説明

電源回路

【課題】光源ランプなどの定電力負荷を安定動作させると共にエネルギーロスの低減を図ることが可能にする。
【解決手段】電源回路は、商用交流電源(100V〜250V)を整流回路30により整流し、昇圧回路31により定電力負荷17aに応じた所定の電源仕様に変換して出力する。電源検出回路32は、商用交流電源の電圧値が所定の電圧値よりも高いか否かを判定して制御部20に通知する。制御部20は、商用交流電源が所定の電圧値よりも高いと判定された場合(250V系)には、定電力負荷17aの安定動作に適した380Vを出力電圧として設定し、所定の電圧値よりも高くないと判定された場合には(100V系)、定電力負荷17aが許容する電圧範囲内の270Vを出力電圧として設定して、昇圧回路31から出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロジェクタ装置の光源ランプなどの定電力負荷が設けられた装置に好適な電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、プロジェクタ装置は、商用交流電源から電力を得て、直流電圧に変換してロジック回路(CPU、メモリ等)に電力を供給すると共に、光源ランプに対してランプ点灯用の電力を供給する電源回路が設けられている。
【0003】
この種、電源回路は、ノイズを商用電源ラインに出さないためのノイズフィルタ、商用交流電圧を整流して直流(脈流)にする整流回路、整流後の直流電圧をさらに高圧の直流電圧に変換する昇圧回路、昇圧回路からの出力電圧をロジック回路で使用される例えばDC12〜3.3V等へ変換する降圧回路、光源に用いられる高圧水銀ランプなどを点灯させるためのバラスト電源回路などから構成されている。
【0004】
一般に全世界の商用交流電源に接続して使用可能にするためには、電源回路は、AC100V〜250Vの入力交流電圧を約DC380Vに昇圧してから必要とする電圧まで降圧して各部に電源を供給している。なお、昇圧電圧DC380Vは、最大入力電圧250Vの整流後の波高値と誤差等に基づいて決められている。光源ランプに対しては、ランプの負荷変動に対して光出力を一定にするため、出力電圧をACまたはDC50〜150V程度とし、定電力制御をしている。
【0005】
ランプ(放電灯)を点灯させるための装置としては、例えば特許文献1あるいは特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平7−85985号公報
【特許文献2】特願2002−520176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電源回路において、昇圧回路とそれに接続される降圧回路とバラスト回路は、入出力電圧の差が広いほど変換効率が悪化するという特性を有している。従来の電源回路は、AC100V〜250Vまでの商用交流電源に対応するために、入力電圧をDC380Vに昇圧するため、入力電源電圧(商用電源電圧)が低い場合においてはその効率が著しく低下することになる。
【0007】
例えば、欧州地域での商用電源電圧AC220Vを入力した場合、整流後の約310Vから380Vに昇圧するには電圧差が60Vであるため効率が96%に達する。
【0008】
一方で、日本仕様の商用電源電圧AC1OOVを整流した電圧約140Vを380Vに昇圧するには電圧差が約240Vあることから変換効率が約90%となってしまう。
【0009】
また、後段の降圧回路でも同様に380Vを5Vや80Vに変換する場合も効率が悪く、高容量の電源になればなるほどその損失電力が増え大型の放熱器や冷却用ファンが必要になってしまう。
【0010】
本発明の課題は、光源ランプなどの定電力負荷を安定動作させると共にエネルギーロスの低減を図ることが可能な電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、仕様電圧値の異なる複数の商用交流電源の内の1つに選択的に接続され、この接続された商用交流電源を昇圧するとともに負荷に応じた所定の電源仕様に変換して出力する電源回路であって、前記商用交流電源が接続された際に、その接続された商用交流電源の電圧値が所定の電圧値よりも高いか否かを判定する入力電圧判定手段と、前記入力電圧判定手段によって所定の電圧値よりも高いと判定された場合には、前記負荷の安定動作に適した第1の電圧を出力電圧として設定し、前記所定の電圧値よりも高くないと判定された場合には、前記負荷が許容する電圧範囲内であり、かつ前記第1の電圧値よりも低い第2の電圧を出力電圧として設定する出力電圧設定手段と、前記出力電圧設定手段により設定された電圧値に応じた電圧に安定化するように出力を制御する制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、さらに、前記負荷は