説明

電子部品の接続方法

【課題】熱硬化性樹脂内でのボイドの発生を抑制する。
【解決手段】
はんだ20と、はんだ20の融点より熱硬化温度が低い熱硬化性樹脂22と、溶融はんだ20の濡れ性を向上させる活性剤とを少なくとも含有するはんだ入り熱硬化性接着剤14を介して基板10の電極12上に電子部品16の電極18を配置し、まず、大気圧雰囲気であって前記融点より高い温度の条件下ではんだ20を溶融して電子部品16の電極18と基板10の電極12とを接合する。次に、減圧雰囲気であって前記熱硬化温度より低い温度の条件下で熱硬化性樹脂22内の水分や揮発成分を揮発させる。そして、前記減圧雰囲気より高い圧力の雰囲気であって前記熱硬化温度より高く且つ前記融点より低い温度の条件下で熱硬化性樹脂22を熱硬化させつつ、内部の気泡を小さくするまたは消滅させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の電極と基板の電極とをはんだによって接続する電子部品の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱硬化性樹脂にはんだを含有させたものであるはんだ入り熱硬化性接着剤を使用し、電子部品の電極と基板の電極とを接合する電子部品の実装方法が知られている(特許文献1参照)。このようなはんだ入り熱硬化性接着剤を用いて電子部品の電極と基板の電極とを接合すると、はんだが電子部品の電極と基板の電極とを接合し、熱硬化性樹脂がはんだを覆って保護するとともに電子部品を基板に固定する。これにより、一回のリフロー工程で電子部品の電気的な接続と樹脂による補強を同時に行うことが可能である。
【0003】
ところが、はんだ入り熱硬化性接着剤を使用する場合、熱硬化後の熱硬化性樹脂の内部に気泡(ボイド)が存在していることがある。ボイドは、後の工程、例えば、プレス工程においてクラックの発生の原因になることがある。また、後の再加熱工程において、溶融したはんだがボイドに流入することにより、短絡の原因となることがある。
【0004】
このようなボイドの発生を抑制するために、例えば特許文献2に記載する方法を参照し、減圧雰囲気の条件下において、はんだ入り熱硬化性接着剤を塗布した基板の部分に電子部品を圧接し、圧接した状態を維持しつつはんだを溶融することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−140924号公報
【特許文献2】特開平11−163048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載する方法(減圧雰囲気の条件下)ではんだ付けを行うと、はんだによる電子部品の電極と基板の電極との良好な電気的接続が実現できないことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、はんだ入り熱硬化性接着材を使用して電子部品の電極と基板の電極とを接続する場合において、はんだによる電極同士の良好な電気的接続を実現しつつ、熱硬化性樹脂内のボイドの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、
はんだと、はんだの融点より熱硬化温度が低い熱硬化性樹脂と、溶融はんだの濡れ性を向上させる活性剤とを少なくとも含有するはんだ入り熱硬化性接着剤を介在して基板の電極上に電子部品の電極を配置する電子部品配置工程と、
大気圧雰囲気であって前記融点より高い温度の条件下ではんだを溶融して電子部品の電極と基板の電極とをはんだ接合する第1の熱処理工程と、
第1の熱処理工程によって仮接合された電子部品と基板を減圧雰囲気であって前記熱硬化温度より低い温度の条件下で加熱する第2の熱処理工程と、
第2の熱処理工程の後、第2の熱処理工程の圧力より高い圧力の雰囲気であって前記熱硬化温度より高く且つ前記融点より低い温度の条件下で熱硬化性樹脂を熱硬化させる第3の熱処理工程とを含む、
電子部品の接続方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、
同一の密閉チャンバー内において、第2および第3の熱処理工程が連続して実行される、
第1の態様に記載の電子部品の接続方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、
第2の熱処理工程が終了するまでは熱硬化性樹脂を硬化させない、
第1または第2の態様に記載の電子部品の接続方法が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様によれば、
