説明

電子部品封止用難燃性ポリオルガノシロキサン組成物

【課題】硬化性および難燃性が良好で、十分な作業可使時間を有し、かつ硬化物が低硬度であり各種基材に対する接着性に優れる電子部品封止用の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】(a1)分子鎖両末端が水酸基で封鎖された粘度(23℃)が0.02〜100Pa・sのポリオルガノシロキサンと、(a2)難燃性付与充填剤と、(a3)シリカ系充填剤と、(a4)難燃性付与剤である白金化合物を含む主剤成分(A)と、(b1)アルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物と、(b2)アミノ基置換アルコキシシランと、(b3)硬化触媒をそれぞれ含む硬化剤成分(B)とを含有し、前記主剤成分(A)と前記硬化剤成分(B)との混合比が、重量比で100:0.6〜100:12であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温で硬化してゴム状弾性体を生じる難燃性のポリオルガノシロキサン組成物に係り、特に2成分型の電子部品封止用難燃性ポリオルガノシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
室温で硬化してゴム状弾性体を生じる縮合反応型のポリオルガノシロキサン組成物は、電気・電子工業分野等における弾性接着剤、コーティング材、電気絶縁シール材等として、また建築用シーリング材等として広く用いられている。
【0003】
縮合反応型の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の中で、空気中の水分と接触することにより硬化反応が生起する1成分型(1包装型)のものは、使用直前にベースポリマーと架橋剤や触媒等とを秤量したり混合したりする煩雑さがなく、取り扱いが簡単である。しかしながら、硬化が表面から徐々に内部へと進行するものであるため、硬化速度が遅く、また深部硬化性も悪いという難点がある。
【0004】
これに対して、2成分型の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、硬化速度が速く、深部硬化性も1成分型に比べて良好である。この組成物は、一般に主剤成分と硬化剤成分(架橋成分)に分けて調製され、それぞれ別々の容器に保存され使用時に混合される、いわゆる多包装型室温硬化性組成物として使用される。主剤成分には、ベースポリマーである分子末端が水酸基および/またはアルコキシ基で閉塞されたポリジオルガノシロキサンとともに無機充填剤が配合され、硬化剤成分には、架橋剤および硬化触媒が配合される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、従来の1成分型および2成分型の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、流動性および難燃性が十分ではなく、流動性、難燃性、吐出作業性、硬化後の硬さなど、電子部品の封止用ポッティング材として要求される全て特性を満足させるものはなかった。
【0006】
例えば、太陽電池パネル端子部のポッティング材としては、良好な難燃性とともに、狭ギャップでのボイドの発生を低減するために流動性が良好であり、かつ撹拌機等の内部での硬化を回避するに十分な吐出性を有することが要求される。また、各種基材に対する接着性が十分ではなく、特に難燃性を付与するため炭酸亜鉛や水酸化アルミニウム等を添加したものは、充填剤量の増大によりゴム硬さが増すため、さらに接着性が低下するという問題があった。
【0007】
また、適当な長さの作業可使時間を有し、さらにポッティング後硬化収縮の際の応力を緩和するために、低硬度の硬化物を提供する材料が要求されるが、これら全ての要求を満足させる室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は得られていないのが現状であった。
【特許文献1】特開2005−105235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、硬化性および難燃性が良好で、十分な作業可使時間を有し、かつ硬化物が低硬度であり各種基材に対する接着性に優れる室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子部品封止用の難燃性ポリオルガノシロキサン組成物は、(a1)分子鎖両末端が水酸基で封鎖された23℃における粘度が0.02〜100Pa・sであるポリオルガノシロキサンと、(a2)難燃性付与充填剤と、(a3)シリカ系充填剤と、(a4)難燃性付与剤である白金化合物をそれぞれ含む主剤成分(A)と、(b1)一般式(1):RSi(OR4−a …(1)
(式中、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい非置換の1価の炭化水素基であり、aは0,1または2の整数である。)で示されるアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物と、(b2)アミノ基置換アルコキシシランと、(b3)硬化触媒をそれぞれ含む硬化剤成分(B)とを含有し、前記主剤成分(A)と前記硬化剤成分(B)との混合比が、重量比で100:0.6〜100:12であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の難燃性ポリオルガノシロキサン組成物は、流動性、硬化性および難燃性が良好で、十分な作業可使時間を有し、かつ硬化物が低硬度であり各種基材に対する接着性に優れているので、太陽電池パネルの端子部の封止用のような電子部品の封止用ポッティング材等として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
