説明

電気光学装置の製造方法

【課題】 所定の素子構造を備えた電気光学装置における接触抵抗の上昇を防止して、データ信号の書き込み速度が速くて、表示特性に優れた電気光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 所定の素子構造を備えたオーバーレイヤー構造の電気光学装置の製造方法において、基板上に、パターニングされたタンタル層を形成する工程と、タンタル層の表面を酸化させることにより、酸化タンタル層を形成する工程と、酸化タンタル層の一部と重なるように、パターニングされたクロム層を形成する工程と、クロム層が形成された基板に対して、不活性ガス中で熱処理を実施する工程と、クロム層と重なる位置にコンタクトホールが配置されるように層間絶縁膜を形成する工程と、クロム層と、コンタクトホールを介して電気的に接続されるように、導電層からなる画素電極を形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造方法に関する。特に、所定の素子構造における接触抵抗の上昇を防止して、表示不良の発生を少なくすることができる電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気光学装置の一態様である液晶表示装置は、それぞれ電極を備えた一対の基板を対向配置するとともに、当該一対の基板の間に液晶材料を注入して構成されている。かかる液晶表示装置において、アクティブマトリクス型構造を有する場合には、いずれか一方の基板は、平行配置された複数本のデータ線と、当該データ線に対して、例えば、薄膜ダイオード(TFD素子)や薄膜トランジスタ(TFT素子)等のスイッチング素子を介して接続された複数の画素電極と、を備えている。そして、それぞれの基板上の電極が平面的に重なる領域である複数の画素がマトリクス状に配列されるとともに、所望の画素に電圧を印加することにより、当該画素における光を変調させ、表示領域全体として文字や図形等の画像を表示させている。
ここで、かかる素子基板において、スイッチング素子として、TFD素子を備える場合には、一般的に、表面に酸化絶縁膜が形成された、タンタル合金からなる素子第1電極と、クロムからなる素子第2電極と、ITO(インジウムスズ酸化物)等からなる画素電極と、を順次に形成することにより構成されている。
【0003】
一方、かかるアクティブマトリクス型構造の素子基板において、近年、配線設計の高精細化により、それぞれの画素面積が小さくなるとともに、それぞれのデータ線のピッチ間隔が狭くなりつつある。かかる場合に、データ線と画素電極との距離が近接することになり、所定のデータ線に電圧を印加した際に、当該データ線に近接する、本来選択していない画素領域に対しても電界を生じさせてしまうという問題があった。したがって、表示される画像がボケたり、糸引き現象が生じたりする、いわゆるクロストークの問題が生じていた。
【0004】
そこで、かかるクロストークの問題を改善するために、液晶表示装置における素子基板として、図10(a)〜(b)に示すように、データ線622と、画素電極623との間に絶縁膜616が介在しており、データ線622と、画素電極623の一部とが重なり、電気接続されるように配置された素子基板がある。かかる素子基板は、絶縁膜を備えることにより、データ線のピッチ間隔が狭い場合であっても、画素の開口率の低下を防ぐとともに、データ線と画素電極との電気絶縁性を確保して、表示される画像の表示特性の低下を防止することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−118216号公報 (請求項1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された素子基板における絶縁膜は、アクリル樹脂等からなるために、素子基板の製造段階において、TFD素子の特性を合わせこむための熱処理(250℃程度)に耐えられるものではない。そのために、かかる絶縁膜を備えた素子基板を製造する際には、スイッチング素子における素子第2電極を形成した後、絶縁膜の形成前に、かかる熱処理を実施する必要があった。したがって、素子第2電極がクロムから形成されている場合には、かかる熱処理によって、クロムの表面に酸化膜が形成されてしまい、クロムからなる素子第2電極と、ITOからなる画素電極との間の接触抵抗が上昇するという問題が見られた。
また、その接触抵抗の上昇に関連して、同時形成したドライバ接続配線における駆動用半導体素子の入力側グランド抵抗(ドライバ配線抵抗と称する場合がある)が大きくなって、ドライバからのデータ信号の書き込み速度が著しく低下するために、線欠陥等の表示不良が発生するという問題が見られた。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、上記問題点を鋭意検討した結果、特定構造の電気光学装置の製造方法において、スイッチング素子の特性を合わせこむための熱処理を不活性ガス中で実施することにより、さらに画素電極を電気的に接続した場合の、接触抵抗の上昇を防止できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、スイッチング素子と画素電極との間の接触抵抗と併せてドライバ接続配線の配線抵抗の上昇を防止して、データ信号の書き込み速度が速く、表示特性に優れた電気光学装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、基板上に、タンタル層、酸化タンタル層、及びクロム層からなるスイッチング素子と、導電層からなる画素電極と、を含む素子構造を備えた電気光学装置の製造方法であって、基板上に、パターニングされたタンタル層を形成する工程と、タンタル層の表面を酸化させることにより、酸化タンタル層を形成する工程と、酸化タンタル層の一部と重なるように、パターニングされたクロム層を形成する工程と、クロム層が形成された基板に対して、不活性ガス中で熱処理を実施する工程と、クロム層と重なる位置にコンタクトホールが配置されるように層間絶縁膜を形成する工程と、クロム層と、コンタクトホールを介して電気的に接続されるように、導電層からなる画素電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、所定の素子構造を形成するにあたり、クロム層の形成後に、不活性ガス中で熱処理を行うことにより、クロム層の表面に酸化膜が形成されて、接触抵抗が上昇することを有効に防止することができる。したがって、クロム層上に、さらに導電層からなる画素電極を積層した場合であっても、スイッチング素子と、画素電極との間で良好な電気接続が得られ、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に製造することができる。
