露光ヘッド、画像形成装置
【課題】ゲート電圧に対する電流変化の非線形性に依らず、発光素子の光量を高精度に制御することを可能とする技術を提供する。
【解決手段】発光素子と、印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を発光素子に供給するトランジスターと、数式P=K(Vg−Vth)n、P:前記発光素子の光量、K:係数、n:1より大きい次数、に基づいて求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加して、発光素子の光量を制御する制御部と、を備える。
【解決手段】発光素子と、印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を発光素子に供給するトランジスターと、数式P=K(Vg−Vth)n、P:前記発光素子の光量、K:係数、n:1より大きい次数、に基づいて求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加して、発光素子の光量を制御する制御部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランジスターにより発光素子を駆動する露光ヘッドに関し、特に発光素子の光量を制御するものである。
【背景技術】
【0002】
発光素子が射出する光を照射することで被露光面を露光する露光ヘッドが従来から提案されている。ただし、このような露光ヘッドでは、温度変化によって発光素子の光量が変化するといった問題があった。このような問題に対応するために、例えば特許文献1に記載のラインヘッドは、発光素子に供給する電流量を調整することで、発光素子の光量変化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−082330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発光素子に供給する電流を調整するための機構として、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor)等のトランジスターを用いることができる。つまり、このトランジスターはゲート電圧に応じた電流を出力するものである。したがって、トランジスターの出力端子を発光素子に接続しておけば、ゲート電圧を調整することで、発光素子へ供給する電流を調整できる。しかしながら、このようにトランジスターを用いた構成では、ゲート電圧に対する電流の変化が非線形となるために、電流量が適切な値からずれてしまい、その結果、発光素子の光量を精度良く制御することができない場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ゲート電圧に対する電流変化の非線形性に依らず、発光素子の光量を高精度に制御することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、発光素子と、印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を発光素子に供給するトランジスターと、数式
P=K(Vg−Vth)n
P:前記発光素子の光量
K:係数
n:1より大きい次数
に基づいて求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加して、発光素子の光量を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を発生するトランジスターおよびトランジスターから電流の供給を受けて発光する発光素子を有する露光ヘッドと、数式
P=K(Vg−Vth)n
P:前記発光素子の光量
K:係数
n:1より大きい次数
に基づいて求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加して、発光素子の光量を制御する制御部と、発光素子が発光する光により潜像が形成される潜像担持体と、潜像を現像する現像部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このように構成された発明(露光ヘッド、画像形成装置)では、1より大きいn次式である数式P=K(Vg−Vth)nに基づいて、ゲート電圧Vgを求めている。したがって、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができ、しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【0009】
また、制御部は、係数Kおよび閾値電圧Vthを求めるパラメーター決定ユニットと、次数nを記憶する記憶ユニットと、を有し、パラメーター決定ユニットが求めた係数K、閾値電圧Vth、および記憶ユニットが記憶する次数nを用いて上記数式からゲート電圧を算出するように構成しても良い。このように、温度変化を示す係数Kおよび閾値電圧Vthを求めて、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度変化に依らず、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【0010】
また、発光素子が配設された基板と、基板の温度Tを測定する温度測定部と、を備え、パラメーター決定ユニットは、温度測定部の測定温度Tに基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求めるように構成しても良い。このように、発光素子が配設された基板の測定温度に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求め、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度変化に依らず、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【0011】
また、光を結像して被露光面に照射する結像光学系を備え、発光素子は第1の方向に配設されて、結像光学系により結像される光を発光し、温度測定部は、発光素子が配設された範囲を第1の方向に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って基板に配設され、温度により抵抗が変化する抵抗部材の抵抗値から温度を求めるように構成しても良い。このような構成では、温度により抵抗が変化する抵抗部材が温度測定に用いらる。しかも、この抵抗部材は、発光素子が配設された範囲を第1の方向(発光素子の配設方向)に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って基板に配設されている。したがって、この抵抗部材の抵抗値から温度を求めることで、第1の方向に配設された各発光素子の平均的な温度を検出することが可能となっている。そして、この平均的な温度に基づいて求めた係数Kおよび閾値電圧Vthを用いることで、温度変化に依らず、各発光素子を所望の光量で発光させるゲート電圧Vgを求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を適切に制御することが可能となる。
【0012】
この際、記憶ユニットは、基準温度での閾値電圧Vthの値、基準温度での係数Kの値、閾値電圧Vthの温度変化率dVth/dTおよび係数Kの温度変化率dK/dTを記憶しており、パラメーター決定ユニットは、記憶部が記憶する基準温度での閾値電圧Vthの値、温度変化率dVth/dTおよび測定温度Tから閾値電圧Vthを求めるとともに、記憶部が記憶する基準温度での係数Kの値、温度変化率dK/dTと測定温度から係数Kを求めるように構成しても良い。これにより、係数Kおよび閾値電圧Vthを簡便に求めることが可能となる。
【0013】
ところで、発光素子Eの光は、温度変化以外に経年変化を示す場合がある。このような場合には、発光素子の光を検出する光検出部を備え、パラメーター決定ユニットは、光検出部の検出光量に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求めるように構成しても良い。このように、発光素子からの光を検出した結果に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求め、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度・経年変化に依らず、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【0014】
また、発光素子の光を検出する光検出部を備え、制御部は、係数K、閾値電圧Vthおよび次数nを記憶する記憶ユニットを有し、記憶ユニットが記憶する係数K、閾値電圧Vth、次数nおよび光検出部の検出結果を用いて数式からゲート電圧を算出するように構成しても良い。このように、発光素子からの光を検出した結果に基づいて係数Kを求め、この値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度・経年変化に依らず、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す部分斜視図。
【図4】ヘッド基板およびその周辺の構成を模式的に示す部分平面図。
【図5】発光素子を駆動する回路を示す回路図。
【図6】ゲート電圧と駆動電流の関係をグラフとして示す図。
【図7】駆動電流と発光素子の光量の関係をグラフとして示す図。
【図8】ゲート電圧と発光素子の光量の関係をグラフとして示す図。
【図9】金属抵抗線の抵抗値を測定する回路を示す回路図。
【図10】ヘッド制御モジュールの電気的構成を示すブロック図。
【図11】閾値Vthの温度変化をグラフとして示す図。
【図12】係数Kの温度変化をグラフとして示す図。
【図13】第2実施形態が備える電気的構成を示すブロック図。
【図14】第2実施形態での光量補正動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1実施形態
