説明

電池用電極の製造方法、電池用電極、双極型電池、組電池、および車両

【課題】ロールプレスの際、集電体の破損防止を図り得る電池用電極の製造方法および電池用電極を提供する。
【解決手段】電池用電極の製造方法は、導電性の樹脂層を含む集電体120に、集電体より圧縮強度が大きい補強部130を配置する補強工程を有する。電池用電極の製造方法はまた、電極スラリー150、160を集電体に塗布する塗工工程を含む。補強工程は、補強部を、長尺状の集電体の短手方向に離隔させ、且つ集電体の長手方向に沿って配置する。塗工工程は、電極層150の端部が補強部の上に位置するように、電極スラリーを塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極の製造方法、電池用電極、双極型電池、組電池、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれており、自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっている。このようないわゆる電動車両においては、放電・充電ができる電源装置の活用が不可欠であり、リチウムイオン二次電池やニッケル・水素二次電池等の電池について様々な研究・開発がなされている。
【0003】
これらの電池に用いられる電極は一般的に、活物質を含む電極層を集電体の表面に形成した構成を有する。製造の際、活物質を含む電極スラリーを集電体の表面に塗布して乾燥させた後、集電体は、電極層とともにロールプレスされる(例えば特許文献1参照。)。集電体としては金属箔が知られているが、電池の高出力密度化および高容量密度化の要求から、電池の更なる軽量化が必要とされており、導電性の樹脂層を含む集電体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−112320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、集電体が樹脂層を含むと金属箔に比べて強度が低下し、ロールプレスの際に圧力に耐えられず集電体が破損する虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ロールプレスの際、集電体の破損防止を図り得る電池用電極の製造方法および電池用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の電池用電極の製造方法は、導電性の樹脂層を含む集電体に、集電体より圧縮強度が大きい補強部を配置する補強工程を有する。本発明の電池用電極の製造方法はまた、電極スラリーを集電体に塗布する塗工工程を含む。補強工程は、補強部を、長尺状の集電体の短手方向に離隔させ、且つ集電体の長手方向に沿って配置する。塗工工程は、電極層の端部が補強部の上に位置するように、電極スラリーを塗布する。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の電池用電極は、導電性の樹脂層を含む集電体と、集電体の表面に形成される電極層と、を含む。本発明の電池用電極はまた、電極層の対向する1組の端部の下に配置される補強部を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電池用電極の製造方法によれば、電極層の端部が補強部の上に位置することとなるので、ロールプレス時に電極層の端部にかかる応力を補強部によって吸収して樹脂層を含む集電体の破損防止を図れ、電池用電極を連続的に製造できる。
【0010】
本発明の電池用電極は、電極層の端部の下に配置される補強部を有するため、電池用電極の製造におけるロールプレス時に、電極層の端部にかかる応力を補強部によって吸収して、樹脂層を含む集電体の破損防止を図れ、電池用電極の連続的な製造を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は第1実施形態の電池用電極の概要を模式的に示した平面概略図、(B)は1−1線に沿う断面概略図、(C)は第1実施形態の電池用電極の概要を模式的に示した平面概略図である。
【図2】実施形態の電池用電極の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】(A)は第1実施形態の補強工程を説明するための平面概略図、(B)は3−3線に沿う断面概略図である。
【図4】(A)は第1実施形態の塗工工程を説明するための平面概略図、(B)は4−4線に沿う断面概略図、(C)は第1実施形態の塗工工程を説明するための平面概略図である。
【図5】双極型リチウムイオン二次電池の外観を模式的に表した斜視図である。
【図6】(A)組電池の平面図であり、(B)は組電池の正面図であり、(C)は組電池の側面図である。
【図7】組電池を搭載した車両の概念図である。
【図8】(A)は第2実施形態の電池用電極の概要を模式的に示した平面概略図、(B)は8−8線に沿う断面概略図、(C)は第2実施形態の電池用電極の概要を模式的に示した平面概略図である。
