説明

電気回転釜

【課題】加熱ヒーターを分割して制御することで、調理量に応じて加熱範囲を変更し、効率的な調理ができる電気回転釜を提供する。
【解決手段】電気回転釜100は、調理物を収容する釜本体10と、釜本体の下面の中央部に配置された内側ヒーター20と、内側ヒーターの外周にリング状に配置された外側ヒーター30と、内側ヒーターと外側ヒーター同時に、または内側ヒーターのみを通電するように制御する制御手段40とを備える。内側ヒーター20および外側ヒーター30は、それぞれ3つのブロックに分割され、各ブロックがデルタ結線された3つのプレートヒーターからなり、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釜本体を回転ハンドルで傾倒回転するヒーター加熱方式の電気回転釜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気回転釜は、ホテル、病院、学校給食など大量の調理を行う厨房で使用される調理器である。電気回転釜において加熱用ヒーターを熱源として用いられる。ヒーターは釜本体の下面に配置され、ヒーターのオン/オフ制御により加熱を行う。
【0003】
図7は、従来の電気回転釜の構成を示す概略図である。図8は、従来の電気回転釜の制御回路を示す図である。図7および図8に示す電気回転釜1は、本出願人が今まで製造したものである。
【0004】
図7に示すように、電気回転釜1は、釜本体2と、ヒーター3と、制御部4とから構成される。ヒーター3は、3組のヒーターH1,H2,H3からなり、それぞれ3つのヒーターでデルタ結線されてなる。この場合、大量の調理を行うために、ヒーター3の設置面積を大きくすることで、L1の位置まで被料理材料を入れることが可能となる。
【0005】
また、図8に示すように、電気回転釜1の制御系において、電源4aからブレーカー4bを介して電力を供給する。ヒーター制御用のサイリスタ4cでヒーターH1,H2,H3を制御するようになっている。サイリスタ4cには温度調節器4d、外部ボリューム4eが接続され、加熱温度を調整することができる。この場合、3組のヒーターH1,H2,H3はサイリスタ4cにより一括制御される。また、ヒーターH1,H2,H3を保護するために温度検出用のバイメタルTA1〜TA9が設けられている。
【0006】
また、電気加熱方式を採用することによりコントロールを容易にし、且つ加熱効率の向上や保温調整などができるようにした調理鍋が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に開示の調理鍋は、ステンレス製の有底外筒体の内側に同じくステンレス製の径小な有底内筒体を配設し、有底外筒体と有底内筒体との間に周間隙と底間隙とを設け、この周間隙と底間隙とに断熱材を詰入して周断熱部と底断熱部を形成し、この周断熱部の下部寄り内周と底断熱部の内側と周空隙と底空隙とを設け、周空隙と底空隙をこの連通状態に設け、上面を偏平部に形成したヒーター(多重リング型の渦巻ヒーター)を有底内筒体の底板の下面に偏平部を当接状態に保持せしめて底空隙内の上部に付設し、有底内筒体の中程外周面にサーミスタを付設し、このヒーターの配設部に温度設定調節部を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−222676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来の電気回転釜および特許文献1に開示の調理鍋の場合は、大量調理用の釜(鍋)の大きさに合わせて加熱ヒーターを設計したものであり、大量調理しか対応できず、少量調理の場合、ヒーター全体の出力を弱くして加熱するしかなく、そのため、食材が入っていない部分(図7中の矢印が指す部分)も加熱されてしまい、釜の内表面に焦げ付きが発生する問題点があった。
【0010】
また、従来の電気回転釜1において、制御は一系統しかないため、1つのヒーターが故障となる場合、調理できなくなる問題点があった。また、電気容量が大きく、部品コストが高い欠点があった。
【0011】
また、電気回転釜1の底部と上部が同一のヒーターで加熱するので、内部の被加熱物に対流が起きにくく、熱伝導の効率が悪い、そのため、ガスバーナによる加熱タイプのような調理の仕上がりが得られない。
【0012】
そこで、本発明は、加熱ヒーターを分割して制御することで、調理量に応じて加熱範囲を変更し、効率的な調理ができる電気回転釜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る電気回転釜は、支持軸を介して箱体に回動可能に支持され、調理物を収容する釜本体と、前記釜本体の下面の中央部に配置された内側ヒーターと、前記内側ヒーターの外周にリング状に配置された外側ヒーターと、前記内側ヒーターと外側ヒーター同時に、または内側ヒーターのみを通電するように制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
例えば、前記内側ヒーターは、3つのブロックに分割され、各ブロックがデルタ結線またはスター結線された3つのプレートヒーターからなり、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置され、前記外側ヒーターは、3つのブロックに分割され、各ブロックがデルタ結線またはスター結線された3つのプレートヒーターからなり、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置される。
