説明

電気機械変換装置の製造方法

【課題】間隙底面の絶縁層の平坦性のバラツキにより生じるセル間及びセルを含むエレメント間の絶縁破壊強度のバラツキを低減した電気機械変換装置の製造方法を提供する。
【解決手段】電気機械変換装置の製造方法において、第一の基板1の上に第一の絶縁層2を形成し、第一の絶縁層2の一部を第一の基板1まで除去して隔壁3を形成し、第一の絶縁層2の一部が除去された第一の基板1の領域上に第二の絶縁層10を形成する。次に、第二の基板18を隔壁3の上に接合して間隙24を形成し、第二の基板18から、間隙24を介して第二の絶縁層10と対向する振動膜23を形成する。隔壁3を形成する工程では、第一の基板1に垂直な方向において間隙24側の高さが中央部の高さよりも低くなるように隔壁3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波変換素子などとして用いられる静電容量型トランスデューサ等の電気機械変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロマシニング技術によって製造される微小機械部材はマイクロメータオーダの加工が可能であり、これを用いて様々な微小機能素子が実現されている。こうした技術を用いた静電容量型トランスデューサ(CMUT;Capacitive
Micromachined Ultrasonic Transducer)は、圧電素子の代替品として研究されている。このCMUTによると、振動膜の振動を用いて超音波を送信、受信でき、特に、液中において優れた広帯域特性が容易に得られる。
【0003】
上記技術に関して、シリコン基板上に接合等により配した単結晶シリコン振動膜を用いる静電容量型トランスデューサの製造方法がある(特許文献1、非特許文献1参照)。特許文献1では、シリコン基板に熱酸化膜を形成し、熱酸化膜の一部を除去した後にシリコン基板の接合を行っている。接合後は熱酸化膜を除去した部分が空隙となる。接合後、単結晶シリコン振動膜を露出させ、単結晶シリコン振動膜を振動膜として用いるセルを形成する事によって、静電容量型トランスデューサを作製している。非特許文献1では、シリコン基板に熱酸化膜を形成し、熱酸化膜の一部を除去した後に2回目の熱酸化膜を形成している。そして、2回目の熱酸化膜形成後に、接合界面となる部分に生じた熱酸化膜の突起を除去し、シリコン基板の接合を行っている。接合後、シリコン基板の加工を行い、単結晶シリコン振動膜を露出させ、これを振動膜とするセルを形成して、静電容量型トランスデューサを作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,958,255号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sensors and Actuators A 138(2007)221-229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した様に、シリコン基板に熱酸化膜を形成し、形成した熱酸化膜の一部をシリコン基板の位置まで除去し、シリコン基板を接合する事により、接合した2枚のシリコン基板間に空隙が形成され、静電容量型トランスデューサを作製できる。静電容量型トランスデューサは、空隙を介して対向する二つの電極間に電圧を印加する事で駆動される。二つの電極間の絶縁の為に、空隙内壁や空隙底面は絶縁体であるのが好ましい。従来、非特許文献1で示される様に、熱酸化膜の一部をシリコン基板の位置まで除去した後に2回目の熱酸化膜を形成する事で、空隙底面に絶縁体を設けていた。しかし、2回目の熱酸化膜を形成すると、接合界面となる部分に熱酸化膜の突起が生じる場合がある。この突起は、シリコン基板の接合不良の原因となるので、接合前に除去する必要があった。突起を除去すれば接合は良好となるが、突起を除去する際に空隙底面に形成した熱酸化膜も一部除去される事がある。これにより、空隙底面の絶縁層の平坦性が悪くなり、電圧を印加した際に空隙内で電界強度に分布が生じる場合がある。電界強度に分布が生じると、静電容量型トランスデューサのセル間またはセルを含むエレメント間で絶縁破壊強度がバラツキ、装置の信頼性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の電気機械変換装置の製造方法は、次の工程を有する。第一の基板の上に第一の絶縁層を形成し、前記第一の絶縁層の一部を前記第一の基板まで除去して隔壁を形成する工程。前記第一の絶縁層の一部が除去された第一の基板の領域上に第二の絶縁層を形成する工程。第二の基板を前記隔壁の上に接合して間隙を形成する工程。前記第二の基板から、前記間隙を介して前記第二の絶縁層と対向する振動膜を形成する工程。そして、前記隔壁を形成する工程では、前記第一の基板に垂直な方向において前記隔壁の間隙側の高さが中央部の高さよりも低くなるように前記隔壁を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第二の絶縁層を形成する前に、第一の絶縁層からなる隔壁を形成する。第一の基板に垂直な方向において隔壁の間隙側の高さが中央部の高さよりも低くなるように前記隔壁を形成するので、第二の絶縁層を形成した後に生じる隔壁上の突起を低減できる。これにより、第二の基板を接合する前に隔壁上の突起を除去する工程が不要となり、間隙底面の絶縁層の平坦性のバラツキを低減できる。こうして、本発明によれば、電気機械変換装置のセル間及びセルを含むエレメント間の絶縁破壊強度のバラツキが低減し、装置の均一性を高め信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1−1】本発明の実施形態などの静電容量型トランスデューサの製造方法の説明図。
