説明

電磁弁

【課題】作動速度を速めることができる電磁弁を提供する。
【解決手段】本体に、アーマチャ80を吸引するコイル96を収納し、弁座74に着座または離座する弁部84をアーマチャ80と一体的に形成し、弁座74の一方に高圧通路78が接続され、他方には低圧通路83が接続されている。弁部84が弁座74に着座することによって高圧通路78と低圧通路83とを遮断し、弁部84が弁座74から離座することによって高圧通路78と低圧通路83とが連通する。アーマチャ80におけるコイル96からの磁束が少ない部分に欠設して貫通孔が形成され、貫通孔に弁座形成部72に固定されたガイドピン102が係合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関し、例えば燃料噴射弁に使用される電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射弁、特にコモンレールシステムに使用される燃料噴射弁に使用されている電磁弁の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の燃料噴射弁は、図4に示すように、ノズルボディ2、ニードル3、ホルダボディ4、オリフィスプレート6及び電磁ユニット8等から構成されている。ノズルボディ2は、オリフィスプレート6を介してホルダボディ4の下端にリテーニングナット10によって結合されている。ノズルボディ2の上端面から先端部に向かって、ニードル3を摺動自在に収容するガイド孔12が形成され、ガイド孔12の先端にはニードル3のリフト時に燃料を噴射する噴射口14が形成されている。ガイド孔12内周面とニードル3の外周面との隙間により、噴射口14へ高圧燃料を導く高圧通路16が形成され、ガイド孔12の中途には内径を拡大した燃料溜め室18が形成されている。高圧通路16の上端は、ノズルボディ2の上端面に開口し、オリフィスプレート6の高圧通路20に接続されている。高圧通路20は、ホルダボディ4内の高圧通路22を介してホルダボディ4の上端に設けた配管継手24に接続され、配管継手24にはコモンレールから高圧燃料が供給される。
【0003】
ガイド孔12には円筒形状のスプリング台座26が圧入固定され、スプリング台座26とニードル3との間にニードル3を閉弁方向(図4の下方)に付勢するスプリング28が配置されている。スプリング台座26の内周面には、ニードル3の上端面に高圧燃料圧力を背圧として付与する背圧室30が形成され、この背圧によってもニードル3は、閉弁方向に付勢されている。また、燃料溜め室18の高圧燃料の圧力は、ニードル3を開弁方向(図4の上方)に付勢している。
【0004】
図5に示すように、オリフィスプレート6には、高圧通路20から背圧室30へ高圧燃料を流入させる流入通路32と、背圧室30から高圧燃料を低圧側へ流出させる流出通路34とが形成されている。
【0005】
ホルダボディ4には、電磁ユニット8が収容されている。電磁ユニット8は、樹脂製ボビンに巻回された電磁コイル36を有するステータ38と、このステータ38に対向して稼動するアーマチャ40と、アーマチャ40と一体に稼動して流出通路34を開閉するボール弁42とを備えている。ステータ38の中心部には、上下方向に伸びるスプリング収容孔44が形成され、これにスプリング46が収容され、ボール弁42を流出通路34側に押圧するようにアーマチャ40を押圧している。ステータ38の下方は、ボール弁42を収容する弁室として機能し、この弁室には流出通路34から流出した低圧燃料で満たされている。オリフィスプレート6の上面には環状の溝48が形成され、この溝48から外側方向に伸びる溝50を介して弁室の低圧燃料は、低圧通路52に流出する。
【0006】
アーマチャ40は、円板部54を有し、円板部54は、ステータ38と対向配置されて、ステータ38と共に磁気回路を形成している。円板部54の中央には台座部56が形成され、これからボール弁42に向かって当接部58が形成され、その内部にボール弁42が収容されている。円板部54には、その中心の回りに同心的に複数の貫通孔60が形成され、これらのうち何本かには、ガイドピン62が挿入され、ガイドピン62は、オリフィスプレート6に固定されている。貫通孔60は、円板部54とステータ38とが形成する磁気回路を中断させる位置に形成されている。
【0007】
