電源装置、誘導加熱装置、及び電子写真式画像形成装置
【課題】周波数制御の電磁誘導加熱方式定着装置を有する画像形成装置において、小電力制御時に駆動周波数が高くなると、スイッチ素子でのスイッチング損失が増加して、効率が低下するのを防止する。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置の定着電源装置においては、特性の相異なる2つのタイプの自己消弧素子(IGBTとFET)を用いて、高電力動作時(低周波動作)はIGBT駆動、低電力動作時(高周波動作時)にはFET駆動とする。これにより、定着電源装置の動作状況に応じて使用する自己消弧素子を選択する事で、低電力動作時(高周波動作時)のスイッチング損失を低減させ、装置のエネルギー消費効率を向上させる。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置の定着電源装置においては、特性の相異なる2つのタイプの自己消弧素子(IGBTとFET)を用いて、高電力動作時(低周波動作)はIGBT駆動、低電力動作時(高周波動作時)にはFET駆動とする。これにより、定着電源装置の動作状況に応じて使用する自己消弧素子を選択する事で、低電力動作時(高周波動作時)のスイッチング損失を低減させ、装置のエネルギー消費効率を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電源装置、誘導加熱方式の加熱装置、及び加熱装置を用いた電子写真式が造形性装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真式の画像形成装置においては、記録材に転写されたトナー像を定着させるための定着部が備えられている。定着部としては、従来セラミックヒーターやハロゲンヒーターによる加熱方式が多く用いられていたが、近年では電磁誘導加熱方式が用いられるようになってきた。
【0003】
例えば、誘導加熱方式を用いた定着部に給電する電源装置としては、図12に示す構成がある。図12に示す電源装置100は、一般的に直列共振タイプと呼ばれている回路構成である。商用交流電源101は、ダイオードブリッジ102で整流され、フィルタコンデンサ103を介して直列共振回路に供給される。直列共振回路は、共振コンデンサ105、及び、共振コイル104と、第1、第2のスイッチ素子111、112とで構成されている。信号生成部108は、前記2つのスイッチ素子111、112を駆動する駆動信号131、132を生成している。
【0004】
入力電圧検出部113と入力電流検出部114はそれぞれ、電源装置100へ入力される商用AC電源の電圧、電流を検出し、検出結果を信号生成部108へ出力している。また、導電性発熱体106は、共振コイル104から発生させられる磁界により発熱し温度検出部107がその温度を検出し、検出結果を信号生成部108に出力している。信号生成部108は入力電圧検出部113、入力電流検出部114それぞれの検出結果及び温度検出部107の検出結果によって、信号生成部108内の駆動部(不図示)が出力する駆動信号131、132の駆動周波数を決定する。(例えば特許文献1参照)。これにより、スイッチ素子111と112は駆動信号131、132に従って交互にON/OFFし、共振コイル104に高周波電流を供給する。
【0005】
図13に駆動周波数と出力電力との関係の一例を示す。図13に示す様に、入力電圧を一定とし、共振周波数f1より周波数が高い範囲では、駆動周波数を上げると出力電力は減少し、逆に駆動周波数を下げていくと出力電力は増加する。なお、同じ駆動周波数の場合、入力電圧を2倍(N倍)にすると出力電力は約4倍(2N倍)となっている。
【0006】
この関係に基づいて、一般に信号生成部108での制御方式として、周波数制御が行われる。その制御方式は、温度検出部107で検出した温度と基準温度(目標値)を比較し、検出温度が目標値よりも低ければ、駆動信号のON時間をのばし(駆動周波数を下げて)、共振コイル104へ供給する電力を増やす。これに対し、検出温度が目標値よりも高ければ駆動信号のON時間を短くし(駆動周波数を上げて)、共振コイル104へ供給する電力を減らす制御である。
【0007】
上記制御方法は、図13で示すように駆動周波数fと電力の関係が、共振周波数f1で最大電力PW1(Vin=100Vの場合)を示す。また、共振周波数f1を中心として高周波側及び低周波側に対して電力が減少するカーブを描くために、共振周波数f1から高周波側の領域のスロープを用いて駆動周波数fを制御することによって、電力制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−4205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記加熱装置においては、電力を低くするためには周波数を高くすることになるが、周波数が高くなり過ぎるとスイッチ素子111、112のスイッチング損失が増加し、効率の低下につながってしまうと言う問題が有る。特に大電力を扱う加熱装置においてはスイッチ素子111、112にはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が用いられることが多い。IGBTはスイッチング速度が遅く、またIGBT独特のテール特性により、駆動周波数が高くなるとIGBTでの損失により効率が低下してしまう。ここでのテール特性とは、スイッチングのOFF時にゲート電荷を放電してもコレクタ電流が直ぐには遮断せず、徐々に減少する特性のことを指す。
【0010】
図14に図12の電源装置における出力電力と効率の関係を示す。図14に示すように出力電力が高い範囲は効率が高い状態を維持出来るが、出力電力が下がってくる、つまり駆動周波数が上がるにつれて効率が低下している。また、同じ出力電力でも、入力電圧が高い場合の方が、駆動周波数が高くなる為、より効率の低下が発生している事が解る。特に画像形成装置に於いては、画像形成時と、直ぐに画像形成を行える様に待機している待機時とで定着部における必要電力の差が大きく、必要電力が小さい待機時において駆動周波数が高くなり効率が低下する事で、無駄な消費電力が増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る電源装置においては、以下の構成を有する事を特徴とする。負荷コイルに電力供給する電源装置であって、前記負荷コイルへの入力電流をスイッチングするための特性が相異なる複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子を駆動する為の駆動信号を生成する制御手段とを有し、前記特性が相異なる複数のスイッチング素子は並列に接続され、前記制御手段は、前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電源装置によれば、駆動条件に応じてスイッチング素子を切り替える事で、より高周波時の制御において効率を改善する事が出来る。これにより例えば、当該電源装置を用いた画像形成層値において待機中などの非画像形成モード時の効率低下を抑制し、消費電力を低減させる事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の定着器の電源装置の一例を示す概略構成図。
【図2】第1の実施形態の電源装置の動作モードを示す図。
【図3】第1の実施形態の電源装置のスイッチ素子切替フローを示す図。
【図4】第1の実施形態の電源装置の電力制御時のスイッチ素子切替を説明する図。
【図5】第1の実施形態の電源装置の温度制御時のスイッチ素子切替を説明する図。
【図6】第1の実施形態の電源装置の特性を示す図。
【図7】第1の実施形態の電源装置の駆動周波数と電力の関係を示す図。
【図8】第2の実施形態の定着器の電源装置の一例を示す概略構成図。
【図9】第2の実施形態の電源装置の動作モードを示す図。
【図10】第2の実施形態の電源装置のスイッチ素子切替フローを示す図。
【図11】タンデム型カラー画像形成装置の概略構成図。
【図12】従来の電磁誘導加熱方式の定着器の電源装置の一例を示す概略構成図。
【図13】従来の電磁誘導加熱方式の定着器の電源装置における駆動周波数と電力の関係を示す図。
【図14】従来の電磁誘導加熱方式の定着器の電源装置における特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る加熱装置に関して、図面を用いて詳しく説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態である電源装置を適用可能な装置の一例としては、例えば図11に示すような概略構成図で示されるような電子写真式画像形成装置がある。本実施形態の装置は加熱装置を有する電子写真式画像形成装置である。図11において、電子写真式画像形成装置(以下、単に画像形成装置と呼ぶ)は、感光体1a〜1d、1次帯電部2a〜2d、電位センサ8a〜8d、露光部3a〜3d、現像部4a〜4d、1次転写部53a〜53d、クリーナー6a〜6d、中間転写ベルト51、中間転写ベルトクリーナー55、2次転写部56、57を備える。