定電力負荷であり、前記第1の電圧に対応する耐圧を有する第1のコンデンサと、前記第2の電圧に対応する耐圧を有する第2のコンデンサとを出力端に接続し、前記第1の電圧が出力電圧として設定された場合に、前記第2のコンデンサを前記出力端から切り離すスイッチ手段を具備したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、さらに、前記負荷に対する電源の供給を開始した後、この負荷の動作が安定したか否かを検出し、安定したことを検出した場合には、前記出力電圧の設定値を前記第1の電圧値から前記第2の電圧値に切り換えることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、商用交流電源を整流して出力する整流回路と、前記整流回路により整流された出力をもとに前記商用交流電源の電圧値を検出する電圧検出回路と、前記整流回路からの出力を所定電圧に昇圧する昇圧回路と、前記電圧検出回路によって検出された電圧値に応じて、前記昇圧回路によって昇圧させる所定電圧を制御する制御手段と、前記昇圧回路の出力を負荷の駆動用の電源に変換して出力するバラスト電源回路とを具備したことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、さらに、前記昇圧回路の出力を所定電圧に降圧する降圧回路とを有し、前記制御手段は、ロジック回路から構成され、前記降圧回路から出力される電源によって前記ロジック回路を動作させ、このロジック回路によって前記昇圧回路からの出力電圧を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記出力電圧の切り換えタイミングに関する複数の動作モードの中から何れかの動作モードを設定する設定手段とを有し、前記制御手段は、前記設定手段によって設定された動作モードに応じたタイミングで前記昇圧回路からの出力電圧を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記バラスト電源回路を複数接続する接続手段を有し、前記制御手段は、前記接続手段によって接続された複数のバラスト電源回路のそれぞれから前記負荷に対する電源の出力の状態を入力し、前記昇圧回路からの出力電圧を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、商用交流電源を整流して出力する整流回路と、前記整流回路により整流された出力をもとに前記商用交流電源の電圧値を検出する電圧検出回路と、前記整流回路からの出力を所定電圧に昇圧する昇圧回路と、前記電圧検出回路によって検出された電圧値に応じて、前記昇圧回路によって昇圧させる所定電圧を制御する制御回路を内蔵した、前記昇圧回路の出力を所定電圧に降圧する降圧回路と、前記昇圧回路の出力を負荷の駆動用の電源に変換するバラスト電源回路とを具備したことを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の発明は、第1の電圧と同第1の電圧より低い第2の電圧の電力を選択的に定電力負荷に供給する電源回路であって、前記定電力負荷への電力の出力端に、前記第1の電圧に対応する耐圧を有する第1のコンデンサと、前記第2の電圧に対応する耐圧を有する第2のコンデンサとを接続し、前記第1の電圧が出力される場合に、前記第2のコンデンサを前記出力端から切り離すスイッチ手段を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、高い仕様電圧の商用交流電源に接続された場合には、昇圧によるエネルギーロスが少ないため、出力電圧を負荷に最適な電圧に設定して負荷の安定動作を優先し、低い仕様電圧の商用交流電源に接続された場合には、昇圧によるエネルギーロスが大きいため、負荷の許容電圧範囲内で出力電圧を低く設定してエネルギーロスの低減を優先することができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、出力電圧が高い方の電圧に設定された場合には、定電力負荷に供給する電流がより少なくてすみ、リップル等も減少するため、一方のコンデンサを切り離しても影響が少なく、この切り離される側のコンデンサの耐圧をもう一方のコンデンサの耐圧よりも小さくすることができ、全体として省スペース化を図ることができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、起動時等の定電力負荷の状態が変化(温度変化など)する場合においても、出力電圧を負荷に最適な電圧に設定して負荷を安定動作させることができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、高い電圧の商用交流電源に接続された場合には、昇圧によるエネルギーロスが少ないため、出力電圧を負荷に最適な電圧に設定してランプ負荷の安定動作を優先し、低い電圧の商用交流電源に接続された場合には、昇圧によるエネルギーロスが大きいため、出力電圧を低く設定してエネルギーロスの低減を優先することができる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、請求項4の発明の効果に加えて、電源回路が搭載された装置、例えばプロジェクタ装置のロジック回路(CPU、メモリ等)により昇圧回路の出力電圧を制御することができる。