図1は本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部ENGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0017】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体(図示省略)の内部には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス(図示省略)が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および二次転写ユニット12もハウジング本体内に配設されている。
【0018】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0019】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の感光体カートリッジに保持されており、感光体カートリッジと一体的に装置本体に対して着脱自在に構成されている。さらに、感光体カートリッジそれぞれには、当該感光体カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性のメモリーが設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各感光体カートリッジとの間で無線通信が行なわれる。こうすることで、各感光体カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、必要に応じて各メモリーの情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各感光体カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0020】
また、感光体カートリッジが装着された状態において、各感光体ドラム21はその回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21の回転軸はそれぞれ専用の駆動モーターDMに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。このように本実施形態では、感光体ドラム21の回転軸と駆動モーターDMとの間にギア等の動力伝達機構を設けること無く、感光体ドラム21の回転軸を駆動モーターDMで直接駆動するダイレクトドライブ方式が採用されている。
【0021】
また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25、スクイーズローラーSQ1、SQ2および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作等が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0022】
帯電部23はいわゆるコロナ帯電器で構成されており、感光体ドラム21表面に接触しない非接触型の帯電器である。この帯電部23は、帯電電圧発生部(図示省略)に接続されており、帯電電圧発生部からの給電を受けて帯電部23が感光体ドラム21に対向する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0023】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に、発光素子からの光を結像して静電潜像を形成する。
【0024】
図3はラインヘッドの構造を示す部分斜視図である。ラインヘッド29が有するヘッド基板294の裏面には、複数の発光素子Eが解像度に応じたピッチで長手方向LGDに並んでいる。各発光素子Eはヘッド基板294の裏面に形成された有機EL素子であり、いわゆるボトムエミッション型の有機EL素子である。また、ヘッド基板294の表面には、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297が対向して配置されている。したがって、発光素子Eが射出した光ビームは、ヘッド基板294の裏面から表面へと透過した後、ロッドレンズアレイ297により正立等倍で結像される。これにより、感光体ドラム21の表面にスポットSPが形成されて、感光体ドラム21表面に潜像が形成される。
【0025】
このようなラインヘッド29による潜像形成動作は、メインコントローラーMCおよびヘッドコントローラーHCにより制御される。なお、メインコントローラーMC、ヘッドコントローラーHCおよび各ラインヘッド29はそれぞれ別ブロックとして構成され、これらは互いにシリアル通信線を介して接続されている。各ブロック間でのデータのやりとり動作について、図2を参照しながら説明する。外部装置からメインコントローラーMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラーMCは、エンジンコントローラーECにエンジン部ENGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラーMCに設けられた画像処理部100が、画像形成指令に含まれる画像データに対して所定の信号処理を行い、各トナー色ごとのビデオデータVDを生成する。
【0026】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラーECは、エンジン部ENG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラーECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラーHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号Vsyncを出力する。
【0027】
ヘッドコントローラーHCには、各ラインヘッド29を制御するヘッド制御モジュール400と、メインコントローラーMCとのデータ通信を司るヘッド側通信モジュール300とが設けられている。一方、メインコントローラーMCにはメイン側通信モジュール200が設けられている。メイン側通信モジュール200は、ヘッド側通信モジュール300からの要求毎に1ライン分のビデオデータVDをヘッド側通信モジュール300に出力する。ヘッド側通信モジュール300は、このビデオデータVDをヘッド制御モジュール400に受け渡す。そして、ヘッド制御モジュール400は受け取ったビデオデータVDに基づいて各ラインヘッド29の発光素子を発光させることで、形成すべき画像の幅を主走査方向MDに有する1ライン分のライン潜像を形成する。このライン潜像形成は、感光体ドラム21表面の副走査方向SDへの移動に応じて順次実行され、その結果、2次元の潜像が感光体ドラム21表面に形成される。こうして形成された潜像は現像部25(図1)によりトナー像として現像される。
【0028】
以上が、本発明を適用可能なラインヘッド29および画像形成装置の概要である。続いて、このラインヘッド29のより詳細な構成について説明する。図4は、ラインヘッドが備えるヘッド基板およびその周辺の構成を模式的に示す部分平面図である。上述したような主走査方向MDに画像幅を有するライン潜像を形成するために、ラインヘッド29が備える複数の発光素子Eは、画像幅に応じた幅を長手方向LGDに有する素子形成領域AReに渡って並んでいる。より詳しくは、これら発光素子Eは、所定の発光素子ピッチで2行千鳥で長手方向LGDへ並んでいる。
【0029】
これら発光素子Eに対して幅方向LTDの一方側には、発光素子Eを駆動する駆動トランジスターとして、薄膜トランジスター2941(TFT、thin film transistor)が発光素子E毎に形成されている(図5)。ここで、図5は、発光素子を駆動する回路を示す回路図である。同図に示すように、発光素子Eの一端は、Pチャンネル型の薄膜トランジスター2941のドレイン端子に接続され、発光素子Eの他端はグランド電圧VCTに接続されている。また、Pチャンネル型の薄膜トランジスター2941のソース端子は電源電圧VELに接続されている。
【0030】
したがって、薄膜トランジスター2941は、ゲート電圧Vg(=VEL−VD)に応じた駆動電流Idsをドレイン端子から出力する(図6)。図6は、ゲート電圧と駆動電流の関係をグラフとして示す図である。同図に示すように、駆動電流Idsは、ゲート電圧Vgに対して非線形に変化する特性を有し、より詳しくは、ゲート電圧Vgとの間に次式
Ids=(1/2)β(Vg−Vth)n …式1
β:薄膜トランジスターの移動度
n:1より大きい次数
Vth:薄膜トランジスター2941の閾値電圧
の関係を有する。
【0031】
薄膜トランジスター2941から駆動電流Idsの供給を受けた発光素子Eは、この駆動電流Idsに応じた光量Pで発光する(図7)。図7は、駆動電流と発光素子の光量の関係をグラフとして示す図である。同図に示すように、発光素子Eの光量Pは、駆動電流Idsに比例して変化する特性を有し、より詳しくは、駆動電流Idsとの間に次式
P=ηIds …式2
η:素子効率
の関係を有する。
【0032】
したがって、式1および式2から求まるように、発光素子Eの光量Pはゲート電圧Vgとの間に、次式
P=K(Vg−Vth)n …式3
K=(1/2)βη
の関係を有することとなり、ゲート電圧に対して非線形に変化する(図8)。ここで、図8は、ゲート電圧と発光素子の光量の関係をグラフとして示す図である。
【0033】
そして、このような薄膜トランジスター2941による発光素子Eの駆動の制御は、転送制御回路2943、フレキシブルプリント基板2945、ドライバーIC2947およびヘッド制御モジュール400の協働により行なわれる。転送制御回路2943は、薄膜トランジスター2941に対して幅方向LTDの一方側に配置されており、薄膜トランジスター2941と配線によって電気的に接続されている(図4)。フレキシブルプリント基板2945は、ヘッド基板294から引き出されるようにして取り付けられており、ヘッド制御モジュール400(図2)との信号の送受信機能を果たす。また、ドライバーIC2947は、フレキシブルプリント基板2945の上に搭載されている。
【0034】
ヘッド制御モジュール400が出力したビデオデータVDは、フレキシブルプリント基板2945上のドライバーIC2947を介して、転送制御回路2943に受け渡される。そして、転送制御回路2943は、ビデオデータVDが示す光量で発光素子Eを発光させるように薄膜トランジスター2941を制御し、この制御下で薄膜トランジスター2941が発光素子Eを発光させる。
【0035】
