説明

電子部品装置

【課題】小型のシールドカバーにも絶縁部材挿入孔を形成することができ、且つシールドカバーで覆われる領域を増加させる。
【解決手段】リード線が挿入される通し孔53が並列に複数形成された絶縁部材5と、絶縁部材5が挿入される絶縁部材挿入孔31が形成されるとともに電気ノイズを遮断するシールドカバー3とを備え、絶縁部材5は、通し孔軸方向に沿って見たときに、通し孔53が形成された隣接する円筒部同士が一部重なり合って一体化された形状であり、絶縁部材挿入孔31は、通し孔軸方向に沿って見たときに、絶縁部材5の外形形状と同形状の1つの孔である。これによると、隣接する通し孔53間のピッチを小さくして絶縁部材挿入孔31を小さくすることができるため、小型のシールドカバー3にも絶縁部材挿入孔31を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に接続された複数のリード線を備える電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の装置では、電気絶縁性を有する絶縁部材に複数の通し孔を形成し、その通し孔にリード線或いはターミナルを挿入している。そして、絶縁部材、リード線およびターミナルの周囲をシールドカバーで覆うことにより、外部からの電気ノイズを遮断するようにしている(例えば、特許文献1参照)。ただし、絶縁部材における通し孔軸方向の端面(換言すると、絶縁部材における通し孔が開口している側の端面)はシールドカバーで覆われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−302646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子部品を用いる電子部品装置においては、電気ノイズをより確実に遮断する必要がある。そこで、本発明者らは、内燃機関に供給する燃料の圧力を検出する圧力センサ(電子部品)を備えるインジェクタの開発に当たり、電気ノイズをより確実に遮断するために、絶縁部材における通し孔軸方向の端面もシールドカバーで覆うことを検討した。
【0005】
図3は、リード線を2本使用するインジェクタの検討案(以下、第1検討案という)であり、絶縁部材5における通し孔軸方向の一端側に円板状のシールドカバー3を配置している。絶縁部材5は通し孔53が形成された2つの円筒部59を有し、シールドカバー3に形成された絶縁部材挿入孔31に円筒部59が挿入されている。因みに、通し孔51内には、リード線、ターミナル、および防水部材が挿入される(図1参照)。
【0006】
図4は、リード線を6本使用するインジェクタの検討案(以下、第2検討案という)であり、絶縁部材5は通し孔53が形成された6つの円筒部59を有し、シールドカバー3に形成された絶縁部材挿入孔31に円筒部59が挿入されている。
【0007】
ここで、シールドカバー3のサイズに制約があるため、リード線本数が少ない場合はシールドカバー3に絶縁部材挿入孔31を必要な数だけ開けることが可能であるが、リード線本数が多くなると、図4に示すようにA部の肉厚確保が困難になって絶縁部材挿入孔31を必要な数だけ開けることができなくなってしまうという問題が発生した。
【0008】
そこで、図5に示すような改良案(以下、第3検討案という)を考案した。すなわち、第1検討案や第2検討案では、複数の円筒部59にそれぞれ通し孔53が形成されているのに対し、第3検討案では、絶縁部材5の1つの略矩形状の部位に6個の通し孔53が形成されている。また、シールドカバー3の絶縁部材挿入孔31も略矩形状の1つの孔になっている。
【0009】
そして、隣接する通し孔53間のピッチを小さくする(すなわち近接して配置する)ことにより、第2検討案における6個の絶縁部材挿入孔31を形成するスペースよりも、第3検討案における絶縁部材挿入孔31を形成するスペースの方が小さくなるため、小型のシールドカバー3にも絶縁部材挿入孔31を形成することが可能になり、第2検討案の問題を解決することができる。
【0010】
しかしながら、第3検討案のように、絶縁部材挿入孔31を略矩形状にした場合、シールドカバー3で覆われない領域が増加してしまうという新たな問題が発生した。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、小型のシールドカバーにも絶縁部材挿入孔を形成することができ、且つシールドカバーで覆われる領域を増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電子部品(4)に接続された複数のリード線(7)と、リード線(7)が挿入される通し孔(53)が並列に複数形成された電気絶縁性を有する絶縁部材(5)と、絶縁部材(5)が挿入される絶縁部材挿入孔(31)が形成されるとともに電気ノイズを遮断するシールドカバー(3)とを備え、絶縁部材(5)は、通し孔軸方向に沿って見たときに、通し孔(53)が形成された隣接する円筒部同士が一部重なり合って一体化された形状であり、絶縁部材挿入孔(31)は、通し孔軸方向に沿って見たときに、絶縁部材(5)の外形形状と同形状の1つの孔であることを特徴とする。
