電波吸収体
【課題】抵抗膜の表面抵抗率が長期間に亘ってほぼ一定し、初期の良好な電波吸収性能を長期間維持できる、耐久性に優れた電波吸収体を提供する。
【解決手段】誘電体層1の片面側に抵抗膜2を備え、誘電体層1の反対面側に電波反射体3を備えた電波吸収体Aであって、抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した構成とする。抵抗膜2に対する湿気(水分を含んだ外気)の侵入、接触がガスバリア性フィルム5,5で遮断されると共に、抵抗膜2に対する熱や光の影響も小さくなるため、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれて、表面抵抗率の変化による電波吸収性能の低下が防止され、長期間に亘り初期の良好な電波吸収性能が維持されて、耐久性及び信頼性が大幅に向上する。
【解決手段】誘電体層1の片面側に抵抗膜2を備え、誘電体層1の反対面側に電波反射体3を備えた電波吸収体Aであって、抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した構成とする。抵抗膜2に対する湿気(水分を含んだ外気)の侵入、接触がガスバリア性フィルム5,5で遮断されると共に、抵抗膜2に対する熱や光の影響も小さくなるため、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれて、表面抵抗率の変化による電波吸収性能の低下が防止され、長期間に亘り初期の良好な電波吸収性能が維持されて、耐久性及び信頼性が大幅に向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速道路のETC料金所などのITS分野で電波障害や誤動作をなくすために利用される電波吸収体、特に透視性を有する電波吸収体であって、良好な電波吸収性能を長期間維持できる耐久性に優れた電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路のETC料金所では、ETCの電波による誤動作が0.03%程度発生しており、これをなくすために、料金所のレーン間に電波吸収体、特に、お互いのレーンの視認が可能な透視性を有する電波吸収体を設置することが望まれている。そのような誤動作をなくす透視可能な電波吸収体として、透明なアクリル樹脂等からなる誘電体の片面に、ITO等の金属酸化物を蒸着して抵抗薄膜を形成した透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等を積層し、誘電体の反対面に光を透過する金属線格子、金属薄膜等の電波反射体を設けたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
この電波吸収体は、ITO等の金属酸化物を蒸着して抵抗薄膜を形成しているため、良好な透明性を有している。けれども、ITO等を蒸着した抵抗薄膜は耐候性が悪いため、上記の電波吸収体を屋外で使用すると、短期間の内に抵抗薄膜が劣化して、電波吸収性能が損なわれるという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、上記の問題を解決すべく、極細導電繊維を含んだ透明な抵抗膜と光を透過する電波反射体との間に透明な誘電体層を備え、抵抗膜の外側に透明な保護層を備えた透明電波吸収体を提案した(特許文献2)。この透明電波吸収体は、極細導電繊維を含んだ抵抗膜がITO抵抗薄膜と遜色のない良好な透明性を有し、しかも、極細導電繊維を含んだ抵抗膜の基材を自由に選択できるため、耐候性の良好な基材を選択することで、ITO抵抗薄膜に比べて耐候性を向上させることができ、短期間のうちに劣化して電波吸収性能の著しい低下を招く心配を解消できるものである。
【0005】
しかしながら、この透明電波吸収体は、抵抗膜の電気抵抗(表面抵抗率)が変化するため、長期間にわたって良好な電波吸収性能を維持することが難しいという問題があり、この問題は前記特許文献1の透明電波吸収体においても見られた。そこで、本発明者は、抵抗膜を水分を含む外気から封止することによって耐久性を向上させた透明電波吸収体を開発したが、屋外で使用する場合には、長期間にわたる電波吸収性能の維持が充分でないことが判ってきた。その原因は明らかでないが、空気中の水分(湿気)の他に熱や光が大きく影響しているものと推測される。
【特許文献1】特開平5−335832号公報
【特許文献2】特開2005−311330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題に対処するためになされたもので、抵抗膜の電気抵抗(表面抵抗率)が長期間に亘ってほぼ一定し、初期の良好な電波吸収性能を長期間に亘って維持できる、耐久性に優れた電波吸収体を提供することを、解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の電波吸収体は、誘電体層の片面側に抵抗膜を備え、誘電体層の反対面側に電波反射体を備えた電波吸収体であって、抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムを積層したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、請求項2の電波吸収体のように、抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムを積層してなる複合積層体の周囲、又は、周囲と両面、又は、周囲と片面を、接着剤で封止することが好ましく、また、請求項3の電波吸収体のように、誘電体層の片面側に表面被覆層を設けて、誘電体層と表面被覆層との間に複合積層体を設けることが好ましい。その場合、請求項4の電波吸収体のように、誘電体層と表面被覆層との間に複数の複合積層体を重ねて設け、請求項5の電波吸収体のように、複数の複合積層体の間に空気層又は他の誘電体層を形成してもよく、また、請求項6の電波吸収体のように、複合積層体と表面被覆層との間に空気層又は他の誘電体層を形成してもよい。更に、請求項7の電波吸収体のように、電波反射体の両面側に設けた誘電体層の該電波反射体と反対面側に複合積層体をそれぞれ設けた構成としてもよい。
【0009】
また、本発明においては、請求項8の電波吸収体のように、ガスバリア性フィルムとして、5.0(g/m2・day)以下の水蒸気透過度と、5.0(cc/m2・day・atm)以下の酸素透過度を有する単層又は複層の合成樹脂フィルムが使用され、具体的には、請求項9の電波吸収体のように、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリルのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルムが好ましく使用される。そして、より好ましくは、請求項10の電波吸収体のように、上記の単層もしくは複層の合成樹脂フィルムの少なくとも片面、又は、複層の合成樹脂フィルムの層間の界面に、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか単独又は2種以上の蒸着層が形成される。尚、上記の水蒸気透過度はJIS K 7129に従って測定した値であり、酸素透過度はJIS K 7126である。
【0010】
更に、本発明においては、請求項11の電波吸収体のように、抵抗膜が極細導電繊維を含んだ膜であって、極細導電繊維が凝集することなく分散して互いに接触していること、請求項12の電波吸収体のように、表面被覆層が紫外線吸収剤を含有した合成樹脂板であること、請求項13の電波吸収体のように、抵抗膜に電極を付設すること、請求項14の電波吸収体のように、四周側面を接着剤で封止すること、請求項15の電波吸収体のように、接着剤が80℃での耐熱性を有するエチレン酢酸ビニル共重合樹脂系又はポリカーボネートエステル樹脂系のホットメルト型接着シートであること、請求項16の電波吸収体のように、各構成部材が透視性を有するものであることが好ましい。
【0011】
ここで、「凝集することなく」とは、抵抗膜を顕微鏡で観察したとき平均径が0.5μm以上の凝集塊がないことを意味し、また、「接触」とは、極細導電繊維が現実に接触している場合と、極細導電繊維が導通可能な微小間隙をあけて接近している場合の双方を意味する。また、透視性とは光学特性であるヘーズが10%以下であることを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電波吸収体のように抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムが配置されていると、ガスバリア性フィルムは水蒸気透過度や酸素透過度が低いので、抵抗膜に対する湿気(水分を含んだ外気)が実質的に遮断されると共に、熱や光の影響も小さくなり、抵抗膜の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。従って、表面抵抗率の変化(増加・減少)による電波吸収性能の低下が防止され、長期間に亘って初期の良好な電波吸収性能を維持できるので、耐久性及び信頼性が大幅に向上する。
【0013】
請求項2の電波吸収体は、抵抗膜の両面のガスバリア性フィルムと、抵抗膜の周囲を封止する接着剤とによって、抵抗膜が密閉状態になるため、抵抗膜と湿気の接触が遮断されると共に、熱や光の影響が小さくなり、抵抗膜の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。
【0014】
請求項3の電波吸収体は、表面被覆層によって複合積層体が被覆保護され、また、複合積層体の抵抗膜が表面被覆層によって二重に密閉されるので、抵抗膜に対する湿気の遮断作用が一層強くなり、熱や光の影響も更に小さくなる。
【0015】
請求項4の電波吸収体は、長期使用中に、一つ複合積層体の抵抗膜に不都合が生じて、その表面抵抗率が所定範囲を逸脱し、電波吸収作用が発揮されなくなった場合でも、他の複合積層体の抵抗膜によって表面抵抗率を所定範囲に維持し、電波吸収性能を長期間に亘って発揮することができる。また、複数の複合積層体の抵抗膜により、電波吸収性能(リターンロス)が発現する周波数帯域を広げることもできる。
【0016】
請求項5の電波吸収体や、請求項6の電波吸収体は、複合積層体の間の空気層又は他の誘電体層や、複合積層体と表面被覆層との間の空気層又は他の誘電体層によって、電波吸収体全体の厚みを増大、調節することができる。そして、請求項7の電波吸収体は、両面側から伝播してくる電波を中央の電波反射体で反射してそれぞれの複合積層体の抵抗膜で吸収することができ、電波反射体を共用できるので、安価な電波吸収体とすることができる。
【0017】
請求項8の電波吸収体は、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度と酸素透過度が、それぞれ5.0(g/m2・day)以下、5.0(cc/m2・day・atm)以下と小さいため、抵抗膜に対する湿気(水分を含有した外気)の遮断作用が充分であり、そのようなガスバリア性フィルムの具体例は、請求項9の電波吸収体に使用される、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリルのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルムである。特に、請求項10の電波吸収体のように、上記の単層もしくは複層の合成樹脂フィルムの少なくとも片面、又は、複層の合成樹脂フィルムの層間の界面に、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか単独又は2種以上の蒸着層が形成されていると、これらのシリカ等の蒸着層は抵抗膜に対する湿気、熱、光の影響を遮断する作用が強いため、水蒸気透過度や酸素透過度が更に減少して抵抗膜に対する湿気の接触がほぼ完全に断たれると共に、熱や光の影響が殆どなくなり、抵抗膜の表面抵抗率がほぼ一定に保たれて、長期に亘り初期の良好な電波吸収性能が維持される。尚、複層の合成樹脂フィルムは、単層の合成樹脂フィルムに比べて、厚みが大きくなる分だけ湿気等の遮断作用が向上し、取扱いも容易になる利点がある。
【0018】
請求項11の電波吸収体は、抵抗膜に含まれる極細導電繊維が極めて細く、しかも凝集することなく分散して接触しているため、抵抗膜が良好な透明性を有し、接触、導通に寄与する極細導電繊維の本数が相対的に多く、接触頻度が高い。従って、極細導電繊維の含有量を少なくしても所定の表面抵抗率を確保することが可能であり、極細導電繊維を減らせる分だけ抵抗膜の透明性を更に向上させることができる
【0019】
請求項12の電波吸収体は、屋外で使用した場合に、紫外線吸収剤を含有した合成樹脂板からなる表面被覆層によって、抵抗膜や誘電体層や電波反射体が紫外線等から保護されるので耐候性が向上し、また、合成樹脂板からなる表面被覆層は強度があるので、飛来物による複合積層体や誘電体層などの破損を防止することもできる。
【0020】
請求項13の電波吸収体は、抵抗膜に付設した電極にテスターの針を当て、抵抗膜の表面抵抗率を随時測定することによって、抵抗膜の表面抵抗率の変化を監視し、電波吸収性能の変化を類推することができる。
【0021】
請求項14の電波吸収体は、四周側面が接着剤で封止されているので、湿気の侵入を確実に防止することができ、また、請求項15の電波吸収体は、接着剤が80℃の耐熱性を有する特定樹脂のホットメルト型接着シートであるので、屋外で使用した場合に直射日光を受けて昇温しても、接着剤が軟化して密閉性が低下することはない。そして、請求項16の電波吸収体は、これを通して向こう側を見ることができ、その周囲を明るくすることもできるので、例えばETC料金所のレーン間に設置されてETCの誤動作を防止する電波吸収体として好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る電波吸収体の断面図、図7の(a)(b)(c)は同電波吸収体の抵抗膜を示す概略断面図、図8は同抵抗膜のカーボンナノチューブを正面から見た分散状態を示す模式図である。
【0024】
この電波吸収体Aは、透視性の誘電体層1の片面側(表面側:電波の入射面側)に透視性の抵抗膜2を備え、誘電体層1の反対面側(裏面側)に透視性(光透過性)の電波反射体3を備えたものであって、抵抗膜2の両面には、水蒸気透過度や酸素透過度の低い透視性のガスバリア性フィルム5,5が積層されている。そして、この抵抗膜2とガスバリア性フィルム5,5との複合積層体は、誘電体層1とその片面側の透視性の表面被覆層4との間に配置され、透視性の接着剤6を介して誘電体層1と複合積層体と表面被覆層4が一体に接着されると共に、この複合積層体の周囲が該接着剤6で封止されている。また、誘電体層1の反対面側(裏面側)には、電波反射体3と透視性の裏面被覆層7が重ねられ、接着剤などで一体化されている。
【0025】
複合積層体は、上記の電波吸収体Aのように、接着剤6を介して誘電体層1と表面被覆層7に接着しなければならないものではなく、少なくとも、誘電体層1と表面被覆層7との外周部を接着剤6で接着して複合積層体の周囲を封止すれば足るものである。また、電波反射体3や裏面被覆層7は誘電体層1の裏面側に単に重ねるだけでもよいが、上記の電波吸収体Aのように誘電体層1と電波反射体3と裏面被覆層7が接着剤などで一体化されていると、取扱性が向上するので好ましい。
【0026】
この電波吸収体Aは、抵抗膜2の両面が、水蒸気透過度や酸素透過度の低いガスバリア性フィルム5と、接着剤6と、誘電体層1又は表面被覆層4とによって三重に覆われ、且つ、抵抗膜2とガスバリア性フィルム5との複合積層体の周囲が接着剤6で封止されて密閉されているため、抵抗膜2への湿気(水分を含んだ外気)の侵入、接触が断たれると共に、抵抗膜2に対する熱や光の影響が小さくなり、抵抗膜2の表面抵抗率が所定範囲内(後述する280〜400Ω/□の範囲内)でほぼ一定に保たれる。従って、表面抵抗率の変化(増加・減少)による電波吸収性能の低下が防止され、長期間に亘って初期の良好な電波吸収性能を維持できるので、耐久性及び信頼性が大幅に向上する。また、構成部材のうち誘電体層1、抵抗膜2、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、裏面被覆層7はいずれも透視性を有し、電波反射体3も透視性ないし光透過性を有するので、これらの構成部材からなる電波吸収体Aは透視性を有するものとなる。
【0027】
