードが得られる。
4.多層化はビート状の塗布、注型位置をコントロールすることによりエッジ部あるいは中間部など自由度を高くすることができる。
5.エッジ部とベース部の特性を自由に変更できるので、機能分離したブレード設計が可能となった。
6.電子写真装置用のトナークリーニングブレード、現像ブレードあるいは帯電ブレードを提供することができた。
7.多層化した合成樹脂の加熱成型と金属製支持部材の接合を同時に行うことが可能となり、製造工程が簡易でかつ、正確に行うことができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、異なる組成の合成樹脂を多層にした合成樹脂製のブレード素材の製造方法、合成樹脂製のブレード素材、特に、電子写真装置に用いられるトナークリーニング用のブレードあるいは現像用のブレード、帯電ブレードの素材及び支持体と一体に接合したブレード及びその製法に適している。
部分層に相当する位置に熱硬化性樹脂である液状合成樹脂を吐出するヘッドを移動させるか、あるいは金型を移動させることにより熱硬化性樹脂をビード状に塗布するように注型した後、割り金型を組み、ベースとなる熱硬化性樹脂を注型して加熱炉で一体成形する。一体成形されたブレード素材は、割り金型を解体して取り出して所定のサイズに裁断されてブレードとして用いられる。金型を組むときに支持体の一部をキャビティ内部にセットして、ベース形成用樹脂を注型すると支持体とブレードゴム体を一体的に接合できる。
【0014】
<工程>
本発明におけるブレードの製造方法は以下に示す金型の循環工程となる。工程を図4に示す。
まず、金型を清掃して熱硬化性樹脂の接する部分の表面に離型剤を塗布する(A,B)。必要に応じて、部分層対応樹脂塗布前に、あらかじめ、金型に金属製等の支持部材を固定する(C)。この際、ブレード素材の連続製造を意図して必要ならば支持部材となる金属を所定位置に挿入されているか否かを検出するための支持部材の検出装置を備えていてもよい。ついで、熱硬化性樹脂液を合成樹脂液吐出ヘッドからビード状等部分層に対応する樹脂を一方の割り金型表面に塗布する(D)。しかる後に、ブレード形状の割り金型を組み(E)、ベース部材である熱硬化性樹脂を注型する(F)。次に、この熱硬化性樹脂液を充填した割り金型を熱架橋するオーブンに搬送しながら液状合成樹脂を加熱硬化させて異なる組成の液状合成樹脂を一体成型する(G)。加熱硬化時において金型に固定化されている金属製支持部材は、合成樹脂と支持部材は一体化して加熱硬化される。その後、割り金型を解体してブレードを取り出す(H,I)。ブレード素材を取り出した後の金型は再度清掃することにより液状合成樹脂を充填して繰り返し使用する(J)ことができるという循環工程である。
【0015】
割り金型の清掃は、いかなる方法で行っても良いが、具体的には、特開平11−114972号公報で提案されているように所定の位置に清掃面を上に向けて載置された金型の上面に、平面ブラシを当接してその成形金型の長さ方向に往復運動させて前記成形金型の表面を清掃する装置を用いても良い。清掃された金型の表面には、熱硬化した合成樹脂が金型から離れやすくするために離型剤を用いても良い。
【0016】
<金型>
図5に割金型構造の概略を断面図として示す。
金型10は、左右の分割金型10a,10bから構成される。分割金型10a,10bの中間には支持部材となる芯金Aを挟持する突出部材が形成されている。この分割型10a,10bは、ベース板13と該ベース板13の左右に立設された側壁14と傾斜側壁15の間に配置し、該傾斜側壁15側に楔状に型締め部材16を押し込むことにより、締め付けられて型組されるものである。両分割金型10a,10bの間に形成された空間にベースとなる合成樹脂を注型して、ブレードが成型される。
図5に示したものは、芯金Aを配置して、樹脂の加熱成型と芯金との接合を同時に行う例を示している。芯金Aを配置せずに樹脂を硬化したブレード素材を成型し、その後支持部材を接合して、ブレードを製造することもできる。
図6に分割金型の一方(10a又は10b)に分割層を形成する樹脂を吐出ヘッド8から長手方向、ビード状に吐出する状態を示す。部分層の注型手段は、例えば、吐出ヘッドを移動させる方法と分割金型を移動させる2つの方法を採用することができる。
【0017】
図7に吐出ヘッド移動タイプの概略を示し、図8に分割金型移動タイプの概略を示す。
この分割金型に注型する装置11は、スライド板12を装着したホールドネジ18を駆動モータMで、回転して移動するものである。スライド板12は、2本のガイド桿によって案内される。駆動モータMには、回転方向を正逆切り換え、及び回転速度が制御可能なサーボモータが用いられ、制御自体はリミットスイッチなどを装備したコンピュータ制御によって実施される。
吐出ヘッド8を移動させるタイプでは、スライド板12に吐出ヘッド8を連結する。分割金型10aを移動するタイプでは、スライド板12に分割金型10a(又は10b)を連結する。この後、図5に示すように型組をし、上方からベースとなる樹脂を注型し、加熱硬化して、成型する。得られた、ブレード樹脂素材は電子写真用のブレード素材に適するものである。
使用される液状合成樹脂は熱硬化性合成樹脂が適しており、例えば、熱硬化性ポリウレタン樹脂が用いられる。硬さや弾性などの物性に応じた組成とした樹脂を用いる。また、添加剤を加えることができる。
