説明

電子装置、その製造方法

【課題】相互の電極を半田バンプで接合する第一基板と第二基板との間隙をフィラー含有樹脂で充填して硬化させた構造の小型の第一基板などに湾曲が発生しにくい電子装置を提供する。
【解決手段】電子装置100は、半田バンプ113で相互の電極112、122が接合されている第一基板111の表面と第二基板121の表面との間隙はフィラーを含有させた第一樹脂組成物130で硬化されているが、その外周部は第二樹脂組成物140で封止されている。硬化した第二樹脂組成物140は硬化した第一樹脂組成物130よりヤング率が低いため、第一樹脂組成物130の硬化により発生する第一基板111の湾曲を第二樹脂組成物140により緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一基板と第二基板とに形成されている電極を半田バンプで接合する電子装置、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子装置として、第一基板と第二基板とに形成されている電極を半田バンプで接合する構造で、その半田バンプの間隙をフィラー含有樹脂で充填して硬化させたものがある。
【0003】
このような電子装置では、相互の電極を接続している第一基板と第二基板との半田バンプの間隙がフィラー含有樹脂で硬化されているので、その機械的な強度が良好である。
【0004】
現在、上述のような電子装置として各種の提案がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−031614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フィラーを含有させた樹脂は、含有しない樹脂より機械的な強度が良好であるが、その硬化の過程で発生する残留応力が無視できない。このため、フィラー含有樹脂で第一基板と第二基板との間隙を充填した電子装置では、例えば、小型のチップとして形成されている第一基板に湾曲が発生するようなことがある。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、相互の電極を半田バンプで接合する第一基板と第二基板との間隙をフィラー含有樹脂で充填して硬化させた構造で小型の第一基板などに湾曲が発生しにくい電子装置、その製造方法、を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子装置は、小型の第一基板の表面の電極と大型の第二基板の表面の電極とを半田バンプで接合し、その間隙にフィラーを含有させた第一樹脂組成物で充填して硬化させた電子装置であって、第一基板の外周部と第二基板の表面とが第一樹脂組成物とは相違する第二樹脂組成物で封止され、硬化した第二樹脂組成物は硬化した第一樹脂組成物よりヤング率が低くなっている。
【0009】
従って、本発明の電子装置では、半田バンプで相互の電極が接合されている第一基板の表面と第二基板の表面との間隙はフィラーを含有させた第一樹脂組成物で硬化されているが、その外周部は硬化した第一樹脂組成物よりヤング率が低い第二樹脂組成物の硬化物で封止されている。このため、第一樹脂組成物の硬化により発生する第一基板の湾曲が第二樹脂組成物により緩和される。
【0010】
また、上述のような電子装置において、第二樹脂組成物は第一樹脂組成物よりガラス転移点が低くともよい。
【0011】
本発明の製造方法は、本発明の電子装置の製造方法であって、小型の第一基板の表面の電極と大型の第二基板の表面の電極とを半田バンプで接合し、第一基板と第二基板との間隙にフィラーを含有させた第一樹脂組成物で充填し、第一基板の外周部と第二基板の表面とを第一樹脂組成物とは相違する第二樹脂組成物で封止し、硬化した前記第二樹脂組成物は硬化した前記第一樹脂組成物よりヤング率が低くなっている。
【0012】
なお、本発明の製造方法は、複数の製造工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の製造工程を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の製造方法を実施するときには、その複数の製造工程の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子装置では、半田バンプで相互の電極が接合されている第一基板の表面と第二基板の表面との間隙はフィラーを含有させた第一樹脂組成物で硬化されているが、その外周部は、硬化した第一樹脂組成物よりヤング率が低い第二樹脂組成物の硬化物で封止されている。このため、第一樹脂組成物の硬化により発生する第一基板の湾曲を第二樹脂組成物により緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の電子装置を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の電子装置の製造方法の一工程を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の電子装置の製造方法の一工程を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の電子装置の製造方法の一工程を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。本実施の形態の電子装置100は、図1に示すように、小型の回路チップ110の第一基板111の表面の電極112と大型の第二基板121の表面の電極122とを半田バンプ113で接合し、その間隙にフィラーを含有させた第一樹脂組成物130で充填して硬化させた電子装置100である。ただし、第一基板111の外周部と第二基板121の表面とが、第一樹脂組成物130とは相違し、硬化した第一樹脂組成物130よりヤング率が低い第二樹脂組成物140の硬化物で封止されている。
【0016】
(第一樹脂組成物)。
まず、第一樹脂組成物130に用いられる樹脂組成物について説明する。第一樹脂組成物130は、小型の回路チップ110の第一基板111の表面の電極112と大型の第二基板121の表面の電極122とを半田バンプ113で接合し、その間隙に充填される。すなわち、最終的に得られる電子装置100において、小型の回路チップ110の第一基板111の表面の電極112と大型の第二基板121の表面の電極122との間のすき間を埋めるように第一樹脂組成物130が形成されればよい。本実施形態において、充填方法は、例えば、(i)本発明に係る樹脂組成物が室温で液状の場合には、そのまま第二基板121および電極122といった支持体又は被着体に塗布して樹脂層を形成する方法、又は本発明に係る樹脂組成物が室温で固体状の場合には、いったん溶剤に溶解又は分散させて樹脂ワニスにした後、この樹脂ワニスを支持体又は被着体に塗布して樹脂層を形成する方法、及び(ii)本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形し、このフィルムを支持体又は被着体にラミネートする等の方法が挙げられる。
【0017】
(i)樹脂層を形成する場合
本発明に係る樹脂組成物に含有される熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂等が挙げられ、これらの中でも、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性等に優れることから、好適に用いられる。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂は、室温で固形のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂のうち、いずれでもよいし、これらの両方でもよい。本発明に係る樹脂組成物が、エポキシ樹脂を含有することにより、樹脂層の溶融挙動の設計の自由度をさらに高めることができる。
