説明

電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物及びパターン形成方法

【解決手段】(A)高分子化合物又は高分子化合物の混合物による膜がアルカリ性現像液に不溶性であり、酸の作用により可溶性に変化する高分子化合物又は高分子化合物の混合物、
(B)酸発生剤、
(C)酸の作用を抑制するための塩基性化合物、
(D)溶剤
を含有し、
上記(C)成分は、塩基性活性点として2級又は3級アミン構造を持つ側鎖を有する繰り返し単位を持つ高分子化合物であると共に、上記(A)成分である高分子化合物の一部又は全部である電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【効果】本発明によれば、超微細パターンを要求されるレジストパターンの形成において、上記化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いることで、塩基の存在を均一にでき、ラインエッジラフネスの改善、更には温度依存性の抑制ができ、高解像度が期待できる化学増幅ポジ型レジスト組成物を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体やフォトマスク等の加工に使用する電子線(EB)又は極端紫外線(EUV)に感応する化学増幅ポジ型レジスト組成物に関し、特に電子線又はEUVのビーム照射による露光工程に使用する化学増幅ポジ型レジスト組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路の高集積化に伴いより微細なパターン形成が求められ、0.2μm以下のパターンの加工では、高い感度と高解像性を実現するため、もっぱら酸を触媒として用いる化学増幅型レジスト組成物が使用されている。化学増幅型レジストに用いる材料は、パターン露光に用いるエネルギー線に対してある程度の透過率が必要となることから、用いるエネルギー線の波長に基づき、種々のものが選択されてきた。
【0003】
よく知られているように、現在実用化されている一般的な化学増幅ポジ型レジスト組成物は、かつて2成分系と言われていたものが改良されたもので、その構成成分としてアルカリ性現像液に溶解する高分子化合物の酸性官能基の一部又は全部を酸分解性保護基で保護してアルカリ不溶性とした高分子化合物と、高エネルギー線の照射により酸を発生する酸発生剤を主な機能性成分として含有する。しかし、高い解像性を得るためには、酸発生剤から発生した酸の活性を制御する必要があり、更に成分として塩基性化合物を加えることが必要である。
【0004】
芳香族骨格を構成要素に持つベース樹脂材料は、ArFエキシマレーザー光やF2レーザー光に対しては大きな吸収を示すことから採用が避けられるが、KrFエキシマレーザー光や電子線露光では、骨格が持つ高いエッチング耐性や、フェノール性水酸基が基板への密着性基として良好な物性を与えることから、主たる構成材料として用いられてきた。また、次世代の光源として研究が急がれているEUVでも、芳香族骨格を構成要素に持つ材料がマトリックス材料として用いられる可能性が高い。
【0005】
最も一般的に用いられてきた芳香族骨格を持つ高分子化合物は、4−ヒドロキシスチレン単位を繰り返し単位として含有する高分子化合物である。この化合物は、弱酸性を示すフェノール性水酸基を繰り返し単位内に持ち、この官能基は、基板に対する良好な密着性を示すと共に、アルカリ性現像液に対する溶解性を示す。そこで、酸分解性の保護基によるフェノール性水酸基の保護や、酸分解性保護基で保護された(メタ)アクリル酸繰り返し単位と組み合わせることで、酸触媒によるアルカリ性現像液への溶解性のスイッチを行うことができる。そこで、この概念に基づく多数のポリマーが提案されており、例えば特許文献1(特開2008−95009号公報)では、線幅70nmの矩形のパターンが形成されている。
【0006】
一方、(メタ)アクリル酸繰り返し単位は、置換基が脂環式である場合には波長200nm付近での吸収がそれほど大きくなく、また、共重合によって種々のポリマーが容易に調製できることから、ArFエキシマレーザー光による露光用のレジストとして種々のものが用いられている。また、(メタ)アクリル酸繰り返し単位のエステル置換基に芳香族骨格を持たせたものは、200nm付近での光吸収は大きくなるものの、単にエッチング耐性が高いだけでなく、パターン形成時に、小さいラインエッジラフネスを示す傾向を持つことから、電子線用又はEUV用としての応用が提案されている(特許文献2:特開2007−114728号公報)。
【0007】
上述のようなレジスト組成物の開発において、レジスト性能を向上させるため、それぞれの材料について種々の改良が行われてきており、上述の酸の拡散を抑制するための塩基性化合物についても多くの改良が報告されている。例えば、露光時にレジスト膜上に水の膜を形成してArFエキシマレーザー光を用いて露光を行うArF液浸露光法に用いるレジスト組成物用として、レジスト膜に接触した水相に塩基性化合物が移動、拡散してレジスト表面領域の解像性が変化しないよう、ポリマーに塩基性化合物を結合させたものを使用する方法が提案されている(特許文献3:特開2008−133312号公報)。
【0008】
また、酸拡散を抑止するための目的ではないが、ポリマー中に窒素原子を含む部分構造を持たせる例が、特許文献4(特開2009−86310号公報)にヘテロ環を持つポリマーを用いたレジスト組成物の例として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−95009号公報
【特許文献2】特開2007−114728号公報
【特許文献3】特開2008−133312号公報
【特許文献4】特開2009−86310号公報
【特許文献5】特開平07−319155号公報
【特許文献6】特開2009−263487号公報
【特許文献7】特開2008−102383号公報
【特許文献8】特開2004−115630号公報
【特許文献9】特開2005−8766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の超微細加工技術として利用されている電子線リソグラフィーは、半導体製造用のフォトマスクを作製する際のフォトマスクブランクの加工方法としても不可欠となっている。このフォトマスクブランクの加工における電子線によるパターン描画は、一般に電子線ビームにより行われ、マスクを用いず、ポジ型の場合、レジスト膜の残したい領域以外の部分を、微細面積の電子線ビームで順次照射していくという方法が採られる。そこで、加工面の微細に区切った全領域上を送引していくという作業となるため、フォトマスクを用いる一括露光に比べ時間がかかる。更に、描画でスループットを落とさないためにはレジスト膜が高感度であることが求められる。また描画時間が長くかかるため、初期に描画された部分と後期に描画された部分の差が生じ易く、露光部分の真空中での経時安定性は重要な性能要求項目である。更に、描画後に行うポストエクスポージャーベーク時においても温度依存性のある大きな線幅変動を与えることは、微細なパターンを形成する上でマスク加工に不利であり、より温度依存性の小さい化学増幅ポジ型レジスト組成物の開発が望まれている。
【0011】
ところで、上記のようなレジスト感度やパターンプロファイルの制御は、レジスト組成物に使用する材料の選択や組み合わせ、プロセス条件等によって種々の改善がなされてきた。その改良の一つとして、化学増幅型レジスト膜の解像性に重要な影響を与える塩基の拡散の問題がある。フォトマスク加工では、上述のように得られるレジストパターンの形状が、露光後、露光後加熱までの時間に依存して変化しないことが求められているが、時間依存性変化の大きな原因は露光により発生した塩基の拡散である。この塩基の拡散の問題は、フォトマスク加工に限らず、一般のレジスト膜においても感度と解像性に大きな影響を与えることがある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ラインエッジラフネスの低減、温度変化に対しての線幅変動低減、また高解像性の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物、及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、レジスト膜表面が水のような媒体に接触する特許文献3(特開2008−133312号公報)に記載された液浸露光法のような方法ではない電子線露光法やEUV露光法に用いる化学増幅ポジ型レジスト組成物においても、下記一般式(1)及び(2)で示される繰り返し単位を構成成分として持つ高分子化合物を含有する化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いることにより、ラインエッジラフネス及び温度依存性の低減、更に解像性が向上することを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物及びパターン形成方法を提供する。
請求項1:
(A)単一種の高分子化合物又は複数種の高分子化合物の混合物であり、上記高分子化合物の一部又は全部は酸により脱保護される保護基を持つことで、上記高分子化合物又は上記高分子化合物の混合物による膜がアルカリ性現像液に不溶性であり、酸の作用により可溶性に変化する高分子化合物又は高分子化合物の混合物、
(B)酸発生剤、
(C)酸の作用を抑制するための塩基性化合物、及び
(D)溶剤
を含有する電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物であって、
上記(C)成分である塩基性化合物は、塩基性活性点として2級アミン構造又は3級アミン構造を持つ側鎖を有する繰り返し単位を持つ高分子化合物であると共に、上記(A)成分である高分子化合物の一部又は全部であり、
上記高分子化合物である(C)成分以外の(C)成分として分子量1,000以下の化合物を含まないか、含む場合には(B)成分である酸発生剤の20分の1モル以下であることを特徴とする電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物。
請求項2:
上記アミン構造を持つ側鎖を有する繰り返し単位は、上記側鎖が結合する主鎖の炭素から上記アミン構造の窒素原子までの間に、環構造に含まれない連続する2原子以上の原子鎖を有する繰り返し単位である請求項1に記載の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物。
請求項3:
上記(C)成分である塩基性化合物は、下記一般式(1)及び(2)
【化1】

