説明

電気化学素子用セパレータ、電気化学素子および電気化学素子の製造方法

【課題】 異常過熱した際の安全性と、内部短絡およびデンドライトによる短絡に対する信頼性に優れた電気化学素子を構成し得るセパレータ、並びに該セパレータを有する電気化学素子とその製造方法を提供する。
【解決手段】 正極、負極、非水電解液およびセパレータを有する電気化学素子に用いられるセパレータにおいて、融点が80〜130℃である樹脂(A)を主成分とする微多孔膜からなるセパレータ層(I)と、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質のセパレータ層(II)とを有し、上記セパレータ層(I)および上記セパレータ層(II)の少なくとも一方に、板状粒子を含有させることにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安価で高温時の寸法安定性に優れた電気化学素子用セパレータ、およびこれを用いてなり、高温環境下においても安全な電気化学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池やスーパーキャパシタに代表される非水電解液を用いた電気化学素子は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。携帯機器の高性能化に伴って素子の高容量化が更に進む傾向にあり、安全性の確保が重要となっている。
【0003】
現行のリチウム二次電池では、正極と負極の間に介在させるセパレータとして、例えば厚みが20〜30μm程度のポリオレフィン系の多孔性フィルムが使用されている。また、セパレータの素材としては、電池の熱暴走温度以下でセパレータの構成樹脂を溶融させて空孔を閉塞させ、これにより電池の内部抵抗を上昇させて短絡の際などに電池の安全性を向上させる所謂シャットダウン効果を確保するため、融点の低いポリエチレン(PE)が適用されることがある。
【0004】
ところで、こうしたセパレータとしては、例えば、多孔化と強度向上のために一軸延伸あるいは二軸延伸したフィルムが用いられている。このようなセパレータは、単独で存在する膜として供給されるため、作業性などの点で一定の強度が要求され、これを上記延伸によって確保している。しかし、このような延伸フィルムでは結晶化度が増大しており、シャットダウン温度も、電池の熱暴走温度に近い温度にまで高まっているため、電池の安全性確保のためのマージンが十分とは言い難い。
【0005】
また、上記延伸によってフィルムにはひずみが生じており、これが高温に曝されると、残留応力によって収縮が起こるという問題がある。収縮温度は、融点、すなわちシャットダウン温度と非常に近いところに存在する。このため、ポリオレフィン系の多孔性フィルムセパレータを使用するときには、充電異常時などに電池の温度がシャットダウン温度に達すると、電流を直ちに減少させて電池の温度上昇を防止しなければならない。空孔が十分に閉塞せず電流を直ちに減少できなかった場合には、電池の温度は容易にセパレータの収縮温度にまで上昇するため、内部短絡による発火の危険性があるからである。
【0006】
このような熱収縮による短絡を防ぐために、耐熱性の樹脂を用いた微多孔膜や不織布をセパレータとして用いる方法が提案されている。例えば特許文献1には、全芳香族ポリアミドの微多孔膜を用いたセパレータが、特許文献2にはポリイミド多孔膜を用いたセパレータが開示されている。また、特許文献3にはポリアミド不織布を用いたセパレータ、特許文献4にはアラミド繊維を用いた不織布を基材としたセパレータ、特許文献5にはポリプロピレン(PP)不織布を用いたセパレータ、特許文献6にはポリエステル不織布を用いたセパレータに関する技術が開示されている。
【0007】
上記のような耐熱性の樹脂や耐熱性の繊維を用いたセパレータは、高温での寸法安定性に優れ、薄型化が可能であるが、高温時に孔が閉塞する所謂シャットダウン特性を持たないために、外部短絡や内部短絡といった電池の温度が急激に上昇する異常時の安全性を十分に確保することができない。
【0008】
このような問題を解決する技術として、特許文献7や特許文献8には、不織布を基材とし、これに熱溶融性のポリオレフィンを含有させた構成のセパレータに関する技術が示されている。こういった構成のセパレータでは、確かに高温時に熱収縮することなく、またポリオレフィンの融点以上の温度になるとポリオレフィンが溶融してシャットダウン特性を示す。しかしながら、本発明者らが検討した結果では、上記のような構成のセパレータではポリオレフィンが柔軟であるために、例えばリチウム電池の正極に通常用いられているような無機酸化物粒子を活物質とする正極を併用して電池とすると、無機酸化物が非常に硬いために、正極と負極とをセパレータを介して押し付けた場合に正極の無機酸化物の突起がセパレータを突き抜けて負極と接して短絡する可能性があり、電池の信頼性を確保するという点では問題がある。
【0009】
また、特許文献9や特許文献10には、上記の短絡を防止する目的で、不織布に無機フィラーを含有させてセパレータを構成する方法が提案されている。しかし、このような構成のセパレータではシャットダウン機能が付与されていないため、安全性の確保という点に問題がある。また、これらの例では無機フィラーとして単なる粒状の微粒子を用いているが、本発明者らの検討によれば、粒状の無機微粒子からなる多孔質膜は、デンドライトが発生した場合に該デンドライトが多孔質膜を容易に突き抜ける可能性が高く、デンドライトショートに対する信頼性を充分に確保することができない。
【0010】
更に、特許文献9に示されている例では無機フィラーを結着するためのバインダーを用いておらず、他方、特許文献10に示されている例では無機バインダーを用いている。こういった構成のセパレータでは、折り曲げずに用いるには問題はないが、リチウム電池で一般的に用いているような、正極と負極とセパレータを渦巻状に巻回して作製する巻回体とすると、無機フィラーからなるセパレータに割れが生じ易く、この割れが短絡などを引き起こす可能性がある。特に、屈曲部の径の小さい巻回体を用いる角形電池においては、セパレータの割れによる短絡などの問題が顕著である。
【0011】
この他、特許文献11には、不織布と無機フィラーからなる多孔質膜にポリオレフィン粒子からなるシャットダウン層を設け、シャットダウン機能を確保した構成のセパレータが示されている。この構成によれば、セパレータの耐熱性を確保しつつ、シャットダウン機能を付与することができるが、基本となる不織布と無機フィラーからなる多孔質膜が、特許文献10に示されている構成と同様であるために、上記の問題点、すなわち、デンドライトショートに対する耐性や屈曲に対する信頼性を確保するのが困難である。
【0012】
【特許文献1】特開平5−335005号公報
【特許文献2】特開2000−306568号公報
【特許文献3】特開平9−259856号公報
【特許文献4】特開平11−40130号公報
【特許文献5】特開2001−291503号公報
【特許文献6】特開2003−123728号公報
【特許文献7】特開昭60−136161号公報
【特許文献8】特開平5−74436号公報
【特許文献9】特開2003−22843号公報
【特許文献10】特表2005−502177号公報
【特許文献11】特表2005−536858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異常過熱した際の安全性と、内部短絡およびデンドライトによる短絡に対する信頼性に優れた電気化学素子を構成し得るセパレータ、並びに該セパレータを有する電気化学素子とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成し得た本発明の電気化学素子用セパレータは、正極、負極、非水電解液およびセパレータを有する電気化学素子に用いられるものであり、融点が80〜130℃である樹脂(A)を主成分とする微多孔膜からなるセパレータ層(I)と、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質のセパレータ層(II)とを有し、上記セパレータ層(I)および上記セパレータ層(II)の少なくとも一方に、板状粒子を含有していることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の電気化学素子は、正極、負極、非水電解液およびセパレータを有するものであって、上記セパレータが、融点が80〜130℃である樹脂(A)を主成分とする微多孔膜からなるセパレータ層(I)と、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質のセパレータ層(II)とを有し、上記セパレータ層(I)および上記セパレータ層(II)の少なくとも一方に、板状粒子を含有していることを特徴とするものである。
【0016】
更に、本発明の電気化学素子の製造方法は、本発明の電気化学素子であって、正極および負極の少なくとも一方が、上記電極の活物質含有層形成用組成物を乾燥してなる活物質含有層と、上記活物質含有層上に形成され上記電極と一体化されたセパレータ層(II)とを有する電気化学素子を製造するに際し、上記電極の活物質含有層形成用組成物が乾燥する前に、上記セパレータ層(II)の形成用組成物を塗布することにより、電極とセパレータ層(II)とを一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内部短絡やデンドライトによる短絡に対する信頼性に優れ、また、短絡や過充電などにより電池の温度が異常に上昇したときの安全性にも優れた電気化学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の電気化学素子用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という)は、融点が80〜130℃である樹脂(A)を主成分とする微多孔膜からなるセパレータ層(I)と、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質のセパレータ層(II)とを有し、上記セパレータ層(I)および上記セパレータ層(II)の少なくとも一方に、板状粒子を含有していることを特徴とするものである。
