説明

電気自動車の冷却装置

【課題】専用の換気用ファンを設けることなく、ボックス内に配置される電気部品の冷却性能を向上させる事が可能な、電気自動車の冷却装置を提供する。
【解決手段】電気自動車の冷却装置において、車両の下部に配置したボックス19の空気排出口21にこのボックス19内に延びる排気ダクト30を設け、冷却ダクト24の空気出口部に連結したファンケース27の空気吐出口28と排気ダクト30の空気取入口とを空気の流れに沿う方向に所定の隙間を隔てて対向させ、かつファンケース27の空気吐出口を排気ダクト30の空気取入口を含む平面に投影した場合、ファンケース27の空気吐出口を排気ダクト30の空気取入口の内側に開口させるとともにファンケース27の空気吐出口と排気ダクト30の空気取入口との間に空気の流れに対して交差する方向の所定の隙間を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電気自動車の冷却装置に係り、特に、電気自動車に搭載する空冷式の電気部品の冷却性能を向上させた電気自動車の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの電気自動車には、高電圧バッテリや充電器、DC/DCコンバータ等の電気部品が搭載されている。これらの電気部品は、動作時に発熱するため、冷却装置により冷却する必要がある。
従来の電気自動車の冷却装置には、略同じ位置に空気取入口と空気排出口とを備えるボックス内に放熱フィンを有する電気部品を配置し、電気部品の放熱フィンを覆う冷却ダクトを取り付けて略U字形状の空気通路を設け、空気取入口に接続した送風ファンで空気通路に空気を流通させ、電気部品を冷却するものがある。(特開2000−40535)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−40535
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載されるように、電気自動車の冷却装置においては、電気部品の発熱部に接触した放熱フィンに、ファンによって強制的に空気を流通させて冷却している。
電気部品の冷却装置では、放熱フィンに空気を通すだけで高温となる部分を冷却できる。しかし、電気部品をボックス内に設置した場合、ボックス内の空気が、電気部品の放熱フィン以外の部分からの放熱によって温められて高温となる。そして、電気部品が高温となった空気に晒されると、電気部品にかかる熱的な負担が増加することになる。
このような電気部品周辺の空気温度の上昇を防止するには、電気部品を冷却するファン以外に、別の換気用ファンを追加してボックス内を換気することが考えられる。しかし、新たに換気用ファンを追加することは、搭載スペースの確保や、コストアップの面で不利であった。
【0005】
この発明は、専用の換気用ファンを設けることなく、ボックス内に配置される電気部品の冷却性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、空気取入口と空気排出口とを備えるボックスを車両の下部に配置し、前記ボックス内に放熱フィンを有する電気部品を配置し、前記電気部品に前記放熱フィンを覆う冷却ダクトを取り付け、空気を吸引するファンを内部に備えるファンケースを前記冷却ダクトの空気出口部に連結した電気自動車の冷却装置において、前記ボックスの空気排出口にこのボックス内に延びる排気ダクトを設け、前記ファンケースの空気吐出口と前記排気ダクトの空気取入口とを空気の流れに沿う方向に所定の隙間を隔てて対向させ、かつ前記ファンケースの空気吐出口を前記排気ダクトの空気取入口を含む平面に投影した場合、前記ファンケースの空気吐出口を前記排気ダクトの空気取入口の内側に開口させるとともに前記ファンケースの空気吐出口と前記排気ダクトの空気取入口との間に空気の流れに対して交差する方向の所定の隙間を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の電気自動車の冷却装置は、ファンによって放熱フィンを覆う冷却ダクト内の空気を吸引することで電気部品の放熱フィンを効率的に冷却できる。
また、ファンに吸引された空気がファンケースの空気吐出口から排気ダクトの空気取入口へ流れる際、これら両者の間に形成した隙間によって発生する負圧で電気部品が配置されるボックス内に滞留する熱気を車外に排出し、電気部品の放熱フィン以外の部分を効率的に冷却できる。