【0015】
また例えば、前記プレートヒーターの温度を検出する温度検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記温度検出手段の検出信号に基づいて前記プレートヒーターが所定温度を超えた場合、前記プレートヒーターが所在するブロック単位でヒーターの通電を停止するように制御する。
【0016】
また例えば、前記制御手段には、前記内側ヒーターの出力および外側ヒーターの出力をそれぞれ調整する出力調整手段を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気回転釜は、加熱ヒーターを内側ヒーターと、内側ヒーターの外周にリング状に配置された外側ヒーターと分けて設置し、内側ヒーターと外側ヒーター同時に、または内側ヒーターのみを通電するように制御することで、釜全体を均一に加熱することができると共に、調理量の増減に対応することができ、調理する際に、食材が入れている部分のみの加熱ができ、省エネルギー、効率的な調理ができる。
【0018】
また、内側ヒーターおよび外側ヒーターは、それぞれ3つのブロックに分割され、各ブロックがデルタ結線またはスター結線された3つのプレートヒーターからなり、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置されることで、計6ブロックに分割して制御することができ、制御系トラブルのリスクを低減することができる。仮に、一系統が故障しても、故障による非加熱部分が分散しているので、調理作業への影響を最小限に抑え、調理を中断することなく、継続して調理作業を行うことが可能である。例えば、後述する図6に示すように、同一ブロックにあるプレートヒーターA3,A6,A9のうちいずれかが異常になった場合、この3つのプレートヒーターA3,A6,A9の通電が停止される。この場合、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置されているため、他の2つのブロックのプレートヒーター(A1,A4,A7)、(A2,A5,A8)を用いて加熱することができる。
【0019】
また、制御手段は、温度検出手段の検出信号に基づいてプレートヒーターが所定温度を超えた場合、プレートヒーターが所在するブロック単位でヒーターの通電を停止するように制御することで、安全性を向上すると共に、調理作業への影響を最小限に抑え、調理を中断することなく、継続して調理作業を行うことが可能である。
【0020】
また、制御手段には、内側ヒーターの出力および外側ヒーターの出力をそれぞれ調整する出力調整手段を有することで、内側ヒーターの出力と外側ヒーターの加熱に強弱を付けられ、釜内の被加熱物に対流が起き、調理の仕上がりに効果を発揮することができる。
【0021】
さらに、ヒーターを分割することにより、ヒーターの製作精度を向上することができ、釜との密着性がよくなり、均一に加熱することが実現できる。また、ヒーターの交換、修理作業が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の電気回転釜100の構成を示す概略図である。
【図2】電気回転釜100の構成を示す釜本体部の下から見た図である。
【図3】電気回転釜100の構成を示す正面図である。
【図4】電気回転釜100のヒーター配置位置を示す図である。
【図5】電気回転釜100の制御回路を示す概略図である。
【図6】電気回転釜100のヒーター通電状態の一例を示す図である。
【図7】従来の電気回転釜の構成を示す概略図である。
【図8】従来の電気回転釜の制御回路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る電気回転釜を実施するための形態を、図を参照して説明する。
【0024】
本発明に係る電気回転釜は、ヒーターを熱源として用いられ、ホテル、病院、学校給食などの調理を行うものである。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態の電気回転釜100の構成を示す概略図である。また、図2は、電気回転釜100の構成を示す釜本体部の下から見た図である。図3は、電気回転釜100の構成を示す正面図である。図4は、電気回転釜100のヒーター配置位置を示す図である。
【0026】
図1〜図3に示すように、電気回転釜100は、調理物を収容する釜本体10と、釜本体の下面の中央部に配置された内側ヒーター20と、内側ヒーターの外周にリング状に配置された外側ヒーター30と、内側ヒーターと外側ヒーター同時に、または内側ヒーターのみを通電するように制御する制御手段40とを備える。
【0027】
釜本体10は、半球型であり、支持軸を介して箱体に回動可能に支持され、回転ハンドルで傾倒回転することが可能である。大量調理、例えば容量350L(リッター)の場合、調理物がレベルL1まで充填され、即ち、外側ヒーター30の上端より高い位置まで充填される。少量調理、例えば容量150L(リッター)以下の場合、調理物がレベルL2まで充填され、即ち、内側ヒーター20の上端付近の位置まで充填される。なお、釜本体10の容量は、これに限定されるものではない。
【0028】