本発明の難燃性ポリオルガノシロキサン組成物の(A)成分である主剤成分は、(a1)23℃における粘度が0.02〜100Pa・sのポリオルガノシロキサンと、(a2)難燃性付与充填剤と、(a3)シリカ系の充填剤と、(a4)白金化合物をそれぞれ含有する。
【0013】
(a1)成分であるポリオルガノシロキサンは、分子鎖両末端が水酸基で封鎖されており、下記一般式(2)で表される実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンである。
【化1】

【0014】
式(2)中、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい置換または非置換の1価の炭化水素基である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のようなアルキル基;シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基;ビニル基、アリル基のようなアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基のようなアラルキル基、さらにこれらの炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子等の他の原子または基で置換された、例えばクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基のようなハロゲン化アルキル基;3−シアノプロピル基のようなシアノアルキル基等の置換炭化水素基が例示される。これらのうち、合成が容易で、(a1)成分が分子量の割に低い粘度を有し、硬化前の組成物に良好な押出し性を与えることと、硬化後の組成物に良好な物理的性質を与えることから、全有機基の85%以上がメチル基であることが好ましく、実質的にすべての有機基がメチル基であることがより好ましい。
【0015】
一方、特に、耐熱性、耐放射線性、耐寒性または透明性を付与する場合は、Rの一部として必要量のアリール基を、耐油性、耐溶剤性を付与する場合は、Rの一部として3,3,3−トリフルオロプロピル基や3−シアノプロピル基を、また塗装適性を有する表面を付与する場合は、Rの一部として長鎖アルキル基やアラルキル基をそれぞれメチル基と併用するなど、目的に応じて任意に選択することができる。
【0016】
また、(a1)成分であるポリオルガノシロキサンは、23℃における粘度が0.02〜100Pa・sであり、したがって、式(2)中のnは、(a1)成分の23℃における粘度が前記範囲になる数(整数)である。(a1)成分の23℃における粘度が0.02Pa・s未満では、硬化後のゴム状弾性体の伸びが不十分となり、逆に100Pa・sを超えると、吐出性等の作業性および流動特性が低下する。(a1)成分の好ましい粘度は、硬化前および硬化後の組成物に要求される性質を調和させることから、0.1〜50Pa・sの範囲である。
【0017】
このようなポリオルガノシロキサンは、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンのような環状ジオルガノシロキサン低量体を、水の存在下に酸性触媒またはアルカリ性触媒によって開環重合または開環共重合させることにより得ることができる。
【0018】
(a2)成分である難燃性付与充填剤は、組成物および組成物の硬化により得られるゴム状弾性体に難燃性を付与するとともに、硬化物に対して高い機械的強度を付与する。このような難燃性付与充填剤としては、例えば、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化セリウムおよびその表面が処理されたもの等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。難燃性を付与する効果の点からは、なかでも炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム等が好ましく、流動特性の観点からは、炭酸亜鉛の使用が特に好ましい。
【0019】
(a2)成分である難燃性付与充填剤の配合量は、(a1)成分100重量部に対して1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部である。1重量部未満では、難燃性が十分に付与されず、逆に200重量部を超えると、硬化後の機械的特性や流動特性が低下する。
【0020】
(a3)成分であるシリカ系充填剤としては、粉砕シリカ(石英微粉末)のような非補強性充填剤を挙げることができる。また、縮合反応の速度をコントロールするために、反応の進行に必要な水分を3〜12重量%、好ましくは5〜10重量%の割合で含有する非晶質シリカ(沈殿シリカ)を含有することが好ましい。(a3)成分のうちで粉砕シリカの配合量は、(a1)成分100重量部に対して10〜200重量部、好ましくは20〜100重量部である。また、含水非晶質シリカ(沈殿シリカ)の配合量は、(a1)成分100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0021】