上記の誘電体層1は高誘電率の合成樹脂やガラスなどからなるものであって、この誘電体層1の厚さは、用途や実用強度を考慮して0.5〜15mmの範囲内で、λ/4電波吸収体理論(λ:誘電体層1内での電波の波長)に基づいて設計されている。二次曲げ加工性を考慮すると、ガラスよりも熱可塑性合成樹脂で誘電体層1を形成することが望ましく、更に、屋外で使用する際の耐熱性や透視性を考慮すると、融点や光線透過率が高いアクリル系樹脂(メチルメタクリレート等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等)、ポリエステル系樹脂(ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等)などで誘電体層1を形成することが望ましい。これらの中で、ポリカーボネート樹脂は機械的強度に優れ、全光線透過率が85%以上(厚さ3mm)、ヘーズが1.0%以下と透明性に優れているので、屋外で使用する透視性ないし透明な電波吸収体の誘電体層1としては特に好ましく用いられる。なお、ポリカーボネートはメチルメタクリレート樹脂に比べて多少、耐候性に劣るが、紫外線吸収剤等を添加したり、表面被覆層4として後述する耐候性に優れた樹脂板を使用することによって、実用に十分な耐候性を付与できる。
【0028】
上記の抵抗膜2は、周波数帯域1〜18GHzの電波吸収に適するように、自由空間の電波特性インピーダンスに合致する376.7Ω/□を目標値とする表面抵抗率を備えた透視性、好ましくは透明な薄膜であって、具体的には表面被覆層4や誘電体層1の厚み、電波吸収性能の斜入射特性(15°入射)などを加味して、280〜400Ω/□の表面抵抗率を備えたITO等の金属酸化物の蒸着膜や、極細導電繊維を含んだ同様の表面抵抗率を有する薄膜からなるものが好ましく用いられ、図1に示す電波吸収体Aでは、後者の極細導電繊維を含んだ抵抗膜2が採用されている。
【0029】
この極細導電繊維を含んだ抵抗膜2は、極細導電繊維を分散させた塗液を、いずれか一方のガスバリア性フィルム5の片面に塗布して形成した薄膜であって、極細導電繊維の含有量、塗膜厚み、分散状態などの諸条件を調節することにより、280〜400Ω/□の表面抵抗率が得られるようにしたものである。この実施形態では、極細導電繊維としてカーボンナノチューブを使用し、カーボンナノチューブの目付け量が15〜450mg/m2、好ましくは15〜250mg/m2となるように、塗液のカーボンナノチューブの含有量や塗膜の厚みなどを調節して塗布することで、280〜400Ω/□の表面抵抗率を備えた抵抗膜2を形成している。このような抵抗膜2は、カーボンナノチューブの目付け量(含有量、濃度)等に対応して抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ定まり、表面抵抗率の大きいバラツキが生じにくい。尚、上記の目付け量は、抵抗膜2を電子顕微鏡で観察し、その平面面積に占めるカーボンナノチューブの面積割合を測定し、これに電子顕微鏡で観察した厚みとカーボンナノチューブの比重(グラファイトの文献値2.1〜2.3の平均値2.2を採用)を乗算して算出した値である。
【0030】
抵抗膜2は、上記のように一方のガスバリア性フィルム5の片面に塗液を塗布して形成されるが、例えば、ガスバリア性フィルム5が厚くてシートないしプレートに近いような場合には、次のような方法で形成してもよい。一つの方法は、剥離フィルムに上記塗液を塗布して抵抗膜を形成すると共に、必要に応じてその上に接着層を形成して転写フィルムを形成し、この転写フィルムを一方のガスバリア性フィルム5の片面に圧着して抵抗膜もしくは抵抗膜と接着層を転写する方法であり、もう一つの方法は、ガスバリア性フィルム5と同種もしくは相溶性のある異種の熱可塑性樹脂フィルムの片面に上記塗液を塗布して抵抗膜2を形成し、この抵抗膜形成フィルムを一方のガスバリア性フィルム5の片面に熱圧着する方法である。
【0031】
極細導電繊維としては、上記のカーボンナノチューブが最も好ましく用いられるが、その他の繊維であっても抵抗膜2の表面抵抗率を280〜400Ω/□にすることができるものであれば制限なく使用可能である。例えば、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、ナノワイヤーなどの極細長金属繊維、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、ナノワイヤーなどの極細長金属酸化物繊維などの、直径が0.3〜100nmで長さが0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μmのものが用いられる。
【0032】
抵抗膜2のカーボンナノチューブは凝集することなく分散して互いに接触しており、具体的にはカーボンナノチューブが1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触している。そして、抵抗膜2がカーボンナノチューブとバインダーからなるものであると、図7の(a)に示すように、カーボンナノチューブ2aはバインダー2bの内部に上記の分散状態で三次元構造をなして分散して互いに接触しているか、或いは、図7の(b)に示すように、カーボンナノチューブ2aの一部がバインダー2b中に入り込み他の部分がバインダー2bの表面から突出ないし露出して上記の分散状態で分散して互いに接触しているか、或いは、一部のカーボンナノチューブ2aが図7の(a)のようにバインダー2bの内部に、他のカーボンナノチューブ2aが図7の(b)のようにバインダー2bの表面から突出ないし露出して上記分散状態で三次元構造をなして分散して互いに接触している。また、抵抗膜2がバインダーを含まない場合は、図7の(c)に示すように、カーボンナノチューブが上記分散状態で分散し、互いに接触して、カーボンナノチューブの三次元構造の層となっている。尚、上記バインダーとしては、透明な合成樹脂が透視性の抵抗膜2を得るうえで好ましい。
【0033】
これらのカーボンナノチューブ2aの正面から見た分散状態を模式的に示したものが図8であって、この図8から理解できるように、カーボンナノチューブ2aは多少曲がっているが、1本ずつ或いは1束ずつ分離し、互いに複雑に絡み合うことなく、即ち凝集することなく、単純に交差した状態で抵抗膜2の内部或いは表面に分散し、それぞれの交点で接触している。尚、カーボンナノチューブ2aは完全に1本ずつ或いは1束ずつ分離して分散している必要はなく、一部に絡み合った小さな凝集塊があってもよいが、既述したように「凝集することなく」とは長径と短径の平均値が0.5μm以上の凝集塊がないことを意味するものであるから、存在する凝集塊の平均径は0.5μm未満であることが必要である。
【0034】
このように、極細導電繊維であるカーボンナノチューブ2aが抵抗膜2内で多少曲がって1本ずつ或は1束ずつ分離して、互いに複雑に絡み合うことなく三次元構造をなして分散していると、抵抗膜2を曲げてもカーボンナノチューブ2aが伸びたりずれたりするだけであるからお互いの接触が保たれる。そのため、この電波吸収体Aを曲げても表面抵抗率の増加が殆どなく、電波吸収性能を維持することができるので、湾曲した電波吸収体を作製できるし、施工現場で曲げて使用することもできる。
【0035】
カーボンナノチューブ2aは直径が0.3〜80nmと極めて細いため、これを前記の目付け量に相当する量だけ含んだ抵抗膜2は透視性が良好であるが、特に上記のような分散状態でカーボンナノチューブ2aが分散していると、凝集しないで接触、導通に寄与するカーボンナノチューブ2aの本数が相対的に増え、チューブ相互の接触頻度が高くなるため、その分だけカーボンナノチューブ2aの目付け量を少なくしても前記の表面抵抗率(280〜400Ω/□)を確保できるようになり、このカーボンナノチューブ2aを少なくできる分だけ透視性を更に向上させることが可能となる。ちなみに、前記の目付け量に相当する量のカーボンナノチューブを含んだ280〜400Ω/□の表面抵抗率を有する抵抗膜2の光線透過率(分光光度計による550nmの光の透過率)は、87%前後であり、それゆえ透視性の良い誘電体層1と透光量の多い電波反射体3を選択して電波吸収体を作製すれば、全光線透過率が40%以上、ヘーズが10%以下の透視性を有する電波吸収体を確実に得ることができる。より好ましい電波吸収体は、全光線透過率が50%以上、ヘーズが10%以下である。
【0036】
上記のカーボンナノチューブ2aには、中心軸線の周りに複数のカーボン壁を同心的に備えた多層カーボンナノチューブや、中心軸線の周りに単独のカーボン壁を備えた単層カーボンナノチューブがある。前者の多層カーボンナノチューブは、中心軸線の周りに直径が異なる複数の円筒状に閉じたカーボン壁を有する多層になって構成されたものと、渦巻き状に多層に形成されているものとがある。その中でも、好ましい多層カーボンナノチューブは、2〜30層、より好ましくは2〜15層重なったものが用いられる。そのような多層カーボンナノチューブを前記の分散状態で分散させると、既述したように光線透過率の良い抵抗膜2が形成される。多層カーボンナノチューブは1本ずつ分離した状態で分散しているものが殆どであるが、2層ないし3層カーボンナノチューブは、束になって分散している場合もある。
【0037】
一方、後者の単層カーボンナノチューブは、上記のようにカーボン壁が中心軸線の周りに円筒状に閉じた単層のチューブである。このような単層カーボンナノチューブは通常2本以上が束になった状態で存在し、その束が1束ずつ分離して、束同士が複雑に絡み合うことなく凝集せずに単純に交差した状態で抵抗膜2の内部もしくは表面に分散され、それぞれの交点で接触している。そして、好ましくは10〜50本の単層カーボンナノチューブが集まって束になったものが用いられる。なお、1本ずつ分離した状態で分散している場合も当然本発明に含まれる。
【0038】
カーボンナノチューブの分散性を高めるためには、抵抗膜2中に分散剤を含有させることが望ましい。分散剤としては、酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩溶液、3級アミン修飾アクリル共重合物、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物などの高分子系分散剤やカップリング剤などが好ましく使用される。
【0039】
抵抗膜2は、バインダーのないカーボンナノチューブのみからなる薄膜であってもよいが、カーボンナノチューブの脱落防止性、表面抵抗率の安定性、透明性などのために、バインダーを使用することが好ましい。このバインダーとしては、熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などの透明な樹脂が使用され、また、熱や紫外線や電子線や放射線で硬化する硬化性樹脂、例えばメラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂などの透明な樹脂も使用される。なお、このバインダーとしては透光性樹脂を使用してもよく、このような樹脂を使用しても抵抗膜2を薄くすることで透視性を有する抵抗膜2とすることができる。また、このバインダーにはコロイダルシリカのような無機材を添加してもよく、その場合は表面硬度や耐摩耗性に優れた抵抗膜2が形成される。
【0040】
抵抗膜2の両面に積層されるガスバリア性フィルム5は、5.0(g/m2・day)以下の水蒸気透過度と、5.0(cc/m2・day・atm)以下の酸素透過度を有する単層又は複層の合成樹脂フィルムが使用される。水蒸気透過度及び酸素透過度が上記範囲よりも大きい合成樹脂フィルムは、抵抗膜2への湿気(水分を含んだ外気)の侵入、接触を遮断する作用が不充分で、抵抗膜2の表面抵抗率をほぼ一定に保つことができないため、使用することはできない。
【0041】
ガスバリア性フィルム5の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレン(メタセロン触媒低分子量ポリエチレンフィルム)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミドMXD6)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリルのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルムを挙げることができる。その中でも、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレンのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルム、例えばポリビニルアルコールの単層フィルム、ポリエチレンテレフタレートの単層フィルム、ポリビニルアルコールフィルムの片面又は両面にポリエチレンテレフタレートフィルムや超低密度ポリエチレンフィルムを透明な接着剤でラミネートした複層フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面又は両面に超低密度ポリエチレンフィルムを透明な接着剤でラミネートした複層フィルム等は、ガスバリア性が良好であるため好ましく使用され、特に、複層フィルムは単層フィルムよりも厚くてガスバリア性に優れ、取扱性も良いことから、極めて好ましく使用される。これらのガスバリア性フィルムは、その厚さによってガスバリア性能が変化し、一般に厚さが薄くなるほど水蒸気透過率や酸素透過率は低くなるので、上述した範囲の水蒸気透過率及び酸素透過率を有する厚さのものを使用する必要がある。
【0042】
図9の(a)に示すように、単層のガスバリア性フィルム5の少なくとも片面には、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか単独又は2種以上の蒸着層5aを形成することが好ましい。同様に、複層のガスバリア性フィルムの少なくとも片面に上記のシリカ等の蒸着層を形成することも好ましい。また、図9の(b)に示すように、合成樹脂フィルム51の片面に他の合成樹脂フィルム52をラミネートした複層(2層)のガスバリア性フィルム5の層間の界面に上記のシリカ等の蒸着層5aを形成したり、図9の(c)に示すように、合成樹脂フィルム51の両面に他の合成樹脂フィルム52,52をラミネートした複層(3層)のガスバリア性フィルム5の片側の層間の界面に上記のシリカ等の蒸着層5aを形成することも好ましい。上記のシリカ等の蒸着層5aは、湿気の遮断作用に加えて、熱や光の影響を遮断する作用を有するため、このようなシリカ等の蒸着層5aをガスバリア性フィルム5の少なくとも片面又は層間の界面に形成すると、抵抗膜2に対する湿気(水分を含んだ外気)の侵入、接触を遮断する作用、及び、抵抗膜2に対する熱と光の影響を遮断する作用が大幅に向上し、抵抗膜2の表面抵抗率をほぼ一定に保って、電波吸収性能の低下を一層確実に防止できるようになる。因みに、厚さ12μmのポリビニルアルコールフィルムにシリカ等の蒸着層5aを形成した場合は、水蒸気透過度が0.1(g/m2・day)、酸素透過度が0.1(cc/m2・day・atm)以下になり、ポリビニルアルコールフィルムフィルム単独の場合に比べて、水蒸気透過度や酸素透過度がおよそ50分の1に減少し、ガスバリア性能が顕著に向上する。
【0043】
上記のようなガスバリア性フィルム5を抵抗膜2の両面に積層した複合積層体は、誘電体層1や表面被覆層4よりも一回り小さく形成されて、誘電体層1と表面被覆層4の間に配置され、接着剤6を介して誘電体層1と複合積層体と表面被覆層4が接着一体化されると共に、複合積層体の周囲が該接着剤6で封止されて密閉されている。この複合積層体は、一方のガスバリア性フィルム5の片面に、前記の極細導電繊維を分散させた塗液を塗布して抵抗膜2を形成し、この抵抗膜2を覆うように他方のガスバリア性フィルム5を重ねた後、所定の大きさに切断して作製されるが、ガスバリア性フィルム5の片面に前記のシリカ等の蒸着層5aが形成されている場合には、一方のガスバリア性フィルム5のシリカ等の蒸着層5aが形成されていない片面に抵抗膜2を形成し、その上に他方のガスバリア性フィルム5をシリカ等の蒸着層5aが表面被覆層4側となるように重ねて複合積層体を作製することが、湿気、熱、光などの遮断性能を高める上で好ましい。
【0044】
誘電体層1の裏面側に設けられる電波反射体3は、透視性ないし透明性を有する導電材からなるものであって、例えば4〜250メッシュ程度の目を備えた導電メッシュ材や金属メッシュ材、或いは、金属金網や金属格子、或いは、開口率の大きいパンチングメタル、或いは、表面抵抗率が10Ω/□以下の透視性ないし透明性を有する導電膜を形成した透明フィルムなどが好ましく使用される。