(式中、Aは単結合、又は鎖の中間にエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。B1、B2及びB3はそれぞれ独立に単結合、又はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、エーテル性酸素原子を介していてもよい炭素数5〜10の2価の脂環式基、及びエーテル性酸素原子を介していてもよい炭素数6〜14の2価の芳香族基より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせよりなる結合鎖である。Z1及びZ2は単結合、−CO−O−又は−O−CO−を示す。但し、B1、B2及びB3にエーテル性酸素原子が含まれる場合は、−O−O−構造となることはなく、Z2が−CO−O−又は−O−CO−である場合は、B3が単結合になることはない。R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示す。但し、R3、R4は同時に水素原子であることはない。R3及びR4は互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよく、その場合、炭素数2〜12のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を示す。また、B3とR3又はB3とR4が結合して、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、その場合、該窒素原子を含む環は5〜7員環であるが、該窒素原子の孤立電子対が該窒素原子を含む環に芳香族性を与える構造の環となることはなく、また、該窒素原子を含む環が芳香環となることはない。aは0〜4の整数、bは1〜5の正の整数である。p、qはそれぞれ独立に0又は1を示し、tは0〜2の整数を示す。但し、qが0であるとき、B1の主鎖炭素と結合する原子は、エーテル性酸素原子又は芳香環の一部をなす炭素原子であり、更にqが0かつZ1及びZ2が単結合である場合には、B1、B2及びB3の一部には必ずアルキレン基に由来する2つ以上の連続する炭素原子又は芳香族基が含まれる。)
で示される繰り返し単位を構成成分として持つ高分子化合物である請求項2に記載の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物。
請求項4:
上記(C)成分である塩基性化合物は、上記式(1)及び(2)で示される繰り返し単位に加えて、更に下記一般式(3)で示される繰り返し単位を構成成分として持つ高分子化合物である請求項3に記載の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化2】

(式中、Cは単結合又はエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R5はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。Xはdが1の場合には酸不安定基を、dが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基を示すが、少なくとも1つは酸不安定基である。aは0〜4の整数である。cは0又は1であり、dは1〜3の整数である。sは0又は1を示し、wは0〜2の整数を示す。)
請求項5:
被加工基板上に請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、電子線又はEUV光をパターン照射する工程、及びアルカリ性現像液を用いて現像してレジストパターンを得る工程を含むパターン形成方法。
請求項6:
上記被加工基板が、フォトマスクブランクである請求項5に記載のパターン形成方法。
請求項7:
上記フォトマスクブランクの最表面が、クロム化合物である請求項6記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、超微細パターンを要求されるレジストパターンの形成において、上記に示す(C)成分の塩基性高分子化合物を含有する化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いることで、塩基の存在をより均一にすることができ、ラインエッジラフネスの改善、更には温度依存性の抑制ができ、高解像度が期待できる電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のレジスト組成物は、上述のように、一般的な化学増幅ポジ型レジスト組成物の基本構成成分である(A)単一種の高分子化合物又は複数種の高分子化合物の混合物であり、上記高分子化合物の一部又は全部は酸により脱保護される保護基を持つことで、上記高分子化合物又は上記高分子化合物の混合物による膜がアルカリ性現像液に不溶性であり、酸の作用により可溶性に変化する高分子化合物又は高分子化合物の混合物、(B)酸発生剤、(C)酸の作用を抑制するための塩基性化合物、及び(D)溶剤を必須構成成分として持つが、上記(C)成分である塩基性化合物は、塩基性活性点として異なる炭素2つが結合した2級アミノ基(2級アミン構造)又は異なる炭素が3つ結合した3級アミノ基(3級アミン構造)を持つ側鎖を有する繰り返し単位を持つ高分子化合物であると共に、上記(A)成分である高分子化合物の一部又は全部であり、上記高分子化合物である(C)成分以外の(C)成分として分子量1,000以下の化合物を含まないか、含む場合には(B)成分である酸発生剤の20分の1モル以下であることを特徴とする。なお、上記アミノ基の定義はアミド基を含まない。
【0017】
(C)成分である塩基性化合物は、化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いてパターン形成を行う際、レジスト膜中で高エネルギー線の照射により酸発生剤より生じた酸の反応性を制御する機能を持ち、高解像性を得るためには実質上必須の成分として添加されてきた。また、塩基性成分を高分子材料として添加する方法は、特許文献5(特開平07−319155号公報)等にポリビニルピリジンを用い得ることが記述されているが、実用化はされてこなかった。また、特許文献4(特開2009−86310号公報)には高分子化合物の構成単位としてヘテロ原子を持つ環状構造を有する繰り返し単位を高分子化合物に導入するレジスト組成物が示され、窒素原子を有する環状構造を有する高分子化合物を開示しているが、これは、上記高分子化合物とは別に低分子量の塩基性化合物を加えることによって酸の活性の制御がされるレジスト組成物である。事実、実施例で用いられた高分子化合物のヘテロ原子が酸素である場合と窒素である場合での感度を比較すると、窒素原子が酸の活性抑制剤として有効に機能していないことが分かる。
【0018】
これに対し、本発明者らは、塩基性活性点として2級アミン構造又は3級アミン構造を持つ側鎖を有する繰り返し単位を持つ高分子化合物を酸の活性抑制剤である塩基性化合物として用いることにより、ラインエッジラフネスの改善、更には温度依存性の抑制ができ、高解像度が期待できる化学増幅ポジ型レジスト組成物を得ることができることを見出した。
【0019】
上記(C)成分である塩基性化合物は、有効な酸の活性制御能を得るために、一定以上の塩基性が必要であり、アミド性窒素原子やピリジン性窒素原子のような低い塩基性を示す活性点では有効な効果が得られない。
【0020】
また、上記2級又は3級アミン構造を側鎖に有する繰り返し単位は、上記側鎖が結合する主鎖の炭素から上記アミノ基の窒素原子までの間に、環構造に含まれない連続する2原子以上の原子鎖を有するものであることが好ましい。これは、高分子化合物中のアミノ基窒素は、低分子化合物である場合に比較して空間的制限を受けることから酸捕捉能が低下するため、塩基性化合物としての機能を確保するためには一定以上の側鎖の自由度を持つことが好ましいためである。環構造に含まれない連続する2原子以上の原子鎖とは、例えば後述するように、エステル構造であってもよいし、置換基を有していてもよいジメチレン鎖やエチレンオキシド鎖であってもよく、更にそれらが組み合わされたり、より長いメチレン鎖、エチレンオキシド鎖であってもよい。
【0021】
電子線又はEUV露光用のレジスト組成物に用いるための上記(C)成分である塩基性化合物の好ましい例としては、下記一般式(1)及び(2)で示される繰り返し単位を構成成分として持つ高分子化合物を挙げることができる。
【化3】