【0019】
本発明に係る樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂のうち、室温で固形のエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、3官能エポキシ樹脂、4官能エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに具体的には、固形3官能エポキシ樹脂とクレゾールノボラック型エポキシ樹脂との双方を含むものが挙げられ、これらは1種単独又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
本発明に係る樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂のうち、室温で液状のエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上の組み合わせでもよい。室温で液状のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは150〜300であり、より好ましくは160〜250であり、更に好ましくは170〜220である。これにより、樹脂層の硬化物における収縮率が大きくなるのを防止して、電子装置に反りが生じるのを確実に防止することができるとともに、ポリイミド樹脂との反応性が低下するのが確実に防止される。
【0021】
本発明に係る樹脂組成物中、熱硬化性樹脂の配合量は、樹脂組成物の構成材料の25〜75重量%が好ましく、45〜70重量%が特に好ましい。樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の配合量が上記範囲にあることにより、熱硬化性樹脂を硬化させる際に、良好な硬化性が得られると共に、樹脂層の良好な溶融挙動の設計が可能となる。
【0022】
また、本発明に係る樹脂組成物は、フィラーを含有する。フィラーとしては、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂などの有機フィラー、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、窒化アルミなどの無機フィラーが挙げられ、この中でも高い流動性を付与できる観点から球状シリカが好ましい。
【0023】
フィラーの含有量は、10重量%以上90重量%以下が好ましく、樹脂の流動性と信頼性を両立できる観点から30重量%以上80重量%以下がより好ましい。
【0024】
本発明に係る樹脂組成物は、フラックス作用を有する化合物を含有してもよい。これにより、半田接合工程において、半田の表面を覆っている酸化被膜が除去されるので、良好な半田接合を行うことができる。フラックス作用を有する化合物としては、特に限定されないが、カルボキシル基又はフェノール性水酸基のいずれか、あるいは、カルボキシル基及びフェノール性水酸基の両方を備える化合物が好ましい。
【0025】
カルボキシル基を備えるフラックス作用を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基が1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。また、フェノール性水酸基を備えるフラックス作用を有する化合物とは、分子中にフェノール性水酸基が1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。また、カルボキシル基及びフェノール性水酸基を備えるフラックス作用を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基及びフェノール性水酸基がそれぞれ1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。
【0026】
これらのうち、カルボキシル基を備えるフラックス作用を有する化合物としては、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0027】
カルボキシル基を備えるフラックス作用を有する化合物に係る脂肪族酸無水物としては、無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物等が挙げられる。
【0028】
カルボキシル基を備えるフラックス作用を有する化合物に係る脂環式酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0029】
カルボキシル基を備えるフラックス作用を有する化合物に係る芳香族酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等が挙げられる。
【0030】
カルボキシル基を備えるフラックス作用を有する化合物に係る脂肪族カルボン酸としては、下記一般式(1)で示される化合物や、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸等が挙げられる。
【0031】
HOOC−(CH)n−COOH (1)
(式(1)中、nは、0以上20以下の整数を表す。)
【0032】
カルボキシル基を備えるフラックス作用を有する化合物に係る芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、トリイル酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、トルイル酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体、フェノールフタリン、ジフェノール酸等が挙げられる。
【0033】
これらのカルボキシル基を備えるフラックス作用を有する化合物のうち、フラックス作用を有する化合物が有する活性度、樹脂層の硬化時におけるアウトガスの発生量、及び硬化後の樹脂層の弾性率やガラス転移温度等のバランスが良い点で、前記一般式(1)で示される化合物が好ましい。そして、前記一般式(1)で示される化合物のうち、式(1)中のnが3〜10である化合物が、硬化後の樹脂層における弾性率が増加するのを抑制することができるとともに、支持体と被着体の接着性を向上させることができる点で、特に好ましい。
【0034】
前記一般式(1)で示される化合物のうち、式(1)中のnが3〜10である化合物としては、例えば、n=3のグルタル酸(HOOC−(CH−COOH)、n=4のアジピン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=5のピメリン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=8のセバシン酸(HOOC−(CH−COOH)及びn=10のHOOC−(CH10−COOH等が挙げられる。
【0035】
