説明

電子部品用基材及びその製造方法

【課題】接続端子の端子間距離を狭めても接続端子に充分なストローク量、端子荷重及び電気特性を実現することができる電子部品用基材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】接続端子40と他の電子部品の導電部との電気的接続を確保するために、接続端子40に付勢力を付与可能な突状弾性部10を基材本体2の表面2aに有する電子部品用基材1の製造方法であって、基材本体2の表面2aの突状弾性部10が形成される領域の少なくとも一部を含む溝20a、20b、20cをその基材本体2の表面2aに形成する溝形成工程と、基材本体2の表面2a側に突状弾性部形成用の金型30を設置する金型設置工程と、溝20a、20b、20cから樹脂を注入することによって、溝20a、20b、20c及び金型30を樹脂で充填して突状弾性部10を成型する樹脂注入工程とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を電気基板等に実装する際に使用されるソケットなどに関し、接続端子と他の電子部品の導電部との電気的接続を確保するために、前記接続端子に付勢力を付与可能な電子部品用基材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数の電極端子を有するCPUやMPU等の電子部品をプリント基板上に取り付け、電子部品の電極端子とプリント基板の回路とを電気的に接続するために、電子部品用ソケットが使用されている。このような電子部品用ソケットとしては、ソケット本体の接続端子自体をバネ状に加工することによって、接続端子に付勢力を付与したものがあり、このような電子部品用ソケットは、電子部品をソケット本体に対して押圧することにより、電子部品の電極端子とソケット本体の接続端子との電気的接続を確保することができる(特許文献1乃至2参照)。
【0003】
ところで、近年、CPUなどの電子部品の電極端子の端子間距離を狭くする傾向にあり、これに対応するために、電子部品用ソケットの接続端子の間隔も狭める必要がある。しかしながら、バネ状の接続端子の間隔を狭めるためには接続端子自体を微細化する必要があり、このように微細化された接続端子によっては、十分なストローク量及び端子荷重を実現することが困難であり、また接続端子の微細化に伴い、接続端子の導通抵抗が上昇して他の電子部品の消費電流を賄うことが困難となるという問題がある。
【0004】
また、エラストマ中に導電性の微粒子を分散させて導通を確保したコネクタ、ソケットがあるが(特許文献3参照)、このタイプは、インダクタンスが小さい、低背化が容易、狭ピッチ化が比較的容易といった長所はあるものの、他の方式と比較して導通抵抗が高い、板バネ方式等に特徴的な摺動運動による酸化膜や汚れの除去(ワイピング)が無く接触抵抗が高い、大きなストローク量の実現が困難といった問題がある。
【0005】
一方、ソケット本体の接続端子自体をバネ状に加工するのではなく、軟質樹脂材料などからなる基板上に導電性を有する接続部を形成し、この基板上の導電性接続部近傍にスリットを形成して厚み方向に可動な構造とし、裏面から弾性体等で支持する構造とすることにより、付勢力を付与し、他の電子部品の電極端子などとの電気的な接続を確保するものがあり(特許文献4乃至6参照)、このような樹脂製の基板にスリットを形成して接続部の裏面から弾性体等で支持することにより導電性接続部に付勢力を付与するものは、スリットを狭間隔で形成することにより導電性接続部の間隔を狭めることができ、また、導電性接続部の厚さを確保することで充分な許容電流値を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−207184号公報
【特許文献2】特開2004−158430号公報
【特許文献3】特開2001−237039号公報
【特許文献4】特開2001−57264号公報
【特許文献5】特開2002−76207号公報
【特許文献6】特開2002−329738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように樹脂製の基板にスリットを形成して導電性接続部に付勢力を付与するものは、十分なストローク量を確保することが困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、接続端子の端子間距離を狭めても、接続端子に十分なストローク量、端子荷重及び電気特性を確保することができる電子部品用基材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するため、本発明に係る電子部品用基材の製造方法は、接続端子と他の電子部品の導電部との電気的接続を確保するために、前記接続端子に付勢力を付与可能な突状弾性部を基材本体の表面に有する電子部品用基材の製造方法であって、前記基材本体の表面の前記突状弾性部が形成される領域の少なくとも一部を含む溝を形成する溝形成工程と、前記基材の表面側に突状弾性部成型用の金型を設置する金型設置工程と、前記溝から樹脂を注入することによって、前記溝及び前記金型を樹脂で充填して前記突状弾性部を成型する樹脂注入工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
