説明

電気機械の制御方法

【課題】電気機械の効率を向上させること。
【解決手段】電気機械を制御する方法が提供され、本方法は、電気機械の相巻線を供給電圧によって励起する段階と、相巻線の電流が閾値を上回ったときに相巻線をフリーホイールする段階と、を含む。次いで、閾値は、供給電圧及び/又は電気機械の速度のうちの少なくとも1つの変化に応答して調整される。加えて、本方法を実施する制御システム、並びに制御システムを備えた電気機械を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械は通常、相巻線の励起を制御する制御システムにより駆動される。制御システムは、出力を最大限に且つトルクリップルを最小限にするために、電気機械の速度の変化に応答してターンオン角度及びターンオフ角度を調整することができる。しかしながら、一般的に、電気機械の効率に対してあまり注意が払われていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様において、本発明は、電気機械を制御する方法を提供し、本方法は、電気機械の相巻線を供給電圧によって励起する段階と、相巻線の電流を検知する段階と、相巻線の電流が閾値を上回ったときに相巻線をフリーホイールする段階と、供給電圧及び/又は電気機械の速度のうちの少なくとも1つの変化に応答して閾値を調整する段階と、を含む。
【0004】
供給電圧又は電気機械の速度に伴って変化する過電流閾値を利用することによって、電気機械の効率を改善することができる。詳細には、過電流閾値は、相電流波形内の調波が低減されるように調整することができる。加えて、供給電圧及び/又は速度と共に変化する過電流閾値を利用することによって、電気機械の起動トルクを低減することができる。これは、電気機械の機械的構成要素に加わる応力を低減させ、従って、電気機械の耐用年数を延ばすことができる。
【0005】
本方法は、供給電圧の減少及び電気機械の速度の増加のうちの少なくとも1つに応答して閾値を増大させる段階を含む。相巻線の電流が上昇する変化率は、とりわけ、供給電圧に依存する。供給電圧の減少に応答して過電流閾値を増大させることにより、供給電圧の変化に関係なく、特定の加速プロファイル及び/又は電力プロファイルを維持することができる。速度の増加に応答して過電流閾値を増大させることにより、電気機械のトルクは、始動中に漸次的に増大することができる。加えて、永久磁石電気機械において、相巻線に置いて誘起される逆起電力は速度と共に増大する。速度の増加に応答して過電流閾値を増大させることにより、異なるロータ速度の範囲にわたって特定の電力プロファイルを達成することができる。
【0006】
相巻線は、フリーホイール期間の間フリーホイールすることができ、その後、再度励起される。フリーホイール期間は、各電気的ハーフサイクルにわたって固定することができる。これにより電気機械の制御が簡素化される。必要な場合、フリーホイール期間は、各電気的ハーフサイクルの終わりにおいて、例えば供給電圧又は速度の変化に応じて、調整することができる。あるいは、制御を更に簡素化するために、フリーホイール期間は、特定の速度範囲にわたって、例えば、初期加速中に固定することができる。
【0007】
本方法は、各電気的ハーフサイクルにおいてターンオン角とターンオフ角との間に定められる期間にわたって相巻線を順次的に励起しフリーホイールする段階を含むことができる。次いで、本方法は、供給電圧及び/又は電気機械の速度の変化に応答してターンオン角及びターンオフ角のうちの少なくとも1つを調整する段階を含む。過電流閾値、ターンオン角、及び/又はターンオフ角を調整することによって、異なるロータ速度の範囲にわたって特定の電力プロファイルを達成することができる。詳細には、電圧及び/又は速度範囲にわたって一定の入力又は出力パワーを達成することができる。その上、過電流閾値、ターンオン角、及び/又はターンオフ角は、電気機械の効率が電力プロファイルにわたって最適化されるように調整することができる。
【0008】
本方法は、各電気的ハーフサイクルにおいて通電期間にわたって相巻線を順次的に励起しフリーホイールする段階と、供給電圧及び/又は電気機械の速度の変化に応答して通電期間の長さを調整する段階と、を含む。供給電圧及び/又は速度の変化に応答して過電流閾値及び/又は通電期間の長さの両方を調整することにより、電圧及び/又は速度のある範囲にわたる電気機械の効率の改善が達成される。効率の更なる改善は、相巻線が転流されるポイントを更に調整することによって可能にすることができる。従って、本方法は更に、ロータ位置信号のエッジに対して相巻線を転流する段階と、電気機械の供給電圧及び/又は速度の変化に応答して、各転流とロータ位置信号の各エッジとの間の期間を調整する段階を含むことができる。
【0009】
本方法は、フリーホイール期間にわたって相巻線をフリーホイールする段階と、電気機械の供給電圧及び/又は速度の変化に応答して、フリーホイール期間を調整する段階とを含むことができる。従って、電気機械の効率の更なる改善を実現することができる。
【0010】
本方法は、デューティサイクルを有するパルス信号を生成する段階と、パルス信号を平滑化して閾値電圧を生成する段階と、電気機械の構成要素にわたる電圧を検知する段階と、検知電圧を閾値電圧と比較する段階と、検知電圧が閾値電圧を上回ったときに相巻線をフリーホイールする段階と、電気機械の供給電圧及び/又は速度の変化に応答してデューティサイクルを調整する段階と、を含むことができる。これは、供給電圧及び/又は速度の変化に応答して調整できる過電流閾値を生成する比較的簡単な手法を示す。詳細には、過電流閾値は、デジタルアナログコンバータを必要とすることなく生成することができる。従って、比較的簡素でひいては安価な回路及び/又はマイクロコントローラを用いて本方法を実施することができる。
【0011】