【0018】
以下は、電子写真装置用のブレードを中心に説明する。
1.電子写真装置用のブレードの概要
トナークリーニング用のブレードあるいはトナーを帯電させる現像ブレードは、通常使用されているもので、合成樹脂製の弾性ゴム体からなるベースを金属製の接合したものである。合成樹脂としては、主に、熱硬化性ポリウレタンが用いられる。
クリーニングブレードは、金属製などの支持部材4の一方の先端部に弾性ゴム部材3が接合されている。図1はクリーニングブレードの斜視図を示し、図2は横断面を示す。この図示の例では、摺擦してトナーを掻き落とすエッジ部分1をベース部材2と別組成とした多層弾性ゴム部材3の例を示している。図3にバリエーションの例を断面図で示す。
本発明では、断面的に見てベース層の一部に侵入した状態にビード状に塗布された部分層を形成することができる。
【0019】
図1、図2に示すクリーニングブレードは、弾性ゴム部材3に支持部材4の一部がくい込む状態で接合されている。この図示の例では、摺擦してトナーを掻き落とすエッジ部分1をベース部材2と別組成とした多層弾性ゴム部材の例を示している。
本発明で実現できる層構成は、特に限定されるものではなく、それらの層構成の例を断面表示として図3に示す。図3(a)〜(e)は、ベース層2の一部に部分層1(以下「ニップ部」と表記することもある)を設けた例が示されている。(a)〜(c)は、部分層1が先端のエッジ部から辺中央までの任意位置に設けることができる例である。図示は辺中央まで示しているが、当然に、右端側まで任意に設定することが可能である。(d)(e)は、部分層2の大きさを変更できる例を示している。注型量を調整することにより、部分層とベース層の比率を変更することができる。
(f)(g)は異形断面であるクリーニングブレードの一部に部分層2を設けた例を示している。(h)は部分層2の底面をやや凸状に形成した例を示している。(f)〜(h)は、成形金型の形状を変更することにより形成することができる。(f)と(g)の例は、ベース層の厚さにそれぞれΔ2分の段差6を部分層側に形成、Δ3分の段差7を部分層とは反対側に形成した例である。(h)の例は、部分層1をΔ1分の段差5を突出して形成した例である。また、金型表面にサンドブラスト、研磨、エッチング等で粗面化部分を形成することにより、粗面を転写したブレードを製造することもできる。
この図3に示した例に限らず、部分層を複数設けることも可能である。あるいは全面2層に形成することも可能である。
弧状に部分層を形成する一例を模式的に図9、図10に示す。この例は、模式的な一例であって、これに限定されるものではない。図10は、ベース層2と弧状の部分層1を備えた弾性ゴム部材を示す。弧を模式的に円弧として扱うと次のようになる。円弧状の部分層1は、仮想の半径Rの部分弧となり、その弦Xの2倍が幅となり、高さが円弧の高さYとなるものと想定することができる。図9に示すように、部分層の幅をXとするようにトリミングして成型することもできる。
【0020】
この製法に用いる基本的な製造手段は、部分層形成用のポリウレタン等の液状原料を吐出ヘッドから、あらかじめ片方の割型の表面に塗布、注型し、割り金型を組み、ベースとなる液状合成樹脂を注入して、金属製の支持部材と共に一体加熱成形してから金型を分割して取り出し、後工程に供給するものである。
【0021】
部分層用に注型する液状合成樹脂の位置、供給量、液状合成樹脂の組成や種類などによって、樹脂層の位置と幅、厚さをコントロールすることができる。後から注型する液状合成樹脂は、金型全体を充填するために必要な量を供給することとなり、ベース層を形成する。
先行する液状合成樹脂をブレード先端に相当する位置に注型した場合は、エッジ部に異種材料を設けたブレード素材を製造することができる。中間部に注型した場合は、ブレード素材の中間に異種材料を設けることができる。薄く一方の分割金型面全体に塗布注型した場合は、全面に2層あるいは多層にしたブレード素材を製造することができる。
【0022】
部分層形成用にビード状あるいは全面に塗布する液状合成樹脂には触媒を付与して流動をコントロールすることもできる。割り金型の一部を粗面化した場合は、その粗面を反映した表面を持つブレード素材を製造することができる。
エッジ部に異種材料層を設けたブレード素材は、エッジ部を当接するクリーニングブレードに適しており、中間部を異種材料層としたものは、その部分をニップ部として使用しトナーを摺擦して帯電する現像ブレード用の素材や帯電ブレードの素材に適する。
また、異種材料を組み合わせることにより、弾性ゴムの物性値をコントロールすることができるので、高温域や低温域等の温度変化適性、あるいは、摩耗耐性などを向上させることができる。さらに、異形を加えることにより、物性値のコントロールを多岐にすることができる。
【0023】
一方の割り金型の表面にビード状に注型された合成樹脂は、金型を組み、ベース用の合成樹脂を注型して、金属製の支持部材と一体加熱することにより硬化重合が進行し、異種合成樹脂界面の接着力の優れた2層化したブレードが得られる。本発明で得られるブレード素材のサイズは、幅、厚みとも十分に従来から使用されている現像ブレードやクリーニングブレードの範囲を満足することができる。
【0024】
2 液状合成樹脂