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、請求項4の発明の効果に加えて、ユーザからの指定に応じて動作モードを設定できるようにすることで、ユーザが所望する電圧制御をすることができる。
【0026】
請求項7記載の発明によれば、請求項4の発明の効果に加えて、バラスト電源を複数接続できるようにすることで、複数のランプ負荷を駆動制御することができる。
【0027】
請求項8記載の発明によれば、降圧回路に内蔵された制御回路によって、例えばランプ駆動や負荷変動に対して電力を一定にして安定動作させる制御の他に、降圧回路の出力電圧の制御を実行させることができる。
【0028】
請求項9記載の発明によれば、出力電圧が高い方の電圧に設定された場合には、定電力負荷に供給する電流がより少なくてすみ、リップル等も減少するため、一方のコンデンサを切り離しても影響が少なく、この切り離される側のコンデンサの耐圧をもう一方のコンデンサの耐圧よりも小さくすることができ、全体として省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明の電源回路が搭載されるプロジェクタ装置の電子回路の機能構成を示すブロック図である。図1において、入出力コネクタ部10より入力された各種規格の画像信号が、入出力インタフェース(I/F)11、システムバスSBを介して画像変換部12で所定のフォーマットの画像信号に統一された後に、表示エンコーダ13へ送られる。
【0031】
表示エンコーダ13は、送られてきた画像信号をビデオRAM14に展開記憶させた上でこのビデオRAM14の記憶内容からビデオ信号を発生して表示駆動部15に出力する。
【0032】
表示駆動部15は、送られてきた画像信号に対応して適宜フレームレート、例えば30[フレーム/秒]で空間的光変調素子(SOM)16を表示駆動するもので、この空間的光変調素子16に対して、例えばキセノンランプ、メタルハライドランプ等の光源ランプ17が出射する高輝度の白色光を照射することで、その反射光で光像が形成され、投影レンズ18を介して図示しないスクリーンに投影表示される。光源ランプ17は、定電力負荷であり、電源回路29からランプ用に制御された電力が供給される。
【0033】
しかるに、投影レンズ18は、ズーム駆動部19によりレンズモータ(M)が駆動されることでズーム位置及びフォーカス位置を適宜移動する。
各回路のすべての動作制御を司るのが制御部20である。制御部20は、CPUと、自動合焦及び自動台形補正の処理、さらには光源ランプ17に対する駆動制御を含む該CPUで実行される動作プログラムを固定的に記憶したROM、及びワークメモリとして使用されるRAM等により構成される。
【0034】
また、制御部20には、システムバスSBを介して画像記憶部21、音声処理部22、測距処理部23が接続される。
画像記憶部21は、例えばフラッシュメモリ等でなり、後述する映像調整メニューやユーザロゴ画像の画像データを記憶するもので、制御部20に指示された画像データを適宜読出して表示エンコーダ13へ送出し、それらの画像を投影レンズ18により投影表示させる。
【0035】
音声処理部22は、PCM音源等の音源回路を備え、投影表示動作時に与えられる音声データをアナログ化し、スピーカ24を駆動して拡声放音させる。
測距処理部23は、例えば位相差センサ(図示せず)を駆動して、画像投影面(スクリーン)の複数位置までの距離を測定する。
なお、本体ケーシング上部には、メインキー/インジケータ部25が設けられており、キー/インジケータ部25におけるキー操作信号が直接制御部20に入力され、また制御部20は各種インジケータ(電源/待機、温度)を直接点灯/点滅駆動する一方で、Ir受信部26での赤外光受信信号も直接制御部20に入力される。
【0036】
電源回路29は、前述した各機能部(ロジック回路)、及び光源ランプ17に対して電力を供給する。本実施形態における電源回路29は、仕様電圧値の異なる複数の商用交流電源に接続することができ、この接続された商用交流電源を昇圧すると共に負荷に応じた所定の電源仕様に変換して出力することができる。
【0037】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態における電源回路29の詳細について説明する。