【0045】
抵抗膜2を覆う表面被覆層4は、誘電体層1と同様の透視性を有する合成樹脂やガラスなどからなる層であって、この表面被覆層4は、抵抗膜2を湿気(水分を含む外気)から遮断する目的と、抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5を積層した複合積層体や誘電体層1を、直射日光による紫外線劣化から保護する目的で設けられたものであり、更に、合成樹脂板からなる表面被覆層4であると、飛来物の衝突による破損も防止することができる。そのため、表面被覆層4の厚さは、1〜4mm程度の耐候性に優れた強度のある透視性を有するアクリル系樹脂板や、紫外線吸収剤を含有させて耐候性を高めた透視性を有する同程度の厚みのポリエステル系、オレフィン系等の合成樹脂板が好ましく使用される。特に、紫外線吸収剤を含有させたポリカーボネート樹脂板は機械的強度に優れ、耐候性や透明性も良好であるので、表面被覆層4として極めて好ましい。
【0046】
また、電波反射体3を覆う裏面被覆層7は、電波反射体3や誘電体層1を飛来物衝突による破損や直射日光による紫外線劣化から保護する目的で設けられたものであって、表面被覆層4と同様の樹脂板、即ち、厚さ1〜4mm程度の耐候性に優れた強度のある透視性を有するアクリル系樹脂板、紫外線吸収剤を含有させて耐候性を高めた透視性を有する同程度の厚みのポリエステル系、オレフィン系等の合成樹脂板、特に、紫外線吸収剤を含有させたポリカーボネート樹脂板などが好ましく用いられる。
【0047】
接着剤6は、誘電体層1と複合積層体と表面被覆層4を接着一体化すると共に、複合積層体の周囲を封止して、抵抗膜2に対する周囲からの湿気の侵入、接触を阻止するものであって、例えば、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレンモノカルボン酸ビニルエステル共重合体系、エチレン−アクリル酸ビニルエステル共重合体系、ポリカーボネートエステル系などのホットメルト型接着シートや、シリコーン系、エポキシ系、アクリル系、オルガノポリシロキサン系、カルバミン酸エステル系、ビニル系、加水分解性シリル基系、シリル化ウレタン系、ポリオキシアルキレン重合体系などの硬化型の接着剤(シーリング剤)や、樹脂を溶剤に溶かした合成樹脂塗液などの接着剤が使用される。このうち、比較的穏やかな加熱条件で軟化溶融して優れた接着性を発現し、且つ、80℃での耐熱性を有する屋外使用に適したエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリカーボネートエステル樹脂系のホットメルト型接着シートは特に好ましく使用され、また、室温から100℃未満の温度域で粘着性ないし接着性を有し優れた接着性能を発揮するシリコーン系接着剤も特に好ましく使用される。
【0048】
上記のホットメルト型接着シートを、誘電体層1と複合積層体との間、及び、複合積層体と表面被覆層4との間に挟んで、熱プレスにより接着一体化すると、軟化溶融したホットメルト型接着シートの外周部が複合積層体の周囲に回り込んで、複合積層体の周囲が自然に封止される利点があり、また、誘電体層1と複合積層体と表面被覆層4のそれぞれの接着界面での光の散乱が少なくなるので、透視性に優れた電波吸収体Aを得ることができる。
【0049】
なお、接着剤6は無色透明のものが使用されるが、例えば、誘電体層1と表面被覆層4との外周部のみを接着して複合積層体の周囲を封止する場合や、後述するように電波吸収体の四周側面を接着剤で接着封止する場合には、不透明の接着剤を使用してもよい。
【0050】
以上のような電波吸収体Aは、例えば次の方法で製造することができる。先ず、カーボンナノチューブなどの極細導電繊維と、溶媒と、必要に応じて前記バインダーと、必要に応じて前記分散剤とを充分混合して塗液を調製する。そして、この塗液を前記のガスバリア性フィルム5の片面に塗布して表面抵抗率が280〜400Ω/□の抵抗膜2を形成すると共に、この抵抗膜2を覆うようにもう一枚のガスバリア性フィルム5を積層し、これを切断して誘電体層1や表面被覆層4よりも一回り小さい複合積層体を作製する。
【0051】
次いで、前記の合成樹脂板等からなる誘電体層1の片面に、接着剤6(ホットメルト型接着シート)と、上記の複合積層体と、接着剤6(ホットメルト型接着シート)と、前記の合成樹脂板からなる表面被覆層4を重ねると共に、誘電体層1の反対面に電波反射体3と、ホットメルト型接着シートと、前記の合成樹脂板からなる裏面被覆層7を重ね、この積層物を上下の艶板で挟みながら加熱してホットメルト型接着シートを軟化溶融させることにより、接着一体化すると同時に、複合積層体の周囲に回り込んだ接着剤で複合積層体の周囲を接着、封止して、電波吸収体Aを製造する。また、上記積層物を脱気した後、上下のガラス基板に挟み込み、真空脱気して加熱圧着しても、同様に製造できる。このようにして得られる電波吸収体Aは、その全光線透過率を40%以上とし、ヘーズを10%以下として、良好な透視性(視認性)を付与することができる。
【0052】
なお、透視性を有しないが透光性を有する電波吸収体Aとしたい場合には、例えば、誘電体層1や表面被覆層4や裏面被覆層7として予め光拡散剤や充填剤を添加したものを用いたり、或いは、表面被覆層4や裏面被覆層7の外表面に微細な凹凸を形成したりして、ヘーズを高くすればよい。そして、不透明の電波吸収体Aとしたい場合は、誘電体層1、表面被覆層4、裏面被覆層7となる合成樹脂やガラスに顔料などの着色剤を添加することによって不透明としたり、或は、電波反射体3に光を透過しない金属板などを使用したり、或は、抵抗膜2にカーボンなどを添加して不透明にすればよい。
【0053】
以上のような電波吸収体Aは、抵抗膜2の両面のガスバリア性フィルム5,5の水蒸気透過度や酸素透過度が低く、湿気(水分を含んだ外気)の遮断作用が優れており、特に、ガスバリア性フィルム5の片面や層間の界面にシリカ等の蒸着層5aが形成されていると、抵抗膜2に対する熱や光の影響を遮断する作用も優れている。そして、抵抗膜2は、そのような遮断性能に優れたガスバリア性フィルム5,5と、接着剤6と、誘電体層1又は表面被覆層4とによって三重に覆われ、且つ、抵抗膜2とガスバリア性フィルム5との複合積層体の周囲が接着剤6で封止されて密閉されているため、抵抗膜2への湿気の侵入、接触が遮断されると共に、抵抗膜2に対する熱や光の影響も遮断され、抵抗膜2の表面抵抗率が280〜400Ω/□の範囲内でほぼ一定に保たれる。従って、この電波吸収体Aは、表面抵抗率の変化(増加・減少)による電波吸収性能の低下が防止され、長期間に亘って初期の良好な電波吸収性能を維持できるので、耐久性及び信頼性が大幅に向上する。また、屋外で使用した場合でも、表面被覆層4及び裏面被覆層7によって、抵抗膜2や誘電体層1や電波反射体3を紫外線劣化から保護することができ、飛来物による破損を防止することもできるので、耐久性及び信頼性が更に向上する。しかも、この電波吸収体はAは、前述のように全光線透過率が40%以上、ヘーズが10%以下の良好な透視性(視認性)を有するので、例えばETC料金所のレーン間に設置されてETCの誤動作を防止する電波吸収体として好適に使用することができる。
【0054】
図2は本発明の他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0055】
この電波吸収体Bは、誘電体層1と表面被覆層4の間に設ける複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)を、誘電体層1及び表面被覆層4と同一の形状、大きさにしている点、及び、電波吸収体の四周側面全体を接着剤60で接着封止している点で、前述の図1に示す電波吸収体Aと異なっている。この電波吸収体Bは、四周側面全体を接着剤60で接着封止するので、表面被覆層4、複合積層体、誘電体層1、電波反射体3、裏面被覆層7を同一の形状及び大きさとして、側面全体が平坦となるようにしている。
【0056】
電波吸収体Bの側面全体を覆う接着剤60としては、前述のホットメルト型接着シート、硬化型の接着剤(シーリング剤)、樹脂塗液などが使用されるが、この中でも電波吸収体Bの側面全体に塗布し易い硬化型の接着剤(シーリング剤)や樹脂塗液が好ましく用いられる。
【0057】
この電波吸収体Bの他の構成、誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、接着剤6、裏面被覆層7などの材質は、前述の電波吸収体Aと同様であるので、説明を省略する。
【0058】
このような透視性を有する電波吸収体Bは、前述の電波吸収体Aを製造する際に、誘電体層1、抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体、電波反射体3、表面被覆層4、裏面被覆層7、接着剤6(ホットメルト型接着シート)を、それぞれ同一の形状及び大きさに揃えて積層し、熱圧着一体化して電波吸収体Bの本体部分を作製した後、その四周側面全体に前記の硬化型の接着剤60(シーリング剤)等を塗布、硬化させ、側面全体を接着封止することによって製造される。
【0059】
このような電波吸収体Bも、抵抗膜2の両面が、水蒸気透過率及び酸素透過率の低いガスバリア性フィルム5と、接着剤6と、誘電体層1又は表面被覆層4によって三重に覆われ、且つ、複合積層体の周囲が接着剤60で封止されて密閉されているため、抵抗膜2に対する湿気の侵入、熱や光の影響が遮断されて、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。そして、接着剤6により、誘電体層1、複合積層体、表面被覆層4のそれぞれの界面が密着して光散乱が少なくなるため、透視性や光線透過率が向上し、また、電波反射体3や裏面被覆層7は側面の接着剤60で接着一体化されるので、ホットメルト型接着シート等で接着する必要がなくなり、製造が容易となる。
【0060】
図3は本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0061】
この電波吸収体Cは、表面被覆層と裏面被覆層を省略し、誘電体層1より一回り小さい複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)を誘電体層1の片面(表面)に設けると共に、誘電体層1の反対面に電波反射体3を設け、複合積層体の表面及び周囲を接着剤6で被覆、封止したものである。
【0062】
この電波吸収体Cのその他の構成、誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、ガスバリア性フィルム5、接着剤6の材質は、前記電波吸収体Aと同様であるから、説明を省略する。
【0063】
このような電波吸収体Cも、抵抗膜2の両面が、水蒸気透過率及び酸素透過率の低いガスバリア性フィルム5と、接着剤6又は誘電体層1によって二重に覆われ、且つ、複合積層体の周囲が接着剤60で封止されて密閉されているため、抵抗膜2に対する湿気の侵入、熱や光の影響が遮断されて、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。そして、表面被覆層や裏面被覆層を省略した分だけ、透視性や光線透過率が向上する利点もある。
【0064】
図4は本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0065】
この電波吸収体Dは、複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)と表面被覆層4との間に空気層8を形成し、接着剤で複合積層体と表面被覆層4を接着していない点で、前述の図2に示す電波吸収体Bと異なっている。この空気層8は、複合積層体と表面被覆層4との外周部に設けられたスペーサ9によって形成されている。このスペーサ9は、厚みが大きい帯状のホットメルト型接着シートを配置したり、前述した硬化型の接着剤(シーリング剤)や樹脂塗液を厚く塗布したり、他の部材、例えば帯状の合成樹脂シートやプレートを配置することによって設けられたものである。なお、空気層8は、誘電体層1と複合積層体との間に形成してもよい。
【0066】
この電波吸収体Dの他の構成、誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、接着剤6、60、裏面被覆層7の材質等は、前述の電波吸収体Bのそれらと同様であるので説明を省略する。
【0067】
このような電波吸収体Dは、前記の図2に示す電波吸収体Bを製造する際に、誘電体層1に重ねた複合積層体の周囲にスペーサ9を配置し、その上に表面被覆層4を重ね合わせることで、容易に製造することができる。
【0068】
このような電波吸収体Fは、抵抗膜2の両面が、水蒸気透過率及び酸素透過率の低いガスバリア性フィルム5と、表面被覆層4、又は、接着剤6及び誘電体層1とで二重又は三重に覆われ、且つ、複合積層体の周囲が接着剤60で封止されて密閉されているため、外部からの湿気の侵入が遮断されると共に、抵抗膜2にに対する熱や光の影響が遮断され、また、空気層8に含まれる水分がガスバリア性フィルム5を透過して抵抗膜2と接触することもないので、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。なお、空気層8に乾燥剤などを内在させて湿気を除去するようにしてもよい。
【0069】
図5は本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0070】
この電波吸収体Eは、誘電体層1の片面側(表面側)に、接着剤6(ホットメルト型接着シート)と、複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)と、上記接着剤6と、他の誘電体層10と、上記接着剤6と、上記複合積層体と、上記接着剤6と、表面被覆層4とをこの順で重ねると共に、誘電体層1の反対面側(裏面側)に電波反射体3と裏面被覆層7とを重ねて、これらを接着一体化し、その電波吸収体の四周側面全体を接着剤60で接着封止したものである。
【0071】
この電波吸収体Eは、誘電体層1の片面側に、他の誘電体層10を挟んで二つの複合積層体を設けている点で、前記の各電波吸収体と異なっている。この誘電体層10は誘電体層1と同様の樹脂やガラスからなるもので、0.1〜5mm程度の厚さを有するものが使用される。この電波吸収体Eを構成する誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、接着剤6,60、裏面被覆層7は、前記の各電波吸収体で用いられたものと同じものであるから、説明を省略する。
【0072】
なお、上記の誘電体層10に代えて、二つの複合積層体の間にスペーサを挟むことにより空気層を形成してもよく、また、場合によっては、誘電体層10や空気層を挟んで複合積層体を三つ以上設けてもよい。同様に、前記の電波吸収体B,C,Dにおいて、空気層や他の誘電体層を挟んで複数の複合積層体を設けるようにしてもよい。
【0073】
このような電波吸収体Eは、それぞれの複合積層体の抵抗膜2が、その両面の水蒸気透過率及び酸素透過率の低いガスバリア性フィルム5と、接着剤6と、誘電体層1,10又は表面被覆層4によって三重に覆われると共に、各複合積層体の側面が接着剤60で封止されて密閉されているため、抵抗膜2に対する湿気の侵入、熱や光の影響が遮断されて、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれ、初期の電波吸収性能が維持される。しかも、この電波吸収体Eのように抵抗膜2,2が二つあると、長期使用中に一方の抵抗膜2に万一不都合が生じて表面抵抗率が280〜400Ω/□の範囲を逸脱したとしても、他方の抵抗膜2で表面抵抗率を上記範囲に保って電波吸収性能を維持できるので、耐久性及び信頼性が一層向上し、また、二つの抵抗膜2、2によって電波吸収性能(リターンロス)が発現する周波数帯域を広げることもできる。この電波吸収体Eは、二つの複合積層体を設けたため、透明性が若干低下し、全光線透過率が30%以上の範囲となるが、ヘーズは10%以下になるので透視性は良い。
【0074】
なお、誘電体層10の厚みが6.5mmのときは15°入射の電波吸収性能が良く、誘電体層10の厚みが7.0mmのときは45°入射の電波吸収性能が良いことから、誘電体層10を上記の厚みとして、複合積層体を0.5mmの間隔をあけて設けることが好ましい。
【0075】
図6は本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0076】
