説明

電線くずの銅回収装置

【課題】電線くずを粉砕して被覆材を銅から剥離させて、被覆材と銅とを比重差を利用して分離回収する装置において、被覆材の付着した銅紛を、被覆材と銅と別に分離して回収できるようにして、被覆材と銅の回収純度と、回収効率の向上を図る装置を提供する。
【解決手段】選別台2の下流側の端部に、選別台2の台面の下方に凹む受け槽26を設け、この受け槽26の前方壁に、受け槽26の上層の浮遊物を排出する排出口を設けると共に、この受け槽26の側方に、上記選別台2と一体に振動する第二選別台27を上記選別台2に沿って斜めに設け、上記受け槽26の底部に堆積する粉砕物を第二選別台27の台面に供給する連絡通路28を、上記受け槽の底部と第二選別台27の台面との間に設け、上記第二選別台27の台面に水を流すシャワー装置29を設け、上記第二選別台27によって被覆材Bの付着した銅紛を回収可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線くずを粉砕して被覆材を銅から剥離させて、被覆材と銅とを比重差を利用して分離回収する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線くずから銅を回収する方法として、電線くずを焼却して銅を回収する方法がある。
【0003】
しかしながら、この方法は、大気汚染の問題と共に、ビニールやゴムなどの被覆材が回収されないという問題がある。
【0004】
このため、電線の被覆材と銅との比重差を利用して、被覆材と銅とを分離して回収する装置が近年注目されている。
【0005】
従来、この種の装置として、電線くずを粉砕して被覆材を銅から剥離させる剥離粉砕機と、この剥離粉砕機によって粉砕された粉砕物が供給される選別台と、上記選別台を斜めに支持するフレームと、上記選別台を、斜め上方に向かって振動させる起振装置と、上記選別台の台面に水を流すシャワー装置とからなるものがある。
【0006】
この装置は、選別台の振動と台面を流れる水流によって、粉砕物中の比重の大きい銅を選別台の後方上流側の端部に向かって迫り上げ、粉砕物中の比重の小さい被覆材を選別台の下流へ流すことにより、被覆材と銅とを分離選別するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の装置において、銅の回収率を向上させるためには、剥離粉砕機で、電線くずをできるだけ細かく粉砕して被覆材を銅から完全に剥離させると共に、剥離粉砕機の下面に設置されているスクリーンの網目を細かくして、粉砕物中に、被覆材の付着した銅粉が混じらないようにする必要がある。
【0008】
ところが、電線くずを細かく粉砕し、剥離粉砕機の下面に設置されているスクリーンの網目を細かくすればするほど、スクリーンの網目を通過する粉砕物の量が減って粉砕時間が極端に長くなり、処理効率が悪くなるという問題があった。
【0009】
そこで、粉砕物中に、被覆材の付着した銅粉が混ざっていても、この被覆材の付着した銅粉を、被覆材と銅と別に分離して再粉砕することができる電線くずの銅回収装置を提供することにより、被覆材と銅の回収純度と、回収効率を向上させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記の課題を解決するために、電線くずを粉砕して被覆材を銅から剥離させる剥離粉砕機と、この剥離粉砕機によって粉砕された粉砕物が供給される選別台と、上記選別台を斜めに支持するフレームと、上記選別台を、斜め上方に向かって振動させる起振装置と、上記選別台の台面に水を流すシャワー装置とからなり、選別台の振動と台面を流れる水流によって、粉砕物中の銅を選別台の後方上流側の端部に向かって迫り上げ、粉砕物中の被覆材を選別台の下流へ流すことにより、被覆材と銅とを選別する電線くずの銅回収装置において、
上記選別台の前方下流側の端部に、選別台の台面の下方に凹む受け槽を設け、この受け槽の前方壁に、受け槽の上層の浮遊物を排出する排出口を設けると共に、上記受け槽内に、選別台の下流側端部の台面から連続する傾斜板を、受け槽の前方壁に向かって前方側が低く、受け槽の前方壁との間に隙間を有するように設け、上記受け槽の底面を、受け槽の前方から選別台の上流側に向かって上流側が低くなる傾斜面とし、上記受け槽の側方に、上記選別台と一体に振動する第二選別台を、上記選別台に沿って上記選別台の後方上流側が高くなるように斜めに設け、上記受け槽の底面の傾斜面に沿って後方側に流入した粉砕物を第二選別台の下流側端部の台面に供給する連絡通路を、上記受け槽と第二選別台との間に設け、上記第二選別台の台面に水を流すシャワー装置を設け、第二選別台の下流側端部と上流側端部とにそれぞれ排出口を設けたものである。
