説明

電子部品実装構造、ヘッド、マウンタ及び電子部品実装構造の製造方法

【課題】電子部品を確実に基板に接合できるようにする。
【解決手段】基板2aと、基板2aの表面に設けられた電極端子2b、2eと、基板2aの表面に対向した電子部品本体3aと、電子部品本体3aの基板に対向した面に凸設され、電極端子2b、2eに接触したバンプ3b、3cと、電極端子2b、2e及びバンプ3b、3cを囲繞し、且つ基板2aの表面と電子部品本体3aとの間に介在した封止材Rと、を備え、基板2a、前記電子部品本体3a及び前記封止材Rによって包囲された空間S1の圧力が周辺の圧力よりも低くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の実装構造、電子部品を基板に実装するためのヘッド、電子部品を基板に実装するためのマウンタ及び電子部品実装構造を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の製造工程において、ICチップ等の電子部品をガラス基板へCOG(Chip On Glass)圧着する際に、従来は例えば導電粒子に用いたACF(Anisotropic Conductive Film)を接着剤として用いていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−012613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子部品の微細化が進み、ICチップのバンプ及びバンプに接続される基板の電極は、面積が狭くなると共にピッチが狭まってきている。しかし、導電粒子を確実に挟み込むことができるよう電極及びバンプの面積を広く取る必要があるため、電子機器の小型化の妨げとなってしまう。一方、面積の小さな電極でも導電粒子を挟み込めるようにするには、導電粒子の数を増やす必要があるが、ピッチの狭まった電極間では短絡が発生し易くなってしまう。そこで、本発明が解決しようとする課題は、電子部品を確実に基板に接合できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明の電子部品実装構造によれば、
基板と、
前記基板上に設けられた電極と、
前記電極に接続されたバンプを有し、前記基板上に設けられた電子部品と、
前記基板と前記電子部品との間の減圧された空間を囲繞した封止材と、を備えることを特徴とする。
【0006】
好ましくは、前記空間は、真空となっている。
好ましくは、前記空間は、ゲージ圧で−100kPa以下である。
好ましくは、前記封止材は紫外線硬化性又は熱硬化性を有する樹脂である。
前記基板には、TFT、前記TFTのソースに接続された信号線、前記TFTのゲートに接続された走査線が設けられ、ICチップは、前記信号線及び前記走査線の少なくとも一方に接続されていてもよい。
【0007】
本発明のマウンタのヘッドによれば、
保持された電子部品を基板に圧着するボンディングツールと、
前記ボンディングツールに保持された前記電子部品及び前記電子部品の周囲の第一の空間を囲繞する隔壁と、
前記隔壁が前記基板に接した状態で前記第一の空間内の気体を吸引する吸引口と、
前記基板と前記電子部品との間の第二の空間を周囲から遮断する封止材を塗布するノズルと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のマウンタによれば、
基板が載置されるステージと、
前記ステージの上において昇降するヘッド本体と、
前記ヘッド本体に付設され、電子部品を前記基板に圧着するボンディングツールと、
前記ボンディングツールに保持された前記電子部品及び前記電子部品の周囲の第一の空間を囲繞する隔壁と、
前記隔壁が前記基板に接した状態で前記第一の空間内の気体を減圧する減圧装置と、
前記隔壁が前記基板に接した状態で前記基板と前記電子部品との間の第二の空間を周囲から遮断する封止材を塗布するノズルと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の電子部品実装構造の製造方法によれば、
基板の表面に電子部品本体を対向させて、前記電子部品本体の前記基板に対向した面に凸設されたバンプを前記基板の表面に形成された電極に接触させ、前記電子部品本体と前記基板との間の空間を減圧した状態で、封止材で前記バンプ及び前記電極を囲繞して、その封止材を前記基板の表面と前記電子部品本体との間に介在させ、その塗布した封止材を硬化させることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の電子部品実装構造の製造方法によれば、