この電波吸収体Fは、電波反射体3の両面側に誘電体層1、1を設け、この誘電体層1、1の電波反射体2と反対面側に、接着剤6(ホットメルト型接着シート)と、複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)と、上記接着剤6と、表面被覆層4をそれぞれ重ねて接着一体化すると共に、その四周側面の全体を接着剤60[硬化型の接着剤(シーリング剤)又は樹脂塗液]で接着封止したものである。
【0077】
この電波吸収体Fや前記の電波吸収体Eでは、接着剤6(ホットメルト型接着シート)によって、誘電体層1(10)、複合積層体、表面被覆層4を全面接着しているが、外周部のみを接着してもよい。また、この電波吸収体Fや前記の電波吸収体Eでは、四周側面を接着剤60[硬化型の接着剤(シーリング剤)又は樹脂塗液]で接着封止しているが、接着剤6(ホットメルト型接着シート)を熱圧着して接着封止してもよい。
【0078】
この電波吸収体Fを構成する誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、接着剤6,60は、前記の各電波吸収体に使用されたものと同様であるから、説明を省略する。
【0079】
このような電波吸収体Fは、抵抗膜2が、その両面の水蒸気透過度及び酸素透過度の低いガスバリア性フィルム5,5と、接着剤6と、誘電体層1又は表面被覆層4とで三重に覆われると共に、複合積層体の側面が接着剤60で封止されて密閉されているため、抵抗膜2に対する湿気の侵入、熱や光の影響が遮断されて抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。しかも、両側の表面被覆層4、4から入射する電波を電波反射体3で反射させて吸収することができ、電波反射体3を共用できるので安価な電波吸収体とすることができる。なお、この電波吸収体Fは、二つの複合積層体を有するため、透視性が若干低下して全光線透過率が30%以上の範囲となるが、ヘーズが10%以下となるので透視性は良い。
【0080】
以上の電波吸収体A〜Fはいずれも、抵抗膜2に電極が付設されていないが、抵抗膜2に帯状の銅箔等からなる電極を付設してもよい。このように電極を付設すると、テスターの針を電極に当てて、抵抗膜2の表面抵抗率を随時測定することにより、抵抗膜2の表面抵抗率の変化を監視し、電波吸収性能の変化を類推できる利点がある。
【0081】
また、以上の電波吸収体A〜Fの周囲に金属製の枠体を取付け、この枠体の電波入射側の表面に、電波吸収シート(例えばフェライト等の磁性材料を合成ゴムや合成樹脂のシートに含有させたもの)を貼付けるようにしてもよい。このようにすると、枠体によって電波吸収体の周縁部が保護され、高速道路のETC料金所などへの取付作業がしやすくなり、電波吸収体の構成部材が使用中に分解する心配もなくなる。そして、金属製枠体に当たる電波が電波吸収シートにより吸収されるため、枠体による電波吸収性能の低下を防止することもできる。
【0082】
次に、本発明の効果を確認するために行った実験について説明する。
【0083】
[実験1]
溶媒としてのイソプロピルアルコール/水混合物(混合比3:1)中に、文献Chmical Physics Letters、323(2000)P580−585に基づき合成した直径1.3〜1.8nmの単層カーボンナノチューブを酸処理にて精製したものと、分散剤としてのポリアルキレンエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物を加えて均一に混合、分散させ、単層カーボンナノチューブを0.003質量%、分散剤を0.05質量%含む塗液を調整した。
【0084】
PVA(ポリビニルアルコール)フィルムにシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmの市販のシリカ蒸着フィルム[三菱樹脂(株)製のラックバリアS]の両面に、厚さ25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムをラミネートして、図9の(c)に示すようなガスバリア性フィルム、即ち、層間の界面にシリカ蒸着層を形成した3層ラミネート構造のガスバリア性フィルムを作製した。そして、このガスバリア性フィルムの表面に、上記の塗液を単層カーボンナノチューブの目付量が約27mg/m2となるように塗布、乾燥して、表面抵抗率が300Ω/□の透明な抵抗膜を形成すると共に、この抵抗膜を覆うように、抵抗膜の形成されていない上記のガスバリア性フィルムを重ね合わせて複合積層体を作製した。この複合積層体を70×70mmの大きさに切断し、その相対向する2辺に沿って一対の帯状の銅箔からなる電極(幅5mm,長さ100mm)を導電接着剤で抵抗膜に接着すると共に、四隅を接着し、70×70mmの電極付き複合積層体を作製した。
【0085】
図10の(a),(b)に示すように、この電極30の付いた複合積層体20の上下両面に、接着剤6としてEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)よりなる80mm角のホットメルト型接着シート(厚さ0.5mm)を重ね、更にその上下に80mm角のポリカーボネート板40、40(厚さ2mm)を重ねて、これを100mm角の艶板で上下から挟み、130℃で加熱することにより、ホットメルト型接着シート6,6を軟化溶融させて、電極付き複合積層体20とポリカーボネート板40,40を接着一体化すると共に、電極付き複合積層体20の外周部を接着剤6で封止した本試験体を作製した。
【0086】
本試験体について、抵抗膜の表面抵抗率の耐熱試験変化を、オーブン(タバイエスペック製)を用いて80℃の恒温で調べた。その結果を図11のグラフに示す。
【0087】
比較のために、80mm角のポリカーボネート板(厚さ2mm)の片面に上記の塗液を単層カーボンナノチューブの目付量が約27mg/m2となるように塗布、乾燥して、表面抵抗率が300Ω/□の透明な抵抗膜を形成すると共に、この抵抗膜に上記の銅箔からなる電極を付設し、この抵抗膜を覆うように、80mm角のポリカーボネート板(厚さ2mm)を重ねて、四周側面をシリコーン接着剤(シーリング剤)で接着封止した比較用試験体を作製した。そして、この比較用試験体について、上記と同様に抵抗膜の表面抵抗率の耐熱試験変化を調べた。その結果を図11のグラフに併せて示す。
【0088】
[実験2]
実験1と同様にして本試験体を作製し、その抵抗膜の表面抵抗率の耐湿試験変化を、恒温恒湿器(プラシナスルシファー、タバイエスペック製)を用いて温度60℃、湿度90%の条件で調べた。その結果を図12のグラフに示す。
比較のために、実験1と同様にして比較用試験体を作製し、上記と同様に抵抗膜の表面抵抗率の耐湿試験変化を調べた。その結果を図12のグラフに併せて示す。
【0089】
[実験3]
実験1と同様にして本試験体を作製し、その抵抗膜の表面抵抗率の屋外暴露試験変化を、兵庫県たつの市のタキロン株式会社網干工場常設屋外暴露試験機台(正南向き、45°傾斜台)に設置して調べた。その結果を図13のグラフに示す。
比較のために、実験1と同様にして比較用試験体を作製し、上記と同様に抵抗膜の表面抵抗率の屋外暴露試験変化を調べた。その結果を図13のグラフに併せて示す。
【0090】
図11のグラフに示す耐熱試験結果からわかるように、比較用試験体の抵抗膜は、表面抵抗率が日数の経過にしたがって漸増し、5日経過で17%(51Ω/□)増加し、10日経過で25%(75Ω/□)増加し、21日経過で35%(105Ω/□)も増加していていることがわかった。従って、この抵抗膜を用いた電波吸収体であれば、10日経過後には375Ω/□となり、これ以降には電波が吸収され難くなる。これに対し、本試験体のように、複合積層体の抵抗膜が、ガスバリア性フィルムで挟まれ、複合積層体の上下両面と外周部がホットメルト型接着シートで接着封止されているものは、日数が経過しても抵抗膜の表面抵抗率が−1%(−3Ω/□)減少していて変化が極めて少なく略一定しており、ガスバリア性フィルムによって、抵抗膜の表面抵抗率の変化(増加・減少)が確実に防止されていることがわかった。従って、表面抵抗率が変化しても297〜300Ω/□の範囲であり、このような複合積層体の抵抗膜を用いた電波吸収体は、外部使用における熱に関する限り、長期間電波吸収機能を発揮することがわかる。
【0091】
図12のグラフに示す耐湿度試験結果からわかるように、比較用試験体の抵抗膜は、その表面抵抗率が日数の経過にしたがって漸増し、3日経過で31.3%(94Ω/□)増加し、5日経過で38%(114Ω/□)増加し、10日経過で46%(138Ω/□)増加し、21日経過で52%(156Ω/□)も増加していることがわかった。従って、この抵抗膜を用いた電波吸収体であれば、3日経過後には394Ω/□となり、これ以降には電波が吸収され難くなる。これに対し、本試験体のように、複合積層体の抵抗膜がガスバリア性フィルムで挟まれ、複合積層体の上下両面と外周部がホットメルト型接着シートで接着封止されているものは、日数が経過しても表面抵抗率が0%(0Ω/□)増減なしで変化が極めて少なく一定しており、上記のガスバリア性フィルムによって表面抵抗率の変化が確実に防止されていることがわかった。従って、抵抗膜の表面抵抗率が変化しても300Ω/□であり、このような複合積層体の抵抗膜を用いた電波吸収体は、外部使用における熱、温度に関する限り、長期間電波吸収性能を発揮することがわかる。
【0092】
図13のグラフに示す屋外暴露試験結果からわかるように、比較用試験体の抵抗膜は、表面抵抗が日数の経過にしたがって漸増し、1日経過で18.5%(55.5Ω/□)増加し、50日経過で23.1%(69Ω/□)増加し、100日経過で24.3%(73Ω/□)増加し、130日経過で25.7%(77Ω/□)も増加していることがわかった。従って、この抵抗膜を用いた電波吸収体であれば、100日経過後には377Ω/□となり、これ以降には電波が吸収され難くなる。これに対し、本試験体のように、複合積層体の抵抗膜がガスバリア性フィルムで挟まれ、複合積層体の上下両面と外周部がホットメルト型接着シートで接着封止されているものは、屋外暴露開始(平成18年3月22日)後、経過日数が130日経過しても、抵抗膜の表面抵抗率が7.7%(23.1Ω/□)増加に留まり、変化が少ない。従って、この複合積層体を用いた電波吸収体であれば、130日経過後には323Ω/□となり、電波吸収体として有用な範囲を維持し、上記のガスバリア性フィルムによって抵抗膜の表面抵抗率の変化(増加)が確実に防止されていることがわかった。また、真夏の110日経過後(平成18年7月12日)から、130日後(平成18年8月1日)の20日間のグラフの傾きは、20日で最大0.6Ω/□上昇から、1日で0.03Ω/□/日であり、今後1年間の上昇はすべて夏と仮定しても、11Ω/□であり、従って、例えば、当初の表面抵抗率を300Ω/□とすると1年間表面抵抗率が変化しても311Ω/□であり、5年間でも355Ω/□であり、この複合積層体の抵抗膜を用いた電波吸収体は、外部使用での太陽光を受けても長期間電波吸収性能を発揮することがわかる。ただし、ガスバリア性フィルムで抵抗膜を挟まなければ、屋外暴露開始20日経過で23%上昇(69Ω/□)となり、その後も上昇量が20日間で最大6Ω/□以上となり、1日で0.3Ω/□、1年で109.5Ω/□上昇となり、このような電波吸収体は太陽光を受ける外部使用では、長期間電波吸収性能を発揮することができないことは自明である。
【0093】
尚、屋外暴露試験結果では、20日後までの上昇率が高いので、屋外暴露安定化および光照射安定化という操作を予め抵抗膜に対して行い、故意に表面抵抗率を上げて安定させることが好ましい。この操作は例えば、ワコム電創(株)製のソーラーシュミレーターWXS−155S−L2、AM1.5GMM(太陽光極近似光)を使用して行うことができる。
【0094】
以上の実験結果から、本発明の電波吸収体は、ガスバリア性フィルムによって、抵抗膜に対する湿気の侵入、接触が遮断されると共に、抵抗膜に対する熱や光の影響が小さくなり、抵抗膜の表面抵抗率の変化による電波吸収性能の低下が防止されて、長期に亘って初期の良好な電波吸収性能を維持できることが裏付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図7】(a)(b)(c)は抵抗膜の部分断面図である。
【図8】抵抗膜に含まれるカーボンナノチューブを正面から見た分散状態を示す模式図である。
【図9】(a)(b)(c)はシリカ蒸着層を形成した異なる態様のガスバリア性フィルムの部分断面図である。
【図10】(a)は本試験体の分解側面図であり、(b)は本試験体の平面図である。
【図11】耐熱試験による抵抗膜の表面抵抗率と経過日数との関係を示すグラフである。
【図12】耐湿度熱試験による抵抗膜の表面抵抗率と経過日数との関係を示すグラフである。
【図13】屋外暴露試験による抵抗膜の表面抵抗率と経過日数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0096】
1 誘電体層
2 抵抗膜
2a カーボンナノチューブ
2b バインダー
3 電波反射体
4 表面被覆層
5 がすバリア性フィルム
5a シリカ等の蒸着層
6,60 接着剤
7 裏面被覆層
8 空気層
9 スペーサー
20 複合積層体
30 電極
A,B,C,D,E,F 電波吸収体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高速道路のETC料金所などのITS分野で電波障害や誤動作をなくすために利用される電波吸収体、特に透視性を有する電波吸収体であって、良好な電波吸収性能を長期間維持できる耐久性に優れた電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路のETC料金所では、ETCの電波による誤動作が0.03%程度発生しており、これをなくすために、料金所のレーン間に電波吸収体、特に、お互いのレーンの視認が可能な透視性を有する電波吸収体を設置することが望まれている。そのような誤動作をなくす透視可能な電波吸収体として、透明なアクリル樹脂等からなる誘電体の片面に、ITO等の金属酸化物を蒸着して抵抗薄膜を形成した透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等を積層し、誘電体の反対面に光を透過する金属線格子、金属薄膜等の電波反射体を設けたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
この電波吸収体は、ITO等の金属酸化物を蒸着して抵抗薄膜を形成しているため、良好な透明性を有している。けれども、ITO等を蒸着した抵抗薄膜は耐候性が悪いため、上記の電波吸収体を屋外で使用すると、短期間の内に抵抗薄膜が劣化して、電波吸収性能が損なわれるという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、上記の問題を解決すべく、極細導電繊維を含んだ透明な抵抗膜と光を透過する電波反射体との間に透明な誘電体層を備え、抵抗膜の外側に透明な保護層を備えた透明電波吸収体を提案した(特許文献2)。この透明電波吸収体は、極細導電繊維を含んだ抵抗膜がITO抵抗薄膜と遜色のない良好な透明性を有し、しかも、極細導電繊維を含んだ抵抗膜の基材を自由に選択できるため、耐候性の良好な基材を選択することで、ITO抵抗薄膜に比べて耐候性を向上させることができ、短期間のうちに劣化して電波吸収性能の著しい低下を招く心配を解消できるものである。
【0005】
しかしながら、この透明電波吸収体は、抵抗膜の電気抵抗(表面抵抗率)が変化するため、長期間にわたって良好な電波吸収性能を維持することが難しいという問題があり、この問題は前記特許文献1の透明電波吸収体においても見られた。そこで、本発明者は、抵抗膜を水分を含む外気から封止することによって耐久性を向上させた透明電波吸収体を開発したが、屋外で使用する場合には、長期間にわたる電波吸収性能の維持が充分でないことが判ってきた。その原因は明らかでないが、空気中の水分(湿気)の他に熱や光が大きく影響しているものと推測される。
【特許文献1】特開平5−335832号公報
