説明

電流電圧変換回路およびそれを用いた光ピックアップ装置

【課題】高出力の光を受光した場合のオペアンプの飽和を防止し、かつリミットを任意に設定できる電流電圧変換回路を提供する。
【解決手段】本発明の回路では、フォトダイオード2に光が入射し、光電流Iが発生すると、カレントミラー回路9を介し、抵抗4、5で決まるミラー比倍の電流がオペアンプ1に入力される。この際、抵抗4では光電流Iによって電圧降下が発生するが、この値がリミット用トランジスタ8の動作し始める電圧、例えば0.7V以下ならばリミッタ機能は働かない。しかし、光電流Iが大きくなり、抵抗4での電圧降下が、トランジスタ8の動作し始める電圧に達すると、トランジスタ8がオンしてコレクタに電流が流れ始め、フォトダイオード2で発生した光電流IをGNDに流すことにより、アンプ1への入力電流にリミットがかかる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流を電圧に変換する回路に関し、特に受光素子からの電流を電圧に変換して増幅する回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1にあるようなコンパクト・ディスク・プレーヤーに搭載する光ピックアップ装置の受光部には、図7に示すように光電変換素子としてのフォトダイオード2に生じる信号電流Iを電圧に変換する電流−電圧変換回路が設けられている。
【0003】
この回路では、オペアンプ1の非反転入力端子(+端子)に、基準電圧Vrefが印加され、また、反転入力端子(−端子)にはオペアンプ1の出力の一部が帰還抵抗Rを介して入力され、負帰還がかかるようになっている。反転入力端子には、接続端子13を介してフォトダイオード2が接続されている。
【0004】
この回路において、フォトダイオード2に光が照射されると、その光量に応じた電流Iが発生する。この電流Iは、オペアンプ1の反転入力端子(−端子)と出力端子3との間に接続された帰還抵抗Rを流れ、抵抗Rの両端にはV(=RI)の電圧が発生し、電流Iが電圧Vに変換されることとなる。
【0005】
CD−RやDVD−Rといった記録型光ディスク用ピックアップの場合、フォトダイオード2への入射光が比較的大きくなる。そのため、フォトダイオード2への入射光が一定値以上になっても、アンプ1が飽和しないようにするため、抵抗Rに並列にリミット用ダイオード15を挿入し、出力電圧がアンプ1の最大出力電圧に達しないようにリミッタがかけられている。
【特許文献1】特開平7−212147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の構成では、リミッタ機能が働きダイオード15が導通すると、アンプ1の出力端子からダイオード15を介して比較的大きな電流が流れるため、アンプ1の出力電流能力を十分に持たせなければならない。そのためアンプ1の出力部に多くのトランジスタを用いなければならず、チップサイズが大きくなるという課題があった。また、リミット電圧もダイオードのオン電圧である0.7Vの整数倍でしか設定できないという課題もあった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決する手法を示したものであって、リミッタ機能が働いてもオペアンプの出力から電流を消費せずに、かつリミット電圧も任意に定めることができるようにした電流電圧変換回路およびそれを用いた光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の電流電圧変換回路は、電流信号源からの電流が帰還抵抗によって電圧に変換されてオペアンプの一方の端子に入力される電流電圧変換回路であって、前記電流信号源と前記オペアンプの入力端子との間に、前記電流信号源からの電流を受けて動作するカレントミラー回路と、前記カレントミラー回路に流れる電流に応じてスイッチング動作するリミット用トランジスタとが設けられており、前記電流信号源からの電流が所定値以上になると前記リミット用トランジスタが導通して、前記オペアンプに入力される電流を制限することを特徴とする。
【0009】
前記リミット用トランジスタはバイポーラトランジスタであることが好ましい。
【0010】
前記リミット用トランジスタはMOSトランジスタであることが好ましい。
【0011】
前記カレントミラー回路の入力側に電流源が設けられていることが好ましい。
【0012】
前記カレントミラー回路の入力側に別のカレントミラー回路と別の電流源が接続され、前記別のカレントミラー回路から前記カレントミラー回路を構成するトランジスタにそれぞれ同量の電流を流すことが好ましい。
【0013】
前記電流信号源が光電変換素子であることが好ましい。
【0014】
本発明の光ピックアップ装置は、発光源と、前記発光源の出射光が光ディスクに照射され、反射された戻り光を受光して、受光された光信号を電気信号に変換するための受光回路を備えた光ピックアップ装置であって、前記受光回路に本発明の電流電圧変換回路を有している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リミッタが働いた場合でも、リミッタに過大な電流を流すことなく、アンプが飽和することを防止でき、アンプの応答速度の高速化、ひいてはこの回路を用いた光アップ装置等の動作速度も向上する。また、リミットがかかる入力電流値をオペアンプの入力側で設定できるため、ダイナミックレンジを有効に使うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1に本発明の実施の形態1における電流電圧変換回路の構成を示す。