基板の表面に電子部品本体を対向させて、前記電子部品本体の前記基板に対向した面に凸設されたバンプを前記基板の表面に形成された電極に接触させ、前記電子部品本体を加熱して、前記電子部品本体の周囲の気体を膨張させた状態で、封止材で前記バンプ及び前記電極を囲繞して、その封止材を前記基板の表面と前記電子部品本体との間に介在させ、その塗布した封止材を硬化させ、その後前記電子部品本体を冷却して前記電子部品本体と前記基板との間の空間を減圧した状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品と基板との間に生じる負圧により互いに押し付けられる状態になり、電極とバンプとの間に隙間が生じにくくなる。従って、電子部品を確実に基板に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】上記マウンタで製造される表示部ユニットを示す正面図である。
【図2】上記マウンタで製造される表示部ユニットを示す側面図である。
【図3】同実施形態における電子部品実装構造を示す縦断面図である。
【図4】同実施形態における電子部品実装構造を示す上面図である。
【図5】本発明の実施形態におけるマウンタを示す上面図である。
【図6】同実施形態における圧着装置を示す斜視図である。
【図7】同実施形態におけるマウンタのヘッドを示す縦断面図である。
【図8】同実施形態におけるマウンタのヘッドを示す下面図である。
【図9】同実施形態におけるマウンタの回路構成を示すブロック図である。
【図10】同実施形態における電子部品の実装工程を示す縦断面図である。
【図11】同実施形態における電子部品の実装工程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
まず、表示部ユニット1の構成について説明する。
図1は、表示部ユニット1を示す正面図であり、図2は、表示部ユニット1を示す側面図である。表示部ユニット1は、液晶表示装置に表示される画像を形成するもので、液晶ディスプレイパネル2、ICチップ3及びFPC(Flexible Printed Circuits)基板4を備える。
【0015】
液晶ディスプレイパネル2は、ガラス基板2a及びガラス基板2cを有する。ガラス基板2aは、矩形をした透明な板状部材であり、その表示領域における上面には、液晶に電圧を印加する複数の画素電極にそれぞれ接続された複数のTFT(Thin Film Transistor)や、列毎に並んだ複数のTFT群の各ソースにそれぞれ接続された複数の信号線、行毎に並んだ複数のTFT群の各ゲートにそれぞれ接続された走査線等が設けられている。そしてガラス基板2aの非表示領域には、信号線、走査線等にそれぞれ接続された複数の配線2dが設けられ、複数の配線2dの各端部にはそれぞれ電極端子2b(図3に図示)が一列に並んで設けられている。また、ガラス基板2aには、FPC基板4に接続される複数の配線2fが設けられ、複数の配線2fの各端部にはそれぞれ電極端子2e(図3に図示)が一列に並んで設けられている。ガラス基板2cは、図1中、左右の幅がガラス基板2aの幅と等しく、上下の幅がガラス基板2aの幅よりやや短い透明な板状部材であり、ガラス基板2aの上面に貼り合わされている。ガラス基板2aとガラス基板2cとの間には、液晶(図示せず)が充填され、その周囲はシール材(図示せず)によって封止されている。ガラス基板2aにおけるガラス基板2cの下辺の端面から突出している非表示領域には、ICチップ3が配置され、電極端子2bがICチップ3の出力用バンプ3b(図3に図示)に接続され、電極端子2eがICチップ3の入力用バンプ3c(図3に図示)に接続されている。なお、ガラス基板2aの非表示領域には、ICチップ3と位置合わせをするためのアライメントマーク(図示せず)が付けられている。
【0016】
FPC基板4は、液晶ディスプレイパネル2と液晶ディスプレイパネル2を駆動するための電子機器(図示せず)とを接続する帯状の可撓性部材である。FPC基板4の一端は、液晶ディスプレイパネル2の端部に位置する複数の配線2fに接続されており、FPC基板4の他端が、電子機器に接続される。
【0017】