【特許文献2】特開2005−311330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題に対処するためになされたもので、抵抗膜の電気抵抗(表面抵抗率)が長期間に亘ってほぼ一定し、初期の良好な電波吸収性能を長期間に亘って維持できる、耐久性に優れた電波吸収体を提供することを、解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の電波吸収体は、誘電体層の片面側に抵抗膜を備え、誘電体層の反対面側に電波反射体を備えた電波吸収体であって、抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムを積層したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、請求項2の電波吸収体のように、抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムを積層してなる複合積層体の周囲、又は、周囲と両面、又は、周囲と片面を、接着剤で封止することが好ましく、また、請求項3の電波吸収体のように、誘電体層の片面側に表面被覆層を設けて、誘電体層と表面被覆層との間に複合積層体を設けることが好ましい。その場合、請求項4の電波吸収体のように、誘電体層と表面被覆層との間に複数の複合積層体を重ねて設け、請求項5の電波吸収体のように、複数の複合積層体の間に空気層又は他の誘電体層を形成してもよく、また、請求項6の電波吸収体のように、複合積層体と表面被覆層との間に空気層又は他の誘電体層を形成してもよい。更に、請求項7の電波吸収体のように、電波反射体の両面側に設けた誘電体層の該電波反射体と反対面側に複合積層体をそれぞれ設けた構成としてもよい。
【0009】
また、本発明においては、請求項8の電波吸収体のように、ガスバリア性フィルムとして、5.0(g/m2・day)以下の水蒸気透過度と、5.0(cc/m2・day・atm)以下の酸素透過度を有する単層又は複層の合成樹脂フィルムが使用され、具体的には、請求項9の電波吸収体のように、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリルのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルムが好ましく使用される。そして、より好ましくは、請求項10の電波吸収体のように、上記の単層もしくは複層の合成樹脂フィルムの少なくとも片面、又は、複層の合成樹脂フィルムの層間の界面に、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか単独又は2種以上の蒸着層が形成される。尚、上記の水蒸気透過度はJIS K 7129に従って測定した値であり、酸素透過度はJIS K 7126である。
【0010】
更に、本発明においては、請求項11の電波吸収体のように、抵抗膜が極細導電繊維を含んだ膜であって、極細導電繊維が凝集することなく分散して互いに接触していること、請求項12の電波吸収体のように、表面被覆層が紫外線吸収剤を含有した合成樹脂板であること、請求項13の電波吸収体のように、抵抗膜に電極を付設すること、請求項14の電波吸収体のように、四周側面を接着剤で封止すること、請求項15の電波吸収体のように、接着剤が80℃での耐熱性を有するエチレン酢酸ビニル共重合樹脂系又はポリカーボネートエステル樹脂系のホットメルト型接着シートであること、請求項16の電波吸収体のように、各構成部材が透視性を有するものであることが好ましい。
【0011】
ここで、「凝集することなく」とは、抵抗膜を顕微鏡で観察したとき平均径が0.5μm以上の凝集塊がないことを意味し、また、「接触」とは、極細導電繊維が現実に接触している場合と、極細導電繊維が導通可能な微小間隙をあけて接近している場合の双方を意味する。また、透視性とは光学特性であるヘーズが10%以下であることを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電波吸収体のように抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムが配置されていると、ガスバリア性フィルムは水蒸気透過度や酸素透過度が低いので、抵抗膜に対する湿気(水分を含んだ外気)が実質的に遮断されると共に、熱や光の影響も小さくなり、抵抗膜の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。従って、表面抵抗率の変化(増加・減少)による電波吸収性能の低下が防止され、長期間に亘って初期の良好な電波吸収性能を維持できるので、耐久性及び信頼性が大幅に向上する。
【0013】
請求項2の電波吸収体は、抵抗膜の両面のガスバリア性フィルムと、抵抗膜の周囲を封止する接着剤とによって、抵抗膜が密閉状態になるため、抵抗膜と湿気の接触が遮断されると共に、熱や光の影響が小さくなり、抵抗膜の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。
【0014】
請求項3の電波吸収体は、表面被覆層によって複合積層体が被覆保護され、また、複合積層体の抵抗膜が表面被覆層によって二重に密閉されるので、抵抗膜に対する湿気の遮断作用が一層強くなり、熱や光の影響も更に小さくなる。
【0015】
請求項4の電波吸収体は、長期使用中に、一つ複合積層体の抵抗膜に不都合が生じて、その表面抵抗率が所定範囲を逸脱し、電波吸収作用が発揮されなくなった場合でも、他の複合積層体の抵抗膜によって表面抵抗率を所定範囲に維持し、電波吸収性能を長期間に亘って発揮することができる。また、複数の複合積層体の抵抗膜により、電波吸収性能(リターンロス)が発現する周波数帯域を広げることもできる。
【0016】
請求項5の電波吸収体や、請求項6の電波吸収体は、複合積層体の間の空気層又は他の誘電体層や、複合積層体と表面被覆層との間の空気層又は他の誘電体層によって、電波吸収体全体の厚みを増大、調節することができる。そして、請求項7の電波吸収体は、両面側から伝播してくる電波を中央の電波反射体で反射してそれぞれの複合積層体の抵抗膜で吸収することができ、電波反射体を共用できるので、安価な電波吸収体とすることができる。
【0017】
請求項8の電波吸収体は、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度と酸素透過度が、それぞれ5.0(g/m2・day)以下、5.0(cc/m2・day・atm)以下と小さいため、抵抗膜に対する湿気(水分を含有した外気)の遮断作用が充分であり、そのようなガスバリア性フィルムの具体例は、請求項9の電波吸収体に使用される、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリルのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルムである。特に、請求項10の電波吸収体のように、上記の単層もしくは複層の合成樹脂フィルムの少なくとも片面、又は、複層の合成樹脂フィルムの層間の界面に、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか単独又は2種以上の蒸着層が形成されていると、これらのシリカ等の蒸着層は抵抗膜に対する湿気、熱、光の影響を遮断する作用が強いため、水蒸気透過度や酸素透過度が更に減少して抵抗膜に対する湿気の接触がほぼ完全に断たれると共に、熱や光の影響が殆どなくなり、抵抗膜の表面抵抗率がほぼ一定に保たれて、長期に亘り初期の良好な電波吸収性能が維持される。尚、複層の合成樹脂フィルムは、単層の合成樹脂フィルムに比べて、厚みが大きくなる分だけ湿気等の遮断作用が向上し、取扱いも容易になる利点がある。
【0018】
請求項11の電波吸収体は、抵抗膜に含まれる極細導電繊維が極めて細く、しかも凝集することなく分散して接触しているため、抵抗膜が良好な透明性を有し、接触、導通に寄与する極細導電繊維の本数が相対的に多く、接触頻度が高い。従って、極細導電繊維の含有量を少なくしても所定の表面抵抗率を確保することが可能であり、極細導電繊維を減らせる分だけ抵抗膜の透明性を更に向上させることができる
【0019】
請求項12の電波吸収体は、屋外で使用した場合に、紫外線吸収剤を含有した合成樹脂板からなる表面被覆層によって、抵抗膜や誘電体層や電波反射体が紫外線等から保護されるので耐候性が向上し、また、合成樹脂板からなる表面被覆層は強度があるので、飛来物による複合積層体や誘電体層などの破損を防止することもできる。
【0020】
請求項13の電波吸収体は、抵抗膜に付設した電極にテスターの針を当て、抵抗膜の表面抵抗率を随時測定することによって、抵抗膜の表面抵抗率の変化を監視し、電波吸収性能の変化を類推することができる。
【0021】
請求項14の電波吸収体は、四周側面が接着剤で封止されているので、湿気の侵入を確実に防止することができ、また、請求項15の電波吸収体は、接着剤が80℃の耐熱性を有する特定樹脂のホットメルト型接着シートであるので、屋外で使用した場合に直射日光を受けて昇温しても、接着剤が軟化して密閉性が低下することはない。そして、請求項16の電波吸収体は、これを通して向こう側を見ることができ、その周囲を明るくすることもできるので、例えばETC料金所のレーン間に設置されてETCの誤動作を防止する電波吸収体として好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る電波吸収体の断面図、図7の(a)(b)(c)は同電波吸収体の抵抗膜を示す概略断面図、図8は同抵抗膜のカーボンナノチューブを正面から見た分散状態を示す模式図である。
【0024】
この電波吸収体Aは、透視性の誘電体層1の片面側(表面側:電波の入射面側)に透視性の抵抗膜2を備え、誘電体層1の反対面側(裏面側)に透視性(光透過性)の電波反射体3を備えたものであって、抵抗膜2の両面には、水蒸気透過度や酸素透過度の低い透視性のガスバリア性フィルム5,5が積層されている。そして、この抵抗膜2とガスバリア性フィルム5,5との複合積層体は、誘電体層1とその片面側の透視性の表面被覆層4との間に配置され、透視性の接着剤6を介して誘電体層1と複合積層体と表面被覆層4が一体に接着されると共に、この複合積層体の周囲が該接着剤6で封止されている。また、誘電体層1の反対面側(裏面側)には、電波反射体3と透視性の裏面被覆層7が重ねられ、接着剤などで一体化されている。
【0025】
複合積層体は、上記の電波吸収体Aのように、接着剤6を介して誘電体層1と表面被覆層7に接着しなければならないものではなく、少なくとも、誘電体層1と表面被覆層7との外周部を接着剤6で接着して複合積層体の周囲を封止すれば足るものである。また、電波反射体3や裏面被覆層7は誘電体層1の裏面側に単に重ねるだけでもよいが、上記の電波吸収体Aのように誘電体層1と電波反射体3と裏面被覆層7が接着剤などで一体化されていると、取扱性が向上するので好ましい。
【0026】
この電波吸収体Aは、抵抗膜2の両面が、水蒸気透過度や酸素透過度の低いガスバリア性フィルム5と、接着剤6と、誘電体層1又は表面被覆層4とによって三重に覆われ、且つ、抵抗膜2とガスバリア性フィルム5との複合積層体の周囲が接着剤6で封止されて密閉されているため、抵抗膜2への湿気(水分を含んだ外気)の侵入、接触が断たれると共に、抵抗膜2に対する熱や光の影響が小さくなり、抵抗膜2の表面抵抗率が所定範囲内(後述する280〜400Ω/□の範囲内)でほぼ一定に保たれる。従って、表面抵抗率の変化(増加・減少)による電波吸収性能の低下が防止され、長期間に亘って初期の良好な電波吸収性能を維持できるので、耐久性及び信頼性が大幅に向上する。また、構成部材のうち誘電体層1、抵抗膜2、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、裏面被覆層7はいずれも透視性を有し、電波反射体3も透視性ないし光透過性を有するので、これらの構成部材からなる電波吸収体Aは透視性を有するものとなる。
【0027】
上記の誘電体層1は高誘電率の合成樹脂やガラスなどからなるものであって、この誘電体層1の厚さは、用途や実用強度を考慮して0.5〜15mmの範囲内で、λ/4電波吸収体理論(λ:誘電体層1内での電波の波長)に基づいて設計されている。二次曲げ加工性を考慮すると、ガラスよりも熱可塑性合成樹脂で誘電体層1を形成することが望ましく、更に、屋外で使用する際の耐熱性や透視性を考慮すると、融点や光線透過率が高いアクリル系樹脂(メチルメタクリレート等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等)、ポリエステル系樹脂(ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等)などで誘電体層1を形成することが望ましい。これらの中で、ポリカーボネート樹脂は機械的強度に優れ、全光線透過率が85%以上(厚さ3mm)、ヘーズが1.0%以下と透明性に優れているので、屋外で使用する透視性ないし透明な電波吸収体の誘電体層1としては特に好ましく用いられる。なお、ポリカーボネートはメチルメタクリレート樹脂に比べて多少、耐候性に劣るが、紫外線吸収剤等を添加したり、表面被覆層4として後述する耐候性に優れた樹脂板を使用することによって、実用に十分な耐候性を付与できる。
【0028】
上記の抵抗膜2は、周波数帯域1〜18GHzの電波吸収に適するように、自由空間の電波特性インピーダンスに合致する376.7Ω/□を目標値とする表面抵抗率を備えた透視性、好ましくは透明な薄膜であって、具体的には表面被覆層4や誘電体層1の厚み、電波吸収性能の斜入射特性(15°入射)などを加味して、280〜400Ω/□の表面抵抗率を備えたITO等の金属酸化物の蒸着膜や、極細導電繊維を含んだ同様の表面抵抗率を有する薄膜からなるものが好ましく用いられ、図1に示す電波吸収体Aでは、後者の極細導電繊維を含んだ抵抗膜2が採用されている。
【0029】
この極細導電繊維を含んだ抵抗膜2は、極細導電繊維を分散させた塗液を、いずれか一方のガスバリア性フィルム5の片面に塗布して形成した薄膜であって、極細導電繊維の含有量、塗膜厚み、分散状態などの諸条件を調節することにより、280〜400Ω/□の表面抵抗率が得られるようにしたものである。この実施形態では、極細導電繊維としてカーボンナノチューブを使用し、カーボンナノチューブの目付け量が15〜450mg/m2、好ましくは15〜250mg/m2となるように、塗液のカーボンナノチューブの含有量や塗膜の厚みなどを調節して塗布することで、280〜400Ω/□の表面抵抗率を備えた抵抗膜2を形成している。このような抵抗膜2は、カーボンナノチューブの目付け量(含有量、濃度)等に対応して抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ定まり、表面抵抗率の大きいバラツキが生じにくい。尚、上記の目付け量は、抵抗膜2を電子顕微鏡で観察し、その平面面積に占めるカーボンナノチューブの面積割合を測定し、これに電子顕微鏡で観察した厚みとカーボンナノチューブの比重(グラファイトの文献値2.1〜2.3の平均値2.2を採用)を乗算して算出した値である。
【0030】
抵抗膜2は、上記のように一方のガスバリア性フィルム5の片面に塗液を塗布して形成されるが、例えば、ガスバリア性フィルム5が厚くてシートないしプレートに近いような場合には、次のような方法で形成してもよい。一つの方法は、剥離フィルムに上記塗液を塗布して抵抗膜を形成すると共に、必要に応じてその上に接着層を形成して転写フィルムを形成し、この転写フィルムを一方のガスバリア性フィルム5の片面に圧着して抵抗膜もしくは抵抗膜と接着層を転写する方法であり、もう一つの方法は、ガスバリア性フィルム5と同種もしくは相溶性のある異種の熱可塑性樹脂フィルムの片面に上記塗液を塗布して抵抗膜2を形成し、この抵抗膜形成フィルムを一方のガスバリア性フィルム5の片面に熱圧着する方法である。
【0031】
極細導電繊維としては、上記のカーボンナノチューブが最も好ましく用いられるが、その他の繊維であっても抵抗膜2の表面抵抗率を280〜400Ω/□にすることができるものであれば制限なく使用可能である。例えば、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、ナノワイヤーなどの極細長金属繊維、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、ナノワイヤーなどの極細長金属酸化物繊維などの、直径が0.3〜100nmで長さが0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μmのものが用いられる。
【0032】