【0018】
同図において、図7に示した従来例と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態と従来例との違いは、オペアンプの反転入力端子(−)に接続される入力側接続端子12とフォトダイオードの出力側接続端子13との間に、電流リミット機能を持ったカレントミラー回路9を設けている点にある。
【0019】
この構成によって、フォトダイオード2は、電流リミット機能付カレントミラー回路9を介してオペアンプ1の反転入力端子(−)及び帰還抵抗Rに接続されていることになる。
【0020】
リミット機能付カレントミラー回路9は、トランジスタ6、7及びそれらのエミッタに接続された抵抗4、5及びリミット用トランジスタ8とからなっている。リミット用トランジスタ8はトランジスタ7と抵抗4の間にベースが接続され、抵抗4とGND(接地電位)との間にエミッタが、トランジスタ6のコレクタとフォトダイオード2の間にコレクタがそれぞれ接続されている。
【0021】
本実施形態の回路では、フォトダイオード2に光が入射し、光電流Iが発生すると、カレントミラー回路9を介し、抵抗4、5で決まるミラー比倍の電流がオペアンプ1に入力される。この際、抵抗4では光電流Iによって電圧降下が発生するが、この値がリミット用トランジスタ8の動作し始める電圧、例えば0.7V以下ならばリミッタ機能は働かない。
【0022】
しかし、フォトダイオード2に発生した電流Iが大きくなり、抵抗4で発生した電圧降下分が、リミット用トランジスタ8のベースに印加されているため、トランジスタ8の動作し始める電圧、例えば0.7Vに達すると、トランジスタ8がオンしてコレクタに電流が流れ始め、フォトダイオード2で発生した光電流IをGNDに流し、その結果、アンプ1への入力電流にリミットがかかり、オペアンプ1が飽和することを防止することが可能となる。
【0023】
なお、図2に示す変形例では、入力側トランジスタ6、出力側トランジスタ7がPNPトランジスタで構成されたカレントミラー回路9を用いているが、これは図1に示した構成とは逆に、フォトダイオード2のカソードが回路中の最低電位の電源に接続された場合の構成を示している。
【0024】
図3に示す変形例では、図1に示したリミット機能付カレントミラー回路のトランジスタ6〜8をFETに置き換えた構成である。この場合、リミット用FET14の動作し始める電圧を0.3Vとバイポーラトランジスタより低くできるため、より低電流でリミットをかけることが可能である。
【0025】
なお、本変形例に示したようにリミット付カレントミラー回路で用いられるトランジスタをバイポーラからFETに置き換えることは、以降に示す構成でも同様に可能である。
【0026】
(実施の形態2)
図4に本発明の実施の形態2における電流電圧変換回路の構成を示す。
【0027】
本実施の形態では、リミット付カレントミラー回路9に電流源11を接続している点で実施の形態1の構成と異なる。
【0028】
本実施の形態によれば、カレントミラー回路9の入力側トランジスタ6に電流源11から常時コレクタ電流を流すことにより、トランジスタ6の立ち上がり時の非直線ひずみを抑え、かつトランジスタ6が高速で動作するコレクタ電流に設定することでリミット付カレントミラー回路9の動作を高速化することが可能となり、ひいてはこの回路を用いた光アップ装置等の動作速度も向上する。
【0029】
(実施の形態3)
図5に本発明の実施の形態3における電流電圧変換回路の構成を示す。
【0030】
本実施の形態では、実施の形態2の構成における電流源11を、別のカレントミラー回路10と電流源11aとで構成した点が異なる。
【0031】
なお、カレントミラー回路を構成するトランジスタは全て同じ性能となるように設計されている。
【0032】
実施の形態2では、フォトダイオード2に光が照射していないときに、オペアンプ1の反転入力端子(−)にトランジスタ7から電流源11からの電流と同じ大きさの電流が流れ込み、帰還抵抗Rの両端に定常的に電圧が発生し、これがオフセット電圧となっていたが、本実施の形態によれば、カレントミラー回路10からリミット付カレントミラー回路9のトランジスタ6、7にそれぞれ同量の電流を流し、アンプへの入力電流を打ち消すため、オフセット電圧が発生せずダイナミックレンジを大きく取れるメリットがある。
【0033】
(実施の形態4)
図6に本発明の実施の形態4における光ピックアップ装置の構成図を示す。
【0034】
本実施の形態の光ピックアップ装置は、CDとDVDの両方に対応できるタイプである。
【0035】
本実施の形態の光ピックアップ装置の動作について簡単に説明する。
【0036】
赤外レーザ16または赤色レーザ17からの出射光が3ビームグレーティング18で3ビームに分割されてビームスプリッタ19に入射し、その後、コリメータレンズ20へ平行光に変換された後、ビームスプリッタ21を透過して、ミラー22で反射されて対物レンズ23に達する。対物レンズ23で集光されたレーザ光は光ディスク24上に光スポットを結ぶ。光ディスクがCDの場合は、赤外レーザが対応し、光ディスクがDVDの場合は、赤色レーザが対応する。
【0037】