【図9】(A)は第2実施形態の補強工程を説明するための平面概略図、(B)は9−9線に沿う断面概略図である。
【図10】(A)は第2実施形態の塗工工程を説明するための平面概略図、(B)は10−10線に沿う断面概略図、(C)は第2実施形態の塗工工程を説明するための平面概略図である。
【図11】(A)は第3実施形態の電池用電極の概要を模式的に示した平面概略図、(B)は11−11線に沿う断面概略図、(C)は第3実施形態の電池用電極の概要を模式的に示した平面概略図である。
【図12】(A)は第3実施形態の補強工程を説明するための平面概略図、(B)は12−12線に沿う断面概略図、(C)は第3実施形態の補強工程を説明するための平面概略図である。
【図13】(A)は第3実施形態の塗工工程を説明するための平面概略図、(B)は13−13線に沿う断面概略図、(C)は第3実施形態の塗工工程を説明するための平面概略図である。
【図14】(A)は実施形態と異なる電池用電極の一例を模式的に示した平面概略図、(B)は14−14線に沿う断面概略図である。
【図15】(A)は実施形態と異なる電池用電極の製造方法の一例を示すための平面概略図、(B)は15−15線に沿う断面概略図である。
【図16】実施形態と異なる一例を説明するための平面概略図である。
【図17】実施形態と異なる電池用電極の一例を模式的に示す部分拡大概略図である。
【図18】第1実施形態の電池用電極の部分拡大概略図である。
【図19】実施形態と異なる電池用電極の一例を部分的に拡大して示す断面概略図である。
【図20】実施形態と異なる電池用電極の一例を部分的に拡大して示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下で説明する実施形態において、各実施形態で共通する機能を有する部材については、類似の符号を付し、また、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1において概説すると、本実施形態の電池用電極100は、導電性の樹脂層を含む集電体120と、集電体120の表面に形成される電極層と、を含む。電池用電極100は、双極型リチウムイオン二次電池に用いられるものである。電池用電極100は、電極層としての正極層110を集電体120の一方の面121に有し、電極層としての負極層140を集電体120の他方の面122に有する。電池用電極100はまた、電極層の対向する1組の端部112、114の下、より具体的には、正極層110の端部112、114と集電体120との間に配置される補強部130を含む。
【0014】
集電体120は、導電性を有する樹脂層を含み、好適には、導電性を有する樹脂層からなる。樹脂層は導電性高分子によって形成される。導電性高分子は、導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。代表的な例として、ポリエン系導電性高分子が挙げられる。樹脂層が導電性を有するための他の形態としては、樹脂層が樹脂および導電性フィラーを含む形態が挙げられる。導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。具体的には、導電性フィラーとして、アルミニウム材、ステンレス(SUS)材、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン材、銀材、金材、銅材、チタン材などが挙げられる。
【0015】
正極層110は、正極活物質を含む。また、正極層110は必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。
【0016】
負極層140は、負極活物質を含む。また、負極層140は必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。
【0017】
正極層110および負極層140はバインダを含む。バインダの好適な例として、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドが挙げられる。
【0018】
正極層110および負極層140に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。導電助剤とは、正極層110または負極層140の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0019】
デンドライト析出を防止するため、負極層140の面積は正極層110の面積に比べて大きいことが好ましく、負極層140の外周は正極層110の外周の外側に位置する。そして、負極層140の端部142、144は、補強部130に支持される位置にある。正極層110および負極層140は、集電体120に電気的に接続している。
【0020】
補強部130は、集電体120より圧縮強度が大きい。また補強部130の耐熱温度は、集電体120の耐熱温度より大きいことが好ましい。補強部130は、例えば樹脂によって形成される。補強部130は、例えば、ナイロン66(登録商標)、ポリアセタール、ポリカーボネート、フッ素樹脂(PTFE)、フッ化ビニリデン、PPO、ポリスルホン、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂によって形成され得る。また、補強部130は、金属によって形成され得る。