抵抗膜2のカーボンナノチューブは凝集することなく分散して互いに接触しており、具体的にはカーボンナノチューブが1本ずつ分離した状態で、もしくは、複数本集まって束になったものが1束ずつ分離した状態で分散して互いに接触している。そして、抵抗膜2がカーボンナノチューブとバインダーからなるものであると、図7の(a)に示すように、カーボンナノチューブ2aはバインダー2bの内部に上記の分散状態で三次元構造をなして分散して互いに接触しているか、或いは、図7の(b)に示すように、カーボンナノチューブ2aの一部がバインダー2b中に入り込み他の部分がバインダー2bの表面から突出ないし露出して上記の分散状態で分散して互いに接触しているか、或いは、一部のカーボンナノチューブ2aが図7の(a)のようにバインダー2bの内部に、他のカーボンナノチューブ2aが図7の(b)のようにバインダー2bの表面から突出ないし露出して上記分散状態で三次元構造をなして分散して互いに接触している。また、抵抗膜2がバインダーを含まない場合は、図7の(c)に示すように、カーボンナノチューブが上記分散状態で分散し、互いに接触して、カーボンナノチューブの三次元構造の層となっている。尚、上記バインダーとしては、透明な合成樹脂が透視性の抵抗膜2を得るうえで好ましい。
【0033】
これらのカーボンナノチューブ2aの正面から見た分散状態を模式的に示したものが図8であって、この図8から理解できるように、カーボンナノチューブ2aは多少曲がっているが、1本ずつ或いは1束ずつ分離し、互いに複雑に絡み合うことなく、即ち凝集することなく、単純に交差した状態で抵抗膜2の内部或いは表面に分散し、それぞれの交点で接触している。尚、カーボンナノチューブ2aは完全に1本ずつ或いは1束ずつ分離して分散している必要はなく、一部に絡み合った小さな凝集塊があってもよいが、既述したように「凝集することなく」とは長径と短径の平均値が0.5μm以上の凝集塊がないことを意味するものであるから、存在する凝集塊の平均径は0.5μm未満であることが必要である。
【0034】
このように、極細導電繊維であるカーボンナノチューブ2aが抵抗膜2内で多少曲がって1本ずつ或は1束ずつ分離して、互いに複雑に絡み合うことなく三次元構造をなして分散していると、抵抗膜2を曲げてもカーボンナノチューブ2aが伸びたりずれたりするだけであるからお互いの接触が保たれる。そのため、この電波吸収体Aを曲げても表面抵抗率の増加が殆どなく、電波吸収性能を維持することができるので、湾曲した電波吸収体を作製できるし、施工現場で曲げて使用することもできる。
【0035】
カーボンナノチューブ2aは直径が0.3〜80nmと極めて細いため、これを前記の目付け量に相当する量だけ含んだ抵抗膜2は透視性が良好であるが、特に上記のような分散状態でカーボンナノチューブ2aが分散していると、凝集しないで接触、導通に寄与するカーボンナノチューブ2aの本数が相対的に増え、チューブ相互の接触頻度が高くなるため、その分だけカーボンナノチューブ2aの目付け量を少なくしても前記の表面抵抗率(280〜400Ω/□)を確保できるようになり、このカーボンナノチューブ2aを少なくできる分だけ透視性を更に向上させることが可能となる。ちなみに、前記の目付け量に相当する量のカーボンナノチューブを含んだ280〜400Ω/□の表面抵抗率を有する抵抗膜2の光線透過率(分光光度計による550nmの光の透過率)は、87%前後であり、それゆえ透視性の良い誘電体層1と透光量の多い電波反射体3を選択して電波吸収体を作製すれば、全光線透過率が40%以上、ヘーズが10%以下の透視性を有する電波吸収体を確実に得ることができる。より好ましい電波吸収体は、全光線透過率が50%以上、ヘーズが10%以下である。
【0036】
上記のカーボンナノチューブ2aには、中心軸線の周りに複数のカーボン壁を同心的に備えた多層カーボンナノチューブや、中心軸線の周りに単独のカーボン壁を備えた単層カーボンナノチューブがある。前者の多層カーボンナノチューブは、中心軸線の周りに直径が異なる複数の円筒状に閉じたカーボン壁を有する多層になって構成されたものと、渦巻き状に多層に形成されているものとがある。その中でも、好ましい多層カーボンナノチューブは、2〜30層、より好ましくは2〜15層重なったものが用いられる。そのような多層カーボンナノチューブを前記の分散状態で分散させると、既述したように光線透過率の良い抵抗膜2が形成される。多層カーボンナノチューブは1本ずつ分離した状態で分散しているものが殆どであるが、2層ないし3層カーボンナノチューブは、束になって分散している場合もある。
【0037】
一方、後者の単層カーボンナノチューブは、上記のようにカーボン壁が中心軸線の周りに円筒状に閉じた単層のチューブである。このような単層カーボンナノチューブは通常2本以上が束になった状態で存在し、その束が1束ずつ分離して、束同士が複雑に絡み合うことなく凝集せずに単純に交差した状態で抵抗膜2の内部もしくは表面に分散され、それぞれの交点で接触している。そして、好ましくは10〜50本の単層カーボンナノチューブが集まって束になったものが用いられる。なお、1本ずつ分離した状態で分散している場合も当然本発明に含まれる。
【0038】
カーボンナノチューブの分散性を高めるためには、抵抗膜2中に分散剤を含有させることが望ましい。分散剤としては、酸性ポリマーのアルキルアンモニウム塩溶液、3級アミン修飾アクリル共重合物、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物などの高分子系分散剤やカップリング剤などが好ましく使用される。
【0039】
抵抗膜2は、バインダーのないカーボンナノチューブのみからなる薄膜であってもよいが、カーボンナノチューブの脱落防止性、表面抵抗率の安定性、透明性などのために、バインダーを使用することが好ましい。このバインダーとしては、熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などの透明な樹脂が使用され、また、熱や紫外線や電子線や放射線で硬化する硬化性樹脂、例えばメラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂などの透明な樹脂も使用される。なお、このバインダーとしては透光性樹脂を使用してもよく、このような樹脂を使用しても抵抗膜2を薄くすることで透視性を有する抵抗膜2とすることができる。また、このバインダーにはコロイダルシリカのような無機材を添加してもよく、その場合は表面硬度や耐摩耗性に優れた抵抗膜2が形成される。
【0040】
抵抗膜2の両面に積層されるガスバリア性フィルム5は、5.0(g/m2・day)以下の水蒸気透過度と、5.0(cc/m2・day・atm)以下の酸素透過度を有する単層又は複層の合成樹脂フィルムが使用される。水蒸気透過度及び酸素透過度が上記範囲よりも大きい合成樹脂フィルムは、抵抗膜2への湿気(水分を含んだ外気)の侵入、接触を遮断する作用が不充分で、抵抗膜2の表面抵抗率をほぼ一定に保つことができないため、使用することはできない。
【0041】
ガスバリア性フィルム5の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレン(メタセロン触媒低分子量ポリエチレンフィルム)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミドMXD6)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリルのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルムを挙げることができる。その中でも、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレンのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルム、例えばポリビニルアルコールの単層フィルム、ポリエチレンテレフタレートの単層フィルム、ポリビニルアルコールフィルムの片面又は両面にポリエチレンテレフタレートフィルムや超低密度ポリエチレンフィルムを透明な接着剤でラミネートした複層フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面又は両面に超低密度ポリエチレンフィルムを透明な接着剤でラミネートした複層フィルム等は、ガスバリア性が良好であるため好ましく使用され、特に、複層フィルムは単層フィルムよりも厚くてガスバリア性に優れ、取扱性も良いことから、極めて好ましく使用される。これらのガスバリア性フィルムは、その厚さによってガスバリア性能が変化し、一般に厚さが薄くなるほど水蒸気透過率や酸素透過率は低くなるので、上述した範囲の水蒸気透過率及び酸素透過率を有する厚さのものを使用する必要がある。
【0042】
図9の(a)に示すように、単層のガスバリア性フィルム5の少なくとも片面には、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか単独又は2種以上の蒸着層5aを形成することが好ましい。同様に、複層のガスバリア性フィルムの少なくとも片面に上記のシリカ等の蒸着層を形成することも好ましい。また、図9の(b)に示すように、合成樹脂フィルム51の片面に他の合成樹脂フィルム52をラミネートした複層(2層)のガスバリア性フィルム5の層間の界面に上記のシリカ等の蒸着層5aを形成したり、図9の(c)に示すように、合成樹脂フィルム51の両面に他の合成樹脂フィルム52,52をラミネートした複層(3層)のガスバリア性フィルム5の片側の層間の界面に上記のシリカ等の蒸着層5aを形成することも好ましい。上記のシリカ等の蒸着層5aは、湿気の遮断作用に加えて、熱や光の影響を遮断する作用を有するため、このようなシリカ等の蒸着層5aをガスバリア性フィルム5の少なくとも片面又は層間の界面に形成すると、抵抗膜2に対する湿気(水分を含んだ外気)の侵入、接触を遮断する作用、及び、抵抗膜2に対する熱と光の影響を遮断する作用が大幅に向上し、抵抗膜2の表面抵抗率をほぼ一定に保って、電波吸収性能の低下を一層確実に防止できるようになる。因みに、厚さ12μmのポリビニルアルコールフィルムにシリカ等の蒸着層5aを形成した場合は、水蒸気透過度が0.1(g/m2・day)、酸素透過度が0.1(cc/m2・day・atm)以下になり、ポリビニルアルコールフィルムフィルム単独の場合に比べて、水蒸気透過度や酸素透過度がおよそ50分の1に減少し、ガスバリア性能が顕著に向上する。
【0043】
上記のようなガスバリア性フィルム5を抵抗膜2の両面に積層した複合積層体は、誘電体層1や表面被覆層4よりも一回り小さく形成されて、誘電体層1と表面被覆層4の間に配置され、接着剤6を介して誘電体層1と複合積層体と表面被覆層4が接着一体化されると共に、複合積層体の周囲が該接着剤6で封止されて密閉されている。この複合積層体は、一方のガスバリア性フィルム5の片面に、前記の極細導電繊維を分散させた塗液を塗布して抵抗膜2を形成し、この抵抗膜2を覆うように他方のガスバリア性フィルム5を重ねた後、所定の大きさに切断して作製されるが、ガスバリア性フィルム5の片面に前記のシリカ等の蒸着層5aが形成されている場合には、一方のガスバリア性フィルム5のシリカ等の蒸着層5aが形成されていない片面に抵抗膜2を形成し、その上に他方のガスバリア性フィルム5をシリカ等の蒸着層5aが表面被覆層4側となるように重ねて複合積層体を作製することが、湿気、熱、光などの遮断性能を高める上で好ましい。
【0044】
誘電体層1の裏面側に設けられる電波反射体3は、透視性ないし透明性を有する導電材からなるものであって、例えば4〜250メッシュ程度の目を備えた導電メッシュ材や金属メッシュ材、或いは、金属金網や金属格子、或いは、開口率の大きいパンチングメタル、或いは、表面抵抗率が10Ω/□以下の透視性ないし透明性を有する導電膜を形成した透明フィルムなどが好ましく使用される。
【0045】
抵抗膜2を覆う表面被覆層4は、誘電体層1と同様の透視性を有する合成樹脂やガラスなどからなる層であって、この表面被覆層4は、抵抗膜2を湿気(水分を含む外気)から遮断する目的と、抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5を積層した複合積層体や誘電体層1を、直射日光による紫外線劣化から保護する目的で設けられたものであり、更に、合成樹脂板からなる表面被覆層4であると、飛来物の衝突による破損も防止することができる。そのため、表面被覆層4の厚さは、1〜4mm程度の耐候性に優れた強度のある透視性を有するアクリル系樹脂板や、紫外線吸収剤を含有させて耐候性を高めた透視性を有する同程度の厚みのポリエステル系、オレフィン系等の合成樹脂板が好ましく使用される。特に、紫外線吸収剤を含有させたポリカーボネート樹脂板は機械的強度に優れ、耐候性や透明性も良好であるので、表面被覆層4として極めて好ましい。
【0046】
また、電波反射体3を覆う裏面被覆層7は、電波反射体3や誘電体層1を飛来物衝突による破損や直射日光による紫外線劣化から保護する目的で設けられたものであって、表面被覆層4と同様の樹脂板、即ち、厚さ1〜4mm程度の耐候性に優れた強度のある透視性を有するアクリル系樹脂板、紫外線吸収剤を含有させて耐候性を高めた透視性を有する同程度の厚みのポリエステル系、オレフィン系等の合成樹脂板、特に、紫外線吸収剤を含有させたポリカーボネート樹脂板などが好ましく用いられる。
【0047】
接着剤6は、誘電体層1と複合積層体と表面被覆層4を接着一体化すると共に、複合積層体の周囲を封止して、抵抗膜2に対する周囲からの湿気の侵入、接触を阻止するものであって、例えば、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレンモノカルボン酸ビニルエステル共重合体系、エチレン−アクリル酸ビニルエステル共重合体系、ポリカーボネートエステル系などのホットメルト型接着シートや、シリコーン系、エポキシ系、アクリル系、オルガノポリシロキサン系、カルバミン酸エステル系、ビニル系、加水分解性シリル基系、シリル化ウレタン系、ポリオキシアルキレン重合体系などの硬化型の接着剤(シーリング剤)や、樹脂を溶剤に溶かした合成樹脂塗液などの接着剤が使用される。このうち、比較的穏やかな加熱条件で軟化溶融して優れた接着性を発現し、且つ、80℃での耐熱性を有する屋外使用に適したエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリカーボネートエステル樹脂系のホットメルト型接着シートは特に好ましく使用され、また、室温から100℃未満の温度域で粘着性ないし接着性を有し優れた接着性能を発揮するシリコーン系接着剤も特に好ましく使用される。
【0048】
上記のホットメルト型接着シートを、誘電体層1と複合積層体との間、及び、複合積層体と表面被覆層4との間に挟んで、熱プレスにより接着一体化すると、軟化溶融したホットメルト型接着シートの外周部が複合積層体の周囲に回り込んで、複合積層体の周囲が自然に封止される利点があり、また、誘電体層1と複合積層体と表面被覆層4のそれぞれの接着界面での光の散乱が少なくなるので、透視性に優れた電波吸収体Aを得ることができる。
【0049】
なお、接着剤6は無色透明のものが使用されるが、例えば、誘電体層1と表面被覆層4との外周部のみを接着して複合積層体の周囲を封止する場合や、後述するように電波吸収体の四周側面を接着剤で接着封止する場合には、不透明の接着剤を使用してもよい。
【0050】
以上のような電波吸収体Aは、例えば次の方法で製造することができる。先ず、カーボンナノチューブなどの極細導電繊維と、溶媒と、必要に応じて前記バインダーと、必要に応じて前記分散剤とを充分混合して塗液を調製する。そして、この塗液を前記のガスバリア性フィルム5の片面に塗布して表面抵抗率が280〜400Ω/□の抵抗膜2を形成すると共に、この抵抗膜2を覆うようにもう一枚のガスバリア性フィルム5を積層し、これを切断して誘電体層1や表面被覆層4よりも一回り小さい複合積層体を作製する。
【0051】
次いで、前記の合成樹脂板等からなる誘電体層1の片面に、接着剤6(ホットメルト型接着シート)と、上記の複合積層体と、接着剤6(ホットメルト型接着シート)と、前記の合成樹脂板からなる表面被覆層4を重ねると共に、誘電体層1の反対面に電波反射体3と、ホットメルト型接着シートと、前記の合成樹脂板からなる裏面被覆層7を重ね、この積層物を上下の艶板で挟みながら加熱してホットメルト型接着シートを軟化溶融させることにより、接着一体化すると同時に、複合積層体の周囲に回り込んだ接着剤で複合積層体の周囲を接着、封止して、電波吸収体Aを製造する。また、上記積層物を脱気した後、上下のガラス基板に挟み込み、真空脱気して加熱圧着しても、同様に製造できる。このようにして得られる電波吸収体Aは、その全光線透過率を40%以上とし、ヘーズを10%以下として、良好な透視性(視認性)を付与することができる。