また、ヘッド基板294には、温度により抵抗が変化する、線幅数μm〜数十μmを有する線状の金属抵抗線MR(抵抗部材)が、複数の発光素子Eに添って形成されている。この際、このような線幅の細い金属抵抗線MRを形成するために、ヘッド基板294は、ガラス基板やセラミック基板であることが望ましい。この金属抵抗線MRは、素子形成領域AReを長手方向LGDに含み且つ当該素子形成領域AReよりも長手方向LGDに広い抵抗配線領域ARrに渡って形成されている。換言すれば、金属抵抗線MRは、長手方向LGDにおいて素子形成領域AReの両端からはみ出すようにして形成されている。
【0036】
より詳しくは、この金属抵抗線MRは、素子形成領域AReの長手方向LGD一方側において、ドライバーIC2947から幅方向LTDに階段状に引き出されている。こうして複数の発光素子Eの幅方向LTDの他方側にまで引き出された金属抵抗線MRは、素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側から一方側にまで引き出された後に折り返されて、再び素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側に引き戻される。そして、素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側に戻った金属抵抗線MRは、素子形成領域AReの長手方向LGD一方側において、ドライバーIC2947にまで幅方向LTDに階段状に引き戻される。こうして、金属抵抗線MRは、長手方向LGDの一方端で折り返して、素子形成領域AReよりも広い抵抗配線領域ARrを往復するように形成されている。
【0037】
ちなみに、この金属抵抗線MRは、アルミあるいはアルミと銅の合金を基材とするものであり、数十kΩの抵抗値を持ち、温度1℃あたり0.1〜1%程度の抵抗上昇を示す。また、この金属抵抗線MRは、薄膜トランジスター2941の金属配線層(具体的には、ゲート電極あるいはソース電極の配線層)と同じ層に形成されている。これにより、金属抵抗線MRと薄膜トランジスター2941の金属配線を同時に形成することができ、金属抵抗線MR用に新たにプロセスやフォトマスクを用意する必要がなく、製造工程の簡素化やコストアップの抑制を図ることが可能となる。また、このような金属配線層を多層に設ける場合は、他の層との交差を考慮して、ヘッド基板294からフレキシブルプリント基板2945への引き出しが容易になる配線層に金属抵抗線MRを設ければ良い。
【0038】
図9は、金属抵抗線の抵抗値を測定する回路を示す回路図である。図9に示すように、金属抵抗線MRは、値が既知の抵抗Rと直列に接続されている。これら直列抵抗R、MRの両端のうち、抵抗R側の端が基準電圧Vrefに接続され、抵抗MR側の端がグランド電圧に接続される。こうして、これら抵抗R、MRで基準電圧Vrefを分圧した電圧Vsが生成される。図9から理解できるように、この分圧値Vsは抵抗MRの大きさに比例した値を有するものであり、すなわち、抵抗MRの抵抗値を示す値として生成されている。そして、この分圧値Vsは、A/Dコンバーターに受け渡される。このA/Dコンバーターは、金属抵抗線MRの抵抗値に対応する電圧値をデジタル信号に変換してヘッド制御モジュール400(図2)に出力する。なお、金属抵抗線MR以外の図9に示す構成は、ドライバーIC2947に内蔵されている。
【0039】
一方、ヘッド制御モジュール400は、受け取ったデジタル信号が示す金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求める。そして、この求めた温度において、発光素子Eを所望の光量で発光させるためのゲート電圧Vg(ビデオデータVD)を算出する。そして、これらの機能を実現するために、ヘッド制御モジュール400は、補正データ演算ユニット401、記憶ユニット403および温度測定ユニット405を備える(図10)。ここで、図10は、ヘッド制御モジュールの電気的構成を示すブロック図である。
【0040】
温度測定ユニット405は、デジタル信号が示す金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求める機能を司る。具体的には、温度測定ユニット405は、基準温度Toにおける金属抵抗線MRの抵抗値、および、温度変化に対する金属抵抗線MRの抵抗値の変化率を予め記憶しており、これらに基づいて、金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求める。こうして温度測定ユニット405の測定温度は、補正データ演算ユニット401に出力される。
【0041】
補正データ演算ユニット401は、測定温度において発光素子Eを所望の光量(目標光量Pt)で発光させるゲート電圧Vgを上記の式3に基づいて求める機能を司り、記憶ユニット403は、補正データ演算ユニット401がゲート電圧Vgを求めるにあたり必要となる各値を記憶する機能を司る。具体的には、記憶ユニット403には、基準温度Toにおける係数K(=Ko)、閾値Vth(=Vtho)および次数nが発光素子E毎に記憶される他、係数Kの温度変化率Kp(=dK/dT)や、閾値Vthの温度変化率Kv(=dVth/dT)が記憶されている。なお、温度変化率Kp、Kvは発光素子Eに依らず略同じであるため(図11、図12)、複数の発光素子Eで共通のものとして記憶されている。ここで、図11は、閾値Vthの温度変化をグラフとして示す図であり、図12は、係数Kの温度変化をグラフとして示す図である。これらの図では、3つの発光素子E(素子1、素子2、素子3)の閾値Vth・係数Kの温度変化が示されている。これらの図から判るように、閾値Vth・係数Kは、温度に対して略線形に変化し、その変化率Kp、Kvは発光素子Eに依らず略同じである。
【0042】
補正データ演算ユニット401は、上記の式3に基づいてゲート電圧Vgを求めるのに先立って、式3に含まれるパラメーターのうち特に温度変化を示す、薄膜トランジスター2941の閾値Vthおよび係数Kを求める。具体的には、測定温度Tにおける閾値Vth(T)および係数K(T)は、次式
Vth(T)=Vtho+Kv(T−To) …式4
K(T)=Ko+Kp(T−To) …式5
で与えられる。このように、第1実施形態では、予め記憶する値Vtho、Kv、Ko、Kpを式4、5に代入するだけで、係数Kおよび閾値電圧Vthを簡便に求めることが可能となっている。
【0043】
そして、補正データ演算ユニット401は、式3をVgについて解いて得られる、次式
Vg=(Pt/K(T))1/n+Vth(T) …式6
に式4、5で求めた値を代入して、測定温度Tにおいて目標光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを算出する。そして、以後の露光動作では、こうして求められたゲート電圧Vgが薄膜トランジスター2941に印加されて、これに応じた駆動電流Idsの供給を受けて発光素子Eが発光する。
【0044】
以上のように、第1実施形態では、1より大きいn次式である数式P=K(Vg−Vth)nに基づいて、ゲート電圧Vgを求めている。したがって、所望の光量で発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができ、しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0045】
また、第1実施形態では、温度変化を示す係数Kおよび閾値電圧Vthを求めて、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度変化に依らず、所望の光量で発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0046】
また、第1実施形態では、発光素子Eが配設されたヘッド基板294の測定温度に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求め、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度変化に依らず、所望の光量で発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0047】
また、第1実施形態では、温度により抵抗が変化する金属抵抗線MRが温度測定に用いらる。しかも、この金属抵抗線MRは、発光素子Eが配設された範囲を長手方向LGD(発光素子Eの配設方向)に含み且つ当該範囲よりも長手方向LGDに広い領域に渡ってヘッド基板294に配設されている。したがって、この金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求めることで、長手方向LGDに配設された各発光素子Eの平均的な温度を検出することが可能となっている。そして、この平均的な温度に基づいて求めた係数Kおよび閾値電圧Vthを用いることで、温度変化に依らず、各発光素子Eを所望の光量で発光させるゲート電圧Vgを求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を適切に制御することが可能となる。
【0048】
この際、記憶ユニットは、基準温度での閾値電圧Vthの値、基準温度での係数Kの値、閾値電圧Vthの温度変化率dVth/dTおよび係数Kの温度変化率dK/dTを記憶しており、パラメーター決定ユニットは、記憶部が記憶する基準温度での閾値電圧Vthの値、温度変化率dVth/dTおよび測定温度Tから閾値電圧Vthを求めるとともに、記憶部が記憶する基準温度での係数Kの値、温度変化率dK/dTと測定温度から係数Kを求めるように構成しても良い。これにより、係数Kおよび閾値電圧Vthを簡便に求めることが可能となる。
【0049】
第2実施形態
ところで、発光素子Eの光は、温度変化以外に経年変化を示す場合がある。第2実施形態では、この経年変化が顕著となった場合に特に好適な実施形態について説明する。なお、以下では、第2実施形態と上記実施形態の違いについて主に説明することとし、共通する構成の説明は適宜省略する。また、共通する構成から上記実施形態と同様の作用効果が奏されることは言うまでも無い。
【0050】
図13は、第2実施形態が備える電気的構成を示すブロック図である。第2実施形態では、単数あるいは複数の光量センサーSCがヘッド基板294の基板面に配置されており、光量センサーSCにより発光素子Eの光量を検出できるように構成されている。この検出光量は、補正データ演算ユニット401に出力される。そして、補正データ演算ユニット401は、この検出光量に基づいて、発光素子Eを所望の光量(目標光量Pt)で発光させるゲート電圧Vgを求める(光量補正)。