【0019】
本発明のセパレータに係るセパレータ層(I)は、主にシャットダウン機能を確保するためのものである。本発明のセパレータが組み込まれた電気化学素子の温度が樹脂(A)の融点以上に達したときには、セパレータ層(I)に係る樹脂(A)が溶融してセパレータの空孔を塞ぎ、電気化学反応の進行を抑制するシャットダウンを生じる。
【0020】
また、本発明のセパレータに係るセパレータ層(II)は、セパレータ本来の機能、主に正極と負極との直接の接触による短絡を防止する機能を備えたものであり、耐熱温度が150℃以上のフィラーによって、その機能を確保している。すなわち、セパレータ層(II)により、電気化学素子が通常使用される温度域では、セパレータを介して正極と負極とを押し付けて電極体を構成する場合などにおいて、正極活物質がセパレータを突き抜けて負極と接触することによる短絡の発生を防止することができる。また、電気化学素子が高温となった場合には、喩えセパレータ層(I)が収縮しても、収縮し難いセパレータ層(II)によって、セパレータが熱収縮した場合に発生し得る正負極の直接の接触による短絡を防止することもできる。なお、後記の多孔質基体を除き、本明細書でいう「耐熱温度が150℃以上」とは、少なくとも150℃において軟化などの変形が見られないことを意味している。
【0021】
更に、本発明のセパレータでは、セパレータ層(I)およびセパレータ層(II)の少なくとも一方が板状粒子を含有している。セパレータ層(I)、セパレータ層(II)の少なくとも一方が板状粒子を含有することで、セパレータにおける正極負極間の経路、すなわち所謂曲路率が大きくなる。そのため、本発明のセパレータを用いた電気化学素子では、デンドライトが生成した場合でも、該デンドライトが負極から正極に到達し難くなり、デンドライトショートに対する信頼性を高めることができる。なお、セパレータ層(II)が板状粒子を含有する場合は、この板状粒子が「耐熱温度が150℃以上のフィラー」を兼ねることができ、セパレータ層(II)に含まれるフィラーの少なくとも一部を板状粒子で構成することができる。
【0022】
本明細書でいうセパレータ層(I)における「樹脂(A)を主成分とする」とは、セパレータ層(I)を構成する微多孔膜中の固形分比率で、樹脂(A)が50体積%以上であることを意味している。また、本明細書でいうセパレータ層(II)における「耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む」とは、層内の固形分比率(ただし、後記の多孔質基体を有する場合においては、多孔質基体を除いた固形分比率)で、耐熱温度が150℃以上のフィラーが50体積%以上であることを意味している。
【0023】
セパレータ層(I)に係る樹脂(A)は、融点が80〜130℃のものである。樹脂(A)の融点は、例えば、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度により求めることができる。
【0024】
樹脂(A)としては、電気絶縁性を有しており、電気化学素子の有する電解液に対して安定であり、更に、電池の作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定な材料が好ましい。具体的には、ポリエチレン(PE)、共重合ポリオレフィン、またはポリオレフィン誘導体(塩素化ポリエチレンなど)、ポリオレフィンワックス、石油ワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。上記共重合ポリオレフィンとしては、エチレン−ビニルモノマー共重合体、より具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、あるいは、エチレン−メチルアクリレート共重合体やエチレン−エチルアクリレート共重合体などの、エチレン−アクリル酸共重合体が例示できる。上記共重合ポリオレフィンにおけるエチレン由来の構造単位は、85モル%以上であることが望ましい。また、ポリシクロオレフィンなどを用いることもできる。樹脂(A)には、上記例示の樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を用いても構わない。
【0025】
樹脂(A)としては、上記例示の材料の中でも、PE、ポリオレフィンワックス、またはエチレン由来の構造単位が85モル%以上のEVAが好適に用いられる。また、樹脂(A)は、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤(例えば、酸化防止剤など)を含有していても構わない。
【0026】
セパレータ層(I)は、上記のような樹脂(A)を主成分とする微多孔膜で構成する。このような微多孔膜としては、例えば、従来公知のリチウム二次電池などの電気化学素子で使用されているポリオレフィン(PE、エチレン−プロピレン共重合体などの共重合ポリオレフィンなど)製の微多孔膜、すなわち、無機フィラーなどを混合したポリオレフィンを用いて形成したフィルムやシートに、一軸または二軸延伸を施して微細な空孔を形成したものなどを用いることができる。また、上記の樹脂(A)と、他の樹脂を混合してフィルムやシートとし、その後、上記他の樹脂のみを溶解する溶媒中に、これらフィルムやシートを浸漬して、上記他の樹脂のみを溶解させて空孔を形成したものを、セパレータ層(I)として用いることもできる。
【0027】
セパレータにおける樹脂(A)の含有量は、シャットダウンの効果をより得やすくするために、例えば、下記のようであることが好ましい。セパレータの全構成成分中における樹脂(A)の体積は、10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましい。また、樹脂(A)の体積が、セパレータ層(I)の全構成成分中、50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、80体積%以上であることがより好ましい。更に、後記の方法により求められるセパレータ層(II)の空孔率が10〜50%であり、且つ樹脂(A)体積が、セパレータ層(II)の空孔体積の50%以上であることが好ましい。
【0028】
一方、セパレータの高温時における形状安定性確保の点から、セパレータの全構成成分中における樹脂(A)と樹脂(B)との合計体積は、80体積%以下であることが好ましく、40体積%以下であることがより好ましい。
【0029】
セパレータ層(II)に係るフィラーは、耐熱性および電気絶縁性を有しており、電解液やセパレータ製造の際に使用する溶媒に対して安定であり、更に電池の作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定なものであれば、有機粒子でも無機粒子でもよいが、分散などの点から微粒子であることが好ましく、安定性などの点から無機微粒子がより好ましく用いられる。
【0030】
無機粒子の構成材料の具体例としては、例えば、酸化鉄、SiO、Al、TiO、BaTiO、ZrOなどの無機酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶;モンモリロナイトなどの粘土;などが挙げられる。ここで、上記無機酸化物は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などであってもよい。また、金属、SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などで例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、上記の無機酸化物など)で被覆することにより電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。上記の無機酸化物の中でも、Al、SiOおよびベーマイトが特に好ましく用いられる。
【0031】
また、有機微粒子(有機粉末)としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの各種架橋高分子微粒子[ただし、樹脂(B)に該当しないもの]や、ポリプロピレン(PP)、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子微粒子などが例示できる。また、これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、上記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(上記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
【0032】
フィラーの形状としては、例えば、球状に近い形状であってもよく、板状であってもよいが、短絡防止の点からは、板状の粒子であることが好ましい。板状粒子の代表的なものとしては、板状のAlや板状のベーマイトなどが挙げられる。
【0033】
フィラーの粒径は、平均粒径で、例えば、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは5μm以下である。なお、本明細書でいう微粒子[フィラー、後記の板状粒子、後記の樹脂(A)、後記の樹脂(B)]の平均粒径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、フィラーや板状粒子の場合には、これらを溶解しない媒体に、樹脂(A)や樹脂(B)の場合には、これらの樹脂を膨潤させない媒体(例えば水)に、これら微粒子を分散させて測定した数平均粒子径として規定することができる。