第1の熱処理工程の温度条件および実行時間は、第1の熱処理工程での熱硬化性樹脂の熱硬化を抑制できるように設定されている、
第1または第2の態様に記載の電子部品の接続方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の熱処理工程により、大気圧雰囲気の下で、はんだが溶融されて電子部品の電極と基板の電極とを電気的に良好に接続する。次に、第2の熱処理工程により、減圧雰囲気であって熱硬化性樹脂の熱硬化温度より低い温度の条件下で、軟化した熱硬化性樹脂から空気を抜くとともに、水分や揮発成分を揮発させる。そして、第3の熱処理工程により、第2の熱処理工程の圧力より高い圧力の雰囲気であって熱硬化温度より高く且つはんだの融点より低い温度の条件下で、熱硬化性樹脂を熱硬化しつつ、内部に残存する気泡を小さくするまたは消滅させる。これにより、熱硬化性樹脂内でのボイドの発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子部品のはんだ付け方法を実行することができる基板実装ラインの構成図
【図2】図1に示す基板実装ラインに対応する、電子部品のはんだ付け方法に関連する複数の工程の順序を示すフロー図
【図3】図2に示す各工程を詳細に説明するための図
【図4】図3に示す工程に続く工程を詳細に説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、前提として、本発明は、はんだと、熱硬化性樹脂と、溶融はんだの濡れ性を向上させる活性剤とを少なくとも含有するはんだ入り熱硬化性接着剤を使用する。
【0015】
はんだ入り熱硬化性接着剤は、熱硬化性樹脂に、例えば、粒子状または粉末状のはんだを含有(分散)させた、例えば、後述するスクリーン印刷装置によって基板上に塗布可能な液体状またはペースト状のものである。
【0016】
本発明で言う「熱硬化性樹脂」は、熱硬化温度以上の温度で所定時間(例えば、2時間)加熱し続けて熱硬化反応が完全に完了するものであって、また、樹脂基材と該樹脂基材を硬化させる硬化剤からなるものも含まれる。さらに、本発明で言う「熱硬化性樹脂」は、後述するはんだの融点より低い熱硬化温度で熱硬化するものである。
【0017】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が好適に使用され、使用されるエポキシ樹脂の種類としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、多官能型、脂環式型、ビフェニル型などがある。なお、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂以外にも、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、ポリイミド樹脂、イソシアネート樹脂などを用いてもよい。
【0018】
硬化剤は、使用される樹脂基材に対応した種類のものが選定され、エポキシ樹脂の場合には、イミダゾール類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジド類、マイクロカプセル型硬化剤などが選定される。
【0019】
はんだは、例えば、SnBi58(融点139℃)、SnAg3Cu0.5(融点217〜220℃)、SnSb5(融点245℃)、SnAg3.5(融点221℃)などを、平均粒度1〜50μmの粒子に加工したものである。
【0020】
また、はんだ入り熱硬化性接着剤には、溶融はんだの濡れ性を向上させる活性剤が添加されている。溶融はんだの濡れ性を向上させる活性剤は、例えば、電子部品や基板の電極表面の酸化皮膜を除去することができる、例えば、有機酸(カルボン酸)などである。
【0021】
さらに、はんだ入り熱硬化性接着剤には、必要に応じて、チクソ剤、シランカップリング剤、有機溶剤、可撓材、顔料、触媒などが添加されている。チクソ剤は、はんだ入り熱硬化性接着剤のチクソ性を調整するためのものであり、はんだ入り熱硬化性接着剤を基板に印刷するスクリーン印刷装置の印刷性に寄与する。シランカップリング剤は密着性を向上させる目的で配合され、有機溶剤は粘度を調整するために用いられる。可撓材は熱硬化性樹脂が硬化した後の樹脂接着部を低弾性化してヒートサイクル時の熱応力を低下させる効果を有する。顔料ははんだ入り熱硬化性接着剤を着色する必要がある場合に用いられる。さらに、触媒は熱硬化反応を促進させたい場合、言い換えると熱硬化が完了するまでの時間を調整するために用いられるものである。
【0022】