(式中、Aは単結合、又は鎖の中間にエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。B1、B2及びB3はそれぞれ独立に単結合、又はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、エーテル性酸素原子を介していてもよい炭素数5〜10の2価の脂環式基、及びエーテル性酸素原子を介していてもよい炭素数6〜14の2価の芳香族基より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせよりなる結合鎖である。Z1及びZ2は単結合、−CO−O−又は−O−CO−を示す。但し、B1、B2及びB3にエーテル性酸素原子が含まれる場合は、−O−O−構造となることはなく、Z2が−CO−O−又は−O−CO−である場合は、B3が単結合になることはない。R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示す。但し、R3、R4は同時に水素原子であることはない。R3及びR4は互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよく、その場合、炭素数2〜12のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を示す。また、B3とR3又はB3とR4が結合して、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、その場合、該窒素原子を含む環は5〜7員環であるが、該窒素原子の孤立電子対が該窒素原子を含む環に芳香族性を与える構造の環となることはなく、また、該窒素原子を含む環が芳香環となることはない。aは0〜4の整数、bは1〜5の正の整数である。p、qはそれぞれ独立に0又は1を示し、tは0〜2の整数を示す。但し、qが0であるとき、B1の主鎖炭素と結合する原子は、エーテル性酸素原子又は芳香環の一部をなす炭素原子であり、更にqが0かつZ1及びZ2が単結合である場合には、B1、B2及びB3の一部には必ずアルキレン基に由来する2つ以上の連続する炭素原子又は芳香族基が含まれる。)
【0022】
上記式(1)で示される繰り返し単位は、エッチング耐性を与えると共に、基板に対する密着性を与える繰り返し単位である。この繰り返し単位は、上述の先行技術を含め、既に多くのKrFエキシマレーザー用レジスト組成物や電子線用レジスト組成物で用いられている。
【0023】
上記式(1)中、Aは単結合、又は鎖の中間にエーテル性酸素原子(エーテル結合)を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。
好ましいアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられ、エーテル性酸素原子を含む場合には、上記式(1)中のpが1である場合には、エステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、pが0である場合には、主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル性酸素原子が入ってもよい。なお、上記アルキレン基の炭素数が10を超える場合はアルカリ性現像液に対する溶解性が低くなり、好ましくない。
【0024】
2はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。炭素数1〜6のアルキル基の好ましい例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及び分岐又は環構造を持つ炭素骨格の構造異性体等が挙げられる。なお、炭素数が6を超えると、アルカリ性現像液に対する溶解性が低くなり、好ましくない。
【0025】
aは0〜4の整数、bは1〜5の正の整数であるが、tが0の場合、好ましくはaは0〜3の整数、bは1〜3の正の整数であり、tが1又は2の場合、好ましくはaは0〜4の整数、bは1〜5の正の整数である。
tは0〜2の整数を示し、0の場合はベンゼン骨格、1の場合はナフタレン骨格、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ示す。
【0026】
上記式(1)で示される繰り返し単位のうち、pが0かつAが単結合である場合、つまり芳香環が高分子化合物の主鎖に直接結合した、即ちリンカーのない場合の繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン単位に代表される、水酸基が置換された芳香環にα−位置換又は非置換のビニル基が結合されたモノマーに由来する単位であるが、好ましい具体例としては、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、5−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン、6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン等を挙げることができる。
また、pが1である場合、つまりリンカーとしてエステル骨格を有する場合の繰り返し単位は、(メタ)アクリル酸エステルに代表される、カルボニル基が置換したビニルモノマー単位である。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル由来のリンカー(−CO−O−A−)を持つ場合の上記式(1)の好ましい具体例を以下に示す。
【化4】

【0028】
上記式(2)で示される繰り返し単位は、塩基性活性点として異なる炭素2つが結合した2級アミノ基、又は異なる炭素が3つ結合した3級アミノ基を持つ側鎖を有する繰り返し単位である。Z2が−O−CO−である場合、B3が単結合になることはないため、上記式(2)中にNで示された窒素原子はアミド性窒素となることはなく、また、ピリジン環やピロール環に含まれる窒素とは異なることからプロトンを強く捕捉する能力を有する。また、上記式(2)で示される繰り返し単位の側鎖は、エステル構造を有する場合は、又はエステル構造を持たない場合でも、上記式(2)中のB1、B2又はB3で示された基は、部分構造として2炭素以上のアルキレン基や芳香族基に由来する自由回転可能な2つ以上の単結合を有する結合鎖を含むことから、窒素原子はプロトンを捕捉するために十分な熱運動能を持つ。特に、エステル構造を持つ場合や、上記式(2)中のB1、B2又はB3で示された基が部分構造としてアルキレン基に由来する2つ以上の連続する炭素原子を含む場合には、前記Nで示された窒素原子は高い熱運動能を持つことから有利な酸捕捉能を有する。つまり、上記式(2)中のNで示された窒素原子は、十分な熱運動能をもち有利な酸捕捉能を有する。
【0029】
なお、特許文献4(特開2009−86310号公報)に、ポリマー中にピロール環、ピリジン環に由来する窒素原子や、主鎖との相対位置において自由度の低い窒素原子を持つヘテロ環を持たせたポリマーを使用した例が挙げられているが、特許文献4(特開2009−86310号公報)に示されたレジスト組成物は、塩基性化合物を別に添加するものである。その実施例データを見ると、窒素原子を持つポリマーの感度は窒素原子を持たないポリマーの感度よりも低くなる傾向を示しておらず、特許文献4(特開2009−86310号公報)に挙げられたポリマー中の窒素はプロトン捕捉能が低く、本発明の上記式(2)で示された繰り返し単位とは異なる機能を果たしていることが分かる。
【0030】
上記式(2)中、B1、B2及びB3はそれぞれ独立に単結合、又はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、エーテル性酸素原子を介していてもよい炭素数5〜10の2価の脂環式基、及びエーテル性酸素原子を介していてもよい炭素数6〜14の2価の芳香族基より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせよりなる結合鎖である。また、Z1及びZ2は単結合、−CO−O−又は−O−CO−を示す。但し、B1、B2及びB3にエーテル性酸素原子が含まれる場合は、−O−O−構造となることはなく、Z2が−CO−O−又は−O−CO−である場合は、B3が単結合になることはない。
【0031】
1、B2及びB3を構成することができる好ましいアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及び分岐構造を持つこれらの構造異性体等が挙げられ、更に上記アルキレン基は中間にエーテル性酸素原子を含んでいてもよい。好ましい具体例としては、エステル酸素側より、エチレンオキシメチレン基、エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシ−1,2−プロピレン基、エチレンオキシ−1,3−プロピレン基、1,2−プロピレンオキシメチレン基、1,2−プロピレンオキシエチレン基、1,2−プロピレンオキシ−1,2−プロピレン基、1,2−プロピレンオキシ−1,3−プロピレン基、1,3−プロピレンオキシメチレン基、1,3−プロピレンオキシエチレン基、1,3−プロピレンオキシ−1,2−プロピレン基、1,3−プロピレンオキシ−1,3−プロピレン基等が挙げられる。また、好ましい脂環式基としては、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、2,3−ノルボルニレン基、2,5−ノルボルニレン基、2,6−ノルボルニレン基、1,3−アダマンチレン基等が挙げられる。好ましい芳香族基としては、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基等が挙げられる。
【0032】
1、B2及びB3は、それぞれ上記例示した基等を1種単独で又は2種以上を組み合わせて炭素数が14、好ましくは10を超えないように選択可能である。なお、炭素数が14を超える場合は、アルカリ性現像液に対する溶解性が低くなり、好ましくない。
【0033】
上記式(2)中、qは0又は1を示す。qが0である場合には、B1の主鎖炭素と結合する原子が、エーテル性酸素原子又は芳香環の一部をなす炭素原子であることにより、重合時の繰り返し単位(2)を得るための材料モノマーを、他の繰り返し単位との間で容易に共重合させ得る。qが1である場合、上記式(2)で示される単位は(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位である。また、qが0かつZ1及びZ2が単結合である場合には、B1、B2及びB3の一部には必ずアルキレン基に由来する2つ以上の連続する炭素原子、又は芳香族基が含まれる。
【0034】
3、R4はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示し、但し、R3、R4は同時に水素原子であることはない。また、R3、R4は互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよく、その場合、炭素数2〜12のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を示す。
【0035】
好ましくは炭化水素基としてメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、エーテル結合を含む炭化水素基としては、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−プロポキシエチル基、2−イソプロポキシエチル基、2−メトキシプロピル基、2−エトキシプロピル基、2−プロポキシプロピル基、2−イソプロポキシプロピル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−プロポキシプロピル基等が挙げられる。互いに環を形成する場合は、好ましくは5員環又は6員環である。上記ヘテロ原子としては、酸素、窒素、硫黄等が挙げられ、より好ましくは酸素である。
【0036】
また、B3とR3又はB3とR4が結合して、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、その場合、該窒素原子を含む環は5〜7員環であり、好ましくは5員環又は6員環である。但し、B3とR3又はB3とR4が結合して、これらが結合する窒素原子と共に環を形成する場合、上記一般式(2)中のNで示された窒素原子の孤立電子対が該窒素原子を含む環に芳香族性を与える構造の環となることはなく、また、該窒素原子を含む環が芳香環となることはない。このような除かれる構造の環としては、ピロール環、ピリジン環等が挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステルに由来する、即ちqが1であり、B1及びB2が単結合、Z1及びZ2が単結合、B3がアルキレン基の場合の好ましい具体例を以下に示す。なお、下記式中、R1は上記の通りであり、Meはメチル基を示す(以下、同様)。
【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
qが1であり、B1及びB2が単結合、Z1及びZ2が単結合、B3が脂環式基の場合の好ましい具体例を以下に示す。
【化9】