【0034】
フィラーの含有量は、内部短絡防止の効果を向上させるためには、セパレータの全構成成分中、20体積%以上とするのが好ましく、50体積%以上とするのがより好ましい。また、セパレータにおける樹脂(A)の含有量を確保してシャットダウン特性を維持するためには、セパレータの全構成成分中におけるフィラーの含有量は、80体積%以下に抑制することが好ましい。
【0035】
なお、フィラーを主体として含むセパレータ層(II)には、後記の繊維状物や樹脂(B)、上記の樹脂(A)、その他の添加粒子などを含有させることもできるが、上記の通り、セパレータ層(II)は主に正負極の短絡を防止するセパレータとしての本来の機能を確保するためのものであり、セパレータ層(II)中のフィラーの含有量が少ないと、この機能を確保するのが困難になる。そのため、セパレータ層(II)中におけるフィラーの含有量は、全固形分量(後記の多孔質基体を用いる場合には、多孔質基体を除いた全固形分量)中、50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、80体積%以上であることが更に好ましい。
【0036】
本発明のセパレータでは、セパレータ層(I)およびセパレータ層(II)の少なくとも一方に板状粒子を含有させる。なお、セパレータ層(II)が板状粒子を含有する場合には、上記の通り、板状粒子がフィラーを兼ねることができる。
【0037】
セパレータ層(I)に板状粒子を含有させる方法としては、例えば、セパレータ層(I)として、無機フィラーなどを混合したポリオレフィンを用いて形成したフィルムやシートに、一軸または二軸延伸を施して微細な空孔を形成する工程を経て作製される微多孔膜を使用する場合には、空孔形成用の上記無機フィラーとして、板状粒子を使用する方法が挙げられる。また、上記の樹脂(A)と、他の樹脂を混合してフィルムやシートとし、その後、上記他の樹脂のみを溶解する溶媒中に、これらフィルムやシートを浸漬して、上記他の樹脂のみを溶解させて空孔を形成する工程を経て作製される微多孔膜を使用する場合には、樹脂(A)と他の樹脂との混合物に更に板状粒子を混合して、微多孔膜の作製に用いる方法が挙げられる。
【0038】
板状粒子の形態としては、アスペクト比が、5以上、より好ましくは10以上であって、100以下、より好ましくは50以下であることが望ましい。また、粒子の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比(長軸方向長さ/短軸方向長さ)の平均値は、3以下、より好ましくは2以下で、1に近い値であることが望ましい。
【0039】
なお、板状粒子における上記の平板面の長軸方向長さと短軸方向長さの比の平均値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。更に板状粒子における上記のアスペクト比も、SEMにより撮影した画像を、画像解析することにより求めることができる。
【0040】
また、板状粒子の平均粒径としては、セパレータの厚みより小さければよく、一方、セパレータの厚みの1/100以上とするのが好ましい。より具体的には、上述の測定法で測定される数平均粒子径で、例えば、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0041】
セパレータ中での板状粒子の存在形態は、平板面がセパレータの面に対して略平行であることが好ましく、より具体的には、セパレータの表面近傍における板状粒子について、その平板面とセパレータ面との平均角度が30°以下であることが好ましい[最も好ましくは、当該平均角度が0°、すなわち、セパレータの表面近傍における板状の平板面が、セパレータの面に対して平行である]。ここでいう「表面近傍」とは、セパレータの表面から全体厚みに対しておよそ10%の範囲を指す。板状粒子の存在形態が上記のような場合には、電極表面に析出するリチウムデンドライトや電極表面の活物質の突起により内部短絡が生じるのをより効果的に防ぐことができる。
【0042】
板状粒子としては、板状のフィラーの具体例として上で例示した無機微粒子(代表的には、板状のAlや板状のベーマイトなど)の他に、耐熱温度が150℃以上の樹脂材料などを用いることもできる。板状粒子の構成材料は、2種以上を併用することもできる。
【0043】
なお、セパレータ層(I)およびセパレータ層(II)の少なくとも一方に板状粒子を含有させることによる効果をより有効に発揮させるためには、板状粒子の含有量は、セパレータの全構成成分の全体積中(ただし、後記の多孔質基体を用いる場合には、多孔質基体を除いた全構成成分の全体積中)、25%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0044】
なお、板状粒子は、セパレータ層(II)に含有させることがより好ましく、セパレータ層(II)において、フィラーを板状粒子とすることが更に好ましい。
【0045】
本発明のセパレータに係るセパレータ層(II)には、セパレータの形状安定性の確保などのために有機バインダーを含有させることが好ましい。有機バインダーとしては、EVA(酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられるが、特に、150℃以上の耐熱温度を有する耐熱性のバインダーが好ましく用いられる。有機バインダーは、上記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記例示の有機バインダーの中でも、EVA、エチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBRなどの柔軟性の高いバインダーが好ましい。このような柔軟性の高い有機バインダーの具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックスシリーズ(EVA)」、日本ユニカー社のEVA、三井デュポンポリケミカル社の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体)」、日本ユニカー社のEEA、ダイキン工業社の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム)」、JSR社の「TRD−2001(SBR)」、日本ゼオン社の「EM−400B(SBR)」などがある。
【0047】
なお、上記の有機バインダーを使用する場合には、後記するセパレータ層(II)形成用の組成物の溶媒に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。
【0048】
また、セパレータの形状安定性や柔軟性を確保するために、セパレータ層(II)において、繊維状物などをフィラーと混在させてもよい。繊維状物としては、耐熱温度が150℃以上であって、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に下記に詳述する電解液や、セパレータ製造の際に使用する溶媒に安定であれば、特に材質に制限はない。なお、本明細書でいう「繊維状物」とは、アスペクト比[長尺方向の長さ/長尺方向に直交する方向の幅(直径)]が4以上のものを意味しており、アスペクト比は10以上であることが好ましい。
【0049】
繊維状物の具体的な構成材料としては、例えば、セルロースおよびその変成体[カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)など]、ポリオレフィン[ポリプロピレン(PP)、プロピレンの共重合体など]、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など]、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの樹脂;ガラス、アルミナ、ジルコニア、シリカなどの無機酸化物;などを挙げることができ、これらの構成材料を2種以上併用して繊維状物を構成してもよい。また、繊維状物は、必要に応じて、公知の各種添加剤(例えば、樹脂である場合には酸化防止剤など)を含有していても構わない。
【0050】
また、本発明のセパレータは、独立膜として用いた場合に取り扱い性を向上するために、セパレータ層(II)において多孔質基体を用いることができる。多孔質基体は、上記の繊維状物が織布、不織布(紙を含む)などのシート状物を形成してなる耐熱温度が150℃以上のものであり、市販の不織布などを基体として用いることができる。この態様のセパレータでは、多孔質基体の空隙内にフィラーを含有させることが好ましいが、多孔質基体とフィラーを結着させるために、上記の有機バインダーを用いることもできる。
【0051】
なお、多孔質基体の「耐熱性」は、軟化などによる実質的な寸法変化が生じないことを意味し、対象物の長さの変化、すなわち、多孔質基体においては、室温での長さに対する収縮の割合(収縮率)が5%以下を維持することのできる上限温度(耐熱温度)がシャットダウン温度よりも十分に高いか否かで耐熱性を評価する。シャットダウン後の電気化学素子の安全性を高めるために、多孔質基体は、シャットダウン温度よりも20℃以上高い耐熱温度を有することが望ましく、より具体的には、多孔質基体の耐熱温度は、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。
【0052】
なお、多孔質基体を用いてセパレータ層(II)を構成する場合には、フィラー(板状粒子を含む)や、セパレータ層(II)に樹脂(A)の微粒子や後記の樹脂(B)の微粒子を使用する際には、フィラーやこれらの微粒子の全部または一部が、多孔質基体の空隙内に存在する形態とすることが好ましい。このような形態とすることで、フィラーなどの作用をより有効に発揮させることができる。