ここからは、本発明の実施の形態に係る、上述したはんだ入り熱硬化性接着剤を使用する、電子部品のはんだ付け方法を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る電子部品のはんだ付け方法を実施可能な基板実装ラインを概略的に示している。また、図2は、図1に示す基板実装ラインに対応する、本発明に係る電子部品のはんだ付け方法に関連する複数の工程の流れを示している。さらに、図3は、図2に示す各工程の内容を詳細に説明するための図である。
【0024】
図1に示すように、基板実装ライン100は、基板をライン100に投入する基板供給装置102と、はんだ入り熱硬化性接着剤を基板上に塗布するスクリーン印刷装置104と、基板に電子部品を搭載する電子部品搭載装置106と、基板上のはんだ入り熱硬化性接着剤内のはんだを溶融するリフロー装置108と、リフロー装置108から電子部品実装済み基板を回収する基板回収装置110とを有する。また、基板実装ライン100は、基板回収装置110が回収した複数の電子部品実装済み基板を一括して熱処理するバッチ処理型の真空加熱装置112とを有する。基板供給装置102、スクリーン印刷装置104、電子部品搭載装置106、リフロー装置108、基板回収装置110は各装置に内蔵されている基板搬送コンベアによって連結されており、基板供給装置102より投入された基板は搬送コンベアによって各装置へ搬送され、最下流に位置する基板回収装置110に回収される。基板回収装置110に回収された基板は作業者によって複数枚まとめて真空加熱装置112へ搬送される。なお、図1において、矢印は、基板の流れを示している。
【0025】
基板供給装置102は、図3(A)に示す基板10、具体的には電子部品の電極が接合される電極12が表面に形成された基板10をストックし、基板10を基板実装ライン100に投入する。なお、基板10には、電極12以外に、配線パターン(図示せず)が形成されている。
【0026】
スクリーン印刷装置104は、図2に示す熱硬化性接着剤供給工程S1を実行する装置であり、図3(B)に示すように、基板10に形成された電極12上にはんだ入り熱硬化性接着剤14を塗布する。
【0027】
電子部品搭載装置106は、図2に示す電子部品搭載工程S2を実行する装置であり、図3(C)に示すように、電子部品16の端子18(電極)が、はんだ入り熱硬化性接着剤14を介して基板10の電極12上に位置するように、電子部品16を基板10に載置する。
【0028】
リフロー装置108は、図2に示すリフロー工程S3を実行する装置であり、はんだ入り熱硬化性接着剤14内のはんだ20を溶融し、図3(D)に示すように電子部品16の端子18と基板10の電極12とをはんだ20によって接合する。なお、リフロー装置108は、大気圧雰囲気の下ではんだ20を溶融する。
【0029】
リフロー装置108は、図3(C)に示す状態、すなわち電子部品16が載置された基板10を電子部品搭載装置106側から基板回収装置110に向かって基板搬送コンベア(図示せず)によって搬送しつつ、熱処理する(特許請求の範囲に記載の「第1の熱処理工程」に対応)。リフロー装置108の内部は複数の加熱ゾーンや冷却ゾーンに分かれており、各ゾーンの加熱条件や基板搬送コンベアの基板搬送速度の設定を調整することにより、リフロー装置の内部を搬送される基板を所望の加熱プロファイル(温度変化)となるように加熱することができる。
【0030】
具体的には、リフロー装置108は、まず、上流側の加熱ゾーンではんだ20の融点より低い温度(例えば、融点が217〜220℃のSnAg3Cu0.5のはんだの場合は200℃)で電子部品16が載置された基板10を所定時間(例えば、3〜4分)加熱する。これにより、基板10をムラなく十分に暖める。
【0031】
その後、十分に暖められた基板10がコンベア(図示せず)に搬送されて下流側の加熱ゾーンに到達すると、リフロー装置108は、下流側の加熱ゾーンではんだの融点より高い温度(例えば、240度)で所定時間(例えば30秒)加熱し、はんだ入り熱硬化性接着剤14内のはんだ20を溶融する。はんだ20は溶融して凝集し、溶融状態のはんだ20が、基板10の電極12と電子部品16の端子18とに接触する。
【0032】
一方、熱硬化性樹脂22は軟化し、溶融状態のはんだ20を覆うように、また電子部品16と基板10との間に進入するように広がる。
【0033】
なお、熱硬化性樹脂22は、リフロー装置108によって熱硬化温度以上の温度で加熱されているが、その加熱時間が短いため、完全に硬化しない(熱硬化反応が進んでいない)。言い換えると、リフロー装置108による加熱温度や加熱時間、すなわちリフロー装置108の温度プロファイルが、はんだ入り熱硬化性接着剤14内の熱硬化性樹脂の熱硬化反応が進まないように設定されている。