光ディスク24で反射されたレーザ光は、もとの経路を戻った後、ビームスプリッタ21で反射され、受光用IC25に到達する。受光用IC25には実施の形態1〜3に例示した本発明の電流電圧変換回路が設けられている。
【0038】
受光用IC25の受光素子で受光された反射戻り光は光電流に変換された後、さらに電圧に変換・増幅され、光ディスクの情報信号やフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号等を生成する。これらの信号から光ディスク24の情報の読み取り、あるいは記録を行ったり、光ピックアップ装置の機械的動作が制御される。
【0039】
本実施の形態によれば、例えばCD−RやDVD−Rといった記録型光ディスクに対応する際に、高出力のレーザ光が受光素子に照射されても、オペアンプへの入力電流にリミットがかかるため、オペアンプの出力側の電流を抑えて、オペアンプが飽和することを防止ことができる。また、リミットがかかる入力電流値をオペアンプの入力側で設定できるため、ダイナミックレンジを有効に使うことができる。
【0040】
なお、光ピックアップ装置の構成等は本実施の形態に限られるものでなく、その使用様態に応じて適切に選択されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の電流電圧変換回路は、アンプ出力の飽和を簡便な構成で構成でき、記録・再生用途の光ディスク装置に用いられる光ピックアップ装置に適用すると有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態1における電流電圧変換回路の構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1における電流電圧変換回路の変形例を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における電流電圧変換回路の別の変形例を示す図
【図4】本発明の実施の形態2における電流電圧変換回路の構成を示す図
【図5】本発明の実施の形態3における電流電圧変換回路の構成を示す図
【図6】本発明の実施の形態4における光ピックアップ装置の構成を示す図
【図7】従来の技術における電流電圧変換回路の構成を示す図
【符号の説明】
【0043】
1 オペアンプ
2 フォトダイオード
3 オペアンプの出力端子
4 抵抗
5 抵抗
6 トランジスタ
7 トランジスタ
8 リミット用トランジスタ
9 電流リミット機能付カレントミラー回路
10 別のカレントミラー回路
11、11a 電流源
12 オペアンプの入力側接続端子
13 フォトダイオードの出力側接続端子
14 リミット用MOSトランジスタ
15 リミッタダイオード
16 赤外レーザ
17 赤色レーザ
18 3ビームグレーティング
19 ビームスプリッタ
20 コリメータレンズ
21 ビームスプリッタ
22 ミラー
23 対物レンズ
24 光ディスク
25 受光用IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流信号源からの電流が帰還抵抗によって電圧に変換されてオペアンプの一方の端子に入力される電流電圧変換回路であって、
前記電流信号源と前記オペアンプの入力端子との間に、前記電流信号源からの電流を受けて動作するカレントミラー回路と、前記カレントミラー回路に流れる電流に応じてスイッチング動作するリミット用トランジスタとが設けられており、
前記電流信号源からの電流が所定値以上になると前記リミット用トランジスタが導通して、前記オペアンプに入力される電流を制限することを特徴とする電流電圧変換回路。
【請求項2】
前記リミット用トランジスタはバイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の電流電圧変換回路。
【請求項3】
前記リミット用トランジスタはMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の電流電圧変換回路。
【請求項4】
前記カレントミラー回路の入力側に電流源が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電流電圧変換回路。
【請求項5】
前記カレントミラー回路の入力側に別のカレントミラー回路と別の電流源が接続され、前記別のカレントミラー回路から前記カレントミラー回路を構成するトランジスタにそれぞれ同量の電流を流すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電流電圧変換回路。
【請求項6】
前記電流信号源が光電変換素子であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電流電圧変換回路。
【請求項7】
発光源と、前記発光源の出射光が光ディスクに照射され、反射された戻り光を受光して、受光された光信号を電気信号に変換するための受光回路を備えた光ピックアップ装置であって、前記受光回路に請求項1ないし6のいずれかに記載の電流電圧変換回路を有する光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−101110(P2006−101110A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283889(P2004−283889)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】