【0053】
繊維状物(多孔質基体を構成する繊維状物、その他の繊維状物を含む)の直径は、セパレータ層(II)の厚み以下であればよいが、例えば、0.01〜5μmであることが好ましい。径が大きすぎると、繊維状物同士の絡み合いが不足するため、例えばシート状物を形成して多孔質基体を構成する場合に、その強度が小さくなって取り扱いが困難となることがある。また、径が小さすぎると、セパレータの空隙が小さくなりすぎて、イオン透過性が低下する傾向にあり、電気化学素子の負荷特性を低下させてしまうことがある。
【0054】
本発明のセパレータにおける繊維状物の含有量は、全構成成分中、例えば、10体積%以上、より好ましくは20体積%以上であって、90体積%以下、より好ましくは80体積%以下であることが望ましい。セパレータ中での繊維状物の存在状態は、例えば、長軸(長尺方向の軸)の、セパレータ面に対する角度が平均で30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。
【0055】
また、繊維状物を多孔質基体として用いる場合には、多孔質基体の占める割合が、セパレータの全構成成分中、10体積%以上90体積%以下となるように、他の成分の含有量を調整するのが望ましい。
【0056】
また、セパレータ層(II)には、上記の樹脂(A)を含有させてもよい。
【0057】
セパレータ層(I)やセパレータ層(II)には、加熱により非水電解液(以下、「電解液」と略す場合がある)を吸収して膨潤し且つ温度上昇と共に膨潤度が増大する樹脂(B)を含有させてもよい。
【0058】
樹脂(B)としては、通常、電池が使用される温度領域(およそ70℃以下)では、電解液を吸収しないかまたは吸収量が限られており、従って膨潤の度合いが一定以下であるが、シャットダウンが必要となる温度まで加熱されたときには、電解液を吸収して大きく膨潤し且つ温度上昇と共に膨潤度が増大するような性質を有する樹脂が用いられる。樹脂(B)を含有するセパレータを用いた電気化学素子では、シャットダウン温度より低温側においては、樹脂(B)に吸収されない流動可能な電解液がセパレータの空孔内に存在するため、セパレータ内部のLi(リチウム)イオンの伝導性が高くなり、良好な負荷特性を有する電気化学素子となるが、温度上昇に伴って膨潤度が増大する性質(以下、「熱膨潤性」という場合がある)が現れる温度以上に加熱された場合には、樹脂(B)は電池内の電解液を吸収して大きく膨潤し、膨潤した樹脂(B)がセパレータの空孔を塞ぐと共に、流動可能な電解液が減少して電気化学素子が液枯れ状態となることにより、シャットダウンが生じて電気化学素子の安全性が確保される。しかも、シャットダウン温度を超える高温となった場合、熱膨潤性により上記液枯れが更に進行し、電池の反応が更に抑制されることになるため、シャットダウン後の高温安全性をより高めることもできる。
【0059】
樹脂(B)が熱膨潤性を示し始める温度は、75℃以上であることが好ましい。樹脂(B)が熱膨潤性を示し始める温度を75℃以上とすることにより、Liイオンの伝導性が著しく減少して電池の内部抵抗が上昇する温度(いわゆるシャットダウン温度)を、およそ80℃以上に設定することができるからである。一方、熱膨潤性を示す温度の下限が高くなるほど、セパレータのシャットダウン温度が高くなるので、シャットダウン温度をおよそ130℃以下に設定するために、樹脂(B)の熱膨潤性を示し始める温度は、125℃以下とするのが好ましく、115℃以下とするのがより好ましい。熱膨潤性を示す温度が高すぎると、電池内の活物質の熱暴走反応を十分に抑制できず、電気化学素子の安全性向上効果が十分に確保できないことがあり、また、熱膨潤性を示す温度が低すぎると、通常の電気化学素子の使用温度域(およそ70℃以下)におけるLiイオンの伝導性が低くなりすぎることがある。
【0060】
また、熱膨潤性を示す温度より低い温度では、樹脂(B)は電解液をできるだけ吸収せず、膨潤が少ない方が望ましい。これは、電気化学素子の使用温度領域、例えば室温では、電解液は、樹脂(B)に取り込まれるよりもセパレータの空孔内に流動可能な状態で保持される方が、電気化学素子の負荷特性などの特性が良好になるからである。
【0061】
常温(25℃)において樹脂(B)が吸収する電解液量は、樹脂(B)の体積変化を表す下記式(1)で定義される膨潤度Bにより評価することができる。
= (V/V)−1 (1)
[上記式中、Vは、電解液中に25℃で24時間浸漬後の樹脂(B)の体積(cm)、Vは、電解液に浸漬する前の樹脂(B)の体積(cm)をそれぞれ表す。]
【0062】
本発明のセパレータに樹脂(B)を使用する場合では、常温(25℃)における樹脂(B)の膨潤度Bは、1以下であることが好ましく、電解液の吸収による膨潤が小さいこと、すなわち、Bはできるだけ0に近い小さな値となることが望まれる。また、熱膨潤性を示す温度より低温側では、膨潤度の温度変化ができるだけ小さくなるものが望ましい。樹脂(B)をバインダー樹脂で結着させたセパレータでは、バインダー樹脂と共に存在する状態で樹脂(B)の膨潤度が小さな値となればよい。
【0063】
その一方で、樹脂(B)としては、熱膨潤性を示す温度の下限以上に加熱された時は、電解液の吸収量が大きくなり、熱膨潤性を示す温度範囲において、温度と共に膨潤度が増大するものが用いられる。例えば、120℃において測定される、下記式(2)で定義される膨潤度Bが、1以上であるものが好ましく用いられる。
= (V/V)−1 (2)
[上記式中、Vは、電解液中に25℃で24時間浸漬後の樹脂(B)の体積(cm)、Vは、電解液中に25℃で24時間浸漬後、電解液を120℃に昇温させ、120℃で1時間経過後における樹脂(B)の体積(cm)をそれぞれ表す。]
【0064】
一方、上記式(2)で定義される樹脂(B)の膨潤度は、大きくなりすぎると電気化学素子の変形を発生させることもあるため、10以下であるのが望ましい。
【0065】
上記式(2)で定義される膨潤度は、樹脂(B)の大きさの変化を、光散乱法やCCDカメラなどにより撮影された画像の画像解析といった方法を用いて、直接測定することにより見積もることができるが、例えば以下の方法を用いてより正確に測定することができる。
【0066】
上記式(1)および式(2)と同様に定義される、25℃および120℃における膨潤度が分かっているバインダー樹脂を用い、その溶液またはエマルジョンに、樹脂(B)を混合してスラリーを調製し、これをPETシートやガラス板などの基材上に塗布してフィルムを作製し、その質量を測定する。次に、このフィルムを、25℃の電解液中に24時間浸漬して質量を測定し、更に、電解液を120℃に加熱昇温させ、120℃で1時間保持後における質量を測定し、下記式(3)〜(9)によって膨潤度Bを算出する。なお、下記(3)〜(9)式では、25℃から120℃までの昇温した際の、電解液以外の成分の体積増加は無視できるものとする。
= M×W/P (3)
= (M−M)/P (4)
= M/P−M/P (5)
= M×(1−W)/P (6)
= V+V−V×(B+1) (7)
= V×(B+1) (8)
= {V+V−V×(B+1)}/V−1 (9)
ここで、上記式(3)〜(9)中、
:電解液に浸漬する前の樹脂(B)の体積(cm)、
:電解液中に25℃で24時間浸漬後の樹脂(B)の体積(cm)、
:電解液中に常温で24時間浸漬後に、フィルムに吸収された電解液の体積(cm)、
:電解液中に常温に24時間浸漬した時点から、電解液を120℃まで昇温させ、更に120℃で1時間経過するまでの間に、フィルムに吸収された電解液の体積(cm)、
:電解液に浸漬する前のバインダー樹脂の体積(cm)、
:電解液中に常温で24時間浸漬後のバインダー樹脂の体積(cm)、
:電解液に浸漬する前のフィルムの質量(g)、
:電解液中に常温で24時間浸漬後のフィルムの質量(g)、
:電解液中に常温で24時間浸漬した後、電解液を120℃まで昇温させ、更に120℃で1時間経過した後におけるフィルムの質量(g)、
W:電解液に浸漬する前のフィルム中の樹脂(B)の質量比率、
:電解液に浸漬する前の樹脂(B)の比重(g/cm)、
:常温における電解液の比重(g/cm)、
:所定温度での電解液の比重(g/cm)、
:電解液に浸漬する前のバインダー樹脂の比重(g/cm)、
:電解液中に常温で24時間浸漬後のバインダー樹脂の膨潤度、
:上記(2)式で定義される昇温時のバインダー樹脂の膨潤度
である。
【0067】
また、上記の方法により上記(3)式および上記(7)式から求められるVおよびVから、上記(1)式を用いて常温での膨潤度Bを求めることができる。
【0068】
なお、本発明のセパレータは、非水電解液を有する電気化学素子に用いられるものであるが、従来公知の非水電解液を有する電気化学素子では、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液が非水電解液として用いられている(リチウム塩や有機溶媒の種類、リチウム塩濃度などの詳細は後述する)。よって、樹脂(B)としては、リチウム塩の有機溶媒溶液中で、75〜125℃のいずれかの温度に達した時に上記の熱膨潤性を示し始め、好ましくは該溶液中において膨潤度BおよびBが上記の値を満足するように膨潤し得るものが推奨される。
【0069】
