説明

電子機器の冷却構造

【課題】基板上にCPU等の高発熱体及びCPUに電力を供給するための電源部品を搭載する際、電源部品をCPUの近くに配置し、CPUヒートシンクを搭載し、電源部品の冷却に必要な放熱面積が確保できる放熱構造体を提供する。
【解決手段】同一形状の複数の発熱部品102〜108を第1の熱伝導部材109〜111を介して1つの熱拡散板112〜114に接続した冷却構造体を同一基板101上に複数備え、複数の冷却構造体の各熱拡散板を第2の熱伝導部材115〜117を介して1つの放熱体118に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さの異なる複数の発熱体を冷却するための冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられる半導体、とりわけ情報処理装置のCPUに代表されるような半導体は、小型化・高集積化が急速に進み、発熱量は増大している。しかし、半導体の一般的な性質として、熱に弱く、高温下で使用すると信頼性が大きく劣化すると言う問題がある。よって、半導体の冷却性能向上のため、これらに搭載されるヒートシンクサイズは、以前に比べて大型化する傾向にある。
【0003】
また、近年CPUの性能向上に伴い、それらの部品に安定して電力を供給するための電源部品、とりわけ基板上に実装されるMOS−FETやレギュレータ部品等の発熱量も飛躍的に増加している。一般的にこれらの部品は、電源種毎に複数個搭載される。これらの部品は、CPUに比べると発熱量は小さいが、部品面積も非常に小さいため、発熱密度で考えた場合、数十ワットのLSIに匹敵する。更に、これらの部品は、その実装形態から部品温度と基板温度がほとんど同じとなる。したがって、基板の信頼性を確保する上でも、電源部品の冷却が必須となってきている。
【0004】
上記課題の解決のためには、ヒートシンクを搭載し、放熱面積を拡大することが挙げられる。但し、これらの電源部品は非常に近い間隔で搭載されるため、冷却に必要なヒートシンクサイズを確保しようとすると、ヒートシンクが干渉する。また、これらの電源部品はサイズが非常に小さいため、接着面積を考慮した場合、熱伝導性接着剤や両面テープ等を使用してのヒートシンクの固定が難しい。そのため、ヒートシンク搭載時には、基板に貫通穴を開け、ネジやプッシュピン等でヒートシンクを固定することとなる。しかし、貫通穴の設置は、基板内の配線性に大きな制約を与えると言う問題がある。
【0005】
また、基板上にCPU等の高発熱体及びCPUに電力を供給するための電源部品が搭載される場合、電源部品はCPUの近くに配置されることが多い。そのため、CPUヒートシンクを搭載した場合、電源部品の冷却に必要な放熱面積の確保が難しい。
【0006】
この様な問題への解決方法として、例えば特許文献1では、発熱体で発生した熱をヒートスプレッダにより拡大させることで放熱面積の拡大を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-68943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例として、CPU及びCPUに電力を供給する複数の発熱部品との一括冷却について説明する。前述の通り、CPU冷却ヒートシンクは大型化する傾向にあるため、周辺部の発熱部品の上空にまでヒートシンクが拡大される。そこでこの点に着目し、発熱部品から発生した熱をCPU冷却用のヒートシンク側に伝達し、CPUと一体で冷却させる冷却構造を検討した。
【0009】
1つ目は、発熱体とCPU冷却用ヒートシンクの間に熱伝導性を持った材質(熱伝導シート等)を搭載し、CPUと発熱体の高さの差分を熱伝導シートにて吸収する方式である。発熱体から発生した熱は、熱伝導シートを介してヒートシンク側に伝わる。この構造は最も単純ではあるが、一般的にCPUは、ソケット等複数の機構部品から構成されるため、他の発熱体に比べ部品高さが高い。そのため、高さの差分を吸収するためには非常に厚いシートが必要となり、現実的でない。また、シート部分での温度上昇が非常に大きくなってしまう。
【0010】
2つ目は、発熱体の周辺のみCPUのヒートシンクの底面をペデスタル形状とすることにより、熱伝導シートを介して発熱体と接触させる方式である。1つ目の案に比べると熱伝導シートの厚さは薄くなるものの、シート厚さはCPUの高さ公差の影響を受けるため、シート厚さを公差以下にすることはできない。また、案1と同様、発熱体と熱伝導シートの接触面積がチップのサイズとなるため、この部分での温度上昇が大きくなり、発熱体の冷却性に課題が残る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明における冷却構造は、同形状の複数の発熱体を冷却するための熱拡散板を備え、熱伝導シート1を介して熱拡散板と熱接続する。また、前述の発熱体とはサイズや高さの異なる、1つ以上の別形状の複数の発熱体に関しても、同様に1つ以上の熱拡散板を備える。これにより、発熱体から発生した熱の拡散を図っている。そして、これらの熱拡散板を、別の熱伝導シート2を介して1つの放熱体に接続し、発熱体から発生した熱を最終的に1つの放熱体にて放熱する冷却構造としている。