【図1−2】本発明の実施形態などの静電容量型トランスデューサの製造方法の説明図。
【図2】静電容量型トランスデューサを説明する上面図。
【図3】図1−1(c)の一部拡大図。
【図4−1】比較例の静電容量型トランスデューサの製造方法の説明図。
【図4−2】比較例の静電容量型トランスデューサの製造方法の説明図。
【図4−3】比較例の静電容量型トランスデューサの製造方法の説明図。
【図5−1】他の実施形態などの静電容量型トランスデューサの製造方法の説明図。
【図5−2】他の実施形態などの静電容量型トランスデューサの製造方法の説明図。
【図6】図5−1(c)の一部拡大図。
【図7】第二の絶縁層厚と突起高さ及び突起幅のグラフ。
【図8】隔壁の二段目の高さと突起高さ及び突起幅のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴は、第一の基板上に、この基板に垂直な方向において隔壁の間隙側の高さが中央部の高さよりも低くなるように隔壁を形成し、その後、第一の基板上に酸化膜である第二の絶縁層を形成し、第二の基板を隔壁の上に接合して間隙を形成することである。第一の基板は、後述の実施形態や実施例ではシリコン基板であるが、シリコン層をサファイア板上に形成した基板などであってもよい。第二の基板は、SOIなどのシリコン基板、等である。隔壁を形成するための第一の絶縁層は、SiOなどの酸化膜、SiN、等であり、第二の絶縁層は、バーズビークを生じさせる熱酸化膜などの酸化膜である。間隙を介して第二の絶縁層と対向する振動膜は、第二の基板から形成されるシリコン膜などであり、第二の基板を薄化して形成されたりする。
【0011】
以下に、本発明の実施形態である静電容量型トランスデューサの製造方法を説明する。図2は、静電容量型トランスデューサの上面図であり、図1−2(g)は、図2のA-A’断面図である。図3は、図1−1(c)の一部拡大図である。静電容量型トランスデューサは、図2に示す様に、複数のセル102を含む静電容量型トランスデューサのエレメント101を複数アレイ状に配置している。図2では、6つのエレメント101のみを記載しているが、エレメント数は幾つでもよい。また、エレメントは、16個のセルから構成されているが、セル個数は幾つであってもよい。ここでは、セル形状は、円形であるが、四角形、六角形等であっても構わない。また、セル102やエレメント101の配置位置はどのようなものでもよい。この様に、静電容量型トランスデューサは、後述の第一の基板の一方の面と振動膜との間に形成された間隙を備えるセル102を少なくとも一つ以上含むエレメント101を複数有する。
【0012】
図1−2(g)に示す様に、セル102は、単結晶シリコン振動膜23、間隙(大気圧から減圧された空隙、ガスが封入された空隙など)24、振動膜23を支持する支持部である隔壁3、第一のシリコン基板1、電極27で構成されている。隔壁3は、その横断面形状が図1−2(g)に示す様になっている。単結晶シリコン振動膜23は、積層成膜した振動膜(例えば、窒化シリコン膜)と比較して、残留応力が殆どなく、厚みバラツキが小さく、振動膜のバネ定数のバラツキが小さい。そのため、静電容量型トランスデューサのエレメント間、セル間の性能バラツキが小さくなる。
【0013】
隔壁3は、絶縁体が望ましく、酸化シリコン、窒化シリコン等である。単結晶シリコン振動膜23を直接接合で形成する場合には、隔壁3は酸化シリコンであるのが好ましい。ここでは、第一のシリコン基板1は、複数のエレメント間の共通電極として用いるため、オーミックがとり易い低抵抗基板が望ましく、抵抗率は0.1Ωcm以下がよい。オーミックとは、電流の方向と電圧の大きさによらず抵抗値が一定である性質を指す。また、単結晶シリコン振動膜23は、図1−2(g)の電気的分離の境界線103の部分で分割する事で、信号を取り出す電極パッド104として用いる事ができる(図2参照)。第一のシリコン基板1や単結晶シリコン振動膜23の導電特性を向上するため、薄いアルミ等の金属膜を第一のシリコン基板1や振動膜23の上に形成してもよい。単結晶シリコン振動膜23は、信号取り出し電極として用いるため、低抵抗である事が望ましく、抵抗率は0.1Ωcm以下がよい。
【0014】
図3に示す様に、本実施形態のエレメント101を構成するセル102の隔壁3は、第一のシリコン基板側の横断面の幅4が、その反対側の横断面の幅5よりも大きい(図1−1(b)参照)。別の角度から言えば、隔壁3の後述の間隙24側の高さが隔壁3の中央部の高さより低い。隔壁3は、酸化により第二の絶縁層10を形成する前に形成している。これにより、第二の絶縁層10を形成した後に隔壁3に生じる突起を低減する事ができる。よって、第二のシリコン基板18(図1−2(d)参照)を接合する前に突起を除去する工程が不要となり、間隙底面33の平坦性のバラツキ(第二の絶縁膜10の厚さ12のバラツキ)を低減できる。本実施形態により、静電容量型トランスデューサのエレメント及びセルの絶縁破壊強度のバラツキを低減し、エレメント内のセル及びエレメント間の均一性を高め信頼性を向上する事ができる。