【0011】
上記電線くずの銅回収装置においては、選別台の傾斜角度、振動の周期および水量を、粉砕物中で最も比重の大きい銅が選別台の上方に移送され、銅よりも比重の小さい被覆材と、被覆材が完全に取れていない電線紛とが選別台の下流へ流れるように調整しておくことにより、銅を選別台の上方から分離選別することができる。
【0012】
そして、粉砕物に含まれている被覆材と、被覆材が完全に取れていない電線紛は、受け槽内に設けられた傾斜板の上面に沿って、受け槽の前方壁に向かって流れ、受け槽内の上層に浮いた被覆材は、受け槽の前方壁の上方の排出口から流出して回収される。
【0013】
被覆材が完全に取れていない電線紛や回収されなかった被覆材、銅粉等は、傾斜板の先端の受け槽の前方壁との間の隙間から、上記受け槽の底面に流れ込む。そして、上記受け槽の底面に流れ込んだ、被覆材が完全に取れていない電線紛等は、受け槽の底壁の傾斜に沿って受け槽の後方側に流れ、連絡通路から第二選別台の台面に供給される。
【0014】
この第二選別台の台面の水流と傾斜角度を、粉砕物中の被覆材が第二選別台の下流へ流れるように、調整しておくことにより、第二選別台において、被覆材が完全に取れていない電線紛と、被覆材との分離が行なわれ、被覆材が完全に取れていない電線紛が、第二選別台の後方側の排出口から回収され、被覆材が、第二選別台の前方側の排出口から回収される。
【0015】
この後、第二選別台において回収した被覆材が完全にとれていない電線紛は、再度、剥離粉砕機に投入して粉砕すると、被覆材と銅とが完全に分離し、選別台において被覆材と銅とが選別されるので、被覆材と銅との回収率が向上する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明に係る電線くずの銅回収装置によれば、粉砕物中に、被覆材の付着した銅紛が混ざっていても、この被覆材の付着した銅紛を、被覆材と銅と別に分離して再粉砕することができるので、被覆材と銅の回収純度と、回収効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明に係る電線くずの銅回収装置は、図1に示すように、電線くずを粉砕して被覆材Bを銅Aから剥離させる剥離粉砕機1と、この剥離粉砕機1によって粉砕された粉砕物が供給される選別台2と、上記選別台2を斜めに支持するフレーム3と、上記選別台2を、斜め上方に向かって振動させる起振装置4と、上記選別台2の台面に水を流すシャワー装置5とからなり、選別台2の振動と台面を流れる水流によって、粉砕物中の銅Aを選別台2の上方に移送し、粉砕物中の被覆材Bを選別台2の下流へ流すことにより、被覆材Bと銅Aとを選別するものである。
【0018】
剥離粉砕機1は、ケーシング6内に、電線くずを粉砕する回転刃7と固定刃8が設けられている。ケーシング6の上部には、電線くずを投入するためのホッパー9が設置されている。上記回転刃7の下面側には、電線くずを所定の大きさまで繰り返し粉砕して、被覆材Bが銅Aから剥離されるように、粉砕した電線くずを通過させるスクリーン10が設置されている。このスクリーン10の網目は、細かすぎると、粉砕効率が悪いので、被覆材Bが若干付着する電線くずが通過する程度の大きさに設定されている。上記ケーシング6の下方には、粉砕した電線くずの落下口11が設けられている。ケーシング6は、落下口11が、上記選別台2の下流側寄りに位置するように設置されている。また、回転刃7は、駆動モータ12によって回転駆動される。
【0019】
なお、上記剥離粉砕機1の上方には、図4に示すように、櫛刃35と、この櫛刃35の間を回転する回転刃36とを有する電線粗切り機34を設置することが好ましく、この電線粗切り機34によって、剥離粉砕機1での電線くずの噛み込みを防止することができる。
【0020】