電源回路29は、仕様電圧値の異なる複数の商用交流電源の内の1つに選択的に接続されて使用できるよう構成されている。電源回路29は、接続された商用交流電源を昇圧するとともに負荷に応じた所定の電源仕様、すなわち制御部20に含まれるCPUやROM,RAM等のメモリを含むロジック回路、あるいは光源ランプ17を駆動するための電源電圧に変換して出力する。
【0038】
図2は、第1実施形態における電源回路29の回路構成を示すブロック図である。図2に示すように、電源回路29は、制御部20、整流回路30、昇圧回路31、電源検出回路32、コンデンサ33、コンデンサ34、及びスイッチ35により構成される。図2では、定電力負荷17a(光源ランプ17)に対して電源を供給するものとして説明する。
【0039】
整流回路30は、世界各国で使用されている商用交流電源(100V〜250V)に対応しており、例えばブリッジ型ダイオード等で整流し、直流(脈流)にして出力する。
【0040】
昇圧回路31は、整流回路30により整流された出力を、制御部20からの出力電圧切換信号に応じた出力電圧となるように昇圧して出力するもので、例えば図3に示すように、コイル31a、ダイオード31b、スイッチ素子31c、制御回路31d、基準電圧回路31e、及び電圧検出回路31fが設けられている。制御回路31dは、制御部20からの出力電圧切換信号に応じて、電圧検出回路31f及び基準電圧回路31eにより検出される電圧値に基づいてスイッチ素子31cを制御する。第1実施形態では、制御部20からの出力電圧切換信号により、出力電圧を380V(第1の電圧)あるいは270V(第2の電圧)の何れかに切り換える。出力電圧270Vは、例えば定電力負荷17a(バラスト電源回路(イグナイタ)、光源ランプ17を含む)を安定動作させるための許容電圧範囲内の最低電圧値とする。定電力負荷17aによって許容電圧範囲が異なるが、好ましくは定電力負荷17aが許容する電圧範囲内であり、入力電圧との差が最も少ない電圧値に決められるものとする。
【0041】
電源検出回路32は、整流回路30により整流された出力をもとに、例えば電圧値が所定の電圧値(例えば150V)よりも高いか否かにより、商用交流電源が100V系(100〜127V)と200V系(200〜250V)の何れであるかを判定して、入力電圧検出信号によって制御部20に通知する。
【0042】
コンデンサ33とコンデンサ34は、リップル除去と瞬時停電に対する出力電圧変動防止のために設けられている。コンデンサ33は、コンデンサ昇圧回路31の出力端に直接接続されている。コンデンサ34は、制御部20により切り換えが制御されるスイッチ35を介して、コンデンサ昇圧回路31の出力端に接続されている。
【0043】
コンデンサ33は、昇圧回路31からの出力電圧が380Vに対応する400V耐圧(220μF)を有している。コンデンサ34は、昇圧回路31からの出力電圧が270Vの場合に対応する300V耐圧(180μF)を有している。コンデンサ34は、昇圧回路31からの出力電圧が270Vの場合にスイッチ35により昇圧回路31の出力端と接続され、コンデンサ33の容量値220μFと合わせて、リップル特性と瞬時停電特性を高電圧時と同様に満たすようになっている。
【0044】
次に、第1実施形態における電源回路29の起動処理について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0045】
電源検出回路32は、整流回路30により整流された出力電圧をもとに、整流回路30が接続された商用交流電源の電圧値(入力電圧値)が100V系であるかあるいは250V系であるかを判別し、制御部20に対して入力電圧検出信号により通知する(ステップA1)。
【0046】
制御部20は、入力電圧が250V系である場合には、昇圧回路31からの出力電圧を高電圧380Vに設定する(ステップA2)。一方、制御部20は、入力電圧が100V系である場合には、昇圧回路31からの出力電圧を低電圧270Vに設定する(ステップA3)。
【0047】
ここで、例えばキー/インジケータ部25に設けられたランプ点灯ボタンがユーザによって押された場合、制御部20は、キー/インジケータ部25からの入力を受けて(ステップA4、Yes)、定電力負荷17a(バラスト電源)に対してランプ点灯制御信号を出力して、光源ランプ17の点灯を開始させる(ステップA5)。
【0048】
制御部20は、光源ランプ17の点灯を検出すると(例えば、バラスト電源からのランプ点灯検出信号による(図示せず))、接続された商用交流電源の電圧値に応じて設定された出力設定電圧に応じた電圧を昇圧回路31から出力させる。
【0049】
すなわち、出力電圧が380Vに設定されている場合、昇圧回路31に対して380Vにする出力電圧切換信号を出力する。昇圧回路31からの出力電圧が初期状態で380Vである場合には同じ状態が継続されることになる。