【0012】
この構造により、放熱体と熱拡散板間の熱伝導シートで部品の公差を吸収し、各部品で発生した熱を一体型の放熱体にて冷却することが可能となる。熱伝導シート2の厚さは厚くなるものの、熱拡散板の採用により放熱体との接触面積を大きくすることができるため、この部分の温度上昇を抑えることが可能となる。また、熱伝導シート1に関しては、前述部の公差とは無関係となるため、厚さを薄くすることができ、この部分での温度上昇を抑えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷却構造を用いることにより、放熱体が干渉することなく、発熱体の冷却に必要な放熱面積を確保することが可能となる。また熱伝導シート分の温度上昇を少なくでき、発熱体の冷却性能が改善することにより、基板の信頼性確保につなげることができる。更に、一体型の放熱体を用いることにより貫通穴を極力少なくすることが可能となるため、基板の配線性向上にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における第一の実施形態となる,サイズや高さの異なる複数の冷却構造体を1つの放熱体にて冷却する冷却構造の構成図である。
【図2】本発明における第一の実施形態の斜視図である。
【図3】本発明における第二の実施形態となる,サイズや高さの異なる複数の冷却構造体を1つの放熱体にて冷却する冷却構造の構成図である。
【図4】本発明における第三の実施形態となる,サイズや高さの異なる複数の冷却構造体を1つの放熱体にて冷却する冷却構造の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明における、サイズや高さの異なる複数の冷却構造体を1つの放熱体にて冷却する冷却構造の第一の実施形態を示す。図2は第一の実施形態の斜視図である。基板101上に発熱体102〜108が搭載され、これら発熱体は102〜103,104〜106,107〜108の3つに分類される。
【0017】
同じ分類のものは同一形状であるが、違う分類のものはサイズや高さなど全く異なるものである。これら発熱体に関し、同じ分類に属する102〜103・104〜106・107〜108で発生した熱は、それぞれ熱伝導シート109〜111を介して、熱拡散用の各熱拡散板112〜114に伝わる。熱拡散板112〜114によって広がった熱は、各熱伝導シート115〜117を通して放熱体118に伝わる。これにより、発熱体102〜108と放熱体118が熱的に接続した状態となり、発熱体で発生した熱を放熱板にて一括で冷却することが可能となる。なお、荷重を加えた時の各熱拡散板112〜114と放熱体118の接触性を考えると、熱拡散板112〜114の高さは揃っていることが望ましい。
【0018】
なお、発熱体の温度を抑えるためには、熱伝導シート部で発生する温度上昇を抑えることが重要となる。温度上昇ΔTは、発熱体の発熱量Q及び熱抵抗Rを乗算することにより求めることができる。ここで、熱抵抗Rとは、熱の伝わりにくさを表すものであり R =t÷(λ×A)の式で表される。ここでtはその物体の持つ厚み(mm)、λは物体の熱伝導率(W/mK)、Aは伝熱断面積(mm)である。これより熱抵抗Rはtに比例しAに反比例することが分かる。そのため、ΔTの値を小さくするには、厚みtを薄くするか伝熱断面積Aを大きくする必要がある。
【0019】
例えばCPU119との一体冷却を行う場合に関して説明する。熱伝導シート115〜117の厚さはCPU119の高さ寸法の公差の幅以上にしなければならないため、この部分の厚さtは大きくなる。但し、熱拡散板により接触面積Aを広げているため、この部分の温度上昇を抑えることができる。熱拡散板の形状は板やブロック形状,また材質は熱伝導性に優れた銅等が用いられる。
【0020】
また、この構造を採用することにより、発熱体と熱拡散板間の熱伝導シート109〜111厚さは、CPU119の高さ寸法の公差とは無関係となる。よって、この部分のシート厚さは発熱体の高さ寸法の公差のみ考慮すれば良い。そのため、接触面積Aは小さいものの、シート厚さtを非常に薄くすることが可能となり、同様にこの部分での温度上昇を抑えられる。熱伝導シート種が増えてしまう欠点はあるものの、面積が小さく温度差のつきやすい、発熱体−熱拡散板間の熱伝導シート厚さを薄くでき、また熱拡散板−放熱体間の熱伝導シート面積を拡大できることにより、結果として熱伝導シート部全体での温度上昇を抑え、冷却性能改善につなげることが可能となる。熱拡散板112〜114及び放熱体118固定方法に関しては,基板に穴を開けてネジやプッシュピンで固定する方法等がある。