フェノール性水酸基を備えるフラックス作用を有する化合物としては、フェノール類が挙げられ、具体的には、例えば、フェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、2,4−キシレノール、2,5キシレノール、m−エチルフェノール、2,3−キシレノール、メジトール、3,5−キシレノール、p−ターシャリブチルフェノール、カテコール、p−ターシャリアミルフェノール、レゾルシノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビフェノール、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールA、トリスフェノール、テトラキスフェノール等のフェノール性水酸基を含有するモノマー類、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールFノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等が挙げられる。
【0036】
上述したようなカルボキシル基又はフェノール性水酸基のいずれか、あるいは、カルボキシル基及びフェノール性水酸基の両方を備える化合物は、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂との反応で三次元的に取り込まれる。
【0037】
そのため、硬化後のエポキシ樹脂の三次元的なネットワークの形成を向上させるという観点からは、フラックス作用を有する化合物としては、フラックス作用を有し且つエポキシ樹脂の硬化剤として作用する化合物、すなわち、フラックス活性硬化剤が好ましい。フラックス活性硬化剤としては、例えば、1分子中に、エポキシ樹脂に付加することができる2つ以上のフェノール性水酸基と、フラックス作用(還元作用)を示す芳香族に直接結合した1つ以上のカルボキシル基とを備える化合物が挙げられる。このようなフラックス活性硬化剤としては、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)等の安息香酸誘導体;1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;及びジフェノール酸等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上を組み合わせでもよい。
【0038】
フラックス作用を有する化合物の含有量は、樹脂組成物に対して、1〜30重量%が好ましく、3〜20重量%が特に好ましい。樹脂層中のフラックス作用を有する化合物の配合量が、上記範囲であることにより、樹脂層のフラックス活性を向上させることができるとともに、樹脂層中に、熱硬化性樹脂と未反応のフラックス作用を有する化合物が残存するのが抑制できる。なお、未反応のフラックス作用を有する化合物が残存すると、マイグレーションが発生する場合がある。
【0039】
また、熱硬化性樹脂の硬化剤として作用する化合物の中には、フラックス作用も有する化合物がある。例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等は、フラックス作用も有している。
【0040】
また、本発明に係る樹脂組成物中には、フラックス作用を有する化合物以外の硬化剤が含まれているのが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂の硬化性をより向上させることができる。
【0041】
本発明に係る樹脂組成物に含有される硬化剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール類、アミン類、チオール類が挙げられる。本発明に係る樹脂組成物が熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合は、硬化剤は、好ましくはフェノール類である。本発明に係る樹脂組成物が熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合に、硬化剤がフェノール類であることにより、樹脂層において、エポキシ樹脂との良好な反応性を得ることができ、さらには、この樹脂層中に含まれるエポキシ樹脂の硬化時の低寸法変化および硬化後の適切な物性(例えば、耐熱性、耐湿性等)を得ることができる。
【0042】
本発明に係る樹脂組成物が熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合に、硬化剤として含有されるフェノール類としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂と反応し得る官能基を2以上有するものが好ましい。これにより、樹脂層におけるエポキシ樹脂の硬化物の特性(例えば、耐熱性、耐湿性等)の向上を図ることができる。
【0043】
このようなエポキシ樹脂と反応し得る官能基を2以上有するフェノール類としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリスフェノール、テトラキスフェノール、フェノールノボラック類、クレゾールノボラック類等が挙げられ。中でも、フェノールノボラック類およびクレゾールノボラック類が好ましい。これにより、樹脂層の溶融粘度を好適なものとすることができ、エポキシ樹脂との反応性を向上させることができる。さらに、樹脂層におけるエポキシ樹脂の硬化物の特性(例えば、耐熱性、耐湿性等)をより優れたものとすることができる。
【0044】
本発明に係る樹脂組成物に含有される硬化剤として、フェノールノボラック類を用いる場合、本発明に係る樹脂組成物中、硬化剤の配合量は、樹脂組成物の構成材料の5〜30重量%が好ましく、10〜25重量%が特に好ましい。樹脂組成物中の硬化剤の配合量が上記範囲にあることにより、樹脂層において、熱硬化性樹脂を確実に硬化させることができると共に、樹脂層中において、熱硬化性樹脂と未反応の硬化剤が残存するのが防止され、この残存物が存在することによるマイグレーションの発生を好適に防止することができる。
【0045】
なお、本発明に係る樹脂組成物に含有される熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、フェノールノボラック樹脂の配合量は、エポキシ樹脂に対する当量比で規定されてもよい。具体的には、エポキシ樹脂に対するフェノールノボラック類の当量比は、0.5〜1.2であるのが好ましく、0.6〜1.1であるのが特に好ましく、0.7〜0.98であるのが更に好ましい。エポキシ樹脂に対するフェノールノボラック樹脂の配合量が上記範囲にあることにより、樹脂層において、熱硬化性樹脂を確実に硬化させることができると共に、樹脂層中において、熱硬化性樹脂と未反応の硬化剤の残存が防止され、この残存物が存在することによるマイグレーションの発生を好適に防止することができる。
【0046】
本発明に係る樹脂組成物は、さらに、上述した硬化剤の他、硬化促進剤として、例えば、融点が150℃以上のイミダゾール化合物を含有することができる。これにより、樹脂層の硬化を確実に行うことができ、電子装置の信頼性を高めることができる。このような融点が150℃以上のイミダゾール化合物としては、2−フェニルヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4−メチルヒドロキシイミダゾール等が挙げられる。なお、イミダゾール化合物の融点の上限に特に制限はなく、例えば、樹脂層の硬化の際の加熱温度に応じて適宜設定される。
【0047】
本発明に係る樹脂組成物が、硬化促進剤として、このようなイミダゾール化合物を含有する場合、樹脂組成物中の硬化剤の配合量は、樹脂組成物の構成材料の0.005〜10重量%が好ましく、0.01〜5重量%が特に好ましい。樹脂組成物中の硬化剤の配合量が上記範囲にあることにより、熱硬化性樹脂の硬化促進剤としての機能をさらに効果的に発揮させて、樹脂層において、熱硬化性樹脂の硬化性を向上させることができると共に、樹脂層中において、半田が溶融する温度において樹脂層の溶融粘度が高くなり過ぎず、良好な半田接合体を得ることができる。