【0051】
図14は、第2実施形態での光量補正動作を示す図である。同図では、横軸をゲート電圧Vgとし、縦軸を発光素子Eの光量として、発光素子Eの光量特性がグラフとして示されている。また、同図において、破線は経年変化前の光量特性を示し、実線は経年変化後の光量特性を示している。経年変化前後の光量特性はいずれも、第1実施形態と同様に式3を充足するものであるが、経年変化によって閾値Vthおよび係数Kが変化したことで、経年変化後の光量特性は経年変化前の光量特性と比べてレベルが低下している。
【0052】
そこで、光量補正では、経年変化後の閾値Vthおよび係数Kを求め、これらから目標光量Ptで発光素子Eを発光させる目標ゲート電圧Vtを求める。具体的には、経年変化前に目標光量Ptを発光素子Eに与えていた第1ゲート電圧V1と、これより大きい第2ゲート電圧V1が薄膜トランジスター2941のゲートに印加され、それぞれでの光量P1、P2が検出される。このとき、印加電圧V1、V2と検出光量P1、P2は、次式
P1=K(V1−Vth)n …式7
P2=K(V2−Vth)n …式8
を満たし、これらを閾値Vthおよび係数Kについて解くことで、次式
K={(P11/n−P21/n)/(V1−V2)}n…式9
Vth=(V2・P11/n−V1・P21/n)/(P11/n−P21/n)…式9
が求まる。そして、求めた閾値Vthおよび係数Kを、次式
Vt=(Pt/K)1/n+Vth …式10
に代入することで、目標ゲート電圧Vtを求めることができる。そして、以後の露光動作では、こうして求められたゲート電圧Vtが薄膜トランジスター2941に印加されて、これに応じた駆動電流Idsの供給を受けて発光素子Eが発光する。
【0053】
以上のように、第2実施形態では、1より大きいn次式である数式P=K(Vg−Vth)nに基づいて、ゲート電圧Vg(目標ゲート電圧Vt)を求めている。したがって、所望の光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができ、しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となっている。
【0054】
また、第2実施形態では、発光素子Eからの光を検出した結果に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求め、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度・経年変化に依らず、所望の光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0055】
第3実施形態
ところで、薄膜トランジスター2941を製造するプロセスの改善や、閾値電圧Vthの変化を補償する各種技術により、閾値電圧Vthの変化を殆んど無視できるまで抑制できる場合もある。第2実施形態では、このような場合に特に好適な実施形態について説明する。なお、以下では、第3実施形態と上記実施形態の違いについて主に説明することとし、共通する構成の説明は適宜省略する。また、共通する構成から上記実施形態と同様の作用効果が奏されることは言うまでも無い。
【0056】
第3実施形態では、閾値電圧Vthは変化しない値であるので、記憶ユニット403に発光素子E毎に予め記憶されており、係数Kの値のみが求められる。具体的には、経年変化前に目標光量Ptを発光素子Eに与えていた第1ゲート電圧V1が薄膜トランジスター2941のゲートに印加され、その際の光量P1が検出される。このとき、印加電圧V1と検出光量P1は式7を満たすため、同式を係数Kについて解くことで、次式
K=P1/(V1−Vth)n …式11
が求まる。そして、求めた係数Kを、次式
Vt=(Pt/K)1/n+Vth …式12
に代入することで、目標ゲート電圧Vtを求めることができる。そして、以後の露光動作では、こうして求められたゲート電圧Vtが薄膜トランジスター2941に印加されて、これに応じた駆動電流Idsの供給を受けて発光素子Eが発光する。
【0057】
以上のように、第3実施形態では、1より大きいn次式である数式P=K(Vg−Vth)nに基づいて、ゲート電圧Vg(目標ゲート電圧Vt)を求めている。したがって、所望の光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができ、しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となっている。
【0058】
また、第3実施形態では、発光素子Eからの光を検出した結果に基づいて係数Kを求め、この値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度・経年変化に依らず、所望の光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vg(目標ゲート電圧Vt)を精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vtを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0059】
その他
以上のように、上記実施形態では、薄膜トランジスター2941が本発明の「トランジスター」に相当している。また、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当し、ヘッド制御モジュール400が本発明の「制御部」に相当している。また、補正データ演算ユニット401が本発明の「パラメーター決定ユニット」に相当し、記憶ユニット403が本発明の「記憶ユニット」に相当し、ヘッド基板204が本発明の「基板」に相当し、金属抵抗線MRおよび温度測定ユニット405が協働して本発明の「温度測定部」として機能し、金属抵抗線MRが本発明の「抵抗部材」に相当している。主走査方向MDあるいは長手方向LGDが本発明の「第1の方向」に相当し、レンズアレイ297が本発明の「結像光学系」として機能している。また、光量センサーSCが本発明の「光検出部」に相当している。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、トランジスターとして薄膜トランジスター2941を用いた場合について説明したが、トランジスターの種類はこれに限られず、上記式1の特性を満たすMOSトランジスター等を用いることもできる。
【0061】
また、上記実施形態では、複数の発光素子Eは2行千鳥で配置されていたが、発光素子Eの配置態様はこれに限られず、種々の変更が可能である。したがって、例えば、特開2009−113204号公報に記載のように、複数の発光素子Eをグループ化して1つの発光素子グループを構成し、さらに複数の発光素子グループを長手方向LGDに千鳥配列することもできる。
【0062】
また、上記第1実施形態では、ヘッド基板294上の全ての発光素子Eが、結像光学系に結像されて露光(潜像形成)に供する光を射出するとして説明した。しかしながら、露光に供する光を射出することのないダミー発光素子Eをヘッド基板294に設けておくこともできる。ただし、このような場合は、金属抵抗線MRで測定する温度にダミー発光素子E近傍の温度を反映させなくても良い。したがって、結像光学系に結像されて露光に供する光を射出する発光素子Eが形成された領域を素子形成領域AReと定めて、金属抵抗線MRの形成位置を決めれば良く、ダミー発光素子Eの位置にまで素子形成領域AReを拡張しなくても良い。
【0063】
また、上記第1実施形態では、1つの金属抵抗線MRでヘッド基板294の温度を測定していた。しかし、複数の金属抵抗線MRをヘッド基板294に配置して、これら金属抵抗線MRの個々の抵抗値の平均値等からヘッド基板294の温度を測定するように構成しても良い。
【0064】
また、上記第1実施形態では、金属抵抗線MRによって温度検出していたが、サーミスターや各種の温度センサー等その他の構成によって温度検出を行うように構成しても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、発光素子E毎に次数nを記憶するように構成していた。しかしながら、この次数nは原理的には「2」であるので、各発光素子Eに対して共通の次数「n」を用いてゲート電圧Vgを求めるように構成しても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、式9等で行なう1/n乗の計算の具体的方法については述べなかったが、これについても種々の方法が採用可能である。したがって、例えば、二次曲線との誤差が0.5%以下となるように領域毎に直線近似して、それぞれのエリアで係数乗算を行なうことで、1/n乗の計算を行なうことができ、簡単なロジック回路で計算回路を実現できる。
【0067】
また、上記実施形態では、工場出荷後の実使用中におけるゲート電圧Vgの算出方法について説明し、工場出荷前におけるゲート電圧Vgの設定方法については特に述べなかったが、これについても種々の方法が採用可能である。そこで、例えば、ゲート電圧Vgを3ポイント以上変えながら発光素子Eの光量Pを測定した結果から、ゲート電圧Vgを求めることもできる。つまり、これら光量測定値からテイラー微分法等を用いてパラメーターK、Vth、nを推定することができ、この推定値からゲート電圧Vgを求めれば良い。
【0068】
また、上述の有機EL素子以外に、LED(Light Emitting Diode)等の光源を、発光素子Eとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0069】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 294…基板、 2941…薄膜トランジスター、 Vg…ゲート電圧、 297…レンズアレイ、 E…発光素子、 400…ヘッド制御モジュール、 401…補正データ演算ユニット、 403…記憶ユニット、 405…温度測定ユニット、 MR…金属抵抗線、 SC…光量センサー
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランジスターにより発光素子を駆動する露光ヘッドに関し、特に発光素子の光量を制御するものである。
【背景技術】
【0002】