【0050】
また、この場合、制御部20は、スイッチ35をオフ状態にして、コンデンサ34を昇圧回路31の出力端から切り離す。これにより、コンデンサ33のみがリップル除去や瞬時停電時のバックアップ電力源として動作する。
【0051】
一方、出力電圧が270Vに設定されている場合、光源ランプ17を安定起動させるため、はじめは昇圧回路31に対して高電圧380Vの出力電圧とする出力電圧切換信号を出力する。昇圧回路31からの出力電圧が初期状態で380Vである場合には同じ状態が継続されることになる。すなわち、光源ランプ17は、点灯が開始されてから安定して状態になるまで、例えば数秒間要するため、この時間については安定した駆動が可能な高電圧380Vを昇圧回路31から出力させる。
【0052】
その後、制御部20は、光源ランプ17が安定したことを検出すると、昇圧回路31に対して、出力電圧270Vにする出力電圧切換信号を出力して出力電圧を切り換える(ステップA8)。
【0053】
また、この場合、制御部20は、低電圧出力に切替え可能になると、出力電圧を高電圧380Vから低電圧270Vに切り換えると同時に、スイッチ35をオン状態にして、コンデンサ34を昇圧回路31の出力端に接続する。これにより、昇圧回路31の出力端には、2つのコンデンサ33,34が接続されることになる。この状態になると両コンデンサ33,34の電圧値が低くなるが、容量値がコンデンサ33,34の容量の合計、すなわち220μF+180μF分となり、リップル特性と瞬時停電特性を高電圧時と同様に満たすことができる。
【0054】
このようにして、第1実施形態の電源回路29では、電源検出回路32により検出された入力電圧に応じて、プロジェクタ装置の制御を司る制御部20により昇圧回路31を制御し、昇圧回路31からの出力電圧を380Vあるいは270Vに切り換えることができる。すなわち、250V系の高い商用交流電源に接続された場合には、昇圧回路31からの出力電圧を高い380Vとすることで定電力負荷17aに最適な電源を供給することで安定動作を実現し、100V系の低い商用交流電源に接続された場合には、昇圧回路31からの出力電圧を低い270Vにすることでエネルギーロスの低減を図ることができる。
【0055】
また、昇圧回路31の出力端に、昇圧回路31の出力電圧に応じた低電圧用と高電圧用のコンデンサ33,34を設けることにより、一方のコンデンサ34を低耐圧にすることができ全体としてサイズを小さくすることができる。電子装置内の電子部品でサイズが大きいコンデンサのサイズを小さくできることにより実装される装置の外形サイズも小さくすることができる。また、コスト低減の効果も期待できる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における電源回路29の詳細について説明する。
図5は、第2実施形態における電源回路29の回路構成を示すブロック図である。なお、図2に示す第1実施形態と同一の構成部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。図5に示すように、電源回路29は、ロジック回路20a、整流回路30、昇圧回路31、電源検出回路32、降圧回路40、バラスト電源/イグナイタ41により構成される。
【0057】
降圧回路40は、昇圧回路31からの出力電圧を、CPUやROM,RAM等のメモリを含むロジック回路20aに対して供給するための電圧DC3.3Vに降圧するための回路である。ロジック回路20aは、降圧回路40からの出力電圧により駆動され、昇圧回路31及びバラスト電源/イグナイタ41の動作を制御する。
【0058】
バラスト電源/イグナイタ41は、昇圧回路31からの出力電圧を、定電力負荷である光源ランプ17に供給するための電圧、例えば150W(DC80V)に降圧するバラスト電源回路と、光源ランプ17を起動させるための超高圧パルスを発生させるイグナイタ回路を含む。
【0059】
なお、第2実施形態の電源回路29において、ロジック回路20aは、第1実施形態の制御部20とほぼ同様の制御を行うものとして詳細な説明を省略する。
【0060】
バラスト電源/イグナイタ41は、ロジック回路20aからのランプ点灯信号に応じて、イグナイタにより起動パルスを発生させ、昇圧回路31からの出力電圧をDC80Vに降圧して光源ランプ17に出力して光源ランプ17を起動させる。バラスト電源/イグナイタ41は、光源ランプ17の点灯が開始されるとロジック回路20aに対してランプ点灯検出信号を出力する。ロジック回路20aは、ランプ点灯検出信号の入力に応じて、所定のタイミングで昇圧回路31からの出力電圧を切り換える(第1実施形態参照)。
【0061】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