【0043】
qが1であり、B1及びB2が単結合、Z1及びZ2が単結合、B3がエーテル性酸素原子を含むアルキレン基の場合の好ましい具体例を以下に示す。
【化10】

【0044】
qが1であり、B1及びB2が単結合、Z1及びZ2が単結合、B3が芳香族基の場合の好ましい具体例を以下に示す。
【化11】

【0045】
qが1であり、B1が単結合、Z1が単結合、B2が脂環式基、Z2が−O−CO−又は−CO−O−、B3がアルキレン基の場合の好ましい具体例を以下に示す。
【化12】

【0046】
【化13】

【0047】
qが1であり、B1が単結合、Z1が単結合、B2がアルキレン基、Z2が−CO−O−、B3がアルキレン基の場合の好ましい具体例を以下に示す。
【化14】

【0048】
qが0であり、B1が単結合、Z1が単結合、B2が芳香族基、Z2が単結合、B3が単結合、アルキレン基又はエーテル性酸素原子を含むアルキレン基の場合の好ましい具体例を以下に示す。
【化15】

【0049】
【化16】

【0050】
【化17】

【0051】
qが0であり、B1が単結合、Z1が単結合、B2が芳香族基であり、Z2が−CO−O−、B3がアルキレン基の場合の好ましい具体例を以下に示す。
【化18】

【0052】
qが0であり、B1が芳香族基、Z1が−CO−O−、B2が脂環式基、Z2が−CO−O−又は−O−CO−、B3がアルキレン基の場合の好ましい具体例を以下に示す。
【化19】

【化20】

【0053】
更にqが0であり、B1及びB2が単結合、Z1及びZ2が単結合、B3がエーテル性酸素原子を含有するアルキレン基である場合の好ましい具体例を以下に示す。
【化21】

【0054】
なお、(C)成分としての上述の高分子化合物は、(A)成分の一部であるか全部であり、また(A)成分は、単一種の高分子化合物又は複数種の高分子化合物の混合物であって、上記高分子化合物の一部又は全部は酸により脱保護される保護基を持つことで、上記高分子化合物又は上記高分子化合物の混合物による膜がアルカリ性現像液に不溶性であり、酸の作用により可溶性に変化する高分子化合物又は高分子化合物の混合物である。
【0055】
ところで、(A)成分である高分子化合物が混合物の場合、アルカリ性現像液に不溶性であり、酸の作用により可溶性に変化するとは、混合する一部の高分子化合物は、単体としては酸の作用がなくてもアルカリ性現像液に対して可溶性である場合や、酸が作用しても単体としてはアルカリ性現像液に対して不溶性である場合があっても、混合物としてレジスト膜を形成した場合、酸発生剤より発生する酸の作用を受ける前はアルカリ性現像液に不溶性であり、酸の作用を受けると、一部又は全部の高分子化合物が持つ酸分解性保護基が脱離して、高分子化合物の混合物としてアルカリ性現像液に対して可溶性になることをいう。そこで、(C)成分としての上述の高分子化合物を(A)成分の一部として用いる場合には、アルカリ性現像液に可溶性であってもよく、酸の作用を受けた後も(C)成分としての上述の高分子化合物自体はアルカリ性現像液に不溶性であってもよいが、後者の場合には、現像後のスカムの原因となる可能性が生じるため、酸処理後にもアルカリ不溶性となることを避ける設計が好ましく採られる。一方、前者である場合にも、(A)成分として組み合わせる高分子化合物の制限が大きくなることから、(C)成分である上述の高分子化合物は、更に酸分解性保護基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位を有する高分子化合物であることが好ましい。
【0056】
上記酸分解性保護基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位は、フェノール性水酸基を保護したものや、ビニル安息香酸や(メタ)アクリル酸由来等のカルボキシル基を保護したものを例示するまでもなく多数が公知であり、それらのものは基本的には全て適用可能である。
【0057】
電子線露光やEUV露光用として、(C)成分である上述の高分子化合物に導入するために特に有用な分解性保護基で保護された酸性官能基を持つ繰り返し単位としては、下記一般式(3)で示される単位を挙げることができる。
【0058】
【化22】

(式中、Cは単結合又はエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R5はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。Xはdが1の場合には酸不安定基を、dが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基を示すが、少なくとも1つは酸不安定基である。aは0〜4の整数である。cは0又は1であり、dは1〜3の整数である。sは0又は1を示し、wは0〜2の整数を示す。)
【0059】
上記式(3)中、Cは単結合、又はエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。好ましいアルキレン基としては、上記Aとして例示したものと同様の基を挙げることができる。R5はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。好ましいアルキル基としては、上記R2として例示したものと同様の基を挙げることができる。
【0060】
上記式(3)中、Xはdが1の場合には酸不安定基を、dが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基を示すが、少なくとも1つは酸不安定基である。即ち、上記式(3)で示される単位は、上記式(1)で示される単位の芳香環に置換したフェノール性水酸基の少なくとも1つを酸不安定基に置換したもの、又はフェノール性水酸基がカルボキシル基に置換され、カルボン酸が酸不安定基で保護されたものであり、上記酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅型レジスト組成物で用いられてきた、酸によって脱離して酸性基を与えるものを、基本的にはいずれも使用することができる。
【0061】
上記のフェノール性水酸基、カルボキシル基のいずれの場合にも、特に酸不安定基の選択として、3級アルキル基による保護は、レジスト膜厚を10〜100nmといった薄膜で、例えば45nm以下の線幅を持つような微細パターンを形成した場合にも、エッジラフネス(パターンの端部が不整形状になる現象)が小さなパターンを与えるため好ましい。更に、その際使用される3級アルキル基としては、得られた重合用のモノマーを蒸留によって得るために、炭素数4〜18のものであることが好ましい。また、該3級アルキル基の3級炭素が有するアルキル置換基としては、炭素数1〜15の、一部エーテル結合やカルボニル基のような酸素含有官能基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、置換基間で結合し、環を形成していてもよい。
【0062】
上記3級アルキル基の3級炭素の好ましい置換基としては、酸素官能基を持っていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、3級炭素の置換アルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。好ましい置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、7−オキサノルボルナン−2−イル基、シクロペンチル基、2−テトラヒドロフリル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、3−オキソ−1−シクロヘキシル基等を挙げることができ、また、3級アルキル基として具体的には、t−ブチル基、t−ペンチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−アダマンチル−1−メチルエチル基、1−メチル−1−(2−ノルボルニル)エチル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、1−メチル−1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)エチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−プロピルシクロペンチル基、1−シクロペンチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(2−テトラヒドロフリル)シクロペンチル基、1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−シクロペンチルシクロヘキシル基、1−シクロヘキシルシクロヘキシル基、2−メチル−2−ノルボルニル基、2−エチル−2−ノルボルニル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、3−エチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−3−オキソ−1−シクロヘキシル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、5−ヒドロキシ−2−メチル−2−アダマンチル基、5−ヒドロキシ−2−エチル−2−アダマンチル基等を例示できるが、これらに限定されない。
【0063】
また、下記一般式(4)
【化23】

(式中、R6は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、Yは炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状(多環式のものを含む)のアルキル基を示す。)
で示されるアセタール基はよく利用され、比較的パターンと基板の界面が矩形であるパターンを安定して与える酸不安定基として有用な選択肢である。特に、より高い解像性を得るためには、炭素数7〜30の多環式アルキル基が含まれることが好ましい。また、Yが多環式アルキル基を含む場合、該多環式環構造を構成する2級炭素とアセタール酸素との間で結合を形成していることが好ましい。なぜなら、環構造の3級炭素上で結合している場合、高分子化合物が不安定な化合物となり、レジスト組成物として保存安定性に欠け、解像力も劣化することがあるためである。逆に、Yが炭素数1以上の直鎖状のアルキル基を介在した1級炭素上で結合した場合、高分子化合物のガラス転移温度(Tg)が低下し、現像後のレジストパターンがベークにより形状不良を起こすことがある。
【0064】
上記式(4)で示されるアセタール基の具体例としては、下記のものを例示することができる。
【化24】