【0008】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、素子構造を構成するタンタル層、酸化タンタル層、クロム層、及び導電層と同一構成のドライバ接続配線を、同時に形成することが好ましい。
このように実施することにより、素子構造と同様に、耐熱性や耐酸化性に優れ、配線抵抗の上昇を防止したドライバ接続配線とすることができる。したがって、ドライバからのデータ信号の書き込み速度が低下することを防止でき、結果として、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に提供することができる。
【0009】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、クロム層と、導電層と、の間の接触抵抗をそれぞれ1×104Ω/m2以下の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、ドライバからのデータ信号の書き込み速度が低下することを防止でき、結果として、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に提供することができる。
【0010】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、ドライバ接続配線に接続された駆動用半導体素子の入力側グランド間抵抗を100Ω/m2以下の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、ドライバからのデータ信号の書き込み速度が低下することを直接的に防止することができ、結果として、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に提供することができる。
【0011】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、不活性ガスが、窒素ガス、アルゴンガス又はフッ素含有炭化水素ガスであることが好ましい。
このように実施することにより、クロム層の表面における酸化膜の形成を確実に防止して、結果として、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に提供することができる。
【0012】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、熱処理の温度を200〜280℃の範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、熱処理の時間にもよるが、クロム層表面における酸化膜の形成を抑制しつつ、素子特性を効率的に合わせこむことができ、結果として、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に製造することができる。
また、このような温度範囲であれば、通常の赤外線ランプ等を用いて、容易に制御することができる。
【0013】
また、本発明の電気光学装置の製造方法を実施するにあたり、熱処理の時間を5〜25分の範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、熱処理の温度にもよるが、クロム層表面における酸化膜の形成を抑制しつつ、素子特性を効率的に合わせこむことができ、結果として、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本実施形態は、基板上に、タンタル層、酸化タンタル層、及びクロム層からなるスイッチング素子と、導電層からなる画素電極と、を含む素子構造を備えた電気光学装置の製造方法である。そして、基板上に、パターニングされたタンタル層を形成する工程と、タンタル層の表面を酸化させることにより、酸化タンタル層を形成する工程と、酸化タンタル層の一部と重なるように、パターニングされたクロム層を形成する工程と、クロム層が形成された基板に対して、不活性ガス中で熱処理を実施する工程と、クロム層と重なる位置にコンタクトホールが配置されるように層間絶縁膜を形成する工程と、クロム層と、コンタクトホールを介して電気的に接続されるように、導電層からなる画素電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
以下、本実施形態の電気光学装置の製造方法として、所定の素子構造を有する素子基板と、対向基板としての着色層を有するカラーフィルタ基板と、を備えた液晶表示装置の製造方法を例に採って、適宜図面を参照しつつ説明する。ただし、かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであって、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することができる。
【0015】
1.液晶表示装置
(1)基本構成
まず、本実施形態に係る液晶表示装置の製造方法によって製造される液晶表示装置について説明する。図1は液晶表示装置に使用される液晶パネル20の概略断面図である。
かかる液晶パネル20は、スイッチング素子として、二端子型非線形素子であるTFD素子69を用いたアクティブマトリクス型構造を有する素子基板60を備えた液晶パネル20であって、図示しないものの、バックライトやフロントライト等の照明装置やケース体などを必要に応じて適宜取付けることにより液晶表示装置となる。