【0048】
なお、上述したような硬化促進剤は、1種単独又は2種類以上の組み合わせでもよい。
【0049】
また、本発明に係る樹脂組成物は、フラックス作用を有する化合物及び熱硬化性樹脂の他に、カップリング剤や、フラックス作用を有する化合物の活性を高めるためのフラックス活性剤や、樹脂の相溶性、安定性、作業性等の各種特性を向上させるための各種添加剤を適宜含有してもよい。
【0050】
本発明に係る樹脂組成物が、カップリング剤を含有することにより、樹脂層の支持体および被着体への密着性をさらに高めることができる。
【0051】
カップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤のようなシランカップリング剤等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0052】
本発明に係る樹脂組成物中、シランカップリング剤の配合量は、樹脂組成物の構成材料の0.01〜5重量%が好ましい。
【0053】
本発明に係る樹脂組成物を樹脂ワニスにして用いる場合、溶剤としては、特に限定されないが、上述したような樹脂組成物の構成材料に対して、不活性なものが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン(DIBK)、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(DAA)等のケトン類;ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチロセルソルブアセテート(BCSA)等のセロソルブ系;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、二塩基酸エステル(DBE)、3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP)、ジメチルカーボネート(DMC)等が挙げられる。また、樹脂ワニス中、溶剤の含有量は、溶媒に混合した固形成分の含有量が10〜60重量%となることが好ましい。
【0054】
(ii)フィルムを形成する場合
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合、本発明に係る樹脂組成物は、フラックス作用を有する化合物及び熱硬化性樹脂の他に、更に、フィルム形成性樹脂を含有するのが好ましい。本発明に係る樹脂組成物が、フィルム形成性樹脂を含有することにより、確実にフィルムとすることができる。
【0055】
フィルム形成性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等が挙げられ、その中でも、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂が好ましい。(メタ)アクリル系樹脂またはフェノキシ樹脂を適用することにより、フィルム形成性と支持体および被着体に対する密着性を両立することができる。フィルム形成性樹脂は、1種単独又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0056】
なお、フィルム形成性樹脂において、(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸及びその誘導体の重合体、あるいは(メタ)アクリル酸及びその誘導体と他の単量体との共重合体を意味する。ここで、(メタ)アクリル酸などと表記するときは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0057】
フィルム形成性樹脂として用いられるアクリル系樹脂としては、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸−2−エチルヘキシル等のポリアクリル酸エステル;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル等のポリメタクリル酸エステル;ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル−α−メチルスチレン共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エチル−アクリロニトリル−N,Nジメチルアクリルアミド共重合体等が挙げられる。中でも、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エチル−アクリロニトリル−N,Nジメチルアクリルアミド共重合体が好ましい。
【0058】
なお、フィルム形成性樹脂として用いられるアクリル系樹脂として、ニトリル基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基等の官能基を有する単量体を共重合させてなる(メタ)アクリル系樹脂を用いることにより、フィルム状の樹脂層の支持体および被着体への密着性、および熱硬化性樹脂等との相溶性を向上させることができる。このような(メタ)アクリル系樹脂において、前記官能基を有する単量体の使用量は特に限定されないが、(メタ)アクリル系樹脂の全重量に対し、0.1〜50mol%程度であることが好ましく、0.5〜45mol%程度であるのがより好ましく、1〜40mol%程度であるのがさらに好ましい。かかる範囲内に設定することにより、支持体および被着体の密着性を優れたものとしつつ、フィルム状の樹脂層の粘着力が強くなりすぎるのを好適に防止して、作業性の向上を図ることができる。
【0059】
前記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば1000以上100万以下であり、3000以上90万以下が好ましい。前記アクリル系樹脂の重量平均分子量が上記範囲にあることにより、樹脂組成物の成膜性をさらに向上させることができるとともに硬化時の流動性を確保することが可能となる。
【0060】
また、フィルム形成性樹脂として、フェノキシ樹脂を用いる場合、その数平均分子量は5000〜15000のフェノキシ樹脂が好ましい。かかる数平均分子量のフェノキシ樹脂を用いることにより、フィルム状の樹脂層の流動性を抑制し、フィルム状の樹脂層の厚みを均一なものとすることができる。
【0061】
フェノキシ樹脂の骨格は、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、ビフェニル骨格タイプ等が挙げられる。これらの中でも、飽和吸水率が1%以下であるフェノキシ樹脂であるのが好ましい。これにより、フィルム状の樹脂層に起因する発泡や剥離などの発生を抑制することができる。
【0062】
なお、飽和吸水率は、フェノキシ樹脂を25μm厚のフィルムに加工し、100℃雰囲気中で1時間乾燥(絶乾状態)し、さらに、そのフィルムを40℃90%RH雰囲気の恒温恒湿槽に放置し、重量変化を24時間おきに測定し、重量変化が飽和した時点の重量を用いて、下記式(2)により算出することができる。
【0063】
飽和吸水率(%)={(飽和した時点の重量−絶乾時点の重量)/絶乾時点の重量}×100 (2)
【0064】