電子部品であるICチップ3は、液晶ディスプレイパネル2の上面に実装されている。ICチップ3は、細長い板状のチップ本体3a、出力用バンプ3b及び入力用バンプ3c(図3に図示)を有している。チップ本体3aには、液晶ディスプレイパネル2と位置合わせをするためのアライメントマーク(図示せず)が付けられている。出力用バンプ3b及び入力用バンプ3cは、チップ本体3aの下面に、チップ本体3aの2本の長辺沿いにそれぞれ複数並べて設けられている。隣り合う出力用バンプ3b同士の間隔及び列の幅は、隣り合う電極端子2b同士の間隔及び列の幅とほぼ等しく、隣り合う入力用バンプ3c同士の間隔及び列の幅は、隣り合う電極端子2e同士の間隔及び列の幅とほぼ等しくなっている。
【0018】
ここで、ICチップ3の実装構造について具体的に説明する。図3は、ガラス基板2aの上面にICチップ3を実装した状態を示す縦断面図であり、図4は、ガラス基板2aの上面にICチップ3を実装した状態を示す上面図である。チップ本体3aの下面がガラス基板2aの上面に向き合って、バンプ3b、3cがそれぞれ電極端子2b、2e上に載置されている。電極端子2b、2e及びバンプ3b、3cによってチップ本体3aが支えられることにより、ガラス基板2aの上面と、チップ本体3aの下面が互いに離れ、空間S1が形成されている。これら電極端子2b、2e、バンプ3b、3c及びその周囲の空間S1は、封止材Rによって囲繞されている。封止材Rは紫外線又は熱により硬化した樹脂であり、封止材Rによってチップ本体3aがガラス基板2aの上面に接着されている。封止材Rは、チップ本体3aの側周面に沿って塗り固められていると共に、ガラス基板2aの上面に固着されている。実装されたICチップ3を上から見ると、図4に示すように、周囲が隙間なく封止材Rで囲まれることによって外部雰囲気から遮断され気密性が保持されている。このように、ガラス基板2aの上面、ICチップ3の下面及び封止材Rによって囲まれる空間S1が封止されている。空間S1は大気圧よりも減圧され、更に好ましくは、空間S1のゲージ圧が−100kPa以下である。
【0019】
この実装構造を用いて表示部ユニット1を構成することにより、空間S1は外部と比べ気圧が低くなっている。その結果、ICチップ3の上面及び液晶ディスプレイパネル2の下面には大気圧がかかり、ICチップ3と液晶ディスプレイパネル2が互いに押し合う。従って、空間S1内の負圧によって電極端子2b、2eとバンプ3b、3cとが互いに押し付けられ、電極端子2b、2eとバンプ3b、3cとがそれぞれ直接接触した状態が維持される。
【0020】
次に、マウンタ100の構成について説明する。
図5は、マウンタ100の上面図である。このマウンタ100は、液晶ディスプレイパネル2にICチップ3を実装すると共にFPC基板4を接続して表示部ユニット1を製造するものである。このマウンタ100は、マウンタ本体10、液晶ディスプレイパネル供給部20、ICチップ供給部30、FPC供給部40、表示部ユニット搬出部50及び圧着部60、表示部ユニット搬出部80を備える。
【0021】
マウンタ本体10は、上面視で逆T字型の台で、内部には、マウンタ本体10に取り付けられている各種装置を駆動するための制御部11(図9に図示)、後述する空間S2を減圧雰囲気にする減圧装置12(図9に図示)、液体樹脂を送り出す樹脂供給装置13(図9に図示)等を格納している。
【0022】
圧着部60は、マウンタ本体10の上部中央に設けられ、圧着ステージ61、紫外線照射源又は熱源を備える樹脂硬化装置62及びカメラ63を備える。圧着ステージ61は、液晶ディスプレイパネル2を載置する台であり、マウンタ本体10の上部に設けられる。圧着ステージ61は、前後方向(図5の上下方向)及び左右方向(図5の左右方向)に移動可能に設けられていると共に、上下方向(図5の紙面に垂直な方向)の軸心回りに回転可能に設けられている。樹脂硬化装置62は、液晶ディスプレイパネル2に載置されたICチップ3に向けて紫外線を照射する或いは加熱するものである。カメラ63は、圧着ステージ61に設けられ、液晶ディスプレイパネル2及びICチップ3のアライメントマークの位置を検知するものである。
【0023】
液晶ディスプレイパネル供給部20は、マウンタ本体10の上部且つ圧着部60の左手に設けられ、パレット21及びロボット22を備えている。パレット21は、マウンタ本体10に対し着脱可能に設けられ、その上には、前工程から搬入されてきた液晶ディスプレイパネル2が縦横に規則正しく並べられている。パレット21に並べられた液晶ディスプレイパネル2には、未だICチップ3が実装されておらず、ガラス基板2aの上面に電極端子2b、2eが形成されている。ロボット22は、液晶ディスプレイパネル2を移動させるもので、パレット21の上方に設けられている。ロボット22は、マウンタ本体10に対して前後方向(図5の上下方向)に移動可能なアーム23と、アーム23の下部に取り付けられ、アーム23に対して左右方向に移動可能なアーム24を備えている。また、アーム24の端部には吸着部25が備えられている。吸着部25は、液晶ディスプレイパネル2を吸着して持ち上げるもので、アーム24に対して上下方向(図5の紙面に垂直な方向)に移動可能となっている。また、吸着部25は、ロボット22によってパレット21の上を任意の位置まで自在に移動し、パレット21と圧着部60との間を自在に往復することが可能となっている。