なお、前述した第2実施形態では、図5に示すように、降圧回路40により昇圧回路31からの電圧を降圧してロジック回路20aを駆動せるとしているが、バラスト電源回路に制御回路(CPU等)を内蔵させた構成とし、この制御回路によってロジック回路20aと同等の制御をさせることもできる。
【0063】
この場合、バラスト電源回路に内蔵された制御回路は、例えばプロジェクタ装置本体の制御部20からのランプ点灯制御信号に応じてバラスト電源回路を動作させ、その出力によりランプを起動して点灯させる。
【0064】
バラスト電源回路は、ランプが安定点灯したことを確認した後、出力電圧を270Vとする出力電圧切換信号を昇圧回路31に出力する。昇圧回路31は、入力されている商用電圧が低かった場合、その出力電圧を低電圧に切替え出力する。
【0065】
これにより、バラスト電源回路にて電圧切り替え制御をさせることによりプロジェクタ装置の本体の動作制御する制御部20の負担を軽減することができる。制御部20は、バーコード電源回路(制御回路)に対して、ランプの点灯信号のみ出力すれば良い。また、バラスト電源を置き換える場合においても、プロジェクタ装置本体側の制御回路の回路変更やプログラム変更なしに置き換えることが可能になる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態における電源回路29の詳細について説明する。
図6は、第3実施形態における電源回路29の主要部分の回路構成を示すブロック図である。なお、その他の回路構成については、図2に示す第1実施形態あるいは図5に示す第2実施形態と同じものとして省略している。
【0067】
第3実施形態の電源回路29は、複数のバラスト電源/イグナイタ41−1,41−2を接続することができるように、複数のコネクタ42−1,42−2が設けられた構成である。バラスト電源/イグナイタ41−1,41−2は、第2実施形態におけるバラスト電源/イグナイタ41と同様の機能を有する。バラスト電源/イグナイタ41−1,41−2は、それぞれに光源ランプ17−1,17−2が接続されており、ロジック回路20aからのランプ点灯制御信号に応じて、それぞれの光源ランプ17−1,17−2を発光駆動させる。
【0068】
バラスト電源/イグナイタ41−1,41−2は、それぞれに対応する光源ランプ17−1,17−2の点灯が開始された場合にランプ点灯検出信号を出力する。
【0069】
バラスト電源/イグナイタ41−1,41−2から出力されるランプ点灯検出信号はランプ点灯検出回路44に入力される。ランプ点灯検出回路44は、各バラスト電源/イグナイタ41−1,41−2からのランプ点灯検出信号が入力された場合、すなわち全ての光源ランプ17−1,17−2の点灯が開始されたことが通知された場合に、ロジック回路20aに対してランプ点灯検出信号を出力する。
【0070】
ロジック回路20aは、ランプ点灯検出回路44を通じてランプ点灯検出信号を入力すると、第1実施形態あるいは第2実施形態と同様にして、昇圧回路31に対して出力電圧切換信号を出力して、昇圧回路31からの出力電圧を制御する。
【0071】
このようにして、第4実施形態の電源回路29では、バラスト電源/イグナイタ41−1,41−2を複数接続できるようにすることで、複数の光源ランプ17−1,17−2についても、ロジック回路20aによる昇圧回路31に対する出力電圧の制御により駆動制御することができる。
【0072】
なお、図6では、2つのコネクタ42−1,42−2が接続された状態を示しているが、3つ以上のコネクタを設けることで、3つ以上のバラスト電源/イグナイタ(光源ランプ)を接続して使用することもできる。この場合、ランプ点灯検出回路44は、3つ以上の各バラスト電源/イグナイタから出力されるランプ点灯検出信号を入力してロジック回路20aに通知する。
【0073】
また、コネクタ42−1,42−2は、任意にバラスト電源/イグナイタ41−1,41−2を着脱自在とするので、図6に示す例では、1つのバラスト電源/イグナイタ(光源ランプ)を使用するか、あるいは2つのバラスト電源/イグナイタ(光源ランプ)を使用するかを、ユーザが簡単な操作によって使い分けすることができる。また、バラスト電源/イグナイタの交換も容易であるのでメンテナンスの作業負担も軽減される。
【0074】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の電源回路29について説明する。
図7には、第4実施形態における電源回路29の起動処理の動作を説明するためのフローチャートを示している。なお、第4実施形態の電源回路29は、第1、第2、または第3実施形態に示す構成(図2、図5、図6)において実現されるものとする。以下の説明では、図5に示す電源回路29の構成を参照しながら説明する。
【0075】