よって、この発明の電気自動車の冷却装置では、ボックス内の換気を行う専用の換気ファンを新たに設けることなく、ボックス内に搭載される電気部品の冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は電機部品を配置したボックスの平面図である。(実施例)
【図2】図2は電機部品を配置したボックスの底面図である。(実施例)
【図3】図3(A)は図1のA−A線による断面図、図3(B)は図3(A)の矢印Bによる側面図である。(実施例)
【図4】図4はファンケースと排気ダクトの平面図である。(実施例)
【図5】図5はファンケースと排気ダクトの斜視図である。(実施例)
【図6】図6はファンケースの空気吐出口との位置関係を示す排気ダクトの空気取入口の正面図である。(実施例)
【図7】図7はファンケースの空気吐出口と排気ダクトの空気取入口との空気圧力の関係を示す説明図である。(実施例)
【図8】図8はフロントフロア、リヤフロアの間に形成したボックスの斜視図である。(実施例)
【図9】図9はボックスの拡大側面図である。(実施例)
【図10】図10は冷却装置の空気の流れを示す電気自動車の側面図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図10は、この発明の実施例を示すものである。図10において、1は電気自動車、2は車室、3は前輪、4は後輪である。電気自動車1は、図8・図9に示すように、フロントフロア5の後端に上方に延びる縦壁6を設け、縦壁6の上端に後方に延びるリヤフロア7を設けている。電気自動車1は、フロントフロア5の前部に車両幅方向に延びる断面逆U字形状のシート支持部8を設け、フロントシート9を設置している。
また、電気自動車1は、縦壁6の上端からフロントフロア5と平行に前方に延びる上部フロア10を設け、上部フロア10の前端から下方に延びてフロントフロア5と接続する前壁11を設けている。電気自動車1は、縦壁6と上部フロア10と前壁11と縦壁6および前壁11間に挟まれるフロントフロア5の後側部分12との車両幅方向両側にそれぞれ右側壁13、左側壁14を設け、中間に右側仕切り壁15、左側仕切り壁16を設けている。上部フロア10の上には、リヤシート17を設置している。
【0011】
前記電気自動車1は、右側壁13および右側仕切り壁15と、これら右側壁13および右側仕切り壁15間に挟まれる縦壁6と上部フロア10と前壁11とフロントフロア5の後側部分12とによって冷却装置18の一部を構成するボックス19を形成し、このボックス19を車室2の下部の車両幅方向右側に配置している。ボックス19には、前壁11の略中央に車室2内に臨む空気取入口20を備え、右側壁13の後側に車外に臨む空気排出口21を備えている。ボックス19内には、高電圧バッテリや充電器、DC/DCコンバータ等の電気部品22を配置している。
電機部品22は、図3に示すように、下側に放熱フィン23を有している。電気部品22には、放熱フィン23を覆う冷却ダクト24を取り付けている。冷却ダクト24は、図1・図2に示すように、空気入口部25を前壁11の空気取入口20に対向して配置し、空気出口部26にファンケース27の吸引側を連結している。ファンケース27は、ボックス19の空気排出口21に向かう空気吐出口28を備え、内部に空気を吸引するファン29を備えている。ボックス19の空気排出口21には、このボックス19内に配置されるファンケース27に向かって延びる排気ダクト30を設けている。排気ダクト30は、ファンケース27の空気吐出口28に指向する空気取入口31を備えている。
冷却装置18は、図4に示すように、ファンケース27の空気吐出口28と排気ダクト30の空気取入口31とを、空気の流れに沿う方向に所定の隙間S1を隔てて対向させている。また、冷却装置18は、図5・図6に示すように、ファンケース27の空気吐出口28を排気ダクト30の空気取入口31を含む平面に投影した場合、ファンケース27の空気吐出口28を排気ダクト30の空気取入口31の内側に開口させるとともに、ファンケース27の空気吐出口28と排気ダクト30の空気取入口31との間に、空気の流れに対して交差する方向の所定の隙間S2を形成している。これにより、冷却装置18は、ファンケース27の空気吐出口28と排気ダクト30の空気取入口31との間に隙間S1・S2からなる所定の空間32を形成している。
【0012】