【0015】
本実施形態の駆動原理を説明する。静電容量型トランスデューサで超音波を受信する場合、図示しない電圧印加手段で、直流電圧を単結晶シリコン振動膜23に印加しておく。超音波を受信すると、単結晶シリコン振動膜23が変形するため、振動膜23と第一のシリコン基板1との距離22(図1−2(d)参照)が変わり、静電容量が変化する。この静電容量変化によって、単結晶シリコン振動膜23に電流が流れる。この電流を、図示しない電流−電圧変換素子によって電圧に変換し、超音波を受信できる。また、単結晶シリコン振動膜23に直流電圧と交流電圧を印加し、静電気力によって、振動膜23を振動させる事ができる。これによって、超音波を送信できる。
【0016】
次に、本実施形態の静電容量型トランスデューサの構成、製造方法などを、図1、図4などを用いて、比較例と比較しながら詳述する。図7と図8は、後述するバーズビークによって生じる突起の高さ及び幅と第二の絶縁層の厚さなどとの関係を示したグラフである。
【0017】
製法において、まず、図1−1(a)に示す様に、第一のシリコン基板1上に第一の絶縁層2を形成する。第一のシリコン基板1は、低抵抗基板であり、抵抗率は0.1Ωcm以下が好ましい。第一の絶縁層2は、酸化シリコン、或いは窒化シリコン等である。第一の絶縁層2は、CVD(Chemical
Vapor Deposition)或いは、熱酸化等によって形成できる。熱酸化は、酸素と水素を用いるウェット酸化や、酸素を用いるドライ酸化で行う事ができる。酸化温度は、800度〜1100度程度が好ましい。
【0018】
次に、図1−1(b)に示す様に、第一の絶縁層2の一部をシリコン基板1まで除去して隔壁3を配置間隔9で離散的に形成する。隔壁3は、ドライエッチング、ウェットエッチング等によって、形成できる。隔壁3は、図1−1(b)の様に、第一のシリコン基板側の幅4がその反対側の幅5よりも大きくなるように、換言すれば、隔壁の間隙24側の高さが中央部の高さより低くなるように、形成される。こうして、隔壁3を形成する工程では、後述の第二の絶縁層を形成する工程の後における隔壁の間隙側の高さが中央部の高さより高くならないよう、隔壁を形成する。隔壁3の壁面形状(第一のシリコン基板に垂直な断面形状)は、図1−1(b)の様に階段状にしてもよいし、後述の実施例の様に傾斜状にしてもよい。階段状の隔壁の壁面は、少なくとも1段以上の階段状とする事ができる。こうした形状の隔壁3を設ける事で、第二の絶縁層10を形成した後に生じることがある突起(図4−1(c)の工程参照)を低減できる。比較例を説明する図4−1(c)に示すような突起14は、バーズビーク13に起因して生じる。バーズビーク13は鳥のくちばし状の酸化膜である。バーズビーク13は、隔壁3形状後に第一のシリコン基板1が熱酸化されて第二の絶縁層10が形成される際に、第一のシリコン基板1の熱酸化量が部分的に変化して不均一になる所で隔壁の下への酸素の浸入現象が発生する事で生じる。例えば、第一のシリコン基板1に段差がある場合や、図4−1(c)の様に異なる物質(ここでは隔壁3)が存在する場合、熱酸化量が部分的に変化して不均一になる個所が生じ、バーズビーク13が生じる。この現象によって、第二のシリコン基板18を接合する側の隔壁の界面に、バーズビーク13によって押し上げられた図4−1(c)に図示の如き突起14が生じる。
【0019】
図1の説明に戻って、図1−1(c)に示す様に、第二の絶縁層10を形成する。図1−1(c)の場合、バーズビーク13に起因して生じる突起は、第一の突起14である。第一の突起14は、隔壁3が絶縁層である事や第一のシリコン基板1の面からの隔壁3の一段目の高さ6がある事から、隔壁の壁面付近の領域において第一のシリコン基板1側の熱酸化量が不均一になる為に生じている。また、図1−1(c)に示す様に、第二の突起15も生じる。第二の突起15は、隔壁3の二段目の高さ7により、隔壁3の一段目の高さ6との違いが生じている事から、第一のシリコン基板1側の熱酸化量が不均一になる為に生じている。バーズビーク13は、図1−1(c)に図示した個所以外にも、熱酸化量にムラがある個所で生じる。本実施形態は、隔壁3の壁面形状を階段状にして、バーズビークによって生じる突起14、15の量や位置を制御して、第二のシリコン基板18との接合を良好に行うものである。
【0020】
ここで、図7と図8を用いてバーズビークによって生じる突起の量と位置について述べる。図7(a)の横軸は、隔壁3が図4−1(b)に示す形態で、第二の絶縁層10を1050度のウェット酸化で形成した時の熱酸化膜の厚さであり、縦軸は、バーズビークによって生じる突起14の高さである。図7(a)に示す様に、バーズビークによって生じる突起14の高さは、第二の絶縁層10の厚さに比例して増大する。これは、第二の絶縁層10の厚さによって、バーズビークの量が増えている為である。バーズビークによって生じる突起14は、第二の絶縁層10が或る程度の厚さまでは図7(a)の様に増大していき、或る厚さを超えると、第二の絶縁層10の厚さに比例して減少する(不図示)。バーズビークによって生じる突起14の減少が始まる絶縁層の厚さは、熱酸化膜を形成する時の温度に依存する。熱酸化膜の形成温度が低くなれば、減少が始まる第二の絶縁層の厚さは厚くなる傾向がある。また、増減の傾きも熱酸化膜を形成する時の温度に依存する。熱酸化膜の形成温度が低くなれば、増減の傾きはなだらかになる傾向があり、バーズビークによって生じる突起14の大きさは、高さと幅ともに大きくなる傾向がある。例えば、1050度でのウェット酸化の場合、第二の絶縁層10の厚さ1μm付近で、バーズビークによって生じる突起の高さはピークとなる。上記のバーズビークによって生じる突起の大きさなどは、熱酸化膜を形成する手法(ドライ酸化、ウェット酸化)の違いや、第一のシリコン基板1の結晶方位にも依存する事がある。