【0021】
電池用電極100の製造方法について説明する。
【0022】
図2に示すように、電池用電極100の製造方法は、集電体120に補強部130を配置する補強工程S110を含む。電池用電極100の製造方法はまた、正極活物質を含む正極スラリー150(電極スラリー)および負極活物質を含む負極スラリー160(電極スラリー)を集電体120に塗布する塗工工程S120と、正極スラリー150および負極スラリー160を乾燥させる乾燥工程S130と、を含む。また電池用電極100の製造方法は、正極層110および負極層140をプレスするプレス工程S140と、長尺状の集電体120を切断する切断工程S150と、を有する。
【0023】
図3に示すように、補強工程S110は、補強部130を、長尺状の集電体120の短手方向に離隔させ、且つ集電体120の長手方向に沿って配置する。補強工程S110は、正極層110を形成するための、集電体120の一方の面121と、負極層140を形成するための、集電体120の他方の面122とのうち、一方の面121に補強部130を配置する。補強部130は、例えば接着剤によって集電体120に固定される。
【0024】
図4に示すように、塗工工程S120は、正極スラリー150を一方の面121に塗布し、負極スラリー160を他方の面122に塗布する。塗工工程S120は、ロールトゥロールによって集電体120を搬送し、スリットダイ(不図示)によって、正極スラリー150および負極スラリー160を塗布する。スリットダイとしては公知技術を利用できる。塗工工程S120は、正極スラリー150および負極スラリー160を、集電体120の長手方向に沿って間欠的に塗布する。
【0025】
正極スラリー150は、上述したような、正極活物質、導電助剤、およびバインダを含み、これらに加え、粘度を調整するための溶媒を含む。負極スラリー160は、上述したような、負極活物質、導電助剤、バインダを含み、これらに加え、溶媒を含む。正極スラリー150および負極スラリー160に含まれる溶媒は、例えばN−メチル−2−ピロリドンである。
【0026】
塗工工程S120は、補強部130と補強部130との間に正極スラリー150を塗布する。ここで、集電体120の短手方向における正極スラリー150の長さL1a(以下、単に正極スラリー150の幅L1aと称す)は、補強部130と補強部130との間の長さL3より大きい(L1a>L3)。つまり、塗工工程S120は、正極層110の端部112、114が補強部130の上に位置するように、正極スラリー150を塗布する。
【0027】
また、塗工工程S120は、負極層140の端部142、144が補強部130に支持される位置にくるように、負極スラリー160を塗布する。したがって集電体120の短手方向における負極スラリー160の長さL2a(以下、単に負極スラリー160の幅L2aと称す)が、補強部130と補強部130との間の長さL3より大きい(L1a>L3)。
【0028】
負極スラリー160の幅L2aは、正極スラリー150の幅L1aより大きく(L2a>L1a)、また、集電体120の長手方向において、負極スラリー160の長さL2bは、正極スラリー150の長さL1bより大きい(L2b>L3b)。このように塗布することによって、負極層140が正極層110より大きく形成される。
【0029】
乾燥工程S130は、公知の技術によって正極スラリー150および負極スラリー160を乾燥でき、例えば、熱風乾燥炉(不図示)によって乾燥させる。乾燥工程S130において正極スラリー150および負極スラリー160を乾燥させるための乾燥温度T、集電体120の熱変形温度T1(5kg/cm負荷)、および補強部130の熱変形温度T2(5kg/cm負荷)は、T1<T<T2の関係を満たすことが好ましい。
【0030】
例えば、乾燥温度Tが140℃程度であると、補強部130の材質としては、ナイロン66(登録商標)、ポリカーボネート等、熱変形温度T2が150℃以上のものが好適である。また、金属によって形成される補強部130も好適である。
【0031】
プレス工程S140は、ロールトゥロールによって集電体120を搬送しつつ、正極層110および負極層140を、ロールプレスする。そして、切断工程S150は、例えばシャーリングマシン(不図示)によって、長尺状の集電体120を切断し、電池用電極100を形成する。ロールプレスによって、正極層110および負極層140の空隙率が調整される。ロールプレスのプレス圧は、例えば100MPaである。補強部130の圧縮強度が大きくなると、プレス工程S140において補強部130が変形し難く、好ましい。このため補強部130の材質は、乾燥温度Tに加え、プレス圧を考慮して、適宜決定するのが好ましい。
【0032】
電池用電極100を含む双極型リチウムイオン二次電池30(双極型電池)、これを複数電気的に接続してなる組電池40、および組電池40を搭載した電気自動車50(車両)について述べる。