【0065】
なお、R6は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であるが、酸に対する分解性基の感度の設計に応じて適宜選択される。例えば、比較的高い安定性を確保した上で強い酸で分解するという設計であれば水素原子が選択され、比較的高い反応性を用いてpH変化に対して高感度化という設計であれば直鎖状のアルキル基が選択される。レジスト組成物に配合する酸発生剤や塩基性化合物との組み合わせにもよるが、上述のような末端に比較的大きなアルキル基が置換され、分解による溶解性変化が大きく設計されている場合には、R6としてアセタール炭素との結合を持つ炭素が2級炭素であるものが好ましい。2級炭素によってアセタール炭素と結合するR6の例としては、イソプロピル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を挙げることができる。
【0066】
その他の酸不安定基の選択としては、フェノール性水酸基に−CH2COO−(3級アルキル基)を結合させるという選択を行うこともでき、これそのものは水酸基の保護基ではない点で酸不安定基の例外的構造である。この場合に使用する3級アルキル基は、上述のフェノール性水酸基の保護に用いる3級アルキル基と同じものを使用することができる。
【0067】
(C)成分である上述の高分子化合物は、更に付加的機能を与える繰り返し単位を含むことができ、そのような繰り返し単位として種々のものが公知であるが、例えば、高いエッチング耐性を与えるための繰り返し単位として、下記一般式(5)及び(6)は有用である。
【化25】

(式中、eは0〜4の整数であり、R7はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、酸不安定基で保護された水酸基、炭素数2〜7のハロゲン置換されていてもよいアシルオキシ基、炭素数1〜6のハロゲン置換されていてもよいアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン置換されていてもよいアルコキシ基、又は炭素数2〜7のハロゲン置換されていてもよいアルコキシカルボニル基を示す。)
【0068】
上記R7において、これがハロゲン原子を示す場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基のアルコキシ基としては、炭素数1〜6、特に1〜4のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、イソプロポキシ基等である。置換可アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、及びこれらのアルキル基の水素原子の1個又は複数個をハロゲン原子等で置換した置換アルキル基が挙げられる。また、アシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基及びその構造異性体、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等や、これらの基の水素原子の一部がハロゲン原子に置換されたものを好ましく用いることができる。なお、ハロゲン置換される場合には、塩素原子又はフッ素原子で置換されていることが好ましい。また、R7が酸不安定基で保護された水酸基を示す場合、該酸不安定基は、上記式(3)のXで示したものに用いることができるものが、いずれも使用できる。
【0069】
上記式(5)及び/又は(6)で示される繰り返し単位を構成単位として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて、主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性を高めるという効果を得ることができる。
【0070】
(C)成分である上述の高分子化合物には、上述の繰り返し単位のほか、目的とする性能を阻害しない範囲、これは繰り返し単位にもよるが、例えば20モル%以下であれば、他の繰り返し単位を含有し得る。含有し得る繰り返し単位としては、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、ビニルエーテル誘導体、芳香族ビニル化合物等が、官能基としてはアルコールやラクトン、酸分解性保護基で保護されたカルボン酸等が挙げられるが、これらは既に多数公知(例えば特許文献2:特開2007−114728号公報や特許文献4:特開2009−86310号公報)であることから、ここでは詳述しない。
【0071】
上記(C)成分である上述の高分子化合物を構成する繰り返し単位の含有率は、下記のように設計することができる。
まず、上記高分子化合物に含まれる極性を与える上記式(1)で示される繰り返し単位は、極性の強さと脂溶性にもよるが、5モル%以上含まれることが好ましく、より好ましくは30モル%以上である。また、アルカリ性現像液に対する溶解性という観点からは、上記式(3)で示される繰り返し単位や、上記その他の繰り返し単位の一つである酸分解性保護基で保護されたアクリル酸エステル誘導体単位と合わせた合計の含有率が35モル%以上、好ましくは40モル%以上となるよう設計される。また、この場合、上記式(1)で示される繰り返し単位は1種のみが用いられても、複数種が混合されて用いられてもよい。なお、その上限については、本発明のレジスト組成物に用いる高分子化合物が単一材料である場合と、(C)成分である高分子化合物のブレンドを行う場合や、後述するように上記(A)成分の高分子化合物として(C)成分の高分子化合物とは異なる高分子化合物、即ち塩基性側鎖を持たない高分子化合物が配合される場合では、全く設計が異なる。上記ポリマーにおける繰り返し単位(1)の上限という意味では、上記ポリマー以外のポリマーを上記(A)成分の高分子化合物としてブレンドする場合には上記繰り返し単位(1)が非常に高含有比であってもよく、上記ポリマーを構成する繰り返し単位として、後述の繰り返し単位(2)を除いた全てが繰り返し単位(1)で占められてもよい。
【0072】
また、塩基性を有する上記式(2)で示される繰り返し単位の含有量は、レジスト膜を構成するレジスト組成物に含まれる高分子化合物全体に対する割合と、単体としての高分子化合物中の構成比との2つ間で設計することが必要である。本発明の効果を得るためには、レジスト膜を構成する高分子化合物全体における合計の繰り返し単位中、上記式(2)で示される繰り返し単位の含有率が、好ましくは0.005〜10モル%、より好ましくは0.01〜3モル%、更に好ましくは0.1〜1.5モル%となるように設計される。そこで、上記(A)成分の高分子化合物の全てが上記(C)成分である高分子化合物であり、かつ該高分子化合物が単一材料である場合には、上記塩基性を有する繰り返し単位(2)の含有率は、好ましくは0.005〜10モル%、より好ましくは0.01〜3モル%、更に好ましくは0.1〜1.5モル%となる。
【0073】
また、(C)成分である高分子化合物のブレンドを行う場合や、後述するように上記(A)成分の高分子化合物として(C)成分の高分子化合物とは異なる高分子化合物、即ち塩基性側鎖を持たない高分子化合物が配合される場合には、上記範囲とは異なる構成比を持つ高分子化合物を配合することがある。上記式(2)で示される繰り返し単位を最大に含ませるためには、上記式(1)で示される繰り返し単位の必要量以外を全て上記繰り返し単位とすることができるが、一般的には、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下として配合することで、レジストパターン形成における良好なクエンチ効果を得ることができる。また、この場合、上記式(2)で示される繰り返し単位は1種のみが用いられても、複数種が混合されて用いられてもよい。
【0074】
上記式(3)で示される繰り返し単位は、レジスト膜をアルカリ不溶性とし、酸の作用によって可溶性に変化させる繰り返し単位であるが、この単位は、上記(A)成分の高分子化合物の一部として上記(C)成分の高分子化合物ではない高分子化合物が用いられ、これによって現像液に対する溶解性が制御される場合には、上記(C)成分である高分子化合物の必須繰り返し単位ではない。しかし、高分子化合物間のブレンドを行う際の自由度を確保する上では上記式(3)で示される繰り返し単位が含まれることが好ましい。上記式(3)で示される繰り返し単位が含まれる場合、含有率は好ましくは0より大きく50モル%以下、より好ましくは10〜45モル%である。また、この場合、上記式(3)で示される繰り返し単位は1種のみが用いられても、複数種が混合されて用いられてもよい。
【0075】
上記式(5)や(6)で示される繰り返し単位は、主鎖に環構造を与え、エッチング耐性を向上させる単位であり、1種のみでも、複数種を組み合わせて使用してもよく、エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには高分子化合物を構成する全繰り返し単位中、5モル%以上の導入が好ましい。また、上記式(5)や(6)中の官能基が、極性を持ち基板への密着性を与える単位であるか、置換基が上述の酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位である場合の導入率は、上述のそれぞれの好ましい範囲に合算され、官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合には、上記導入率は30モル%以下であることが好ましい。官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合の導入率が30モル%を超えると、現像欠陥の原因となることがある。
【0076】
上記(C)成分である高分子化合物は、主要構成単位として上述の繰り返し単位が含まれ、かつ上述の含有率で含まれることが望ましいが、その他の繰り返し単位として常用される公知の繰り返し単位を、目安として30モル%以下程度であれば含んでもよい。その他の繰り返し単位としては、特許文献2(特開2007−114728号公報)にも示されたような、常用される酸不安定基で保護された(メタ)アクリル酸エステル単位や、ラクトン構造等の密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位を使用してもよい。これらのその他の繰り返し単位によってレジスト膜の特性の微調整を行ってもよいが、これらの単位を含まなくてもよい。
【0077】
本発明のレジスト組成物に用いる上記繰り返し単位を含有する高分子化合物は、公知の方法によって、それぞれの単量体を必要に応じて保護、脱保護反応を組み合わせ、共重合を行って得ることができる。共重合反応は特に限定されるものではないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合又は配位重合である。これらの方法については特許文献7〜9(特許文献7:特開2008−102383号公報、特許文献8:特開2004−115630号公報、特許文献9:特開2005−8766号公報)を参考にすることができる。
【0078】
(C)成分である上述の高分子化合物の重量平均分子量は、一般的な方法としてポリスチレンを標準サンプルとしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、好ましくは1,000〜50,000であり、より好ましくは2,000〜20,000である。重量平均分子量が1,000より小さいと、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下すると共に、ラインエッジラフネスが劣化することがある。一方、上記分子量が必要以上に大きくなった場合、解像するパターンにもよるが、ラインエッジラフネスが増大する傾向を示し、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合には、上記分子量を20,000以下に制御することが好ましい。
【0079】
更に、本発明に用いる上記高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.0、特に1.0〜1.8と狭分散であることが好ましい。分子量分布が広い場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化することがある。
【0080】
本発明のレジスト組成物の(A)成分であるアルカリ性現像液に不溶性であり、酸の作用により可溶性に変化する高分子化合物が、単一の高分子化合物又は上述の(C)成分の概念による高分子化合物のみの混合物である場合には、上述以外の高分子化合物を含まないが、本発明のレジスト組成物には、上述の(C)成分の概念による高分子化合物以外の高分子化合物を(A)成分の一部として加えることもできる。
【0081】
このような上述の(C)成分の概念による高分子化合物でない(A)成分の高分子化合物としては、上述の(C)成分の概念による高分子化合物と混合物とした際に、該混合物による膜がアルカリ性現像液に不溶性であり、酸の作用により可溶性に変化するものであればいずれも使用可能であるが、(C)成分の概念による高分子化合物と混合した際に相分離を起こさないものである必要があり、繰り返し単位の基本構造が類似であるがアミノ基を含有する繰り返し単位を含まない高分子化合物を選択することが好ましい。
【0082】
例えば、電子線露光用又はEUV露光用として上記式(1)〜(3)から選ばれる繰り返し単位を含む高分子化合物を用いた場合には、上記式(1)と(3)を含有する高分子化合物を上述の(C)成分の概念による高分子化合物でない(A)成分の高分子化合物として選択することが好ましい。また、上記式(5)や(6)で示される繰り返し単位は、相互に類似した繰り返し単位として扱うことができることから、上述の類似性は厳密である必要はないが、殆どの繰り返し単位が(メタ)アクリル酸系モノマー由来であるものと、殆どの繰り返し単位がスチレン系モノマー由来であるものとのような組み合わせは好ましくない。
【0083】
なお、上述のように、上述の(C)成分の概念による高分子化合物同士や、(C)成分の概念による高分子化合物と(C)成分の概念による高分子化合物でない(A)成分に属する高分子化合物をブレンドする場合でも、上述の(C)成分の概念による高分子化合物を単独で使用する場合でも、(A)成分の高分子化合物は、全体として、化学増幅ポジ型レジスト組成物用高分子化合物に必要なアルカリ性現像液に対する溶解性変化や基板密着性を有するように、各繰り返し単位が適切な組成比を持つように設計される。上記繰り返し単位(2)が含まれる好ましい組成比については上述の通りであるが、(A)成分の高分子化合物が、全体として主に上記繰り返し単位(1)〜(3)、(5)及び(6)で構成される場合、上記繰り返し単位(1)の(A)成分に属する高分子化合物全体を構成する全繰り返し単位における割合は、好ましくは30〜90モル%、より好ましくは40〜80モル%、繰り返し単位(3)の(A)成分の高分子化合物全体に含まれる割合は、5〜50モル%、より好ましくは10〜45モル%であり、かつ、上記繰り返し単位(1)と上記繰り返し単位(3)の合計量は40モル%以上となるよう設計することが好ましい。また、上記繰り返し単位(5)や(6)中のR7で示される官能基が水酸基又は酸不安定基で保護された水酸基でない場合の合計の含有率は30モル%以下であることが好ましい。一方、上記繰り返し単位(5)や(6)中のR7で示される官能基が水酸基又は酸不安定基で保護された水酸基である場合には、上記繰り返し単位(1)や上記繰り返し単位(3)の好ましい範囲に合算して設計される。
【0084】
上記式(1)〜(3)で示される繰り返し単位、更に上記式(5)や(6)で示される繰り返し単位を構成単位として持つ(C)成分の概念による高分子化合物との組み合わせに好ましい(C)成分の概念に入らない高分子化合物を構成する繰り返し単位の組み合わせの具体例を下記に例示する。
【0085】
【化26】