また、フィルム形成性樹脂として、ポリイミド樹脂を用いる場合、ポリイミド樹脂としては、繰り返し単位中にイミド結合を持つものが挙げられる。このようなポリイミド樹脂としては、例えば、ジアミンと酸二無水物を反応させ、得られたポリアミド酸を加熱、脱水閉環することにより得られるものが挙げられる。ジアミンとしては、芳香族ジアミンである、3,3'−ジメチル−4,4'ジアミノジフェニル、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、シロキサンジアミンである、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。これらは1種単独又は2種以上の組み合わせでもよい。また、酸二無水物としては、3,3,4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物等が挙げられる。
【0065】
なお、このようなポリイミド樹脂は、後述する溶剤に可溶なものでも、不溶なものでもよいが、溶剤に可溶なものが好ましい。ポリイミド樹脂が溶剤に可溶であることにより、溶液材料に含まれる構成材料との相溶解性が向上することから、取り扱いに優れる。特に、シロキサン変性ポリイミド樹脂は、様々な溶媒に溶かすことができるため好適に用いられる。
【0066】
また、フィルム形成性樹脂は、市販品であってもよい。
【0067】
更に、本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合、本発明に係る樹脂組成物は、効果を損ねない範囲で、各種可塑剤、安定剤、帯電防止剤や顔料等の添加剤を含有することができる。
【0068】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合、本発明に係る樹脂組成物中、フィルム形成性樹脂の配合量は、樹脂組成物の構成材料の5〜45重量%が好ましい。本発明に係る樹脂組成物中のフィルム形成性樹脂の配合量が上記範囲にあることにより、フィルム状の樹脂層の成膜性低下を抑制しつつ、硬化後のフィルム状の樹脂層における弾性率の増加を抑制することができる。その結果、フィルム状の樹脂層と支持体および被着体の密着性をさらに向上させることができる。更に、フィルム状の樹脂層の溶融粘度の増加を抑制することができる。
【0069】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合、本発明に係る樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有し、そのような熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂は、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれかをいう。エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂、およびフェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂、その他3官能以上のエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0070】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合で、本発明に係る樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有する場合、本発明に係る樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%が特に好ましい。樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂の含有量が上記範囲にあることにより、フィルム状の樹脂層の硬化後の低い線膨張係数と靭性を両立することができる。
【0071】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合で、本発明に係る樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有する場合、本発明に係る樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂の軟化点は、フィルム形成性樹脂との相溶性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、40〜100℃が好ましく、50〜90℃が特に好ましい。上記下限値以上とすることで、フィルム状の樹脂層のタック性を低減することができるため、フィルム状の樹脂層の作業性を向上することができる。また、上記上限値以下とすることで、フィルム状の樹脂層の溶融粘度の上昇を抑えることができる。
【0072】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合で、本発明に係る樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有する場合、本発明に係る樹脂組成物は、特に限定されるものではないが、硬化剤を含有することが好ましい。このような硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであればよく、適宜選択されている。具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレリレンジアミン、などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、などの芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物等のアミン系硬化剤、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、などの脂肪族酸無水物、無水トリトメット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、などの芳香族酸無水物等の酸無水物系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビス(モノまたはジt−ブチルフェノール)プロパン、メチレンビス(2−プロペニル)フェノール、プロピレンビス(2−プロペニル)フェノール、ビス[(2−プロペニルオキシ)フェニル]メタン、ビス[(2−プロペニルオキシ)フェニル]プロパン、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(2−プロペニル)フェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(1−フェニルエチル)フェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−(2−プロペニル)フェノール]、4,4'−(1−メチルテトラデシリデン)ビスフェノールなどのフェノール系硬化剤等が挙げられる。
【0073】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合で、本発明に係る樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有する場合、本発明に係る樹脂組成物中、硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤の当量比を計算して求められる。硬化剤がフェノール樹脂の場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤の官能基の当量比は、0.5〜1.5が好ましく、0.7〜1.3が特に好ましい。上記範囲とすることで、フィルムの耐熱性と保存性を両立することができる。