以上のように、本発明に係る電子部品用基材の製造方法によると、基材の表面に形成された溝から樹脂を注入させて突状弾性部を形成させているため、突状弾性部に樹脂注入痕が残らず、これにより、突状弾性部の高さや形状のバラつきによる機械寸法及び機械特性のバラつきを可及的に無くすことができる。また、突状弾性部の切削及び研磨等の後処理が不要となるため、加工工数が少なく、かつ後処理による仕上がりの変化がなく安定した形状の突状弾性部を形成することができる。
【0011】
本発明に係る電子部品用基材の製造方法において、前記樹脂注入工程は、前記溝の上方から樹脂を注入しても良く、また、前記溝を前記基材の一の側端から他の側端に亘って形成し、その側端から注入しても良い。本発明に係る電子部品用基材の製造方法は、前記溝形成工程後に、前記基材本体の前記溝を含む表面にプライマ剤を塗布するプライマ処理工程を備えることが好ましい。このようにプライマ処理工程を設けることによって、前記突状弾性部と前記基材との密着性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る電子部品用基材は、接続端子と他の電子部品の導電部との電気的接続を確保するために、前記接続端子に付勢力を付与可能な突状弾性部を基材本体の表面に有する電子部品用基材であって、前記表面には、その表面の突状弾性部が形成された領域の少なくとも一部及びその他の領域に亘って溝が形成され、該溝には前記突状弾性部と同一の樹脂が充填されていることを特徴とする。
【0013】
以上のように、本発明に係る電子部品用基材によれば、弾力性を有する突状弾性部を接続端子とは別個に備えているため、接続端子自体の弾力性は不要となり、接続端子の間隔を狭めるために接続端子を微細化しても、十分な端子荷重及び電気特性を実現することができる。また、突状弾性部が接続端子に付勢力を付与するため、十分なストローク量を確保することができる。
【0014】
また、前記溝は、前記基材本体の一の側端から他の側端に亘って形成されおり、前記突状弾性部は、一の溝上に複数形成されていることを特徴としても良い。
【0015】
さらに、前記基材本体は、前記突状弾性部よりも剛性を有することが好ましく、これにより、電子部品用基材の撓みにより生じる突状弾性部の機械寸法及び機械特性の精度の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、接続端子の端子間距離を狭めても、接続端子に十分なストローク量、端子荷重及び電気特性を確保することができる電子部品用基材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品用基材の正面斜視図
【図2】本実施形態に係る電子部品用基材の製造工程を示す断面図
【図3】本実施形態に係る電子部品用基材に溝を形成した状態を示す斜視図
【図4】本実施形態に係る電子部品用基材に接続端子を設けた状態を示す斜視図
【図5】図4のA−A´線に沿った断面図
【図6】本発明に係る電子部品用基材の他の実施形態を示す斜視図
【図7】図6のB−B´線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る電子部品用基材の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態に係る電子部品用基材1は、図1に示すように、方形の板状に形成された基材本体2と、基材本体2の表面2aに形成される複数の突状弾性部10とを備えている。
【0019】
基材本体2は、後述する突状弾性部のインサート成型時の温度及び圧力に対する耐性、及び突状弾性部10を構成する樹脂との密着性を有する樹脂によって形成されている。このような樹脂としては、例えばガラス繊維強化エポキシ材、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など撓みの少ない剛性を有するエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックなどがある。
【0020】
基材本体2の表面2aには、その一の側端2cから他の側端2dまで延びる3本の溝20a、20b、20cが等間隔を置いて並列させて形成されている。これら溝20a、20b、20cは、後述するように突状弾性部10を成型する樹脂を流動させるのに十分な深さを有する。