なお、以下、スイッチング素子として二端子型非線型素子であるTFD素子(Thin Film Diode)69を含む素子基板60を例に採って説明するが、これに制限されるものではなく、三端子型非線型素子であるTFT素子(Thin Film Transistor)を含む素子基板であっても構わない。
【0016】
また、液晶パネル20は、透明なガラス基板を基体61とする素子基板60と、透明なガラス基板を基体31とするカラーフィルタ基板30と、が対向配置されるとともに接着剤等のシール材23を介して貼り合わせられている。また、素子基板60と、カラーフィルタ基板30とが形成する空間であって、シール材23の内側部分に対して、開口部(図示せず)を介して液晶材料21を注入した後、封止材(図示せず)にて封止されてなるセル構造を備えている。すなわち、素子基板60と、カラーフィルタ基板30との間に液晶材料21が充填されている。
【0017】
また、基体61の内面、すなわち、基体31に対向する表面上に、画素電極63がマトリクス状に形成され、基体31の内面、すなわち、基体61に対向する表面上には、走査電極33が形成されている。また、画素電極63は、TFD素子69を介してデータ線65に対して電気的に接続されるとともに、もう一方の走査電極33は、導電性粒子を含むシール材23を介して素子基板60上の引回し配線66に対して電気的に接続されている。このように構成された画素電極63と走査電極33との交差領域がマトリクス状に配列された多数の画素(以下、画素領域と称する場合がある。)を構成し、これら多数の画素の配列が、全体として表示領域を構成することになる。したがって、所望の画素に対して電圧を印加することにより、当該画素領域の液晶材料21に電界を発生させ、表示領域全体として文字、図形等の画像を表示させることができる。
【0018】
また、素子基板60は、カラーフィルタ基板30の外形よりも外側に張り出してなる基板張出部60Tを有し、この基板張出部60T上には、データ線65、引回し配線(図示せず)及び、独立して形成された複数の配線からなるドライバ接続配線67が形成されている。
そして、表示領域側に配置され、データ線65又は引回し配線から延設されたドライバ接続配線67の端部には、液晶駆動回路等を内蔵した駆動用半導体素子(駆動用IC)91が実装されている。さらに、表示領域側とは反対側に配置されたドライバ接続配線67のうちの一方の端部にも、駆動用半導体素子(駆動用IC)91が実装されているとともに、他方の端部には、フレキシブル基板93が実装されている。
【0019】
(2)素子基板
(2)−1 基本構成
また、図2(a)〜(b)に示すように、素子基板60は、基本的に、透明なガラス基板等からなる基体61と、データ線65と、スイッチング素子としてのTFD素子69と、層間絶縁膜68と、画素電極63と、から構成されている。また、画素電極63が形成された層間絶縁膜68上には、ポリイミド樹脂等からなる配向膜75が形成されている。さらに、基体61の外面には、位相差板(1/4波長板)77及び偏光板79が配置されている。
【0020】
ここで、素子基板60上のデータ線65は、複数の配線が並列したストライプ状に構成されている。また、ドライバ91等が実装領域側の辺に対して垂直方向に延びる辺側には、導電性粒子を含むシール材23を介してカラーフィルタ基板30上の走査電極33と電気的に接続される引回し配線66が設けられている。
また、画素電極63は、それぞれのデータ線65の間に、マトリクス状に配置されるとともに、データ線65と画素電極63とは、TFD素子69を介して電気的に接続されている。
【0021】
また、データ線65と、画素電極63との間には、それらの間の電気絶縁性を確保するための層間絶縁膜68を備えている。すなわち、本実施形態にかかる電気光学装置の製造方法によって製造される液晶表示装置は、データ線65と、画素電極63との間に、層間絶縁膜68が形成されるとともに、データ線65と画素電極63とが層間絶縁膜68に設けられたコンタクトホール68aを介して接続された、いわゆるオーバーレイヤー構造の液晶表示装置である。
したがって、配線設計が高精細となって、データ線65のピッチ間隔が狭くなっている場合であっても、データ線65と画素電極63との電気絶縁性を確保して、クロストークの問題が生じることを確実に防止することができる。また、データ線65と画素電極63とを平面的に重ねて配置することができるために、データ線65のピッチ間隔が狭くなっている場合であっても、画素面積を広く確保することができる。
【0022】
(2)−2 素子構造
また、素子基板60は、図3(a)〜(b)に示すように、TFD素子69と画素電極63とが電気的に接続された素子構造19を備えている。
かかるTFD素子69は、一般的に、タンタル(Ta)合金からなる素子第1電極71、酸化タンタル(Ta25)からなる絶縁膜72、及びクロム(Cr)からなる素子第2電極73、74が順次積層されたサンドイッチ構造を有している。そして、正負方向のダイオードスイッチング特性を示し、しきい値以上の電圧が、素子第1電極71及び素子第2電極73、74の両端子間に印加されると導通状態となるアクティブ素子である。
【0023】
また、二個のTFD素子69a、69bは、データ線65と、画素電極63との間に介在するように形成され、反対のダイオード特性を有する第1のTFD素子69a及び第2のTFD素子69bから構成してあることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、印加する電圧波形として、正負対称なパルス波形を使用することができ、液晶表示装置等における液晶材料の劣化を防止することができるためである。すなわち、液晶材料の劣化を防止するために、ダイオードスイッチング特性が、正負方向において対称的であることが望まれ、二個のTFD素子69a、69bを逆向きに直列接続することにより、正負対称なパルス波形を使用することができるためである。
【0024】
また、二個のTFD素子69の一方には、ITO(インジウムスズ酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)等の導電層からなる画素電極63が電気的に接続されている。