本方法は、複数の電圧及び/又は速度の各々についてのデューティサイクルを含むルックアップテーブルを格納する段階を含むことができる。次いで、本方法は、電気機械の供給電圧及び/又は速度に対応するデューティサイクルをルックアップテーブルから選択し、該選択したデューティサイクルを用いてパルス信号を生成する段階を含むことができる。ルックアップテーブルを用いることにより、電気機械の制御が簡素化される。結果として、比較的簡素でひいては安価なマイクロコントローラを用いることができる。
【0012】
第2の態様において、本発明は、上記段落の何れかにおいて説明した方法を実施する、電気機械用制御システムを提供する。
【0013】
制御システムは、好ましくは、相巻線に結合されたインバータと、相巻線の電流を検知する電流センサと、インバータを制御する1つ又はそれ以上の制御信号を生成するコントローラとを備える。インバータは、コントローラからの第1の制御信号に応答して供給電圧を用いて相巻線を励起し、コントローラからの第2の制御信号に応答して巻線をフリーホイールする。次いで、コントローラは、第1の制御信号を生成し、その後、相巻線の電流が閾値を上回ったときに第2の制御信号を生成する。
【0014】
電流センサは、好ましくは、相巻線の電流を感知する電圧を有する信号を出力し、制御システムは、供給電圧及び電気機械の速度のうちの少なくとも1つに依存する電圧を有する信号を生成する閾値発生器を備える。次いで、コントローラは、電流センサによって出力された信号の電圧が、閾値発生器によって出力される信号の電圧を上回ったときに、第2の制御信号を生成する。より好ましくは、閾値発生器は、PWMモジュール及び平滑フィルタを含み、PWMモジュールのデューティサイクルが供給電圧及び電気機械の速度のうちの少なくとも1つに依存する。PWMモジュールは、供給電圧及び/又は速度の変化に応答して調整できる(すなわち、デューティサイクルを用いて)電圧を有する信号を生成するコスト効果のある手段を提供する。
【0015】
第3の態様において、本発明は、上述の段落の何れかによる、永久磁石モータ及び制御システムを備えたモータシステムを提供する。
【0016】
本発明を十分に理解できるようにするために、本発明の実施形態を例証として添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるモータシステムのブロック図である。
【図2】モータシステムの概略図である。
【図3】モータシステムのモータの断面図である。
【図4】モータシステムのコントローラによって送出される制御信号に応答したインバータの許容状態の詳細図である。
【図5】モータシステムの電流制限器の概略図である。
【図6】加速度モードで動作しているときのモータシステムの種々の波形を示す図である。
【図7】定常モードで動作しているときのモータシステムの種々の波形を示す図である。
【図8】比較的高い過電流閾値を利用したときのモータシステムの種々の波形を示す図である。
【図9】比較的低い過電流閾値を利用したときのモータシステムの種々の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図3のモータシステム1は、AC電源2によって給電され、ブラシレスモータ3及び制御システム4を含む。
【0019】
モータ3は、ステータ6に対して回転する4極永久磁石ロータ5を備える。ステータ6は、4つのステータ極を定めるC形コアのペアを含む。コアの周りに導線が巻かれ、共に結合されて単一の相巻線を形成する。
【0020】
制御システム4は、整流器8、DCリンクフィルタ9、インバータ10、ゲートドライバモジュール11、電流センサ12、ロータ位置センサ13、及びコントローラ14を備える。
【0021】
整流器8は、4つのダイオードD1〜D4の全波ブリッジを含み、AC電源2の出力を整流してDC電圧を提供する。
【0022】
DCリンクフィルタ9は、キャパシタC1を含み、インバータ10のスイッチングから生じる比較的高周波のリップルを平滑化する。必要であれば、DCリンクフィルタ9は、基本周波数の整流されたDC電圧を更に平滑化することができる。
【0023】
インバータ10は、DCリンク電圧を相巻線7に結合する4つのパワースイッチQ1〜Q4の全波ブリッジを含む。スイッチQ1〜Q4の各々は、フリーホイールダイオードを含み、インバータのスイッチング中に発生する電圧スパイクからスイッチを保護する。
【0024】
ゲートドライバモジュール11は、コントローラ14から受け取った制御信号に応答して、スイッチQ1〜Q4の開閉を駆動する。
【0025】
電流センサ12は、シャント抵抗R1、R2のペアを含み、各抵抗はインバータ10の下側アーム上に位置付けられる。各抵抗R1、R2の両端の電圧は、電流検知信号I_SENSE_1及びI_SENSE_2としてコントローラ14に出力される。第1の電流検知信号I_SENSE_1は、インバータ10が右から左に駆動されたとき(以下で詳細に説明するように)の相巻線7の電流の尺度を提供する。第2の電流検知信号I_SENSE_2は、インバータ10が左から右に駆動されたときの相巻線7の電流の尺度を提供する。抵抗R1、R2をインバータ10の下側アーム上に位置付ける場合、相巻線7の電流はフリーホイール(同様に、以下でより詳細に説明される)中に連続して検知される。
【0026】
ロータ位置センサ13は、デジタル信号HALLを出力するホール効果センサを含み、HALLは、センサ13を通過する磁束の方向に応じて論理的high又はlowである。センサ13をロータ5に隣接して位置付けることにより、HALL信号は、ロータ5の角度位置の尺度を提供する。より詳細には、HALL信号の各エッジは、ロータ5の極性の変化を示している。回転時には、永久磁石ロータ5が相巻線7において逆起電力(バックEMF)を誘起する。この結果として、HALL信号の各エッジは更に、相巻線7の逆起電力の極性を示す。
【0027】