【0024】
FPC供給部40は、マウンタ本体10の上部且つ、圧着部60の右手に設けられ、パレット41を備える。パレット41は、マウンタ本体10に対し着脱可能に設けられ、その上には、液晶ディスプレイパネル2に接続されるFPC基板4が縦横に規則正しく並べられている。
【0025】
表示部ユニット搬出部50は、マウンタ本体10の上部且つFPC供給部40の右手に設けられ、パレット51及びロボット52を備える。パレット51は、マウンタ本体10に対し着脱可能に設けられ、その上には、次工程へ搬出される表示部ユニット1が規則正しく並べられている。ロボット52は、表示部ユニット1を移動させるもので、パレット21の上方に設けられている。ロボット52は、FPC基板4を移動させるロボットも兼ねている。ロボット52は、マウンタ本体10に対して前後方向(図5の上下方向)に移動可能なアーム53と、アーム53の下部に取り付けられ、アーム53に対して左右方向に移動可能なアーム54を備えている。また、アーム54の端部には吸着部を兼ねたボンディングツール55が備えられている。ボンディングツール55は、FPC基板4及び表示部ユニット1を吸着して持ち上げるもので、アーム54に対して上下方向(図5の紙面にすい垂直な方向)に移動可能となっている。また、ボンディングツール55は、ロボット52によってパレット41及びパレット51の上を任意の位置まで自在に移動し、パレット41及びパレット51と圧着部60との間を自在に往復することが可能となっている。
【0026】
ICチップ供給部30は、マウンタ本体10の上部且つ圧着部60の奥手に設けられ、パレット31及びロボット32を備える。パレット31は、マウンタ本体10に対し着脱可能に設けられ、その上には、ICチップ3が縦横に規則正しく並べられている。パレット31に並べられたICチップ3は、未だ液晶ディスプレイパネル2に実装されておらず、チップ本体3aの下面にバンプ3b、3cが凸設されている。ロボット32は、ICチップ3を移動させるもので、パレット31の上方に設けられている。ロボット32は、マウンタ本体10に対して前後方向(図5の上下方向)に移動可能なアーム33と、アーム33の下部に取り付けられ、アーム33に対して左右方向に移動可能なアーム34を備えている。また、アーム34の端部にはレール34a(図6に図示)が設けられ、レール34aを介して圧着装置35が取り付けられている。圧着装置35は、ロボット32によってパレット31の上を任意の位置まで自在に移動し、パレット31と圧着部60との間を自在に往復することが可能となっている。また、圧着装置35は、減圧装置12、樹脂供給装置13とチューブ等で接続されている。
【0027】
次に、圧着装置35の構成について具体的に説明する。図6は、圧着装置35を示す斜視図である。圧着装置35は、ロボット32のアーム34の先端部に取り付けられ、ICチップ3を吸着して持ち上げると共に、ICチップ3を液晶ディスプレイパネル2に圧着するものである。圧着装置35は、昇降部36、機体37及びヘッド7を備える。
【0028】
昇降部36は、ヘッド7を上下方向に移動させるものである。昇降部36の背面が、アーム34に設けられるレール34aに係合し、昇降部36がレール34aに案内されて上下方向に移動可能に設けられている。昇降部36の上下動はモータによってなされる。昇降部36の前面に機体37が設けられている。機体37の下部にヘッド7が取り付けられている。
機体37は、前後方向に延びた回転軸37aの回りに揺動可能に設けられていると共に、左右方向に延びた回転軸37bの回りに揺動可能に設けられている。これにより、回転軸37aの回りの機体37及びヘッド7の角度が調節可能とされ、回転軸37bの回りの機体37及びヘッド7の角度が調整可能とされている。
ヘッド7は、機体37に対して上下動可能となって、機体37の下部に取り付けられている。機体37の上部には、エアシリンダ39が取り付けられている。このエアシリンダ39は、ヘッド7を下方に押し出すと共に、ヘッド7を上方に引き上げるものである。なお、エアシリンダ39の代わりに、油圧シリンダ、電磁ソレノイド、モータその他の駆動部によってヘッド7の押し出し、引き込みがなされるものとしてもよい。