第4実施形態では、昇圧回路31からの出力電圧の切り換えタイミングについて、複数の動作モードの中からユーザの指定により何れかの動作モードに設定することができる。
【0076】
ここで、予め用意されている複数の動作モードとしては、例えば光源ランプ17を安定した状態で起動させる安定起動モードと、光源ランプ17が安定した状態でないが直ちに発光を開始させる即起動モードがあるものとする。
【0077】
ロジック回路20a(制御部20)は、キー/インジケータ部25を介してユーザからの動作モードの設定要求を受け付けると、キー/インジケータ部25のインジケータ、あるいは表示系(表示エンコーダ13、ビデオRAM14、表示駆動部15)により安定起動モードと即起動モードの何れかを選択するための設定表示を行う。
【0078】
ここでユーザのキー/インジケータ部25に対する操作により、何れかの動作モードを選択する入力があると、ロジック回路20aは、この選択された動作モードを、例えば不揮発性の記憶媒体に記録しておく。
【0079】
ロジック回路20aは、こうして設定された動作モードを、次回、起動処理を実行する際に参照し、この設定された動作モードに応じたタイミングで、図7のフローチャートに従い、昇圧回路31からの出力電圧を制御する。なお、ここでは、電源回路29の接続された商用交流電源が100V系であるものとして説明する。
【0080】
まず、ロジック回路20aは、ランプ点灯制御信号をバラスト電源/イグナイタ41に出力してバラスト電源/イグナイタ41を駆動させ、光源ランプ17に対して起動パルスを発生させる(ステップB1)。バラスト電源/イグナイタ41は、光源ランプ17が点灯が開始されるとロジック回路20aに対してランプ点灯検出信号を出力する。
【0081】
ロジック回路20aは、ランプ点灯検出信号を入力すると(ステップB2、Yes)、予め設定されている動作モードを参照する。
【0082】
ここで、安定起動モードが設定されている場合には(ステップB3、安定起動モード)、ロジック回路20aは、昇圧回路31に対して高電圧380Vの出力電圧とする出力電圧切換信号を出力すると共に、所定時間ウェイト状態となる(ステップB4)。すなわち、光源ランプ17は、点灯が開始されてから安定して状態になるまで、例えば数秒間要するため、この時間については安定した駆動が可能な高電圧380Vを昇圧回路31から出力させる。
【0083】
その後、ロジック回路20aは、光源ランプ17が安定したことを検出すると、昇圧回路31に対して、出力電圧270Vにする出力電圧切換信号を出力して出力電圧を切り換える(ステップB5)。
【0084】
一方、即起動モードが設定されている場合には(ステップB3、即起動モード)、ロジック回路20aは、直ちに昇圧回路31に対して出力電圧を270Vとする出力電圧切換信号を出力して、低電圧で光源ランプ17を駆動させ、エネルギーロスの低減を図る。
【0085】
なお、前述した説明では、安定起動モードと即起動モードの2つの動作モードについて説明してが、3つ以上の動作タイミングを示す動作モードから何れかを設定できるようにすることも可能である。
【0086】
このようにして、ユーザからの指定に応じて動作モードを設定できるようにすることで、安定起動モードあるいは即起動モードに応じたユーザが所望する電圧制御をすることができる。
【0087】
なお、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の電源回路が搭載されるプロジェクタ装置の電子回路の機能構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態における電源回路29の回路構成を示すブロック図。
【図3】図2中に示す昇圧回路31の構成の一例を示す図。
【図4】第1実施形態における電源回路29の起動処理について説明するためのフローチャート。
【図5】第2実施形態における電源回路29の回路構成を示すブロック図。
【図6】第3実施形態における電源回路29の主要部分の回路構成を示すブロック図。
【図7】第4実施形態における電源回路29の起動処理の動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0089】
10…入出力コネクタ、11…入出力インタフェース(I/F)、12…画像変換部、13…表示エンコーダ、14…ビデオRAM、15…表示駆動部、16…空間的光変調素子(SOM)、17(17−1,17−2)…光源ランプ、17a…定電力負荷、18…投影レンズ、19…ズーム駆動部、20…制御部、20a…ロジック回路、21…画像記憶部、22…音声処理部、23…測距処理部、24…スピーカ、25…キー/インジケータ部、26…Ir受信部、29…電源回路、30…整流回路、31…昇圧回路、31a…コイル、31b…ダイオード、31c…スイッチ素子、31d…制御回路、31f…電圧検出回路、31e…基準電圧回路、32…電源検出回路、33,34…コンデンサ、35…スイッチ、40…降圧回路、41(41−1,41−2)…バラスト電源/イグナイタ、44…ランプ点灯検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕様電圧値の異なる複数の商用交流電源の内の1つに選択的に接続され、この接続された商用交流電源を昇圧するとともに負荷に応じた所定の電源仕様に変換して出力する電源回路であって、