【0086】
【化27】

【0087】
本発明のレジスト組成物において、上記(C)成分の概念による高分子化合物ではない高分子化合物の多量の混合は、ミクロにみた場合には塩基性機能を持つ単位の局在化となり、ラフネスの増大の原因となる可能性がある。そこで、理論的には本発明の効果を最大限に実現するためには、レジスト組成物に用いる高分子化合物は、全て2級アミン構造又は3級アミン構造を持つ繰り返し単位を含有する高分子化合物とすることが望ましいことになる。しかし、分子量1,000以下の低分子量の塩基性物質を用いた場合に生じる、レジスト膜成膜時の溶剤蒸発や基板やレジスト表面の表面エネルギーによる塩基性物質の望ましくない拡散現象は、塩基性物質の高分子量化によって防止されるものと思われ、事実としてかなりの量の上記(C)成分の概念による高分子化合物ではない高分子化合物を加えたレジスト組成物を用いても、そのレジスト組成物を用いたレジスト膜より得られるレジストパターンのラフネスの低減効果が確認される。
【0088】
そこで、上記(C)成分の概念による高分子化合物でない(A)成分の高分子化合物を、上記アミン構造を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と混合する場合、上記(C)成分の概念による高分子化合物でない(A)成分の高分子化合物の含有量は、レジスト組成物中の全高分子化合物100質量部中、99.5質量部以下、特に99質量部以下であることが好ましい。この(C)成分の概念による高分子化合物でない(A)成分の高分子化合物の割合がこれより多い場合(塩基性を持つ高分子化合物が局在化しすぎている場合)には、解像性の劣化やラフネスの増大が起きる可能性がある。
【0089】
本発明のレジスト組成物には、更に(B)成分である酸発生剤が添加される。酸発生剤は高エネルギー線の照射により分解して酸を発生する化合物であるが、既に多数のものが化学増幅型レジスト組成物に用いられるものとして公知(例えば特許文献1:特開2008−95009号公報、特許文献2:特開2007−114728号公報、特許文献3:特開2008−133312号公報、特許文献4:特開2009−86310号公報にも多数例示されている。)であり、それらは基本的には全て使用可能である。特に、電子線露光用やEUV露光用としては、スルホニウム系の酸発生剤が有用であり、これらについても同様に多数のものが公知である。更に、このスルホニウム系の酸発生剤は、特許文献6(特開2009−263487号公報)に開示されたもののように高分子化合物の繰り返し単位中の側鎖に組み込まれたものでもよい。
【0090】
下記に好ましい酸発生剤を例示するが、これに限定されるものではない。
(B)成分である酸発生剤が、繰り返し単位からなる高分子化合物でない場合の好ましい例を下記に示す。
【化28】