【0029】
次に、ヘッド7の構成について具体的に説明する。図7は、ヘッド7を示す縦断面図であり、図8は、ヘッド7を示す下面図である。ヘッド7は、機体37の下部に設けられ、ICチップ3を吸着すると共に、ICチップ3を液晶ディスプレイパネル2に実装するものである。ヘッド7は、ヘッド本体71、ボンディングツール72、ノズル73、隔壁74及び圧力センサ75を備える。
【0030】
ヘッド本体71は、機体37の下部に取り付けられている。ヘッド本体71の左右側部には上下方向に貫通する吸引口71aがそれぞれ形成されている。吸引口71aはどちらも、減圧装置12と接続されている。また、ヘッド本体71の周縁部には上下方向に貫通する孔71bが複数形成されている。孔71bの上端は全て、樹脂供給装置13と接続されている。
【0031】
ボンディングツール72は、ICチップ3の圧着時に制御部11の制御によって加熱する発熱抵抗体であり、ヘッド本体71の下面中央部に設けられ、ICチップ3を吸着してボンディングツール72の下面に保持した状態でガラス基板2aに熱圧着するものである。ボンディングツール72の下面には、減圧装置12に連通し、ボンディングツール72に接したICチップ3を負圧により吸着して保持するための複数の吸着孔72aが形成されている。このボンディングツール72を囲むように複数の孔71bが配列されている。
【0032】
ノズル73は、それぞれ孔71bの下端に接続され、樹脂供給装置13から供給された樹脂を吐出するものである。これらノズル73が、ボンディングツール72を囲むように配列されている。ノズル73はヘッド本体71の下面から垂下し、ヘッド本体71の下面を基準としたノズル73の上下方向の長さは何れも等しく、これらノズル73の下端の位置が水平に揃えられている。
【0033】
隔壁74は、ICチップ3を液晶ディスプレイパネル2に実装する際に、ICチップ3の周囲の空間を外部から隔離するものである。隔壁74は、ヘッド本体71の下面に取り付けられ、且つ、ヘッド本体71の下面から垂下する。隔壁74は枠状に設けられ、隔壁74の内側に全てのノズル73が配置され、これらノズル73が隔壁74によって囲まれている。隔壁74の下端には、その全周に渡って耐熱性ゴム弾性体のシール材74aが設けられている。ヘッド本体71の下面を基準とした隔壁74の上下方向の長さはノズル73よりも長く、ボンディングツール72の高さとICチップ3の厚さを合わせた長さとほぼ等しくなっている。
【0034】
圧力センサ75は、圧着工程における隔壁74の内側の気体圧(ゲージ圧)を検知するもので、隔壁74の内側であり、且つヘッド本体71の下面であってボンディングツール72の下面よりも上方に取り付けられる。圧力センサ75は、ボンディングツール72で発する熱が伝搬しにくいようにヘッド本体71で断熱されている。
【0035】
図9は、マウンタ100の回路構成を示すブロック図である。制御部11はCPU、RAM、ROM等を有するマイクロコンピュータである。カメラ63によって検知される液晶ディスプレイパネル2及びICチップ3のアライメントマークの位置、図示しない位置センサによって検知されるヘッド7の位置、圧力センサ75によって検知される気体圧は制御部11へと出力される。そして、制御部11は、ROMに格納されたプログラムに従って減圧装置12、樹脂供給装置13、圧着装置35、ロボット22、32、52、圧着ステージ61及び樹脂硬化装置62等を制御する。
【0036】
制御部11は、ROMに格納されたプログラムによって、カメラ63による液晶ディスプレイパネル2及びICチップ3のアライメントマークのそれぞれの検出位置に基づいて、圧着ステージ61を制御する機能を有する。具体的には、カメラ63によってそれぞれのアライメントマークの位置を検知し、液晶ディスプレイパネル2のアライメントマークを基準としてICチップ3のアライメントマークの左右方向のずれX、前後方向のずれY、回転によるずれθをそれぞれ算出する。そして、その算出値X、Y、θが0になるように圧着ステージ61を移動又は回転させる。
また、制御部11は、位置センサの検出高さに基づいて、ヘッド7の上下動を制御する機能を有する。具体的にはヘッド7が所定位置、すなわち、ヘッド7が吸着しているICチップ3がガラス基板2aに接触する位置まで下降したところで、ヘッドの下降を停止し、ヘッドの動作を加圧モードに切り替える。