発光素子が射出する光を照射することで被露光面を露光する露光ヘッドが従来から提案されている。ただし、このような露光ヘッドでは、温度変化によって発光素子の光量が変化するといった問題があった。このような問題に対応するために、例えば特許文献1に記載のラインヘッドは、発光素子に供給する電流量を調整することで、発光素子の光量変化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−082330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発光素子に供給する電流を調整するための機構として、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor)等のトランジスターを用いることができる。つまり、このトランジスターはゲート電圧に応じた電流を出力するものである。したがって、トランジスターの出力端子を発光素子に接続しておけば、ゲート電圧を調整することで、発光素子へ供給する電流を調整できる。しかしながら、このようにトランジスターを用いた構成では、ゲート電圧に対する電流の変化が非線形となるために、電流量が適切な値からずれてしまい、その結果、発光素子の光量を精度良く制御することができない場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ゲート電圧に対する電流変化の非線形性に依らず、発光素子の光量を高精度に制御することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、発光素子と、印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を発光素子に供給するトランジスターと、数式
P=K(Vg−Vth)n
P:前記発光素子の光量
K:係数
n:1より大きい次数
に基づいて求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加して、発光素子の光量を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を発生するトランジスターおよびトランジスターから電流の供給を受けて発光する発光素子を有する露光ヘッドと、数式
P=K(Vg−Vth)n
P:前記発光素子の光量
K:係数
n:1より大きい次数
に基づいて求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加して、発光素子の光量を制御する制御部と、発光素子が発光する光により潜像が形成される潜像担持体と、潜像を現像する現像部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このように構成された発明(露光ヘッド、画像形成装置)では、1より大きいn次式である数式P=K(Vg−Vth)nに基づいて、ゲート電圧Vgを求めている。したがって、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができ、しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【0009】
また、制御部は、係数Kおよび閾値電圧Vthを求めるパラメーター決定ユニットと、次数nを記憶する記憶ユニットと、を有し、パラメーター決定ユニットが求めた係数K、閾値電圧Vth、および記憶ユニットが記憶する次数nを用いて上記数式からゲート電圧を算出するように構成しても良い。このように、温度変化を示す係数Kおよび閾値電圧Vthを求めて、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度変化に依らず、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【0010】
また、発光素子が配設された基板と、基板の温度Tを測定する温度測定部と、を備え、パラメーター決定ユニットは、温度測定部の測定温度Tに基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求めるように構成しても良い。このように、発光素子が配設された基板の測定温度に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求め、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度変化に依らず、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【0011】
また、光を結像して被露光面に照射する結像光学系を備え、発光素子は第1の方向に配設されて、結像光学系により結像される光を発光し、温度測定部は、発光素子が配設された範囲を第1の方向に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って基板に配設され、温度により抵抗が変化する抵抗部材の抵抗値から温度を求めるように構成しても良い。このような構成では、温度により抵抗が変化する抵抗部材が温度測定に用いらる。しかも、この抵抗部材は、発光素子が配設された範囲を第1の方向(発光素子の配設方向)に含み且つ当該範囲よりも第1の方向に広い領域に渡って基板に配設されている。したがって、この抵抗部材の抵抗値から温度を求めることで、第1の方向に配設された各発光素子の平均的な温度を検出することが可能となっている。そして、この平均的な温度に基づいて求めた係数Kおよび閾値電圧Vthを用いることで、温度変化に依らず、各発光素子を所望の光量で発光させるゲート電圧Vgを求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を適切に制御することが可能となる。
【0012】
この際、記憶ユニットは、基準温度での閾値電圧Vthの値、基準温度での係数Kの値、閾値電圧Vthの温度変化率dVth/dTおよび係数Kの温度変化率dK/dTを記憶しており、パラメーター決定ユニットは、記憶部が記憶する基準温度での閾値電圧Vthの値、温度変化率dVth/dTおよび測定温度Tから閾値電圧Vthを求めるとともに、記憶部が記憶する基準温度での係数Kの値、温度変化率dK/dTと測定温度から係数Kを求めるように構成しても良い。これにより、係数Kおよび閾値電圧Vthを簡便に求めることが可能となる。
【0013】
ところで、発光素子Eの光は、温度変化以外に経年変化を示す場合がある。このような場合には、発光素子の光を検出する光検出部を備え、パラメーター決定ユニットは、光検出部の検出光量に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求めるように構成しても良い。このように、発光素子からの光を検出した結果に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求め、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度・経年変化に依らず、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【0014】
また、発光素子の光を検出する光検出部を備え、制御部は、係数K、閾値電圧Vthおよび次数nを記憶する記憶ユニットを有し、記憶ユニットが記憶する係数K、閾値電圧Vth、次数nおよび光検出部の検出結果を用いて数式からゲート電圧を算出するように構成しても良い。このように、発光素子からの光を検出した結果に基づいて係数Kを求め、この値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度・経年変化に依らず、所望の光量で発光素子を発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgをトランジスターに印加することで、発光素子の光量を高精度に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す部分斜視図。
【図4】ヘッド基板およびその周辺の構成を模式的に示す部分平面図。
【図5】発光素子を駆動する回路を示す回路図。
【図6】ゲート電圧と駆動電流の関係をグラフとして示す図。
【図7】駆動電流と発光素子の光量の関係をグラフとして示す図。
【図8】ゲート電圧と発光素子の光量の関係をグラフとして示す図。
【図9】金属抵抗線の抵抗値を測定する回路を示す回路図。
【図10】ヘッド制御モジュールの電気的構成を示すブロック図。
【図11】閾値Vthの温度変化をグラフとして示す図。
【図12】係数Kの温度変化をグラフとして示す図。
【図13】第2実施形態が備える電気的構成を示すブロック図。
【図14】第2実施形態での光量補正動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1実施形態
図1は本実施形態にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部ENGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0017】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体(図示省略)の内部には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス(図示省略)が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および二次転写ユニット12もハウジング本体内に配設されている。
【0018】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0019】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の感光体カートリッジに保持されており、感光体カートリッジと一体的に装置本体に対して着脱自在に構成されている。さらに、感光体カートリッジそれぞれには、当該感光体カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性のメモリーが設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各感光体カートリッジとの間で無線通信が行なわれる。こうすることで、各感光体カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、必要に応じて各メモリーの情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各感光体カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0020】