【0033】
図5に示すように、双極型リチウムイオン二次電池30は、長方形状の扁平な形状を有し、長手方向に位置する両端から、電力を取り出すための正極タブ31および負極タブ33がそれぞれ引き出されている。
【0034】
双極型リチウムイオン二次電池30は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素37が、外装材としてのラミネートシート35の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートシート35を外装材として用い、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素37を収納し密封した構成を有している。ここで発電要素37は、電解質を介して電池用電極100を積層した構成を有する。具体的には、1つの電池用電極100の正極層110と、他の電池用電極100の負極層140とが、電解質を介して対向するようにして、電池用電極100、電解質、電池用電極100がこの順に積層されている。電解質としては、公知のものを適用でき、例えば液体電解質またはポリマー電解質が用いられ得る。
【0035】
図6に示すように、組電池40は、双極型リチウムイオン二次電池30が複数、直列に又は並列に電気的に接続した小型の組電池43を、複数、直列に又は並列に電気的に接続した構成を有する。複数の小型の組電池43は、それぞれ、装脱着可能である。
【0036】
小型の組電池43は、バスバーのような部材を用いて相互に電気的に接続し、接続治具41によって複数段積層される。何個の双極型リチウムイオン二次電池30を接続して小型の組電池43を作製するか、また、小型の組電池43を何段積層して組電池40を作製するかは、必要とされる電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0037】
図7に示すように、電気自動車50は、車体中央部の座席下に組電池40を搭載している。座席下に搭載することによって、車内空間およびトランクルームを広く取ることができる。組電池40は、電気自動車50のモータ駆動用電源として用いられ得る。
【0038】
第1実施形態の効果を述べる。
【0039】
電池用電極100は、正極層110の端部112、114の下に配置される補強部130を有するため、プレス工程S140において正極層110の端部112、114にかかる応力を補強部130によって吸収し、樹脂層からなる集電体120の破損防止を図れ、連続的な製造を可能とする。
【0040】
電池用電極100は、正極層110の端部112、114の下、特に、正極層110の端部112、114と集電体120との間に補強部130を有するため、端部112、114の下の集電体120内部に補強部130を配置する場合と異なり、プレス工程S140において正極層110の端部112、114にかかる応力を直接緩和できる。また、集電体120内部に補強部130を配置する場合に比べ、製造が容易である。
【0041】
電池用電極100は、集電体120の両面121、122のうち、一方の面121に補強部130を有するため、両面121、122に補強部を有する場合に比べ、重量、およびコストを抑制できる。
【0042】
電池用電極100では、一方の面122に配置された負極層140の端部142、144が、その一方の面122と反対側の他方の面121に配置された補強部130に支持される位置にある。このため、電池用電極100は、プレス工程S140において負極層140の端部142、144にかかる応力を補強部130によって吸収し、集電体120の破損をより一層効果的に防止できる。
【0043】
電池用電極100は、補強部130がナイロン66(登録商標)、ポリカーボネートまたは金属によって形成されることによって、補強部130の耐熱性を高め、乾燥工程S130において、補強部130の形状維持を図り得る。そして、電池用電極100は、高温化でも補強部130の形状維持を図り得るため、乾燥工程S130において高温でテンションのかかる状況に集電体120がおかれても、集電体120全体の歪み等の発生を抑制できる。
【0044】
電池用電極100の製造方法によれば、正極層110の端部112、114が補強部130の上に位置することとなるので、プレス工程S140において正極層110の端部112、114にかかる応力を補強部130によって吸収して樹脂層を含む集電体120の破損防止を図れ、電池用電極100を連続的に製造できる。
【0045】
電池用電極100の製造方法は、補強工程S110において、長尺状の集電体120の長手方向に補強部130を配置するため、ロールトゥロールによって搬送するとき、集電体120の長手方向にテンションがかかっても、集電体120の変形を抑制できる。
【0046】
電池用電極100の製造方法は、補強工程S110において、集電体120の両面121、122のうち、一方の面121に補強部130を配置するため、両面121、122に補強部130を配置する場合に比べ、電池用電極100の重量、およびコストを抑制できる。