(a4)成分である白金化合物は、組成物および組成物の硬化により得られるゴム状弾性体の難燃性をさらに向上させるために添加される成分である。このような白金化合物としては、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とオレフィンとの錯体、白金とケトン類との錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体、白金とニトリル化合物との錯体、リン酸もしくは亜リン酸化合物と白金との錯体等が例示される。これらの白金化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0022】
この(a4)白金化合物の配合量は、白金元素として(a1)成分100重量部に対して1〜1000ppm、より好ましくは5〜200ppmである。1ppm未満では、難燃性を十分に向上させることができず、逆に1000ppmを超えると、これ以上の効果が得られないばかりでなく不経済である。
【0023】
本発明の難燃性ポリオルガノシロキサン組成物の(B)成分である硬化成分は、(b1)アルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物と、(b2)アミノ基置換アルコキシシランと、(b3)硬化触媒をそれぞれ含有する。
【0024】
(b1)成分は、上記(a1)成分の架橋剤として作用する成分であり、一般式(1):RSi(OR4−a …(1)で示されるアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物である。
【0025】
式(1)中、RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい非置換の1価の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基のようなアルキル基;シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基;ビニル基、アリル基のようなアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基のようなアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基のようなアラルキル基が例示される。また、aは0,1または2の整数である。
【0026】
(b1)成分としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリ(エトキシメトキシ)シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
(b1)成分であるアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物は、前記(a1)成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜25重量部配合される。(b1)成分の配合量が0.1重量部未満では、良好な硬化性が得られず、50重量部を超える場合には、硬化後のゴム物性(例えば硬さ、引張強さ、伸びなど)に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0028】
(b2)成分であるアミノ基置換アルコキシシランは、前記(b1)成分と同様に(a1)成分の架橋剤として作用するとともに、接着性を向上させる成分である。(b2)アミノ基置換アルコキシシランとしては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。これらの化合物は、速硬化性と同時に、優れた保存安定性を与える利点を有している。
【0029】
(b2)成分であるアミノ基置換アルコキシシランは、前記(a1)成分100重量部に対して0.5〜50重量部、好ましくは3〜30重量部配合される。(b2)成分の配合比が前記範囲を外れる場合には、硬化後のゴム物性(例えば硬さ、引張強さ、伸びなど)に悪影響が及ぶ。また、硬化性にも影響がでるおそれがあり、例えば(b2)成分の配合量が50重量部を超える場合には、硬化速度が異常に遅くなるばかりでなく、深部硬化性も悪くなる。
【0030】
さらに、組成物の接着性、保存安定性の改良のために、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランのようなエポキシ基含有アルコキシシランを配合することも可能である。
【0031】
(b3)成分である硬化触媒は、主として(a1)成分の水酸基と(b1)成分および(b2)成分の加水分解性基、すなわちOR基との縮合反応を促進する触媒である。このような(b3)成分としては、鉄オクトエート、マンガンオクトエート、亜鉛オクトエート、スズナフテート、スズカプリレート、スズオレートのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジオクチルスズジラウレートのような有機スズ化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、1,3−プロポキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)のようなアルコキシチタン類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、トリエトキシアルミニウムのような有機アルミニウム;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、トリブトキシジルコニウムステアレートのような有機ジルコニウム化合物等が例示される。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。微量の存在で大きな触媒能を持つことから、有機スズ化合物、アルコキシチタン類が好ましく、特に有機スズ化合物が好ましい。