すなわち、図2(b)に示すように、画素電極63に反射機能を持たせない場合には、光の透過率を低下させることがないように、透明導電材料からなる画素電極63として構成することができる。かかる透明導電材料としては、ITO、IZO等を使用することができる。一方、図4に示すように、画素電極63を、光反射膜80を兼ねた反射機能を有する反射画素電極として構成する場合には、アルミニウムや銀からなる画素電極63として構成することができる。
【0025】
また、かかる素子構造19において、クロム層からなる素子第2電極74と、導電層からなる画素電極63との間の接触抵抗を1×104Ω/m2以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる接触抵抗が1×104Ω/m2を超えると、ドライバからのデータの書き込み速度が著しく低下するために表示不良が発生しやすくなるためである。
ただし、素子第2電極74と、画素電極63との間の接触抵抗を過度に低くしようとすると、クロム層と導電層の膜厚を過度に厚くしなければならない場合がある。
したがって、素子構造19において、クロム層からなる素子第2電極74と、導電層からなる画素電極63との間の接触抵抗を1×101〜5×104Ω/m2の範囲内の値とすることがより好ましく、5×101〜1×104Ω/m2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0026】
(2)−3 ドライバ接続配線
また、素子基板60は、図2(b)に示すように、ドライバ接続配線67を備えている。すなわち、ドライバ接続配線67は、素子構造19を構成するタンタル層、酸化タンタル層、クロム層、及び導電層と同一のタンタル層11、酸化タンタル層13、クロム層15、及び導電層17が順次積層されて構成されている。
より具体的には、上述のような構成のTFD素子69及び画素電極63を含む素子構造19を備えた素子基板60を製造する際に、製造工程の簡略化の観点から、TFD素子69及び画素電極63と、一部の電気配線65等と、を同時工程で形成する場合がある。かかる場合において、タンタル層11やクロム層15、あるいは導電層17等が単層であっては膜厚が薄くなり、抵抗値が高くなるために、複数の層を重ねて形成される。特に、対向するカラーフィルタ基板30よりも張り出している基板張出部60Tに形成するドライバ接続配線67においては、セル領域内に比べて、配線の厚さの影響が少ないために、すべての層を重ねて形成する。
したがって、上述した素子構造19と、ドライバ接続配線67とを同時形成した場合、図2(b)に示すように、ドライバ接続配線67は、タンタル層11、酸化タンタル層13、クロム層15、及び導電層17とが順次積層された構成となる。
【0027】
また、ドライバ接続配線67においても、クロム層15と、導電層17との間の接触抵抗を1×104Ω/m2以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる接触抵抗が1×104Ω/m2を超えると、半導体素子における外部からのデータの書き込み速度が著しく低下するために、出力波形が変形し、結果として、線欠陥等の表示不良が発生しやすくなる場合があるためである。
ただし、クロム層15と、導電層17との間の接触抵抗が過度に低くなると、クロム層15と、導電層17の膜厚を過度に厚くしなければならない場合がある。
したがって、ドライバ接続配線67において、クロム層15と、導電層17との間の接触抵抗を1×101〜5×104Ω/m2の範囲内の値とすることがより好ましく、5×101〜1×104Ω/m2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0028】
また、ドライバ接続配線67において、クロム層15の厚さを100〜500nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような厚さになるようにクロム層15を形成することにより、ドライバからのデータ信号の書き込み速度が低下することを防止でき、結果として、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に提供することができるためである。また、このようなクロム層15の厚さであれば、均一な厚さに形成することが容易であるばかりか、所定の機械的特性や耐久性が得られるためである。
したがって、ドライバ接続配線67において、クロム層15の厚さを120〜400nmの範囲内の値とすることがより好ましく、150〜300nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0029】
また、ドライバ接続配線67において、導電層17の厚さを30〜300nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような厚さになるように導電層17を形成することにより、ドライバ接続配線におけるクロム層と、導電層との間の接触抵抗の値の調整が容易になるためである。したがって、ドライバからのデータ信号の書き込み速度が低下することを防止でき、結果として、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に提供することができる。また、このような導電層17の厚さであれば、均一な厚さに形成することが容易であるばかりか、所定の機械的特性や耐久性が得られるためである。
したがって、ドライバ接続配線67において、導電層17の厚さを50〜250nmの範囲内の値とすることがより好ましく、70〜200nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0030】
また、ドライバ接続配線67において、それに接続された駆動用半導体素子の入力側グランド間抵抗を100Ω/m2以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる入力側グランド間抵抗を所定値以下とすることにより、ドライバからのデータ信号の書き込み速度が低下することを直接的に防止することができるためである。逆に言うと、かかる入力側グランド間抵抗が100Ω/m2を超えると、駆動用半導体素子からの出力波形が変形し、結果として、線欠陥等の表示不良が発生しやすくなる場合があるためである。