【0052】
なお、透視性を有しないが透光性を有する電波吸収体Aとしたい場合には、例えば、誘電体層1や表面被覆層4や裏面被覆層7として予め光拡散剤や充填剤を添加したものを用いたり、或いは、表面被覆層4や裏面被覆層7の外表面に微細な凹凸を形成したりして、ヘーズを高くすればよい。そして、不透明の電波吸収体Aとしたい場合は、誘電体層1、表面被覆層4、裏面被覆層7となる合成樹脂やガラスに顔料などの着色剤を添加することによって不透明としたり、或は、電波反射体3に光を透過しない金属板などを使用したり、或は、抵抗膜2にカーボンなどを添加して不透明にすればよい。
【0053】
以上のような電波吸収体Aは、抵抗膜2の両面のガスバリア性フィルム5,5の水蒸気透過度や酸素透過度が低く、湿気(水分を含んだ外気)の遮断作用が優れており、特に、ガスバリア性フィルム5の片面や層間の界面にシリカ等の蒸着層5aが形成されていると、抵抗膜2に対する熱や光の影響を遮断する作用も優れている。そして、抵抗膜2は、そのような遮断性能に優れたガスバリア性フィルム5,5と、接着剤6と、誘電体層1又は表面被覆層4とによって三重に覆われ、且つ、抵抗膜2とガスバリア性フィルム5との複合積層体の周囲が接着剤6で封止されて密閉されているため、抵抗膜2への湿気の侵入、接触が遮断されると共に、抵抗膜2に対する熱や光の影響も遮断され、抵抗膜2の表面抵抗率が280〜400Ω/□の範囲内でほぼ一定に保たれる。従って、この電波吸収体Aは、表面抵抗率の変化(増加・減少)による電波吸収性能の低下が防止され、長期間に亘って初期の良好な電波吸収性能を維持できるので、耐久性及び信頼性が大幅に向上する。また、屋外で使用した場合でも、表面被覆層4及び裏面被覆層7によって、抵抗膜2や誘電体層1や電波反射体3を紫外線劣化から保護することができ、飛来物による破損を防止することもできるので、耐久性及び信頼性が更に向上する。しかも、この電波吸収体はAは、前述のように全光線透過率が40%以上、ヘーズが10%以下の良好な透視性(視認性)を有するので、例えばETC料金所のレーン間に設置されてETCの誤動作を防止する電波吸収体として好適に使用することができる。
【0054】
図2は本発明の他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0055】
この電波吸収体Bは、誘電体層1と表面被覆層4の間に設ける複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)を、誘電体層1及び表面被覆層4と同一の形状、大きさにしている点、及び、電波吸収体の四周側面全体を接着剤60で接着封止している点で、前述の図1に示す電波吸収体Aと異なっている。この電波吸収体Bは、四周側面全体を接着剤60で接着封止するので、表面被覆層4、複合積層体、誘電体層1、電波反射体3、裏面被覆層7を同一の形状及び大きさとして、側面全体が平坦となるようにしている。
【0056】
電波吸収体Bの側面全体を覆う接着剤60としては、前述のホットメルト型接着シート、硬化型の接着剤(シーリング剤)、樹脂塗液などが使用されるが、この中でも電波吸収体Bの側面全体に塗布し易い硬化型の接着剤(シーリング剤)や樹脂塗液が好ましく用いられる。
【0057】
この電波吸収体Bの他の構成、誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、接着剤6、裏面被覆層7などの材質は、前述の電波吸収体Aと同様であるので、説明を省略する。
【0058】
このような透視性を有する電波吸収体Bは、前述の電波吸収体Aを製造する際に、誘電体層1、抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体、電波反射体3、表面被覆層4、裏面被覆層7、接着剤6(ホットメルト型接着シート)を、それぞれ同一の形状及び大きさに揃えて積層し、熱圧着一体化して電波吸収体Bの本体部分を作製した後、その四周側面全体に前記の硬化型の接着剤60(シーリング剤)等を塗布、硬化させ、側面全体を接着封止することによって製造される。
【0059】
このような電波吸収体Bも、抵抗膜2の両面が、水蒸気透過率及び酸素透過率の低いガスバリア性フィルム5と、接着剤6と、誘電体層1又は表面被覆層4によって三重に覆われ、且つ、複合積層体の周囲が接着剤60で封止されて密閉されているため、抵抗膜2に対する湿気の侵入、熱や光の影響が遮断されて、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。そして、接着剤6により、誘電体層1、複合積層体、表面被覆層4のそれぞれの界面が密着して光散乱が少なくなるため、透視性や光線透過率が向上し、また、電波反射体3や裏面被覆層7は側面の接着剤60で接着一体化されるので、ホットメルト型接着シート等で接着する必要がなくなり、製造が容易となる。
【0060】
図3は本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0061】
この電波吸収体Cは、表面被覆層と裏面被覆層を省略し、誘電体層1より一回り小さい複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)を誘電体層1の片面(表面)に設けると共に、誘電体層1の反対面に電波反射体3を設け、複合積層体の表面及び周囲を接着剤6で被覆、封止したものである。
【0062】
この電波吸収体Cのその他の構成、誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、ガスバリア性フィルム5、接着剤6の材質は、前記電波吸収体Aと同様であるから、説明を省略する。
【0063】
このような電波吸収体Cも、抵抗膜2の両面が、水蒸気透過率及び酸素透過率の低いガスバリア性フィルム5と、接着剤6又は誘電体層1によって二重に覆われ、且つ、複合積層体の周囲が接着剤60で封止されて密閉されているため、抵抗膜2に対する湿気の侵入、熱や光の影響が遮断されて、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。そして、表面被覆層や裏面被覆層を省略した分だけ、透視性や光線透過率が向上する利点もある。
【0064】
図4は本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0065】
この電波吸収体Dは、複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)と表面被覆層4との間に空気層8を形成し、接着剤で複合積層体と表面被覆層4を接着していない点で、前述の図2に示す電波吸収体Bと異なっている。この空気層8は、複合積層体と表面被覆層4との外周部に設けられたスペーサ9によって形成されている。このスペーサ9は、厚みが大きい帯状のホットメルト型接着シートを配置したり、前述した硬化型の接着剤(シーリング剤)や樹脂塗液を厚く塗布したり、他の部材、例えば帯状の合成樹脂シートやプレートを配置することによって設けられたものである。なお、空気層8は、誘電体層1と複合積層体との間に形成してもよい。
【0066】
この電波吸収体Dの他の構成、誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、接着剤6、60、裏面被覆層7の材質等は、前述の電波吸収体Bのそれらと同様であるので説明を省略する。
【0067】
このような電波吸収体Dは、前記の図2に示す電波吸収体Bを製造する際に、誘電体層1に重ねた複合積層体の周囲にスペーサ9を配置し、その上に表面被覆層4を重ね合わせることで、容易に製造することができる。
【0068】
このような電波吸収体Fは、抵抗膜2の両面が、水蒸気透過率及び酸素透過率の低いガスバリア性フィルム5と、表面被覆層4、又は、接着剤6及び誘電体層1とで二重又は三重に覆われ、且つ、複合積層体の周囲が接着剤60で封止されて密閉されているため、外部からの湿気の侵入が遮断されると共に、抵抗膜2にに対する熱や光の影響が遮断され、また、空気層8に含まれる水分がガスバリア性フィルム5を透過して抵抗膜2と接触することもないので、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。なお、空気層8に乾燥剤などを内在させて湿気を除去するようにしてもよい。
【0069】
図5は本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0070】
この電波吸収体Eは、誘電体層1の片面側(表面側)に、接着剤6(ホットメルト型接着シート)と、複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)と、上記接着剤6と、他の誘電体層10と、上記接着剤6と、上記複合積層体と、上記接着剤6と、表面被覆層4とをこの順で重ねると共に、誘電体層1の反対面側(裏面側)に電波反射体3と裏面被覆層7とを重ねて、これらを接着一体化し、その電波吸収体の四周側面全体を接着剤60で接着封止したものである。
【0071】
この電波吸収体Eは、誘電体層1の片面側に、他の誘電体層10を挟んで二つの複合積層体を設けている点で、前記の各電波吸収体と異なっている。この誘電体層10は誘電体層1と同様の樹脂やガラスからなるもので、0.1〜5mm程度の厚さを有するものが使用される。この電波吸収体Eを構成する誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、接着剤6,60、裏面被覆層7は、前記の各電波吸収体で用いられたものと同じものであるから、説明を省略する。
【0072】
なお、上記の誘電体層10に代えて、二つの複合積層体の間にスペーサを挟むことにより空気層を形成してもよく、また、場合によっては、誘電体層10や空気層を挟んで複合積層体を三つ以上設けてもよい。同様に、前記の電波吸収体B,C,Dにおいて、空気層や他の誘電体層を挟んで複数の複合積層体を設けるようにしてもよい。
【0073】
このような電波吸収体Eは、それぞれの複合積層体の抵抗膜2が、その両面の水蒸気透過率及び酸素透過率の低いガスバリア性フィルム5と、接着剤6と、誘電体層1,10又は表面被覆層4によって三重に覆われると共に、各複合積層体の側面が接着剤60で封止されて密閉されているため、抵抗膜2に対する湿気の侵入、熱や光の影響が遮断されて、抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれ、初期の電波吸収性能が維持される。しかも、この電波吸収体Eのように抵抗膜2,2が二つあると、長期使用中に一方の抵抗膜2に万一不都合が生じて表面抵抗率が280〜400Ω/□の範囲を逸脱したとしても、他方の抵抗膜2で表面抵抗率を上記範囲に保って電波吸収性能を維持できるので、耐久性及び信頼性が一層向上し、また、二つの抵抗膜2、2によって電波吸収性能(リターンロス)が発現する周波数帯域を広げることもできる。この電波吸収体Eは、二つの複合積層体を設けたため、透明性が若干低下し、全光線透過率が30%以上の範囲となるが、ヘーズは10%以下になるので透視性は良い。
【0074】
なお、誘電体層10の厚みが6.5mmのときは15°入射の電波吸収性能が良く、誘電体層10の厚みが7.0mmのときは45°入射の電波吸収性能が良いことから、誘電体層10を上記の厚みとして、複合積層体を0.5mmの間隔をあけて設けることが好ましい。
【0075】
図6は本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【0076】
この電波吸収体Fは、電波反射体3の両面側に誘電体層1、1を設け、この誘電体層1、1の電波反射体2と反対面側に、接着剤6(ホットメルト型接着シート)と、複合積層体(抵抗膜2の両面にガスバリア性フィルム5,5を積層した複合積層体)と、上記接着剤6と、表面被覆層4をそれぞれ重ねて接着一体化すると共に、その四周側面の全体を接着剤60[硬化型の接着剤(シーリング剤)又は樹脂塗液]で接着封止したものである。
【0077】
この電波吸収体Fや前記の電波吸収体Eでは、接着剤6(ホットメルト型接着シート)によって、誘電体層1(10)、複合積層体、表面被覆層4を全面接着しているが、外周部のみを接着してもよい。また、この電波吸収体Fや前記の電波吸収体Eでは、四周側面を接着剤60[硬化型の接着剤(シーリング剤)又は樹脂塗液]で接着封止しているが、接着剤6(ホットメルト型接着シート)を熱圧着して接着封止してもよい。
【0078】
この電波吸収体Fを構成する誘電体層1、抵抗膜2、電波反射体3、表面被覆層4、ガスバリア性フィルム5、接着剤6,60は、前記の各電波吸収体に使用されたものと同様であるから、説明を省略する。
【0079】
このような電波吸収体Fは、抵抗膜2が、その両面の水蒸気透過度及び酸素透過度の低いガスバリア性フィルム5,5と、接着剤6と、誘電体層1又は表面被覆層4とで三重に覆われると共に、複合積層体の側面が接着剤60で封止されて密閉されているため、抵抗膜2に対する湿気の侵入、熱や光の影響が遮断されて抵抗膜2の表面抵抗率がほぼ一定に保たれる。しかも、両側の表面被覆層4、4から入射する電波を電波反射体3で反射させて吸収することができ、電波反射体3を共用できるので安価な電波吸収体とすることができる。なお、この電波吸収体Fは、二つの複合積層体を有するため、透視性が若干低下して全光線透過率が30%以上の範囲となるが、ヘーズが10%以下となるので透視性は良い。
【0080】
以上の電波吸収体A〜Fはいずれも、抵抗膜2に電極が付設されていないが、抵抗膜2に帯状の銅箔等からなる電極を付設してもよい。このように電極を付設すると、テスターの針を電極に当てて、抵抗膜2の表面抵抗率を随時測定することにより、抵抗膜2の表面抵抗率の変化を監視し、電波吸収性能の変化を類推できる利点がある。
【0081】
また、以上の電波吸収体A〜Fの周囲に金属製の枠体を取付け、この枠体の電波入射側の表面に、電波吸収シート(例えばフェライト等の磁性材料を合成ゴムや合成樹脂のシートに含有させたもの)を貼付けるようにしてもよい。このようにすると、枠体によって電波吸収体の周縁部が保護され、高速道路のETC料金所などへの取付作業がしやすくなり、電波吸収体の構成部材が使用中に分解する心配もなくなる。そして、金属製枠体に当たる電波が電波吸収シートにより吸収されるため、枠体による電波吸収性能の低下を防止することもできる。
【0082】
次に、本発明の効果を確認するために行った実験について説明する。
【0083】
[実験1]
溶媒としてのイソプロピルアルコール/水混合物(混合比3:1)中に、文献Chmical Physics Letters、323(2000)P580−585に基づき合成した直径1.3〜1.8nmの単層カーボンナノチューブを酸処理にて精製したものと、分散剤としてのポリアルキレンエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物を加えて均一に混合、分散させ、単層カーボンナノチューブを0.003質量%、分散剤を0.05質量%含む塗液を調整した。
【0084】
PVA(ポリビニルアルコール)フィルムにシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmの市販のシリカ蒸着フィルム[三菱樹脂(株)製のラックバリアS]の両面に、厚さ25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムをラミネートして、図9の(c)に示すようなガスバリア性フィルム、即ち、層間の界面にシリカ蒸着層を形成した3層ラミネート構造のガスバリア性フィルムを作製した。そして、このガスバリア性フィルムの表面に、上記の塗液を単層カーボンナノチューブの目付量が約27mg/m2となるように塗布、乾燥して、表面抵抗率が300Ω/□の透明な抵抗膜を形成すると共に、この抵抗膜を覆うように、抵抗膜の形成されていない上記のガスバリア性フィルムを重ね合わせて複合積層体を作製した。この複合積層体を70×70mmの大きさに切断し、その相対向する2辺に沿って一対の帯状の銅箔からなる電極(幅5mm,長さ100mm)を導電接着剤で抵抗膜に接着すると共に、四隅を接着し、70×70mmの電極付き複合積層体を作製した。
【0085】