【0091】
【化29】

【0092】
(B)成分である酸発生剤が、高分子化合物である場合の好ましい例を下記に示す。
【化30】

【0093】
【化31】

【0094】
本発明の化学増幅型レジスト組成物における光酸発生剤の添加量は、特に制限はないが、適宜公知の酸発生剤(特許文献1:特開2008−95009号公報、特許文献2:特開2007−114728号公報、特許文献3:特開2008−133312号公報、特許文献4:特開2009−86310号公報、特許文献5:特開平07−319155号公報にも多くの例が挙げられている。)を参考にして選択されることが好ましい。その配合量は、レジスト組成物中の全高分子化合物100質量部に対し0.1〜15質量部、特に2.0〜12.0質量部が好ましい。光酸発生剤の割合が多すぎる場合には、解像性の劣化や、現像/レジスト剥離時の異物の問題が起きる可能性がある。上記光酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0095】
本発明のレジスト組成物は、上述した各成分を後述の溶剤に溶解することによって得られるが、必要に応じ、分子量1,000以下の塩基性化合物、界面活性剤、溶解阻害剤(詳細は省略)などを加えることもできる。
【0096】
本発明のレジスト組成物においては、高分子化合物中に塩基成分が含まれているため、塩基性化合物を改めて加える必要はない。しかし、パターンの上部の張り出しや基板付近の裾引き等のパターンプロファイルの微調整、又は感度の微調整を行うために、分子量1,000以下の塩基性化合物を添加してもよい。その場合、添加量は、上記酸発生剤に対し20分の1モル以下であることが好ましい。添加し過ぎると、(C)成分である上記高分子化合物を用いる効果を失わせてしまう危険がある。
【0097】
用いることができる塩基性化合物は多数が知られており(特許文献1:特開2008−95009号公報、特許文献2:特開2007−114728号公報、特許文献3:特開2008−133312号公報、特許文献4:特開2009−86310号公報、特許文献5:特開平07−319155号公報のいずれにも開示がある。)、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が知られている。これらの具体例は特許文献2(特開2007−114728号公報)に多数例示されているが、基本的にはこれらの全てを使用することができ、また2つ以上の塩基性化合物を選択し、混合して使用することもできる。
特に好ましく配合される塩基性化合物としては、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン N−オキサイド、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体などが挙げられる。
【0098】
また、パターン形成時に、パターンが基板界面で溶解しにくくなる現象、いわゆる裾引き形状になり易い基板上、これはクロム系化合物による表面を持つ基板に特に特徴的であるが、このような基板上でパターンを形成する場合、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物(アミン及びアミンオキシドの窒素原子が芳香環の環構造に含まれるものを除く。)を用いると、パターン形状の改善を図ることができる。
【0099】
上述のカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物は、下記一般式(10)〜(12)で示される少なくともカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物が好ましいが、これに限られるものではない。
【0100】
【化32】


(式中、R10、R11はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数2〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数2〜10のアルキルチオアルキル基のいずれかである。またR10とR11が結合してこれらが結合する窒素原子と共に環構造を形成してもよい。R12は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数2〜10のアシルオキシアルキル基、炭素数2〜10のアルキルチオアルキル基、又はハロゲン基のいずれかである。R13は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。R14は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、但し、アルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基(−CO−)、エーテル基(−O−)、エステル基(−COO−)、スルフィド(−S−)を1個又は複数個含んでいてもよい。また、R15は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【0101】
上記の炭素数6〜20のアリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ナフタセニル基、フルオレニル基等を、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、デカヒドロナフタレニル基等を、炭素数7〜20のアラルキル基として具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラセニルメチル基等を、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基として具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等を、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基として具体的には、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、エトキシメチル基、2−エトキシエチル基、プロポキシメチル基、2−プロポキシエチル基、ブトキシメチル基、2−ブトキシエチル基、アミロキシメチル基、2−アミロキシエチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、2−シクロヘキシルオキシエチル基、シクロペンチルオキシメチル基、2−シクロペンチルオキシエチル基及びそのアルキル部の異性体等を、炭素数2〜10のアシルオキシアルキル基として具体的には、ホルミルオキシメチル基、アセトキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、ブチリルオキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル基、デカノイルオキシメチル基等を、炭素数2〜10のアルキルチオアルキル基として具体的には、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、イソプロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、イソブチルチオメチル基、t−ブチルチオメチル基、t−アミルチオメチル基、デシルチオメチル基、シクロヘキシルチオメチル基等を、それぞれ例示できるが、これらに限定されない。
【0102】
上記式(10)で示されるカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素原子を含有しないアミン化合物を以下に具体的に例示するが、これらに限定されない。
【0103】
即ち、o−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸、m−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、p−ジプロピルアミノ安息香酸、p−ジブチルアミノ安息香酸、p−ジペンチルアミノ安息香酸、p−ジヘキシルアミノ安息香酸、p−ジエタノールアミノ安息香酸、p−ジイソプロパノールアミノ安息香酸、p−ジメタノールアミノ安息香酸、2−メチル−4−ジエチルアミノ安息香酸、2−メトキシ−4−ジエチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ−2−ナフタレン酸、3−ジエチルアミノ−2−ナフタレン酸、2−ジメチルアミノ−5−ブロモ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−クロロ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヨード安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヒドロキシ安息香酸、4−ジメチルアミノフェニル酢酸、4−ジメチルアミノフェニルプロピオン酸、4−ジメチルアミノフェニル酪酸、4−ジメチルアミノフェニルリンゴ酸、4−ジメチルアミノフェニルピルビン酸、4−ジメチルアミノフェニル乳酸、2−(4−ジメチルアミノフェニル)安息香酸、2−(4−(ジブチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸等が挙げられる。
【0104】
上記式(11)で示されるカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素原子を含有しないアミン化合物は、上記の具体的に例示されたアミン化合物を酸化したものであるが、これらに限定されない。
【0105】
上記式(12)で示されるカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素原子を含有しないアミン化合物を以下に具体的に例示するが、これらに限定されない。
【0106】
即ち、1−ピペリジンプロピオン酸、1−ピペリジン酪酸、1−ピペリジンリンゴ酸、1−ピペリジンピルビン酸、1−ピペリジン乳酸等が挙げられる。
【0107】
上記式(11)で示されるアミンオキシド構造は、既存物質又は新規化合物であり、これらアミンオキシド構造を有する化合物は、化合物の構造に応じた最適な方法を選択して製造される。例として、窒素含有化合物の酸化剤を使用した酸化反応を用いる方法、含窒素化合物の過酸化水素水希釈溶液中での酸化反応を用いる方法等を例示できるが、これらに限定されない。以下、詳しく説明する。
【0108】
窒素含有アルコール化合物のエステル化反応による製造法は、例えば下記に示す通りであり、上記式(11)で示される化合物の合成へも適用可能である。
【0109】
【化33】

(上記式中、R10〜R13は上記の通りである。)
【0110】
上記反応は酸化剤(m−クロロ過安息香酸)を用いたアミンの酸化反応であり、酸化反応の常法となる他の酸化剤を用いて反応を行うこともできる。反応後は、反応混合物を必要に応じて蒸留、クロマトグラフフィー、再結晶などの常法により精製することができる(詳細は特許文献7:特開2008−102383号公報参照)。
【0111】
本発明のレジスト組成物には、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、特許文献1〜7(特許文献1:特開2008−95009号公報、特許文献2:特開2007−114728号公報、特許文献3:特開2008−133312号公報、特許文献4:特開2009−86310号公報、特許文献5:特開平07−319155号公報、特許文献6:特開2009−263487号公報、特許文献7:特開2008−102383号公報)にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。
【0112】
なお、界面活性剤の添加量は、レジスト組成物中の全高分子化合物100質量部に対して2質量部以下、特に1質量部以下が好ましく、配合する場合は0.01質量部以上とすることが好ましい。
【0113】
本発明のレジスト組成物の調製に使用される有機溶剤としては、全高分子化合物、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れている乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0114】
有機溶剤の使用量は、全高分子化合物100質量部に対して1,000〜10,000質量部、特に2,000〜9,700質量部が好適である。このような濃度に調整することにより、回転塗布法を用い、膜厚が10〜200nmのレジスト膜を安定して平坦度よく得ることができる。
【0115】
本発明のレジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。一般論としては、集積回路製造用の基板(表層の材料がSi、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等であるシリコンウエハー等)、又はマスク回路製造用の基板(表層の材料がCr、CrO、CrON、MoSi等である石英基板等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを用い、又はビーム露光により、EUV又は電子線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射する。露光は通常の露光法のほか、場合によってはマスクとレジスト膜の間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0116】
なお、本発明のレジスト組成物は、特に高いエッチング耐性を持ち、かつ露光後、露光後加熱までの時間が延長された場合にもパターン線幅の変化が小さいことが要求される条件で使用される際に有用である。このことから、特にパターン露光に長い時間を必要とする電子線リソグラフィーによるフォトマスクブランクの加工に有効である。
【実施例】
【0117】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。また、共重合組成比はモル比であり、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0118】
[ポリマー合成例1]
窒素雰囲気下、200mLの滴下シリンダーに、4−ヒドロキノンモノメタクリレート22.3g、アセナフチレン5.7g、4−アミロキシスチレン21.4g、下記構造モノマー(Z−1)0.55g、ジメチル−2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名V601)を5.1g、溶媒としてメチルエチルケトンを64g加えた溶液を調製した。更に窒素雰囲気下とした別の300mL重合用フラスコに、メチルエチルケトンを53g加え、80℃に加温した状態で、上記で調製した溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら16時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を1,000gのヘキサンに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体をヘキサン200gで二回洗浄を行い、更に得られた濾別体をメチルエチルケトン120gに溶解し、0.02μmのナイロンフィルターを通したメチルエチルケトン溶液をヘキサン1,000gに滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体をヘキサン200gで二回洗浄を行い、乾燥して白色の共重合体を48g得た(ポリマー1:Mw=3,730(Mw/Mn=1.62))。
【化34】