したがって、ドライバ接続配線67において、それに接続された駆動用半導体素子の入力側グランド間抵抗を20Ω/m2以下の値とすることがより好ましく、5Ω/m2以下の値とすることがさらに好ましい。
【0031】
(3)カラーフィルタ基板
また、図1に示すように、素子基板60と対向するカラーフィルタ基板30は、一例として、透明なガラス基板等からなる基体31と、遮光膜39と、着色層37と、表面保護層41と、走査電極33と、から構成されている。また、走査電極33上には、液晶材料の配向性を制御するための配向膜45を備えるとともに、走査電極33等が形成されている面とは反対側の面に、鮮明な画像表示が認識できるように、位相差板(1/4波長板)47及び偏光板49が配置されている。
また、カラーフィルタ基板30に形成された遮光膜39は、隣接する画素間において色材が混色することを防止して、コントラストに優れた画像表示を得るための膜である。このような遮光膜39としては、例えば、クロム(Cr)やモリブテン(Mo)等の金属膜を遮光膜39として使用したり、あるいは、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色材を共に樹脂その他の基材中に分散させたものや、黒色の顔料や染料等の着色材を樹脂その他の基材中に分散させたものなどを用いたりすることができる。さらに、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色材を重ね合わせることにより、遮光膜を形成することもできる。
【0032】
また、着色層37は、通常、透明樹脂中に顔料や染料等の着色材を分散させて所定の色調を呈するものとされている。着色層37の色調の一例としては原色系フィルタとしてR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の組合せからなるものがあるが、これに限定されるものではなく、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)等の補色系や、その他の種々の色調で形成することができる。
また、着色層37の配列パターンとしては、ストライプ配列を採用することが多いが、このストライプ配列の他に、斜めモザイク配列や、デルタ配列等の種々のパターン形状を採用することができる。
【0033】
また、着色層37や遮光膜39上には、基板表面の平坦化を図るとともに、遮光膜39等の導電性の材料からなる部材と、走査電極33との電気絶縁性を図るために、アクリル樹脂やエポキシ樹脂などの光硬化性又は熱硬化性の樹脂材料からなる表面保護層41が形成されている。
また、表面保護層41の上には、ITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電体からなる走査電極33が形成されている。かかる走査電極33は、複数の透明電極が並列したストライプ状に構成されている。そして、この走査電極33の上には、ポリイミド樹脂等からなる配向膜45が形成されている。
【0034】
2.製造方法
(1)素子基板の製造工程
(1)−1 タンタル層の形成
所定のスイッチング素子としてのTFD素子69及び画素電極63を含む素子構造19を備えた素子基板60を製造するにあたり、まず、図5(a)に示すように、ガラス基板等の基体61上に、所定形状にパターニングされたタンタル層11、71を形成する。
かかるタンタル層の形成方法は特に制限されるものではないが、例えば、蒸着法やスパッタリング法、あるいはラミネート法を用いて全面的にタンタル層を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより形成することができる。
また、かかるタンタル層は、TFD素子69を構成する素子第1電極71としてのみならず、ドライバ接続配線67の一部としてのタンタル層11、及びデータ線65の一部としてのタンタル層として形成される。そして、製造工程の簡略化の観点から、TFD素子69を構成する素子第1電極71と、ドライバ接続配線67の一部としてのタンタル層11等とを同時工程で形成することが好ましい。
なお、かかるタンタル層の厚さに関し、TFD素子69の素子第1電極71を同時形成する場合には、通常180nm程度にすることが好ましい。
【0035】
(1)−2 酸化タンタル層の形成
次いで、図5(b)に示すように、所定形状にパターニングされたタンタル層の表面を陽極酸化法によって酸化することにより、酸化タンタル層13、72を形成する。
より具体的には、酸化タンタル層は、タンタル層が形成されたガラス基板61をクエン酸溶液等の電解液中に浸漬した後、かかる電解液と、タンタル層との間に所定電圧を印加して、タンタル層の表面を酸化させて形成することができる。
かかる酸化タンタル層は、TFD素子69を構成する絶縁膜72として、及びドライバ接続配線67やデータ線65等の一部としての酸化タンタル層13として形成される。そして、製造工程の簡略化の観点から、これらを同時工程で形成することが好ましい。
なお、かかる酸化タンタル層の厚さに関し、TFD素子69の絶縁膜72を同時形成する場合には、通常20nm程度にすることが好ましい。
【0036】
(1)−3 クロム層の形成
次いで、図5(c)に示すように、表面にタンタル層及び酸化タンタル層が形成された基板上に、蒸着法やスパッタリング法を用いて全面的にクロム層を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることにより、酸化タンタル層の一部と重なるように、所定形状にパターニングされたクロム層15、74を形成する。
かかるクロム層は、TFD素子69を構成する素子第2電極74としてのみならず、ドライバ接続配線67の一部としてのクロム層15、及びデータ線65の一部としてのクロム層として形成される。また、タンタル層や酸化タンタル層と同様に、製造工程の簡略化の観点から、TFD素子69を構成する素子第2電極74と、ドライバ接続配線67等の一部としてのクロム層15とを同時工程で形成することが好ましい。