上記選別台2は、台面13の両側に側壁14を有し、フレーム3に対して傾斜するように設置されている。選別台2の台面13の後方端部には、銅の排出口15が設けられ、前方端部には、被覆材Bの排出口16と排出シュート17が設けられている。上記フレーム3に対する選別台2の傾斜角度は、調整可能になっており、5度から7度に調整されている。上記選別台2とフレーム3との間には、選別台2をフレーム3に対して振動可能に支持するばね受け装置18が設置されている。上記ばね受け装置18は、リンク19とコイルばね20とからなり、選別台2の下面の後端部と前端部の二ヶ所に設けられている。選別台2の下面中央とフレーム3との間には、選別台2を傾斜方向に振動させる起振装置4が設置されている。起振装置4は、偏心リンク21と駆動モータ22とからなる。
【0021】
上記選別台2の後端部の排出口15の下方には、銅回収箱23が設置され、前端部の排出口16の下方には、被覆材回収箱24が設置されている。
【0022】
上記選別台2の台面13の表面には、小さな凹凸があるゴムマットが敷かれている。
【0023】
上記選別台2の台面13の全面には、シャワー装置5から水が流されている。シャワー装置5には、選別台2の台面13平行に、後方部と、中央部と、前方部に平行に設けられた複数本のシャワーパイプ25からなり、このシャワーパイプ25には、循環ポンプによって水が供給されている。
【0024】
上記選別台2の下流側の端部には、選別台2の台面13の下方に凹む受け槽26が設けられている。受け槽26内には、選別台2の台面13から連続し、受け槽26の前方壁に向かって前方側が低く、受け槽26の前方壁との間に隙間を有するように、傾斜板37が設けられている。また、上記受け槽26の底面は、受け槽26の前方から選別台2の上流側に向かって上流側が低くなる傾斜面になっている。この受け槽26の前方壁には、受け槽26内の浮遊物、即ち、被覆材Bを排出する排出口17が設けられている。この排出口17の高さは、傾斜板37の前端よりも高い位置に設けられている。この受け槽26の側方には、上記選別台2と一体に振動する第二選別台27が、上記選別台2に沿って上記選別台2の後方上流側が高くなるように斜めに設けられている。上記受け槽26の底部と第二選別台27の台面との間には、上記受け槽26の底部に堆積する粉砕物を第二選別台27の台面に供給する連絡通路28が設けられている。連絡通路28は、第二選別台27の下方よりの位置に接続されている。受け槽26の底部と連絡通路28は、受け槽26の底部から連絡通路28に向かって下がるように傾斜して設けられ、受け槽26の底部の傾斜面に沿って後方側に流れてきた粉砕物が、連絡通路28を経て第二選別台27に流入するようになっている。
【0025】
上記第二選別台27の台面には、シャワー装置29によって水が流されている。このシャワー装置29の水流と第二選別台27の傾斜角度は、上記受け槽26の底部に堆積する粉砕物のうち、比重の大きい被覆材の付着した電線紛と銅が、第二選別台27の上方に向かって移動し、比重の小さな被覆材Bが下方に向かって移動するように調整されている。上記第二選別台27の上端には、被覆材の付着した電線紛と銅を排出する排出口30が設けられ、下端には、被覆材Bを排出する排出口31が設けられている。排出口30の下方には、被覆材の付着した電線紛と銅を収容する回収箱32が設置されている。また、排出口31は、被覆材回収箱24に位置している。
【0026】
この発明に係る電線くずの銅回収装置は、以上のとおりであり、選別台2の傾斜角度、振動の周期および水量を、粉砕物中で最も比重の大きい銅Aが選別台2の上方に移送され、銅Aよりも比重の小さい被覆材Bと、被覆材が完全にとれていない電線紛とが選別台2の下流へ流れるように調整しておくことにより、銅Aを選別台2の上方から銅回収箱23に回収することができる。
【0027】
そして、粉砕物に含まれている被覆材Bと、被覆材Bが完全に取れていない電線紛は、選別台2の下流へながれて、受け槽26に流入する。
【0028】
被覆材Bは、受け槽26内の上層に浮き、受け槽26の前方壁の上方の排出口17から流出して、被覆材回収箱24に回収される。
【0029】
被覆材Bが完全に取れていない電線紛等は、被覆材Bよりも重いので、傾斜板37の先端と受け槽26の前方壁の隙間から受け槽26の底部に流入する。受け槽26の底部には、被覆材Bが完全に取れていない電線紛と共に、一部被覆材Bと銅Aが混ざった状態で流入し、受け槽26の底部の傾斜に沿って、後方側に流れる。上記受け槽26の底部の後方に流れ込んだ、被覆材Bが完全に取れていない電線紛等は、連絡通路28から第二選別台27の台面に供給される。