また、制御部11は、位置センサ及び圧力センサ75の検出気体圧に基づいて、減圧装置12を制御する機能を有する。具体的には、ヘッド7が所定位置、すなわち、ヘッド7が吸着しているICチップ3がガラス基板2aに接触する位置まで下降したところで、減圧装置12を駆動し、圧力センサ75が所定の圧力値を検出したところで、減圧装置12の駆動を停止する。
【0037】
次に、制御部11による処理の流れ、マウンタ100の動作及び表示部ユニット1の製造方法について説明する。
まず、マウンタ100内の雰囲気が大気圧に設定されている。制御部11がロボット22を作動させ、吸着部25をパレット21に並べられた液晶ディスプレイパネル2の上方に移動させる。吸着部25が所定位置まで移動したら、吸着部25を下降させて、吸着部25に液晶ディスプレイパネル2を吸着させる。そして、吸着部25上昇させて液晶ディスプレイパネル2を持ち上げる。持ち上げられた液晶ディスプレイパネル2は、ロボット22により液晶ディスプレイパネル供給部20から圧着ステージ61の上方へと移動される。液晶ディスプレイパネル2が圧着ステージ61の所定位置上方に来たら、制御部11は吸着部25を下降させ、液晶ディスプレイパネル2を圧着ステージ61の上面に載置する。その後、吸着部25は、パレット21の方へと戻される。
【0038】
次に、制御部11がロボット32を作動させ、ヘッド7をパレット31に並べられたICチップ3の上方に移動させる。ヘッド7が所定位置まで移動したら、モータによって昇降部36が下降する。それに伴い、機体37及びヘッド7が下降し、ボンディングツール72がチップ本体3aの上面に接触する。そして、吸着孔72aを通じた吸引により、チップ本体3aがボンディングツール72に吸着される。続いてモータによって昇降部36、機体37及びヘッド7が上昇し、ICチップ3が持ち上げられる。ロボット32によってヘッド7が圧着ステージ61の上に移動される。この際、ガラス基板2a及びICチップ3のアライメントマークをカメラ63によって検出し、圧着ステージ61の移動・回転がなされることで、それぞれのアライメントマークがぴったり重なり合う。
【0039】
その後、モータによって昇降部36が下降する。それに伴い、機体37及びヘッド7が下降する。そうすると、チップ本体3aの下面がガラス基板2aの上面に対向した状態で、チップ本体3aがガラス基板2aに近づき、バンプ3b、3cが電極端子2b、2eにそれぞれ直接接触する。隔壁74も下降して、隔壁74のシール材74aがガラス基板2aの上面に接触し、図10に示すように、ヘッド本体71の下面、隔壁74の内面及びガラス基板2aの上面によって包囲された空間S2ができる。
【0040】
ヘッド7が所定位置まで下降したことが位置センサによって検知されたら、制御部11によってエアシリンダ39が作動され、エアシリンダ39によってヘッド7が下方に押し付けられる。そうすることで、バンプ3b、3cの高さにばらつきがあったものとしても、バンプ3b、3cが圧縮され、全てのバンプ3b、3cが電極端子2b、2eに確実に接触する。また、シール材74aがガラス基板2aの上面に圧接され、隔壁74の中の気密性が高まる。加圧量はバンプの硬度、面積に応じてあらかじめ設定しておく。
【0041】
エアシリンダ39によってヘッド7が下方に押し付けられた状態で、制御部11が減圧装置12を駆動する。空間S2内の気体が減圧装置12によって吸引口71aを通じて吸引され、空間S2内の気圧が次第に低下していく。気体の吸引は、空間S2の気圧が所定値(例えば、ゲージ圧で−100kPa以下)になるまで行われる。
【0042】
空間S2内の気圧が所定値であることが圧力センサ75によって検知されたら、制御部11が減圧装置12を停止し、空間S2内の気圧が所定値に保たれる。このとき、空間S2は、その周囲に比べて負圧になっているので、液晶ディスプレイパネル2とICチップ3とが互いに引き寄せ合う。そして、ボンディングツール72が加熱すると、その熱がICチップ3を介して、バンプ3b、3cに伝搬し、電極端子2b、2eに接合される。なお、減圧装置12が減圧動作をしながらボンディングツール72が熱圧着してもよい。このように、液晶ディスプレイパネル2とICチップ3との間を縮めようと応力が生じるので、ボンディングツール72での熱圧着時にバンプ3b、3cと電極端子2b、2eとの間に隙間が生じないようになり、良好に接合できる。またバンプ3b、3cと電極端子2b、2eとの間に予めACFを配置させないていないのでバンプ3b、3cと電極端子2b、2eの接触面積が増大して接触抵抗を低くし、信頼性を向上できる。次に、制御部11が樹脂供給装置13を駆動し、樹脂供給装置13から各ノズル73へ樹脂が送られる。