コントローラ14は、プロセッサ15を有するマイクロコントローラ、メモリデバイス16、複数の周辺装置17(例えば、コンパレータ、タイマー、その他)、及び複数の入出力ピン18を含む。好適な候補は、Microchip Technology IncによるPIC16F690マイクロコントローラである。メモリデバイス16は、プロセッサ15によって実行するソフトウェア命令を格納する。メモリデバイス16はまた、モータシステム1の作動中にプロセッサ15によりインデックスが付与された複数のルックアップテーブルを格納する。
【0028】
コントローラ14は、モータシステム1の作動を制御する役割を担う。4つの入力信号:I_SENSE_1、I_SENSE_2、HALL、及びDC_SMOOTHに応答して、コントローラ14は、3つの制御信号:DIR1、DIR2、及びFW#を出力する。制御信号は、ゲートドライバモジュール11に出力され、これに応答してインバータ10のスイッチQ1〜Q4の開閉を駆動する。
【0029】
I_SENSE_1及びI_SENSE_2は、電流センサ12により出力される信号であり、HALLは、ロータ位置センサ13により出力される信号である。DC_SMOOTHは、分圧器R3、R4及び平滑キャパシタC2によって得られる、DCリンク電圧の平滑尺度である。
【0030】
DIR1及びDIR2は、インバータ10及びひいては相巻線7を通過する電流方向を制御する。DIR1が論理的highにプルされ、DIR2が論理的lowにプルされると、ゲートドライバモジュール11は、スイッチQ1及びQ4を閉止してスイッチQ2及びQ3を開放し、これにより相巻線7を通って左から右に電流を駆動する。反対に、DIR2が論理的highにプルされ、DIR1が論理的lowにプルされると、ゲートドライバモジュール11は、スイッチQ2及びQ3を閉止してスイッチQ1及びQ4を開放し、これにより相巻線7を通って右から左に電流を駆動する。従って、相巻線7の電流は、DIR1とDIR2を反対にすることによって転流される。DIR1及びDIR2の両方が論理的lowにプルされた場合、ゲートドライバモジュール11は全てのスイッチQ1〜Q4を開放する。
【0031】
FW#は、DCリンク電圧から相巻線7を切断するのに使用され、相巻線7の電流がインバータ10のlow側ループの周りをフリーホイールすることを可能にする。従って、論理的lowにプルされたFW#信号に応答して、ゲートドライバモジュール11は、high側スイッチQ1、Q2を開放させる。その結果、電流は、DIR1及びDIR2によって定められる方向でインバータ10のlow側ループの周りをフリーホイールする。
【0032】
図4は、コントローラ14の制御信号に応答して、スイッチQ1〜Q4の許容状態を要約している。以下において、用語「セット」及び「クリア」は、信号がそれぞれ論理的high及び論理的lowにプルされたことを示すのに用いる。
【0033】
コントローラ14は、電流制限器20として構成された幾つかの周辺装置17を含む。電流制限器20は、相巻線7の電流を監視し、電流が閾値を超えた場合に過電流信号を生成する役割を担う。
【0034】
図5に示すように、電流制限器20は、PWMモジュール21、平滑フィルタ22、マルチプレクサ23、及びコンパレータ24を含む。PWMモジュール21、マルチプレクサ23、及びコンパレータ24は、コントローラ14の周辺装置17の一部を形成する。他方、平滑フィルタ22は、コントローラ14の外部に位置付けられる。
【0035】
PWMモジュール21及び平滑フィルタ22は、全体として閾値発生器25とみなすことができ、これは、特定の電圧を有する閾値信号を生成する。PWMモジュール21は、パルス電圧信号を発生し、コントローラ14によって出力される。平滑フィルタ22は、パルス電圧信号を平滑して閾値信号を生成し、次いで、これがコントローラ14に入力される。PWMモジュール21は、一定の時間期間、及びプロセッサ15によりセットされる可変デューティサイクルを利用する。従って、閾値信号の電圧は、プロセッサ15によってセットされたデューティサイクルによって決まる。
【0036】
マルチプレクサ23は、2つの電流検知信号I_SENSE_1及びI_SENSE_2のうちの1つを選択するための2つの入力を有する。マルチプレクサ23により行われる選択は、相巻線7を通過する電流の方向に応答して、プロセッサ15により制御される。その結果として、DIR1がセットされると、マルチプレクサ23はI_SENSE_1を選択し、DIR2がセットされると、マルチプレクサ23はI_SENSE_2を選択する。マルチプレクサ23の出力は、コンパレータ24に供給される。
【0037】
コンパレータ24は、電流検知信号I_SENSE_1又はI_SENSE_2の電圧を閾値信号の電圧と比較する。電流検知信号の電圧が閾値信号の電圧を上回ると、コンパレータ24は、論理的lowにプルされた過電流信号を出力する。そうでない場合、コンパレータ24は、論理的highにプルされた過電流信号を出力する。
【0038】
従って、電流制限器20は、電流検知信号の電圧が閾値信号の電圧を上回るときに、過電流信号を切り替える。電流検知信号の電圧は、相巻線7の電流に正比例するので、電流制限器20は、相巻線7の電流が過電流閾値を上回るときに過電流信号の切り替えを行う。過電流閾値は、PWMモジュール21のデューティサイクルによって定められ、該デューティサイクルはコントローラ14のプロセッサ15によってセットされる。従って、以下で説明するように、コントローラ14は、電源2の電圧及び/又はモータ3の速度に応じて異なる過電流閾値を利用することができる。
【0039】
コントローラ14は、ロータ5の速度に応じて2つのモードのうちの一方で動作する。所定の速度閾値を下回る速度では、コントローラ14は、加速モードで動作する。速度閾値又はそれを上回る速度では、コントローラ14は定常モードで動作する。ロータ5の速度は、HALL信号の2つの連続するエッジ間の期間T_HALLから求められる。この時間期間は、以下ではHALL期間と呼ぶことにする。