なお、かかるクロム層の厚さに関し、TFD素子69の素子第2電極74を同時形成する場合には、通常200nm程度にすることが好ましい。
【0037】
(1)−4 熱処理
次いで、図5(d)に示すように、タンタル層、酸化タンタル層、及びクロム層が形成された基板に対して、不活性ガス18中で熱処理を実施する。すなわち、クロム層11、74と、当該クロム層11、74と電気的に接続される導電層17、63との接触抵抗を上昇させることなく、TFD素子69の特性を向上させるためである。
より詳細には、製造する素子基板60が、層間絶縁膜を備えておらず、データ線65と画素電極63とが同一平面状に形成される構成の素子基板60である場合には、画素電極63の形成工程後であっても、かかる熱処理工程を実施することが可能である。しかし、本実施形態において製造する液晶表示装置は、データ線65と、画素電極63との間に層間絶縁膜68を備える、いわゆるオーバーレイヤー構造の液晶表示装置であるために、後述する導電層の形成工程を経て画素電極63を形成した後に、かかる熱処理を実施した場合には、既に層間絶縁膜68も形成されており、当該層間絶縁膜68が熱に耐えることができずに、絶縁不良等の原因となってしまう。そのため、クロム層の形成工程後、層間絶縁膜68の形成工程前に、かかる熱処理を実施する必要がある。ところが、酸素等の活性ガスを含む環境下でかかる熱処理を実施すると、クロム層の表面が酸化され、酸化クロム(CrOx)層が形成され、クロム層と、導電層との間の接触抵抗が上昇してしまう。
したがって、かかる熱処理工程を不活性ガス18中で実施することにより、クロム層の表面に酸化膜が形成されることを有効に防止することができ、素子構造19におけるクロム層からなる素子第2電極74と、導電層からなる画素電極63と、の間の接触抵抗が上昇することを防ぐことができる。
なお、好適な不活性ガス18として、窒素ガス、アルゴンガス、又はフッ素含有炭化水素ガス等を使用することができる。
【0038】
また、かかる熱処理を不活性ガス18中で実施することにより、ドライバ接続配線67においてもかかる接触抵抗の上昇を抑えて、配線抵抗を低くすることもできる。
すなわち、図7(a)に示すように、クロム層15上に酸化クロム層16が形成されている場合には、導電層17と、クロム層15との間の接触抵抗が高いために、電流は、高抵抗ではあるが、導電層17を主として流れることとなる。一方、図7(b)に示すように、タンタル層11、酸化タンタル層13、クロム層15、及び導電層17が順次積層されたドライバ接続配線67上にドライバを実装した場合に、電流は、低抵抗のクロム層15を主として流れることになる。したがって、クロム層15と、導電層17との間に酸化クロム層16が存在しなければ、ドライバ配線抵抗を低下させることができる。
【0039】
ここで、図8を参照して、導電層(ITO層)17と、クロム層15との間の接触抵抗と、配線抵抗との関係について説明する。かかる図8は、クロム層15上にITO層17を積層した配線における、ITO層17と、クロム層15との間の接触抵抗と、配線抵抗とをそれぞれ測定したデータであり、横軸に接触抵抗(Ω/m2)を採って示してあり、縦軸に配線抵抗(Ω/m2)を採って示してある。
かかる図8から容易に理解できるように、ITO層17と、クロム層15との間の接触抵抗が高くなるに連れて、測定される配線抵抗自体も高くなっている。例えば、接触抵抗が1×103から1×106Ω/m2になると、測定される配線抵抗もそれにつれて、約1Ω/m2から140Ω/m2程度に上昇している。この理由としては、クロム層の表面に酸化膜が形成され、電流の通り道が、クロム層からITO層に変化するためと考えられる。
したがって、熱処理工程を不活性ガス中で実施することにより、クロム層15上における酸化膜の形成を抑制でき、すなわち、その上に積層するITO層17との間の接触抵抗の上昇を防止して、測定される配線抵抗についても低下させることができる。
よって、ドライバ接続配線67においても、ITO層17と、クロム層15との間の接触抵抗を所定範囲内の値に制限することにより、ドライバ91からのデータ信号の書き込み速度の低下を防止して、表示特性に優れた液晶表示装置とすることができる。
【0040】
また、熱処理工程における熱処理の温度を200〜280℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、熱処理の時間にもよるが、かかる熱処理温度が200℃未満の値となると、クロム層と、導電層との間の接触抵抗が上昇する場合があるとともに、素子の特性を十分に合わせこむことが困難となる場合があるためである。一方、熱処理温度が280℃を超えると、クロム層と、導電層との間の接触抵抗が上昇する場合があるとともに、基板上のタンタル層やクロム層等を破損させる場合があるためである。
したがって、熱処理工程における熱処理の温度を210〜270℃の範囲内の値とすることがより好ましく、220〜260℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0041】
また、熱処理工程における熱処理の時間を5〜25分の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、熱処理の温度にもよるが、熱処理時間が5分未満の値となると、クロム層と、導電層との間の接触抵抗が上昇する場合があるとともに、素子の特性を十分に合わせこむことが困難となる場合があるためである。一方、熱処理温度が25分を超えると、クロム層と、導電層17との間の接触抵抗が上昇する場合があるとともに、基板上のタンタル層やクロム層等を破損させる場合があるためである。
したがって、熱処理工程における熱処理の時間を8〜22分の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜20分の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0042】
(1)−5 層間絶縁膜の形成