【0032】
この(b3)硬化触媒の配合量は、(a1)成分100重量部に対して0.005〜5重量部、好ましくは0.025〜2.5重量部である。0.005重量部未満では、硬化触媒として十分に作用せず、硬化に長い時間がかかるばかりでなく、特に空気との接触面から遠いゴム層の深部における硬化が不十分となる。逆に5重量部を超えると、その配合量に見合う効果がなく、無意味であるばかりか非経済的である。
【0033】
本発明の難燃性ポリオルガノシロキサン組成物には、以上の各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合されている、顔料、チクソトロピー性付与剤、押出作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線吸収剤、防かび剤、耐熱性向上剤、接着向上剤等の各種添加剤を、必要に応じて配合することができる。これらその他の成分は、適宜(A)成分または(B)成分に配合される。
【0034】
本発明の難燃性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)成分である主剤成分と(B)成分である硬化剤成分とを、100:0.6〜100:12の重量比で混合することにより得ることができる。(A)成分と(B)成分とのより好ましい配合比(重量比)は、100:1〜100:10であり、特に100:2〜100:8の範囲が好ましい。(A)成分と(B)成分とを前記範囲で混合してなる本発明のポリオルガノシロキサン組成物は、室温で硬化して難燃性が良好で低硬度でありかつ各種基材に対する接着性に優れたゴム状弾性体を生じる。(A)成分と(B)成分との混合比がこの範囲を外れ(B)成分の重量比が低すぎる場合には、硬化物が不十分となり、硬化物を得ることができない。また、(B)成分の重量比が高すぎる場合には、撹拌混合中に組成物が硬化してしまい、特性の良好な硬化物を得ることができない。本発明の組成物は、電気・電子機器用の弾性接着剤、コーティング材、ポッティング材等として有用である。また、粘度(23℃)が2000〜3000mPa・sで、良好な難燃性および硬化性を有し、かつ硬さが40以下(JIS タイプA)と十分に低硬度の硬化物を提供することができるので、特に太陽電池パネルの端子部のような電子部品の封止用ポッティング材として好適である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。なお、実施例中、「部」とあるのはいずれも「重量部」を表し、粘度等の物性値は全て23℃、相対湿度50%での値を示す。
【0036】
実施例1
【0037】
[(A)主剤成分の調製]
分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度3Pa・s、水酸基量0.047mmol/g)11.0部、同じく分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度0.7Pa・s、水酸基量0.091mmol/g)34.4部、粉砕シリカ(龍森社製;CRYSTALITE VX−S;平均粒径4μm)34.0部、含水非晶質シリカ(沈殿シリカ)(東ソー・シリカ社製;ニップシール)1.4部、粘度調整用フリーオイルであるポリジメチルシロキサン(粘度0.1Pa・s)9.6部、炭酸亜鉛(東邦亜鉛社製;炭酸亜鉛S)9.0部、カーボンブラック(電気化学工業社製;デンカブラックHS−100)0.6部、塩化白金酸(白金元素量として)27ppmをそれぞれ混合し、(A)成分である主剤成分100部を得た。
【0038】
[(B)硬化剤成分の調製]
いずれも架橋剤であるポリエトキシシロキサン14.0部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン27.0部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン27.0部、1,3,5−トリス{3−(トリメトキシシリル)プロピル}イソシアヌレート14.0部、およびジメチルシルセスキオキサン単位含有シリコーンポリマー15.0部と、ジオクチル錫ジラウレート3.0部をそれぞれ混合し、(B)成分である硬化剤成分100部を得た。
【0039】
こうして得られた(A)主剤成分と(B)硬化成分とを100:3.5の重量比で混合し、室温硬化性のポリオルガノシロキサン組成物を得た。
【0040】
実施例2〜5、比較例1〜3
表1に示す各成分を同表に示す組成で配合し、実施例1と同様に均一に混合して(A)成分である主剤成分100部を得た。また、表2に示す各成分を同表に示す組成で配合し、実施例1と同様に均一に混合して(B)成分である硬化剤成分100部を得た。そして、得られた(A)主剤成分と(B)硬化成分とを表3に示す割合(重量比)で混合し、室温硬化性のポリオルガノシロキサン組成物を得た。
【0041】
次いで、実施例1〜5および比較例1〜3で得られた室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。結果を表3に示す。
【0042】
[難燃性]
(A)成分と(B)成分を混合して得られた組成物を、脱泡後金型に流し込み、23℃、50%RHの雰囲気に3日間放置して厚さ3mmの硬化物を得た。この硬化物について、UL−94Vに基づく燃焼試験を行った。
【0043】
[硬さ(硬度)]
(A)成分と(B)成分を混合して得られた組成物を、脱泡後金型(60mm×25mm×6mm)に流し込み、23℃、50%RHの雰囲気に3日間放置して得られた硬化物の硬さを、JIS K 6253に拠りデュロメータータイプAを使用して測定した。
【0044】