【0016】
1次帯電部2a〜2dによって感光体が一様に帯電された後、画像信号に応じた露光が露光部3a〜3dによってなされることにより、感光体上に静電潜像が形成される。電位センサ8a〜8dは、静電潜像の電位を測定する為に、露光−現像間に設けられている。静電潜像は、その後、現像部4a〜4dによってトナー像が現像され、4個の感光体1a〜1d上のトナー像は1次転写部53a〜53dによって中間転写ベルト51に多重転写され、更に2次転写部56,57によって記録材Pに転写される。感光体1a〜1d上に残った転写残トナーはクリーナー6a〜6dによって、中間転写ベルト51に残った転写残トナーは中間転写ベルトクリーナー55によって回収される。記録材Pに転写されたトナー像は定着部7によって定着されることにより、カラー画像を得る。
【0017】
従来の画像形成装置においては、定着部として、セラミックヒーターやハロゲンヒーターによる加熱方式が多く用いられていたが、近年では電磁誘導加熱方式が用いられるようになってきた。この電磁誘導加熱では、電磁誘導加熱装置がシートに転写されたトナー画像を定着する定着器として用いられている。誘導加熱方式を用いた定着部に給電する電源装置としては、図1に示す構成がある。図1に示す電源装置100は、一般的に直列共振タイプと呼ばれている回路構成である。商用交流電源101は、ダイオードブリッジ102で整流され、フィルタコンデンサ103を介して直列共振回路に供給される。これにより、電源装置100は、電力給電を行う。
【0018】
直列共振回路は、共振コンデンサ105、共振コイル104、第1、第2のスイッチ素子(IGBT)111、112、さらにスイッチ素子(IGBT)111と並列に接続されたスイッチ素子(FET)121、そしてスイッチ素子(IGBT)112と並列に接続されたスイッチ素子(FET)122とで構成されている。さらに、制御手段として、制御部200は、信号生成部108、選択回路123、124を備える。信号生成部108は、複数のスイッチ素子111、112、121、122を駆動する駆動信号131、132を生成することにより、駆動信号生成部としての役割を担う。ここでのFETとは電界効果トランジスタを意味し、IGBTとは絶縁ゲートバイポーラトランジスタを意味する。ここで、並列に接続されるとは、対応するスイッチ素子(IGBT)とスイッチ素子(FET)において、スイッチ素子(IGBT)のコレクタとスイッチ素子(FET)のドレインとが直接接続され、かつスイッチ素子(IGBT)のエミッタとスイッチ素子(FET)のソースとが直接接続されていることを意味している。
【0019】
信号生成部108から出力された、IGBT111とFET121用の駆動信号131は選択回路123により、IGBT111とFET121のどちらに供給するかを切り替えられる。また、同様に信号生成部108から出力された、IGBT112とFET122用の駆動信号132は選択回路124により、IGBT112とFET122のどちらに供給するかを切り替えられる。さらに、選択回路123、124は信号生成部108からの選択信号125に基づき上記切り替えを行う。
【0020】
入力電圧検出部113と入力電流検出部114はそれぞれ、商用AC電源から電源装置100へ入力される電圧、電流を検出し、検出結果を信号生成部108へ出力している。なお、入力電圧検出部113と入力電流検出部114とを合わせて電力検出部として構成してもよい。また、被加熱金属部材である導電性発熱体106は、電磁気的に結合して配置された誘導加熱コイルである共振コイル104から発生させられる高周波磁界の作用によって誘導電流が発生することにより発熱する。そして、温度検出部107がその温度を検出し、検出結果を信号生成部108に出力している。信号生成部108は入力電圧検出部113、入力電流検出部114それぞれの検出結果及び温度検出部107の検出結果によって、駆動信号131、132の駆動周波数(もしくは、ON時間)を決定する。なお、本実施形態においては、加熱装置用の電源装置について説明するものであるため、誘導加熱コイルを負荷コイルとして示しているが、本発明に係る電源装置を他の装置に適用した場合は、電力供給の対象となる負荷コイルは異なる役割を担うこととなる。
【0021】
[切り替え制御]
次に、IGBT111とFET121の切り替え、IGBT112とFET122の切り替えについて説明する。まずは、電源装置100が搭載された画像形成装置の動作モードについて説明する。図2は、導電性発熱体106の温度変化と発熱体に対する制御モードの関係を示す図である。図2において画像形成装置に電源が入力された時点を原点とする。電源入力と同時に定着部においては導電性発熱体106の加熱が開始される。この時、制御モードとしては電力制御のモードが適用され、装置内で決められた所定の電力が電源装置100に入力されている。
【0022】
つまり、外部のコントローラ(不図示)より電源装置100に電力指令値が入力されると、信号生成部108は、入力電圧検出部113と入力電流検出部114のそれぞれで検出された電圧値、電流値に基づいて入力電力を算出する。そして、算出結果が電力指令値と一致するようにスイッチ素子の駆動周波数を決定することによる電力制御が行われる。
【0023】
そして、誘導電流が流れる時間の経過と共に導電性発熱体106の温度が上昇し、時間tsで温度検出部107での検出結果が目標温度Tfに達する。すると、ここから先は導電性発熱体106の温度を目標温度Tfに対して一定に維持する為の温度制御のモードに切り替わる。つまり、導電性発熱体106の温度が目標値を上回ると出力電力を低減し、また目標値を下回ると電力を増加させると言う制御を行う。これにより、結果として導電性発熱体106の温度が目標値Tfを上回ったり下回ったりしながら、導電性発熱体106の温度がほぼ目標温度に保たれる。
【0024】
次に、図3のフローチャートを用いて、制御部200によるIGBT111とFET121の切り替え、IGBT112とFET122の切り替えについて説明する。駆動素子にIGBTを使うか、FETを使うかは、スイッチ素子111、112、121、122に流れる電流を基準として決定する。FETは高速スイッチング(スイッチング速度)に関しては有利であるが、流せる電流値(最大電流)に関してはIGBTの方が大電流に対応でき有利である。そこで、上述した各制御モードにおいて、FETが使用可能な電流の領域にあるかどうかを判断し、FETが使用可能な領域に入っていればスイッチング素子をFETに切り替えると言うのが基本動作になる。なお、電流と駆動周波数との関係において電圧の増減では影響を受けにくいことから、以下で述べるフローでは、電流の代わりに電力をもって判定基準としている。つまり、図13に示すように、入力電圧がいくつであったとしても、一定であれば、電力と駆動周波数との関係を示す曲線は類似の形状を示すこととなる(例えば、最大電力PW1となる共振周波数はいずれの電圧においても同一である)。
【0025】
図3は、制御部200によるスイッチ素子切り替え動作のフローチャートである。図1において不図示である外部のコントローラ等より電源装置ON(定着器加熱)信号が入力されると図3のフローによりスイッチング素子の選定を行う。またこの選定は電源装置がONの間は常に行われている。スイッチング素子選定フローの処理が開始されると制御部200は、最初に制御モードの確認を行う(S301)。制御モードは、例えば電源スイッチから投入されてから、図2に示す予め定義された時間tsが経過したか否かによって判定できる。この場合、時間ts経過前なら電力制御モード、経過後なら温度制御モードと判定できる。ただし、環境温度により、時間tsは変化すると想定されるため、ヒータの温度を監視し、目標温度Tf以下なら電力制御モード、目標温度Tfを超えたら温度制御モードと判定してもよい。S301で温度制御のモードでない、つまり電力制御のモードの場合は、制御部200は、目標電力が基準電力Wa以上かどうか確認を行う(S302)。なお、ここでの目標電力とは、装置において誘導加熱を行うために必要とする電力、即ち、共振コイル104に供給すべき電力を指す。
【0026】
ここで電力制御モード時のスイッチ素子の切り替えについて図4を用いて説明する。図4は電力制御のモード時の入力電圧と目標電力に対し、どちらのスイッチング素子を選択するかを図示している。電力制御のモード時は目標電力が同じ場合、入力電圧を上げていくと駆動周波数を高くする必要が有り、共振条件(共振コンデンサ105と共振コイル104との共振周波数)からより離れた周波数で制御が行われる。これにより、共振コイル104を流れる電流は正弦波から三角波に近い状態となっていく。結果として、目標電力が同じならばスイッチ素子に流れるピーク電流は入力電圧を変えてもその変化量は小さいため、目標電力Winの値によってIGBT駆動とFET駆動の選択を行う。