内側ヒーター20は、釜本体の下面の中央部に配置された複数枚のプレートヒーターからなる。プレートヒーターは、比較的に大きな面加熱に最適し、例えば発熱線を耐熱絶縁のパネル部材に埋設して、釜本体の下面に合った曲面を有する略三角形の板状に形成されている。各プレートヒーターには、2つの接続端子を有する。
【0029】
この例では、図4に示すように、内側ヒーター20は、3つのブロックに分割され、各ブロックがデルタ結線された3つのプレートヒーター(A1,A4,A7)、(A2,A5,A8)、(A3,A6,A9)からなり、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置されている。ここで、3つのプレートヒーター(A1,A4,A7)からなるブロックのプレートヒーターA1とA4の間に他のブロックのプレートヒーターA2とA3が配置され、A4とA7の間に他のブロックのプレートヒーターA5とA6が配置され、A7とA1の間に他のブロックのプレートヒーターA8とA9が配置されており、3つのブロックに等間隔に配置される。プレートヒーター(A2,A5,A8)からなるブロック、およびプレートヒーター(A3,A6,A9)からなるブロックも同様に他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置される。また、各プレートヒーターの定格出力を、例えば3.2kWとする場合、内側ヒーター20全体が28.8kWとなる。なお、各プレートヒーターには、ヒーターを保護するために温度検出手段としての温度検出用バイメタルTA1〜TA9が設けられている(図5参照)。
【0030】
外側ヒーター30は、内側ヒーター20の外周にリング状に配置された複数枚のプレートヒーターからなる。プレートヒーターは、比較的に大きな面加熱に最適し、例えば発熱線を耐熱絶縁のパネル部材に埋設して、釜本体の下面に合った曲面を有する略台形の板状に形成されている。各パネルヒーターには、2つの接続端子を有する。
【0031】
この例では、図4に示すように、外側ヒーター30は、3つのブロックに分割され、各ブロックがデルタ結線された3つのプレートヒーター(B1,B4,B7)、(B2,B5,B8)、(B3,B6,B9)からなり、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置されている。ここで、3つのプレートヒーター(B1,B4,B7)からなるブロックのプレートヒーターB1とB4の間に他のブロックのプレートヒーターB2とB3が配置され、B4とB7の間に他のブロックのプレートヒーターB5とB6が配置され、B7とB1の間に他のブロックのプレートヒーターB8とB9が配置されており、3つのブロックに等間隔に配置される。プレートヒーター(B2,B5,B8)からなるブロック、およびプレートヒーター(B3,B6,B9)からなるブロックも同様に他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置される。また、各プレートヒーターの定格出力を、例えば1.9kWとする場合、外側ヒーター30全体が17.1kWとなる。外側ヒーター30と内側ヒーター20の定格出力の比例は、3:5程度が望ましい。なお、各プレートヒーターには、ヒーターを保護するために温度検出手段としての温度検出用バイメタルTB1〜TB9が設けられている(図5参照)。
【0032】
制御手段40は、内側ヒーター20と外側ヒーター30を制御するものである。図5は、電気回転釜100の制御回路を示す概略図である。図5に示すように、制御手段40は、ブレーカー42と、パワーコントローラ43a,43bと、外部ボリューム44a,44bと、温度調節器45と、温度検出手段46(46a,46b)と、マグネットスイッチM1〜M6と、ソリッドステートコンダクターS1〜S6と備える。ここで、パワーコントローラ43a,43bと外部ボリューム44a,44bは出力調整手段を構成する。
【0033】
また、図5に示すように、電気回転釜100の制御系において、電源41からブレーカー42を介して電力を供給する。マグネットスイッチM1〜M6と、ソリッドステートコンダクターS1〜S6で内側ヒーター20と外側ヒーター30を制御するようになっている。この場合、内側ヒーター20と外側ヒーター30に対して、それぞれ3つの制御系を構成している。
【0034】
パワーコントローラ43a,43bは、内側ヒーター20と外側ヒーター30の出力をコントロールするものであり、外部ボリューム44a,44bを介して内側ヒーター20と外側ヒーター30の出力(0〜100%)を調整することができ、内側ヒーター20と外側ヒーター30の加熱をオンまたはオフにすることができる。図5に示すように、パワーコントローラ43aは内側ヒーター20を制御するためのソリッドステートコンダクターS1〜S3に接続され、パワーコントローラ43bは外側ヒーター30を制御するためのソリッドステートコンダクターS4〜S6に接続されている。これにより、調理量または調理内容によって加熱具合を調整することが可能となる。例えば、大量調理の場合、内側ヒーター20と外側ヒーター30で同時に加熱する。また、少量調理の場合、内側ヒーター20のみで加熱する。このように、2段階切り替えにより調理物が入れている部分のみの加熱ができ、効率的な調理が可能となる。
【0035】