【0074】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合で、本発明に係る樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有する場合、本発明に係る樹脂組成物は、硬化促進剤を含有してもよい。このような硬化促進剤は、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進させるものであればよく、適宜選択される。具体的には、イミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン等のアミン系触媒、トリフェニルホスフィンやテトラ置換ホスホニウムと多官能フェノール化合物との塩等のリン化合物が挙げられる。これらの中でも、フィルム状の樹脂層の速硬化性、保存性、半導体素子上のアルミパッド腐食性を両立するイミダゾール類、リン化合物が好ましい。
【0075】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合で、本発明に係る樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有する場合、本発明の樹脂組成物中、硬化促進剤の含有量は、0.001〜10重量%が好ましく、0.01〜5重量%が特に好ましい。上記範囲とすることで、フィルム状の樹脂層の速硬化性および保存性、硬化後の物性のバランスを保つことが可能となる。
【0076】
硬化促進剤としてのイミダゾール類としては、融点が150℃以上のイミダゾール化合物が好ましく、例えば2−フェニルヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4−メチルヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0077】
硬化促進剤としてのリン化合物の中でも、フィルム状の樹脂層の速硬化性、半導体素子のアルミパッドへの腐食性、さらにはフィルム状の樹脂層の保存性により優れる、テトラ置換ホスホニウムと多官能フェノール化合物との塩が特に好ましい。
【0078】
テトラ置換ホスホニウムと多官能フェノール化合物との塩は、単なる混合物ではなく、塩構造、超分子構造等の構造を有する化合物である。テトラ置換ホスホニウムと多官能フェノール化合物との塩のテトラ置換ホスホニウムは、フィルムの硬化性と保存性のバランスから、アルキル基や芳香族化合物がリン原子に4つ配位している化合物が好ましい。
【0079】
テトラ置換ホスホニウムの置換基は、特に限定されるものではなく、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換又は無置換のアリール基やアルキル基を置換基として有するテトラ置換ホスホニウムイオンが、熱や加水分解に対して安定であり好ましい。具体的にテトラ置換ホスホニウムとしては、テトラフェニルホスホニウム、テトラトリルホスホニウム、テトラエチルフェニルホスホニウム、テトラメトキシフェニルホスホニウム、テトラナフチルホスホニウム、テトラベンジルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、n−ブチルトリフェニルホスホニウム、2−ヒドロキシエチルトリフェニルホスホニウム、トリメチルフェニルホスホニウム、メチルジエチルフェニルホスホニウム、メチルジアリルフェニルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム等が例示でき、これらの中でもテトラフェニルホスホニウムがフィルムの速硬化性と保存性のバランスから好ましい。
【0080】
テトラ置換ホスホニウムと多官能フェノール化合物との分子化合物の多官能フェノール化合物とは、フェノール性の水酸基を有するもので少なくともその1つの水酸基の水素が外れてフェノキシド型の化合物となっているものであり、具体的には、ヒドロキシベンゼン化合物、ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、ヒドロキシナフタレン化合物、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0081】
多官能フェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン(通称テトラメチルビスフェノールF)、4,4'−スルホニルジフェノール及び、4,4'−イソプロピリデンジフェノール(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン及びこれらの内ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタンの3種の混合物(例えば、本州化学工業株式会社製、ビスフェノールF−D)等のビスフェノール類、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール等のジヒドロキシベンゼン類、1,2,4−ベンゼントリオール等のトリヒドロキシベンゼン類、1,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類の各種異性体、2,2'−ビフェノール、4,4'−ビフェノール等のビフェノール類の各種異性体等の化合物が挙げられるが、速硬化性と保存性のバランスに優れる1,2−ジヒドロキシナフタレン、4,4'−スルホニルジフェノールが好ましい。
【0082】
本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形して用いる場合、このようなフィルム状の樹脂層は、例えば、フラックス作用を有する化合物及び熱硬化性樹脂と、必要に応じて、フィルム形成性樹脂や、その他の成分とを溶剤中に溶解させてフィルム状の樹脂層形成用材料(液状材料)を調製し、その後、このフィルム状の樹脂層形成用材料を、ポリエステルシート等の剥離処理が施された基材上に塗布し、所定の温度で、溶剤を除去し、乾燥させることにより得られる。
【0083】
なお、フィルム状の樹脂層形成用材料の調製に用いられる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、BCSA(ブチロセルソルブアセテート)等のセロソルブ系、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DBE(二塩基酸エステル)、EEP(3−エトキシプロピオン酸エチル)、DMC(ジメチルカーボネート)等が挙げられる。
【0084】
また、フィルム状の樹脂層の厚さ(平均)は、特に限定されないが、3〜100μm程度であるのが好ましく、5〜50μm程度であるのがより好ましい。
【0085】
(第二樹脂組成物)
第二樹脂組成物140は、応力緩和材として作用することができる。第二樹脂組成物140の材料としては、上記第一樹脂組成物130と同様の材料を用いてもよく、また異なる材料であってもよい。また、第二樹脂組成物140は、第一樹脂組成物よりもフィラーの含有量が小さいことが好ましく、例えば50重量%以下のフィラーを含んでもよい。また、反りをより低減する観点から第二樹脂組成物140は、フィラーを含まないことがより好ましい。
また、特に限定されないが、第一樹脂組成物と第二樹脂組成物の相溶性を高めることできる観点から、第一樹脂組成物130としてエポキシ樹脂硬化系を用いた場合は、第二樹脂組成物140としてエポキシ樹脂硬化系とすることが特に好ましい。
【0086】