【0030】
この第二選別台27の台面の水流と傾斜角度を、粉砕物中の被覆材Bが第二選別台27の下流へ流れるように、調整しておくことにより、第二選別台27において、被覆材Bが完全に取れていない電線紛と、被覆材Bとの分離が行われ、被覆材Bは、被覆材回収箱24に回収され、被覆材Bが完全に取れていない電線紛は、一部の銅Aと共に、回収箱32に回収される。
【0031】
この後、第二選別台27において回収し、回収箱32に収容した被覆材Bが完全に取れていない電線紛は、再度、剥離粉砕機1に投入して粉砕すると、被覆材Bと銅Aとが完全に分離し、選別台2において被覆材Bと銅Aとが選別されるので、被覆材Bと銅Aとを確実かつ効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係る電線くずの銅回収装置を示す概略側面図
【図2】同上の装置における選別台の下方部分を示す斜視図
【図3】同上の装置における剥離粉砕機の内部構造を示す斜視図
【図4】同上の装置の剥離粉砕機の上方に電線粗切り機を設置した例を示す側面図
【図5】電線粗切り機の内部構造を示す斜視図
【符号の説明】
【0033】
1 剥離粉砕機
2 選別台
3 フレーム
4 起振装置
5 シャワー装置
6 ケーシング
7 回転刃
8 固定刃
9 ホッパー
10 スクリーン
11 落下口
12 駆動モータ
13 台面
14 側壁
15 排出口
16 排出口
17 排出口
18 ばね受け装置
19 リンク
20 コイルばね
21 偏心リンク
22 駆動モータ
23 銅回収箱
24 被覆材回収箱
25 シャワーパイプ
26 受け槽
27 第二選別台
28 連絡通路
29 シャワー装置
30 排出口
31 排出口
32 回収箱
34 電線粗切り機
35 櫛刃
36 回転刃
37 傾斜板
A 銅
B 被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線くずを粉砕して被覆材を銅から剥離させる剥離粉砕機と、この剥離粉砕機によって粉砕された粉砕物が供給される選別台と、上記選別台を斜めに支持するフレームと、上記選別台を、斜め上方に向かって振動させる起振装置と、上記選別台の台面に水を流すシャワー装置とからなり、選別台の振動と台面を流れる水流によって、粉砕物中の銅を選別台の後方上流側の端部に向かって迫り上げ、粉砕物中の被覆材を選別台の下流へ流すことにより、被覆材と銅とを選別する電線くずの銅回収装置において、上記選別台の前方下流側の端部に、選別台の台面の下方に凹む受け槽を設け、この受け槽の前方壁に、受け槽の上層の浮遊物を排出する排出口を設けると共に、上記受け槽内に、選別台の下流側端部の台面から連続する傾斜板を、受け槽の前方壁に向かって前方側が低く、受け槽の前方壁との間に隙間を有するように設け、上記受け槽の底面を、受け槽の前方から選別台の上流側に向かって上流側が低くなる傾斜面とし、上記受け槽の側方に、上記選別台と一体に振動する第二選別台を、上記選別台に沿って上記選別台の後方上流側が高くなるように斜めに設け、上記受け槽の底面の傾斜面に沿って後方側に流入した粉砕物を第二選別台の下流側端部の台面に供給する連絡通路を、上記受け槽と第二選別台との間に設け、上記第二選別台の台面に水を流すシャワー装置を設け、第二選別台の下流側端部と上流側端部とにそれぞれ排出口を設けたことを特徴とする電線くずの銅回収装置。
【請求項2】
上記剥離粉砕機の上方に、櫛刃と、この櫛刃の間を回転する回転刃とを有する電線粗切り機を設置したことを特徴とする請求項1記載の電線くずの銅回収装置。
【請求項3】
上記選別台の台面の表面に、小さな凹凸があるゴムマットを敷いていることを特徴とする請求項1又は2記載の電線くずの銅回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−136427(P2007−136427A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337266(P2005−337266)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(505434375)大阪カイショウ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】