【0021】
図7(b)の横軸は、図7(a)の横軸のものと同じであり、縦軸は、バーズビークによって生じる突起14の幅16(図3参照)である。図7(b)のバーズビークによって生じる突起14の幅は、図7(a)のバーズビークによって生じる突起14の高さと同様に、第二の絶縁層10の厚さに比例して増大していく。また、第二の絶縁層10の厚さが或る厚さを超えると、第二の絶縁層10の厚さに比例して減少する。その他の点も、上記突起14の高さの場合と同様である。
【0022】
図8(a)の横軸は、本実施形態の隔壁3の二段目の高さ7であり、縦軸は第二の絶縁層10を1050度のウェット酸化で形成した時に生じる第二の突起15の高さである。図8(a)に示す様に、隔壁3の二段目の高さ7が増加するに従い、突起15の高さも増加している。バーズビークによって生じる突起15の高さと熱酸化量の関係は、図7(a)の説明と同等である。図8(b)の横軸は、隔壁3の二段目の高さ7であり、横軸は第二の絶縁層10を1050度のウェット酸化で形成した時に生じる第二の突起15の幅17(図3参照)である。図8(b)に示す様に、隔壁3の二段目の高さ7が増加するに従い、突起15の幅も増加している。バーズビークによって生じる突起15の幅と熱酸化量の関係は、図7(b)の説明と同等である。
【0023】
図7と図8の説明で述べた様に、バーズビークによって生じる突起の高さ14、15や幅は、第二の絶縁層の厚さに応じて、予め隔壁3に設ける段差などに反映させる事で制御できる。例えば、熱酸化温度が1050度のウェット酸化の場合について説明する。第二の突起15の高さを3nmにしたい場合、図8(a)より、隔壁3の二段目の高さ7を66nmとすればよい。第二のシリコン基板18との接合を考慮すると、第二の突起15の高さは、できるだけ小さい方がよい。後述する溶融接合で接合する場合には、表面粗さRms<5nmが好ましい。例えば、第二の突起15の高さを0.5nmにしたい場合、隔壁3の二段目の高さ7は11nmとする必要がある。しかし図7(a)より、第二の絶縁層10を200nm形成する場合には、第一の突起14が12nmとなる為、隔壁3の一段目の突起14が、接合界面に達する事になる。隔壁3の一段目の突起14が接合界面に達すると、第二のシリコン基板18の表面シリコン層21(後述)と接触して接合してしまう。これでは、後述する図1−2(d)〜図1−2(g)の工程を経ると、隔壁3の接合界面以外の部分で単結晶シリコン振動膜23と接合し、単結晶シリコン振動膜23の振動特性を変えてしまう。この為、隔壁3の二段目の高さ7は、第二の絶縁層10の所望の厚さを形成した時に、第一の突起14を接合界面に達しさせない高さ以上とし、第二の突起15を接合不良を生じさせない高さにする事が好ましい。第二の絶縁層10を200nmとするならば、隔壁3の二段目の高さ7は、12nm以上110nm以下とするのが好ましい。第二の絶縁層10を400nmとするならば、隔壁3の二段目の高さ7は、27nm以上110nm以下とするのが好ましい。
【0024】
また、バーズビークによって生じる突起14の幅と第二の絶縁層10の厚さの関係から、隔壁3の一段目と二段目の幅8は、第二の絶縁層10の所望の厚さで生じる突起14の幅16(図3参照)を包括するような幅にすればよい。第二の絶縁層10を200nmとするならば、1μm以上とする事が好ましい。第二の絶縁層10を400nmとするならば、2μm以上とする事が好ましい。典型的には、静電容量型トランスデューサのエレメントは、後述する間隙24が真空である為、大気圧下で単結晶シリコン振動膜23が間隙底面33の方向に凹んだ状態となる。この状態で駆動すると、単結晶シリコン振動膜23はさらに間隙底面33側に凹む。隔壁3の一段目と二段目の幅8を、セル直径28(図3参照)に対して大きく取りすぎると、単結晶シリコン振動膜23と第一の突起14が接触してしまう事がある。隔壁3の二段目の高さ7の大きさにもよるが、隔壁の一段目と二段目の幅8は大きすぎると、単結晶シリコン振動膜23の振動特性を変える可能性がある為、必要最低限の幅とする事が好ましい。バーズビークによって生じる突起の幅16は、第二の絶縁層10の厚さに比例し、或る厚さでピークをとなってその後減少していく事から、隔壁の一段目と二段目の幅8は、ピーク時の幅16より小さくすればよい。1050度のウェット酸化で形成する場合には、10μm以下が好ましい。
【0025】
図7と図8では、隔壁3が二段の階段状である例を説明したが、前述した様に、隔壁3が二段以上であってもよい。段差が細かければ細かいほど、第二のシリコン基板18との接合界面に生じる突起の高さと幅は小さくなり、接合が良好となる。図5−1(b)に示す様に斜面状とする事で、熱酸化膜の形成量の変化の差を緩やかにすると、段差を細かくしたのと同様な効果が得られる。隔壁3の斜面の曲率半径が大きければ大きいほど熱酸化膜の形成量の変化の差を緩やかにする事が出来て好ましい。この時、図7と図8と同様に、第二の絶縁層10を形成して第二のシリコン基板18を接合した後に、単結晶シリコン振動膜23と斜面が接触しない事が好ましい。また図5−2(g)の状態で電圧を印加した際にも単結晶シリコン振動膜23と斜面が接触しない事が好ましい。
