説明

電磁調理器用コンデンサ用ポリプロピレンフィルム

【課題】低損失で自己発熱が小さく、安定した損失特性を有する電磁調理器用コンデンサ用ポリプロピレンフィルムを提供する。
【解決手段】フィルム中に含有するフェノール系酸化防止剤の含有量が100ppm以上4500ppm以下であるポリプロピレンフィルムであって、そのうちカルボニル基を有するフェノール系酸化防止剤が3000ppm以下であるポリプロピレンフィルムであって、コロナ放電処理がフィルムのカール内面に施され、かつ幅方向の熱収縮率が−1.0%以上1.0%以下であることを特徴とする電磁調理器用コンデンサ用ポリプロピレンフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ用ポリプロピレンフィルムに関するものであり、更に詳しくは、電磁調理器の高周波数回路に用いられるコンデンサ用ポリプロピレンフイルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、耐電圧特性や誘電損失などの電気特性が他のプラスチックフィルムよりも優れていることなどの理由から高圧コンデンサ用途に広く用いられている。しかしながら、最近になって従来の50Hzから60Hzの商用周波数領域をはるかに超える1kHzから100kHzの高周波数領域で用いられる高圧コンデンサへの用途展開が著しく、コンデンサの発熱を抑えるために、より低誘電損失化の要求が高まっている。従来のコンデンサ素子においては、電圧を1V印加した場合、周波数50Hzでの誘電損失(Tanδ)は、例えば、0.73%であり、1kHzでは0.61%であった。
【0003】
従来、誘電損失を低減するためには、電極である蒸着金属とリード線を引き出すために、コンデンサ素子端面に施されるメタリコンとの接触抵抗を低減させる提案(特許文献1)や蒸着金属の膜抵抗を低抵抗化して損失を低減する提案(特許文献2)がなされている。
【特許文献1】特開昭52−10553号公報
【特許文献2】特開昭50−64760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの提案ではコンデンサの電極とリード線取り出しのためのメタリコンとの電気的接触抵抗の抑制にのみ効果を示すことから、振動などの物理的衝撃や過電圧がかかるなどの電気的衝撃に対して接触抵抗が増大することがあり、充分でなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】

本発明は、上述の問題を解決するために、ポリプロピレンフィルムであって、ポリプロピレンフィルムがフェノール系酸化防止剤を含有し、その含有量が100ppm以上4500ppm以下であり、かつ、カルボニル基を有するフェノール系酸化防止剤の含有量が3000ppm以下であり、ポリプロピレンフィルムにコロナ放電処理が施され、施されるコロナ放電処理はポリプロピレンフィルムのカール内面であり、かつポリプロピレンフィルムの幅方向の熱収縮率が−1.0%以上1.0%以下であることを特徴とする電磁調理器用コンデンサ用ポリプロピレンフィルムを提案するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、コンデンサの誘電損失が小さく、結果として発熱が抑制され、高周波数領域かつ発熱体近傍で使用される電磁調理器用コンデンサに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0008】
本発明のコンデンサ用ポリプロピレンフィルムは、フィルム中に含有するフェノール系酸化防止剤の含有量が100ppm以上4500ppm以下である。
【0009】
フェノール系酸化防止剤の含有量が100ppm未満では、酸化防止剤を含有せしめる本来の目的であるポリプロピレンフィルムの酸化劣化抑制効果がなく不適当な場合があり、4500ppmを超えると、コンデンサの誘電損失が大きくなりコンデンサ自身の発熱により高温耐用性が劣るため、熱暴走と呼ばれる破壊に至ることがあるので不適当な場合がある。好ましくは300ppm以上3500ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以上3000ppm以下である。
【0010】
さらにフェノール系酸化防止剤のうちカルボニル基を有するフェノール系酸化防止剤が3000ppm以下であることが必要である。カルボニル基を有するフェノール系酸化防止剤が3000ppmを越えると、コンデンサの誘電損失が大きくなり、コンデンサ自身の発熱により高温耐用性が劣るため、不適当な場合がある。より好ましくは、1000ppm以下、最も好ましくは、実質的に含有しないことである。
【0011】
このとき、フィルムに含有するフェノール系酸化防止剤としては、1,3,5トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−ターシャリブチル−4ハイドロキシベンジル)ベンゼン(Irganox(登録商標)1330)、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジーt−ブチルー4ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox(登録商標)259)、2,4―ビスー(n―オクチルチオ)―6―(4−ヒドロキシアニリノ)―1,3,5―トリアジン(Irganox(登録商標)565)、ペンタエリスリチル・テトラキス[3―(3,5−ジーt−ブチルー4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]](Irganox(登録商標)1010),3,9―ビス[2―[3―(3−t−ブチルー4―ヒドロキシ−5―メチルフェニル)プロピオニルオキシ]―1,1―ジメチルエチル]―2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン(Sumilizer(登録商標)GA−80)等が例示されるが、誘電損失をより抑制するという観点で、カルボニル基を持たないフェノール系酸化防止剤であることが好ましく、さらには1,3,5トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−ターシャリブチル−4ハイドロキシベンジル)ベンゼンが好ましい。