電磁コイル36へ通電停止の状態では、ボール弁42が流出通路34を閉弁しているので、ニードル3を閉弁方向へ付勢する背圧室30の油圧とスプリング28の付勢力が、ニードル3を開弁方向に付勢する燃料溜め室18の油圧よりも大きく、ニードル3が噴射口14を閉じ、燃料は噴射されない。電磁コイル36へ通電すると、電磁コイル36の回りに磁束が発生し、ステータ38、アーマチャ40が磁化され、アーマチャ40が吸引され、スプリング46の付勢力に抗して、ガイドピン62にガイドされながらアーマチャ40がステータ38側に移動する。これによって背圧室30の油圧を受けてボール弁42が流出通路34を開弁し、背圧室30の高圧燃料がボール弁42の弁室に開放される。背圧室30の油圧が低下し、ニードル3を開弁する力が大きくなり、ニードル3が上昇し、燃料が噴射口14から噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−174820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の電磁弁によれば、ガイドピン62が挿入されている貫通孔60は、電磁コイル36が発生した磁力が集中する円板部54の部分に形成されているので、アーマチャ40を吸引する磁力による吸引力が低下しており、アーマチャ40を高速にステータ38側に移動させることができない。コモンレールシステムに使用される電磁弁は、高速化が要求されており、特許文献1の技術では、この要求を満たすことができない。
【0010】
本発明は、作動速度を速めることができる電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の電磁弁は、本体を有し、この本体にはコイルが収納されている。このコイルによってアーマチャが吸引される。アーマチャと一体的に弁部が形成されており、この弁部が弁座に着座または離座する。弁座の一方に高圧通路が接続され、他方には低圧通路が接続されている。弁部が弁座に着座することによって前記高圧通路と前記低圧通路とが遮断され、前記弁部が前記弁座から離座することによって前記高圧通路と前記低圧通路とが連通する。前記アーマチャにおいて前記コイルからの磁束が少ない部分に欠設して被ガイド部が形成されている。被ガイド部に、前記本体に固定されたガイドが係合され、前記ガイドによって前記アーマチャが着座位置と離座位置とに移動可能に支持されている。
【0012】
被ガイド部がコイルからの磁束の少ない部分に設けられているので、コイルからの磁束の大部分はアーマチャを通過するので、アーマチャをステータ側に吸引力を低下させることなく移動させることができる。また、アーマチャに一体に弁部を形成し、特許文献1の技術では必要であった当接部を省くことにより、アーマチャを軽量化でき、更にアーマチャを高速に移動させることができる。
【0013】
前記アーマチャは、磁性部と高強度部とを有するものとすることができる。磁性部は、前記コイルの磁束が密の位置に配置され、磁性材料で形成されている。高強度部は、前記コイルの磁束が粗の位置に配置され、比較的強度が高い高強度材料で形成されている。この場合、前記磁性部と前記高強度部とは、固着形成されている。前記被ガイド部は、前記高強度部に孔状に穿設されている。このように構成すると、被ガイド部は高強度部に形成されているので、アーマチャの割れを防止することができる。
【0014】
前記被ガイド部を、前記アーマチャを貫通して複数形成することができる。この場合、これら複数の被ガイド部のうちの一部の被ガイド部が前記ガイドと係合し、残りの被ガイド部は油抜きとして使用される。このように構成すると、被ガイド部をガイド機構の一部としても、油抜きとしても使用するので、加工が1作業となり、加工作業を簡易化することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明による電磁弁では、アーマチャの移動を高速化することができ、例えばコモンレールシステムにおいて使用するのに適した電磁弁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の1実施形態の電磁弁の部分省略拡大断面図である。
【図2】図1の電磁弁の部分省略断面図である。
【図3】図1の電磁弁で使用するアーマチャの横断面図である。
【図4】従来の電磁弁を使用した燃料噴射弁の側面図である。