【0021】
突状弾性部10は、円錐台形状で形成されており、その軸心が溝20a、20b、20cの長手方向に延びる中心線上に位置するように、溝20a、20b、20c上にそれぞれ3つずつ等間隔をおいて設けられている。
【0022】
突状弾性部10は、本実施形態に係る電子部品用基材1に設けられる接続端子を他の電子部品の導電部との電気的に接続できるように付勢力を付与可能な弾性を有し、上述した基材本体2を形成する樹脂と密着性を有する樹脂によって形成されている。このような樹脂としては、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどがある。この際、基材本体2と付勢力を付与可能な弾性を有する樹脂との密着性を向上させるために、基材本体2の表面にプライマ処理(プライマ剤の塗布)を行なっても良い。
【0023】
溝20a、20b、20cには、突状弾性部10を構成する樹脂が充填されており、この帯状の充填部14は、突状弾性部10と一体的に成型されている。
【0024】
次に、この電子部品用基材1の製造方法について、図2及び図3に基づいて説明する。まず、図2(a)及び図3に示すように、基材本体2の表面2aの一の側端2cから他の側端2dまで延びる溝20a、20b、20cを形成する(溝形成工程)。次に、図2(b)に示すように、突状弾性部成型用の金型30を基材本体2に設置する(金型設置工程)。この金型30は、基材本体2の表面2a全域及び側面を覆うように構成されており、基材本体2に設置した際に、各溝20a、20b、20cに上方から連通する樹脂注入孔31、及び基材本体2の表面2aに対向する面30aの突状弾性部10が形成される領域と整合する位置に、突状弾性部10と同一形状のキャビティー32が形成されている。上述のように突状弾性部10は、溝20a、20b、20c上に形成されるので、金型30を基板本体2に設置すると、溝20a、20b、20cは、キャビティー32に連通する状態となる。
【0025】
次に、図2(c)に示すように、樹脂注入孔31から溝20a、20b、20cに溶融状態の樹脂を注入することによって、溝20a、20b、20c内を流動させ、それに連通するキャビティー32に樹脂を充填する(樹脂注入工程)。
【0026】
次に、溝20a、20b、20c及びキャビティー32に充填された樹脂を冷却などにより固化させた後、金型30を上昇させて基材本体2から離間する。これにより、基材本体2の表面2aには、溝20a、20b、20c及びキャビティー32に充填された樹脂からなる帯状の充填部14と突状弾性部10とが一体として成型され、本実施形態に係る電子部品用基材1を得ることができる(図1及び図2(d)参照)。
【0027】
なお、上記金型設置工程の前に、基材本体2の溝20a、20b、20cを含む表面2aにプライマ処理を施しておくと、突状弾性部10及び充填部14と基材本体2との密着性を向上させることができる。プライマ剤の塗布量は、一般に1〜10μm程度の厚さであるが、プライマ剤の粘度が高い場合や、基材本体2が微細な凹凸を持ちプライマ剤を均一に塗布することが困難である場合には、これよりも多くしても良い。
【0028】
本実施形態に係る電子部品用基材1の製造方法によれば、突状弾性部10と充填部14との成型に際し、溶融状態の樹脂を基材本体2の溝20a、20b、20c内を流動させ、溝20a、20b、20cからキャビティー32に樹脂を充填させるため、表面に樹脂注入痕が存在しない突状弾性部10を成型することができる。これにより、突状弾性部10の高さや形状のバラつきによる機械寸法及び機械特性のバラつきを無くすことができるだけでなく、突状弾性部10の切削及び研磨等の後処理が不要となるため、加工工数が少なく、かつ後処理による仕上がり寸法の変化がない安定した形状の突状弾性部10を形成することができる。
【0029】
また、突状弾性部10の後処理が不要であることから、金型30の設計に際しては突状弾性部10の切削量や研摩量等を考慮することなく、突状弾性部10の仕上がり寸法で設計することができる。従って、要求される精度の金型によって成型すれば、所望する仕上がり精度の突状弾性部10を成型することができる。
【0030】
さらに、突状弾性部10と充填部14とが一体として成型されるため、基材本体2とこれら突状弾性部10及び充填部14との密着面積が大きくなり、基材本体2に突状弾性部10及び充填部14を強固に接着させることができる。
【0031】