【0034】
また、リフロー装置108によってはんだ入り熱硬化性接着剤14内の熱硬化性樹脂の熱硬化反応が進まないように、リフロー装置108の温度プロファイルを適当に設定することに代って、および/または加えて、はんだ入り熱硬化性接着剤14に含有される硬化剤や触媒などの添加剤を調製することにより、熱硬化性樹脂の熱硬化反応の進行速度を調整してもよい。
【0035】
はんだ20が溶融して基板10の電極12と電子部品16の端子18とに接触すると(融点より高い温度で所定時間加熱した後)、リフロー装置108は、最下流の冷却ゾーンにおいて基板10を冷却し、溶融状態のはんだ20を硬化させる。これにより、図3(D)に示すように、基板10の電極12と電子部品16の端子18とがはんだ20によって接合される。なお、上述の通り、リフロー工程後の熱硬化性樹脂22は液状又はBステージ状である。
【0036】
このようにリフロー装置108によって大気圧雰囲気の下ではんだ接合を行うことにより、はんだ20による基板10の電極12と電子部品16の端子18との良好な電気的接続を実現することができる。
【0037】
このことに関連して、発明者は、減圧雰囲気の下ではんだ接合した場合に、はんだによる電子部品の電極と基板の電極との良好な電気的接続が実現できないことがある理由を突き止めている。その理由について説明する。
【0038】
はんだ入り熱硬化性接着剤には、上述したように、電極の表面に存在する酸化膜を除去することにより、溶融はんだの濡れ性を向上させる活性剤が含まれている。多くの場合、このような活性剤に使用される物質の沸点は、はんだの融点に近い。
【0039】
このような活性剤を含んだはんだ入り熱硬化性接着剤を減圧雰囲気の下ではんだを溶融するために加熱すると、大半の活性剤は酸化膜除去機能を発揮する前に揮発する。これは、減圧雰囲気の下では活性剤の沸点が低下するためである(活性剤は、大気圧の下で使用されることが前提であり、大気圧の下で酸化膜除去機能を発揮する)。
【0040】
大半の活性剤が酸化膜を除去することなく揮発すると、当然ながら電極の表面上の酸化膜は十分除去されず、はんだは電極表面全体に濡れ広がることができない。その結果、はんだを介する電極同士の良好な電気的接続が実現されない。
【0041】
したがって、本発明は、この発明者が突き止めた上述の理由を鑑みて、はんだ入り熱硬化性接着剤のはんだ20による基板10の電極12と電子部品16の端子18との接合を、大気圧の下で実行している。
【0042】
基板回収装置110は、リフロー装置108によって電子部品16の端子18と電極12とがはんだ20によって接合された基板10を、リフロー装置108から回収する。具体的には、基板10を一枚ずつ収納するラックを上下方向に複数段備えたマガジンへ基板を収納して回収する。
【0043】
真空加熱装置112は、基板回収装置110が回収した基板10、すなわち電子部品16の端子18と電極12とがはんだ20によって接合された基板10を熱処理するためのものである。
【0044】
具体的には、真空加熱装置112は、複数の基板10を収容可能な密閉チャンバー114と該密閉チャンバー114内の空気を外部に排出するポンプ(図示せず)と、密閉チャンバー114内の温度を調整する加熱源(図示せず)とを有し、密閉チャンバー114内の温度と圧力とを調整できるように構成されている。密閉チャンバー114は、基板10が収容される内部空間への外気の侵入を防止するために、該内部空間を密閉できるように構成されている。なお、密閉チャンバー114は、基板10を収納したマガジンごと収容可能な構造であるものが好ましい。
【0045】
真空加熱装置112は、密閉チャンバー114内に収容された基板10に対し、図2に示す真空加熱工程S4と樹脂硬化工程S5を実行する。
【0046】
まず、真空加熱工程S4(特許請求の範囲に記載の「第2の熱処理工程」に対応)として、真空加熱装置112は、図3(E)に示すように、例えば大気圧(101,325Pa)より減圧した圧力(例えば、10,000Pa以下の圧力)の密閉チャンバー114内で、熱硬化性樹脂22の熱硬化温度より低い温度で、電子部品16の端子18と電極12とがはんだ20によって接合された基板10を熱処理する。
【0047】
この真空加熱工程S4の目的は、熱硬化性樹脂22内にボイドが発生することを抑制することである。そのために、後述する樹脂硬化工程S5を実行する前に、熱硬化性樹脂22に含まれる空気に加えて、熱硬化性樹脂22に含まれる水分や揮発成分を気化させて除去する。その気化を促進するために、また空気や気化によって発生した気体(水分や揮発成分由来の気体)が熱硬化性樹脂22から抜けやすいようにするために、加熱によって熱硬化性樹脂22を軟化するとともに、密閉チャンバー114内を減圧する。