【0026】
次に、図1−2(d)に示す様に、第二のシリコン基板18を第一のシリコン基板1の隔壁3が形成されている側に接合する。第二のシリコン基板18と第一のシリコン基板1上の隔壁3とは、溶融接合(fusion bonding)により接合する。溶融接合とは、研磨したシリコン基板やその上にSiO膜を形成したものを重ねて熱処理する事によって、分子間力で張り合わせるものである。大気中にて表面を重ねると、Si−OHによるOH基同士が水素結合する。この状態で数百度にすると、OH基からHO分子がとれて酸素で結合する。さらに1000度以上では酸素がシリコンウェハ中に拡散してSi原子間で結合が生じる。図1−2(d)では、第二のシリコン基板18としてSOI基板を用いている。SOI基板は、シリコン基板19(ハンドル層)と表面シリコン層21(活性層)の間に酸化シリコン層20(BOX層)を挿入した構造の基板である。
【0027】
次に、図1−2(e)に示す様に、第二のシリコン基板18を薄化し、単結晶シリコン振動膜23を形成する。単結晶シリコン振動膜は、数μm以下が好ましいため、第二のシリコン基板18を、エッチング或いはグラインディング、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を行って、薄化する。バックグラインディング、CMPによって、2μm程度まで削る事が可能である。図1−2(e)に示す様に、第二のシリコン基板として、SOI基板を用いた場合、SOI基板の薄化は、ハンドル層19、BOX層20を除去する事によって行う。ハンドル層19の除去は、グラインディング、CMP、エッチングで行う事ができる。また、BOX層20の除去は、酸化膜のエッチング(ドライエッチングやフッ酸等のウェットエッチング)により、実施できる。フッ酸のようなウェットエッチングは、シリコンがエッチングされるのを防止できるので、エッチングによる単結晶シリコン振動膜23の厚みバラツキを低減できるため、より好ましい。SOI基板の活性層21は、厚みバラツキが小さいため、単結晶シリコン振動膜23の厚みバラツキを低減でき、振動膜23のバネ定数バラツキを低減でき、静電容量型トランスデューサの性能バラツキを低減できる。
【0028】
次に、静電容量型トランスデューサの駆動時に電圧を印加したり、信号を取り出したりする為に必要な電極を形成する。電極は、単結晶シリコン振動膜23と第一のシリコン基板1との間に電圧を印加できればよく、形成する場所や構造等は特に問わない。単結晶シリコン振動膜23を共通電極とし、第一のシリコン基板1を分割して、分割したシリコン基板1を信号取り出し電極として用いてもよい。また、第一のシリコン基板1を共通電極とし、単結晶シリコン振動膜23を信号取り出し電極としてもよい。
【0029】
図1−2(f)、図1−2(g)の図示例は、単結晶シリコン振動膜23を信号取り出し電極として用い、第一のシリコン基板1を共通電極として用いる構成を有し、信号取り出し電極の配線と電極パッドを振動膜23側に形成する構成の一例である。図1−2(f)では、第一のシリコン基板1の導通を取る為に、コンタクトホール25を形成する。図1−2(g)では、電極27と配線、電極パッド26を形成する。これらの工程は、後述の実施例1で詳細に説明する。
【0030】
次に、図1−2(g)に示す様に、セルを有する静電容量型トランスデューサのエレメント101とそれ以外の部分とを電気的に分離する為に、電気的分離の境界線103の部分で、単結晶シリコン振動膜23を除去する。単結晶シリコン振動膜23の除去は、ドライエッチング、ウェットエッチング等によって除去できる。これにより、静電容量型トランスデューサのエレメント101は、セル102を有しない部分と電気的に分離される。第一の電極パッド26と図2に示す第二の電極パッド104との間に電圧を印加する事で、静電容量型トランスデューサのエレメント101に電圧を印加し、駆動できる。
【0031】
本実施形態の静電容量型トランスデューサの製造方法は、第二の絶縁膜10を形成する前に階段状の隔壁3を設ける事で、第二の絶縁膜10を形成した時に生じるバーズビーク13に起因した接合界面の突起の発生を制御できる。隔壁3は、第一のシリコン基板1側の幅4がその反対側の幅5よりも大きいことを特徴とする。これにより、第二のシリコン基板を接合する前に突起を除去する工程が不要となり、間隙底面の絶縁層の平坦性のバラツキを低減できる。これにより、静電容量型トランスデューサのエレメントやセルの絶縁破壊強度のバラツキを低減し、エレメントの均一性を高め装置の信頼性を向上できる。
【0032】
