説明

電子部品用パッケージ、電子部品用パッケージのベース

【課題】 回路基板への搭載接合の信頼性を向上させ、かつEMS対策することが容易な電子部品用パッケージを提供する。
【解決手段】 平面矩形状のベース1と、金属キャップとを有してなり、前記ベース底面の端子電極と回路基板とが導電性接合材により接合されてなる電子部品用パッケージであって、前記ベースの底面の一角位置とその対角位置にあたる第1の対角位置には、電子部品素子と電気的に接続される一対の機能端子電極12,13が形成され、前記ベースの底面の一角位置に対して前記底面の短辺方向に対向する他角位置とその対角位置にあたる第2の対角位置には、前記金属キャップと接続されたグランド端子電極14と無機能端子電極15が形成され、前記機能端子電極12,13がグランド端子電極14あるいは無機能端子電極15より面積が大きく形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器等に用いられる電子部品用パッケージ、電子部品用パッケージのベースに関する。
【背景技術】
【0002】
気密封止を必要とする電子部品の例として、水晶振動子、水晶フィルタ、水晶発振器等の圧電振動デバイスが挙げられる。これら各製品では、いずれも水晶振動板の表面に金属薄膜電極が形成され、この金属薄膜電極を外気から保護するために水晶振動板(具体的には金属薄膜電極が気密封止されている。
【0003】
これら圧電振動デバイスは部品の表面実装化の要求から、セラミック材料からなるパッケージ内に気密的に収納する構成が増加している。例えば、特許文献1には、水晶振動板の搭載部を有するベース(実装基板)と断面が逆凹形の蓋(カバー)とからなり、これらを気密的に封止したセラミック材料からなるパッケージを回路基板に搭載し、はんだなどの導電性接合材を介して接合する構成が開示されている。
【0004】
この従来の圧電振動デバイスでは、ベースの底面に端子電極が形成され、はんだ(導電性接合材)の這い上がりによる接続状態を確認するために、当該端子電極がベースの側面に形成されたキャスタレーションによりベースの底面から側面に延出している。
【0005】
ところで、この従来の圧電振動デバイスを搭載する回路基板には、加工の容易性とコスト的なメリットから、網目状のガラス繊維にエポキシ樹脂材を含浸させたいわゆるガラスエポキシ基板が広く使用されている。また、この回路基板の電極パターン上部には、スクリーン印刷などの手法により、はんだペーストが塗布されている。そして、この回路基板の電極パターンに、上記圧電振動デバイスのパッケージの端子電極を重ね合わせた状態で搭載して、溶融炉(加熱炉など)にてはんだペーストを溶融させて回路基板上に圧電振動デバイスをはんだ接合する。
【特許文献1】特開2002−76813号
【特許文献2】特開2005−108923号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パッケージと回路基板との間で熱膨張差により、これらパッケージと回路基板とを接合するはんだに応力が生じ、クラックが発生することがある。特に、パッケージとしてアルミナ等のセラミック材料を用い、回路基板としてガラスエポキシ基板を用いた組み合わせ構成であって、さらに車載用などの耐熱用途向けに使用した場合、高温環境下で当該パッケージと回路基板とを使用するので、パッケージの熱膨張係数に対して回路基板の熱膨張係数が大きくなり、はんだから疲労破壊が生じやすくなる。このように、通常の温度環境ではそれほど問題にならなかったはんだクラックの問題点が高温環境では顕著にあらわれ、さらに当該パッケージと回路基板とに衝撃が加わると、はんだクラック部分から剥離が生じるといった問題点があった。
【0007】
また、上記特許文献2では、ベースの底面の端子電極について2端子構成とし、これらの各端子電極は互いに対向する辺で端子電極の一部が対向して形成される領域と互い対向しない領域とを有して形成することで、上記問題点を解決するものである。しかしながら、上記特許文献2の端子構成では、この端子構成では電子部品素子と直接接続されない端子電極を具備するものには対応できないのが現状であった。特に、グランド端子電極を具備する電子部品には対応していないため、電磁ノイズ対策(EMS対策)することができないという新たな問題点があった。
【0008】