【0027】
S302にて、電源装置100における共振コイル104に供給すべき目標電力が基準電力Wa以上である場合には、入力電力が大きい為に電源装置100がIGBT駆動となるように、制御部200はスイッチ素子を選定する(S303)。これに対し、S302で目標電力が基準電力Wa未満である場合は、入力電力が小さい為に電源装置100がFET駆動となるように、制御部200はスイッチ素子を選定する(S304)。
【0028】
ここで温度制御モード時のスイッチ素子の切り替えについて図5を用いて説明する。図5は温度制御時の入力電圧と駆動信号ON時間に対し、どちらのスイッチング素子を選択するかを図示している。一般に温度制御のモード時は、目標温度に対し検出温度が低い場合は、駆動信号のON時間を延ばし(駆動周波数を下げ)、検出温度が高い場合は、駆動信号のON時間を短くして(駆動周波数を上げ)、目標温度を維持する様に制御が行われる。
【0029】
ここで、入力電圧Vinと駆動信号のON時間について、ある電力の時の関係を考えると、入力電圧が上がるとON時間は短くなり(駆動周波数が高くなり)、入力電圧が下がるとON時間は長くなる(駆動周波数が低くなる)。そこで図5に示すように、入力電圧に応じてON時間の閾値を変化させ、温度制御している際にある入力電圧の場合に、ON時間がその入力電圧での閾値よりも長い場合はIGBT駆動を選択し、短い場合はFET駆動を選択する。言い換えると、入力電圧が大きい場合は、IGBT駆動を選択し、入力電圧が小さい場合はFET駆動を選択することとなる。
【0030】
S301で温度制御の場合は、制御部200は、入力電圧Vaの確認を行う(S305)。制御部200は、S305で確認された入力電圧VaにおけるON時間の閾値taを算出する(S306)。そして、制御部200は、温度制御中のON時間(ton)がtaよりも大きいかどうかチェックする(S307)。S307でtonがta以上の場合は、入力電力が大きい為に電源装置100がIGBT駆動となるように、制御部200はスイッチ素子を選定する(S303)。これに対し、S307でtonがta未満の場合は、入力電力が小さい為に電源装置100がFET駆動となるように、制御部200はスイッチ素子を選定する(S304)。この選定フローは電源装置ON(定着器加熱)信号が入力されている間は制御部200により繰り返し行われ(S308)、電源装置ON(定着器加熱)信号が無くなると終了となる。
【0031】
図6に図1の電源装置における出力電力と効率の関係を示す。図6の点線部は従来の特性を示す曲線である(図14にて示したものと同様である)。それに対し、実線が本発明おける電源装置の特性である。図6に示す様に、出力電力が高い範囲(例えば、出力電力が1000の場合など)においては従来通りIGBTによる駆動の為、図13と同一の性能である。しかし、電力が低くなるにつれて本発明の電源装置の方が高効率を維持する事が出来る。この様に、電源装置100において比較的電力が小さい状態で制御が行われている場合に、駆動素子をIGBTからFETに切り替える事で、IGBTのスイッチング損失、IGBT特有のテール現象による損失を削減する事ができる。よって、装置としての制御効率を向上させる事が出来る。
【0032】
特に画像形成装置に於いては、直ぐに画像形成を行える様に定着器を所定の温度にし、待機している待機時において無駄な消費電力を削減する事が可能となる。また、上記のスイッチング損失の切り替えは、温度制御のモード時における導電性発熱体106の温度リップルを低減させる効果もある。
【0033】
なお、図3の制御手順は、制御部200に内蔵するプロセッサにより、プログラムを実行して実現できる。もしくはタイマやサーミスタ、ADコンバータ、コンパレータ等のモジュールを組み合わせてハードウェアで実現することも可能である。
【0034】
[温度リップル低減について]
温度リップル低減に関し、図7を用いて説明する。図7に電源装置100の駆動周波数と出力電力との関係を示す。実際には装置内において、図7にて示した全範囲を対象としているわけではなく、駆動周波数、出力電力はある制限された範囲を使用している。つまり、図7に示す斜線部が図1に示した電源装置100の場合の使用範囲である。この範囲は、電源装置の回路として許容出来る最大電力P−maxと、駆動周波数が可聴領域に入らないように最小周波数f−min、さらに駆動素子や駆動回路の条件により決定する最大周波数f−maxにより決定している。この範囲において、入力電圧を一定として駆動周波数を上げて行くと出力電力は下がり、逆に駆動周波数を下げていくと出力電力が増加する。
【0035】
そして、同入力電圧においては、最小周波数(f−min)時の方が最大周波数(f−max)時よりもIGBTに流れる電流が大きくなる。図7において周波数fbが従来IGBTのみで駆動していた際の最大駆動周波数である(IGBTはスイッチング速度が遅く駆動周波数が上げられない)。ここで、最大周波数がfbで制限されると、最大入力Vin−max時の最小制御可能電力はPbとなり、これより低い電力は制御出来なくなってしまう。つまりPbよりも電力が低いエリアはON/OFF制御となり、導電性発熱体106の温度リップルが大となってしまう。
【0036】
これに対し、本発明の電源装置の場合は、使用可能最大周波数がf−maxまで広がたった事により、最大入力Vin−max時の最小制御可能電力はPcとなる。これにより、従来と比較して最小制御可能電力が下がった事で、より温度リップルが小である温度制御が行う事が可能になっている。
【0037】
以上、なるべくFETを使用する目標電力範囲、駆動信号のON時間の範囲を広くし、より損失を低減させる制御について説明した。更に、全AC電圧範囲でFETが使用可能な最小ON時間を閾値として、常にON時間(ton)だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。同様に、全入力範囲でFETが使用可能な最小駆動周波数を閾値として、常に駆動周波数だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。また、全入力範囲でFETが使用可能な入力電力を閾値として、常に入力電力だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。これにより、従来と比較して損失を低減する事が可能である。
【0038】
なお、上記は2つのスイッチング素子としてIGBTとFETで説明したが、テール特性の良いIGBTとON電圧の低いIGBT等、特性の相異なる2つのIGBTの場合や、その他、様々な自己消弧素子においても同様の効果を得る事ができる。
【0039】
また、本発明に係る電源装置を用いた実施形態として、加熱装置、更には加熱装置を備える画像形成装置を示したが、これに限定されるわけではなく、当該電源装置を適用可能な制御を有する装置に適用できることは、言うまでも無い。
【0040】
<第2の実施形態>
本発明に係る画像形成装置の第2の実施形態について図面を参照して説明する。ここで述べる図8〜10に於いては、前述の従来例の図12〜14、及び第1の実施形態の図1〜7と同一ないし相当する部材には同一符号を付し、その説明は省略するものとする。図8は本発明の画像形成装置における定着部に給電する電源装置の概略構成図である。図8は並列共振タイプと呼ばれている回路構成であり、ここでは、温度制御時のみスイッチング素子の切り替えを行う場合の実施形態について説明する。
【0041】
商用交流電源101は、ダイオードブリッジ102で整流され、フィルタコンデンサ103を介して並列共振回路に供給される。並列共振回路は、共振コンデンサ105、及び、共振コイル104と、スイッチ素子(IGBT)813、さらにスイッチ素子(IGBT)813と並列に接続されたスイッチ素子(FET)823とで構成されている。また、制御部200は、信号生成部808、選択回路824を備える。信号生成部808は、前記2つのスイッチ素子を駆動する駆動信号831を生成している。信号生成部808から出力された、IGBT813とFET823用の駆動信号831は選択回路824により、IGBT813とFET823のどちらに供給するかを切り替えられる。さらに、選択回路824は信号生成部808からの選択信号825に基づき切り替えを行う。
【0042】
入力電圧検出部113と入力電流検出部114はそれぞれ、電源装置100へ入力される商用AC電源の電圧、電流を検出し、検出結果を信号生成部808へ出力している。また、導電性発熱体106は、共振コイル104から発生させられる磁界により発熱し、温度検出部107がその温度を検出し、検出結果を信号生成部808に出力している。信号生成部808は入力電圧検出部113、入力電流検出部114それぞれの検出結果及び温度検出部107の検出結果によって、駆動信号831の駆動周波数(ON時間)を決定する。