【0013】
これによると、隣接する通し孔(53)間のピッチを小さくして絶縁部材挿入孔(31)を小さくすることができるため、小型のシールドカバー(3)にも絶縁部材挿入孔(31)を形成することができる。しかも、絶縁部材挿入孔(31)を略矩形状にした場合よりも、シールドカバー(3)で覆われる領域を増加させることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の電子部品装置において、シールドカバー(3)は絶縁部材(5)にインサート成形されていることを特徴とする。
【0015】
ところで、絶縁部材(5)をシールドカバー(3)に圧入して両者を一体化する場合は、圧入時の荷重に耐えられるように絶縁部材(5)の肉厚を厚くする必要があり、その結果、通し孔軸方向に沿って見たときの絶縁部材(5)の面積が増加して絶縁部材(5)を通過する電気ノイズが多くなってしまう。これに対し、シールドカバー(3)を絶縁部材(5)にインサート成形して両者を一体化する場合は、圧入の場合よりも絶縁部材(5)の肉厚を薄くすることができるため、圧入の場合よりも絶縁部材挿入孔(31)の開口面積が小さくなり、絶縁部材(5)を通過する電気ノイズを少なくすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子部品装置において、電子部品(4)とリード線(7)とを接続するターミナル(6)を備え、ターミナル(6)は通し孔(53)内に配置されていることを特徴とする。
【0017】
これによると、絶縁部材(5)によってターミナル(6)とシールドカバー(3)との電気絶縁が確保される。
【0018】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電子部品装置において、ゴムにて円筒状に形成され、リード線(7)が挿入されるとともに通し孔(53)に挿入された防水部材(8)を備えることを特徴とする。これによると、通し孔(53)からの水分の浸入を防止することができる。
【0019】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るインジェクタの要部を示す模式的な断面図である。
【図2】(a)は図1の絶縁部材およびシールドカバーの正面図、(b)は(a)の平面図である。
【図3】(a)は本発明者らが検討したインジェクタの第1検討案を示す要部の正面断面図、(b)は(a)の平面図である。
【図4】本発明者らが検討したインジェクタの第2検討案を示す要部の平面図である。
【図5】本発明者らが検討したインジェクタの第3検討案を示す要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について説明する。図1は一実施形態に係るインジェクタの要部を示す模式的な断面図、図2(a)は図1の絶縁部材およびシールドカバーの正面図、図2(b)は図2(a)の平面図である。
【0022】
図1に示すように、電子部品装置としてのインジェクタは、コモンレール(図示せず)から供給される高圧燃料をディーゼル内燃機関の気筒内に噴射するものであり、インジェクタボデー1には、高圧燃料が流通する高圧通路11が形成されている。
【0023】
インジェクタボデー1の一端には、円筒状の第1シールドカバー2が螺合されており、第1シールドカバー2の開口端部に円板状の第2シールドカバー3が圧入固定されている。なお、インジェクタボデー1、第1シールドカバー2および第2シールドカバー3は、電気ノイズを遮断するために、電磁シールド性に富む金属にて形成されている。
【0024】
インジェクタボデー1、第1シールドカバー2および第2シールドカバー3にて囲まれた空間には、高圧通路11の燃料圧力を検出する圧力センサ4、電気絶縁性に富む樹脂よりなる絶縁部材5が配置されている。
【0025】
電子部品としての圧力センサ4は、高圧通路11から分岐した分岐通路12を介して導かれる燃料の圧力に応じて抵抗値が変化するセンサチップ、およびセンサチップの抵抗値変化に基づいて圧力に応じたセンサ信号を出力する信号処理回路用IC等を備え、信号処理回路用ICは、ターミナル6により複数のリード線7と電気的に接続されている。これらのリード線7は、信号処理回路用ICの電源用、接地用、センサ信号出力用等に利用される。
【0026】
図1、図2に示すように、絶縁部材5は、第2シールドカバー3の絶縁部材挿入孔31(詳細後述)に挿入される第1筒部51と、絶縁部材挿入孔31の外部に位置して第2シールドカバー3の一端面に当接する第2筒部52とを備え、さらに、ターミナル6、リード線7および防水部材8が挿入される通し孔53が並列に複数(本例では6個)形成されている。
【0027】
また、隣接する通し孔53間のピッチは図4の第2検討案のものよりも小さくなっており、これにより、第1筒部51は、通し孔軸方向に沿って見たときに、通し孔53が形成された隣接する円筒部同士が一部重なり合って一体化された形状になっている(図2(b)参照)。換言すると、第1筒部51の外形形状は、各通し孔53と同軸の円弧状の曲面を連続させた形状になっている。