また、近年、回路基板への表面実装型電子部品の実装はリフローはんだ付けによる手法が実施されている。すなわち、回路基板の配線パッドに対してはんだペーストを塗布し、その上部に表面実装型電子部品の端子電極を重畳させて搭載した後、加熱炉などではんだペーストを溶融してはんだ付けが実施されている。これに対して、上記した特許文献2の端子構成では、リフローはんだ付けによる手法で回路基板へ電子部品用パッケージ(具体的にベース)を実装すると、回路基板の配線パッド形状や面積によって、電子部品用パッケージ(具体的にベース)が平面的に回転して搭載実装されることがあった。このような現象は特許文献2のようにベースの対角方向に端子電極が配置されたものではあらわれやすく、対角方向に端子電極が配置された電子部品用パッケージにおける改善すべき問題点となっている。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、電子部品用パッケージと回路基板の搭載接合の信頼性を向上させ、かつEMS対策することが容易な電子部品用パッケージ、電子部品用パッケージのベースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、電子部品素子を保持する電子部品用パッケージのベースにおいて、当該ベースの底面は平面視矩形とされ、前記底面の四隅には、外部の回路基板と導電性接合材を用いて接合する複数の端子電極が形成され、前記底面の一角位置と、当該一角位置の対角位置にあたる第1の対角位置(第1の対角対向位置)には前記電子部品素子と電気的に接続される一対の機能端子電極(第1の対角対向端子電極)が形成され、前記一角位置に対して前記底面の短辺方向に対向する他角位置と、前記他角位置の対角位置にあたる第2の対角位置(第2の対角対向位置)には、グランド端子電極と前記電子部品素子と電気的に接続されない無機能端子電極(第2の対角対向端子電極)が形成されるか、または一対のグランド端子電極(第2の対角対向端子電極)が形成されてなり、前記機能端子電極がグランド端子電極あるいは無機能端子電極より面積が大きく形成されることを特徴とする。
【0011】
具体的に、本発明にかかる電子部品用パッケージのベースを表面実装型の水晶振動子のパッケージに適用する場合、前記グランド端子電極は前記金属蓋と電気的に接続される部材として用いる。また、本発明にかかる電子部品用パッケージを水晶フィルタに適用する場合、前記グランド端子電極はフィルタのアース電極とされてもよい。また、本発明にかかる電子部品用パッケージを水晶発振器に適用する場合、前記グランド端子電極は前記金属蓋と電気的に接続される部材として用いてもよく、また、電子部品素子としてICを用いた場合のICのグランド端子電極として用いてもよい。
【0012】
上記構成により、前記底面に対してその一角位置と、当該一角位置の対角位置にあたる第1の対角位置(第1の対角対向位置)には、前記電子部品素子と電気的に接続され、前記グランド端子電極と無機能端子電極、あるいは一対のグランド端子電極に対して面積の大きい一対の機能端子電極(第1の対角対向端子電極)が形成されているので、はんだなどの前記導電性接合材によって回路基板と電気的機械的に接合する際に接続性を低下させることがない。このような機能端子電極と無機能端子電極とは同材質のメタライズにより同工程で構成することができるため、各端子電極の厚みを一定としながらも極めて容易かつ安価に形成できる。
【0013】
また、前記導電性接合材によって回路基板と電気的機械的に接合する際に当該電子部品用パッケージ(具体的に前記ベース)と回路基板との間で熱膨張差が生じても、前記一角位置に対して前記ベースの底面の短辺方向に対向する他角位置と、前記ベースの底面に対して前記他角位置の対角位置にあたる第2の対角位置(第2の対角対向位置)とは、前記機能端子電極に対して面積の小さいグランド端子電極と無機能端子電極が形成されるか、前記機能端子電極に対して面積の小さい一対のグランド端子電極が形成されるので、電子部品用パッケージ(ベース)の接合時に発生する応力を、機能端子電極の形成領域からグランド端子電極と無機能端子電極の形成領域、あるいは一対のグランド端子電極の形成領域に向かって電子部品用パッケージ(ベース)が平面的に回転するように逃がすことができ、かつ当該電子部品用パッケージ(ベース)が過度に回転するのも抑制することができる。結果として、当該電子部品用パッケージと回路基板との間に介在する前記導電性接合材に応力が集中しないので、前記導電性接合材から疲労破壊が生じにくくすることができる。リフローはんだ付けによる手法を採用しても当該電子部品用パッケージ(具体的に前記ベース)の接合時に平面的に不要な回転をして搭載実装されることもない。
【0014】
特に、回路基板がガラスエポキシ基板からなるものに対して、前記ベースにセラミック材料を用いた場合、前記端子電極がメタライズにより形成された電子部品用パッケージを前記導電性接合材で接合するものでは、互いの熱膨張差の影響が高くなり、導電性接合材のクラック(例えば、はんだクラック)の悪影響が生じやすかった。これに対して、本発明によれば、これらの部材(構成)の組み合わせたものに対しても、当該電子部品用パッケージ(具体的にベース)の応力を緩和させて、当該電子部品用パッケージと回路基板との間に介在する前記導電性接合材にクラックを発生させない。また、特別の加工工程を経ることなく、従来からのメタライズの技術により、熱膨張の応力緩和できる端子電極の構造が得られるので、極めて容易かつ安価に形成することができる。