樹脂(B)としては、耐熱性および電気絶縁性を有しており、電解液に対して安定であり、更に、電池の作動電圧範囲において酸化還元されにくい電気化学的に安定な材料が好ましく、そのような材料としては、例えば、樹脂架橋体が挙げられる。より具体的には、スチレン樹脂〔ポリスチレン(PS)など〕、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル樹脂〔ポリメチルメタクリレート(PMMA)など〕、ポリアルキレンオキシド〔ポリエチレンオキシド(PEO)など〕、フッ素樹脂〔ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など〕およびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂の架橋体;尿素樹脂;ポリウレタン;などが例示できる。樹脂(B)には、上記例示の樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂(B)は、必要に応じて、樹脂に添加される公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤などを含有していても構わない。
【0070】
上記の構成材料の中でも、スチレン樹脂架橋体、アクリル樹脂架橋体およびフッ素樹脂架橋体が好ましく、架橋PMMAが特に好ましく用いられる。
【0071】
これら樹脂架橋体が、温度上昇により電解液を吸収して膨潤するメカニズムについては明らかでないが、ガラス転移点(Tg)との相関が考えられる。すなわち、樹脂は、一般にそのTgまで加熱されたときに柔軟になるため、上記のような樹脂は、Tg以上の温度で多くの電解液の吸収が可能となり膨潤するのではないかと推定される。従って、樹脂(B)としては、実際にシャットダウン作用が生じる温度が樹脂(B)熱膨潤性を示し始める温度より多少高くなることを考慮し、およそ75〜125℃にTgを有する樹脂架橋体を用いることが望ましいと考えられる。なお、本明細書でいう樹脂(B)である樹脂架橋体のTgは、JIS K 7121の規定に準じて、DSCを用いて測定される値である。
【0072】
上記樹脂架橋体では、電解液を含む前の所謂乾燥状態においては、温度上昇により膨張しても、温度を下げることにより再び収縮するというように、温度変化に伴う体積変化にある程度可逆性があり、また、熱膨潤性を示す温度よりもかなり高い耐熱温度を有するため、熱膨潤性を示す温度の下限が100℃くらいであっても、200℃またはそれ以上まで加熱することが可能な材料を選択することができる。そのため、セパレータの作製工程などで加熱を行っても、樹脂が溶解したり樹脂の熱膨潤性が損なわれたりすることがなく、一般の加熱プロセスを含む製造工程での取り扱いが容易となる。
【0073】
セパレータ層(I)に含有させる樹脂(B)や、セパレータ層(II)に含有させる樹脂(A)および樹脂(B)の形態については特に制限はなく、微粒子状の他、例えば、セパレータ層(II)においては、多孔質基体を構成する繊維状物を芯材として、その表面に樹脂(A)や樹脂(B)を付着させたり、その表面を樹脂(A)や樹脂(B)で被覆させたりして、セパレータ層(II)に含有させてもよい。また、セパレータ層(II)における上記の「耐熱温度が150℃以上のフィラー」などをコアとし、樹脂(A)または樹脂(B)をシェルとするコアシェル構造の形態で、セパレータ層(II)に含有させてもよい。更に、セパレータ層(II)に樹脂(A)と樹脂(B)とを共に用いる場合では、例えば樹脂(B)の表面に樹脂(A)を付着させたり、樹脂(B)の表面を樹脂(A)で被覆させたりして、一体化して使用することもできる。中でも、樹脂(A)および樹脂(B)は、微粒子状のものを用いることが好ましい。
【0074】
微粒子状の樹脂(A)および樹脂(B)の場合には、乾燥時におけるこれらの粒径がセパレータの厚みより小さければ良いが、セパレータの厚みの1/100〜1/3の平均粒径を有することが好ましい。具体的には、樹脂(A)および樹脂(B)の平均粒径が0.1〜20μmであることが好ましい。樹脂(A)や樹脂(B)の粒径が小さすぎる場合は、粒子同士の隙間が小さくなり、イオンの伝導パスが長くなって電池特性が低下することがある。また、粒径が大きすぎると、セパレータ層(I)やセパレータ層(II)の厚みが大きくなり、電池のエネルギー密度の低下を招くために好ましくない。
【0075】
電気化学素子における短絡防止効果をより高め、セパレータの強度を確保して取り扱い性を良好にする観点から、セパレータの厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。他方、電気化学素子のエネルギー密度をより高める観点からは、セパレータの厚みは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0076】
また、セパレータ層(I)の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。そして、セパレータ層(II)の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上であって、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0077】
また、セパレータの空孔率としては、電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。なお、セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(10)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P =100−( Σ a/ρ) ×(m/t) (10)
ここで、上記式中、a:質量%で表した成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)、t:セパレータの厚み(cm)である。
【0078】
また、上記(10)式において、mをセパレータ層(II)の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tをセパレータ層(II)の厚み(cm)とすることで、上記(10)式を用いてセパレータ層(II)の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められるセパレータ層(II)の空孔率は、上記の通り、10〜50%であることが好ましい。
【0079】
また、本発明のセパレータは、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が、10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。さらに、セパレータの強度としては、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する場合がある。
【0080】
本発明のセパレータのシャットダウン特性は、例えば、電気化学素子の内部抵抗の温度変化により求めることができる。具体的には、電気化学素子を恒温槽中に設置し、温度を室温から毎分1℃の割合で上昇させ、電気化学素子の内部抵抗が上昇する温度を求めることで測定することが可能である。この場合、150℃における電気化学素子の内部抵抗は、室温の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることが更に好ましい。
【0081】
本発明のセパレータでは、上記の各構成を採用することによって、少なくともセパレータ層(II)の150℃での熱収縮率を1%以下とすることができる。すなわち、電気化学素子内部が150℃程度になっても、セパレータ層(II)の収縮が殆ど生じないため、正負極の接触による短絡を防止することができ、高温での電気化学素子の安全性を高めることができる。また、例えば、セパレータ層(I)とセパレータ層(II)とが一体化した態様のセパレータの場合には、セパレータ層(II)の存在によって、セパレータ全体の150℃での熱収縮率を1%以下とすることもできる。なお、セパレータまたはセパレータ層(II)における「150℃の熱収縮率」とは、セパレータまたはセパレータ層(II)を恒温槽に入れ、温度を150℃まで上昇させて30分放置した後に取り出して、恒温槽に入れる前のセパレータまたはセパレータ層(II)の寸法と比較することで求められる寸法の減少割合を百分率で表したものである。
【0082】
本発明のセパレータの製造方法としては、例えば、下記の(a)または(b)の方法を採用できる。製造方法(a)は、多孔質基体に、フィラーを含有するセパレータ層(II)形成用組成物(スラリーなどの液状組成物など)を塗布した後、所定の温度で乾燥し、その後他方の組成物を塗布してから所定の温度で乾燥してセパレータ層(II)を形成し、これを、セパレータ層(I)とするための樹脂(A)を主成分とする微多孔膜と重ね合わせて1つのセパレータとする方法である。この場合、セパレータ層(I)とセパレータ層(II)とは一体化されていてもよいし、それぞれ独立した構成であって、電気化学素子の組み立てにより、電気化学素子内で重ね合わされた状態で一体のセパレータとして機能するものであってもよい。
【0083】
セパレータ層(I)とセパレータ層(II)を一体化するには、例えば、セパレータ層(I)とセパレータ層(II)とを重ね合わせ、ロールプレスなどにより両者を貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0084】
上記の場合の多孔質基体としては、具体的には、上記例示の各材料を構成成分に含む繊維状物の少なくとも1種で構成される織布や、これら繊維状物同士が絡み合った構造を有する不織布などの多孔質シートなどが挙げられる。より具体的には、紙、PP不織布、ポリエステル不織布(PET不織布、PEN不織布、PBT不織布など)、PAN不織布などの不織布が例示できる。
【0085】