そうすると、各ノズル73の下端から紫外線硬化性樹脂或いは熱硬化性樹脂が吐出される。吐出された樹脂は、図11に示すように、ガラス基板2aの上面にチップ本体3aの周囲を囲うように貯まっていき、やがてチップ本体3aの側周面に密着し、ガラス基板2aの上面とチップ本体3aの下面との間の空間S1を囲う。空間S1は、空間S2と同様減圧雰囲気になっている。空間S1とその外側の空間とが確実に隔てられたところで、制御部11が樹脂供給装置13を停止し、その後、樹脂硬化装置62が紫外線を紫外線硬化性樹脂に照射するか或いは熱硬化性樹脂に熱を加えることで樹脂を硬化し、封止材Rとなる。樹脂硬化装置62が紫外線照射装置の場合、圧着ステージ61の下方に配置され、ガラス基板2aを介して紫外線硬化性樹脂が硬化して、封止材Rとなる。樹脂硬化装置62が熱源である場合、ボンディングツール72を樹脂硬化装置62に兼用することができる。
【0043】
紫外線照射或いは加熱を開始して所定時間が経過し、封止材Rが硬化したら、ICチップ3の液晶ディスプレイパネル2への実装が完了となる。制御部11は、減圧装置12に気体を逆流させて、隔壁74内の空間が大気圧に戻る。空間S1が封止材Rによって囲まれているから、隔壁74内の空間が大気圧に戻っても、空間S1が減圧状態を保っている。その後、モータによって昇降部36が上昇し、ヘッド7がロボット32によってパレット31の上に戻される。
【0044】
次に、FPC基板4と接続するためのACFをロールトゥロールで液晶ディスプレイパネル2上まで搬送し、図示しない熱圧着ツール及び圧着ステージにより液晶ディスプレイパネル2に転写し、カッターによってACFを液晶ディスプレイパネル2毎に裁断する。そして、制御部11がロボット52を作動させ、ボンディングツール55をパレット41に並べられたFPC基板4の所定位置上方に移動させる。ボンディングツール55が所定位置まで移動したら、ボンディングツール55を下降させて、ボンディングツール55にFPC基板4を吸着させる。そして、吸着部25を上昇させてFPC基板4を持ち上げる。持ち上げられたFPC基板4は、ロボット52によりFPC供給部40から図示しない圧着ステージの上に載置された液晶ディスプレイパネル2の電極上のACFの上方へ移動される。そして、液晶ディスプレイパネル2の電極とFPC基板4の電極の位置合わせが済むと、制御部11はボンディングツール55を下降させてボンディングツール72同様熱圧着してFPC基板4を液晶ディスプレイパネル2に接続させる。こうして表示部ユニット1が完成する。
【0045】
表示部ユニット1が完成すると、制御部11は、表示部ユニット搬出部80のアーム81、82を制御して表示部ユニット1を吸着させ、圧着ステージからパレット51へ移動させる。表示部ユニット1がパレット51の所定位置上方まで来たら、制御部11はアーム81、82により表示部ユニット1を下降させ、表示部ユニット1をパレット51に載置する。表示部ユニット1を載置し終えたアーム81、82は、元の位置に戻る。パレット51に表示部ユニット1が必要な数量並べられたところで、パレット51は次工程へと搬送される。
【0046】
次工程で、表示部ユニット1の背面にバックライトを取り付け、更にケース等の部材を取り付ければ液晶表示装置が出来上がる。
【0047】
なお、本実施形態では、ICチップ3を高温下で圧着し、封止材Rが硬化したところで空間S1の温度を常温まで冷却することにより、空間S1の気体に体積を収縮するような力を生じさせ、圧力を低下させることができる。また、本実施形態では、電圧印加停止による自然放冷や、冷却装置を用いた強制冷却等が含まれる。
また、熱で液化した熱可塑性樹脂を用い、冷却によって硬化させるようにしてもよい。
また、マウンタからFPC供給部を外し、FPC基板の圧着を次工程に回しても差し支えない。
【0048】
本実施形態によれば、電極とバンプが直接接触するだけでなく、電子部品と基板に大気圧がかかり、電極とバンプとが互いに押し付け合う状態が維持される。従って、従来のようにACF等を用いて接着する必要が無いので、電極及びバンプがどんなに微細で間隔の狭いものであっても、電子部品を確実に基板に圧着することができる。
そして、空間の真空の度合いが高ければ高いほど電極とバンプの接触はより確実なものとなる。
また、封止材の表面に液状ガスケット材で覆うことで、空間S1及び空間S2をより高真空状態にすることができる。
上記実施形態では、ICチップ3が一つであったが、複数のICチップ3がガラス基板2a上に配置されていてもよい。