【0047】
電池用電極100の製造方法は、塗工工程S120において、負極層140の端部142、144が補強部130に支持される位置にくるように負極スラリー160を塗布するため、プレス工程S140において負極層140の端部142、144にかかる応力を補強部130によって吸収し、集電体120の破損をより一層効果的に防止できる。
【0048】
双極型リチウムイオン二次電池30は、第1実施形態の電池用電極100を含むため、電池用電極100と同様の効果を奏し、製造時、正極層110の端部112、114にかかる応力を補強部130によって吸収して集電体120の破損防止を図り得る。
【0049】
組電池40は、電池用電極100を含む双極型リチウムイオン二次電池30を、複数電気的に接続した構成を有する。このため組電池40は、電池用電極100と同様の効果を奏し、製造時、正極層110の端部112、114にかかる応力を補強部130によって吸収して集電体120の破損防止を図り得る。
【0050】
電気自動車50は、電池用電極100を含む組電池40を備えるため、電池用電極100と同様の効果を奏し、製造時、正極層110の端部112、114にかかる応力を補強部130によって吸収して集電体120の破損防止を図り得る。
【0051】
<第2実施形態>
概説すると、第2実施形態は、第1実施形態と略同様であるが、補強部が電極層の外周を囲むように配置される点で、第1実施形態と異なる。
【0052】
図8に示すように、第2実施形態の電池用電極200では、補強部230は、正極層210の外周を囲み、正極層210の端部211、212、213、214と集電体220との間に位置する。また、負極層240の端部241、242、243、244の全てが、補強部230に支持される位置にある。
【0053】
図9に示すように、第2実施形態の電池用電極200の製造方法では、補強工程S210(図2参照)は、正極層210の外周を囲む位置に補強部230を配置する。そして、図10に示すように、塗工工程S220は、正極層210の端部211、212、213、214の全ての下に補強部230が位置するように、正極スラリー250を塗布する。また、塗工工程S220は、負極層240の端部241、242、243、244の全てが補強部230に支持される位置にくるように、負極スラリー260を塗布する。
【0054】
第2実施形態の効果を述べる。
【0055】
電池用電極200では、補強部230が、正極層210の外周を囲み、プレス工程S240において、正極層210の端部211、212、213、214の全てにかかる応力を吸収する。このため、電池用電極200は、第1実施形態の効果に加え、集電体220の破損をより一層効果的に防止できるという効果を奏する。
【0056】
電池用電極200では、負極層240の端部241、242、243、244の全てが補強部230に支持される位置にあり、プレス工程S240において、補強部230が、負極層240の端部241、242、243、244の全てにかかる応力を吸収する。このため、電池用電極200は、第1実施形態の効果に加え、集電体220の破損をより一層効果的に防止できるという効果を奏する。
【0057】
電池用電極200の製造方法は、補強工程S210において、正極層210の外周を囲む位置に補強部230を配置し、且つ、塗工工程S220において、正極層210の端部211、212、213、214の全ての下に補強部230が位置するように正極スラリー250を塗布する。このため、プレス工程S240において、補強部230が正極層210の端部211、212、213、214の全てにかかる応力を吸収する。したがって、電池用電極200の製造方法は、第1実施形態の効果に加え、集電体220の破損をより一層効果的に防止できるという効果を奏する。
【0058】
電池用電極200の製造方法は、塗工工程S220において、負極層240の端部241、242、243、244の全てが補強部230に支持される位置にくるように、負極スラリー260を塗布する。このため、プレス工程S240において、補強部230が負極層240の端部241、242、243、244の全てにかかる応力を吸収する。したがって、電池用電極200の製造方法は、第1実施形態の効果に加え、集電体220の破損をより一層効果的に防止できるという効果を奏する。
【0059】
<第3実施形態>
第3実施形態は第2実施形態と略同様であるが、集電体の両面に補強部が配置される点で、第3実施形態は第2実施形態と異なる。
【0060】
図11に示すように、電池用電極300では、正極層310が配置される一方の面321だけでなく、面321と反対側の、他方の面322にさらに補強部370が配置される。
【0061】
負極層340側の補強部370は、負極層340の外周を囲み、負極層340の端部341、342、343、344の下、より具体的には、負極層340の端部341、342、343、344と集電体320との間に配置されている。
【0062】