セパレータ層(II)形成用組成物は、フィラー(板状粒子とすることもできる)の他、必要に応じて樹脂(A)や樹脂(B)(例えば微粒子状のもの)、有機バインダーなどを含有し、これらを溶媒(分散媒を含む。以下同じ。)に分散させたものである。なお、有機バインダーについては溶媒に溶解させることもできる。セパレータ層(II)形成用組成物に用いられる溶媒は、樹脂(A)や樹脂(B)、フィラーなどを均一に分散でき、また、有機バインダーを均一に溶解または分散できるものであればよいが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフランなどのフラン類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類など、一般に有機溶媒が好適に用いられる。なお、これらの溶媒に、界面張力を制御する目的で、アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または、モノメチルアセテートなどの各種プロピレンオキサイド系グリコールエーテルなどを適宜添加してもよい。また、有機バインダーが水溶性である場合、エマルジョンとして使用する場合などでは、水を溶媒としてもよく、この際にもアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)を適宜加えて界面張力を制御することもできる。
【0086】
セパレータ層(II)形成用組成物は、フィラー、樹脂(A)、樹脂(B)および有機バインダーを含む固形分含量を、例えば10〜80質量%とすることが好ましい。
【0087】
上記多孔質基体の空孔の開口径が比較的大きい場合、例えば、5μm以上の場合には、これが電気化学素子の短絡の要因となりやすい。よって、この場合には、フィラーや板状粒子、樹脂(A)、樹脂(B)などの全部または一部が、多孔質基体の空隙内に存在する構造とすることが好ましい。多孔質基体の空隙内にフィラーや板状粒子、樹脂(A)、樹脂(B)などを存在させるには、例えば、これらを含有するセパレータ層(II)形成用組成物を多孔質基体に塗布した後に一定のギャップを通し、余分の組成物を除去した後、乾燥するなどの工程を用いればよい。
【0088】
なお、セパレータに含有させる板状粒子の配向性を高めてその機能をより有効に作用させるためには、板状粒子を含有するセパレータ層(II)形成用組成物を多孔質基体に塗布し含浸させた後、上記組成物にシェアや磁場をかけるといった方法を用いればよい。例えば、上記のように、板状粒子を含有するセパレータ層(II)形成用組成物を多孔質基体に塗布した後、一定のギャップを通すことで、上記組成物にシェアをかけることができる。
【0089】
また、フィラーや板状粒子、樹脂(A)、樹脂(B)など、それぞれの構成物の持つ作用をより有効に発揮させるために、上記構成物を偏在させて、セパレータの膜面と平行または略平行に、上記構成物が層状に集まった形態としてもよい。
【0090】
本発明のセパレータの製造方法(b)は、セパレータ層(II)形成用組成物に、更に必要に応じて繊維状物を含有させ、これをフィルムや金属箔などの基板上に塗布し、所定の温度で乾燥した後に、該基板から剥離する方法である。(b)の方法でも、(a)の方法と同様に、樹脂(A)を主成分とする微多孔膜からなるセパレータ層(I)とフィラーを主体として含むセパレータ層(II)とは、それぞれ独立した構成としてもよいし、一体化された構成としてもよい。セパレータ層(I)とセパレータ層(II)を一体化するには、別途形成したセパレータ層(II)とセパレータ層(I)とをロールプレスなどにより貼り合わせる方法の他、基板の代わりにセパレータ層(I)の表面にセパレータ層(II)形成用組成物を塗布し、乾燥して、セパレータ層(I)の表面に直接セパレータ層(II)を形成する方法を採用することもできる。
【0091】
また、(b)の方法によって、電気化学素子を構成する正極および負極の少なくとも一方の電極の表面に、セパレータ層(II)を形成して、セパレータと電極を一体化した構造としてもよい。
【0092】
また、(a)、(b)いずれの製造方法を採用する場合においても、セパレータ層(I)を正極および負極の少なくとも一方の電極と一体化してもよい。セパレータ層(I)を電極と一体化するには、例えば、セパレータ層(I)となる微多孔膜と電極とを重ねてロールプレスする方法などが採用できる。更に、製造方法(b)により、正極または負極の一方の表面にセパレータ層(II)を形成し、他方の電極の表面にセパレータ層(I)となる微多孔膜を貼り付けて一体化してもよいし、製造方法(a)または(b)により作製したセパレータ層(I)とセパレータ層(II)とを一体化したセパレータを、正極および負極のいずれか一方の表面に貼り付けて、一体化してもよい。セパレータ層(I)とセパレータ層(II)とが一体化したセパレータを電極の表面に貼り付けて一体化するには、例えば、セパレータと電極とを重ねてロールプレスする方法などが採用できる。
【0093】
なお、樹脂(A)を主成分とする微多孔膜からなるセパレータ層(I)と、フィラーを主体として含むセパレータ層(II)とは、それぞれ1層ずつである必要はなく、複数の層がセパレータ中にあってもよい。例えば、セパレータ層(II)の両面にセパレータ層(I)を配置した構成としてもよく、セパレータ層(I)の両面にセパレータ層(II)を形成した構成としてもよい。ただし、層数を増やすことでセパレータの厚みを増やして、内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので、層数を多くしすぎるのは好ましくなく、セパレータ層の層数は5層以下であることが好ましい。また、樹脂(A)や樹脂(B)は、粒子状で個々に独立して存在していてもよく、互いに、または繊維状物などに、一部が融着されていても構わない。また、上記の通り、セパレータ層(I)とセパレータ層(II)とは、一体化して独立膜としてセパレータを構成する以外に、それぞれ独立した構成要素とし、電気化学素子が組み立てられた段階で、電気化学素子内で重ね合わされた状態となり、正極と負極の間に介在するセパレータとして機能するようにすることもできる。更に、セパレータ層(I)とセパレータ層(II)とは接している必要はなく、それらの間に別の層、例えば、多孔質基体を構成する繊維状物の層などが介在していてもよい。
【0094】
本発明のセパレータを適用できる電気化学素子は、非水電解液を用いるものであれば特に限定されるものではなく、リチウム二次電池の他、リチウム一次電池やスーパーキャパシタなど、高温での安全性が要求される用途であれば好ましく適用できる。すなわち、本発明の電気化学素子は、上記本発明のセパレータを備えていれば、その他の構成・構造については特に制限はなく、従来公知の非水電解液を有する各種電気化学素子(リチウム二次電池、リチウム一次電池、スーパーキャパシタなど)が備えている各種構成・構造を採用することができる。
【0095】
以下、一例として、リチウム二次電池への適用について詳述する。リチウム二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
【0096】
正極としては、従来公知のリチウム二次電池に用いられている正極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMnやその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などを用いることが可能である。上記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoOやLiNi1−xCox−yAl(0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)などのほか、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiMn5/12Ni5/12Co1/6、LiMn3/5Ni1/5Co1/5など)などを例示することができる。
【0097】
導電助剤としては、カーボンブラックなどの炭素材料が用いられ、バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などフッ素樹脂が用いられ、これらの材料と活物質とが混合された正極合剤により正極活物質含有層が、例えば集電体上に形成される。
【0098】
また、正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0099】
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極活物質含有層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
【0100】
負極としては、従来公知のリチウム二次電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si,Sn、Ge,Bi,Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどのバインダーなどを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極活物質含有層)に仕上げたもの、あるいは、上記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、もしくは集電体上に積層したものなどが用いられる。
【0101】
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、下限は5μmであることが望ましい。また、負極側のリード部は、正極側のリード部と同様にして形成すればよい。
【0102】
電極は、上記の正極と上記の負極とを、本発明のセパレータを介して積層した積層体や、更にこれを巻回した電極巻回体の形態で用いることができる。
【0103】