【0015】
また、本発明によれば、上記したように、前記一角位置に対して前記ベースの底面の短辺方向に対向する他角位置と、前記ベースの底面に対して前記他角位置の対角位置にあたる第2の対角位置である第2の対角対向端子電極のうちの1つが前記金属蓋と電気的に接続された前記グランド端子電極として設定することができるので、上記応力緩和作用を阻害することなく、外部の回路基板の回路で発生した電磁ノイズを前記金属蓋でとらえ、電磁ノイズを前記グランド端子電極により取り除くことができる。結果として、当該電子部品パッケージ内部の電子部品素子に対して電磁ノイズの悪影響を排除することができる。
【0016】
また、前記電子部品素子と電気的に接続された機能端子電極が、前記グランド端子電極と前記電子部品素子と電気的に接続されない無機能端子電極、あるいは一対の前記グランド端子電極に対して面積が大きく形成されているので、当該電子部品用パッケージ(具体的にベース)と回路基板との前記導電性接合材による電子部品素子の電気的接続性が劣化することがなくなる。加えて、電子部品素子用の前記機能端子電極に対して検査用の測定プローブ等が接触不良を起こす危険性がなくなるので、より確実かつ信頼性の高い検査が実現でき、電子部品の電気的性能の向上や歩留まり向上に寄与する構成が実現できる。
【0017】
また、本発明によれば、前記機能端子電極の面積に対して、グランド端子電極と無機能端子電極、または一対のグランド端子電極の面積を50%以下として形成することが好ましい。このような構成であれば、上述の作用効果に加えて、前記グランド端子電極と無機能端子電極の面積、または一対のグランド端子電極の面積を、前記機能端子電極の面積に対して50%より大きく設定すると、前記機能端子電極によって接合される導電性接合材(はんだ)の接合面の応力に対して、グランド端子電極と無機能端子電極、または一対のグランド端子電極によって接合される導電性接合材(はんだ)の接合面の応力が近接するため、お互いの接合面での応力差が生じにくくなる。結果として当該電子部品用パッケージ(具体的にベース)の中心点(平面視中心点)で平面的に回転させるように応力緩和作用が働きにくくなり、前記導電性接合材のクラック等の発生を抑制することができない。
【0018】
従って、前記導電性接合材のクラック(例えば、はんだクラック)等の悪影響を抑制し、当該電子部品用パッケージの回路基板への搭載接合の信頼性を向上させ、かつ、EMS対策することが容易なより信頼性の高い電子部品用パッケージが得られる。
【0019】
また、上記構成に加えて、前記複数の端子電極は、ベースの底面の中心点に対して点対称に配置してもよい。このような構成であれば、上述の作用効果に加えて、各端子電極の方向性がなくなり、前記ベースの底面の中心点(平面視中心点)から偏りのないより効率的な応力緩和と回転防止が行え、前記導電性接合材のクラック(例えば、はんだクラック)等の発生を飛躍的に抑制することができる。
【0020】
また、上記構成に加えて、前記端子電極の一部に同材質のメタライズからなるバンプを形成してもよい。このような構成であれば、上述の作用効果に加えて、より効率的に応力を緩和できるとともに緩衝効果の高い構成となる。しかも、前記バンプで浮き上がった隙間部分に前記導電性接合材がたまり、その結果、前記バンプを形成した前記端子電極と回路基板との接合面積が増大し、当該電子部品用パッケージ(具体的に前記ベース)と回路基板との接合強度をより高めることができる。また、同材質のメタライズを積層することで極めて容易かつ安価に前記バンプを形成できる。
【0021】
また、本発明によれば、電子部品素子を保持する電子部品用パッケージのベースにおいて、当該ベースの底面は平面視矩形とされ、前記底面の四隅には、外部の回路基板と導電性接合材を用いて接合する複数の端子電極が形成され、前記底面に対してその一角位置と、当該一角位置の対角位置にあたる第1の対角位置には前記電子部品素子と電気的に接続される一対の機能端子電極が形成され、前記一角位置に対して前記底面の短辺方向に対向する他角位置と、前記底面に対して前記他角位置の対角位置にあたる第2の対角位置には、グランド端子電極と前記電子部品素子と電気的に接続されない無機能端子電極が形成されるか、一対のグランド端子電極が形成されてなり、前記ベースの底面の辺方向に沿った仮想ラインが設定され、前記機能端子電極と前記グランド端子電極または無機能端子電極とが、前記仮想ラインに沿って形成されるとともに前記グランド端子電極または無機能端子電極が前記仮想ラインに対して前記ベースの底面の端部側に位置するように配置され、前記機能端子電極が前記仮想ラインに対して前記ベースの底面の中心側に位置するように配置されてなることが好ましい。