【0043】
次に、IGBT813とFET823の切り替えについて説明する。まずは、電源装置100が搭載された画像形成装置の動作モードについて説明する。図9は、導電性発熱体106の温度変化と制御モードの関係を示す図である。図9中の原点において画像形成装置に電源が入力されたとし、同時に定着部においては導電性発熱体106の加熱が開始される。この時、装置としてはなるべく早く定着部の温度を上昇させる為に、定着器の温度検出部107での検出結果が目標温度Tfに達するまでは、装置として許容される最大電力を印加する。つまり、この期間は制御モードとしては最大電力設定モードとなる。そして、導電性発熱体106の温度が上昇し、時間tsで目標温度Tfに達する。すると、ここから先は導電性発熱体106の温度を目標温度Tfに対して一定に維持する為の温度制御に切り替わる。つまり、導電性発熱体106の温度が目標値を上回ると出力電力を絞り、また目標値を下回ると電力を増加させると言う制御を行う。これにより、結果として導電性発熱体106の温度が目標値Tfを上回ったり下回ったりしながら、ほぼ目標温度に保たれる。
【0044】
次に、図10のフローチャートを用いて、制御部200によるIGBT813とFET823の切り替えについて説明する。駆動素子にIGBTを使うか、FETを使うのかは、スイッチ素子813、823に流れる電流が基準として決定する。FETは高速スイッチングに関しては有利であるが、流せる電流値に関してはIGBTの方が大電流に対応でき有利である。そこで、各制御モードにおいて、流れる電流に対し、FETが使用可能な電流の領域にあるかどうかを判断し、FETが使用可能な電流の領域にあればスイッチング素子をFETに切り替えると言うのが基本動作になる。
【0045】
図10は制御部200によるスイッチ素子切り替え動作のフローチャートである。図8において不図示である外部のコントローラ等より電源装置ON(定着器加熱)信号が入力されると図10のフローにより、制御部200はスイッチング素子の選定を行う。またこの選定は電源装置がONの間は常に行われている。スイッチング素子選定フローが開始されると、制御部200は最初に制御モードの確認を行う(S1001)。S1001で温度制御でない、つまり最大電力設定モードの場合は、電源装置100がIGBT駆動となるように、制御部200はスイッチング素子を選定する(S1002)。
【0046】
S1001で温度制御の場合は、制御部200により図5と同様な制御が行われる。まず、制御部200は入力電圧Vaの確認を行う(S1004)。制御部200は、S1004で確認された入力電圧VaにおけるON時間の閾値taを算出する(S1005)。そして、制御部200は、温調制御中のON時間(ton)がtaよりも大きいかどうかチェックする(S1006)。S1006でtonがta以上の場合は、入力電力が大きい為に電源装置100がIGBT駆動となるように。制御部200はスイッチング素子を選定する(S1002)。そして、S1006でtonがta未満の場合は、入力電力が小さい為に電源装置100がFET駆動となるように、制御部200はスイッチング素子を選定する(S1003)。この選定フローは電源装置ON(定着器加熱)信号が入力されている間は、制御部200により繰り返し行われ(S1007)、電源装置ON(定着器加熱)信号が無くなると終了となる。
【0047】
この様に、最大電力設定モード中は設定電力が大きくスイッチ素子としてIGBT813を使う事が前提となっている場合は、温度制御のモード中のみIGBT813とFET823の切り替えを行う。このことから、IGBTのスイッチング損失やIGBT特有のテール現象による損失を削減する事ができることにより、装置としての制御効率を向上させる事が出来る。
【0048】
特に画像形成装置に於いては、直ぐに画像形成を行える様に定着器を所定の温度にし、待機している待機時において無駄な消費電力を削減する事が可能となる。また、上記のスイッチング損失の切り替えは、温度制御のモード時における導電性発熱体106の温度リップルを低減させる効果もある。
【0049】
以上、温調制御時にON時間(ton)を元にIGBT813とFET823の切り替えを行い、なるべくFETを使用する駆動信号のON時間範囲を広くして、より損失を低減させる制御について説明した。更には例えば、全入力範囲でFETが使用可能な最小ON時間を閾値として、常にON時間(ton)だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。同様に、全入力範囲でFETが使用可能な最小駆動周波数を閾値として、常に駆動周波数だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。また、全入力範囲でFETが使用可能な入力電力を閾値として、常に入力電力だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。これにより、従来と比較して損失を低減する事が可能である。なお、上記は2つのスイッチング素子としてIGBTとFETで説明したが、テール特性の良いIGBTとON電圧の低いIGBT等、特性の相異なる2つのIGBTの場合や、その他、様々な自己消弧素子においても同様の効果を得る事ができる。
【技術分野】
【0001】
電源装置、誘導加熱方式の加熱装置、及び加熱装置を用いた電子写真式が造形性装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真式の画像形成装置においては、記録材に転写されたトナー像を定着させるための定着部が備えられている。定着部としては、従来セラミックヒーターやハロゲンヒーターによる加熱方式が多く用いられていたが、近年では電磁誘導加熱方式が用いられるようになってきた。
【0003】
例えば、誘導加熱方式を用いた定着部に給電する電源装置としては、図12に示す構成がある。図12に示す電源装置100は、一般的に直列共振タイプと呼ばれている回路構成である。商用交流電源101は、ダイオードブリッジ102で整流され、フィルタコンデンサ103を介して直列共振回路に供給される。直列共振回路は、共振コンデンサ105、及び、共振コイル104と、第1、第2のスイッチ素子111、112とで構成されている。信号生成部108は、前記2つのスイッチ素子111、112を駆動する駆動信号131、132を生成している。
【0004】
入力電圧検出部113と入力電流検出部114はそれぞれ、電源装置100へ入力される商用AC電源の電圧、電流を検出し、検出結果を信号生成部108へ出力している。また、導電性発熱体106は、共振コイル104から発生させられる磁界により発熱し温度検出部107がその温度を検出し、検出結果を信号生成部108に出力している。信号生成部108は入力電圧検出部113、入力電流検出部114それぞれの検出結果及び温度検出部107の検出結果によって、信号生成部108内の駆動部(不図示)が出力する駆動信号131、132の駆動周波数を決定する。(例えば特許文献1参照)。これにより、スイッチ素子111と112は駆動信号131、132に従って交互にON/OFFし、共振コイル104に高周波電流を供給する。
【0005】
図13に駆動周波数と出力電力との関係の一例を示す。図13に示す様に、入力電圧を一定とし、共振周波数f1より周波数が高い範囲では、駆動周波数を上げると出力電力は減少し、逆に駆動周波数を下げていくと出力電力は増加する。なお、同じ駆動周波数の場合、入力電圧を2倍(N倍)にすると出力電力は約4倍(2N倍)となっている。
【0006】
この関係に基づいて、一般に信号生成部108での制御方式として、周波数制御が行われる。その制御方式は、温度検出部107で検出した温度と基準温度(目標値)を比較し、検出温度が目標値よりも低ければ、駆動信号のON時間をのばし(駆動周波数を下げて)、共振コイル104へ供給する電力を増やす。これに対し、検出温度が目標値よりも高ければ駆動信号のON時間を短くし(駆動周波数を上げて)、共振コイル104へ供給する電力を減らす制御である。
【0007】