また、感光体カートリッジが装着された状態において、各感光体ドラム21はその回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21の回転軸はそれぞれ専用の駆動モーターDMに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。このように本実施形態では、感光体ドラム21の回転軸と駆動モーターDMとの間にギア等の動力伝達機構を設けること無く、感光体ドラム21の回転軸を駆動モーターDMで直接駆動するダイレクトドライブ方式が採用されている。
【0021】
また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25、スクイーズローラーSQ1、SQ2および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作等が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0022】
帯電部23はいわゆるコロナ帯電器で構成されており、感光体ドラム21表面に接触しない非接触型の帯電器である。この帯電部23は、帯電電圧発生部(図示省略)に接続されており、帯電電圧発生部からの給電を受けて帯電部23が感光体ドラム21に対向する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0023】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に、発光素子からの光を結像して静電潜像を形成する。
【0024】
図3はラインヘッドの構造を示す部分斜視図である。ラインヘッド29が有するヘッド基板294の裏面には、複数の発光素子Eが解像度に応じたピッチで長手方向LGDに並んでいる。各発光素子Eはヘッド基板294の裏面に形成された有機EL素子であり、いわゆるボトムエミッション型の有機EL素子である。また、ヘッド基板294の表面には、屈折率分布型ロッドレンズアレイ297が対向して配置されている。したがって、発光素子Eが射出した光ビームは、ヘッド基板294の裏面から表面へと透過した後、ロッドレンズアレイ297により正立等倍で結像される。これにより、感光体ドラム21の表面にスポットSPが形成されて、感光体ドラム21表面に潜像が形成される。
【0025】
このようなラインヘッド29による潜像形成動作は、メインコントローラーMCおよびヘッドコントローラーHCにより制御される。なお、メインコントローラーMC、ヘッドコントローラーHCおよび各ラインヘッド29はそれぞれ別ブロックとして構成され、これらは互いにシリアル通信線を介して接続されている。各ブロック間でのデータのやりとり動作について、図2を参照しながら説明する。外部装置からメインコントローラーMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラーMCは、エンジンコントローラーECにエンジン部ENGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラーMCに設けられた画像処理部100が、画像形成指令に含まれる画像データに対して所定の信号処理を行い、各トナー色ごとのビデオデータVDを生成する。
【0026】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラーECは、エンジン部ENG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラーECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラーHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号Vsyncを出力する。
【0027】
ヘッドコントローラーHCには、各ラインヘッド29を制御するヘッド制御モジュール400と、メインコントローラーMCとのデータ通信を司るヘッド側通信モジュール300とが設けられている。一方、メインコントローラーMCにはメイン側通信モジュール200が設けられている。メイン側通信モジュール200は、ヘッド側通信モジュール300からの要求毎に1ライン分のビデオデータVDをヘッド側通信モジュール300に出力する。ヘッド側通信モジュール300は、このビデオデータVDをヘッド制御モジュール400に受け渡す。そして、ヘッド制御モジュール400は受け取ったビデオデータVDに基づいて各ラインヘッド29の発光素子を発光させることで、形成すべき画像の幅を主走査方向MDに有する1ライン分のライン潜像を形成する。このライン潜像形成は、感光体ドラム21表面の副走査方向SDへの移動に応じて順次実行され、その結果、2次元の潜像が感光体ドラム21表面に形成される。こうして形成された潜像は現像部25(図1)によりトナー像として現像される。
【0028】
以上が、本発明を適用可能なラインヘッド29および画像形成装置の概要である。続いて、このラインヘッド29のより詳細な構成について説明する。図4は、ラインヘッドが備えるヘッド基板およびその周辺の構成を模式的に示す部分平面図である。上述したような主走査方向MDに画像幅を有するライン潜像を形成するために、ラインヘッド29が備える複数の発光素子Eは、画像幅に応じた幅を長手方向LGDに有する素子形成領域AReに渡って並んでいる。より詳しくは、これら発光素子Eは、所定の発光素子ピッチで2行千鳥で長手方向LGDへ並んでいる。
【0029】
これら発光素子Eに対して幅方向LTDの一方側には、発光素子Eを駆動する駆動トランジスターとして、薄膜トランジスター2941(TFT、thin film transistor)が発光素子E毎に形成されている(図5)。ここで、図5は、発光素子を駆動する回路を示す回路図である。同図に示すように、発光素子Eの一端は、Pチャンネル型の薄膜トランジスター2941のドレイン端子に接続され、発光素子Eの他端はグランド電圧VCTに接続されている。また、Pチャンネル型の薄膜トランジスター2941のソース端子は電源電圧VELに接続されている。
【0030】
したがって、薄膜トランジスター2941は、ゲート電圧Vg(=VEL−VD)に応じた駆動電流Idsをドレイン端子から出力する(図6)。図6は、ゲート電圧と駆動電流の関係をグラフとして示す図である。同図に示すように、駆動電流Idsは、ゲート電圧Vgに対して非線形に変化する特性を有し、より詳しくは、ゲート電圧Vgとの間に次式
Ids=(1/2)β(Vg−Vth)n …式1
β:薄膜トランジスターの移動度
n:1より大きい次数
Vth:薄膜トランジスター2941の閾値電圧
の関係を有する。
【0031】
薄膜トランジスター2941から駆動電流Idsの供給を受けた発光素子Eは、この駆動電流Idsに応じた光量Pで発光する(図7)。図7は、駆動電流と発光素子の光量の関係をグラフとして示す図である。同図に示すように、発光素子Eの光量Pは、駆動電流Idsに比例して変化する特性を有し、より詳しくは、駆動電流Idsとの間に次式
P=ηIds …式2
η:素子効率
の関係を有する。
【0032】
したがって、式1および式2から求まるように、発光素子Eの光量Pはゲート電圧Vgとの間に、次式
P=K(Vg−Vth)n …式3
K=(1/2)βη
の関係を有することとなり、ゲート電圧に対して非線形に変化する(図8)。ここで、図8は、ゲート電圧と発光素子の光量の関係をグラフとして示す図である。
【0033】
そして、このような薄膜トランジスター2941による発光素子Eの駆動の制御は、転送制御回路2943、フレキシブルプリント基板2945、ドライバーIC2947およびヘッド制御モジュール400の協働により行なわれる。転送制御回路2943は、薄膜トランジスター2941に対して幅方向LTDの一方側に配置されており、薄膜トランジスター2941と配線によって電気的に接続されている(図4)。フレキシブルプリント基板2945は、ヘッド基板294から引き出されるようにして取り付けられており、ヘッド制御モジュール400(図2)との信号の送受信機能を果たす。また、ドライバーIC2947は、フレキシブルプリント基板2945の上に搭載されている。
【0034】
ヘッド制御モジュール400が出力したビデオデータVDは、フレキシブルプリント基板2945上のドライバーIC2947を介して、転送制御回路2943に受け渡される。そして、転送制御回路2943は、ビデオデータVDが示す光量で発光素子Eを発光させるように薄膜トランジスター2941を制御し、この制御下で薄膜トランジスター2941が発光素子Eを発光させる。
【0035】
また、ヘッド基板294には、温度により抵抗が変化する、線幅数μm〜数十μmを有する線状の金属抵抗線MR(抵抗部材)が、複数の発光素子Eに添って形成されている。この際、このような線幅の細い金属抵抗線MRを形成するために、ヘッド基板294は、ガラス基板やセラミック基板であることが望ましい。この金属抵抗線MRは、素子形成領域AReを長手方向LGDに含み且つ当該素子形成領域AReよりも長手方向LGDに広い抵抗配線領域ARrに渡って形成されている。換言すれば、金属抵抗線MRは、長手方向LGDにおいて素子形成領域AReの両端からはみ出すようにして形成されている。
【0036】
より詳しくは、この金属抵抗線MRは、素子形成領域AReの長手方向LGD一方側において、ドライバーIC2947から幅方向LTDに階段状に引き出されている。こうして複数の発光素子Eの幅方向LTDの他方側にまで引き出された金属抵抗線MRは、素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側から一方側にまで引き出された後に折り返されて、再び素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側に引き戻される。そして、素子形成領域AReの長手方向LGDの他方側に戻った金属抵抗線MRは、素子形成領域AReの長手方向LGD一方側において、ドライバーIC2947にまで幅方向LTDに階段状に引き戻される。こうして、金属抵抗線MRは、長手方向LGDの一方端で折り返して、素子形成領域AReよりも広い抵抗配線領域ARrを往復するように形成されている。