次に、本実施形態に係る電子部品用基材1の使用態様について、図4及び図5に基づいて説明する。本実施形態に係る電子部品用基材1には、図4に示すように、突状弾性部10と同数の接続端子40が各突状弾性部10と対となって設けられている。この接続端子40は、図5(a)に示すように、銅合金(燐青銅やべリリウム銅等)などの導電性材料からなる帯状の平板を約逆L字状に湾曲させて形成されている。接続端子40の逆L字の水平部40aは、突状弾性部10の上面10aの上方に上面10aの中心を通る径方向の一端から他端に亘って位置し、この水平部40aは、他の電子部品の導電部と電気的に接続する接続部として機能する。逆L字の垂直部は、基材本体2の突状弾性部10の側方に基材本体2の表面2aから裏面2bまで貫通して設けられた孔2eに挿入される支持部40cと、支持部40cの上端から突状弾性部10の斜面に沿って斜め上方に延びて水平部40aの基端に連結する連結部40bとから構成されている。
【0032】
このような接続端子40が設けられた電子部品用基材1は、他の電子部品の導電部を接続端子40の水平部40aに押圧すると、その水平部40aが突状弾性部10の上面10aを押圧するので、突状弾性部10の復元力により水平部40aに上方への付勢力が付与され、接続端子40と他の電子部品の導電部との電気的接続を確保することができる。また、本実施形態に係る電子部品用基材1は、突状弾性部10の弾性変形により接続端子40に付勢力を付与しているので、接続端子40に多少の高さ不整などがあっても、接続安定性を確保することができ、さらに、十分なストローク量、端子荷重及び電気特性を実現することができる。
【0033】
また、この発明によると、接続端子40はバネ性の高い合金(燐青銅やべリリウム銅)である必要はなく、より導電率の高い銅合金、例えば純銅(無酸素銅やタフピッチ銅、電解銅など)やそれに近い組成の、より柔軟な銅合金を用いても、充分な付勢力を付与することができる。
【0034】
接続端子40の支持部40cは、図5(b)に示すように、孔2eを貫通させて、基材本体2の裏面2b側から半田付けなどによって固定しても良い。また、上述した実施形態に係る電子部品用基材において、溝20a、20b、20cを基材本体2の一の側端2cから他の側端2dに亘って形成したが、例えば図6に示すように、基材本体2の一の側端2cから他の側端2dに亘らず、表面2a上にのみ形成しても良い。
【0035】
さらに、上述した実施形態に係る電子部品用基材においては、溝20a、20b、20c及び突状弾性部10を基材本体2の表面2a上に形成したが、これに限定されず、これらを図7に示すように基材本体2の裏面2bにも形成しても良い。この場合、裏面2b側にも水平部及び連結部が形成された接続端子を用いることができる。また、上述した実施形態に係る電子部品用基材の製造方法において、樹脂を溝20a、20b、20cの上方から注入したが、例えば溝20a、20b、20cの一方の端部から注入しても良い。
【0036】
本実施形態に係る電子部品用基材は、電子部品用ソケットの基材やフレキシブルプリント基板の回路等様々な電子部品の基材として用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1…電子部品用基材、2…基材本体、10…突状弾性部、14…充填部、20a、20b、20c…溝、30…金型、32…キャビティー、40…接続端子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続端子と他の電子部品の導電部との電気的接続を確保するために、前記接続端子に付勢力を付与可能な突状弾性部を基材本体の表面に有する電子部品用基材の製造方法であって、
前記基材本体の表面の前記突状弾性部が形成される領域の少なくとも一部を含む溝を形成する溝形成工程と、
前記基材の表面側に突状弾性部成型用の金型を設置する金型設置工程と、
前記溝から樹脂を注入することによって、前記溝及び前記金型を樹脂で充填して前記突状弾性部を成型する樹脂注入工程と
を備えたことを特徴とする電子部品用基材の製造方法。
【請求項2】
接続端子と他の電子部品の導電部との電気的接続を確保するために、前記接続端子に付勢力を付与可能な突状弾性部を基材本体の表面に有する電子部品用基材であって、
前記表面には、その表面の突状弾性部が形成された領域の少なくとも一部及びその他の領域に亘って溝が形成され、該溝には前記突状弾性部と同一の樹脂が充填されていることを特徴とする電子部品用基材。
【請求項3】
前記溝は、前記基材本体の一の側端から他の側端に亘って形成されおり、前記突状弾性部は、一の溝上に複数併設されていることを特徴とする請求項2記載の電子部品用基材。
【請求項4】
前記基材本体は、前記突状弾性部よりも剛性を有することを特徴とする請求項2又は3記載の電子部品用基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−11339(P2011−11339A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154549(P2009−154549)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】