【0012】
また、本発明のポリプロピレンフィルムにはコロナ放電処理を施すのが好ましく、コロナ放電処理はフィルムのカール内面に施される必要がある。
コロナ放電処理をフィルムのカール外面に施すと、その後、電極形成のために施される金属蒸着によって、金属化フィルムのカールが助長され、コンデンサ素子の巻き取り性に支障を及ぼすのみならず、コンデンサ素子の端面部分のフィルムが倒れるため、メタリコン金属との電気的接触性が阻害され、接触抵抗が増大することによる誘電損失を招くため不適当な場合がある。
【0013】
また、本発明のポリプロピレンフィルムの幅方向の熱収縮率は−1.0%以上1.0%以下である必要がある。−1.0%未満でも1.0%超でも金属化した後にコンデンサ素子の端面部分のフィルムが倒れるため、メタリコン金属との電気的接触性が阻害され、接触抵抗が増大することによる誘電損失を招くため不適当な場合がある。好ましくは、−0.5%以上0.5%以下である。
【0014】
また、本発明のポリプロピレンフィルムにおいては、その表面粗さは特に限定されるものではないが、平滑すぎるとヒーリングが発生したときに自己回復するためのガス抜け性に支障を来たし、結果としてコンデンサがショートモードの破壊に至ることがあるので、中心線平均粗さRaが0.03μm以上であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明のポリプロピレンフィルムの延伸方法は、テンター法、インフレーション法のいずれで得たものでもかまわないし、延伸方法も特に限定されないが、厚薄むらの小さいことが要求されることから、テンター法二軸延伸が好ましい。
【0016】
また本発明のポリプロピレンフィルムに含有される有極性有機系化合物以外の添加剤は特に限定されるものではなく、コンデンサ特性に支障を及ぼさない範囲で、適宜選択添加してもよい。
【0017】
本発明のポリプロピレンフィルムをコンデンサに使用する場合の電極は特に限定されるものではなく、例えば金属箔であっても両面を金属化した紙やプラスチックフィルムであっても、また、本発明のポリプロピレンフィルムの片面もしくは両面を直接金属化してもかまわないが、小型軽量化が望まれるコンデンサ用途にあっては特に直接フィルムを金属化することが好適である。このとき、用いる金属の種類は、亜鉛、錫、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの単体や複数種の混合物あるいは合金などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0018】
また、フィルムを直接金属化する方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法などが例示され、特に限定されるものではないが、その生産性や経済性などの観点から真空蒸着法がより好ましい。一般に真空蒸着法には、るつぼ方式やボート方式などが例示されるが、特に限定されるものではなく、適宜選択すればよい。蒸着により金属化する場合のマージンパターンも特に限定されるものではなく、通常のパターンであってもコンデンサの保安性向上などの目的で施される図1や図2に例示されるような長さ方向に平行でないマージンを含むパターンであってもかまわない。
【0019】
さらに、それらのマージンの構成方式も特に限定されるものではなく例えば、テープ方式であってもオイル方式であってもかまわない。
【0020】
また本発明のポリプロピレンフィルムからなるコンデンサの構造や形態は、特に限定されるものではなく、例えば乾式でも液体などによる含浸式でも、あるいは丸型でも扁平プレス型でも差し支えない。
【0021】
次に本発明のポリプロピレンフィルムの製造法の一例を示すが、特に限定されるものではない。
【0022】
フェノール系酸化防止剤を100ppm以上4500ppm以下添加したメルトインデックス2.5〜5.0g/10minのポリプロピレン樹脂を、240〜270℃の温度の押出機に供給して溶融し、スリットを施したTダイより、シート状に押出し、75〜95℃の温度の冷却ロールで冷却固化する。このとき、ポリプロピレン樹脂のメルトインデックスが高いほど収縮寸法変化率は小さくなり、灰分が少ないほど、またはメソペンダット分率が高いほど絶縁破壊電圧が向上するので、各々を適宜選択すればよい。また一般に冷却ロール温度が高いほど、表面粗さが大きくなる関係にあるので、所望の表面粗さを得るためには、適宜冷却ロール温度を選択すればよいが、80〜90℃が好ましい。
【0023】
次に135〜155℃の延伸ロールでフィルムを長さ方向に3〜7倍に延伸する。この場合も延伸温度を選択することで表面粗さの大きさを変えられる。次いで、幅方向に150〜165℃の温度で7〜12倍延伸しさらに、150〜165℃で熱処理を施す。一般に延伸温度や熱処理温度が低いほど、また延伸倍率が高いほど熱収縮率が大きくなる関係にあるので、これらの条件を適宜選択すればよい。
【0024】
こうして得られたポリプロピレンフィルムの片面にコロナ放電処理を施した後、ワインダーで巻取る。
【0025】
ここで、マイクロメータ法フィルム厚さは、口金からのポリプロピレン樹脂の押し出し量と延伸倍率を選択することで所望の厚みが得られるので、適宜選択すればよい。
【実施例】
【0026】
次に本発明の実施例に用いる測定法及び評価法について説明する。
(1)酸化防止剤の含有量
サンプルを10gサンプリングし、更に化学天秤で精量してその重量をW1(g)とする。次いで該サンプルを沸騰キシレンで完全溶解して室温まで冷却した後、フィルターで不溶分を除去したものを一旦乾燥する。
【0027】
次いで該乾燥物をアセトンに溶解して可溶分のみを取り出し、乾燥後その重量を精量しW2(g)とする。
この結果、酸化防止剤の含有量(Z(ppm))は次式で求められる。
【0028】
Z=W2/W1×10