次いで、図6(a)に示すように、クロム層15が形成された基板上に、スリットコータやスピンコータを用いて透明絶縁材料を塗布した後、フォトリソグラフィ法等を用いて、少なくとも表示領域に相当する領域に層間絶縁膜68を形成する。すなわち、表示領域内においては、データ線65のピッチ間隔が狭い場合であっても、データ線65と、画素電極63との間の電気絶縁性を高めることができる一方、表示領域外においては、そのような電気絶縁性の問題が少ないために形成する必要がない。
このとき、TFD素子69における素子第2電極73、74としてのクロム層の一方と平面的に重なる位置に、当該クロム層と画素電極63としての導電層とを電気的に接続するためのコンタクトホール68aを形成する。
かかる透明絶縁材料としては、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等の光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂を使用することができる。
なお、かかる層間絶縁膜68の厚さに関し、通常2,500nm程度に形成することが好ましい。
【0043】
(1)−6 導電層の形成
次いで、図6(b)に示すように、層間絶縁膜68が形成された基板上に、スパッタリング法等を用いて全面的に導電層を形成した後、フォトリソグラフィ法やエッチング法を用いてパターニングすることにより、所定形状の導電層17、63を形成する。かかる導電層としては、ITO(インジウムスズ酸化物)やIZO(インジウム亜鉛酸化物)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)等を使用することができる。
また、かかる導電層は、表示領域内においては、層間絶縁膜68におけるコンタクトホール68aを介して、クロム層からなる素子第2電極74と電気的に接続される画素電極63となるが、表示領域外においては層間絶縁膜68が存在しないために、クロム層15上に積層されて、ドライバ接続配線67の一部となる。そして、タンタル層11やクロム層15等と同様に、製造工程の簡略化の観点から、それらを同時工程で形成することが好ましい。
そして、本発明においては、熱処理工程を不活性ガス18中で実施していることから、クロム層15、74と、導電層17、63との間に酸化膜が存在しないために、それらの間の接触抵抗が上昇することがない。
なお、かかる導電層の厚さに関し、画素電極63と同時に形成する場合には、通常50nm程度に形成することが好ましい。
【0044】
(1)−7 配向膜の形成
次いで、図6(c)に示すように、導電層からなる画素電極63が形成された基板61上に、ポリイミド樹脂等からなる配向膜75を配置する。
以上のようにして、素子基板を製造することができる。
【0045】
(2)カラーフィルタ基板の製造工程
カラーフィルタ基板30は、図9(a)に示すように、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス等からなる基体31上に、それぞれの画素領域に対応する複数の開口部39aを備えた遮光膜39を形成する。
このような遮光膜39としては、例えば、クロム(Cr)やモリブテン(Mo)等の金属膜を遮光膜39として使用したり、あるいは、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色材を共に樹脂その他の基材中に分散させたものや、黒色の顔料や染料等の着色材を樹脂その他の基材中に分散させたものなどを用いたりすることができる。ただし、膜厚が薄い場合であっても遮光性を確保することができるとともに、遮光膜39による段差を小さくすることができることから、クロム等の金属膜を遮光膜として使用することが好ましい。
かかる金属膜を用いて遮光膜39を形成する場合には、例えば、クロム(Cr)等の金属材料を蒸着法等により基体31上に積層した後、所定のパターンに合わせてエッチング処理することにより形成することができる。
【0046】
次いで、図9(b)に示すように、遮光膜39が形成された基板31上に、着色層37を形成する。
かかる着色層37は、例えば、顔料や染料等の着色材を分散させた透明樹脂等からなる感光性樹脂を、遮光膜39が形成された基板31上に、スピンコータやスリットコータを用いて塗布し、これにパターン露光、現像処理を順次施すことによって形成することができる。そして、色毎に上記工程を繰り返すことにより、複数色の着色層37r、37g、37bを配列形成する。
なお、着色層37の配列パターンとしては、ストライプ配列を採用することが多いが、このストライプ配列の他に、斜めモザイク配列や、デルタ配列等の種々のパターン形状を採用することができる。
【0047】
次いで、図9(c)に示すように、基板31上に全面的に光硬化性又は熱硬化性の樹脂材料を塗布するとともに、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングを施し、少なくとも表示領域に相当する領域に表面保護層41を形成する。すなわち、基板表面を平坦化することにより、当該表面保護層上に形成される第1の電極33を平坦化したり、セルギャップの均一化を図ったりできるために、表示ムラの発生を低減することができるためである。
かかる樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フッ素樹脂などで構成することができる。これらの樹脂は流動性を有する未硬化状態で基板上に塗布され、乾燥、光硬化、熱硬化などの適宜の手段で硬化される。塗布方法としては、スピンコータやスリットコータなどを用いて塗布することができる。
【0048】
次いで、図9(d)に示すように、表面保護層41上に全面的にITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電体材料からなる導電層を、一例として、スパッタリング法により形成するとともに、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングを施し、走査電極33を形成する。次いで、図9(e)に示すように、当該走査電極33を形成した基板上に、ポリイミド樹脂等からなる配向膜を形成する。
【0049】
(3)貼り合わせ工程
次いで、図示しないものの、カラーフィルタ基板又は素子基板のいずれか一方において、表示領域を囲むようにしてシール材を積層した後、他方の基板を重ね合わせて、加熱圧着することにより、カラーフィルタ基板及び素子基板を貼り合わせて、セル構造を形成する。