この冷却装置18は、冷却ダクト24に連結したファンケース27内に配置されるファン29によって、放熱フィン23を覆う冷却ダクト24内の空気を吸引し、排気ダクト30で車外に排出することで、電気部品22の放熱フィン23を効率的に冷却できる。
また、冷却装置18は、ファン29に吸引された空気がファンケース27の空気吐出口28から排気ダクト30の空気取入口31へ流れる際に、図7に示すように、ファンケース27の空気吐出口28と排気ダクト30の空気取入口31との間に形成した所定の空間32によって、ファンケース27内の圧力P1と、ファンケース27周辺の圧力P2と、排気ダクト30内の圧力P3との関係が、P1>P2>P3となる。
これより、冷却装置18は、これらファンケース26および排気ダクト29の間に形成した隙間S1・S2によって発生する負圧(差圧)で電気部品22が配置されるボックス19内に滞留する熱気を車室2外に排出する。それによって、冷却装置18は、空気取入口20からボックス19内に車室2内の空気を取り入れ、電気部品22の放熱フィン23以外の部分を冷却することができる。
よって、この冷却装置18では、ボックス19内の換気を行う専用の換気ファンを新たに設けることなく、ボックス19内に搭載される電気部品22の冷却性能を向上させることができる。
【0013】
また、従来の冷却装置のように、ファンケース(27に相当する)と排気ダクト(30に相当する)とを直接接合した場合、ファンケースと排気ダクトの接合部分にがたつきや空気の漏れを防止する構造が必要となり、接合構造が複雑になる問題があった。しかし、この冷却装置18においては、ファンケース27の空気吐出口28と排気ダクト30の空気取入口31との間に隙間S1・S2を形成しており、ファンケース27と排気ダクト30との接合部分の構造を簡素化できるため、製造性の向上とコストの削減につながり、組付け性の面でも有利である。
さらに、冷却装置18においては、ファン29による冷却風の排気を車室2外に排出することで、車室2内の空気をボックス19内に取り込み、車室2外に排出する構造のため、電気自動車1に搭載したバッテリの充電時の車室2内の換気が可能となる。特に、夏場において電気自動車1の窓等閉め切って充電する場合な、車室2内が高温となるが、その際の温度上昇を緩和できる。これより、冷却装置18は、車室内換気性能の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この発明の電気自動車の冷却装置は、ボックス内に配置される電機部品の冷却性能を向上させることができるものであり、電気自動車にかぎらず、内燃機関を搭載した車両のボックス内に配置された発熱機器の冷却に応用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 電気自動車
2 車室
18 冷却装置
19 ボックス
20 空気取入口
21 空気排出口
22 電気部品
23 放熱フィン
24 冷却ダクト
25 空気入口部
26 空気出口部
27 ファンケース
28 空気吐出口
29 ファン
30 排気ダクト
31 空気取入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気取入口と空気排出口とを備えるボックスを車両の下部に配置し、前記ボックス内に放熱フィンを有する電気部品を配置し、前記電気部品に前記放熱フィンを覆う冷却ダクトを取り付け、空気を吸引するファンを内部に備えるファンケースを前記冷却ダクトの空気出口部に連結した電気自動車の冷却装置において、前記ボックスの空気排出口にこのボックス内に延びる排気ダクトを設け、前記ファンケースの空気吐出口と前記排気ダクトの空気取入口とを空気の流れに沿う方向に所定の隙間を隔てて対向させ、かつ前記ファンケースの空気吐出口を前記排気ダクトの空気取入口を含む平面に投影した場合、前記ファンケースの空気吐出口を前記排気ダクトの空気取入口の内側に開口させるとともに前記ファンケースの空気吐出口と前記排気ダクトの空気取入口との間に空気の流れに対して交差する方向の所定の隙間を形成したことを特徴とする電気自動車の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−228898(P2012−228898A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96956(P2011−96956)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】