非水電解液としては、上述したように、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLiイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こしにくいものであれば特に制限は無い。例えば、LiClO、LiPF、LiBF 、LiAsF 、LiSbF などの無機リチウム塩、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩などを用いることができる。
【0104】
電解液に用いる有機溶媒としては、上記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類、エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類などが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキサン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
【0105】
このリチウム塩の電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
【0106】
なお、上記のような正極活物質含有層を有する正極や、負極活物質含有層を有する負極は、例えば、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒に分散させてなる正極活物質含有層形成用組成物(スラリーなど)や、負極合剤をNMPなどの溶媒に分散させてなる負極活物質層形成用組成物(スラリーなど)を集電体上に塗布し、乾燥することにより作製される。この場合、例えば、正極活物質含有層形成用組成物を集電体上に塗布し、該組成物が乾燥する前に、セパレータ層(II)形成用組成物を塗布して作製した正極とセパレータ層(II)との一体化物や、負極活物質含有層形成用組成物を集電体上に塗布し、該組成物が乾燥する前に、セパレータ層(II)形成用組成物を塗布して作製した負極とセパレータ層(II)との一体化物を用いて、リチウム二次電池(電気化学素子)を構成することもできる。
【0107】
本発明の電気化学素子は、従来公知の電気化学素子が用いられている各種用途と同じ用途に適用することができる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0109】
なお、本実施例で示すセパレータ層(II)における各成分の体積含有率は、多孔質基体(不織布)を使用している場合には、この多孔質基体を除く全構成成分中の体積含有率である。更に、本実施例で示す樹脂(A)の融点(融解温度)は、JIS K 7121の規定に準じて、DSCを用いて測定した値である。
【0110】
製造例1(負極の作製)
負極活物質である黒鉛:95質量部と、バインダーであるPVDF:5質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して負極合剤含有ペーストを調製した。この負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚さ10μmの集電体の両面に、活物質塗布長が表面320mm、裏面260mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が142μmになるように負極合剤層の厚みを調整し、幅45mmになるように切断して、長さ330mm、幅45mmの負極を作製した。さらにこの負極の銅箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
【0111】
製造例2(正極の作製)
正極活物質であるLiCoO:85質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部、およびバインダーであるPVDF:5質量部を、NMPを溶剤として均一になるように混合して、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを、集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、活物質塗布長が表面319〜320mm、裏面258〜260mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が150μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、幅43mmになるように切断して、長さ330mm、幅43mmの正極を作製した。さらにこの正極のアルミニウム箔の露出部にタブを溶接してリード部を形成した。
【0112】
実施例1
フィラーとして板状ベーマイト(平均粒径1μm、アスペクト比10)1000gを水1000gに分散させ、更にバインダーとしてSBRラテックス120gを加えて均一に分散させて、セパレータ層(II)形成用組成物を調製した。
【0113】
製造例1で作製した負極の両面に、上記のセパレータ層(II)形成用組成物をブレードコーターにより塗布して乾燥し、厚みが5μmとなるように、フィラーである板状ベーマイトを主体とするセパレータ層(II)を形成した。なお、バインダーの比重を1.2g/cm、ベーマイトの比重を3g/cmとして算出したセパレータ層(II)中の板状ベーマイトの体積含有率は、87%である。
【0114】
また、セパレータ層(I)として、PE製微多孔膜(厚み20μm、空孔率45%)を用意した。セパレータ層(I)に係るPEの融点は135℃である。また、セパレータ層(I)中における樹脂(A)であるPEの体積含有率は、100%である。
【0115】
上記のセパレータ層(II)を有する負極と、製造例2で作製した正極とを、セパレータ層(I)となる上記のPE製微多孔膜を介して渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体を押しつぶして扁平状にし、電池容器内に装填し、非水電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比1:2で混合した溶媒にLiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させた溶液を用い、上記非水電解液を注入した後、封止を行って、リチウム二次電池とした。なお、本実施例におけるセパレータは、セパレータ層(I)とセパレータ層(II)の両方を合わせた全体を指す。
【0116】
実施例1のセパレータでは、セパレータ層(II)の空孔体積を100%としたときの、セパレータ層(I)に係る樹脂(A)の体積の比率は489%であり、セパレータ層(II)の空孔率は45%であった。
【0117】
比較例1
実施例1で調製したものと同じセパレータ層(II)形成用組成物に、厚み15μmのPET製湿式不織布を通し、引き上げ塗布により上記組成物を塗布した後、乾燥することにより、不織布の空隙内にフィラー(板状ベーマイト)を含有する多孔質膜(厚み20μm)を得た。
【0118】
製造例1で作製した負極と製造例2で作製した正極とを、上記の多孔質膜を介在させつつ重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体を使用した以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0119】
比較例2
PE微粒子の水分散体(平均粒径1μm、固形分濃度40%)に、厚みが15μmのPP製メルトブロー不織布を通し、引き上げ塗布により上記水分散体を塗布した後、乾燥することにより、不織布の空隙内にPE微粒子を含有する多孔質膜を得た。
【0120】
製造例1で作製した負極と製造例2で作製した正極とを、上記の多孔質膜を介在させつつ重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体を使用した以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0121】
比較例3
PE製微多孔膜(厚み20μm)を用い、製造例1で作製した負極と製造例2で作製した正極とを、上記PE製微多孔膜を介在させつつ重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0122】
実施例2
比較例1で作製したものと同じ多孔質膜をセパレータ層(II)とし、これに実施例1で使用したものと同じセパレータ層(I)を重ね合わせてセパレータとし、更に、このセパレータのセパレータ層(II)側に製造例1で作製した負極を、セパレータ層(I)側に製造例2で作製した正極を、それぞれ重ね、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体を使用した以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0123】
実施例2のセパレータでは、セパレータ層(II)の空孔体積を100%としたときの、セパレータ層(I)に係る樹脂(A)の体積の比率は220%であり、セパレータ層(II)の空孔率は45%であった。
【0124】
実施例3
実施例1で調製したものと同じセパレータ層(II)形成用組成物に厚み15μmのPET製湿式不織布を通し、引き上げ塗布により上記組成物を塗布した後、上記組成物が完全に乾燥する前に実施例1で使用したものと同じセパレータ層(I)を重ね合わせてから乾燥することにより、セパレータ層(I)とセパレータ層(II)とを一体化したセパレータを作製した。
【0125】
実施例3のセパレータでは、セパレータ層(II)の空孔体積を100%としたときの、セパレータ層(I)に係る樹脂(A)の体積の比率は220%であり、セパレータ層(II)の空孔率は45%であった。
【0126】