その後、セル内に、シール材の一部に設けられた注入口から液晶材料を注入した後、封止材等により封止する。
【0050】
(4)後工程
次いで、カラーフィルタ基板及び素子基板それぞれの外面に、位相差板(1/4λ板)及び偏光板を配置したり、ドライバを実装したりすることにより、液晶表示装置を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の電気光学装置の製造方法によれば、素子の特性を合わせこむための熱処理工程を不活性ガス中で実施することにより、クロム層の表面に酸化膜が形成されることがないために、当該クロム層に積層される導電層との間の接触抵抗の上昇を防止することができる。したがって、スイッチング素子と画素電極との間の接触抵抗や、ドライバ接続配線の配線抵抗の上昇を抑えて、データ信号の書き込み速度が速く、表示特性に優れた電気光学装置を効率的に提供することができる。
よって、得られた電気光学装置を、液晶表示装置等の電気光学装置や電子機器、例えば、携帯電話機やパーソナルコンピュータ等をはじめとして、液晶テレビ、ビューファインダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電気泳動装置、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた電子機器、電子放出素子を備えた装置(FED:Field Emission DisplayやSCEED:Surface-Conduction Electron-Emitter Display)などに幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の電気光学装置の製造方法により製造することができる電気光学装置の一例としての液晶表示装置を示す概略断面図である。
【図2】(a)〜(b)は、それぞれ所定の素子構造を備えた素子基板を示す平面図及び断面図である。
【図3】(a)〜(b)は、それぞれ素子構造の一例としてのTFD素子と画素電極との接続構造を説明するために供する平面図及び断面図である。
【図4】ドライバ接続配線を説明するために供する図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の電気光学装置の製造方法にかかる素子基板の製造工程を説明するために供する図である(その1)。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の電気光学装置の製造方法にかかる素子基板の製造工程を説明するために供する図である(その2)。
【図7】接触抵抗と配線抵抗との関係を説明するために供する図である(その1)。
【図8】接触抵抗と配線抵抗との関係を説明するために供する図である(その2)。
【図9】(a)〜(e)は、カラーフィルタ基板の製造工程を説明するために供する図である。
【図10】従来のオーバーレイヤー構造の電気光学装置を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0053】
11:タンタル層、13:酸化タンタル層、15:クロム層、16:酸化クロム層、17:導電層、18:不活性ガス、19:素子構造、30:カラーフィルタ基板、60:素子基板、63:画素電極、65:データ線、67:ドライバ接続配線、68:層間絶縁膜、68a:コンタクトホール、69:スイッチング素子(TFD素子)、71:素子第1電極、72:絶縁膜、73・74:素子第2電極、75:配向膜、80:反射画素電極、91:半導体素子、93:フレキシブル回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、タンタル層、酸化タンタル層、及びクロム層からなるスイッチング素子と、導電層からなる画素電極と、を含む素子構造を備えた電気光学装置の製造方法において、
前記基板上に、パターニングされた前記タンタル層を形成する工程と、
前記タンタル層の表面を酸化させることにより、前記酸化タンタル層を形成する工程と、
前記酸化タンタル層の一部と重なるように、パターニングされた前記クロム層を形成する工程と、
前記クロム層が形成された基板に対して、不活性ガス中で熱処理を実施する工程と、
前記クロム層と重なる位置にコンタクトホールが配置されるように層間絶縁膜を形成する工程と、
前記クロム層と、前記コンタクトホールを介して電気的に接続されるように、前記導電層からなる画素電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記素子構造を構成する前記タンタル層、酸化タンタル層、クロム層、及び導電層と同一構成のドライバ接続配線を、同時に形成することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記クロム層と、導電層と、の間の接触抵抗をそれぞれ1×104Ω/m2以下の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記ドライバ接続配線に接続された駆動用半導体素子の入力側グランド間抵抗を100Ω/m2以下の値とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記不活性ガスが、窒素ガス、アルゴンガス又はフッ素含有炭化水素ガスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理の温度を200〜280℃の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理の時間を5〜25秒の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−78931(P2006−78931A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264928(P2004−264928)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】