なお、パワーコントローラ43a,43bは、炊飯や麺類のゆで上げ等の調理を行う際に、内側ヒーター20と外側ヒーター30の出力に強弱を付け、または外側ヒーター30の通電を断続的にオン/オフするように制御する機能、即ち「対流加熱」機能を有する。これにより、釜内の調理物に対流が起き、調理の仕上がり効果を向上することができる。
【0036】
温度調節器45は、調理温度を設定する機能と異常温度を検出する機能を有するものである。異常温度を検出する機能は、例えば、釜本体10に配置された温度センサ(図示せず)により加熱温度が予め設定された260℃になったことを検出すると、警報を出力するように設計される。
【0037】
温度検出手段46は、内側ヒーター20に設けられた温度検出手段46aと外側ヒーター30に設けられた温度検出手段46bとからなる。温度検出手段46aは、内側ヒーター20の各プレートヒーターに設けられたバイメタルTA1〜TA9から構成され、温度検出手段46bは、外側ヒーター30の各プレートヒーターに設けられたバイメタルTB1〜TB9から構成される。バイメタルTA1,TA4,TA7からの検出信号はマグネットスイッチM1に入力される。バイメタルTA2,TA5,TA8からの検出信号はマグネットスイッチM2に入力される。バイメタルTA3,TA6,TA9からの検出信号はマグネットスイッチM3に入力される。また、バイメタルTB1,TB4,TB7からの検出信号はマグネットスイッチM4に入力される。バイメタルTB2,TB5,TB8からの検出信号はマグネットスイッチM5に入力される。バイメタルTB3,TB6,TB9からの検出信号はマグネットスイッチM6に入力される。マグネットスイッチM1〜M6のいずれかに、検出信号が入力される場合、即ちプレートヒーターが所定温度(例えば、400℃)を超え、異常になった場合、該プレートヒーターが所在するブロック単位でヒーターの通電を停止するようになされる。
【0038】
ソリッドステートコンダクターS1は、接続端子U2,V2,W2を介してデルタ結線されたプレートヒーターA1,A4,A7に接続されている。ソリッドステートコンダクターS2は、接続端子U4,V4,W4を介してデルタ結線されたプレートヒーターA2,A5,A8に接続されている。ソリッドステートコンダクターS3は、接続端子U5,V5,W5を介してデルタ結線されたプレートヒーターA3,A6,A9に接続されている。ソリッドステートコンダクターS4は、接続端子U1,V1,W1を介してデルタ結線されたプレートヒーターB1,B4,B7に接続されている。ソリッドステートコンダクターS5は、接続端子U3,V3,W3を介してデルタ結線されたプレートヒーターB2,B5,B8に接続されている。ソリッドステートコンダクターS6は、接続端子U5,V5,W5を介してデルタ結線されたプレートヒーターB3,B6,B9に接続されている。
【0039】
図6は、電気回転釜100のヒーター通電状態の一例を示す図である。図6において、1つのプレートヒーターが所定温度を超え、異常になった場合、該プレートヒーターが所在するブロック単位でヒーターの通電が停止される状態を示している。図6に示すように、同一ブロックにあるプレートヒーターA3,A6,A9のうちいずれかが異常になった場合、この3つのプレートヒーターA3,A6,A9の通電が停止される。図中において、非加熱状態になったプレートヒーターA3,A6,A9を破線で示している。この場合、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に交互に配置されているため、他の2つのブロックのプレートヒーター(A1,A4,A7)、(A2,A5,A8)を用いて加熱することができる。これにより、一系統が故障して、即ち1つのブロックが停止しても、故障による非加熱部分が分散しているので、調理作業への影響が少なく、継続して調理作業を行うことが可能である。
【0040】
このように本実施の形態においては、電気回転釜100は、調理物を収容する釜本体10と、釜本体の下面の中央部に配置された内側ヒーター20と、内側ヒーターの外周にリング状に配置された外側ヒーター30と、内側ヒーターと外側ヒーター同時に、または内側ヒーターのみを通電するように制御する制御手段40とを備える。
【0041】
これにより、釜全体を均一に加熱することができると共に、調理量の増減(大量調理、少量調理)に対応することができ、調理する際に、食材を入れている部分のみの加熱ができ、省エネルギー、効率的な調理ができる。そのため、従来の食材が入っていない部分も加熱されてしまい、釜の内表面に焦げ付きが発生する問題を解決することができる。
【0042】
また、内側ヒーター20および外側ヒーター30は、それぞれ3つのブロックに分割され、各ブロックがデルタ結線された3つのプレートヒーターからなり、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置されることで、計6ブロックに分割して制御することができ、制御系トラブルのリスクを低減することができる。仮に、一系統が故障しても、故障による非加熱部分が分散しているので、調理作業への影響を最小限に抑え、調理を中断することなく、継続して調理作業を行うことが可能である。
【0043】
また、制御手段40は、過熱検出手段46の検出信号に基づいてプレートヒーターが所在するブロック単位でヒーターの通電を停止するように制御することで、安全性を向上すると共に、調理作業への影響を最小限に抑え、調理を中断することなく、継続して調理作業を行うことが可能である。