【0119】
[ポリマー合成例2]
窒素雰囲気下、200mLの滴下シリンダーに、4−(1−エトキシエトキシ)スチレン25.6g、アセナフチレン4.1g、4−アミロキシスチレン19.8g、上記構造モノマー(Z−1)0.53g、ジメチル−2,2’−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業社製、商品名V601)を4.9g、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを64g加えた溶液を調製した。更に窒素雰囲気下とした別の300mL重合用フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルを53g加え、80℃に加温した状態で、上記で調製した溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を80℃に維持しながら20時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液に、メタノール18g、シュウ酸二水和物を0.85g加え、50℃で3時間撹拌した。得られた反応液を1,620gの水と30gのメタノール混合溶媒に滴下し、析出した共重合体を濾別した。濾別した共重合体を水490gとメタノール10g混合溶媒で二回洗浄し、乾燥を行って白色のヒドロキシスチレン共重合体を36.0g得た(ポリマー2:Mw=5,470(Mw/Mn=1.64))。
【0120】
[ポリマー合成例3]
ヒドロキシスチレン単位を導入する上で、まず上述した処方により各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2と同様の手順で得られたポリマーを塩基性条件下で1−クロロ−1−メトキシ−2−メチルプロパンを反応させることでアセタール修飾体ポリマーを得た(ポリマー3:Mw=5,860(Mw/Mn=1.65))。
【0121】
ポリヒドロキシスチレン誘導体の脱保護と保護に関しては特開2004−115630号公報(特許文献8)、特開2005−8766号公報(特許文献9)などに詳しい。
【0122】
[ポリマー合成例4〜30]
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例1,2又は3と同様の手順により、表1に示した樹脂を製造した。表1中、各単位の構造を表2に示す。なお、下記表1において、導入比はモル比を示す。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
[実施例、比較例]
ポジ型レジスト組成物の調製
上記で合成したポリマー(ポリマー1〜30)、下記式で示されるポリマーK、ポリマーM、酸発生剤(PAG−A)、塩基性化合物(Base−1)を表3に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト組成物を調合し、更に各組成物を0.02μmサイズのナイロン又はUPEフィルターで濾過することにより、ポジ型レジスト組成物の溶液をそれぞれ調製した。
【0126】
【化35】

【0127】
表3中の有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)である。
また、各組成物には、界面活性剤としてPF−636(OMNOVA SOLUTIONS製)を0.075質量部添加した。
【0128】
【表3】

【0129】
電子ビーム描画評価
上記調製したポジ型レジスト組成物(実施例1〜32、比較例1,2)をACT−M(東京エレクトロン(株)製)を用いて、152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で、110℃で600秒間プリベークして60nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0130】
更に、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50kV)を用いて露光し、110℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。更に得られたレジストパターンを次のように評価した。
【0131】
作製したパターン付きウエハーを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、200nmの1:1のラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm2)とし、200nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度とし、100nmLSのエッジラフネスをSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。EB描画における本発明のレジスト組成物及び比較用のレジスト組成物の評価結果を表4に示す。
【0132】
【表4】

【0133】
上記表4に示す通り、本発明のレジスト組成物は、比較例1,2に挙げられたレジスト組成物と比較して、解像性、ラインエッジラフネスに優れていた。よって、本発明によれば、特に超LSI製造用の電子線リソグラフィーによる微細パターン形成材料、マスクパターン形成材料として好適な化学増幅ポジ型レジスト組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)単一種の高分子化合物又は複数種の高分子化合物の混合物であり、上記高分子化合物の一部又は全部は酸により脱保護される保護基を持つことで、上記高分子化合物又は上記高分子化合物の混合物による膜がアルカリ性現像液に不溶性であり、酸の作用により可溶性に変化する高分子化合物又は高分子化合物の混合物、
(B)酸発生剤、
(C)酸の作用を抑制するための塩基性化合物、及び
(D)溶剤
を含有する電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物であって、
上記(C)成分である塩基性化合物は、塩基性活性点として2級アミン構造又は3級アミン構造を持つ側鎖を有する繰り返し単位を持つ高分子化合物であると共に、上記(A)成分である高分子化合物の一部又は全部であり、
上記高分子化合物である(C)成分以外の(C)成分として分子量1,000以下の化合物を含まないか、含む場合には(B)成分である酸発生剤の20分の1モル以下であることを特徴とする電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
上記アミン構造を持つ側鎖を有する繰り返し単位は、上記側鎖が結合する主鎖の炭素から上記アミン構造の窒素原子までの間に、環構造に含まれない連続する2原子以上の原子鎖を有する繰り返し単位である請求項1に記載の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
上記(C)成分である塩基性化合物は、下記一般式(1)及び(2)
【化1】

(式中、Aは単結合、又は鎖の中間にエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。B1、B2及びB3はそれぞれ独立に単結合、又はエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、エーテル性酸素原子を介していてもよい炭素数5〜10の2価の脂環式基、及びエーテル性酸素原子を介していてもよい炭素数6〜14の2価の芳香族基より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせよりなる結合鎖である。Z1及びZ2は単結合、−CO−O−又は−O−CO−を示す。但し、B1、B2及びB3にエーテル性酸素原子が含まれる場合は、−O−O−構造となることはなく、Z2が−CO−O−又は−O−CO−である場合は、B3が単結合になることはない。R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示す。但し、R3、R4は同時に水素原子であることはない。R3及びR4は互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成していてもよく、その場合、炭素数2〜12のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を示す。また、B3とR3又はB3とR4が結合して、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、その場合、該窒素原子を含む環は5〜7員環であるが、該窒素原子の孤立電子対が該窒素原子を含む環に芳香族性を与える構造の環となることはなく、また、該窒素原子を含む環が芳香環となることはない。aは0〜4の整数、bは1〜5の正の整数である。p、qはそれぞれ独立に0又は1を示し、tは0〜2の整数を示す。但し、qが0であるとき、B1の主鎖炭素と結合する原子は、エーテル性酸素原子又は芳香環の一部をなす炭素原子であり、更にqが0かつZ1及びZ2が単結合である場合には、B1、B2及びB3の一部には必ずアルキレン基に由来する2つ以上の連続する炭素原子又は芳香族基が含まれる。)
で示される繰り返し単位を構成成分として持つ高分子化合物である請求項2に記載の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
上記(C)成分である塩基性化合物は、上記式(1)及び(2)で示される繰り返し単位に加えて、更に下記一般式(3)で示される繰り返し単位を構成成分として持つ高分子化合物である請求項3に記載の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物。
【化2】

(式中、Cは単結合又はエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示す。R1は水素原子又はメチル基を示す。R5はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。Xはdが1の場合には酸不安定基を、dが2以上の場合には水素原子又は酸不安定基を示すが、少なくとも1つは酸不安定基である。aは0〜4の整数である。cは0又は1であり、dは1〜3の整数である。sは0又は1を示し、wは0〜2の整数を示す。)
【請求項5】
被加工基板上に請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子線用又はEUV用化学増幅ポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、電子線又はEUV光をパターン照射する工程、及びアルカリ性現像液を用いて現像してレジストパターンを得る工程を含むパターン形成方法。
【請求項6】
上記被加工基板が、フォトマスクブランクである請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
上記フォトマスクブランクの最表面が、クロム化合物である請求項6記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2011−191741(P2011−191741A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16371(P2011−16371)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】