なお、コンデンサ素子として組み込まれている場合は、事前に素子を解体した後、電極金属を酸で除去して、風乾することでサンプルとする。
(2)熱収縮率
JIS C−2330(2001)の7.4.6.2 B法によった。
(3)中心線平均粗さ(Ra)
JIS B−0601(1982)により、株式会社小坂研究所製「非接触三次元微細形状測定器(ET−30HK)」及び「三次元粗さ分析装置(MODEL SPA−11)」を用いて測定した。測定数は3とし、その平均値を用いた。詳細条件は次の通り。
【0029】
測定面処理:測定面にアルミニウムを真空蒸着し、非接触法とした。
【0030】
測定長:1mm
横倍率:200倍
縦倍率:20000倍
カットオフ:0.25mm
幅方向送り速度:0.1mm/秒
長さ方向送りピッチ:10μm
長さ方向送り数:20回
測定方向:フィルムの幅方向


(4)コンデンサ特性の評価
後述する各実施例および比較例で得られたフィルムに、ULVAC製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が6Ω/sqになるように蒸着し、フィルム長手方向を長さ方向として、幅50mm、長さ10000mにスリットし、24本(12ペア)の蒸着リールを採取した。
【0031】
次いで、このリールを用いて皆藤製作所製素子巻き機にてコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、真空中において120℃の温度で16時間の熱処理を施し、リード線を取り付けた後、エポキシ樹脂にてポッティングしてコンデンサ素子を仕上げた。このときのコンデンサ素子容量は30μFであった。
【0032】
こうして得たコンデンサ素子5個を用いて、常温下でコンデンサ素子に600VDCの電圧を1分間印加した後に、安藤電気製LCRメーターにて電圧1V、周波数1kHzの条件で、誘電損失(tanδ)を測定し、その平均値を求めた。
このとき、tanδの値が0.5%以下を合格とした。
【0033】
次に、本発明の実施例に基づき説明する。
(実施例1)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を3000ppm添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットを245℃で押出機より溶融押出し、Tダイよりシート状に押出し、89℃の温度の冷却ロールで冷却固化した後、134℃の温度で長さ方向に4.5倍に延伸し、次いで両端をクリップで把持して熱風オーブン中に導いて、165℃の雰囲気で予熱後、160℃で横方向に9倍に延伸し、次いで、160℃の温度で熱処理した。その後、フイルムのカール内面側に濡れ張力が43mN/mとなるようにコロナ放電処理を施してワインダーで巻き取った後、さらに幅620mm、長さ32000mに裁断し、巻き上げた。
【0034】
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.2%、幅方向の収縮寸法変化率が0.2%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は2900ppmであった。
【0035】
こうして得られたフィルムに、ULVAC製真空蒸着機でアルミニウムを膜抵抗が6Ω/sqになるように蒸着し、フィルム長手方向を長さ方向として、幅50mm、長さ10000mにスリットし、36本(18ペア)の蒸着リールを採取した。
【0036】
次いで、このリールを用いて皆藤製作所製素子巻き機にてコンデンサ素子を巻き取り、メタリコンを施した後、真空中において120℃の温度で16時間の熱処理を施し、リード線を取り付けた後、エポキシ樹脂にてポッティングしてコンデンサ素子を仕上げた。このときのコンデンサ素子容量は30μFであった。
【0037】
こうして得たコンデンサ素子5個を用いて、常温下でコンデンサ素子に600VDCの電圧を1分間印加した後に、安藤電気製LCRメーターにて電圧1V、周波数1kHzの条件で測定した誘電損失(tanδ)の平均値は0.30%であった。
(実施例2)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を530ppm添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットを155℃で横方向に9倍に延伸し、次いで、150℃の温度で熱処理した以外は実施例1と同様に実施した。
【0038】
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.5%、幅方向の収縮寸法変化率が0.9%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1010は500ppmであった。
【0039】
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.33%であった。
(実施例3)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を2100ppm、チバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を530ppm混合添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットを170℃の雰囲気で予熱後、165℃で横方向に9倍に延伸し、次いで、165℃の温度で熱処理した以外は実施例1と同様に実施した。
【0040】
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が2.8%、幅方向の収縮寸法変化率が−0.8%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は2000ppmであり、Irganox(登録商標)1010は500ppmであった。
【0041】
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.41%であった。
