説明

電子機器及びその製造方法

【課題】 電子機器において、複雑な実装表面形状を構成するような電子部品群をも効率的に冷却することが可能な冷却方式を提供する。
【解決手段】 電子機器10は、配線ボード11上に実装された1つ以上の電子部品21、22と、電子部品21、22の上方に配置された放熱ユニット12とを含む。電子機器10は更に、配線ボード11及び電子部品21、22と放熱ユニット12との間の空隙を充たす絶縁性の粉末30を含む。粉末30により、電子部品21、22から放熱ユニット12に熱が効率的に輸送され得る。絶縁性の粉末30は、例えば窒化ホウ素又は窒化アルミニウムなどを有するセラミック粉末とし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一部のデータセンターにおいては、消費電力のうち空調のための電力の占める割合が約4割にも達している。データセンターで用いられるブレードサーバなどに見られるように、省スペースの観点から、サーバ搭載密度の更なる高密度化が続けられている。サーバの高密度化は、各サーバにおける電子部品の高密度実装化と相俟って、電子部品や電源からの発熱量を増大させ、空調電力の更なる増大をもたらし得る。故に、環境面からも、効率的なサーバ冷却方式の採用による消費電力の低減が望まれている。
【0003】
サーバなどの情報処理装置をはじめとする電子機器では、その配線ボード上に典型的に表面実装により、半導体チップを内蔵した多数の電子部品が搭載されている。それぞれの電子部品のサイズや高さは様々に異なっている。また、中央演算処理装置(CPU)やパワーアンプなどの発熱が特に大きい電子部品には、一般的に、冷却を効率化するための複雑な形状のヒートシンクが搭載される。また、メモリモジュールは、システムの可用性及び拡張性を確保するため、配線ボードに対して垂直に配置されることがある。このように、電子部品自体の形状の差異、及び冷却構造や配置方法の差異により、実装後の配線ボードの表面形状は複雑になっている。
【0004】
一般的に、サーバ内に搭載された電子部品を冷却するために、サーバの筐体に個別のファンを設け、筐体内に空気を流して冷却を行っている。筐体に内蔵されるファンは、サーバ動作時に常に回転しており、該ファンの消費電力はサーバの消費電力のうちの大きな部分を占めている。ラック自体に集中ファンを設けて個別ファンを排除する試みもなされているが、ラック内全体に空気の対流を作り出すために相当な電力を消費する。
【0005】
液体は空気より比熱が大きく、例えば水は空気より比熱が4倍大きく、輸送可能な熱量が空気と比較して大きいため、サーバなどの情報処理装置の冷却用媒体として空気より適している。スーパーコンピュータやメインフレームなどの大型コンピュータにおいて、特に発熱の大きいCPUなどの部品には、既に、個別配管を取り付けて液冷するなどの対策が取られている。今後は、電子部品及びそれによる発熱の更なる高密度化が見込まれるため、放熱容量ひいては冷却能力を確保するために、液冷方式を用いることが有利になると考えられる。しかしながら、例えば配線ボードに対して垂直に配置された電子部品など、複雑な実装表面形状を構成する電子部品まで含めて液冷配管を張り巡らすことは、コストが高くなるとともに、ボードデザインの変更への対応も困難になるという問題がある。
【0006】
このような状況の中、平坦な実装表面形状を構成しない電子部品の放熱効率を向上させるために、該電子部品を樹脂モールドする技術が提案されている。また、電子部品の放熱面と放熱板との接合部に、良熱伝導性フィラーを含有した樹脂シートを介在させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−227952号公報
【特許文献2】特開2002−88250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子部品を樹脂モールドする技術においては、樹脂の熱伝導率が低いため、電子部品からの放熱効率を十分に高めることができない。仮に樹脂に良熱伝導性フィラーを含有させたとしても、その熱伝導率は数W/m・K程度にとどまる。
【0009】
故に、電子機器内で複雑な実装表面形状を構成するような電子部品群に対しても適用可能な冷却方式が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一観点によれば、電子機器は、配線ボード上に実装された1つ以上の電子部品と、該電子部品の上方に配置された放熱ユニットとを含む。当該電子機器は更に、配線ボード及び電子部品と放熱ユニットとの間の空隙を充たす絶縁性の粉末を含む。