【0037】
ちなみに、この金属抵抗線MRは、アルミあるいはアルミと銅の合金を基材とするものであり、数十kΩの抵抗値を持ち、温度1℃あたり0.1〜1%程度の抵抗上昇を示す。また、この金属抵抗線MRは、薄膜トランジスター2941の金属配線層(具体的には、ゲート電極あるいはソース電極の配線層)と同じ層に形成されている。これにより、金属抵抗線MRと薄膜トランジスター2941の金属配線を同時に形成することができ、金属抵抗線MR用に新たにプロセスやフォトマスクを用意する必要がなく、製造工程の簡素化やコストアップの抑制を図ることが可能となる。また、このような金属配線層を多層に設ける場合は、他の層との交差を考慮して、ヘッド基板294からフレキシブルプリント基板2945への引き出しが容易になる配線層に金属抵抗線MRを設ければ良い。
【0038】
図9は、金属抵抗線の抵抗値を測定する回路を示す回路図である。図9に示すように、金属抵抗線MRは、値が既知の抵抗Rと直列に接続されている。これら直列抵抗R、MRの両端のうち、抵抗R側の端が基準電圧Vrefに接続され、抵抗MR側の端がグランド電圧に接続される。こうして、これら抵抗R、MRで基準電圧Vrefを分圧した電圧Vsが生成される。図9から理解できるように、この分圧値Vsは抵抗MRの大きさに比例した値を有するものであり、すなわち、抵抗MRの抵抗値を示す値として生成されている。そして、この分圧値Vsは、A/Dコンバーターに受け渡される。このA/Dコンバーターは、金属抵抗線MRの抵抗値に対応する電圧値をデジタル信号に変換してヘッド制御モジュール400(図2)に出力する。なお、金属抵抗線MR以外の図9に示す構成は、ドライバーIC2947に内蔵されている。
【0039】
一方、ヘッド制御モジュール400は、受け取ったデジタル信号が示す金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求める。そして、この求めた温度において、発光素子Eを所望の光量で発光させるためのゲート電圧Vg(ビデオデータVD)を算出する。そして、これらの機能を実現するために、ヘッド制御モジュール400は、補正データ演算ユニット401、記憶ユニット403および温度測定ユニット405を備える(図10)。ここで、図10は、ヘッド制御モジュールの電気的構成を示すブロック図である。
【0040】
温度測定ユニット405は、デジタル信号が示す金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求める機能を司る。具体的には、温度測定ユニット405は、基準温度Toにおける金属抵抗線MRの抵抗値、および、温度変化に対する金属抵抗線MRの抵抗値の変化率を予め記憶しており、これらに基づいて、金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求める。こうして温度測定ユニット405の測定温度は、補正データ演算ユニット401に出力される。
【0041】
補正データ演算ユニット401は、測定温度において発光素子Eを所望の光量(目標光量Pt)で発光させるゲート電圧Vgを上記の式3に基づいて求める機能を司り、記憶ユニット403は、補正データ演算ユニット401がゲート電圧Vgを求めるにあたり必要となる各値を記憶する機能を司る。具体的には、記憶ユニット403には、基準温度Toにおける係数K(=Ko)、閾値Vth(=Vtho)および次数nが発光素子E毎に記憶される他、係数Kの温度変化率Kp(=dK/dT)や、閾値Vthの温度変化率Kv(=dVth/dT)が記憶されている。なお、温度変化率Kp、Kvは発光素子Eに依らず略同じであるため(図11、図12)、複数の発光素子Eで共通のものとして記憶されている。ここで、図11は、閾値Vthの温度変化をグラフとして示す図であり、図12は、係数Kの温度変化をグラフとして示す図である。これらの図では、3つの発光素子E(素子1、素子2、素子3)の閾値Vth・係数Kの温度変化が示されている。これらの図から判るように、閾値Vth・係数Kは、温度に対して略線形に変化し、その変化率Kp、Kvは発光素子Eに依らず略同じである。
【0042】
補正データ演算ユニット401は、上記の式3に基づいてゲート電圧Vgを求めるのに先立って、式3に含まれるパラメーターのうち特に温度変化を示す、薄膜トランジスター2941の閾値Vthおよび係数Kを求める。具体的には、測定温度Tにおける閾値Vth(T)および係数K(T)は、次式
Vth(T)=Vtho+Kv(T−To) …式4
K(T)=Ko+Kp(T−To) …式5
で与えられる。このように、第1実施形態では、予め記憶する値Vtho、Kv、Ko、Kpを式4、5に代入するだけで、係数Kおよび閾値電圧Vthを簡便に求めることが可能となっている。
【0043】
そして、補正データ演算ユニット401は、式3をVgについて解いて得られる、次式
Vg=(Pt/K(T))1/n+Vth(T) …式6
に式4、5で求めた値を代入して、測定温度Tにおいて目標光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを算出する。そして、以後の露光動作では、こうして求められたゲート電圧Vgが薄膜トランジスター2941に印加されて、これに応じた駆動電流Idsの供給を受けて発光素子Eが発光する。
【0044】
以上のように、第1実施形態では、1より大きいn次式である数式P=K(Vg−Vth)nに基づいて、ゲート電圧Vgを求めている。したがって、所望の光量で発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができ、しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0045】
また、第1実施形態では、温度変化を示す係数Kおよび閾値電圧Vthを求めて、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度変化に依らず、所望の光量で発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0046】
また、第1実施形態では、発光素子Eが配設されたヘッド基板294の測定温度に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求め、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度変化に依らず、所望の光量で発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0047】
また、第1実施形態では、温度により抵抗が変化する金属抵抗線MRが温度測定に用いらる。しかも、この金属抵抗線MRは、発光素子Eが配設された範囲を長手方向LGD(発光素子Eの配設方向)に含み且つ当該範囲よりも長手方向LGDに広い領域に渡ってヘッド基板294に配設されている。したがって、この金属抵抗線MRの抵抗値から温度を求めることで、長手方向LGDに配設された各発光素子Eの平均的な温度を検出することが可能となっている。そして、この平均的な温度に基づいて求めた係数Kおよび閾値電圧Vthを用いることで、温度変化に依らず、各発光素子Eを所望の光量で発光させるゲート電圧Vgを求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を適切に制御することが可能となる。
【0048】
この際、記憶ユニットは、基準温度での閾値電圧Vthの値、基準温度での係数Kの値、閾値電圧Vthの温度変化率dVth/dTおよび係数Kの温度変化率dK/dTを記憶しており、パラメーター決定ユニットは、記憶部が記憶する基準温度での閾値電圧Vthの値、温度変化率dVth/dTおよび測定温度Tから閾値電圧Vthを求めるとともに、記憶部が記憶する基準温度での係数Kの値、温度変化率dK/dTと測定温度から係数Kを求めるように構成しても良い。これにより、係数Kおよび閾値電圧Vthを簡便に求めることが可能となる。
【0049】
第2実施形態
ところで、発光素子Eの光は、温度変化以外に経年変化を示す場合がある。第2実施形態では、この経年変化が顕著となった場合に特に好適な実施形態について説明する。なお、以下では、第2実施形態と上記実施形態の違いについて主に説明することとし、共通する構成の説明は適宜省略する。また、共通する構成から上記実施形態と同様の作用効果が奏されることは言うまでも無い。
【0050】
図13は、第2実施形態が備える電気的構成を示すブロック図である。第2実施形態では、単数あるいは複数の光量センサーSCがヘッド基板294の基板面に配置されており、光量センサーSCにより発光素子Eの光量を検出できるように構成されている。この検出光量は、補正データ演算ユニット401に出力される。そして、補正データ演算ユニット401は、この検出光量に基づいて、発光素子Eを所望の光量(目標光量Pt)で発光させるゲート電圧Vgを求める(光量補正)。
【0051】
図14は、第2実施形態での光量補正動作を示す図である。同図では、横軸をゲート電圧Vgとし、縦軸を発光素子Eの光量として、発光素子Eの光量特性がグラフとして示されている。また、同図において、破線は経年変化前の光量特性を示し、実線は経年変化後の光量特性を示している。経年変化前後の光量特性はいずれも、第1実施形態と同様に式3を充足するものであるが、経年変化によって閾値Vthおよび係数Kが変化したことで、経年変化後の光量特性は経年変化前の光量特性と比べてレベルが低下している。
【0052】
そこで、光量補正では、経年変化後の閾値Vthおよび係数Kを求め、これらから目標光量Ptで発光素子Eを発光させる目標ゲート電圧Vtを求める。具体的には、経年変化前に目標光量Ptを発光素子Eに与えていた第1ゲート電圧V1と、これより大きい第2ゲート電圧V1が薄膜トランジスター2941のゲートに印加され、それぞれでの光量P1、P2が検出される。このとき、印加電圧V1、V2と検出光量P1、P2は、次式
P1=K(V1−Vth)n …式7
P2=K(V2−Vth)n …式8
を満たし、これらを閾値Vthおよび係数Kについて解くことで、次式
K={(P11/n−P21/n)/(V1−V2)}n…式9
Vth=(V2・P11/n−V1・P21/n)/(P11/n−P21/n)…式9
が求まる。そして、求めた閾値Vthおよび係数Kを、次式
Vt=(Pt/K)1/n+Vth …式10