(実施例4)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を530ppm、チバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を2100ppm混合添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
【0042】
こうして得たペレットを実施例1と同様の条件にて、ポリプロピレンフィルムを得た。
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.1%、幅方向の収縮寸法変化率が0.1%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は500ppmであり、Irganox(登録商標)1010は2000ppmであった。
【0043】
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.47%であった。
(実施例5)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を4200ppm添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットを実施例1と同様の条件にてポリプロピレンフィルムを得た。
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が2.8%、幅方向の収縮寸法変化率が0.2%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は4000ppmであった。
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.48%であった。
(実施例6)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を2100ppm、チバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を2100ppm混合添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットを実施例1と同様にてポリプロピレンフィルムを得た。
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が2.8%、幅方向の収縮寸法変化率が0.2%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は2000ppmであり、Irganox(登録商標)1010は2000ppmであった。
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.44%であった。

(比較例1)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を5200ppm添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
【0044】
こうして得たペレットを実施例1と同様の条件にて、ポリプロピレンフィルムを得た。
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.1%、幅方向の収縮寸法変化率が0.1%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は5000ppmであった。
【0045】
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.55%であった。
(比較例2)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を8300ppm添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
【0046】
こうして得たペレットを実施例1と同様の条件にて、ポリプロピレンフィルムを得た。
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.1%、幅方向の収縮寸法変化率が0.1%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1010は8000ppmであった。
【0047】
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.82%であった。
(比較例3)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を3200ppm、チバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を5200ppm混合添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットを実施例1と同様の条件にて、ポリプロピレンフィルムを得た。
【0048】
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.1%、幅方向の収縮寸法変化率が0.2%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は3000ppmであり、Irganox(登録商標)1010は5000ppmであった。
【0049】
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.74%であった。
(比較例4)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を3200ppm添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットをカール外面側に濡れ張力が43mN/mとなるようにコロナ放電処理を施してワインダーで巻き取った以外は、実施例1と同様の条件にて実施した。
【0050】