製造例1で作製した負極と製造例2で作製した正極とを、セパレータ層(II)を負極側として上記のセパレータを介在させつつ重ね合わせ、渦巻状に巻回して巻回電極体を作製した。この巻回電極体を使用した以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0127】
実施例1〜3および比較例1〜3の各リチウム二次電池について、下記の評価を行った。
【0128】
まず、実施例1〜3および比較例1、3のリチウム二次電池について、以下の方法により、それぞれの電池に用いたセパレータのシャットダウン温度を求めた。電池を恒温槽に入れ、30℃から150℃まで毎分1℃の割合で温度上昇させて加熱し、電池の内部抵抗の温度変化を求めた。そして、抵抗値が30℃での値の5倍以上に上昇したときの温度を、シャットダウン温度とした。また、150℃に達した状態で更に30分間温度を維持し、電池の表面温度および電池電圧を測定した。
【0129】
更に、比較例2の電池についても、同様に内部抵抗の温度変化を測定しようとしたが、電池作製時に内部短絡が生じていることが判明し、電池としての評価を行うことができなかった。すなわち、比較例2のセパレータは、フィラーを含有するセパレータ層(II)がないために、両面からの押し付けに対する強度が弱く、電池作製時に正極と負極が押し付けられて内部短絡を生じたものと思われる。
【0130】
上記の評価結果を表1に示す。また、比較例3の電池における内部抵抗の温度変化をそれぞれ図1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
表1に示すように、実施例1〜3のセパレータでは、シャットダウン温度が135℃の範囲となり、電池の高温での安全性を確保するのに適切な温度範囲でシャットダウンを生じることが明らかとなった。また、実施例1〜3の電池では、その後150℃で30分保持しても、電池の表面温度が上昇したり、電圧が低下するといった異常は見られなかった。
【0133】
これに対し、比較例1のセパレータは、シャットダウン機能を確保するための樹脂(A)を有していないため、シャットダウンが生じなかった。また、150℃で30分保持することにより、電池の表面温度が異常に上昇した。これは、シャットダウンが働かなかったためと推測される。
【0134】
また、比較例3の電池では、図1に示すように、150℃で30分保持することで、内部抵抗が急激に低下して内部短絡を生じやすい状態となることがわかった。これは、セパレータが収縮しているためと推測される。
【0135】
また、実施例1〜3のセパレータを構成するセパレータ層(II)について、150℃の恒温槽内に30分放置して収縮率を測定した。収縮率の測定は、次のようにして行った。4cm×4cmに切り出したセパレータ層(II)の試験片を、クリップで固定した2枚のステンレス板で挟みこみ、150℃の恒温槽内に30分放置した後に取り出し、各試験片の長さを測定し、試験前の長さと比較して長さの減少割合を収縮率とした。なお、実施例1のセパレータに係るセパレータ層(II)については、別途基板上にセパレータ層(II)形成用組成物を塗布し、乾燥した後に剥離したものを用いた。
【0136】
上記の測定の結果、実施例1〜3のセパレータに係るセパレータ層(II)の150℃での熱収縮率は、いずれも1%以下であった。
【0137】
更に、実施例1〜3および比較例3のリチウム二次電池について、以下の条件で充電を行い、充電容量および放電容量をそれぞれ求め、充電容量に対する放電容量の割合を充電効率として評価した。充電は、0.2Cの電流値で電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、次いで、4.2Vでの定電圧充電を行う定電流−定電圧充電とした。充電終了までの総充電時間は15時間とした。充電後の電池は、0.2Cの放電電流で、電池電圧が3.0Vになるまで放電を行ったところ、実施例1〜3の電池は、比較例3の電池と同様に、充電効率がほぼ100%となり、充電時のリチウムデンドライトの生成が抑止され電池として良好に作動することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】比較例3のリチウム二次電池における内部抵抗の温度変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、非水電解液およびセパレータを有する電気化学素子に用いられるセパレータであって、
融点が80〜130℃である樹脂(A)を主成分とする微多孔膜からなるセパレータ層(I)と、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質のセパレータ層(II)とを有し、
上記セパレータ層(I)および上記セパレータ層(II)の少なくとも一方に、板状粒子を含有していることを特徴とする電気化学素子用セパレータ。
【請求項2】
セパレータ層(II)に含まれるフィラーの少なくとも一部が板状粒子である請求項1に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項3】
非水電解液の共存下において、150℃での内部抵抗が室温における内部抵抗の5倍以上である請求項1または2に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項4】
少なくともセパレータ層(II)の150℃における熱収縮率が1%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項5】
セパレータ層(II)が、有機バインダーを含有している請求項1〜4のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項6】
セパレータ層(II)が、耐熱温度が150℃以上の多孔質基体を有している請求項1〜5のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項7】
多孔質基体が、耐熱温度が150℃以上の繊維状物で構成されている請求項6に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項8】
多孔質基体を構成する繊維状物が、セルロースおよびその変成体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリイミドおよび無機酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種の材料からなるものである請求項6または7に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項9】
多孔質基体が、織布または不織布である請求項6〜8のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項10】
樹脂(A)が、ポリエチレン、エチレン−ビニルモノマー共重合体およびポリオレフィンワックスよりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂である請求項1〜9のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項11】
フィラーが、無機酸化物である請求項1〜10のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項12】
無機酸化物が、ベーマイトである請求項11に記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項13】
板状粒子のアスペクト比が10〜100である請求項1〜12のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項14】
セパレータ層(II)の空孔率が10〜50%であり、セパレータ層(I)の含有する樹脂(A)体積が、セパレータ層(II)の空孔体積の50%以上である請求項1〜13のいずれかに記載の電気化学素子用セパレータ。
【請求項15】
正極、負極、非水電解液およびセパレータを有する電気化学素子であって、
上記セパレータが、融点が80〜130℃である樹脂(A)を主成分とする微多孔膜からなるセパレータ層(I)と、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む多孔質のセパレータ層(II)とを有し、
上記セパレータ層(I)および上記セパレータ層(II)の少なくとも一方に、板状粒子を含有していることを特徴とする電気化学素子。
【請求項16】
セパレータ層(I)およびセパレータ層(II)の少なくとも一方が、電極と一体化されている請求項15に記載の電気化学素子。
【請求項17】
セパレータ層(I)とセパレータ層(II)とが、電気化学素子内で重ね合わされてセパレータを構成している請求項15または16に記載の電気化学素子。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかに記載の電気化学素子を製造する方法であって、
正極および負極の少なくとも一方の電極は、上記電極の活物質含有層形成用組成物を乾燥してなる活物質含有層と、上記活物質含有層上に形成され上記電極と一体化されたセパレータ層(II)とを有し、
上記電極の活物質含有層形成用組成物が乾燥する前に、上記セパレータ層(II)の形成用組成物を塗布することにより、電極とセパレータ層(II)とを一体化することを特徴とする電気化学素子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−123988(P2008−123988A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96130(P2007−96130)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】