このような構成であれば、上述の作用効果に加えて、応力抑制に寄与する面積の大きな機能端子電極に対して、小さなグランド端子電極あるいは無機能端子電極をベースの底面の端部側に配置することで、応力抑制機能を低下させることなく複数の端子電極を配置でき、電子部品用パッケージ(ベース)が過度に回転するのをより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、当該電子部品用パッケージの回路基板への搭載接合の信頼性を向上させ、かつEMS対策することが容易な電子部品用パッケージ、電子部品用パッケージのベースを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施例では、電子部品として表面実装型の水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。図1は、実施例1にかかる表面実装型の水晶振動子の概略底面図である。図2は、図1に示すA1−A1線断面図であり、表面実装型の水晶振動子を回路基板に搭載した状態の概略一部断面図である。図3は、図1に示すA2−A2線断面図であり、表面実装型の水晶振動子を回路基板に搭載した状態の概略一部断面図である。
【0024】
実施例1にかかる表面実装型の水晶振動子は、図1乃至図3に示すように、電子部品素子である水晶振動板3と、上部が開口した凹部を有し水晶振動板3を保持する(収納する)ベース1と、ベース1の開口部に接合してベース1に保持した水晶振動板3を気密封止する蓋2(本発明でいう金属蓋)とからなる。
【0025】
ベース1は、全体として直方体で、アルミナ等のセラミックとタングステンやモリブデン等の導電材料を適宜積層した構成からなる。このベース1は、図2に示すように、断面視凹形の収納部10と、収納部10を囲むようにその周囲に設けられた堤部11を有する。具体的に、ベース1は、矩形(平面視矩形)の平板形状のセラミックのベース基体1aと、中央部分が大きく穿設されるとともに外形サイズ(平面視外形サイズ)がベース基体1aとほぼ等しいセラミックの枠体1bからなり、枠体1bの上面に導電材料11aが積層され、ベース基体1aと枠体1bと導電材料11aとが一体的に焼成されている。なお、堤部11の上面は平坦であり、堤部11上に図示しない封止部材や金属層が形成されている。本実施例1では、例えば、金属層は、タングステンやモリブデン等によるメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成である。
【0026】
また、ベース1の外周(平面視外周縁)の4つの角K1,K2,K3,K4には、上下にキャスタレーションC1,C2,C3,C4が形成されている。すなわち、ベース1の外周(平面視外周縁)の4つの角K1,K2,K3,K4であってベース1の側面には、ベース1の底面から天面(上面)にかけてキャスタレーションC1,C2,C3,C4が形成されている。また、キャスタレーションC1,C3の下方に(ベース1の底面から側面の下方一部にかけて)連結電極である側面端子電極121,131が形成され、側面端子電極121,131は後述の機能端子電極12,13と電気的につながっている(接続されている)。
【0027】
ベース1の底面は平面視矩形とされ、このベース1の底面には、外部の回路基板4(図2参照)に導電性接合材Dを用いて接合する4つの端子電極12,13,14,15が形成されている。端子電極12,13は、後述する水晶振動板3の入出力外部接続端子として機能する機能端子電極であり、キャスタレーションC1,C3を介して側面端子電極121,131(側面端子電極131は図示省略)によりベース1の内部の底面に形成された電極パッド122,132(電極パッド132は図示省略)へと延出して電気的に接続されている。端子電極14は、後述する蓋2と電気的に接続されたグランド外部接続端子として機能するグランド端子電極であり、ビアVと配線パターンにより導電材料11aと電気的に延出されている。端子電極15は、後述する水晶振動板(電子部品素子)や蓋などとは電気的に接続されない無接続端子としての無機能端子電極である。なお、これらの端子電極12,13,14,15、側面端子電極121,131、電極パッド122,132は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料をベース1と一体的に焼成してメタライズを形成し、その上部にニッケルメッキを形成し、その上部に金メッキを形成して構成されている。
【0028】
電極パッド122,132間には、水晶振動板3(本発明でいう電子部品素子)が搭載されている。水晶振動板3の表裏面には一対の励振電極と引出電極が形成されている。一対の励振電極と引出電極は、例えば水晶振動板3に接して(水晶振動板3上から)クロム,金の順に、クロム,金,クロムの順に、クロム,銀,クロムの順に、あるいはクロム,銀の順に積層して形成されている。これら各電極(一対の励振電極と引出電極)は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。そして、電極パッド122,132に対して水晶振動板3の引出電極が導電性接合材(図示せず)により導電接合され、ベース1に水晶振動板3が保持されている。例えば、水晶振動板3の励振電極と、ベース1の電極パッド122,123との導電接合には、導電性樹脂接着剤や金属バンプ・金属めっきバンプ・ろう材などの導電性接合材を用いることができる。