図12に示すように、電池用電極300の製造方法では、補強工程S310(図2参照)は、正極層310を囲む位置に補強部330を配置するだけでなく、負極層340を囲む位置にも補強部370を配置する。そして、図13に示すように、塗工工程S320は、負極層340の端部341、342、343、344の全ての下に補強部370が位置するように、負極スラリー360を塗布する。
【0063】
第3実施形態の効果を述べる。
【0064】
電池用電極300は、正極層310側に補強部330を有するだけでなく、負極層340側にも補強部370を有し、プレス工程S340において負極層340の端部341、342、343、344にかかる応力をその補強部370によって直接吸収する。このため、電池用電極300は、第2実施形態の効果に加え、集電体320の破損をより一層効果的に防止できるという効果を奏する。
【0065】
電池用電極300の製造方法は、補強工程S310において、正極層310を形成するための一方の面321に補強部330を配置するだけでなく、負極層340を形成するための他方の面322にも補強部370を配置する。このため、プレス工程S340において、負極層340の端部341、342、343、344にかかる応力を補強部370が直接吸収する。したがって、電池用電極300の製造方法は、第2実施形態の効果に加え、集電体320の破損をより一層効果的に防止できるという効果を奏する。
【0066】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。
【0067】
例えば、双極型電池は、積層型(扁平型)に限定されず、本発明は、巻回型(円筒型)の双極型電池を含む。
【0068】
また、本発明は双極型の形態に限定されず、集電体の両面に正極層を配置する形態、および集電体の両面に負極層を配置する形態、つまり非双極型の形態を含む。このとき、電池は、集電体の両面に正極層を配置してなる電池用電極と、集電体の両面に負極層を配置してなる電池用電極とを、電解質を介して積層した構成を有する。
【0069】
また、本発明は、リチウムイオン二次電池に限定されず、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素電池等を含む。
【0070】
また、本発明は、集電体が導電性を有する樹脂層からなる形態に限定されず、集電体が樹脂製の薄膜と金属製の薄膜との多層フィルムである形態を含む。
【0071】
また、本発明は補強部を集電体の表面に配置する形態に限定されない。つまり、本発明は、例えば図14、および図15に示すように、集電体420内部に補強部430を配置する形態を含む。集電体420内部に補強部430を配置する形態では、集電体表面に補強部を配置する形態に比べ、凹凸が少ないため、ロールトゥロールによる搬送の際、巻取りが容易である。また、集電体420内部に補強部430を配置する形態では、集電体表面に補強部を配置する形態のように、集電体表面と補強部との密着を考慮する必要がなく、表面処理を簡素化できる。
【0072】
また、本発明は、補強部が連続的に配置される形態に限定されず、例えば図16に示すように、補強部530が間欠的に配置される形態を含む。
【0073】
また、例えば図17に示すように、補強部630、670が、異なる材質の部材631、632、671、672を組み合わせた構成を有しても良い。図17に示す形態では、補強部630、670は、2層構造を有する。2層のうち、集電体620側の一方631、671は相対的に剛性の高い材料によって形成され、他方632、672は弾性材によって形成される。このような構成にすることによって、充放電時の電極層610、640の収縮および膨張に補強部630、670が追随できる。
【0074】
また、図18で拡大して示すように、上述した第1実施形態の補強部100では、集電体120の厚み方向における断面が矩形形状であるが、本発明はこれに限定されず、補強部の形状は適宜設計できる。例えば図19に示すように、補強部の断面形状は、図18で示すような第1実施形態の補強部130の4つの角131、132、133、134のうちの1つ、角131を面取りした形状であってもよい。第1実施形態のように断面形状が矩形形状であると、電極スラリーを塗布したとき、補強部130の角131の部分で、電極スラリーは拡散し難く、補強部130と電極層110との間に隙間が生じ易い。しかし、図19のように面取りした形状によって、電極スラリーが拡散し易くなり、補強部730と電極層710とを密着させられる。
【0075】
また、図20に示すように、補強部830が細孔831を有してもよい。補強部830が細孔831を有すると、電極スラリーを塗布したとき、電極スラリーは、細孔831に入り込むため拡散し易く、補強部830と電極層810とを密着させられる。
【0076】
また、双極型電池は、第1実施形態のものに限定されず、第2実施形態の電池用電極200または第3実施形態の電池用電極300を含むものであってもよい。また、組電池は、第1実施形態のものに限定されず、第2実施形態の電池用電極200を含む双極型電池、第3実施形態の電池用電極300を含む双極型電池、または、非双極型の電池用電極を含む電池を、複数電気的に接続したものであってもよい。そして車両は、このような組電池を搭載したものであってもよい。