【0048】
ただし、熱硬化性樹脂22を硬化させるような加熱条件であってはならない。真空加熱工程S4において適用する加熱条件は、前提として加熱温度が熱硬化性樹脂22の熱硬化温度より低い必要があり、その上で、圧力が、減圧雰囲気の密閉チャンバー114内において熱硬化性樹脂22に含まれる水分および揮発成分が揮発するような圧力である。例えば、熱硬化性樹脂22がエポキシ樹脂であって、活性剤が無水酢酸の場合、温度が130度に、圧力が10,000Paに設定される。
【0049】
このような真空加熱工程S4により、熱硬化性樹脂22に含まれる空気が外部に抜けるとともに、熱硬化性樹脂22に含まれる水分と揮発成分とが揮発して外部に排出される。なお、真空加熱工程S4後の熱硬化性樹脂22も液状又はBステージ状であり、完全に硬化していない。また、揮発成分として活性剤も揮発しうるが、活性剤は前工程のリフロー工程S3において酸化膜を除去して溶融はんだの濡れ性を向上させるという役目を既に果たしているので、活性剤が揮発することについては問題がない。活性剤が揮発することにより、熱硬化性樹脂22の信頼性が向上するという副産物的な効果が期待できる。
【0050】
真空加熱工程S4後、真空加熱装置112は、樹脂硬化工程S5(特許請求の範囲に記載の「第3の熱処理工程」に対応)として、真空加熱工程S4の圧力より高い、大気圧またはそれ以上の圧力(例えば500,000Pa以上)の密閉チャンバー114内で、熱硬化性樹脂22の熱硬化温度より高く且つはんだ20の融点より低い温度(例えば、熱硬化性樹脂22がエポキシ樹脂である場合、硬化剤の量や種類で変化するが約180度)で、電子部品16の端子18と電極12とがはんだ20によって接合された基板10を所定時間(例えば2時間)熱処理する。
【0051】
このような樹脂硬化工程S5により、図3(F)に示すように、はんだ20を溶融することなく、熱硬化性樹脂22を完全に硬化させることができる。それとともに、真空加熱工程S4後において熱硬化性樹脂22内にわずかに残る気泡が、真空加熱工程S4の圧力より高い圧力によって小さく圧縮されるまたは消滅する。
【0052】
図2に示す各工程を経て完成した、図3(F)に示す状態の基板10(以下、「サブアセンブリ基板SA」と称する)は、例えば、多層配線基板の一部品として使用される。
【0053】
多層配線基板は、サブアセンブリ基板SAを用いて、図4に詳細に示す工程を経て作製される。
【0054】
具体的には、まず、サブアセンブリ基板SAが、アルカリ溶剤によって粗化処理される。なお、サブアセンブリ基板SAのはんだ20は、熱硬化性樹脂22によって保護されているため、アルカリ溶剤によって浸食されずに維持される。
【0055】
次に、図4(G)に示すように、粗化処理されたサブアセンブリ基板SA上に、プリプレグ24が配置され、そのプリプレグ24上に配線パターンが形成された基板26が配置される。プリプレグ24は、ガラス繊維、炭素繊維などに熱硬化性樹脂を含浸したものである。
【0056】
続いて、図4(G)に示すように、サブアセンブリ基板SA、プリプレグ24、および基板26が、その積層方向にプレス装置(図示せず)によってプレスされつつ、プリプレグ24の熱硬化性樹脂の熱硬化温度で加熱される。
【0057】
プリプレグ24の熱硬化性樹脂が熱硬化すると、図4(H)に示すように、電子部品16がプリプレグ24によって保護された多層配線基板が完成する。なお、この後、例えば、基板10上の配線パターンと基板26上の配線パターンを電気的に接続するために、基板10、プリプレグ24、および基板26を貫通するスルーホールが形成され、そのスルーホールの内周面に導電性のメッキ層が形成される。
【0058】
本実施形態によれば、、リフロー工程S3により、大気圧雰囲気の下で、はんだ20が溶融されて電子部品16の端子18と基板10の電極12とを電気的に良好に接続する。次に、真空加熱工程S4により、減圧雰囲気であって熱硬化性樹脂22の熱硬化温度より低い温度の条件下で、軟化した熱硬化性樹脂22から空気を抜くとともに、水分や揮発成分を揮発させる。そして、樹脂硬化工程S5により、真空加熱工程S4の圧力より高い圧力の雰囲気であって熱硬化温度より高く且つはんだ20の融点より低い温度の条件下で、熱硬化性樹脂22を熱硬化しつつ、内部に残存する気泡を小さくするまたは消滅させる。これにより、熱硬化性樹脂22内でのボイドの発生が抑制される。
【0059】
以上、本発明を説明したが、本発明は、上述の説明内容に限定されない。
【0060】