本発明で用いられる合成樹脂は、主に熱硬化性のポリウレタン樹脂である。特に、非溶剤型の2液性の熱硬化性ポリウレタンが適している。このような条件を満たすイソシアネートとポリオール、架橋剤、触媒を選定し設計する。取り出した後工程において、2次架橋、熟成工程を施すことができる。
【0025】
添加成分として、潤滑剤、導電性付与剤、研磨粒子などがある。
潤滑剤の例としては、ポリ四フッ化エチレン、窒化ホウ素、グラファイト、ニ硫化モリプデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコン化合物がある。
導電性付与物質としては、特に限定されるものではないが、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや、グラファイト、金属フィラー、金属酸化物ウィスカー等の電子伝導性物質、金属石鹸、過塩素酸塩等のイオン伝導性物質等を単独で、もしくは2種以上の物質を組合わせて使用することができ、現像ブレードや帯電ブレードに適用される。
研磨粒子は、感光体等、当接する相手材の表面をリフレッシュする目的で使用されるブレードに適用される。
【0026】
ウレタンプレポリマーの液状物および架橋剤との液状物のうち少なくとも一方に混合される高分子量ポリオールの成分が数平均分子量1000〜3000の2官能ポリオールと、数平均分子量92〜980の3官能ポリオールとを平均官能基数が2.02〜2.20となるポリオールにイソシアネート基の含量が5〜20%となる量のジイソシアネート化合物を混合してプレポリマーを調製し、そのプレポリマーに、OH基/NCO基の当量比が0.90〜1.05となる量の架橋剤とを40〜70℃において混合してポリウレタン液状物(未硬化ポリウレタン組成物)を調製する。
【0027】
なお、前記高分子量ポリオール成分の数平均分子量は、好ましくは1000〜3000の範囲がより望ましい。この組成物を注型することにより反応が円滑に行われ、得られるブレードの物性も好ましい。すなわち、使用される2官能ポリオールの数平均分子量は、1000〜3000の範囲であり、1000未満であると、できあがったウレタンゴムが硬くなりすぎて必要な物性(柔軟性)が得られず、3000を超えると成形時の粘度が高く、注型加工することが困難となる。
また平均官能基数(f)がf=1ではモノオールとなるため重合せず、f≧5では多官能になりすぎるために、重合物の粘度が増大し且つ物性が低下するからである。
【0028】
本発明に係るポリウレタンエラストマー製造の為の成分としては、次のようなものが使用できる。高分子量ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類あるいは、ビスフェノールA、グリセリンのエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシド付加物類のポリエーテル型ポリオールおよびアジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマール酸等の2塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等のグリコール類との重合反応により得られるポリエステル型ポリオールならびにポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。
【0029】
ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。鎖延長剤として、エチレングリコール、1,4ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の低分子量ジオール並びにエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、3,3´ジクロロ‐4,4´‐ジアミノジフェニルメタン等のジアミンを挙げることができる。さらに必要に応じて多官能成分としてトリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、グリセリン、及びこれらのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物を添加してもよい。
【0030】
上記のポリウレタンの製造においては、OH基/NCO基の当量比は生成するポリウレタンの物性から0.8〜1.05がよく、望ましくは0.90〜1.05の範囲である。必要に応じて一般的なアミン化合物や有機錫系化合物等の反応促進剤が用いられる。例えば、イミダゾール誘導体が反応促進剤として挙げられる。その具体例としては、化学構造上から反応温度依存性の高い2−メチルイミダゾールや1,2ジメチルイミダゾール等を挙げることができる。
【0031】
かかる、反応促進剤は有効量としてプレポリマー100重量部に対して、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で用いられる。望ましくは更に感温性、或は遅効性を有するものが混合した樹脂の可使時間を長くとれ、脱型時間が短くなるため好適に用いられる。その具体例としては、ブロックアミンと称される1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−有機酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5−有機酸塩、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0032】