次に、前で言及した比較例を説明する。この比較例の製造方法を図2、図4を用いて説明する。図4−1〜図4−3は、隔壁3の第一のシリコン基板1側の幅4と他方の幅5が同じである場合の比較例の製造方法である。図4−3(i)は、図4−2(d)の一部拡大図である。比較例でも、図4−1(a)に示す様に、第一のシリコン基板1上に第一の絶縁層2を形成する。本比較例ではウェット酸化で形成する。酸化温度は1050度である。第一のシリコン基板1の抵抗率は0.01Ωcmである。第一の絶縁層2は、熱酸化により形成した酸化シリコンであり、厚さは220nmである。熱酸化により形成する酸化シリコンは、表面粗さが非常に小さく、第一のシリコン基板上に形成しても、第一のシリコン基板の表面粗さの増加を防止でき、表面粗さは、Rms=0.2nm以下である。特に溶融接合により接合する場合、この表面粗さが大きい場合、例えばRms=5nm以上である場合、接合する事が難しく、接合不良を引き起こす。熱酸化による酸化シリコンの場合、表面粗さを増大させないので、接合不良が発生しにくく、製造歩留まりを向上できる。
【0033】
次に、図4−1(b)に示す様に、隔壁3を形成する。隔壁3は、ウェットエッチングやドライエッチングによって形成できる。隔壁3の高さは第一の絶縁層2の厚さと同等の220nmである。幅4、5は11μmである。隔壁3の配置間隔9は39μmであり、セル102が4行4列となるよう形成している。次に、図4−1(c)に示す様に、第二の絶縁層10を形成する。本比較例ではウェット酸化で形成する。酸化温度は1050度である。絶縁層10は、熱酸化により形成した酸化シリコンであり、厚さ12は間隙24の底面33において200nmである。第二の絶縁層10を形成すると、隔壁3の端にバーズビーク13が生じる。この現象によって第二のシリコン基板18を接合する界面に、バーズビーク13によって押し上げられた突起14が生じる。この突起14の高さは12nm、幅は1μmである。図4−1(c)の様に突起14がある状態で、図4−2(e)に示す様に、第二のシリコン基板18と溶融接合を行うと接合不良が生じ、次の工程に進む事が出来ない為、図4−2(d)に示す工程を行う。
【0034】
図4−2(d)の工程では、第二のシリコン基板18を接合する界面に生じた突起14を除去する。突起14の除去は、ドライエッチングやウェットエッチングによって除去できる。本比較例では、ドライエッチングで除去する。突起14の除去は、フォトマスクのアライメントずれを考慮し、隔壁3の配置間隔9である39μmに対して39μm±3μmの領域をドーナツ状に除去する。除去量は50nmであり、除去後にセル直径28が形成される。図4−3(i)に除去後の構造の拡大図を示す。ドーナツ状に除去すると、除去後の突起14は除去前の位置から50nm第一のシリコン基板1側に下がった位置となる。除去部の突起の大きさと幅は、除去前の突起14の大きさ及び幅と同等である。除去前の隔壁3の配置間隔9の39μmに対し、除去後は除去部の幅の3μm分が両端に広がる為、第二のシリコン基板18を接合する界面のセル直径28は約45μmとなる。これにより、第二のシリコン基板18を接合する界面は平坦になる。またフォトマスクのアライメントずれを考慮した為、間隙底面の第二の絶縁層10の一部も除去され、幅29の環状の凹部34が生じる。
【0035】
次に、図4−2(e)に示す様に、第二のシリコン基板18を溶融接合する。図4−2(e)では、第二のシリコン基板18としてSOI基板を用いている。次に、図4−2(f)に示す様に、第二のシリコン基板18を薄化し、単結晶シリコン振動膜23を形成する。間隙24は、静電容量型トランスデューサのキャパシタを構成する。次に、図4−3(g)に示す様に、振動膜23が形成されている側から第一のシリコン基板1の導通を取る為に、コンタクトホール25を形成する。まず、コンタクトホールを形成する箇所の振動膜の一部を、ドライエッチング、ウェットエッチング等によって除去する。次に絶縁層をドライエッチング、ウェットエッチング等によって除去する。これにより、第一のシリコン基板1が露出し、コンタクトホール25を形成できる。本比較例では、コンタクトホールを形成する箇所の振動膜の一部を、ドライエッチングよって除去し、絶縁層をウェットエッチングによって除去する。これにより、第一のシリコン基板1が露出し、コンタクトホールを形成できる。
【0036】
次に、図4−3(h)、図2に示す様に、静電容量型トランスデューサのエレメント101に電圧を印加する為に必要な、電極27と第一の電極パッド26を設ける。まず、第一のシリコン基板1や単結晶シリコン振動膜23の導電特性を向上するため、導電性の良い金属膜を第一のシリコン基板1や単結晶シリコン振動膜23上に形成する。前記金属膜はAl、Cr、Ti、Au、Pt、Cuなどの金属を使用できる。電極27となる金属膜は、所望の厚さを設ければよく、振動膜の振動を妨げない程度の厚さとする事が好ましい。また電極27と第二の電極パッド104とを繋ぐ部分は、所望の配線抵抗となる厚さにするのが好ましい。第一の電極パッド26、第二の電極パッド104となる金属膜は、導通が取れる程度の厚さにするのが好ましい。これらの金属膜の厚さは、一度の成膜とエッチングで形成する為に同じ厚さとしても良いし、異なる厚さとする為に、複数回の成膜とエッチングで形成しても良い。金属膜の成膜後、電極27と第一の電極パッド26、第二の電極パッド104をパターニングして形成する。電極パッドや配線を設ける位置は、所望の位置に設ければよい。本比較例では、Alを200nm成膜し、電極27と配線、第一の電極パッド26、第二の電極パッド104をパターニングして形成する。次に、Alを設けた部分以外の単結晶シリコン振動膜23をドライエッチングによって除去する。これにより、静電容量型トランスデューサのエレメント101は、セルを有しない周囲から、電気的分離の境界線103にて電気的に分離される。第一の電極パッド26と第二の電極パッド104の間に電圧を印加する事で、静電容量型トランスデューサのエレメント101に電圧を印加できる。