【図5】図4の燃料噴射弁の部分省略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の1実施形態の電磁弁は、上述した従来技術と同様に、コモンレールシステムで使用される燃料噴射弁に、設けられており、コイルに通電することによってアーマチャを移動させて、高圧流体を低圧流路に流すことによって、噴射口を閉じているノズルを上昇させて、噴射口から高圧燃料をディーゼルエンジンのシリンダに供給するものである。
【0018】
この電磁弁では、図1に示すように、本体部70が、ベース部70a、胴部70b、結合部70c、頭部70d等からなる。ベース部70の上面中央に設けた凹所に弁座形成部72が配置されている。この弁座形成部72の一端、図1においては上端の中央に弁座74が形成されている。弁座74には弁座形成部72内に弁座74側からそれぞれ形成したオリフィス76、流出通路78からなる高圧通路を介して高圧流体が供給されている。
【0019】
弁座74には、アーマチャ80に形成した弁部82が着座して、弁座74を閉弁している。アーマチャ80は、後述するように図1における上下方向に昇降可能で、上昇時に弁座74から弁部82が離座する。これによって、弁座74からの高圧流体が弁座形成部72の周囲に胴部70bによって形成された低圧通路83に流出する。なお、低圧通路83の低圧油は、図示していない通路を介して外部に排出される。上述した従来技術では、アーマチャとは別個に設けたボール弁が弁座の開閉を行っていたが、この実施形態では、アーマチャ80に一体に形成した弁部82が弁座74の開閉を行っている。アーマチャ80は、上述した従来技術におけるボール弁を保持するための当接部が不要で、従来技術のアーマチャよりも軽量化されている。
【0020】
アーマチャ80は、図3に示すように中央に高強度部84を有している。高強度部84は、円板状の比較的強度が高い高強度材、例えばスチール鋼やチタン等で構成されている。この高強度部84には、被ガイド部、例えば貫通孔86が、欠設、例えば穿設されている。貫通孔86は、図1における上下方向に高強度部84を貫通しており、複数、例えば4つ、高強度部84の円周方向に間隔をおいて同芯状に形成されている。この高強度部84の周囲に磁性部88が形成されている。磁性部88は、磁性材料、例えば圧粉材料製の環状体で、高強度部84の外周面に一体にはめ込まれている。
【0021】
本体部70内におけるアーマチャ80の上部には、コイル96が配置されている。コイル96は、コア98に巻回され、このコア98がステータとして機能する。コア98は、その中央に内円筒状部98aを有し、この内円筒状部98aは、磁性部88の上方に位置し、この内円筒状部98aから離れて、即ちアーマチャ80の外周縁よりも外側に外円筒状部98bを有している。これら両円筒状部98a、98b間にコイル96が巻回されている。外円筒状部98bからアーマチャ80の磁性部88まで板状の磁束集中用部材100が配置されている。従って、コイル96に通電された場合、図2に破線で示すように、内側円筒部98a、外側円筒部98b、磁束集中部材100、磁性部88の間に磁束が集中して密となり、中央の高強度部84の磁束は粗となる。コイル96に通電された場合、アーマチャ80が上述した磁束によって磁化され、コア98に吸引される。コア98と磁束集中用部材100とは、上述の形状に限定されることなく、磁束集中用部材100と外円筒状部98bとを一体に形成し、内円筒状部98aと外円筒状部98bとを別体に形成するなど、その他別の形状で分割しても良い。
【0022】
高強度部84の上述した4つの貫通孔86のうち所定のもの、例えば高強度部84の中心を挟んで対向する2つのものには、ガイド、例えばガイドピン102が挿通され、それらの基端は、弁座形成部72に形成した凹所に固定されている。上述したようにコイル96に通電されてアーマチャ80が上昇したり、コイル96への通電停止によってアーマチャ80が降下したりするとき、ガイドピン102がアーマチャ80をガイドする。ガイドピン102をガイドするための貫通孔86は、高強度部84に形成されているので、貫通孔86を形成しても、高強度部84には割れが発生しない。また、これら貫通孔86は、図2から明らかなように、コイル96への通電時にアーマチャ80において磁束が集中する部分から離れた高強度部84に形成されているので、貫通孔86を形成したことにより、磁束の集中が阻害されることが無く、アーマチャ80が高速に移動する。