例えば、上記実施形態では、ICチップ3が、走査線に接続されたゲートドライバ並びに信号線に接続されたソースドライバを兼ねていたが、それぞれ分離した複数のICチップ3で構成してもよい。この場合、ガラス基板2aは、ガラス基板2cの一方の端面から突出した、ゲートドライバとしてのICチップ3が配置される非表示領域と、ガラス基板2cの他方の端面から突出した、ソースドライバとしての別のICチップ3が配置される非表示領域と、を備え、それぞれのICチップ3は、複数の配線2fを介してFPC基板4に接続されている。
上記実施形態では、表示部ユニット1が液晶ディスプレイパネル2を有していたが、ELパネル、フィールドエミッションディスプレイパネル等、他の表示パネルであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 表示部ユニット
2 液晶ディスプレイパネル
2a ガラス基板(基板)
2b 電極端子
3 ICチップ(電子部品)
3a チップ本体(電子部品本体)
3b バンプ
4 FPC基板
100 マウンタ
10 マウンタ本体
20 液晶ディスプレイパネル供給部
30 ICチップ供給部
35 圧着装置
40 FPC供給部
50 表示部ユニット搬出部
60 圧着部
7 ヘッド
71 ヘッド本体
71a 吸引口
71b 孔
72 ボンディングツール
73 ノズル
74 隔壁
74a シール材
S1、S2 空間
R 封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた電極と、
前記電極に接続されたバンプを有し、前記基板上に設けられた電子部品と、
前記基板と前記電子部品との間の減圧された空間を囲繞した封止材と、を備えることを特徴とする電子部品実装構造。
【請求項2】
前記空間は、ゲージ圧で−100kPa以下であることを特徴とする請求項1記載の電子部品実装構造。
【請求項3】
前記基板には、TFT、前記TFTのソースに接続された信号線、前記TFTのゲートに接続された走査線が設けられ、
ICチップは、前記信号線及び前記走査線の少なくとも一方に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品実装構造。
【請求項4】
保持された電子部品を基板に圧着するボンディングツールと、
前記ボンディングツールに保持された前記電子部品及び前記電子部品の周囲の第一の空間を囲繞する隔壁と、
前記隔壁が前記基板に接した状態で前記第一の空間内の気体を吸引する吸引口と、
前記基板と前記電子部品との間の第二の空間を周囲から遮断する封止材を塗布するノズルと、を備えることを特徴とするマウンタのヘッド。
【請求項5】
基板が載置されるステージと、
前記ステージの上において昇降するヘッド本体と、
前記ヘッド本体に付設され、電子部品を前記基板に圧着するボンディングツールと、
前記ボンディングツールに保持された前記電子部品及び前記電子部品の周囲の第一の空間を囲繞する隔壁と、
前記隔壁が前記基板に接した状態で前記第一の空間内の気体を減圧する減圧装置と、
前記隔壁が前記基板に接した状態で前記基板と前記電子部品との間の第二の空間を周囲から遮断する封止材を塗布するノズルと、を備えることを特徴とするマウンタ。
【請求項6】
基板の表面に電子部品本体を対向させて、前記電子部品本体の前記基板に対向した面に凸設されたバンプを前記基板の表面に形成された電極に接触させ、前記電子部品本体と前記基板との間の空間を減圧した状態で、封止材で前記バンプ及び前記電極を囲繞して、その封止材を前記基板の表面と前記電子部品本体との間に介在させ、その塗布した封止材を硬化させることを特徴とする電子部品実装構造の製造方法。
【請求項7】
基板の表面に電子部品本体を対向させて、前記電子部品本体の前記基板に対向した面に凸設されたバンプを前記基板の表面に形成された電極に接触させ、前記電子部品本体を加熱して、前記電子部品本体の周囲の気体を膨張させた状態で、封止材で前記バンプ及び前記電極を囲繞して、その封止材を前記基板の表面と前記電子部品本体との間に介在させ、その塗布した封止材を硬化させ、その後前記電子部品本体を冷却して前記電子部品本体と前記基板との間の空間を減圧した状態とすることを特徴とする電子部品実装構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−219101(P2010−219101A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61027(P2009−61027)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】