【0029】
ベース1を気密封止する蓋2には、金属母材に金属ろう材等の封止材が形成された金属部材が用いられる。蓋2は、例えば、上面からニッケルメッキ層、コバール母材、銅中間層、銀ろう層の順に積層された多層構成であり、銀ろう層がベース1の金属層と接合される。蓋2の平面視外形はベース1の当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。なお、封止部材として銀ろうを用いることに限らず他の封止用ろう材を用いてもよく、また金や金錫などのメッキ層で封止部材を構成してもよい。
【0030】
このようなベース1の収納部10に水晶振動板3を格納し、蓋2にて被覆してシーム溶接やビーム照射による溶接、あるいは加熱炉によるろう接などの手法により気密封止を行うことで表面実装型の水晶振動子の完成となる。また、水晶振動子の完成品は、図1に示すように、ガラスエポキシ材からなる回路基板4の配線パッド41,42の上部に、例えばはんだ等の導電性接合材Dを介して接合される。このとき、全ての端子電極12,13,14,15に対して導電性接合材Dを介して接合することが望ましいが、端子電極のうち後述する無機能端子15については必ずしも導電性接合材Dにより接合する必要はない。
【0031】
本発明では、ベース1の底面に形成された端子電極12,13,14,15に特徴があるので、以下詳細を説明する。本実施例1では、ベース1の底面に対してその一角位置である角K1の位置に、水晶振動板3の入出力外部接続端子として機能する機能端子電極12が形成され、ベース1の底面に対してその角K1の対角位置にあたる第1の対角位置である角K3の位置に、水晶振動板3の入出力外部接続端子として機能する機能端子電極13が形成されている。本形態の機能端子電極12,13は、図1に示すように、矩形状に形成され、側面端子電極121,131を介して角K1および角K3から少し離間した状態で形成されている。また、角K1に対してベース1の底面の短辺方向に対向する他角である角K2の位置に、金属蓋2と電気的に接続されたグランド外部接続端子として機能するグランド端子電極14が形成され、ベース1の底面に対して他角K2の対角位置にあたる第2の対角位置である角K4の位置に、水晶振動板や金属蓋などとは電気的に接続されない無接続端子としての無機能端子電極15が形成されている。本形態のグランド端子電極14と無機能端子電極15とは、図1に示すように、キャスタレーションの形状に合わせて円弧状に形成され、角K2および角K4に密着した状態で形成されている。また前記機能端子電極12,13はグランド端子電極14と無機能端子電極15より面積が大きく形成されており、機能端子電極12と機能端子電極13とはベース1の底面の長辺方向でお互いに対向する領域を有している。加えて、各端子電極12,13,14,15は、ベース1の底面の中心点O(平面視中心点)を中心にしてベース1の底面において点対称に配されている。また、端子電極12,13は同一形状からなり、端子電極14,15は同一形状からなる。さらに、第1の端子電極群と第2の端子電極群とは、ベース1の底面の中心点O(平面視中心点)を中心にしてベース1の底面において対称形状(点対称の形状)とされる。
【0032】
これらの構成により、本実施例1では、一角位置にあたる角K1と、当該角K1と対角位置にあたる角K3には、前記水晶振動板3と電気的に接続され、前記グランド端子電極14と無機能端子電極15に対して面積の大きい一対の機能端子電極12,13が形成されているので、はんだなどの前記導電性接合材Dによって回路基板4と電気的機械的に接合する際に接続性を低下させることがない。また、導電性接合材Dによって回路基板4と電気的機械的に接合する際に水晶振動子(具体的にベース1)と回路基板4との熱膨張差が生じても、一角位置に対してベース1の底面の短辺方向に対向する他角位置(角K2の位置)と、ベース1の底面に対して前記他角位置の対角位置にあたる第2の対角位置(角K4の位置)とは、前記機能端子電極12,13に対して面積の小さいグランド端子電極14と無機能端子電極15が形成されるので、水晶振動子(ベース1)の接合時に発生する応力を、機能端子電極12,13の形成領域からグランド端子電極14と無機能端子電極15の形成領域に向かって水晶振動子(ベース1)が平面的に回転するように逃がすことができ、かつ水晶振動子(ベース1)が過度に回転するのも抑制することができる。結果として、水晶振動子と回路基板4との間に介在する導電性接合材Dに応力が集中しないので、導電性接合材Dから疲労破壊が生じにくくすることができる。リフローはんだ付けによる手法を採用しても水晶振動子と回路基板4との間で接合時に平面的に不要な回転して搭載実装されることもない。