【0040】
(加速モード)
速度閾値を下回る速度では、コントローラ14は、HALL信号のエッジと同期して相巻線7を転流する。各HALLエッジは、相巻線7における逆起電力の極性の変化を表している。その結果として、コントローラ14は、逆起電力のゼロ交差と同期して相巻線7を転流する。
【0041】
転流は、相巻線7を通過する電流の方向が反転するようにDIR1及びDIR2の反転(すなわち、DIR1のクリアとDIR2のセット、或いは、DIR2のクリアとDIR1のセット)を伴う。相巻線7は、転流点にてフリーホイールすることができる。従って、DIR1及びDIR2の反転に加えて、コントローラ14は、インバータ10が駆動状態に確実に戻るようにFW#をセットする。
【0042】
相巻線7の電流が過電流閾値に達すると、電流制限器20は過電流信号をクリアする。過電流信号の変化に応答して、コントローラ14は、FW#をクリアすることによって相巻線7をフリーホイールする。フリーホイールは、フリーホイール期間T_FWの間継続し、その間、相巻線7の電流は、過電流閾値を下回るレベルまで減衰すると予想される。相巻線7の電流が継続して過電流閾値を上回る(すなわち、過電流信号が継続してクリアになった場合)場合、コントローラ14は再度、フリーホイール期間T_FWの間相巻線7をフリーホイールする。他方、相巻線7の電流が過電流閾値を下回る(すなわち、過電流信号がセットされた)場合、コントローラ14は、FW#をセットすることによって相巻線7を励起する。その結果として、コントローラ14は、相巻線7を順次的に励起及びフリーホイールする。
【0043】
図6は、加速モードで動作しているときの数HALL期間にわたるHALL信号、制御信号、及び相電流の波形を示す。
【0044】
コントローラ14は、固定フリーホイール期間T_FWを利用することができる。しかしながら、固定フリーホイール期間では、対応する電気角度はロータ速度と共に増大する。その結果として、電流及びひいてはパワーが相巻線7に駆動される残りの電気角度は減少する。加えて、ロータ速度が増大するにつれて相巻線7に誘起される逆起電力が増大する。結果として、相電流は、フリーホイール中により迅速な変化率で減衰する。従って、コントローラ14は、固定のフリーホイール期間を利用するのではなく、代わりにロータ速度に伴って変化するフリーホイール期間を利用する。より詳細には、コントローラ14は、増大するロータ速度に伴って減少するフリーホイール期間を利用する。加えて、以下で説明する理由のため、コントローラ14は、電源2の電圧に伴って変化するフリーホイール期間を利用する。従って、コントローラ14は、複数の供給電圧及びロータ速度の各々に対するフリーホイール期間T_FWを格納するフリーホイールルックアップテーブルを含む。次いで、コントローラ14は、電源2の現在の電圧(DC_SMOOTHから求められる)及びロータ5の現在速度(T_HALLから求められる)を用いてフリーホイールルックアップテーブルのインデックスを作成することにより、フリーホイール期間を定期的に更新する。
【0045】
電流制限器20によって利用される過電流閾値は、固定されず、代わりに電源2の電圧及びロータ5の速度の変化に応じて変化する。これは、DC_SMOOTH及びT_HALLの変化に応答してPWMモジュール21のデューティサイクルを変化させることにより達成される。従って、コントローラ14は、複数の供給電圧及びロータ速度の各々に対するデューティサイクルを格納するデューティサイクルルックアップテーブルを含む。次いで、コントローラ14は、電源2の現在の電圧(DC_SMOOTHから求められる)及び現在ロータ速度(T_HALLから求められる)を用いてデューティサイクルルックアップテーブルのインデックスを作成することにより、PWMモジュール21のデューティサイクルを定期的に更新する。
【0046】
初期始動及び加速中のモータの起動トルクは、負荷により要求されるトルクよりも何桁も大きい可能性がある。その結果、正味加速トルクは、モータの機械的構成要素に相当な応力を及ぼす。従って、コントローラ14は、ロータ速度と共に増大する過電流閾値を利用する。その結果として、起動トルク及び正味加速トルクが低減される。次いで、これによりモータ3の機械的構成要素に加わる応力が低減され、従って、モータ3の耐用年数を延ばすことができる。
【0047】
相巻線7において電流が上昇する変化率は、とりわけ、電源2の電圧に依存する。その結果として、供給電圧に関係なく同じ過電流閾値が使用される場合、モータシステム1の入力及び出力パワーは、供給電圧に応じて異なる可能性がある。その結果、このことは、モータシステム1の加速に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、コントローラ14は、減少する供給電圧に伴って増大する過電流閾値を利用する。結果として、電源2の電圧に関係なく同じ又は類似の加速プロファイルを達成することができる。
【0048】
パワースイッチQ1〜Q4が通電しなければならない電流の大きさ並びに比較的高いスイッチング周波数に起因して、パワースイッチQ1〜Q4は、動作中に極めて高温になる可能性がある。熱損傷を防ぐために、モータ3は、モータシステム1を通って冷却空気を吸い込んでパワースイッチQ1〜Q4を冷却するようにする、ロータに装着されたファン又はインペラを含むことができる。その結果、これによりパワースイッチQ1〜Q4がそうでない場合に実施できるであろう電流よりも高い電流を通電できるようになる。初期始動及び加速中、ロータ速度は比較的低く、従って、極めて少ない冷却空気がモータシステム1を通じて吸い込まれる。ロータ速度と共に増大する過電流閾値を利用することによって、パワースイッチQ1〜Q4により通電される電流を低いロータ速度にて比較的低く保持することができる。これにより、冷却空気がほとんど存在しないときにパワースイッチQ1〜Q4が過熱するのが阻止される。