ここで、硬化した第二樹脂組成物140は硬化した第一樹脂組成物130よりヤング率が低い。第一樹脂組成物130のヤング率は、例えば、25℃において1〜15GPaであり、第二樹脂組成物140のヤング率は、例えば25℃において0.01〜5GPaである。硬化した第二樹脂組成物140のヤング率は、硬化した第一樹脂組成物130のヤング率より、1/2〜1/10低いことが好ましい。これにより、小型の回路チップ110と第一基板111との接続をより確実にするとともに、第一樹脂組成物130の硬化により発生する第一基板111の湾曲を第二樹脂組成物140による応力緩和作用によって低減することができる。
【0087】
ヤング率は、例えば、次のようにして、測定することができる。
150℃/3hで硬化させた評価物を、10×100×0.5mmのサイズに加工し、オリエンテック製テンシロンRTA−100を用いて、その試験片を試験速度1mm/分で引っ張り法にて測定し、得られたS−Sカーブからヤング率を導き出す。
【0088】
また、第二樹脂組成物140のガラス転移点は、第一樹脂組成物130のガラス転移点よりも低いことが好ましい。第一樹脂組成物130のガラス転移点は、例えば、70〜180℃であり、第二樹脂組成物140のガラス転移点は、例えば20〜120℃である。第二樹脂組成物140のガラス転移点は、第一樹脂組成物130のガラス転移点より、10〜100℃低いことが好ましい。これにより、第一樹脂組成物130の硬化時に、第二樹脂組成物140が応力緩和材となり、第一基板111の湾曲を抑制することができる。
【0089】
ガラス転移点は、例えば、次のようにして、測定することができる。
セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS6000を用いて、圧縮法(荷重50mN)にて−100℃から300℃まで、昇温速度10℃/分で上昇させたときの硬化物の膨張率を測定し、その曲線から得られる変極点をガラス転移温度(Tg)とする。
【0090】
さらに、第二樹脂組成物140の熱膨張係数(CTE)は、第一樹脂組成物130の熱膨張係数よりも高いことが好ましい。第一樹脂組成物130の熱膨張係数は、例えば、10〜60であり、第二樹脂組成物140の熱膨張係数は、例えば25〜150である。第二樹脂組成物140の熱膨張係数は、第一樹脂組成物130の熱膨張係数より、5〜100高いことが好ましい。これにより、第一樹脂組成物130の硬化時に、第二樹脂組成物140が応力緩和材となり、第一基板111の湾曲を抑制することができる。
【0091】
熱膨張係数(CTE)は、例えば、次のようにして、測定することができる。
Tg測定と同様に、セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS6000を用いて、圧縮法(荷重50mN)にて−100℃から300℃まで、昇温速度10℃/分で上昇させたときの硬化物の膨張率を測定し、温度変化に対する膨張率を線膨張係数(CTE)として算出する。
【0092】
次に、上述のような電子装置100の製造方法を以下に説明する。まず、図2に示すように、小型の回路チップ110の第一基板111の表面の電極112に半田バンプ113を形成する。
【0093】
続けて、図3に示すように、小型の回路チップ110の第一基板111の表面の電極112と大型の第二基板121の表面の電極122とを半田バンプ113で接合する。このとき、第一基板111と第二基板121とを加圧キュアしてもよい。
【0094】
加圧は、好ましくは0.1MPa以上10MPa以下が好ましく、0.5MPa以上5MPa以下がより好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化物中に空隙(ボイド)が発生し難くなる。加圧は、流体を用いて行われることが好ましく、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、空気等のガスが挙げられる。安価な点で、空気が特に好ましい。
【0095】
また、加熱温度は、樹脂層の硬化温度以上の温度であればよく、適宜選択されるが、通常100〜250℃、好ましくは150〜200℃である。加熱時間は、樹脂層の種類により、適宜選択されるが、通常、0.5〜3時間、好ましくは1〜2時間である。
【0096】
加圧流体により加圧しながら、樹脂層を硬化させる方法としては、例えば、圧力容器内に、加熱する処理対象物を設置し、次いで、圧力容器内に、加圧流体を導入して加圧しつつ、処理対象物を加熱する方法、更に、具体的には、加圧オーブン中に、処理対象物を設置し、加圧オーブン内に加圧用のガスを導入しつつ、加圧オーブンで処理対象物を加熱する方法が挙げられる。
【0097】
さらに、図4に示すように、第一基板111と第二基板121との間隙にフィラーを含有させた第一樹脂組成物130で充填する。そして、図1に示すように、第一樹脂組成物130を覆うように第二樹脂組成物140を塗布し、加熱して、第一樹脂組成物130および第二樹脂組成物140を硬化させる。これにより、第一基板111の外周部と第二基板121の表面とを、第一樹脂組成物130とは相違する第二樹脂組成物140で封止する。
【0098】
本発明の電子装置100では、半田バンプ113で相互の電極が接合されている第一基板111の表面と第二基板121の表面との間隙はフィラーを含有させた第一樹脂組成物130で硬化されている。
【0099】
しかし、その外周部は、硬化した第一樹脂組成物130よりヤング率が低い第二樹脂組成物140の硬化物で封止されている。このため、第一樹脂組成物130の硬化により発生する第一基板111の湾曲を第二樹脂組成物140により緩和することができる。
【0100】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では半田バンプ113が回路チップ110の第一基板111の電極112に形成されていることを例示した。しかし、このような半田バンプ113が第二基板121の電極122に形成されていてもよく、両方に形成されていてもよい(図示せず)。また、第一基板111と第二基板121との間隙に第一樹脂組成物130を充填した後、第一樹脂組成物130を半硬化させてから、第二樹脂組成物140を塗布してもよい。
【0101】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【実施例】
【0102】
次に、本発明の実施例について説明する。
得られた樹脂組成物またはその硬化物について以下のような評価を行った。評価結果をそれぞれ表に示した。
【0103】
[ヤング率の測定]
150℃/3hで硬化させた評価物を、10x100x0.5mmのサイズに加工し、オリエンテック製テンシロンRTA−100を用いて、その試験片を試験速度1mm/分で引っ張り法にて測定し、得られたS−Sカーブからヤング率を導き出した。
【0104】
[ガラス転移温度の測定]
セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS6000を用いて、圧縮法(荷重50mN)にて−100℃から300℃まで、昇温速度10℃/分で上昇させたときの硬化物の膨張率を測定し、その曲線から得られる変極点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0105】
[熱膨張係数の測定]
セイコーインスツルメンツ社製TMA/SS6000を用いて、圧縮法(荷重50mN)にて−100℃から300℃まで、昇温速度10℃/分で上昇させたときの硬化物の膨張率を測定し、温度変化に対する膨張率を線膨張係数(CTE)として算出した。
【0106】
(実施例1)
[樹脂組成物の作製]