【0023】
また、コア96の内側円筒状部98aの内部には、弾性手段、例えばコイルバネ104が配置され、その一端はアーマチャ80の磁性部88に接触し、他端は、バネ受け106を介して本体部70内の頭部70dに接触している。このコイルバネ104は、コイル96への通電によりアーマチャ80が上昇したとき、そのバネ力に抗して圧縮され、コイル96への通電停止時に、そのバネ力によってアーマチャ80を弁座74に急速に降下させるためのものである。
【0024】
この電磁弁では、上述したようにガイドピン102をガイドする貫通孔86は、アーマチャ80における磁性部88に形成され、この磁性部88は、コイル96からの磁束が粗である位置に形成されているので、アーマチャ80を吸引するための磁力が貫通孔86によって弱められることがなく、高速にアーマチャ80を吸引することができる。しかも、アーマチャ80に一体に弁部82を形成しているので、アーマチャ80には従来術のアーマチャのように当接部を設ける必要が無く、アーマチャを軽量化することができ、益々高速にアーマチャ80を移動させることができる。また、アーマチャ80の磁性部88には圧粉材料を使用している。また、複数の貫通孔86を設けて、そのうちの幾つかのものにガイドピン102を挿入する構成であるので、複数の貫通孔86のうちガイドピン102に対するガイド性能のよいものを使用することができるので、ガイド性能を向上させることができる上に、ガイド性能を向上させるために貫通孔86に対して加工の手直しをする頻度を減少させることができる。また、ガイドピン102が挿入されていない貫通孔86は、油抜きとして作用し、アーマチャ80が移動するときに、アーマチャ80が移動する際に、上述の貫通孔86からアーマチャ80とコイル96との間の油を排出または供給するように作用する。さらに、コイル96の上方には上述の同様に貫通孔86と同様に作用する油抜きのための孔90が形成されている。
【0025】
上記の実施形態では、コモンレールシステムの燃料噴射弁に、この発明を実施したが、これに限ったものではなく、弁を開くことによって高圧流体を低圧側に流す構成の弁であれば、他の弁にも使用することができる。
【符号の説明】
【0026】
70 本体部
74 弁座
80 アーマチャ
82 弁部
84 高強度部
86 貫通孔(被ガイド部)
88 磁性部
96 コイル
102 ガイドピン(ガイド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に収納されたコイルと、
前記コイルによって吸引されるアーマチャと、
前記アーマチャと一体的に形成された弁部と、
前記弁部が着座または離座する弁座と、
前記弁座の一方に高圧通路が接続され、他方には低圧通路が接続され、
前記弁部が前記弁座に着座することによって前記高圧通路と前記低圧通路とを遮断し、前記弁部が前記弁座から離座することによって前記高圧通路と前記低圧通路とが連通する電磁弁において、
前記アーマチャにおける前記コイルからの磁束が少ない部分に欠設して被ガイド部が形成され、
前記被ガイド部に前記本体に固定されたガイドが係合され、
前記ガイドによって前記アーマチャを着座位置と離座位置とに移動可能に支持する
電磁弁。
【請求項2】
請求項1記載の電磁弁において、前記アーマチャは、
前記コイルの磁束が密の位置に配置され、磁性材料で形成された磁性部と、
前記コイルの磁束が粗の位置に配置され、比較的強度が高い高強度材料で形成された高強度部とを、
備え、前記磁性部と前記高強度部とは、固着形成され、
前記被ガイド部は、前記高強度部に孔状に穿設されている
電磁弁。
【請求項3】
請求項1または2記載の電磁弁において、
前記被ガイド部は、前記アーマチャを貫通して複数形成され、これら複数の被ガイド部のうちの一部の被ガイド部が前記ガイドと係合し、残りの被ガイド部は油抜きとして使用される電磁弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−72497(P2013−72497A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212351(P2011−212351)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】