【0033】
特に、回路基板がガラスエポキシ基板からなるものに対して、ベース1にセラミック材料を用いた場合、端子電極12〜15がメタライズにより形成された水晶振動子のパッケージを導電性接合材Dで接合するものでは、互いの熱膨張差の影響が高くなり、導電性接合材Dのクラック(例えば、はんだクラック)の悪影響が生じやすかった。これに対して、本実施例1によれば、これらの部材(構成)の組み合わせたものに対しても、当該水晶振動子のパッケージ(具体的にベース1)の応力を緩和し、当該水晶振動子のパッケージと回路基板4との間に介在する導電性接合材Dにクラックを発生させない。また、特別の加工工程を経ることなく、従来からのメタライズの技術により、熱膨張の応力緩和できる端子電極12〜15の構造が得られるので、極めて容易かつ安価に形成することができる。
【0034】
加えて、本実施例1によれば、上記したように、端子電極14を蓋2と電気的に接続されたグランド端子電極として設定することができるので、外部の回路基板4などの回路(外部回路)で発生した電磁ノイズを蓋2でとらえ、電磁ノイズをグランド端子(グランド端子電極)により取り除くことができる。結果として、水晶振動子内部の水晶振動板3に対して電磁ノイズの悪影響を排除することができる。なお、端子電極15のみをグランド端子電極として設定したり、端子電極14,15の両方をグランド端子電極として設定してもよい。
【0035】
また、水晶振動板3と電気的に接続された機能端子電極12,13が、グランド端子電極14と水晶振動板3や蓋2と電気的に接続されない無機能端子電極15に対して面積が大きく形成されているので、水晶振動子のパッケージ(具体的にベース1)と回路基板4との導電性接合材Dによる水晶振動子の電気的接続性が劣化することがなくなる。加えて、水晶振動板3と電気的に接続される端子電極12,13に対して検査用の測定プローブ等が接触不良を起こす危険性がなくなるので、より確実かつ信頼性の高い検査が実現でき、水晶振動子の電気的性能の向上や歩留まり向上に寄与する構成が実現できる。
【0036】
従って、本実施例1によれは、導電性接合材Dのクラック(例えば、はんだクラック)等の悪影響を抑制し、当該水晶振動子のパッケージの回路基板4への搭載接合の信頼性を向上させることができ、さらにEMS対策することが容易なより信頼性の高い水晶振動子のパッケージが得られる。
【0037】
また、上記構成に加えて、各端子電極12,13,14,15はベース1の底面の平面視中心点Oを中心にして点対称に形成されてもよい。このような構成であれば、上述の作用効果に加えて、各端子電極12,13,14,15の方向性がなくなり、ベースの底面の中心点(平面視中心点)Oから偏りのない、より効率的な応力緩和と回転防止が行え、導電性接合材Dのクラック(例えば、はんだクラック)等の発生を飛躍的に抑制することができる。
【0038】
次に、本発明による実施例1の他の例(実施例2)にかかる表面実装型の水晶振動子を、図4乃至図6を用いて説明する。図4は実施例2にかかる表面実装型の水晶振動子の概略底面図であり、図5は、図4に示すB1−B1線断面図であり、表面実装型の水晶振動子を回路基板に搭載した状態の概略一部断面図である。図6は、図4に示すB2−B2線断面図であり、表面実装型の水晶振動子を回路基板に搭載した状態の概略一部断面図である。なお、実施例1と同様の部分は同番号を付すとともに、説明の一部を割愛する。
【0039】
実施例2にかかる水晶振動子では、図4に示すように、ベース1の底面に対してその一角位置である角K1の位置に、水晶振動板3の入出力外部接続端子として機能する機能端子電極12が形成され、ベース1の底面に対してその角K1の対角位置にあたる第1の対角位置である角K3の位置に、水晶振動板3の入出力外部接続端子として機能する機能端子電極13が形成されている。本形態の機能端子電極12,13は、図4に示すように、矩形状に形成され、側面端子電極121,131を介して角K1および角K3から少し離間した状態で形成されている。また、角K1に対してベース1の底面の短辺方向に対向する他角である角K2の位置に、金属蓋2と電気的に接続されたグランド外部接続端子として機能するグランド端子電極14が形成され、ベース1の底面に対して他角K2の対角位置にあたる第2の対角位置である角K4の位置に、金属蓋2と電気的に接続されたグランド外部接続端子として機能するグランド端子電極15が形成されている。本形態のグランド端子電極14,15とは、図4に示すように、キャスタレーションの形状に合わせて円弧状に形成され、角K2および角K4に密着した状態で形成されている。また前記機能端子電極12,13はグランド端子電極14,15より面積が大きく形成されており、機能端子電極12と機能端子電極13とはベース1の底面の長辺方向でお互いに対向する領域を有している。加えて、各端子電極12,13,14,15は、ベース1の底面の中心点O(平面視中心点)を中心にしてベース1の底面において点対称に配されている。また、端子電極12,13は同一形状からなり、端子電極14,15は同一形状からなる。さらに、第1の端子電極群と第2の端子電極群とは、ベース1の底面の中心点O(平面視中心点)を中心にしてベース1の底面において対称形状(点対称の形状)とされる。