第一樹脂組成物として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EXA−830LVP、エポキシ当量160)24.99重量%と、フェノールノボラック(住友デュレズ株式会社製、PR51740、軟化点110℃)14.99重量%と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、2P4MZ)0.05重量%、無機シリカ(株式会社アドマテックス製、SO−E3)59.97重量%とを秤量し、3本ロールにて分散混練してから、真空下脱泡処理をしてペースト状の樹脂組成物を得た。また、第二樹脂組成物組成物としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EXA−830LVP、エポキシ当量160)62.42重量%と、フェノールノボラック(住友デュレズ株式会社製、PR51740、軟化点110℃)37.45重量%と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、2P4MZ)0.12重量%とを秤量し、3本ロールにて分散混練してから、真空下脱泡処理をしてペースト状の樹脂組成物を得た。
【0107】
[電子装置の作製]
上述のペースト状の第一樹脂組成物を、回路パターンが形成された回路基板(コア材として、住友ベークライト株式会社製、ELC−4785GS)に、半田バンプを有する半導体素子(サイズ15x15x0.65mm)をフリップチップボンダーで280℃、10秒間加熱したものの、半導体チップと基板の間にできる空隙(0.05mm)の間に充填させた。その後、第二樹脂組成物をチップの周りにシーリング塗布する方法により、第一樹脂組成物を覆うように塗布させた。最後に、150℃で120分間加熱して第一及び第二樹脂組成物を硬化させ、半導体装置を得た。
【0108】
(実施例2)
第二樹脂組成物として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EXA−830LVP、エポキシ当量160)49.95重量%と、フェノールノボラック(住友デュレズ株式会社製、PR51740、軟化点110℃)29.97重量%と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、2P4MZ)0.1重量%、無機シリカ(株式会社アドマテックス製、SE2100)19.98重量%とを秤量し、3本ロールにて分散混練した以外は実施例1と同様の作成方法で樹脂組成物及び半導体装置を得た。
【0109】
(比較例1)
第二樹脂組成物として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EXA−830LVP、エポキシ当量160)24.99重量%と、フェノールノボラック(住友デュレズ株式会社製、PR51740、軟化点110℃)14.99重量%と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、2P4MZ)0.05重量%、無機シリカ(株式会社アドマテックス製、SE2100)59.97重量%とを秤量し、3本ロールにて分散混練した以外は実施例1と同様の作成方法で樹脂組成物及び半導体装置を得た。
【0110】
(比較例2)
第一樹脂組成物として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EXA−830LVP、エポキシ当量160)62.42重量%と、フェノールノボラック(住友デュレズ株式会社製、PR51740、軟化点110℃)37.45重量%と、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、2P4MZ)0.12重量%とを秤量し、3本ロールにて分散混練してペースト状の樹脂組成物を作成した以外は、実施例1と同様の作成方法で樹脂組成物及び半導体装置を得た。
【0111】
(結果)
[半導体装置の反り]
得られた半導体装置の反りを、表面粗さ計SURFCOM480A(ACCRETECH製)を用いて測定した。基板側より変位を測定し、最も差分の大きくなる値を反り値として読み取った。各符号は以下の通りである。
◎:反り量が80μm以下であった。
○:反り量が80μmを超え、100μm以下であった。
△:反り量が100μmを超え、120μm以下であった。
×:反り量が120μmを超えた。
【0112】
[信頼性評価]
JEDECレベル3(※1)、260℃ピークSMTリフロー(3回)の条件で耐リフロー試験を行った後の、半導体装置の剥離性及び接続性を評価することにより、信頼性評価を行った。なお、評価はN=10で行った。一つでも剥離又は接続不良が発生したものをNGとし、NGと判定された半導体装置の個数をカウントした。続いて、不良が発生しなかった半導体装置を−55℃⇔125℃の温度サイクル試験を実施し、500サイクル後の剥離又は接続性を評価した。この際も、一つでも剥離又は接続不良が発生したものをNGとし、NGと判定された半導体装置の個数をカウントした。
【0113】
※1:JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)レベル3の条件は、30℃、60%RH、192時間である。
【0114】
【表1】

【符号の説明】
【0115】
100 電子装置
110 回路チップ
111 第一基板
112 電極
113 半田バンプ
121 第二基板
122 電極
130 第一樹脂組成物
140 第二樹脂組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型の第一基板の表面の電極と大型の第二基板の表面の電極とを半田バンプで接合し、その間隙にフィラーを含有させた第一樹脂組成物で充填して硬化させた電子装置であって、
前記第一基板の外周部と前記第二基板の表面とが前記第一樹脂組成物とは相違する第二樹脂組成物で封止され、硬化した前記第二樹脂組成物は硬化した前記第一樹脂組成物よりヤング率が低いことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記第二樹脂組成物は前記第一樹脂組成物よりガラス転移点が低い請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記第一樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有する請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記第一樹脂組成物は、前記フィラーを10重量%以上90重量%以下含有する請求項1ないし3の何れか一項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記第二樹脂組成物は、フィラーを含有しない請求項1ないし4の何れか一項に記載の電子装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の電子装置の製造方法であって、
小型の第一基板の表面の電極と大型の第二基板の表面の電極とを半田バンプで接合し、
前記第一基板と前記第二基板との間隙にフィラーを含有させた第一樹脂組成物で充填し、
前記第一基板の外周部と前記第二基板の表面とを前記第一樹脂組成物とは相違する第二樹脂組成物で封止し、
硬化した前記第二樹脂組成物は硬化した前記第一樹脂組成物よりヤング率が低いことを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−89727(P2012−89727A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236260(P2010−236260)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】