図10の(a),(b)に示すように、この電極30の付いた複合積層体20の上下両面に、接着剤6としてEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)よりなる80mm角のホットメルト型接着シート(厚さ0.5mm)を重ね、更にその上下に80mm角のポリカーボネート板40、40(厚さ2mm)を重ねて、これを100mm角の艶板で上下から挟み、130℃で加熱することにより、ホットメルト型接着シート6,6を軟化溶融させて、電極付き複合積層体20とポリカーボネート板40,40を接着一体化すると共に、電極付き複合積層体20の外周部を接着剤6で封止した本試験体を作製した。
【0086】
本試験体について、抵抗膜の表面抵抗率の耐熱試験変化を、オーブン(タバイエスペック製)を用いて80℃の恒温で調べた。その結果を図11のグラフに示す。
【0087】
比較のために、80mm角のポリカーボネート板(厚さ2mm)の片面に上記の塗液を単層カーボンナノチューブの目付量が約27mg/m2となるように塗布、乾燥して、表面抵抗率が300Ω/□の透明な抵抗膜を形成すると共に、この抵抗膜に上記の銅箔からなる電極を付設し、この抵抗膜を覆うように、80mm角のポリカーボネート板(厚さ2mm)を重ねて、四周側面をシリコーン接着剤(シーリング剤)で接着封止した比較用試験体を作製した。そして、この比較用試験体について、上記と同様に抵抗膜の表面抵抗率の耐熱試験変化を調べた。その結果を図11のグラフに併せて示す。
【0088】
[実験2]
実験1と同様にして本試験体を作製し、その抵抗膜の表面抵抗率の耐湿試験変化を、恒温恒湿器(プラシナスルシファー、タバイエスペック製)を用いて温度60℃、湿度90%の条件で調べた。その結果を図12のグラフに示す。
比較のために、実験1と同様にして比較用試験体を作製し、上記と同様に抵抗膜の表面抵抗率の耐湿試験変化を調べた。その結果を図12のグラフに併せて示す。
【0089】
[実験3]
実験1と同様にして本試験体を作製し、その抵抗膜の表面抵抗率の屋外暴露試験変化を、兵庫県たつの市のタキロン株式会社網干工場常設屋外暴露試験機台(正南向き、45°傾斜台)に設置して調べた。その結果を図13のグラフに示す。
比較のために、実験1と同様にして比較用試験体を作製し、上記と同様に抵抗膜の表面抵抗率の屋外暴露試験変化を調べた。その結果を図13のグラフに併せて示す。
【0090】
図11のグラフに示す耐熱試験結果からわかるように、比較用試験体の抵抗膜は、表面抵抗率が日数の経過にしたがって漸増し、5日経過で17%(51Ω/□)増加し、10日経過で25%(75Ω/□)増加し、21日経過で35%(105Ω/□)も増加していていることがわかった。従って、この抵抗膜を用いた電波吸収体であれば、10日経過後には375Ω/□となり、これ以降には電波が吸収され難くなる。これに対し、本試験体のように、複合積層体の抵抗膜が、ガスバリア性フィルムで挟まれ、複合積層体の上下両面と外周部がホットメルト型接着シートで接着封止されているものは、日数が経過しても抵抗膜の表面抵抗率が−1%(−3Ω/□)減少していて変化が極めて少なく略一定しており、ガスバリア性フィルムによって、抵抗膜の表面抵抗率の変化(増加・減少)が確実に防止されていることがわかった。従って、表面抵抗率が変化しても297〜300Ω/□の範囲であり、このような複合積層体の抵抗膜を用いた電波吸収体は、外部使用における熱に関する限り、長期間電波吸収機能を発揮することがわかる。
【0091】
図12のグラフに示す耐湿度試験結果からわかるように、比較用試験体の抵抗膜は、その表面抵抗率が日数の経過にしたがって漸増し、3日経過で31.3%(94Ω/□)増加し、5日経過で38%(114Ω/□)増加し、10日経過で46%(138Ω/□)増加し、21日経過で52%(156Ω/□)も増加していることがわかった。従って、この抵抗膜を用いた電波吸収体であれば、3日経過後には394Ω/□となり、これ以降には電波が吸収され難くなる。これに対し、本試験体のように、複合積層体の抵抗膜がガスバリア性フィルムで挟まれ、複合積層体の上下両面と外周部がホットメルト型接着シートで接着封止されているものは、日数が経過しても表面抵抗率が0%(0Ω/□)増減なしで変化が極めて少なく一定しており、上記のガスバリア性フィルムによって表面抵抗率の変化が確実に防止されていることがわかった。従って、抵抗膜の表面抵抗率が変化しても300Ω/□であり、このような複合積層体の抵抗膜を用いた電波吸収体は、外部使用における熱、温度に関する限り、長期間電波吸収性能を発揮することがわかる。
【0092】
図13のグラフに示す屋外暴露試験結果からわかるように、比較用試験体の抵抗膜は、表面抵抗が日数の経過にしたがって漸増し、1日経過で18.5%(55.5Ω/□)増加し、50日経過で23.1%(69Ω/□)増加し、100日経過で24.3%(73Ω/□)増加し、130日経過で25.7%(77Ω/□)も増加していることがわかった。従って、この抵抗膜を用いた電波吸収体であれば、100日経過後には377Ω/□となり、これ以降には電波が吸収され難くなる。これに対し、本試験体のように、複合積層体の抵抗膜がガスバリア性フィルムで挟まれ、複合積層体の上下両面と外周部がホットメルト型接着シートで接着封止されているものは、屋外暴露開始(平成18年3月22日)後、経過日数が130日経過しても、抵抗膜の表面抵抗率が7.7%(23.1Ω/□)増加に留まり、変化が少ない。従って、この複合積層体を用いた電波吸収体であれば、130日経過後には323Ω/□となり、電波吸収体として有用な範囲を維持し、上記のガスバリア性フィルムによって抵抗膜の表面抵抗率の変化(増加)が確実に防止されていることがわかった。また、真夏の110日経過後(平成18年7月12日)から、130日後(平成18年8月1日)の20日間のグラフの傾きは、20日で最大0.6Ω/□上昇から、1日で0.03Ω/□/日であり、今後1年間の上昇はすべて夏と仮定しても、11Ω/□であり、従って、例えば、当初の表面抵抗率を300Ω/□とすると1年間表面抵抗率が変化しても311Ω/□であり、5年間でも355Ω/□であり、この複合積層体の抵抗膜を用いた電波吸収体は、外部使用での太陽光を受けても長期間電波吸収性能を発揮することがわかる。ただし、ガスバリア性フィルムで抵抗膜を挟まなければ、屋外暴露開始20日経過で23%上昇(69Ω/□)となり、その後も上昇量が20日間で最大6Ω/□以上となり、1日で0.3Ω/□、1年で109.5Ω/□上昇となり、このような電波吸収体は太陽光を受ける外部使用では、長期間電波吸収性能を発揮することができないことは自明である。
【0093】
尚、屋外暴露試験結果では、20日後までの上昇率が高いので、屋外暴露安定化および光照射安定化という操作を予め抵抗膜に対して行い、故意に表面抵抗率を上げて安定させることが好ましい。この操作は例えば、ワコム電創(株)製のソーラーシュミレーターWXS−155S−L2、AM1.5GMM(太陽光極近似光)を使用して行うことができる。
【0094】
以上の実験結果から、本発明の電波吸収体は、ガスバリア性フィルムによって、抵抗膜に対する湿気の侵入、接触が遮断されると共に、抵抗膜に対する熱や光の影響が小さくなり、抵抗膜の表面抵抗率の変化による電波吸収性能の低下が防止されて、長期に亘って初期の良好な電波吸収性能を維持できることが裏付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る電波吸収体の断面図である。
【図7】(a)(b)(c)は抵抗膜の部分断面図である。
【図8】抵抗膜に含まれるカーボンナノチューブを正面から見た分散状態を示す模式図である。
【図9】(a)(b)(c)はシリカ蒸着層を形成した異なる態様のガスバリア性フィルムの部分断面図である。
【図10】(a)は本試験体の分解側面図であり、(b)は本試験体の平面図である。
【図11】耐熱試験による抵抗膜の表面抵抗率と経過日数との関係を示すグラフである。
【図12】耐湿度熱試験による抵抗膜の表面抵抗率と経過日数との関係を示すグラフである。
【図13】屋外暴露試験による抵抗膜の表面抵抗率と経過日数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0096】
1 誘電体層
2 抵抗膜
2a カーボンナノチューブ
2b バインダー
3 電波反射体
4 表面被覆層
5 がすバリア性フィルム
5a シリカ等の蒸着層
6,60 接着剤
7 裏面被覆層
8 空気層
9 スペーサー
20 複合積層体
30 電極
A,B,C,D,E,F 電波吸収体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層の片面側に抵抗膜を備え、誘電体層の反対面側に電波反射体を備えた電波吸収体であって、抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムを積層したことを特徴とする電波吸収体。
【請求項2】
抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムを積層してなる複合積層体の周囲、又は、周囲と両面、又は、周囲と片面を、接着剤で封止したことを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。
【請求項3】
誘電体層の片面側に表面被覆層を設け、誘電体層と表面被覆層との間に複合積層体を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電波吸収体。
【請求項4】
誘電体層と表面被覆層との間に複数の複合積層体を重ねて設けたことを特徴とする請求項3に記載の電波吸収体。
【請求項5】
複数の複合積層体の間に空気層又は他の誘電体層を形成したことを特徴とする請求項4に記載の電波吸収体。
【請求項6】
複合積層体と表面被覆層との間に、空気層又は他の誘電体層を形成したことを特徴とする請求項3に記載の電波吸収体。
【請求項7】
電波反射体の両面側に設けた誘電体層の該電波反射体と反対面側に複合積層体をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項2に記載の電波吸収体。
【請求項8】
ガスバリア性フィルムが、5.0(g/m2・day)以下の水蒸気透過度と、5.0(cc/m2・day・atm)以下の酸素透過度を有する単層又は複層の合成樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項9】
ガスバリア性フィルムが、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリルのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルムであることを特徴とする請求項8に記載の電波吸収体。
【請求項10】
単層もしくは複層の合成樹脂フィルムの少なくとも片面、又は、複層の合成樹脂フィルムの層間の界面に、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか単独又は2種以上の蒸着層を形成したことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の電波吸収体。
【請求項11】
抵抗膜が極細導電繊維を含んだ膜であって、極細導電繊維が凝集することなく分散して互いに接触していることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項12】
表面被覆層が、紫外線吸収剤を含有した合成樹脂板であることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項13】
抵抗膜に電極を付設したことを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項14】
四周側面を接着剤で封止したことを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項15】
接着剤が、80℃での耐熱性を有するエチレン酢酸ビニル共重合樹脂系又はポリカーボネートエステル樹脂系のホットメルト型接着シートであることを特徴とする請求項2又は請求項14に記載の電波吸収体。
【請求項16】
各構成部材が透視性を有するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項1】
誘電体層の片面側に抵抗膜を備え、誘電体層の反対面側に電波反射体を備えた電波吸収体であって、抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムを積層したことを特徴とする電波吸収体。
【請求項2】
抵抗膜の両面にガスバリア性フィルムを積層してなる複合積層体の周囲、又は、周囲と両面、又は、周囲と片面を、接着剤で封止したことを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。
【請求項3】
誘電体層の片面側に表面被覆層を設け、誘電体層と表面被覆層との間に複合積層体を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電波吸収体。
【請求項4】
誘電体層と表面被覆層との間に複数の複合積層体を重ねて設けたことを特徴とする請求項3に記載の電波吸収体。
【請求項5】
複数の複合積層体の間に空気層又は他の誘電体層を形成したことを特徴とする請求項4に記載の電波吸収体。
【請求項6】
複合積層体と表面被覆層との間に、空気層又は他の誘電体層を形成したことを特徴とする請求項3に記載の電波吸収体。
【請求項7】
電波反射体の両面側に設けた誘電体層の該電波反射体と反対面側に複合積層体をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項2に記載の電波吸収体。
【請求項8】
ガスバリア性フィルムが、5.0(g/m2・day)以下の水蒸気透過度と、5.0(cc/m2・day・atm)以下の酸素透過度を有する単層又は複層の合成樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項9】
ガスバリア性フィルムが、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、超低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリフェニレンサルファイド、ポリアクリロニトリルのいずれか単独又は2種以上の合成樹脂からなる単層又は複層の合成樹脂フィルムであることを特徴とする請求項8に記載の電波吸収体。
【請求項10】
単層もしくは複層の合成樹脂フィルムの少なくとも片面、又は、複層の合成樹脂フィルムの層間の界面に、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムのいずれか単独又は2種以上の蒸着層を形成したことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の電波吸収体。
【請求項11】
抵抗膜が極細導電繊維を含んだ膜であって、極細導電繊維が凝集することなく分散して互いに接触していることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項12】
表面被覆層が、紫外線吸収剤を含有した合成樹脂板であることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項13】
抵抗膜に電極を付設したことを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項14】
四周側面を接着剤で封止したことを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項15】
接着剤が、80℃での耐熱性を有するエチレン酢酸ビニル共重合樹脂系又はポリカーボネートエステル樹脂系のホットメルト型接着シートであることを特徴とする請求項2又は請求項14に記載の電波吸収体。
【請求項16】
各構成部材が透視性を有するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれかに記載の電波吸収体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−124154(P2008−124154A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304531(P2006−304531)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】
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