上記制御方法は、図13で示すように駆動周波数fと電力の関係が、共振周波数f1で最大電力PW1(Vin=100Vの場合)を示す。また、共振周波数f1を中心として高周波側及び低周波側に対して電力が減少するカーブを描くために、共振周波数f1から高周波側の領域のスロープを用いて駆動周波数fを制御することによって、電力制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−4205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記加熱装置においては、電力を低くするためには周波数を高くすることになるが、周波数が高くなり過ぎるとスイッチ素子111、112のスイッチング損失が増加し、効率の低下につながってしまうと言う問題が有る。特に大電力を扱う加熱装置においてはスイッチ素子111、112にはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が用いられることが多い。IGBTはスイッチング速度が遅く、またIGBT独特のテール特性により、駆動周波数が高くなるとIGBTでの損失により効率が低下してしまう。ここでのテール特性とは、スイッチングのOFF時にゲート電荷を放電してもコレクタ電流が直ぐには遮断せず、徐々に減少する特性のことを指す。
【0010】
図14に図12の電源装置における出力電力と効率の関係を示す。図14に示すように出力電力が高い範囲は効率が高い状態を維持出来るが、出力電力が下がってくる、つまり駆動周波数が上がるにつれて効率が低下している。また、同じ出力電力でも、入力電圧が高い場合の方が、駆動周波数が高くなる為、より効率の低下が発生している事が解る。特に画像形成装置に於いては、画像形成時と、直ぐに画像形成を行える様に待機している待機時とで定着部における必要電力の差が大きく、必要電力が小さい待機時において駆動周波数が高くなり効率が低下する事で、無駄な消費電力が増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る電源装置においては、以下の構成を有する事を特徴とする。負荷コイルに電力供給する電源装置であって、前記負荷コイルへの入力電流をスイッチングするための特性が相異なる複数のスイッチング素子と、前記スイッチング素子を駆動する為の駆動信号を生成する制御手段とを有し、前記特性が相異なる複数のスイッチング素子は並列に接続され、前記制御手段は、前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電源装置によれば、駆動条件に応じてスイッチング素子を切り替える事で、より高周波時の制御において効率を改善する事が出来る。これにより例えば、当該電源装置を用いた画像形成層値において待機中などの非画像形成モード時の効率低下を抑制し、消費電力を低減させる事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態の定着器の電源装置の一例を示す概略構成図。
【図2】第1の実施形態の電源装置の動作モードを示す図。
【図3】第1の実施形態の電源装置のスイッチ素子切替フローを示す図。
【図4】第1の実施形態の電源装置の電力制御時のスイッチ素子切替を説明する図。
【図5】第1の実施形態の電源装置の温度制御時のスイッチ素子切替を説明する図。
【図6】第1の実施形態の電源装置の特性を示す図。
【図7】第1の実施形態の電源装置の駆動周波数と電力の関係を示す図。
【図8】第2の実施形態の定着器の電源装置の一例を示す概略構成図。
【図9】第2の実施形態の電源装置の動作モードを示す図。
【図10】第2の実施形態の電源装置のスイッチ素子切替フローを示す図。
【図11】タンデム型カラー画像形成装置の概略構成図。
【図12】従来の電磁誘導加熱方式の定着器の電源装置の一例を示す概略構成図。
【図13】従来の電磁誘導加熱方式の定着器の電源装置における駆動周波数と電力の関係を示す図。
【図14】従来の電磁誘導加熱方式の定着器の電源装置における特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る加熱装置に関して、図面を用いて詳しく説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態である電源装置を適用可能な装置の一例としては、例えば図11に示すような概略構成図で示されるような電子写真式画像形成装置がある。本実施形態の装置は加熱装置を有する電子写真式画像形成装置である。図11において、電子写真式画像形成装置(以下、単に画像形成装置と呼ぶ)は、感光体1a〜1d、1次帯電部2a〜2d、電位センサ8a〜8d、露光部3a〜3d、現像部4a〜4d、1次転写部53a〜53d、クリーナー6a〜6d、中間転写ベルト51、中間転写ベルトクリーナー55、2次転写部56、57を備える。
【0016】
1次帯電部2a〜2dによって感光体が一様に帯電された後、画像信号に応じた露光が露光部3a〜3dによってなされることにより、感光体上に静電潜像が形成される。電位センサ8a〜8dは、静電潜像の電位を測定する為に、露光−現像間に設けられている。静電潜像は、その後、現像部4a〜4dによってトナー像が現像され、4個の感光体1a〜1d上のトナー像は1次転写部53a〜53dによって中間転写ベルト51に多重転写され、更に2次転写部56,57によって記録材Pに転写される。感光体1a〜1d上に残った転写残トナーはクリーナー6a〜6dによって、中間転写ベルト51に残った転写残トナーは中間転写ベルトクリーナー55によって回収される。記録材Pに転写されたトナー像は定着部7によって定着されることにより、カラー画像を得る。
【0017】
従来の画像形成装置においては、定着部として、セラミックヒーターやハロゲンヒーターによる加熱方式が多く用いられていたが、近年では電磁誘導加熱方式が用いられるようになってきた。この電磁誘導加熱では、電磁誘導加熱装置がシートに転写されたトナー画像を定着する定着器として用いられている。誘導加熱方式を用いた定着部に給電する電源装置としては、図1に示す構成がある。図1に示す電源装置100は、一般的に直列共振タイプと呼ばれている回路構成である。商用交流電源101は、ダイオードブリッジ102で整流され、フィルタコンデンサ103を介して直列共振回路に供給される。これにより、電源装置100は、電力給電を行う。
【0018】
直列共振回路は、共振コンデンサ105、共振コイル104、第1、第2のスイッチ素子(IGBT)111、112、さらにスイッチ素子(IGBT)111と並列に接続されたスイッチ素子(FET)121、そしてスイッチ素子(IGBT)112と並列に接続されたスイッチ素子(FET)122とで構成されている。さらに、制御手段として、制御部200は、信号生成部108、選択回路123、124を備える。信号生成部108は、複数のスイッチ素子111、112、121、122を駆動する駆動信号131、132を生成することにより、駆動信号生成部としての役割を担う。ここでのFETとは電界効果トランジスタを意味し、IGBTとは絶縁ゲートバイポーラトランジスタを意味する。ここで、並列に接続されるとは、対応するスイッチ素子(IGBT)とスイッチ素子(FET)において、スイッチ素子(IGBT)のコレクタとスイッチ素子(FET)のドレインとが直接接続され、かつスイッチ素子(IGBT)のエミッタとスイッチ素子(FET)のソースとが直接接続されていることを意味している。
【0019】
信号生成部108から出力された、IGBT111とFET121用の駆動信号131は選択回路123により、IGBT111とFET121のどちらに供給するかを切り替えられる。また、同様に信号生成部108から出力された、IGBT112とFET122用の駆動信号132は選択回路124により、IGBT112とFET122のどちらに供給するかを切り替えられる。さらに、選択回路123、124は信号生成部108からの選択信号125に基づき上記切り替えを行う。
【0020】
入力電圧検出部113と入力電流検出部114はそれぞれ、商用AC電源から電源装置100へ入力される電圧、電流を検出し、検出結果を信号生成部108へ出力している。なお、入力電圧検出部113と入力電流検出部114とを合わせて電力検出部として構成してもよい。また、被加熱金属部材である導電性発熱体106は、電磁気的に結合して配置された誘導加熱コイルである共振コイル104から発生させられる高周波磁界の作用によって誘導電流が発生することにより発熱する。そして、温度検出部107がその温度を検出し、検出結果を信号生成部108に出力している。信号生成部108は入力電圧検出部113、入力電流検出部114それぞれの検出結果及び温度検出部107の検出結果によって、駆動信号131、132の駆動周波数(もしくは、ON時間)を決定する。なお、本実施形態においては、加熱装置用の電源装置について説明するものであるため、誘導加熱コイルを負荷コイルとして示しているが、本発明に係る電源装置を他の装置に適用した場合は、電力供給の対象となる負荷コイルは異なる役割を担うこととなる。
【0021】
[切り替え制御]
次に、IGBT111とFET121の切り替え、IGBT112とFET122の切り替えについて説明する。まずは、電源装置100が搭載された画像形成装置の動作モードについて説明する。図2は、導電性発熱体106の温度変化と発熱体に対する制御モードの関係を示す図である。図2において画像形成装置に電源が入力された時点を原点とする。電源入力と同時に定着部においては導電性発熱体106の加熱が開始される。この時、制御モードとしては電力制御のモードが適用され、装置内で決められた所定の電力が電源装置100に入力されている。