【0049】
(定常モード)
速度閾値又はこれを上回る速度では、コントローラ14は、HALLエッジよりも前で、従って、逆起電力のゼロ交差よりも前で転流している。この場合も同様に、転流は、DIR1及びDIR2の反転並びにFW#のセットを伴う。
【0050】
コントローラ14は、進み期間T_ADVだけ各HALLエッジよりも前で相巻線7を転流する。特定のHALLエッジよりも前に相巻線7を転流するために、コントローラ14は、先行するHALLエッジに応答して作用する。先行するHALLエッジに応答して、コントローラ14は、進み期間T_ADVをHALL期間T_HALLから差し引き、転流期間T_COMを得る。すなわち、
T_COM=T_HALL−T_ADV
である。
【0051】
次いで、コントローラ14は、先行するHALLエッジの後の時間T_COMにおいて相巻線7を転流する。その結果として、コントローラ14は、後続のHALLエッジの前に相巻線7を転流する。
【0052】
加速モードと同様にして、コントローラ14は、相巻線7の電流が過電流閾値を上回るときは常に、相巻線7をフリーホイールする。フリーホイールは、フリーホイール期間T_FWの間継続し、その間、相巻線7の電流は、過電流閾値を下回るレベルまで減衰すると予想される。相巻線7の電流が継続して過電流閾値を上回る場合、コントローラ14は再度、相巻線7をフリーホイールする。そうでない場合、コントローラ14は、相巻線7を励起する。その結果として、加速モードと同様にして、コントローラ14は、相巻線7を順次的に励起及びフリーホイールする。
【0053】
加速モードで動作しているときには、コントローラ14は、各電気的ハーフサイクルの全長にわたって相巻線7を順次的に励起及びフリーホイールする。対照的に、定常状態で動作しているときには、コントローラ14は、通常は各電気的ハーフサイクルの一部だけに及ぶ通電期間T_CDにわたって相巻線7を励起する。通電期間の終わりにおいて、コントローラ14は、FW#をクリアすることによって巻線をフリーホイールする。次いで、フリーホイールは、コントローラ14がモータ3を転流するまで制限なく継続する。
【0054】
図7は、定常モードで動作しているときの数HALL期間にわたるHALL信号、制御信号、及び相電流の波形を示す。
【0055】
コントローラ14は、電源2の電圧及びロータ5の速度の変化に応答して、進み期間T_ADV、通電期間T_CD、フリーホイール期間T_FW、及び過電流閾値(すなわち、PWMモジュール21のデューティサイクル)を調整する。従って、コントローラ14は、フリーホイール及びデューティサイクルルックアップテーブルに加えて、進みルックアップテーブル及び通電ルックアップテーブルを格納する。進みルックアップテーブルは、複数の電源電圧及びロータ速度の各々に対する進み期間T_ADVを格納する。同様に、通電ルックアップテーブルは、複数の電源電圧及びロータ速度の各々に対する通電期間T_CDを格納する。
【0056】
コントローラ14は、電源2の電圧(DC_SMOOTHから求められる)及びロータ速度(T_HALLから求められる)の変化に応答して、進み期間、通電期間、フリーホイール期間、及びデューティサイクルを定期的に更新する。例えば、コントローラ14は、各HALLエッジ又はn番目のHALLエッジごとに応答して種々の制御パラメータを更新することができる。或いは、コントローラ14は、固定の時間期間後、又は電源2の電圧のゼロ交差に応答して制御パラメータを更新することができる。
【0057】
ルックアップテーブルは、各電圧及び速度ポイントにおける特定の入力又は出力パワーを達成する値を格納する。更に、この値は、各電圧及び速度ポイントにおけるモータシステム1の効率が特定の入力又は出力パワーに対して最適化されるように選ばれる。すなわち、進み期間、通電期間、フリーホイール期間、及びデューティサイクルに対する値の種々のセットが同じ所望の入力又は出力パワーをもたらすことができるということである。しかしながら、これらの値の種々のセットから、最適効率をもたらす単一のセットが選択される。
【0058】
モータシステムの効率は、相電流の波形が逆起電力の波形と同じ形状及び位相を有するときに最大になる。これは、相電流波形の調波が、比較的有用でない出力パワーの出力損失を生じることに起因する。ここで立証するように、供給電圧及びロータ速度と共に変化する過電流閾値を利用することにより、調波の少ない相電流波形が得られる。
【0059】
モータシステム1は固定の過電流閾値を利用すると仮定する。更に、過電流閾値は、比較的高く設定され、過剰電流が制御システム4の電気的構成要素に損傷を及ぼすのを防ぐことだけを目的としていると仮定する。比較的低速度で動作しているときには、相巻線7に誘起される逆起電力は比較的小さい。結果として、励起されると、電流が相巻線7に比較的迅速に上昇する。電流が比較的迅速に上昇し、過電流閾値が比較的高いので、コントローラ14は、特定の入力又は出力パワーを得るために短い通電期間を利用することだけを必要とする。図8は、数HALL期間にわたる逆起電力及び相電流の波形を示している。相電流の波形が比較的高い調波成分を有することが理解できる。
【0060】
ここで、モータシステム1がより低い過電流閾値を利用すると仮定する。モータシステム1は、同じ比較的低い速度で動作しており、従って、電流は、この場合も同様に比較的迅速に上昇する。しかしながら、過電流閾値はここでは低いので、コントローラ14は、同じ入力又は出力パワーを得るためにより長い通電期間を利用しなければならない。図9は、数HALL期間にわたる逆起電力及び相電流の波形を示している。図8に示したものと比べて、相電流の波形は、逆起電力の波形により密接に似ている。従って、相電流は、より小さな調波成分を有し、従って、モータシステム1の効率が改善される。加えて、相電流が低い閾値に制限されるので、銅損が低減され、これにより効率が更に向上する。