【0077】
また、車両は、電気自動車に限定されず、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)を含む。
【0078】
また、組電池の用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【符号の説明】
【0079】
100、200、300、400、600、700、800 電池用電極、
110、210、310、410、610、710、810 正極層(電極層)、
112、114、211、212、213、214、311、312、313、314、412、414、614、714、814、 正極層の端部、
120、220、320、420、520、620、720、820 集電体、
121、221、321 集電体の面(一方の面)、
122、222、322 集電体の面(他方の面)、
130、230、330、370、430、530、630、670、730、
830 補強部、
140、240、340、440、640、740、840 負極層(電極層)、
142、144、242、244、341、342、343、344、442、444、644、744、844 負極層の端部、
150、250、350、450、550 正極スラリー(電極スラリー)、
160、260、360、460 負極スラリー(電極スラリー)、
S110、S210、S310 補強工程、
S120、S220、S320 塗工工程、
S130、S230、S330 乾燥工程、
S140、S240、S340 プレス工程、
S150、S250、S350 切断工程、
30 双極型リチウムイオン二次電池(双極型電池)、
40 組電池、
50 電気自動車(車両)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の樹脂層を含む集電体に、前記集電体より圧縮強度が大きい補強部を、長尺状の前記集電体の短手方向に離隔させ、且つ前記集電体の長手方向に沿って配置する補強工程と、
電極層の端部が前記補強部の上に位置するように、電極スラリーを前記集電体に塗布する塗工工程と、を含む電池用電極の製造方法。
【請求項2】
前記補強工程は、前記電極層としての正極層を形成するための前記集電体の一方の面と、前記電極層としての負極層を形成するための前記集電体の他方の面とのうち、前記一方の面に前記補強部を配置し、
前記塗工工程は、前記電極スラリーとしての正極スラリーを前記一方の面に塗布し、前記電極スラリーとしての負極スラリーを前記他方の面に塗布する請求項1に記載の電池用電極の製造方法。
【請求項3】
前記塗工工程は、前記負極層の端部が、前記一方の面に配置された補強部に支持される位置にくるように、前記負極スラリーを塗布する請求項2に記載の電池用電極の製造方法。
【請求項4】
前記補強工程は、前記正極層の外周を囲む位置に前記補強部を配置する請求項2または請求項3に記載の電池用電極の製造方法。
【請求項5】
前記補強工程は、前記他方の面にさらに前記補強部を配置する請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載の電池用電極の製造方法。
【請求項6】
導電性の樹脂層を含む集電体と、
前記集電体の表面に形成される電極層と、
前記電極層の対向する1組の端部の下に配置される補強部と、を含む電池用電極。
【請求項7】
前記補強部は、前記電極層の端部と前記集電体との間に配置される請求項6に記載の電池用電極。
【請求項8】
前記電極層としての正極層が前記集電体の一方の面に形成され、前記電極層としての負極層が前記集電体の他方の面に形成され、前記補強部は前記一方の面に配置される請求項6または請求項7に記載の電池用電極。
【請求項9】
前記負極層の端部は、前記一方の面に配置された前記補強部に支持される位置にある請求項8に記載の電池用電極。
【請求項10】
前記補強部は、前記正極層の外周を囲む請求項8または請求項9に記載の電池用電極。
【請求項11】
前記補強部は、前記他方の面にさらに配置される請求項8〜請求項10のいずれか1つに記載の電池用電極。
【請求項12】
前記補強部は、ナイロン66、ポリカーボネート、または金属によって形成される請求項6〜請求項11のいずれか1つに記載の電池用電極。
【請求項13】
請求項8〜請求項11のいずれか1つに記載の電池用電極を含む双極型電池。
【請求項14】
請求項6〜請求項12のいずれか1つに記載の電池用電極を含む電池を複数電気的に接続してなる組電池。
【請求項15】
請求項14に記載の組電池をモータ駆動用電源として搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−250978(P2010−250978A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96403(P2009−96403)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】