【0044】
また、制御手段40には、内側ヒーター20の出力および外側ヒーター30の出力をそれぞれ調整する出力調整手段を有することで、内側ヒーター20の出力と外側ヒーター30の加熱に強弱を付けられ、釜内の被加熱物に対流が起き、調理の仕上がりに効果を発揮することができる。
【0045】
さらに、ヒーターを分割することにより、ヒーターの製作精度を向上することができ、釜との密着性がよくなり、均一に加熱することが実現できる。また、ヒーターの交換、修理作業が容易にできる。
【0046】
なお、上述実施の形態においては、内側ヒーター20および外側ヒーター30は3つのブロックに分割されたものについて説明したが、これに限定されるものではない。釜本体10の大きさによって、2つまたは4つ以上のブロックに分割してもよい。
【0047】
また、上述実施の形態においては、内側ヒーター20の各プレートヒーターの定格出力が3.2kWで、全体が28.8kWとなり、また、外側ヒーター30の各プレートヒーターの定格出力が1.9kWで、全体が17.1kWとなる例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0048】
また、上述実施の形態において、各ブロックの3つのプレートヒーターは、スター結線で接続されるようにしてもよい。
【0049】
また、上述実施の形態においては、調理物を収容する回動可能な釜本体10を有する電気回転釜100について説明したが、これに限定されるものではない。他の電気釜にも本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明は、ホテル、病院、学校給食など大量の調理を行う厨房で使用されるヒーター加熱方式の電気回転釜に対して、調理量の増減に応じて加熱範囲を変更し、効率的な調理を行う目的に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
10 釜本体
20 内側ヒーター
30 外側ヒーター
40 制御手段
41 電源
42 ブレーカー
43a,43b パワーコントローラ
44a,44b 外部ボリューム
45 温度調節器
46(46a,46b) 温度検出手段
A1〜A9,B1〜B9 プレートヒーター
M1〜M6 マグネットスイッチ
S1〜S6 ソリッドステートコンダクター
TA1〜TA9,TB1〜TB9 バイメタル
100 電気回転釜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸を介して箱体に回動可能に支持され、調理物を収容する釜本体と、
前記釜本体の下面の中央部に配置された内側ヒーターと、
前記内側ヒーターの外周にリング状に配置された外側ヒーターと、
前記内側ヒーターと外側ヒーター同時に、または内側ヒーターのみを通電するように制御する制御手段とを備えることを特徴とする電気回転釜。
【請求項2】
前記内側ヒーターは、3つのブロックに分割され、各ブロックがデルタ結線またはスター結線された3つのプレートヒーターからなり、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置され、
前記外側ヒーターは、3つのブロックに分割され、各ブロックがデルタ結線またはスター結線された3つのプレートヒーターからなり、各ブロックのプレートヒーターは他のブロックのプレートヒーターと周方向に等間隔で交互に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電気回転釜。
【請求項3】
前記プレートヒーターの温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段の検出信号に基づいて前記プレートヒーターが所定温度を超えた場合、前記プレートヒーターが所在するブロック単位でヒーターの通電を停止するように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の電気回転釜。
【請求項4】
前記制御手段には、前記内側ヒーターの出力および外側ヒーターの出力をそれぞれ調整する出力調整手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電気回転釜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−19714(P2011−19714A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167039(P2009−167039)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【特許番号】特許第4620164号(P4620164)
【特許公報発行日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 : 一般社団法人日本エレクトロヒートセンター 刊行物名 : エレクトロヒート・第30巻・第166号 発行年月日: 平成21年7月15日
【出願人】(000231888)日本調理機株式会社 (14)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】