例えは、上述の実施の形態の場合、図2に示す真空加熱工程S4と樹脂硬化工程S5とは、同一の真空加熱装置112の密閉チャンバー114内で連続して実行されるが、本発明はこれに限らない。例えば、真空加熱工程S4を真空加熱装置112によって実行し、樹脂硬化工程S5を大気圧雰囲気の条件下で熱硬化性樹脂を熱硬化させる樹脂硬化装置によって実行してもよい。
【0061】
ただし、この場合、真空加熱装置112から樹脂硬化装置への基板搬送や樹脂硬化工程S5は、好ましくは基板上の軟化状態の熱硬化性樹脂が大気に触れない状態で実行すべきである。これにより、軟化状態の熱硬化性樹脂が大気中の水分を吸収することを抑制でき、熱硬化後の熱硬化性樹脂が内部の水分によって腐食劣化することが抑制される。したがって、上述の実施形態のように、大気から隔離された同一の密閉空間である真空加熱装置112の密閉チャンバー114内において、真空加熱工程S4と樹脂硬化工程S5とを連続して実行するのが好ましい。
【0062】
また、上述の実施の形態の場合、リフロー工程S3は大気圧雰囲気の条件下で実行されるが、本発明はこれに限らない。リフロー工程S3時の圧力は、はんだの融点以上の温度の条件下で溶融はんだの濡れ性を向上させる活性剤が揮発しない圧力であればよい。
【0063】
さらにまた、本発明に係る電子部品のはんだ付け方法は、図1に示す複数の装置以外の装置によって行うことも可能である。
【0064】
例えば、はんだ入り熱硬化性接着剤は、常温において、液体状またはペースト状でなくてもよく、固体状、例えばシート状であってもよい。その場合、スクリーン印刷装置ではなく、シート状の熱硬化性接着剤を基板の電極上に配置する装置が使用される。
【0065】
また、リフロー装置に代って、基板を収容可能な密閉チャンバーを備え、その密閉チャンバー内の温度を調整可能な加熱装置(加熱炉)を使用することも可能である。
【0066】
すなわち、本発明は、はんだ入り熱硬化性接着剤内のはんだを溶融し、次に、減圧雰囲気であって熱硬化性樹脂の熱硬化温度より低い温度の条件下で熱処理して溶融はんだの濡れ性を向上させる活性剤を揮発させ、そして、熱硬化性樹脂の熱硬化温度より高く且つはんだの融点より低い温度の条件下で熱処理できる装置(または複数の装置)であれば、実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、電子部品と基板に限らず、はんだと、はんだの融点より熱硬化温度が低い熱硬化性樹脂と、溶融はんだの濡れ性を向上させる活性剤とを少なくとも含有するはんだ入り熱硬化性接着剤を使用するものであれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 基板
12 電極
14 はんだ入り熱硬化性接着剤
16 電子部品
18 電極(端子)
20 はんだ
22 熱硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだと、はんだの融点より熱硬化温度が低い熱硬化性樹脂と、溶融はんだの濡れ性を向上させる活性剤とを少なくとも含有するはんだ入り熱硬化性接着剤を介在して基板の電極上に電子部品の電極を配置する電子部品配置工程と、
大気圧雰囲気であって前記融点より高い温度の条件下ではんだを溶融して電子部品の電極と基板の電極とをはんだ接合する第1の熱処理工程と、
第1の熱処理工程によって仮接合された電子部品と基板を減圧雰囲気であって前記熱硬化温度より低い温度の条件下で加熱する第2の熱処理工程と、
第2の熱処理工程の後、第2の熱処理工程の圧力より高い圧力の雰囲気であって前記熱硬化温度より高く且つ前記融点より低い温度の条件下で熱硬化性樹脂を熱硬化させる第3の熱処理工程とを含む電子部品の接続方法。
【請求項2】
同一の密閉チャンバー内において、第2および第3の熱処理工程が連続して実行される請求項1に記載の電子部品の接続方法。
【請求項3】
第2の熱処理工程が終了するまでは熱硬化性樹脂を硬化させない請求項1または2に記載の電子部品の接続方法。
【請求項4】
第1の熱処理工程の温度条件および実行時間は、第1の熱処理工程での熱硬化性樹脂の熱硬化を抑制できるように設定されている請求項1または2に記載の電子部品の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−109454(P2012−109454A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258069(P2010−258069)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】