【0040】
また、各端子電極12,13,14,15の上部には、各端子電極12,13,14,15より若干小さくほぼ同形状(平面視同形状)のバンプ12B,13B,14B,15Bがそれぞれ形成されている。これらバンプ12B,13B,14B,15Bは、端子電極12,13,14,15のメタライズ上部に同材質のメタライズ(タングステン、モリブデン等)を所望の形状で積層して形成されている。これら端子電極12,13,14,15とバンプ12B,13B,14B,15Bは、これらのメタライズ材料がベース1と一体的に焼成され、当該メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成されている。なお、端子電極14,15のうち一方のみをグランド端子電極として設定してもよい。
【0041】
本実施例2では、これらの構成により、ベース1と回路基板4との熱膨張差による応力が生じても、バンプ12B,13B,14B,15Bと端子電極12,13,14,15の段差によって、より効率的に応力を緩和させることができる。しかもこの構成によれば、バンプ12B,13B,14B,15Bによりベース1と回路基板4との間で浮き上がった隙間部分に導電性接合材Dがたまるので、このたまった導電性接合材Dによりベース1と回路基板4との接合強度をより高めることができる。また、端子電極12,13,14,15に同材質のメタライズを積層することで極めて容易かつ安価にバンプ12B,13B,14B,15Bを形成することができる。
【0042】
次に、本発明による実施例1の他の例(実施例3)にかかる表面実装型の水晶振動子を、図7を用いて説明する。図7は実施例3にかかる表面実装型の水晶振動子の概略底面図である。なお、実施例1と実施例2と同様の部分は同番号を付すとともに、説明の一部を割愛する。
【0043】
実施例3にかかる水晶振動子では、図7に示すように、ベース1の底面に対してその一角位置である角K1の位置に、水晶振動板3の入出力外部接続端子として機能する機能端子電極12が形成され、ベース1の底面に対してその角K1の対角位置にあたる第1の対角位置である角K3の位置に、水晶振動板3の入出力外部接続端子として機能する機能端子電極13が形成されている。本形態の機能端子電極12,13は、図4に示すように、矩形状に形成され、側面端子電極121,131を介して角K1および角K3から少し離間した状態で形成されている。また、角K1に対してベース1の底面の短辺方向に対向する他角である角K2の位置に、金属蓋2と電気的に接続されたグランド外部接続端子として機能するグランド端子電極14が形成され、ベース1の底面に対して他角K2の対角位置にあたる第2の対角位置である角K4の位置に、金属蓋2と電気的に接続されたグランド外部接続端子として機能するグランド端子電極15が形成されている。本形態のグランド端子電極14,15とは、図4に示すように、キャスタレーションの形状に合わせて円弧状に形成され、角K2および角K4に密着した状態で形成されている。また前記機能端子電極12,13はグランド端子電極14,15より面積が大きく形成されており、機能端子電極12と機能端子電極13とはベース1の底面の長辺方向でお互いに対向する領域を有している。加えて、各端子電極12,13,14,15は、ベース1の底面の中心点O(平面視中心点)を中心にしてベース1の底面において点対称に配されている。また、端子電極12,13は同一形状からなり、端子電極14,15は同一形状からなる。さらに、第1の端子電極群と第2の端子電極群とは、ベース1の底面の中心点O(平面視中心点)を中心にしてベース1の底面において対称形状(点対称の形状)とされる。
【0044】
また、各端子電極12,13,14,15の上部には、各端子電極12,13,14,15より若干小さくほぼ同形状(平面視同形状)のバンプ12B,13B,14B,15Bがそれぞれ形成されている。これらバンプ12B,13B,14B,15Bは、端子電極12,13,14,15のメタライズ上部に同材質のメタライズ(タングステン、モリブデン等)を所望の形状で積層して形成されている。これら端子電極12,13,14,15とバンプ12B,13B,14B,15Bは、これらのメタライズ材料がベース1と一体的に焼成され、当該メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成されている。なお、端子電極14,15のうち一方のみをグランド端子電極として設定してもよい。