【0011】
他の一観点によれば、電子機器の製造方法は、配線ボード上に1つ以上の電子部品を実装する工程と、該電子部品の上方に放熱ユニットを配置する工程とを含む。配線ボード及び電子部品と放熱ユニットとの間には、電子部品を覆い且つ放熱ユニットに接触する絶縁性の粉末が配置される。
【発明の効果】
【0012】
電子部品と放熱ユニットとが絶縁性の粉末を介して熱的に結合され、実装表面形状に依らずに電子部品から放熱ユニットに熱が効率的に輸送されることにより、電子機器の冷却効率が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る電子機器を概略的に示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る電子機器を製造する方法の一例を示す斜視図(その1)である。
【図3】第1実施形態に係る電子機器を製造する方法の一例を示す斜視図(その2)である。
【図4】第2実施形態に係る電子機器を概略的に示す断面図である。
【図5】第2実施形態に係る電子機器を製造する方法の一例を示す斜視図(その1)である。
【図6】第2実施形態に係る電子機器を製造する方法の一例を示す斜視図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、種々の構成要素は必ずしも同一の尺度で描かれていない。
【0015】
先ず、図1を参照して、第1実施形態に係る電子機器10の概略構成を説明する。電子機器10は、冷却を要する発熱体を含む如何なる電子機器であってもよいが、例えば、サーバ又は携帯電話基地局装置など、発熱量が大きい半導体装置が内蔵されている情報処理装置とし得る。
【0016】
電子機器10は、例えばマザーボードなどの配線ボード11と、配線ボード11に対向するように配置された放熱ユニット12とを含んでいる。放熱ユニット12は、受熱面として作用する底面12aにて受け取った熱を放散することができる。一例として、放熱ユニット12は、例えば銅若しくはその合金、アルミニウム若しくはその合金、又は窒化アルミニウムなどの高熱伝導性の絶縁材料を有する放熱板又はヒートシンクとし得る。他の例として、放熱ユニット12は、内部に配管を設けた液冷パネル、ペルチェ素子を有する熱電ユニット、又はヒートパイプの蒸発器などの熱交換器とし得る。
【0017】
配線ボード11上には、1つ以上の電子部品21、22が実装されている。電子部品は、種々の能動部品及び/又は受動部品を含むことができ、様々な外形及び寸法を有し得る。電子部品はまた、例えば配線ボードに対して垂直に配置されたメモリモジュールなど、当該電子部品の放熱面が配線ボード表面11aと非平行になるように実装されていてもよい。サーバなどの電子機器10は、搭載した電子部品21、22の中でも特に発熱量の大きい電子部品21(例えばCPU)を有し得る。このような発熱量の大きい電子部品21は、必要に応じて、ヒートスプレッダ又はヒートシンクなどの放熱体25を備えることができる。
【0018】
電子機器10は更に、配線ボード11と放熱ユニット12との間に、絶縁性の粉末から形成された放熱材30を含んでいる。絶縁性粉末30は、粉末の流動性により、配線ボード11及びその上の電子部品21、22と放熱ユニット12との間の空隙を充たしており、電子部品21、22を覆うとともに放熱ユニットの受熱面12aに接触している。図示した例において、絶縁性粉末30は、電子部品21、22及び電子部品21が備える放熱体25を完全に覆っている。しかしながら、放熱材(絶縁性粉末)30の厚さを配線ボードの表面11aに対する電子部品21、22及び放熱体25の最大高さに一致させるなど、電子部品21、22及び放熱体25を完全に覆わないように絶縁性粉末30を配置してもよい。例えば、図示したフィンを有する放熱体25に代えて平板状の放熱体を用いる場合、この放熱体の頂面と放熱材30の頂面が高さ的に一致するように絶縁性粉末30を設けてもよい。また、放熱体25を用いない場合、例えば電子部品21など最大の高さを有する電子部品の頂面と放熱材30の頂面が高さ的に一致するように絶縁性粉末30を設けてもよい。このように頂面高さを一致させる場合、露出された電子部品又は放熱体の頂面が直接的に放熱ユニットの底面12aに接触してもよい。
【0019】