【0028】
第2シールドカバー3の絶縁部材挿入孔31は、通し孔軸方向に沿って見たときに、第1筒部51の外形形状と同形状になっている。すなわち、絶縁部材挿入孔31は、通し孔軸方向に沿って見たときに、各通し孔53と同軸の隣接する円形孔同士が一部重なり合って1つの孔になっている。換言すると、絶縁部材挿入孔31の形状は、各通し孔53と同軸の円弧状の曲面を連続させた形状になっている。
【0029】
なお、第2シールドカバー3を絶縁部材5にインサート成形して両者を一体化してもよいし、第1筒部51を第2シールドカバー3に圧入して両者を一体化してもよい。
【0030】
防水部材8は、ゴムにて円筒状に形成され、内部にリード線7が挿入されるとともに外周面が通し孔53に接している。
【0031】
上記構成になるインジェクタは、圧力センサ4により検出した燃料圧力に応じたセンサ信号が、リード線7を介してエンジン制御用ECUに出力される。この際、インジェクタボデー1、第1シールドカバー2および第2シールドカバー3により、圧力センサ4が配置された空間への電気ノイズの侵入が阻止される。
【0032】
そして、本実施形態では、隣接する通し孔53間のピッチを小さくして絶縁部材挿入孔31を小さくしているため、第2シールドカバー3が小型であっても絶縁部材挿入孔31を形成することができる。しかも、図5の第3検討案のように絶縁部材挿入孔31を略矩形状にした場合よりも、第2シールドカバー3で覆われる領域を増加させることができる。
【0033】
また、第2シールドカバー3を絶縁部材5にインサート成形して両者を一体化する場合は、圧入の場合よりも第1筒部51の肉厚を薄くすることができるため、圧入の場合よりも絶縁部材挿入孔31の開口面積が小さくなり、絶縁部材5を通過する電気ノイズを少なくすることができる。
【0034】
さらに、ターミナル6は通し孔53内に配置されているため、絶縁部材5によってターミナル6と第2シールドカバー3との電気絶縁が確保される。さらにまた、防水部材8により、通し孔53からの水分の浸入を防止することができる。
【0035】
上記実施形態では、本発明をインジェクタに適用したが、本発明はインジェクタ以外の電子部品装置にも適用することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、電子部品として圧力センサ4を示したが、本発明は圧力センサ4以外の電子部品を備える電子部品装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
3 シールドカバー
4 圧力センサ(電子部品)
5 絶縁部材
7 リード線
31 絶縁部材挿入孔
53 通し孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(4)に接続された複数のリード線(7)と、
前記リード線(7)が挿入される通し孔(53)が並列に複数形成された電気絶縁性を有する絶縁部材(5)と、
前記絶縁部材(5)が挿入される絶縁部材挿入孔(31)が形成されるとともに電気ノイズを遮断するシールドカバー(3)とを備え、
前記絶縁部材(5)は、通し孔軸方向に沿って見たときに、前記通し孔(53)が形成された隣接する円筒部同士が一部重なり合って一体化された形状であり、
絶縁部材挿入孔(31)は、通し孔軸方向に沿って見たときに、前記絶縁部材(5)の外形形状と同形状の1つの孔であることを特徴とする電子部品装置。
【請求項2】
前記シールドカバー(3)は前記絶縁部材(5)にインサート成形されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品装置。
【請求項3】
前記絶縁部材(5)は前記シールドカバー(3)に圧入されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品装置。
【請求項4】
前記電子部品(4)と前記リード線(7)とを接続するターミナル(6)を備え、前記ターミナル(6)は前記通し孔(53)内に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子部品装置。
【請求項5】
ゴムにて円筒状に形成され、前記リード線(7)が挿入されるとともに前記通し孔(53)に挿入された防水部材(8)を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電子部品装置。
【請求項6】
前記電子部品(4)は、内燃機関に噴射される燃料の圧力を検出する圧力センサであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の電子部品装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−124312(P2012−124312A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273574(P2010−273574)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】