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.0%、幅方向の収縮寸法変化率が0.1%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は3000ppmであった。
【0051】
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.84%であった。
(比較例5)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を3200ppm添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットを160℃の雰囲気で予熱後、155℃で横方向に9倍に延伸し、次いで、140℃の温度で熱処理した以外は実施例1と同様に実施した。
【0052】
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.7%、幅方向の収縮寸法変化率が1.2%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は3000ppmであった。
【0053】
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.61%であった。
(比較例6)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を60ppm添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットを実施例1と同様条件にて、ポリプロピレンフィルムを得た。
【0054】
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.1%、幅方向の収縮寸法変化率が0.2%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は50ppmであった。
【0055】
こうして得られたフィルムを実施例1と同様にコンデンサ評価を実施したところ、フィルム製造からコンデンサ作成時における樹脂の酸化劣化のせいか、コンデンサ素子に電圧を印加した際にコンデンサ素子が破壊し、誘電損失(tanδ)の測定は不可能であった。
(比較例7)
三井化学製ポリプロピレン樹脂パウダー(メソペンタッド分率0.980、メルトインデックス4.0g/10min、融点165℃)にチバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1330を530ppm、チバスペシャリティケミカルズ製Irganox(登録商標)1010を3700ppm混合添加した後、これを溶融固化してポリプロピレン樹脂ペレットを得た。
こうして得たペレットを実施例1と同様の条件にて、ポリプロピレンフィルムを得た。
【0056】
このとき、フィルムのMMVは5μm、コロナ放電処理を施した面の中心線平均粗さRaが0.07μm、反対面の中心線平均粗さRaが0.04μm、長さ方向の熱収縮率が3.1%、幅方向の収縮寸法変化率が0.2%であった。またフィルムに残存するIrganox(登録商標)1330は500ppmであり、Irganox(登録商標)1010は3500ppmであった。
【0057】
こうして得られたフィルムのコンデンサ評価による誘電損失(tanδ)の平均値は0.55%であった。

実施例1〜4、比較例1〜7の結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、低誘電損失に安定したコンデンサが得られるものであり、高周波数用途でかつ耐熱性を要求される電磁調理器用コンデンサに好適なポリプロピレンフィルムであり、その応用範囲はさらに広がるものである。また、高周波スイッチング電源等にも好ましく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】金属化フィルムの長さ方向に平行でないマージンを含む蒸着パターンの例
【図2】金属化フィルムの長さ方向に平行でないマージンを含む蒸着パターンの別の例
【符号の説明】
【0061】
1:金属蒸着部分
2:マージン部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンフィルムであって、ポリプロピレンフィルムがフェノール系酸化防止剤を含有し、その含有量が100ppm以上4500ppm以下であり、かつ、カルボニル基を有するフェノール系酸化防止剤の含有量が3000ppm以下であり、ポリプロピレンフィルムにコロナ放電処理が施され、施されるコロナ放電処理はポリプロピレンフィルムのカール内面であり、かつポリプロピレンフィルムの幅方向の熱収縮率が−1.0%以上1.0%以下であることを特徴とする電磁調理器用コンデンサ用ポリプロピレンフィルム。
【請求項2】
カルボニル基を有するフェノール系酸化防止剤の含有量が1000ppm以下である請求項1に記載の電磁調理器用コンデンサ用ポリプロピレンフィルム。
【請求項3】
フェノール系酸化防止剤がカルボニル基を有しないフェノール系酸化防止剤である請求項1又は2に記載の電磁調理器用コンデンサ用ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
カルボニル基を有しないフェノール系酸化防止剤が1,3,5トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−ターシャリブチル−4ハイドロキシベンジル)ベンゼンである請求項1から3のいずれかに記載の電磁調理器用コンデンサ用ポリプロピレンフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−146026(P2007−146026A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343470(P2005−343470)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】