絶縁性粉末30の材料は、空気と比較して高い熱伝導率を有する材料から選択される。故に、発熱体となり得る電子部品21、22と放熱ユニット12とを熱的に結合する。絶縁性粉末30は例えばセラミックの粉末とし得る。セラミック粉末は、絶縁性の粉末の中で高い熱伝導率を有し得る。好適な例として、窒化ホウ素又は窒化アルミニウムを主体とした粉末を挙げることができる。窒化ホウ素及び窒化アルミニウムの熱伝導率としては種々の値が報告されている。例えば、窒化ホウ素について、バルクで75W/m・K程度、粉末で60W/m・K程度の値が知られ、窒化アルミニウムについて、バルクで200W/m・K程度、粉末で100W/m・K程度の値が知られている。このように窒化ホウ素や窒化アルミニウムなどのセラミック粉末は、数W/m・K程度といった既知の良熱伝導性フィラー含有樹脂の熱伝導率より遙かに高い熱伝導率を有し得る。なお、窒化ホウ素及び窒化アルミニウム以外にも、例えば20W/m・K以上など、良熱伝導性樹脂の10倍程度の熱伝導率を有する材料は、電子部品21、22から放熱ユニット12への熱輸送効率を大幅に向上させることができる。
【0020】
絶縁性粉末30の粒径は、特に限定されないが、電子部品21、22と放熱ユニットとの間の空隙を緻密に充填することが可能なように、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは0.1μm〜10μmとし得る。なお、窒化ホウ素は、絶縁体として高いレベルの熱伝導率を有するだけでなく、粉末流動性が高く、複雑な実装表面形状を構成する部品の近傍をも緻密に充填することができる。
【0021】
また、例えば窒化ホウ素及び窒化アルミニウムなどの粉末はそれ自体の凝集力を有するが、凝集強度を更に高めるように、絶縁性粉末30を覆うようにバインダが添加されていてもよい。例えばポリビニルブチラール及びポリビニルアルコールなどの有機バインダを用いることができる。これらの有機バインダは、放熱材30としての成形後の形状維持効果に加え、絶縁性粉末30の表面を滑りやすくし、成形時の粉末流動を潤滑にし得る。
【0022】
電子機器10においては、電子部品21、22で発生した熱は、空気や樹脂と比較して高い熱伝導率を有する絶縁性粉末30を伝導して放熱ユニット12に到達し、そこで抜熱される。また、絶縁性粉末30を用いることは、配線ボード11及び電子部品21、22が形成する実装表面形状と、放熱ユニットの受熱面12aの形状との双方に従った放熱材30を容易に形成することを可能にする。それにより、表面実装形状及び放熱ユニットの底面12aの形状に依らずに、電子部品21、22と放熱ユニット12とがより密に熱結合され、それらの間での熱輸送効率を高めることができる。
【0023】
故に、配線ボード11のレイアウト、並びに電子部品21、22の個数、形状及び大きさなどのデザイン変更にも柔軟に対応することができる。さらに、配線ボード11及び電子部品21、22側のデザインに影響されずに、例えば平板型などの簡易な構造を有する放熱ユニット12を共通部品として使用することが可能になる。例えば、放熱ユニット12として液冷パネルを用いる場合にも、電子部品21、22に沿って個別配管を引き回すような流路設計を行う必要はないため、共通の平面型液冷パネルを用いて、様々な形状を有する複数の電子部品を冷却することができる。
【0024】
なお、図1においては2つの電子部品21、22とそれら双方を覆う絶縁性粉末30とが示されている。図示した部分のようにして、配線ボード上の全ての電子部品を絶縁性粉末30で覆うことが可能である。代替的に、配線ボード上の一部の電子部品、例えば発熱量の小さい部品、は絶縁性粉末30で覆わない構成としてもよい。絶縁性粉末30で覆われない、故に、放熱ユニット12に熱結合されない電子部品は、個別ファン又はラックに備えた共通集中ファンによる空気流で冷却してもよい。このようなファンを用いる場合であっても、ファン数の削減又はファンの小型化により消費電力を低減することができる。絶縁性粉末30を有する部分(配線ボードの全体又は一部)は、必要に応じて絶縁性粉末の飛散の防止のため、密閉型の筐体又は該部分を覆うフレーム構造(例えば、図2のフレーム50を参照)を用いて外気又は空気流から隔離されてもよい。
【0025】
続いて、図2及び3を参照して、第1実施形態に係る電子機器の製造方法の一例を説明する。
【0026】
先ず、図2(a)に示すように、配線ボード11上に電子部品及び必要に応じての放熱体25などを実装する。なお、図2及び3においては見て取れないが、放熱体25の下には電子部品(例えば、図1の電子部品21)が配置されている。
【0027】