【0061】
過電流閾値、通電期間、進み期間、及びフリーホイール期間は全て、相電流波形の形状に影響を及ぼす。相電流波形内に最小の調波をもたらす特定値は、とりわけ、相電流が励起中に上昇し且つフリーホイール中に減衰する変化率に依存することになる。相電流が上昇する変化率は、主として、相巻線7のインダクタンス、電源2の電圧、及び相巻線7の逆起電力に依存し、該逆起電力はロータ5の速度によって決まる。この理由から、コントローラ14は、供給電圧及びロータ速度両方の変化に応答して、過電流閾値、通電期間、及び進み期間を調整する。フリーホイール中に相巻線7の電流が減衰する変化率は、主として、インダクタンス及び逆起電力に依存する。その結果として、減衰率は、ロータ速度に依存するが、供給電圧には依存しない。それでも尚、電源2の電圧は、最適効率をもたらすフリーホイール期間に影響を及ぼす可能性がある。例えば、電源2の電圧が減少すると、相電流は、励起中により緩慢な変化率で上昇することになる。これを補償するために、フリーホイール中の相電流減衰が低減されるようにより短いフリーホイール期間を利用することができる。反対に、電源2の電圧が増大する場合、通電期間にわたるインバータスイッチングの周波数を低減するようにより長いフリーホイール期間を利用することができる。その結果、スイッチング損失を低減することができる。従って、コントローラ14はまた、供給電圧及びロータ速度の変化に応答してフリーホイール期間を調整する。
【0062】
電圧及び/又はロータ速度に伴って変化する過電流閾値を利用することによって、固定の過電流閾値を利用するモータシステムに比べて、5%から10%の効率改善が認められた。
【0063】
コントローラ14は、加速モード及び定常モードの両方において動作するときに電圧及び/又はロータ速度の変化に応答して過電流閾値を調整するが、これを行う理由は、2つの動作モードによって大きく異なる。加速モードでは、コントローラ14は、起動トルクの低減、及び/又はパワースイッチQ1〜Q4の過熱防止のために過電流閾値を調整する。定常モードでは、コントローラ14は、モータシステム1の効率改善のために過電流閾値を調整している。
【0064】
上述の実施形態において、コントローラ14は、定常モードで動作しているときに、各HALLエッジよりも前で相巻線7を転流する。この理由は、ロータ速度が増大するにつれ、HALL期間が減少し、従って、相巻線インダクタンスに関連する時定数(L/R)が次第に重要になることによる。各HALLエッジよりも前で相巻線7を転流することにより、逆起電力によって供給電圧が引き上げられる。結果として、相巻線7を通る電流の方向がより迅速に反転することができる。加えて、ロータ速度が増大するにつれて、相巻線7に誘起される逆起電力も増大し、相電流が増大する変化率に影響を及ぼす。各HALLエッジよりも前で相巻線7を転流することにより、逆起電力をもたらすような相電流を引き起こすことができ、これはより緩慢な上昇を補償する一助となる。このことは、短い負トルク期間を発生させるが、これは通常、後続の正トルクのゲインによって相殺されるものよりも大きい。更に、逆起電力をもたらす相電流波形を有することは、効率の観点から理想的ではないが、特定の入力又は出力パワーを達成するために必要な場合がある。従って、コントローラ14は、関係する比較的高いロータ速度により、定常モードで動作しているときに転流を先進させる。しかしながら、モータシステム1が定常モード内で低速度で動作する場合には、必ずしも転流を先進させる必要はない場合がある。更に、モータシステム1の最適効率は、次のHALLエッジの後まで転流を遅延させることにより達成することができる。これに応じて、コントローラ14は、定常モードで動作しているときに、HALLエッジに対して転流を先進、同期、又は遅延することができる。従って、より一般的な意味では、コントローラ14は、供給電圧30及びロータ速度の変化に応答して転流期間を調整すると考えることができる。
【0065】
代替として、コントローラ14は、進み期間のルックアップテーブルを格納するのではなく、転流期間のルックアップテーブルを格納してもよい。その結果、これによりHALLエッジの前(すなわち先進)、HALLエッジ時(同期)、又はHALLエッジの後(遅延)に転流を行うことが可能になる。例えば、40krpmでのHALL期間は375μsである。よって、コントローラ14は、次のHALLエッジよりも前に相巻線7を転流させるために350μsの進み期間を格納し、又は次のHALLエッジと同期して相巻線7を転流させるために375μsの進み期間を格納し、或いは、次のHALLエッジの後まで転流を遅延させるために390μsの進み期間を格納することができる。加えて、進み期間ではなく転流期間を格納することにより、コントローラ14はもはや、転流期間T_COMを得るために、HALL期間T_HALLから進み期間T_ADVを差し引く必要はない。結果として、より簡素で、且つ場合によってはより安価なマイクロコントローラを用いることができる。
【0066】
進み/転流期間及び通電期間は、位相励起の開始及び終了の電気角を定める。従って、より一般的な意味では、コントローラ14は、ターンオン角とターンオフ角との間に定められる期間にわたって相巻線を順次的に励起しフリーホイールすると考えることができる。コントローラ14は、供給電圧及びロータ速度の変化に応答して、過電流閾値、ターンオン角、及び/又はターンオフ角を調整する。
【0067】