【0037】
図4−3(i)を用いて、本比較例で作製した静電容量型トランスデューサアレイのセル102の絶縁破壊電圧を説明する。図4−2(d)にて、突起14を除去した事で、間隙底面の第二の絶縁膜10の厚さが異なり、間隙底面の平坦性が悪くなっている。本比較例の場合、間隙底面の第二の絶縁膜10の厚さ12の200nmに対し、突起を除去して生じた凹部34の下部の第二の絶縁膜10の厚さは、150nm以下となる。絶縁破壊電圧のバラツキは、160V〜120Vとなり、バラツキは25%となる。凹部34の下部の第二の絶縁膜の厚さがさらに薄くなった場合には、絶縁破壊電圧のバラツキは、さらに大きくなる。本発明は、第一の基板の側の幅がその反対側の幅よりも大きくなるように隔壁を形成し、図4−2(d)の工程の如き工程を不要にすることで、絶縁破壊電圧のバラツキを抑制するものである。
【0038】
以下、本発明のより具体的な実施例を説明する。
(実施例1)(階段状の隔壁を設けた場合の実施例)
実施例1の静電容量型トランスデューサの製造方法を図1、図2、図3を用いて説明する。本実施例は、上記実施形態にほぼ対応する。
【0039】
本実施例でも、図1−1(a)に示す様に、第一のシリコン基板1上に第一の絶縁層2を形成する。比較例の図4−1(a)と同様に形成できる。次に、図1−1(b)に示す様に、隔壁3を形成する。隔壁3は、ウェットエッチングやドライエッチングによって形成できる。隔壁3の第一のシリコン基板1側の幅4は17μmであり、隔壁3の一段目の高さ6は175nmである。他方の幅5は5μmであり、隔壁3の二段目の高さ7は45nmである。また、隔壁3の一段目と二段目の幅8は、3μmである。隔壁3の配置間隔9は33μmであり、セルが4行4列となるよう形成している。
【0040】
次に、図1−1(c)及び図3に示す様に、第二の絶縁層10を形成する。本実施例でもウェット酸化で形成する。酸化温度は1050度である。第二の絶縁層10は、熱酸化により形成した酸化シリコンであり、厚さ12は間隙24の底面33において200nmである。第二の絶縁層10を形成すると、隔壁3の端に上記バーズビーク13が生じる。この現象によって第二のシリコン基板18を接合する界面に、バーズビーク13によって押し上げられた第一の突起14、第二の突起15が生じる。第一の突起14の高さは10nm、幅16は1μmである。また、第二の突起15の高さは2nm、幅17は1μmである。
【0041】
次に、図1−2(d)に示す様に、第二のシリコン基板18を溶融接合する。図1−2(d)では、第二のシリコン基板18として上記の如きSOI基板を用いている。図1−1(c)の工程で生じた第二の突起15の高さは2nmであり、表面粗さRmsがRms<5nmである為、比較例の図4−2(d)の工程を実施しなくても溶融接合ができる。次に、図1−2(e)に示す様に、第二のシリコン基板18を薄化し、単結晶シリコン振動膜23を形成する。比較例の図4−2(f)と同様に形成できる。
【0042】
次に、図1−2(f)に示す様に、振動膜23が形成されている側から第一のシリコン基板1の導通を取る為に、コンタクトホール25を形成する。比較例の図4−2(g)と同様に形成できる。次に、図1−2(g)、図2に示す様に、静電容量型トランスデューサのエレメント101に電圧を印加する為に必要な、電極27と第一の電極パッド26を設ける。比較例の図4−3(h)と同様に形成できる。
【0043】
図3を用いて、本実施例で作製した静電容量型トランスデューサアレイのセルの絶縁破壊電圧を説明する。比較例と比較すると、図4−2(d)の工程を実施しない為、間隙底面33の第二の絶縁膜10の厚さ12がほぼ均等であり、間隙底面の平坦性が向上している。本実施例の場合、間隙底面の第二の絶縁膜10の厚さ12は、ほぼ一様に200nmである。絶縁破壊電圧は、160Vとなる。
【0044】
以上の事から、隔壁3の第一のシリコン基板1側の幅4を、他方の幅5よりも大きくする事で、第二の絶縁層10を形成した後に生じる接合界面の突起を低減できる。また接合界面の突起を除去せずに第二のシリコン基板18と接合でき、エレメント101を作製できる為、間隙底面の絶縁膜10の平坦性を向上できる。これにより、静電容量型トランスデューサのエレメント内のセル間及びエレメント間の絶縁破壊強度のバラツキを低減し、装置の均一性を高め、信頼性を向上できる。
【0045】
(実施例2)(傾斜状の隔壁を設けた場合の実施例)
実施例2の静電容量型トランスデューサの製造方法を図5、図2、図6を用いて説明する。本実施例の製造方法は、実施例1とほぼ同様である。図5−1と図5−2は、本実施例の製造方法を説明するための断面図であり、図2は、本実施例の静電容量型トランスデューサの上面図である。図2のA-A’断面図が、図5−2(g)である。図6は図5−1(c)の一部拡大図である。実施例2では、傾斜状の隔壁3を形成する。
【0046】
本実施例でも、図5−1(a)に示す様に、第一のシリコン基板1上に絶縁層2を形成する。実施例1の図1−1(a)と同様に形成できる。次に、図5−1(b)に示す様に、隔壁3を形成する。隔壁3は、ウェットエッチングやドライエッチングによって形成できる。本実施例の場合、グラデーションマスクを用いて露光を行い、ドライエッチングでエッチングを行う事で、図5−1(b)に示すような隔壁3を形成できる。隔壁3の第一のシリコン基板1側の幅4は17μmであり、他方の幅5は5μmである。隔壁3の高さは220nmである。隔壁3の配置間隔9は38μmであり、セルが4行4列となるよう形成している。