次いで、必要に応じての工程として、図2(b)に示すように、後に絶縁性粉末で覆う配線ボード部分を囲むように、配線ボード11上にフレーム50を取り付ける。図示した例において、放熱体25及びその下の電子部品はフレーム50によって四方を囲まれている。フレーム50は、好ましくは、完成後の電子機器に残存させ得るように、例えばプラスチックなどの絶縁材料で形成される。
【0028】
なお、例えば、後に配線ボード11の全体を絶縁性粉末で覆う場合や、絶縁性粉末を含んだスラリー(図2(c)参照)の粘性がスラリーの流出を防止するのに十分な高さにされる場合などには、この工程を省略してもよい。
【0029】
次いで、図2(c)に示すように、絶縁性粉末を含むスラリー31を配線ボード11上の所望の領域上に塗布する。例えば、図2(b)にてフレーム50を設けた場合、フレーム50内を充填するようにスラリー31を流し込む。スラリー31は、例えば、絶縁性の液体であるフロリナートに窒化ホウ素などの絶縁性粉末を加えたものとし得る。フレーム50を設けていない場合には、スラリー31が或る程度形状を維持し、所望の領域から流れ出さないよう、フロリナートの量を調整し得る。配線ボード11上へのスラリー31の供給は、例えばディスペンサ又はその他の装置若しくは器具を用いて行うことができる。
【0030】
なお、スラリー化した絶縁性粉末を充填することに代えて、粉末状のまま絶縁性粉末を充填することも可能である。充填に先立って、上述のように絶縁性粉末をバインダで被覆する処理を行ってもよい。
【0031】
次いで、図3(a)に示すように、充填された絶縁性粉末30又はそれを含むスラリーの頂面を、例えばスキージ51を用いて平坦化する。フレーム50を設けた場合、絶縁性粉末30の高さをフレーム50の高さに一致させることができる。
【0032】
次いで、図3(b)に示すように、フロリナートなどを蒸発させるスラリーの乾燥処理の後、必要に応じて、フレーム50を離型する。フレーム50の離型後も、絶縁性粉末は自身の凝集力及び/又はバインダによる結合により形状を維持し得る。
【0033】
そして、図3(c)に示すように、絶縁性粉末30上に放熱ユニット12を配置する。放熱ユニット12は、例えば、配管13を内蔵した液冷パネルとし得る。
【0034】
以上の工程群により、図1に示したような第1実施形態に係る電子機器の構成が完成される。なお、図2及び3においては、配線ボード11上に絶縁性粉末30を形成した後に放熱ユニット12を配置したが、配線ボード11と放熱ユニット12とを対向配置させた後に、それらの間の空隙に絶縁性粉末30を充填することも可能である。
【0035】
次に、図4を参照して、第2実施形態に係る電子機器10’の概略構成を説明する。電子機器10’は、図1に示した電子機器10と共通する数多くの要素を有している。ここでは、そのような共通する要素については、図1においてと同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0036】
電子機器10’は、配線ボード11及び電子部品21、22と放熱ユニット12との間の空隙を充たす放熱材(粉末)30’を有し、さらに、配線ボード11及び電子部品21、22と放熱材30’との間に配置された絶縁体40を含んでいる。
【0037】
絶縁体40は、配線ボード11及び電子部品21、22が形作る実装表面形状に沿って設けられ、例えば耐熱性を有する絶縁性樹脂フィルムを有し得る。樹脂フィルム40の例には、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム(PVCフィルム)、ポリカーボネートフィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム(EMAAフィルム)、及びナイロンフィルムなどがある。樹脂フィルム40は、電子部品21、22から粉末30’に熱を伝える必要があり、好ましくは100μm以下の厚さを有する。
【0038】
粉末30’は、図1の電子機器10に関連して説明した絶縁性粉末30と同様に、例えば窒化ホウ素又は窒化アルミニウムなどの絶縁性の粉末とし得る。しかしながら、粉末30’として、導電性又は半導電性の粉末を用いることも可能である。電気的機能を有する配線ボード11及び電子部品21、22が絶縁体40によって被覆されているからである。故に、粉末30’は、例えば金属粉末又は炭素繊維粉末など、窒化ホウ素又は窒化アルミニウムより高い熱伝導率を有する粉末を含むことができる。また、粉末30’は、導電性であるか絶縁性であるかを問わず、複数の異なる種類の粉末を含み得る。ただし、粉末30’が非絶縁性の粉末を含む場合には、粉末30’の飛散を確実に防止するよう、粉末30’からなる放熱材を密閉する必要がある。