各ルックアップテーブルは、コントローラ14のタイマーに直接ロードすることができる値を格納する。これにより、コントローラ14によって実行される命令が簡素化され、従って、比較的簡単且つ安価なマイクロコントローラを用いることができる。しかしながら、コントローラ14は、相巻線7の励起及びフリーホイールを制御する代替の値を格納することができる。例えば、ルックアップテーブルは、電気角(例えば、ターンオン角、ターンオフ角、及びフリーホイール角)を格納することができる。或いは、供給電圧及びロータ速度を有する各制御パラメータの挙動を数式で表現することもできる。次いで、コントローラ14は、現在の供給電圧及びロータ速度を用いて数式を解き、制御パラメータの値を得る。
【0068】
上述の実施形態において、コントローラ14は、供給電圧及びロータ速度の変化に応答して種々の制御パラメータ(すなわち、進み期間、通電期間、フリーホイール期間、及びデューティサイクル)を調整する。しかしながら、電源2の電圧が比較的規則的である場合、或いは、供給電圧の分散が重要ではないとみなされる場合、種々の制御パラメータは、ロータ速度だけについて調整すればよい。これによりコントローラ14のメモリ要件が低減される。従って、場合によっては安価なマイクロコントローラを用いることもできる。或いは、利用できる追加のメモリを用いて、ルックアップテーブルに対してより微細な分解能を利用することができる。
【0069】
上述の実施形態において、モータシステム1は、AC電源2により駆動される。次いで、種々の制御パラメータは、電源のRMS電圧(DC_SMOOTHから求められる)の変化に応答して更新される。しかしながら、制御パラメータの1つ又はそれ以上は、代替として、DCリンク電圧の変化に応答して、すなわちあらゆる平滑化なしで更新することができる。次いで、制御パラメータは、AC電源2のサイクルにわたってDCリンク電圧が変化するときに更新される。AC電源ではなく、モータシステム1はまた、バッテリなどのDC電源によって駆動されてもよい。供給電圧の変化に応答して制御パラメータを調整することにより、バッテリが放電するときに特定の電力プロファイルを維持することができる。その上、モータシステム1の効率は、バッテリ寿命が増大するように、各電圧ポイントにおいて最適化することができる。
【0070】
コントローラ14は、供給電圧及びロータ速度の変化に応答してフリーホイール期間を調整する。固定のフリーホイール期間では、対応する電気角はロータ速度と共に増大する。従って、固定のフリーホイール期間を用いる実用性は、モータシステム1の速度範囲及び相巻線7のインダクタンスによって決まることになる。例えば、速度範囲が比較的小さい場合、固定のフリーホイール期間のフリーホイール角は、速度範囲の各端点にてほぼ同じになる。或いは、相巻線7のインダクタンスが比較的高い場合、相電流は、フリーホイール中に比較的低速な変化率で減衰することになる。その結果として、固定のフリーホイール期間が、速度範囲の両側の端点にて極めて異なるフリーホイール角をもたらす場合、フリーホイール中に結果として生じる相電流の減衰は、問題とならない場合がある。固定のフリーホイール期間を利用することにより、追加のメモリが、相電流波形の成形において一般により重要である他の制御パラメータに利用可能となる。
【0071】
論理的lowにプルされたFW#信号に応答して、ゲートドライバモジュール11は、high側スイッチQ1、Q2を開放させる。その結果、相巻線7の電流は、DIR1及びDIR2によって定められる方向でインバータ10のlow側ループの周りをフリーホイールする。パワースイッチの特定のタイプは、双方向に導通させることが可能である。従って、high側スイッチQ1、Q2の両方を開放することに加えて、ゲートドライバモジュール11は、low側スイッチQ3、Q4の両方を閉止することができる。これにより、相巻線7の電流は、低効率のフリーホイールダイオードを通過するのではなく、low側スイッチQ3、Q4の両方を通ってフリーホイールすることが可能になる。更に、ゲートドライバモジュール11は、インバータ10のlow側ループの周りをフリーホイールするのではなく、代わりに、相電流がhigh側ループの周りをフリーホイールするようにスイッチQ1〜Q4を制御することができる。
【0072】
インバータ10の下側アーム上に位置付けられたシャント抵抗R1、R2のペアを有することにより、電流センサ12が、励起及びフリーホイール中に相巻線7の電流を検知することができる。しかしながら、コントローラ14は、所定の時間期間の間相巻線7をフリーホイールするので、フリーホイール中に相電流を監視することは必須ではない。従って、電流センサ12は、単一のシャント抵抗を備えてもよい。そのため、フリーホイール中に電流を検知することはできないが、単一のシャント抵抗の使用により、構成要素のコスト及び電流センサ12の電力損が低減される。電力損の低減は小さくすることができるが、それでも尚、このことは、特定の用途(例えば、低出力低電圧のモータシステム)において重要であることを証明することができる。
【0073】
上述の実施形態において、電流制限器20は、主として、コントローラ14の周辺装置17から形成される。これは、可能であればコントローラ14の利用可能な周辺装置17を活用することによって、モータシステム1の全体コストが低減される。しかしながら、電流制限器20は、過電流信号をコントローラ14に出力する別個の回路として同様に設けることができる。
【0074】
上述の実施形態において、閾値信号の生成を担う閾値生成器25は、PWMモジュール21及び平滑フィルタ22を含む。これは、コントローラ14の既存の周辺装置17を利用する。しかしながら、閾値信号を生成する代替手段を同様に用いることもできる。例証として、コントローラ14の周辺装置17は、デジタル−アナログコンバータ(DAC)を含むことができる。しかしながら、一般に、PWMモジュールを有するマイクロコントローラがDACを有するマイクロコントローラよりも安価である。従って、PWMモジュールの使用は、供給電圧及びロータ速度の変化に応答して調整できる閾値信号を生成するコスト効果のある解決策を提供する。
【0075】