【実施例2】
【0021】
図3は本発明における、サイズや高さの異なる複数の冷却構造体を1つの放熱体にて冷却する冷却構造の第二の実施形態を示す。実施例1に対し、放熱体118のベース部201に平板型ヒートパイプ202を使用することにより、放熱体118全体への熱拡散を促進する。その結果、発熱体自身の冷却性能改善及びヒートシンク排気面での温度均一化を可能とし、下流側に搭載されるLSIの温度低減にもつながる。
【実施例3】
【0022】
図4は本発明における、サイズや高さの異なる複数の冷却構造体を1つの放熱体にて冷却する冷却構造の第三の実施形態を示す。発熱体102〜103と熱伝導シート109と熱拡散板112からなる冷却構造体を301、発熱体104〜105と熱伝導シート110と熱拡散板113からなる冷却構造体を302、発熱体106〜108と熱伝導シート111と熱拡散板114からなる冷却構造体を303とする。冷却構造体303は熱伝導シート117を介して、放熱体118に熱を伝えるが、確実に熱を伝えるためには熱伝導シート117の厚さは冷却構造体303の高さ寸法の最大公差値よりも厚くする必要がある。一方、熱伝導シート111は冷却構造体303の公差の影響を受けず、同一形状の発熱体106〜108の公差のみ考慮すれば良い。そのため、熱伝導シート111は熱伝導シート117に比べ十分に薄くすることが可能となる。例えば,構造体301がCPUの場合、基板底面からCPU301の上面までの公差は±0.5mm程度であるため、圧縮率などを考慮すると、熱伝導シート117は1.5mm以上の厚みが必要となる。一方、熱伝導シート111は同一形状の複数の部品の公差のみ考慮すればよいため、0.3mm以上あればよい。図4の特徴としては,熱伝導シート117の厚さがCPU301の公差合計値よりも大きく,かつ熱伝導シート111が熱伝導シート117よりも薄いことであり,この点が図1とは異なる。
【0023】
熱伝導シートの温度上昇は、前述の通り、熱伝導率の値に反比例するため、熱伝導率のより高いシートを選定する必要がある。また、荷重の上限値が規定される部品も多いため、少ない荷重で所定の厚みとなるような、圧縮特性に優れたものを選定する必要がある。冷却性も考慮した場合、熱伝導率が3[W/mK]、荷重0.3[MPa]時の圧縮率が30%以上あることが望ましい。具体例としては,シリコンゴムと炭素繊維の組合せにより、圧縮特性と高熱伝導性を両立させる方法などがある。
【符号の説明】
【0024】
101…基板,102〜108…発熱体,109〜111…熱伝導材1,112〜114…熱拡散板,115〜117…熱伝導材2,118…ヒートシンク,119…CPU,201…ヒートシンクベース部,202…平板型ヒートパイプ,301〜303…構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状の複数の発熱部品を第1の熱伝導部材を介して1つの熱拡散板に接続した冷却構造体を同一基板上に複数備え、前記複数の冷却構造体の各熱拡散板を第2の熱伝導部材を介して一つの放熱体に接続した電子機器の冷却構造。
【請求項2】
前記放熱体の内部に平板型ヒートパイプを用いた請求項1記載の電子機器の冷却構造。
【請求項3】
各冷却構造体と前記放熱板との間に設けられた各第2の熱伝導材は、各冷却構造体の高さ寸法の最大公差値よりも厚い請求項1記載の電子機器の冷却構造。
【請求項4】
各冷却構造体の第1の熱伝導材は、各冷却構造体と前記放熱板との間に設けられた各第2の熱伝導材より薄い請求項1記載の電子機器の冷却構造。
【請求項5】
前記複数の冷却構造体の1つがCPUである場合、前記CPU以外の冷却構造体と前記放熱板との間に設けられた第2の熱伝導部材は、前記CPUの高さ寸法の最大公差よりも厚い請求項1記載の電子機器の冷却構造。
【請求項6】
前記CPU以外の冷却構造体の第1の熱伝導材は前記第2の熱伝導材より薄い請求項5記載の電子機器の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−198868(P2011−198868A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61782(P2010−61782)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】