【0039】
電子機器10’においては、樹脂フィルムなどの絶縁体40を有することにより、粉末30’が配線ボード11及び電子部品21、22に接触することがない。故に、上述のように粉末30’の選択肢が広げられる。また、電子部品の交換などのリペア作業も容易になる。
【0040】
続いて、図5及び6を参照して、第2実施形態に係る電子機器の製造方法の一例を説明する。
【0041】
図5(a)に示すように、配線ボード11上に電子部品22及び必要に応じての放熱体25などを実装するとともに、伸縮性を有する絶縁性フィルム41を準備する。なお、放熱体25の下には電子部品(例えば、図4の電子部品21)が配置されている。また、配線ボード11上には、例えば該ボードに垂直に配置されたメモリモジュールなど、その他の要素23が実装されていてもよい。絶縁性フィルム41は、樹脂フィルム40に関して上述したように、例えば、厚さ100μm以下の、PVCフィルム、ポリカーボネートフィルム、EMAAフィルム、又はナイロンフィルムなどの樹脂フィルムとし得る。
【0042】
次いで、図5(b)に示すように、電子部品などが実装された配線ボード11の表面上に樹脂フィルム41を被せ、脱気にするラッピングを行うことにより、配線ボード11上の実装表面に密着した樹脂フィルム40を形成する。
【0043】
次いで、図6(a)に示すように、樹脂フィルム40上に粉末30’を堆積させる。この工程は、例えば、図2(b)−図3(b)を参照して説明した工程群と同様にして行い得る。
【0044】
そして、図6(b)に示すように、図3(c)に示した工程と同様にして、粉末30’上に、配管13を内蔵した液冷パネル12などの放熱ユニットを配置する。
【0045】
以上の工程群により、図4に示したような第2実施形態に係る電子機器の構成が完成される。なお、図6においては、配線ボード11上に粉末30’を形成した後に放熱ユニット12を配置したが、樹脂フィルム40でラッピングされた配線ボード11と放熱ユニット12とを対向配置させた後に、それらの間の空隙に粉末30’を充填することも可能である。
【0046】
以下、幾つかの実施例を説明する。
【0047】
(実施例1)
フロリナート(例えば3M社製PF5080)15gに、窒化ホウ素の粉末を3g加えてかき混ぜ、スラリーとした。得られたスラリーを、配線ボードに実装した半導体装置上に押し出した。スラリーに接触するように放熱板を取り付けた後、90℃程度に設定した乾燥機に入れてフロリナートを蒸発させた。
【0048】
(実施例2)
窒化ホウ素に代えて窒化アルミニウムを用い、実施例1と同様の処理を行った。
【0049】
(実施例3)
CPUを囲うように配線ボード上にプラスチックフレームを取り付けた後に、該フレーム内に実施例1と同様のスラリーを充填した。スラリーの乾燥処理後にフレームを取り外し、充填された窒化ホウ素の形状が維持されることを確認した。放熱ユニットとして配管が内蔵された水冷パネルを取り付けた。その後、配線ボードを筐体に入れ、粉末で覆われたCPUを水冷パネルにより冷却し、それ以外の発熱が少ない部分は、ラックに搭載された集中ファンで空気流により冷却した。
【0050】
(実施例4)
ポリビニルブチラールを溶かしたアルコール溶液を、窒化ホウ素粉末に、窒化ホウ素粉末の重量に対してポリビニルブチラールの重量が5%となるようにして滴下し、乳鉢で混合してアルコールを蒸発させた。得られた粉末を、チップを囲うように配線ボード上に取り付けた絶縁性フレーム内に、薬匙等を用いて充填し、軽く押し固め、約90℃で乾燥させた。
【0051】
(実施例5)
複数の異なる電子部品を実装した配線ボード上に、絶縁性のプラスチックフィルムを被せて脱気し、フィルムを配線ボード表面に密着させた。フィルム上に窒化ホウ素又は窒化アルミニウムの粉末を充填した。充填高さは、配線ボード上の放熱対象の部品のうちで最も高いものの高さに一致させた。粉末の充填後、平板状の水冷パネルを配置した。
【0052】
以上、実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0053】
以上の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
配線ボード上に実装された1つ以上の電子部品と、
前記1つ以上の電子部品の上方に配置された放熱ユニットと、
前記配線ボード及び前記1つ以上の電子部品と前記放熱ユニットとの間の空隙を充たす絶縁性の粉末と、
を有することを特徴とする電子機器。
(付記2)