【0022】
つまり、外部のコントローラ(不図示)より電源装置100に電力指令値が入力されると、信号生成部108は、入力電圧検出部113と入力電流検出部114のそれぞれで検出された電圧値、電流値に基づいて入力電力を算出する。そして、算出結果が電力指令値と一致するようにスイッチ素子の駆動周波数を決定することによる電力制御が行われる。
【0023】
そして、誘導電流が流れる時間の経過と共に導電性発熱体106の温度が上昇し、時間tsで温度検出部107での検出結果が目標温度Tfに達する。すると、ここから先は導電性発熱体106の温度を目標温度Tfに対して一定に維持する為の温度制御のモードに切り替わる。つまり、導電性発熱体106の温度が目標値を上回ると出力電力を低減し、また目標値を下回ると電力を増加させると言う制御を行う。これにより、結果として導電性発熱体106の温度が目標値Tfを上回ったり下回ったりしながら、導電性発熱体106の温度がほぼ目標温度に保たれる。
【0024】
次に、図3のフローチャートを用いて、制御部200によるIGBT111とFET121の切り替え、IGBT112とFET122の切り替えについて説明する。駆動素子にIGBTを使うか、FETを使うかは、スイッチ素子111、112、121、122に流れる電流を基準として決定する。FETは高速スイッチング(スイッチング速度)に関しては有利であるが、流せる電流値(最大電流)に関してはIGBTの方が大電流に対応でき有利である。そこで、上述した各制御モードにおいて、FETが使用可能な電流の領域にあるかどうかを判断し、FETが使用可能な領域に入っていればスイッチング素子をFETに切り替えると言うのが基本動作になる。なお、電流と駆動周波数との関係において電圧の増減では影響を受けにくいことから、以下で述べるフローでは、電流の代わりに電力をもって判定基準としている。つまり、図13に示すように、入力電圧がいくつであったとしても、一定であれば、電力と駆動周波数との関係を示す曲線は類似の形状を示すこととなる(例えば、最大電力PW1となる共振周波数はいずれの電圧においても同一である)。
【0025】
図3は、制御部200によるスイッチ素子切り替え動作のフローチャートである。図1において不図示である外部のコントローラ等より電源装置ON(定着器加熱)信号が入力されると図3のフローによりスイッチング素子の選定を行う。またこの選定は電源装置がONの間は常に行われている。スイッチング素子選定フローの処理が開始されると制御部200は、最初に制御モードの確認を行う(S301)。制御モードは、例えば電源スイッチから投入されてから、図2に示す予め定義された時間tsが経過したか否かによって判定できる。この場合、時間ts経過前なら電力制御モード、経過後なら温度制御モードと判定できる。ただし、環境温度により、時間tsは変化すると想定されるため、ヒータの温度を監視し、目標温度Tf以下なら電力制御モード、目標温度Tfを超えたら温度制御モードと判定してもよい。S301で温度制御のモードでない、つまり電力制御のモードの場合は、制御部200は、目標電力が基準電力Wa以上かどうか確認を行う(S302)。なお、ここでの目標電力とは、装置において誘導加熱を行うために必要とする電力、即ち、共振コイル104に供給すべき電力を指す。
【0026】
ここで電力制御モード時のスイッチ素子の切り替えについて図4を用いて説明する。図4は電力制御のモード時の入力電圧と目標電力に対し、どちらのスイッチング素子を選択するかを図示している。電力制御のモード時は目標電力が同じ場合、入力電圧を上げていくと駆動周波数を高くする必要が有り、共振条件(共振コンデンサ105と共振コイル104との共振周波数)からより離れた周波数で制御が行われる。これにより、共振コイル104を流れる電流は正弦波から三角波に近い状態となっていく。結果として、目標電力が同じならばスイッチ素子に流れるピーク電流は入力電圧を変えてもその変化量は小さいため、目標電力Winの値によってIGBT駆動とFET駆動の選択を行う。
【0027】
S302にて、電源装置100における共振コイル104に供給すべき目標電力が基準電力Wa以上である場合には、入力電力が大きい為に電源装置100がIGBT駆動となるように、制御部200はスイッチ素子を選定する(S303)。これに対し、S302で目標電力が基準電力Wa未満である場合は、入力電力が小さい為に電源装置100がFET駆動となるように、制御部200はスイッチ素子を選定する(S304)。
【0028】
ここで温度制御モード時のスイッチ素子の切り替えについて図5を用いて説明する。図5は温度制御時の入力電圧と駆動信号ON時間に対し、どちらのスイッチング素子を選択するかを図示している。一般に温度制御のモード時は、目標温度に対し検出温度が低い場合は、駆動信号のON時間を延ばし(駆動周波数を下げ)、検出温度が高い場合は、駆動信号のON時間を短くして(駆動周波数を上げ)、目標温度を維持する様に制御が行われる。
【0029】
ここで、入力電圧Vinと駆動信号のON時間について、ある電力の時の関係を考えると、入力電圧が上がるとON時間は短くなり(駆動周波数が高くなり)、入力電圧が下がるとON時間は長くなる(駆動周波数が低くなる)。そこで図5に示すように、入力電圧に応じてON時間の閾値を変化させ、温度制御している際にある入力電圧の場合に、ON時間がその入力電圧での閾値よりも長い場合はIGBT駆動を選択し、短い場合はFET駆動を選択する。言い換えると、入力電圧が大きい場合は、IGBT駆動を選択し、入力電圧が小さい場合はFET駆動を選択することとなる。
【0030】
S301で温度制御の場合は、制御部200は、入力電圧Vaの確認を行う(S305)。制御部200は、S305で確認された入力電圧VaにおけるON時間の閾値taを算出する(S306)。そして、制御部200は、温度制御中のON時間(ton)がtaよりも大きいかどうかチェックする(S307)。S307でtonがta以上の場合は、入力電力が大きい為に電源装置100がIGBT駆動となるように、制御部200はスイッチ素子を選定する(S303)。これに対し、S307でtonがta未満の場合は、入力電力が小さい為に電源装置100がFET駆動となるように、制御部200はスイッチ素子を選定する(S304)。この選定フローは電源装置ON(定着器加熱)信号が入力されている間は制御部200により繰り返し行われ(S308)、電源装置ON(定着器加熱)信号が無くなると終了となる。
【0031】
図6に図1の電源装置における出力電力と効率の関係を示す。図6の点線部は従来の特性を示す曲線である(図14にて示したものと同様である)。それに対し、実線が本発明おける電源装置の特性である。図6に示す様に、出力電力が高い範囲(例えば、出力電力が1000の場合など)においては従来通りIGBTによる駆動の為、図13と同一の性能である。しかし、電力が低くなるにつれて本発明の電源装置の方が高効率を維持する事が出来る。この様に、電源装置100において比較的電力が小さい状態で制御が行われている場合に、駆動素子をIGBTからFETに切り替える事で、IGBTのスイッチング損失、IGBT特有のテール現象による損失を削減する事ができる。よって、装置としての制御効率を向上させる事が出来る。
【0032】
特に画像形成装置に於いては、直ぐに画像形成を行える様に定着器を所定の温度にし、待機している待機時において無駄な消費電力を削減する事が可能となる。また、上記のスイッチング損失の切り替えは、温度制御のモード時における導電性発熱体106の温度リップルを低減させる効果もある。
【0033】
なお、図3の制御手順は、制御部200に内蔵するプロセッサにより、プログラムを実行して実現できる。もしくはタイマやサーミスタ、ADコンバータ、コンパレータ等のモジュールを組み合わせてハードウェアで実現することも可能である。
【0034】
[温度リップル低減について]
温度リップル低減に関し、図7を用いて説明する。図7に電源装置100の駆動周波数と出力電力との関係を示す。実際には装置内において、図7にて示した全範囲を対象としているわけではなく、駆動周波数、出力電力はある制限された範囲を使用している。つまり、図7に示す斜線部が図1に示した電源装置100の場合の使用範囲である。この範囲は、電源装置の回路として許容出来る最大電力P−maxと、駆動周波数が可聴領域に入らないように最小周波数f−min、さらに駆動素子や駆動回路の条件により決定する最大周波数f−maxにより決定している。この範囲において、入力電圧を一定として駆動周波数を上げて行くと出力電力は下がり、逆に駆動周波数を下げていくと出力電力が増加する。
【0035】