【0047】
次に、図5−1(c)に示す様に、第二の絶縁層10を形成する。本実施例でもウェット酸化で形成する。酸化温度は1050度である。第二の絶縁層10は、熱酸化により形成した酸化シリコンであり、厚さ12は間隙24の底面において200nmである。第二の絶縁層10を形成すると、隔壁3の端にバーズビーク13が生じる。本実施例の場合、隔壁3の壁面を緩やかな斜面にしている為、図4−1(c)の様に局所的な突起14は生じない。バーズビークによって押し上げられた第一の絶縁層2は、隔壁3の斜面が上に押し上げられ、図6に示すような形状になる。第二のシリコン基板18との接合界面の表面粗さRmsは1nm、バーズビークで若干押し上げられた部分の幅30は1μmとなり、比較例の図4−2(d)の工程を実施しなくても溶融接合ができる。
【0048】
次に、図5−2(d)に示す様に、第二のシリコン基板18を溶融接合する。図5−2(d)でも、第二のシリコン基板18としてSOI基板を用いている。次に、図5−2(e)に示す様に、第二のシリコン基板18を薄化し、単結晶シリコン振動膜23を形成する。実施例1の図1−2(e)と同様に形成できる。次に、図5−2(f)に示す様に、振動膜23が形成されている側から第一のシリコン基板1の導通を取る為に、コンタクトホール25を形成する。実施例1の図1−1(f)と同様に形成できる。次に、図5−2(g)、図2に示す様に、静電容量型トランスデューサのエレメント101に電圧を印加する為に必要な、電極27と第一の電極パッド26を設ける。実施例1の図1−1(g)と同様に形成できる。
【0049】
図6を用いて、本実施例で作製した静電容量型トランスデューサアレイのセル102の絶縁破壊電圧を説明する。比較例と比較すると、図4−1(d)の工程を実施しない為、間隙底面33の第二の絶縁膜10の厚さ12がほぼ均等であり、間隙底面の平坦性が向上している。本実施例の場合、間隙底面の第二の絶縁膜の厚さ12は、間隙底面でほぼ一様に200nmである。絶縁破壊電圧は、160Vとなる。本実施例でも、実施例1と同様な効果を奏する事ができる。
【符号の説明】
【0050】
1・・第一のシリコン基板(第一の基板)、2・・第一の絶縁層、3・・隔壁、4・・隔壁の第一の基板側の横断面の幅、5・・隔壁の反対側の横断面の幅、10・・第二の絶縁層、18・・第二のシリコン基板(第二の基板)、23・・振動膜、24・・空隙(間隙)、101・・エレメント、102・・セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板の上に第一の絶縁層を形成し、前記第一の絶縁層の一部を前記第一の基板まで除去して隔壁を形成する工程と、
前記第一の絶縁層の一部が除去された前記第一の基板の領域上に第二の絶縁層を形成する工程と、
第二の基板を前記隔壁の上に接合して間隙を形成する工程と、
前記第二の基板から、前記間隙を介して前記第二の絶縁層と対向する振動膜を形成する工程と、
を有する電気機械変換装置の製造方法であって、
前記隔壁を形成する工程では、前記第一の基板に垂直な方向において前記隔壁の間隙側の高さが中央部の高さよりも低くなるように前記隔壁を形成することを特徴とする電気機械変換装置の製造方法。
【請求項2】
前記第一の基板は、シリコン基板であることを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換装置の製造方法。
【請求項3】
前記第二の基板は、シリコン基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気機械変換装置の製造方法。
【請求項4】
前記第二の絶縁層は、酸化膜であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電気機械変換装置の製造方法。
【請求項5】
前記振動膜は、前記第二の基板を薄化して形成することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電気機械変換装置の製造方法。
【請求項6】
前記隔壁の壁面は、少なくとも1段以上の階段状、または傾斜状であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の電気機械変換装置の製造方法。
【請求項7】
前記隔壁を形成する工程では、前記第二の絶縁層を形成する工程の後における前記隔壁の間隙側の高さが中央部の高さより高くならないよう、前記隔壁を形成することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の電気機械変換装置の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−70112(P2013−70112A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204970(P2011−204970)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】