前記絶縁性の粉末はセラミック粉末であることを特徴とする付記1に記載の電子機器。
(付記3)
前記セラミック粉末は窒化ホウ素又は窒化アルミニウムを有することを特徴とする付記2に記載の電子機器。
(付記4)
前記絶縁性の粉末の表面がバインダで覆われていることを特徴とする付記1乃至3の何れか一に記載の電子機器。
(付記5)
前記配線ボード及び前記1つ以上の電子部品と前記絶縁性の粉末との間に配置された絶縁性のフィルム、を更に有することを特徴とする付記1乃至4の何れか一に記載の電子機器。
(付記6)
前記絶縁性の粉末で充たされた前記空隙を取り囲む絶縁性のフレーム、を更に有することを特徴とする付記1乃至5の何れか一に記載の電子機器。
(付記7)
前記1つ以上の電子部品のうちの少なくとも1つの上に配置され、前記絶縁性の粉末で囲まれた放熱体、を更に有することを特徴とする付記1乃至6の何れか一に記載の電子機器。
(付記8)
前記放熱ユニットは液冷ユニットであることを特徴とする付記1乃至7の何れか一に記載の電子機器。
(付記9)
前記配線ボード上に配置され且つ前記絶縁性の粉末で覆われない更なる電子部品、を更に有することを特徴とする付記1乃至8の何れか一に記載の電子機器。
(付記10)
配線ボード上に1つ以上の電子部品を実装する工程と、
前記1つ以上の電子部品を覆うように前記配線ボード上に絶縁性の粉末を供給する工程と、
前記1つ以上の電子部品を覆う前記絶縁性の粉末上に放熱ユニットを配置する工程と、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
(付記11)
配線ボード上に1つ以上の電子部品を実装する工程と、
前記1つ以上の電子部品の上方に放熱ユニットを配置する工程と、
前記配線ボード及び前記1つ以上の電子部品と前記放熱ユニットとの間の空隙を絶縁性の粉末で充たす工程と、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【符号の説明】
【0054】
10、10’ 電子機器
11 配線ボード
12 放熱ユニット
21、22、23 電子部品
25 放熱体
30 絶縁性の粉末(放熱材)
30’ 粉末(放熱材)
31 スラリー
40、41 絶縁性のフィルム
50 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線ボード上に実装された1つ以上の電子部品と、
前記1つ以上の電子部品の上方に配置された放熱ユニットと、
前記配線ボード及び前記1つ以上の電子部品と前記放熱ユニットとの間の空隙を充たす絶縁性の粉末と、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記絶縁性の粉末はセラミック粉末であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記セラミック粉末は窒化ホウ素又は窒化アルミニウムを有することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記絶縁性の粉末の表面がバインダで覆われていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記配線ボード及び前記1つ以上の電子部品と前記絶縁性の粉末との間に配置された絶縁性のフィルム、を更に有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
配線ボード上に1つ以上の電子部品を実装する工程と、
前記1つ以上の電子部品を覆うように前記配線ボード上に絶縁性の粉末を供給する工程と、
前記1つ以上の電子部品を覆う前記絶縁性の粉末上に放熱ユニットを配置する工程と、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項7】
配線ボード上に1つ以上の電子部品を実装する工程と、
前記1つ以上の電子部品の上方に放熱ユニットを配置する工程と、
前記配線ボード及び前記1つ以上の電子部品と前記放熱ユニットとの間の空隙を絶縁性の粉末で充たす工程と、
を有することを特徴とする電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−60073(P2012−60073A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204590(P2010−204590)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】