前記商用交流電源が接続された際に、その接続された商用交流電源の電圧値が所定の電圧値よりも高いか否かを判定する入力電圧判定手段と、
前記入力電圧判定手段によって所定の電圧値よりも高いと判定された場合には、前記負荷の安定動作に適した第1の電圧を出力電圧として設定し、前記所定の電圧値よりも高くないと判定された場合には、前記負荷が許容する電圧範囲内であり、かつ前記第1の電圧値よりも低い第2の電圧を出力電圧として設定する出力電圧設定手段と、
前記出力電圧設定手段により設定された電圧値に応じた電圧に安定化するように出力を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする電源回路。
【請求項2】
さらに、前記負荷は定電力負荷であり、
前記第1の電圧に対応する耐圧を有する第1のコンデンサと、前記第2の電圧に対応する耐圧を有する第2のコンデンサとを出力端に接続し、
前記第1の電圧が出力電圧として設定された場合に、前記第2のコンデンサを前記出力端から切り離すスイッチ手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の電源回路。
【請求項3】
さらに、前記負荷に対する電源の供給を開始した後、この負荷の動作が安定したか否かを検出し、安定したことを検出した場合には、前記出力電圧の設定値を前記第1の電圧値から前記第2の電圧値に切り換えることを特徴とする請求項1記載の電源回路。
【請求項4】
商用交流電源を整流して出力する整流回路と、
前記整流回路により整流された出力をもとに前記商用交流電源の電圧値を検出する電圧検出回路と、
前記整流回路からの出力を所定電圧に昇圧する昇圧回路と、
前記電圧検出回路によって検出された電圧値に応じて、前記昇圧回路によって昇圧させる所定電圧を制御する制御手段と、
前記昇圧回路の出力を負荷の駆動用の電源に変換して出力するバラスト電源回路と
を具備したことを特徴とする電源回路。
【請求項5】
さらに、前記昇圧回路の出力を所定電圧に降圧する降圧回路とを有し、
前記制御手段は、ロジック回路から構成され、
前記降圧回路から出力される電源によって前記ロジック回路を動作させ、このロジック回路によって前記昇圧回路からの出力電圧を制御することを特徴とする請求項4記載の電源回路。
【請求項6】
前記出力電圧の切り換えタイミングに関する複数の動作モードの中から何れかの動作モードを設定する設定手段を有し、
前記制御手段は、前記設定手段によって設定された動作モードに応じたタイミングで前記昇圧回路からの出力電圧を制御することを特徴とする請求項4記載の電源回路。
【請求項7】
前記バラスト電源回路を複数接続する接続手段を有し、
前記制御手段は、前記接続手段によって接続された複数のバラスト電源回路のそれぞれから前記負荷に対する電源の出力の状態を入力し、前記昇圧回路からの出力電圧を制御することを特徴とする請求項4記載の電源回路。
【請求項8】
商用交流電源を整流して出力する整流回路と、
前記整流回路により整流された出力をもとに前記商用交流電源の電圧値を検出する電圧検出回路と、
前記整流回路からの出力を所定電圧に昇圧する昇圧回路と、
前記電圧検出回路によって検出された電圧値に応じて、前記昇圧回路によって昇圧させる所定電圧を制御する制御回路を内蔵した、前記昇圧回路の出力を所定電圧に降圧する降圧回路と、
前記昇圧回路の出力を負荷の駆動用の電源に変換するバラスト電源回路と
を具備したことを特徴とする電源回路。
【請求項9】
第1の電圧と同第1の電圧より低い第2の電圧の電力を選択的に定電力負荷に供給する電源回路であって、
前記定電力負荷への電力の出力端に、前記第1の電圧に対応する耐圧を有する第1のコンデンサと、前記第2の電圧に対応する耐圧を有する第2のコンデンサとを接続し、
前記第1の電圧が出力される場合に、前記第2のコンデンサを前記出力端から切り離すスイッチ手段を具備したことを特徴とする電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−25574(P2006−25574A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203635(P2004−203635)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】