2液性の熱硬化性のポリウレタン樹脂について詳しく例示したが、本発明で使用できるブレード用の樹脂としては、これに限られることはない。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用できる。環境面等から溶剤を含まない非溶剤型が好ましい。
【0033】
これらの合成樹脂成分を配合して、部分層になる樹脂組成とベース層になる樹脂組成を作成して、使用する。一般に、エッジ部やニップ部などに使用される部分層となる合成樹脂は高硬度、高反発弾性、ベース層に使用される樹脂はエッジ層よりも低硬度、低反発弾性に設計される。
【0034】
[クリーニングブレード例]
図1に示されるクリーニングブレードは、ニップ層部分と他のベース層部分とからなる弾性ゴム部材を、次の組成によって製造したクリーニングブレードの例である。これはメッキ鋼板からなる支持部材と一体成型して電子写真装置用クリーニングブレードを作製したもので、サイズは、320mm×15mm×2mmである。実施例1〜6は、以下に示すA〜Gの樹脂を用いてベース層とニップ層を形成した。比較例1〜3は、部分層を設けていない例である。各樹脂には、触媒として1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン‐5オクチル酸塩を配合物に対し、500ppmの濃度になるよう架橋剤に添加し、使用した。
クリーニングブレードとして使用するために、図3(b)に示すように成形した後、ニップ層の中央付近の所定位置を刃物で切断して、エッジを形成した。
得られた電子写真装置用クリーニングブレードを市販の普通紙複写機(有機感光体使用、速度25枚/分)に装着し、印字テストを行った。印字テストは、常温(23℃)で100枚ごとにトナーのすり抜けが生じているか否かをチェックして、印刷物にトナーのすり抜けに起因するスジが認められた時点で終了とし、その印刷枚数を記録した。40000枚印刷してもスジが発生しなかったものはそこでテストを終了した。
さらに、クリーニングブレード実施例1〜3は、装置内が50〜55℃に達した際の異音(鳴き)の発生の有無を確認した。結果を表2に示した。またさらに、クリーニングブレード例4〜6は、低温(10℃)にてそれぞれ印字テストを行った。結果を表1に示した。
【0035】
<ニップ層(エッジ)>
・ポリウレタンA
エチレンアジペート‐MDI系プレポリマー(NCO含有量8.0%)100重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン:エチレングリコール=80:10:10)7.6重量部
・ポリウレタンB
ブチレンアジペート‐TDI系プレポリマー(NCO含有量3.1%)100重量部、
架橋剤(3,3´ジクロロ‐4,4´‐ジアミノジフェニルメタン)8.7重量部
・ポリウレタンC
カプロラクタム‐TDI系プレポリマー(NCO含有量3.3%)100重量部、
架橋剤(3,3´ジクロロ‐4,4´‐ジアミノジフェニルメタン)9.3重量部
・ポリウレタンD
エチレンアジペート‐MDI系プレポリマー(NCO含有量16.5%)100重量部、
ポリエチレンアジペート47重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン=80:20)14.4重量部
・ポリウレタンE
エチレンアジペート‐MDI系プレポリマー(NCO含有量16.5%)100重量部、
ポリエチレンアジペート63重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン=70:30)13.7重量部
【0036】
<ベース層>
・ポリウレタンF
エチレンアジペート‐MDI系プレポリマー(NCO含有量16.5%)100重量部、
ポリエチレンアジペート92重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン=60:40)11.6重量部
・ポリウレタンG
カプロラクタム‐MDI系プレポリマー(NCO含有量13.0%)100重量部、
ポリカプロラクタム58重量部、
架橋剤(1,4−ブタンジオール:トリメチロールプロパン=65:35)9.5重量部
【0037】
【表1】

【0038】
実施例1〜3クリーニングブレードは、小粒径トナー及び球形トナーのいずれのトナーをも良好に掻き取ることができ、また、高温下でも異音(鳴き)を抑制できる電子写真装置用クリーニングブレードであった。実施例4〜6クリーニングブレードは、低温下においても常温下においても、小粒径トナー及び球形トナーのいずれのトナーをも良好に掻き取ることができるクリーニングブレードであった。

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】クリーニングブレードの斜視図の例
【図2】図1に示すクリーニングブレードの断面図