そして、同入力電圧においては、最小周波数(f−min)時の方が最大周波数(f−max)時よりもIGBTに流れる電流が大きくなる。図7において周波数fbが従来IGBTのみで駆動していた際の最大駆動周波数である(IGBTはスイッチング速度が遅く駆動周波数が上げられない)。ここで、最大周波数がfbで制限されると、最大入力Vin−max時の最小制御可能電力はPbとなり、これより低い電力は制御出来なくなってしまう。つまりPbよりも電力が低いエリアはON/OFF制御となり、導電性発熱体106の温度リップルが大となってしまう。
【0036】
これに対し、本発明の電源装置の場合は、使用可能最大周波数がf−maxまで広がたった事により、最大入力Vin−max時の最小制御可能電力はPcとなる。これにより、従来と比較して最小制御可能電力が下がった事で、より温度リップルが小である温度制御が行う事が可能になっている。
【0037】
以上、なるべくFETを使用する目標電力範囲、駆動信号のON時間の範囲を広くし、より損失を低減させる制御について説明した。更に、全AC電圧範囲でFETが使用可能な最小ON時間を閾値として、常にON時間(ton)だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。同様に、全入力範囲でFETが使用可能な最小駆動周波数を閾値として、常に駆動周波数だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。また、全入力範囲でFETが使用可能な入力電力を閾値として、常に入力電力だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。これにより、従来と比較して損失を低減する事が可能である。
【0038】
なお、上記は2つのスイッチング素子としてIGBTとFETで説明したが、テール特性の良いIGBTとON電圧の低いIGBT等、特性の相異なる2つのIGBTの場合や、その他、様々な自己消弧素子においても同様の効果を得る事ができる。
【0039】
また、本発明に係る電源装置を用いた実施形態として、加熱装置、更には加熱装置を備える画像形成装置を示したが、これに限定されるわけではなく、当該電源装置を適用可能な制御を有する装置に適用できることは、言うまでも無い。
【0040】
<第2の実施形態>
本発明に係る画像形成装置の第2の実施形態について図面を参照して説明する。ここで述べる図8〜10に於いては、前述の従来例の図12〜14、及び第1の実施形態の図1〜7と同一ないし相当する部材には同一符号を付し、その説明は省略するものとする。図8は本発明の画像形成装置における定着部に給電する電源装置の概略構成図である。図8は並列共振タイプと呼ばれている回路構成であり、ここでは、温度制御時のみスイッチング素子の切り替えを行う場合の実施形態について説明する。
【0041】
商用交流電源101は、ダイオードブリッジ102で整流され、フィルタコンデンサ103を介して並列共振回路に供給される。並列共振回路は、共振コンデンサ105、及び、共振コイル104と、スイッチ素子(IGBT)813、さらにスイッチ素子(IGBT)813と並列に接続されたスイッチ素子(FET)823とで構成されている。また、制御部200は、信号生成部808、選択回路824を備える。信号生成部808は、前記2つのスイッチ素子を駆動する駆動信号831を生成している。信号生成部808から出力された、IGBT813とFET823用の駆動信号831は選択回路824により、IGBT813とFET823のどちらに供給するかを切り替えられる。さらに、選択回路824は信号生成部808からの選択信号825に基づき切り替えを行う。
【0042】
入力電圧検出部113と入力電流検出部114はそれぞれ、電源装置100へ入力される商用AC電源の電圧、電流を検出し、検出結果を信号生成部808へ出力している。また、導電性発熱体106は、共振コイル104から発生させられる磁界により発熱し、温度検出部107がその温度を検出し、検出結果を信号生成部808に出力している。信号生成部808は入力電圧検出部113、入力電流検出部114それぞれの検出結果及び温度検出部107の検出結果によって、駆動信号831の駆動周波数(ON時間)を決定する。
【0043】
次に、IGBT813とFET823の切り替えについて説明する。まずは、電源装置100が搭載された画像形成装置の動作モードについて説明する。図9は、導電性発熱体106の温度変化と制御モードの関係を示す図である。図9中の原点において画像形成装置に電源が入力されたとし、同時に定着部においては導電性発熱体106の加熱が開始される。この時、装置としてはなるべく早く定着部の温度を上昇させる為に、定着器の温度検出部107での検出結果が目標温度Tfに達するまでは、装置として許容される最大電力を印加する。つまり、この期間は制御モードとしては最大電力設定モードとなる。そして、導電性発熱体106の温度が上昇し、時間tsで目標温度Tfに達する。すると、ここから先は導電性発熱体106の温度を目標温度Tfに対して一定に維持する為の温度制御に切り替わる。つまり、導電性発熱体106の温度が目標値を上回ると出力電力を絞り、また目標値を下回ると電力を増加させると言う制御を行う。これにより、結果として導電性発熱体106の温度が目標値Tfを上回ったり下回ったりしながら、ほぼ目標温度に保たれる。
【0044】
次に、図10のフローチャートを用いて、制御部200によるIGBT813とFET823の切り替えについて説明する。駆動素子にIGBTを使うか、FETを使うのかは、スイッチ素子813、823に流れる電流が基準として決定する。FETは高速スイッチングに関しては有利であるが、流せる電流値に関してはIGBTの方が大電流に対応でき有利である。そこで、各制御モードにおいて、流れる電流に対し、FETが使用可能な電流の領域にあるかどうかを判断し、FETが使用可能な電流の領域にあればスイッチング素子をFETに切り替えると言うのが基本動作になる。
【0045】
図10は制御部200によるスイッチ素子切り替え動作のフローチャートである。図8において不図示である外部のコントローラ等より電源装置ON(定着器加熱)信号が入力されると図10のフローにより、制御部200はスイッチング素子の選定を行う。またこの選定は電源装置がONの間は常に行われている。スイッチング素子選定フローが開始されると、制御部200は最初に制御モードの確認を行う(S1001)。S1001で温度制御でない、つまり最大電力設定モードの場合は、電源装置100がIGBT駆動となるように、制御部200はスイッチング素子を選定する(S1002)。
【0046】
S1001で温度制御の場合は、制御部200により図5と同様な制御が行われる。まず、制御部200は入力電圧Vaの確認を行う(S1004)。制御部200は、S1004で確認された入力電圧VaにおけるON時間の閾値taを算出する(S1005)。そして、制御部200は、温調制御中のON時間(ton)がtaよりも大きいかどうかチェックする(S1006)。S1006でtonがta以上の場合は、入力電力が大きい為に電源装置100がIGBT駆動となるように。制御部200はスイッチング素子を選定する(S1002)。そして、S1006でtonがta未満の場合は、入力電力が小さい為に電源装置100がFET駆動となるように、制御部200はスイッチング素子を選定する(S1003)。この選定フローは電源装置ON(定着器加熱)信号が入力されている間は、制御部200により繰り返し行われ(S1007)、電源装置ON(定着器加熱)信号が無くなると終了となる。
【0047】
この様に、最大電力設定モード中は設定電力が大きくスイッチ素子としてIGBT813を使う事が前提となっている場合は、温度制御のモード中のみIGBT813とFET823の切り替えを行う。このことから、IGBTのスイッチング損失やIGBT特有のテール現象による損失を削減する事ができることにより、装置としての制御効率を向上させる事が出来る。
【0048】
特に画像形成装置に於いては、直ぐに画像形成を行える様に定着器を所定の温度にし、待機している待機時において無駄な消費電力を削減する事が可能となる。また、上記のスイッチング損失の切り替えは、温度制御のモード時における導電性発熱体106の温度リップルを低減させる効果もある。
【0049】
以上、温調制御時にON時間(ton)を元にIGBT813とFET823の切り替えを行い、なるべくFETを使用する駆動信号のON時間範囲を広くして、より損失を低減させる制御について説明した。更には例えば、全入力範囲でFETが使用可能な最小ON時間を閾値として、常にON時間(ton)だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。同様に、全入力範囲でFETが使用可能な最小駆動周波数を閾値として、常に駆動周波数だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。また、全入力範囲でFETが使用可能な入力電力を閾値として、常に入力電力だけで判断してIGBT駆動とFET駆動とを切り替えてもよい。これにより、従来と比較して損失を低減する事が可能である。なお、上記は2つのスイッチング素子としてIGBTとFETで説明したが、テール特性の良いIGBTとON電圧の低いIGBT等、特性の相異なる2つのIGBTの場合や、その他、様々な自己消弧素子においても同様の効果を得る事ができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷コイルに電力供給する電源装置であって、