【0045】
また、ベース1の底面の短辺方向に沿った仮想ラインL1、L2が設定されている。機能端子電極12とグランド端子電極14とが各仮想ラインL1に沿って形成され、機能端子電極13とグランド端子電極15とが各仮想ラインL2に沿って形成されている。仮想ラインL1に対して、機能端子電極12が前記仮想ラインL1よりベース1の底面の中心側に位置し、グランド端子電極14が仮想ラインL1よりベース1の底面の端部側に位置するように配置される。仮想ラインL2に対して、機能端子電極13が前記仮想ラインL2よりベース1の底面の中心側に位置し、グランド端子電極15が仮想ラインL2に対してベース1の底面の端部側に位置するように配置されている。
【0046】
上記図7に示す例の構成によれば、応力抑制に寄与する面積の大きな機能端子電極12,13に対して、小さなグランド端子電極14,15をベース1の底面の端部側に配置することで、応力抑制機能を低下させることなく機能端子電極12,13以外の端子電極を配置でき、水晶振動子のパッケージ(具体的にベース1)が過度に回転するのをより効果的に抑制することができる。
【0047】
上記実施形態では、表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶発振器など電子機器等に用いられる他の表面実装型の電子部品用パッケージにも適用できる。
【0048】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施できるので、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求範囲によって示すものであって、明細書本文に拘束されるものではない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施の形態を示す表面実装型水晶振動子の底面図。
【図2】図1のA1−A1線に沿った回路基板に搭載した状態の一部断面図。
【図3】図1のA2−A2線に沿った回路基板に搭載した状態の一部断面図。
【図4】第2の実施形態を示す表面実装型水晶振動子の底面図。
【図5】図4のB1−B1線に沿った回路基板に搭載した状態の一部断面図。
【図6】図4のB2−B2線に沿った回路基板に搭載した状態の一部断面図。
【図7】第3の実施の形態を示す表面実装型水晶振動子の底面図。
【符号の説明】
【0050】
1 ベース
2 蓋
3 水晶振動板(電子部品素子)
4 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品素子を保持する電子部品用パッケージのベースにおいて、
当該ベースの底面は平面視矩形とされ、前記底面の四隅には、外部の回路基板と導電性接合材を用いて接合する複数の端子電極が形成され、
前記底面の一角位置と、当該一角位置の対角位置にあたる第1の対角位置には前記電子部品素子と電気的に接続される一対の機能端子電極が形成され、
前記一角位置に対して前記底面の短辺方向に対向する他角位置と、前記他角位置の対角位置にあたる第2の対角位置には、グランド端子電極と前記電子部品素子と電気的に接続されない無機能端子電極が形成されるか、または一対のグランド端子電極が形成されてなり、
前記機能端子電極がグランド端子電極あるいは無機能端子電極より面積が大きく形成されることを特徴とする電子部品用パッケージのベース。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品用パッケージのベースにおいて、
前記複数の端子電極は、ベース底面の中心点に対して点対称に形成してなることを特徴とする電子部品用パッケージのベース。
【請求項3】
請求項1または請求項2のうちいずれか1つに記載の電子部品用パッケージのベースにおいて、
前記端子電極の一部に同材質のメタライズからなるバンプを形成したことを特徴とする電子部品用パッケージのベース。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の電子部品用パッケージのベースと、当該電子部品素子を気密封止する金属蓋とを有し、
前記グランド端子電極は、前記金属蓋と電気的に接続されることを特徴とする電子部品用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−73907(P2010−73907A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240178(P2008−240178)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】