【図3】各種クリーニングブレード断面図 (a)エッジ状に部分層を形成したクリーニングブレードの例 (b)中間部に弧状の部分層を形成したクリーニングブレードの例 (c)中間部に弧状の部分層を形成したクリーニングブレードの例 (d)部分層を大きく形成したクリーニングブレードの例 (e)部分層を小さく形成したクリーニングブレードの例 (f)異形断面としたクリーニングブレードの例 (g)異形断面としたクリーニングブレードの例 (h)部分層を吐出状としたクリーニングブレードの例
【図4】工程図
【図5】分割金型型組断面概略図
【図6】部分層をビード状に注型している状態概略図
【図7】部分層注型、吐出ヘッド移動タイプ概略図
【図8】部分層注型、分割金型移動タイプ概略図
【図9】弧状の部分層を形成する設計概略図
【図10】弧状の部分層を形成する設計概略図
【符号の説明】
【0040】
1 部分層
2 ベース層
3 合成樹脂ブレード素材
4 支持部材
8 吐出ヘッド
9 ビード状に注型した液状合成樹脂
10 金型
10a 分割金型
10b 分割金型
11 分割金型注型装置
12 スライド板
13 ベース板
14 側壁
15 傾斜側壁
16 型締め部材
17 ボールネジ
18 ガイド桿
A 芯金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真装置用多層ブレードの製造法において、割り金型の一方の金型に、部分層を形成する液状合成樹脂をビード状に注型した後、金型を組み、ベース層を形成する液状合成樹脂を注型して、加熱硬化してブレード素材を形成することを特徴とするブレードの素材の製造方法。
【請求項2】
支持体を挿入して金型組みを行った後、ベースとなる液状合成樹脂を注型するブレード素材を支持体に一体成型することを特徴とするブレードの製造方法。
【請求項3】
部分層形状を弧状の横断面形状に形成することを特徴とする請求項1記載のブレード素材又は請求項2記載のブレードを製造する方法。
【請求項4】
クリーニングブレードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブレード素材又はブレードを製造する方法。
【請求項5】
現像ブレードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブレード素材又はブレードを製造する方法。
【請求項6】
帯電ブレードであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブレード素材又はブレードを製造する方法。
【請求項7】
割り金型を用いるブレード素材又はブレードを製造する方法であって、原料の液状合成樹脂を一方の金型表面へビード状に注型・塗布する吐出ヘッドとベースとなる液状合成樹脂を吐出する吐出ヘッドとを有する合成樹脂供給手段、ビード状に注型・塗布する吐出ヘッドを定位置に固定してブレード用金型を長手方向に搬送するか、あるいはブレード用金型を固定してビード状に注型・塗布する吐出ヘッドを長手方向に搬送する手段を有するブレード素材又はブレードを製造する方法。
【請求項8】
液状合成樹脂が、非溶剤型の熱硬化性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のブレード素材又はブレードを製造する方法。
【請求項9】
異なる組成の液状の合成樹脂原料を一体に成形硬化積層してなる電子写真装置用ブレード素材又は電子写真用ブレード。
【請求項10】
液状合成樹脂として、非溶剤型の熱硬化性ポリウレタンを用いることを特徴とする請求項9記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
【請求項11】
長手方向に弧状の部分層とそれ以外のベース層を異なる合成樹脂素材としたことを特徴とする請求項9又は10に記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
【請求項12】
長手方向に弧状の部分層は、ニップ部であることを特徴とする請求項10又は11に記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
【請求項13】
異形断面であることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
【請求項14】
ブレードは、クリーニングブレード現像ブレード、帯電ブレードのいずれかであることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の電子写真装置用ブレード素材又は電子写真装置用ブレード。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれかに記載の電子写真装置用ブレード素材と金属製支持部材とを電子写真装置用ブレード素材形成用液状樹脂の硬化に伴い、一体成型した電子写真装置用ブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−163676(P2007−163676A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357859(P2005−357859)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】