以上、永久磁石モータ3を有するモータシステム1について参照してきたが、ロータ速度と共に変化する過電流閾値の使用は、モータ及び発電機の両方を含む、電気機械の他のタイプの相巻線の電流を制限するのにも同様に利用することができる。電気機械は、1つよりも多い相巻線を含むことができる。加えて、電気機械の特定のタイプにおいて、相巻線を通過する電流の方向は、単一方向であってもよい。その結果として、転流は、必ずしも、相巻線を通過する電流の方向を反転させることを伴うものではない。
【符号の説明】
【0076】
1 モータシステム
2 電源
4 制御システム
5 ロータ
7 相巻線
14 コントローラ
21 PWMモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械を制御する方法であって、
前記電気機械の相巻線を供給電圧によって励起する段階と、
前記相巻線の電流が閾値を上回ったときに前記相巻線をフリーホイールする段階と、
前記供給電圧及び前記電気機械の速度のうちの少なくとも1つの変化に応答して前記閾値を調整する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法が、前記供給電圧の減少及び前記電気機械の速度の増加のうちの少なくとも1つに応答して前記閾値を増大させる段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フリーホイール期間の間、前記相巻線をフリーホイールし、前記フリーホイール期間の終わりにおいて前記相巻線を励起する段階を含み、前記フリーホイール期間が各電気的ハーフサイクルにわたって固定されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、
前記各電気的ハーフサイクルにおいてターンオン角とターンオフ角との間に定められた期間にわたって前記相巻線を順次的に励起及びフリーホイールする段階と、
前記供給電圧及び前記電気機械の速度のうちの少なくとも1つの変化に応答して前記ターンオン角及び前記ターンオフ角のうちの少なくとも1つを調整する段階と、
を含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、
前記各電気的ハーフサイクルにおいて通電期間にわたって前記相巻線を順次的に励起及びフリーホイールする段階と、
前記供給電圧及び前記電気機械の速度のうちの少なくとも1つの変化に応答して前記通電期間の長さを調整する段階と、
を含む、請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、
フリーホイール期間において前記相巻線をフリーホイールする段階と、
前記供給電圧及び前記電気機械の速度のうちの少なくとも1つの変化に応答して前記フリーホイール期間を調整する段階と、
を含む、請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、
デューティサイクルを有するパルス信号を生成する段階と、
前記パルス信号を平滑化し閾値電圧を生成する段階と、
前記電気機械の構成要素の両端電圧を検知する段階と、
前記検知された電圧を前記閾値電圧と比較する段階と、
前記検知電圧が前記閾値電圧を上回ったときに前記相巻線をフリーホイールする段階と、
前記供給電圧及び前記電気機械の速度のうちの少なくとも1つの変化に応答して前記デューティサイクルを調整する段階と、
を含む、請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、
複数の電圧又は速度の各々についてのデューティサイクルを含むルックアップテーブルを格納し、前記ルックアップテーブルから前記供給電圧又は前記電気機械の速度に対応するデューティサイクルを選択し、該選択したデューティサイクルを使用して前記パルス信号を生成する段階を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法を実施する電気機械用制御システム。
【請求項10】
前記制御システムが、
前記相巻線に結合されたインバータと、
前記相巻線の電流を検知する電流センサと、
前記インバータを制御する1つ又はそれ以上の制御信号を生成するコントローラと、
を備え、
前記インバータが、第1の制御信号に応答して前記供給電圧により前記相巻線を励起し、第2の制御信号に応答して前記巻線をフリーホイールし、前記相巻線の電流が前記閾値を上回ったときに、前記コントローラが、前記第1の制御信号を生成し、その後、前記第2の制御信号を生成する、請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記電流センサが、前記相巻線の電流を感知する電圧を有する信号を出力し、前記制御システムが、前記供給電圧及び前記電気機械の速度のうちの少なくとも1つに依存する電圧を有する信号を生成する閾値発生器を備え、前記コントローラが、前記電流センサによって出力された信号の電圧が、前記閾値発生器によって出力される信号の電圧を上回ったときに、前記第2の制御信号を生成する、請求項10に記載の制御システム。
【請求項12】
前記閾値発生器が、PWMモジュール及び平滑フィルタを含み、前記PWMモジュールのデューティサイクルが前記供給電圧及び前記電気機械の速度のうちの少なくとも1つに依存する、請求項11に記載の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−80766(P2012−80766A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219741(P2011−219741)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(508032310)ダイソン テクノロジー リミテッド (286)
【Fターム(参考)】