[流動性(粘度)]
(A)成分と(B)成分を混合して得られた組成物の粘度を、回転粘度計を用いて測定した。測定開始時の粘度を混合直後の粘度とした。
【0045】
[作業可能時間(ポットライフ)]
回転粘度計を使用し、粘度の測定を行った。そして、測定開始から、流動性が著しく低下する粘度20Pa・sになるまでの時間を測定した。
【0046】
[硬化性]
組成物の粘度変化を回転粘度計を用いて測定し、粘度計の目盛り(max 100,000mPa・s)が振り切れるまでの時間(分)を測定した。この時間が短いほど、硬化が速いすなわち硬化性が大きい。
【0047】
[深部硬化性]
(A)成分と(B)成分を混合して得られた組成物を、ポリスチレン製カップに流し込み、23℃、50%RHの雰囲気に3日間放置して硬化させた。得られた硬化物について、カップを割って上層と下層をそれぞれ6mmの厚さに切り取り、それぞれの層の硬さを、JIS K 6253に拠りデュロメータータイプAを使用して測定した。そして、上層と下層で硬さの差が10以上あれば×、5〜10は△、5未満なら○と評価した。
【0048】
[接着性]
表3に示す各種基材に、組成物を塗布(長さ25mm×幅10mm×厚さ1mm)し、23℃、55%RHの雰囲気に3日間放置し硬化させて試験体を作製した。そして、これらの試験体の硬化層を指先またはへら等で引き剥がし、目視により凝集破壊率を10%単位で測定した。そして、以下に示す基準で接着性の判定を行なった。
○………凝集破壊率100%
△………凝集破壊率50〜90%
×………凝集破壊率0〜40%
【0049】
なお、表3に示す基材において、変性ポリフェニレンオキサイド(変性PPO)としてはノリル(SABICイノベーティブプラスチックス社の商品名)を、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)としてはザイロン(旭化成社の商品名)を、ポリアミドとしてはナイロン(デュポン社の商品名)をそれぞれ使用し、これらの基材に対する接着性を調べた。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
表3から明らかなように、実施例1〜4で得られたポリオルガノシロキサン組成物は、硬化性、難燃性および接着性に優れており、特に実施例1で得られたポリオルガノシロキサン組成物は、太陽電池パネルの端子ボックス内の端子部のような電子部品の封止用のポッティング材料として好適である。
【0054】
すなわち、実施例1で得られたポリオルガノシロキサン組成物は、粘度が4000mPa・s以下であり、狭ギャップ内の充填に好適する良好な流動性を有するうえに、硬化性の測定結果が10分であり、5〜10分で表面に皮膜が形成されて流動性を失うが、5分以上の作業可使時間を有し、マシン(撹拌機などの)内部での硬化を回避するに十分な吐出性が確保されている。また、UL−94Vに基づく燃焼試験の判定結果がV−1以上であり、良好な難燃性を有するうえに、硬化物の硬さが40以下であるので、ポッティング後硬化収縮時に端子ボックス内の応力が十分に緩和され、端子部が応力によりダメージを受けることがない。
【0055】
これに対して、比較例1では、(A)成分と(B)成分との混合比が所定の範囲(100:0.6〜100:12)を外れ、(B)成分の重量比が高くなっているので、(A)成分と(B)成分との撹拌・脱泡中に組成物が増粘して硬化し始め、測定・評価に供し得る硬化物を得ることができなかった。比較例2では、(B)成分の重量比が低くなりすぎているので、硬化物自体を得ることができなかった。また、比較例3で得られたポリオルガノシロキサン組成物は、難燃性付与充填剤である炭酸亜鉛を含有していないので、難燃性が十分でなくさらに接着性も劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)分子鎖両末端が水酸基で封鎖された23℃における粘度が0.02〜100Pa・sであるポリオルガノシロキサンと、
(a2)難燃性付与充填剤と、
(a3)シリカ系充填剤と、
(a4)難燃性付与剤である白金化合物
をそれぞれ含む主剤成分(A)と、
(b1)一般式(1):
Si(OR4−a …(1)
(式中、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい非置換の1価の炭化水素基であり、aは0,1または2の整数である。)で示されるアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物と、
(b2)アミノ基置換アルコキシシランと、
(b3)硬化触媒
をそれぞれ含む硬化剤成分(B)とを含有し、前記主剤成分(A)と前記硬化剤成分(B)との混合比が、重量比で100:0.6〜100:12であることを特徴とする電子部品封止用難燃性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
前記(a2)難燃性付与充填剤は、炭酸亜鉛を含むことを特徴とする請求項1記載の電子部品封止用難燃性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
前記(a3)シリカ系充填剤は、含水非晶質シリカ(沈殿シリカ)を含有することを特徴とする請求項1または2記載の電子部品封止用難燃性ポリオルガノシロキサン組成物。

【公開番号】特開2010−120984(P2010−120984A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293298(P2008−293298)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】