前記負荷コイルへの入力電流をスイッチングするための特性が相異なる複数のスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を駆動する為の駆動信号を生成する制御手段と
を有し、
前記特性が相異なる複数のスイッチング素子は並列に接続され、
前記制御手段は、前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給する
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記複数のスイッチング素子は、それぞれのスイッチング素子が有するスイッチング速度と最大電流に係る特性とが相異なることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部を有し、生成された前記駆動信号におけるON時間を基準として前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し前記駆動信号を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部を有し、生成された前記駆動信号における駆動周波数を基準として前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項5】
当該電源装置へ入力されている電力を検出する電力検出手段を更に有し、
前記制御手段は、前記検出した入力電力に応じて前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
当該電源装置へ入力されている電力を検出する電力検出手段を更に有し、
前記制御手段は、前記負荷コイルに印加するための目標電力に応じて前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記特性が相異なる複数のスイッチング素子の1つは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタから構成され、他の1つは、電界効果トランジスタから構成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項8】
誘導加熱装置であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電源装置と、
導電性発熱体と
を備え、
前記負荷コイルは、前記導電性発熱体と電磁気的に結合して配置された誘導加熱コイルであることを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項9】
前記制御手段は、検出した入力電力が前記誘導加熱コイルに印加するための目標電力に一致するように前記スイッチング素子の駆動を制御する電力制御モードを有することを特徴とする請求項8に記載の誘導加熱装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記導電性発熱体の温度を検出する温度検出手段を有し、
前記温度検出手段での検出温度が目標温度となる様に前記スイッチング素子の駆動を制御する温度制御モードと、前記電力制御モードとの2つの制御モードを有し、
当該2つの制御モードそれぞれにおいて、前記駆動信号のON時間、駆動信号の駆動周波数、入力電力のうちの少なくとも一つに基づいて、前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給する
ことを特徴とする請求項9に記載の誘導加熱装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の誘導加熱装置を、シートに転写されたトナー画像を定着する定着器として用いることを特徴とする電子写真式画像形成装置。
【請求項1】
負荷コイルに電力供給する電源装置であって、
前記負荷コイルへの入力電流をスイッチングするための特性が相異なる複数のスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を駆動する為の駆動信号を生成する制御手段と
を有し、
前記特性が相異なる複数のスイッチング素子は並列に接続され、
前記制御手段は、前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給する
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記複数のスイッチング素子は、それぞれのスイッチング素子が有するスイッチング速度と最大電流に係る特性とが相異なることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部を有し、生成された前記駆動信号におけるON時間を基準として前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し前記駆動信号を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記駆動信号を生成する駆動信号生成部を有し、生成された前記駆動信号における駆動周波数を基準として前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項5】
当該電源装置へ入力されている電力を検出する電力検出手段を更に有し、
前記制御手段は、前記検出した入力電力に応じて前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項6】
当該電源装置へ入力されている電力を検出する電力検出手段を更に有し、
前記制御手段は、前記負荷コイルに印加するための目標電力に応じて前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記特性が相異なる複数のスイッチング素子の1つは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタから構成され、他の1つは、電界効果トランジスタから構成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項8】
誘導加熱装置であって、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電源装置と、
導電性発熱体と
を備え、
前記負荷コイルは、前記導電性発熱体と電磁気的に結合して配置された誘導加熱コイルであることを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項9】
前記制御手段は、検出した入力電力が前記誘導加熱コイルに印加するための目標電力に一致するように前記スイッチング素子の駆動を制御する電力制御モードを有することを特徴とする請求項8に記載の誘導加熱装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記導電性発熱体の温度を検出する温度検出手段を有し、
前記温度検出手段での検出温度が目標温度となる様に前記スイッチング素子の駆動を制御する温度制御モードと、前記電力制御モードとの2つの制御モードを有し、
当該2つの制御モードそれぞれにおいて、前記駆動信号のON時間、駆動信号の駆動周波数、入力電力のうちの少なくとも一つに基づいて、前記特性が相異なる複数のスイッチング素子のうち、いずれかのスイッチング素子を選択し駆動信号を供給する
ことを特徴とする請求項9に記載の誘導加熱装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の誘導加熱装置を、シートに転写されたトナー画像を定着する定着器として用いることを特徴とする電子写真式画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−193556(P2011−193556A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55121(P2010−55121)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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