に代入することで、目標ゲート電圧Vtを求めることができる。そして、以後の露光動作では、こうして求められたゲート電圧Vtが薄膜トランジスター2941に印加されて、これに応じた駆動電流Idsの供給を受けて発光素子Eが発光する。
【0053】
以上のように、第2実施形態では、1より大きいn次式である数式P=K(Vg−Vth)nに基づいて、ゲート電圧Vg(目標ゲート電圧Vt)を求めている。したがって、所望の光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができ、しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となっている。
【0054】
また、第2実施形態では、発光素子Eからの光を検出した結果に基づいて係数Kおよび閾値電圧Vthを求め、これらの値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度・経年変化に依らず、所望の光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0055】
第3実施形態
ところで、薄膜トランジスター2941を製造するプロセスの改善や、閾値電圧Vthの変化を補償する各種技術により、閾値電圧Vthの変化を殆んど無視できるまで抑制できる場合もある。第2実施形態では、このような場合に特に好適な実施形態について説明する。なお、以下では、第3実施形態と上記実施形態の違いについて主に説明することとし、共通する構成の説明は適宜省略する。また、共通する構成から上記実施形態と同様の作用効果が奏されることは言うまでも無い。
【0056】
第3実施形態では、閾値電圧Vthは変化しない値であるので、記憶ユニット403に発光素子E毎に予め記憶されており、係数Kの値のみが求められる。具体的には、経年変化前に目標光量Ptを発光素子Eに与えていた第1ゲート電圧V1が薄膜トランジスター2941のゲートに印加され、その際の光量P1が検出される。このとき、印加電圧V1と検出光量P1は式7を満たすため、同式を係数Kについて解くことで、次式
K=P1/(V1−Vth)n …式11
が求まる。そして、求めた係数Kを、次式
Vt=(Pt/K)1/n+Vth …式12
に代入することで、目標ゲート電圧Vtを求めることができる。そして、以後の露光動作では、こうして求められたゲート電圧Vtが薄膜トランジスター2941に印加されて、これに応じた駆動電流Idsの供給を受けて発光素子Eが発光する。
【0057】
以上のように、第3実施形態では、1より大きいn次式である数式P=K(Vg−Vth)nに基づいて、ゲート電圧Vg(目標ゲート電圧Vt)を求めている。したがって、所望の光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vgを精度良く求めることができ、しかも、こうして求めたゲート電圧Vgを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となっている。
【0058】
また、第3実施形態では、発光素子Eからの光を検出した結果に基づいて係数Kを求め、この値に基づいてゲート電圧Vgを算出することで、温度・経年変化に依らず、所望の光量Ptで発光素子Eを発光させるゲート電圧Vg(目標ゲート電圧Vt)を精度良く求めることができる。しかも、こうして求めたゲート電圧Vtを薄膜トランジスター2941に印加することで、発光素子Eの光量を高精度に制御することが可能となる。
【0059】
その他
以上のように、上記実施形態では、薄膜トランジスター2941が本発明の「トランジスター」に相当している。また、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当し、ヘッド制御モジュール400が本発明の「制御部」に相当している。また、補正データ演算ユニット401が本発明の「パラメーター決定ユニット」に相当し、記憶ユニット403が本発明の「記憶ユニット」に相当し、ヘッド基板204が本発明の「基板」に相当し、金属抵抗線MRおよび温度測定ユニット405が協働して本発明の「温度測定部」として機能し、金属抵抗線MRが本発明の「抵抗部材」に相当している。主走査方向MDあるいは長手方向LGDが本発明の「第1の方向」に相当し、レンズアレイ297が本発明の「結像光学系」として機能している。また、光量センサーSCが本発明の「光検出部」に相当している。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、トランジスターとして薄膜トランジスター2941を用いた場合について説明したが、トランジスターの種類はこれに限られず、上記式1の特性を満たすMOSトランジスター等を用いることもできる。
【0061】
また、上記実施形態では、複数の発光素子Eは2行千鳥で配置されていたが、発光素子Eの配置態様はこれに限られず、種々の変更が可能である。したがって、例えば、特開2009−113204号公報に記載のように、複数の発光素子Eをグループ化して1つの発光素子グループを構成し、さらに複数の発光素子グループを長手方向LGDに千鳥配列することもできる。
【0062】
また、上記第1実施形態では、ヘッド基板294上の全ての発光素子Eが、結像光学系に結像されて露光(潜像形成)に供する光を射出するとして説明した。しかしながら、露光に供する光を射出することのないダミー発光素子Eをヘッド基板294に設けておくこともできる。ただし、このような場合は、金属抵抗線MRで測定する温度にダミー発光素子E近傍の温度を反映させなくても良い。したがって、結像光学系に結像されて露光に供する光を射出する発光素子Eが形成された領域を素子形成領域AReと定めて、金属抵抗線MRの形成位置を決めれば良く、ダミー発光素子Eの位置にまで素子形成領域AReを拡張しなくても良い。
【0063】
また、上記第1実施形態では、1つの金属抵抗線MRでヘッド基板294の温度を測定していた。しかし、複数の金属抵抗線MRをヘッド基板294に配置して、これら金属抵抗線MRの個々の抵抗値の平均値等からヘッド基板294の温度を測定するように構成しても良い。
【0064】
また、上記第1実施形態では、金属抵抗線MRによって温度検出していたが、サーミスターや各種の温度センサー等その他の構成によって温度検出を行うように構成しても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、発光素子E毎に次数nを記憶するように構成していた。しかしながら、この次数nは原理的には「2」であるので、各発光素子Eに対して共通の次数「n」を用いてゲート電圧Vgを求めるように構成しても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、式9等で行なう1/n乗の計算の具体的方法については述べなかったが、これについても種々の方法が採用可能である。したがって、例えば、二次曲線との誤差が0.5%以下となるように領域毎に直線近似して、それぞれのエリアで係数乗算を行なうことで、1/n乗の計算を行なうことができ、簡単なロジック回路で計算回路を実現できる。
【0067】
また、上記実施形態では、工場出荷後の実使用中におけるゲート電圧Vgの算出方法について説明し、工場出荷前におけるゲート電圧Vgの設定方法については特に述べなかったが、これについても種々の方法が採用可能である。そこで、例えば、ゲート電圧Vgを3ポイント以上変えながら発光素子Eの光量Pを測定した結果から、ゲート電圧Vgを求めることもできる。つまり、これら光量測定値からテイラー微分法等を用いてパラメーターK、Vth、nを推定することができ、この推定値からゲート電圧Vgを求めれば良い。
【0068】
また、上述の有機EL素子以外に、LED(Light Emitting Diode)等の光源を、発光素子Eとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0069】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 294…基板、 2941…薄膜トランジスター、 Vg…ゲート電圧、 297…レンズアレイ、 E…発光素子、 400…ヘッド制御モジュール、 401…補正データ演算ユニット、 403…記憶ユニット、 405…温度測定ユニット、 MR…金属抵抗線、 SC…光量センサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を前記発光素子に供給するトランジスターと、
数式
P=K(Vg−Vth)n
P:前記発光素子の光量
K:係数
n:1より大きい次数
に基づいて求めた前記ゲート電圧Vgを前記トランジスターに印加して、前記発光素子の光量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記制御部は、前記係数Kおよび前記閾値電圧Vthを求めるパラメーター決定ユニットと、前記次数nを記憶する記憶ユニットと、を有し、前記パラメーター決定ユニットが求めた前記係数K、前記閾値電圧Vth、および前記記憶ユニットが記憶する前記次数nを用いて前記数式から前記ゲート電圧を算出する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記発光素子が配設された基板と、
前記基板の温度Tを測定する温度測定部と、
を備え、
前記パラメーター決定ユニットは、前記温度測定部の測定温度Tに基づいて前記係数Kおよび前記閾値電圧Vthを求める請求項2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
光を結像して被露光面に照射する結像光学系を備え、
前記発光素子は第1の方向に配設されて、前記結像光学系により結像される光を発光し、
前記温度測定部は、前記発光素子が配設された範囲を前記第1の方向に含み且つ当該範囲よりも前記第1の方向に広い領域に渡って前記基板に配設され、温度により抵抗が変化する抵抗部材の抵抗値から温度を求める請求項3に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
前記記憶ユニットは、基準温度での前記閾値電圧Vthの値、前記基準温度での前記係数Kの値、前記閾値電圧Vthの温度変化率dVth/dTおよび前記係数Kの温度変化率dK/dTを記憶しており、
前記パラメーター決定ユニットは、前記記憶部が記憶する前記基準温度での前記閾値電圧Vthの値、前記温度変化率dVth/dTおよび前記測定温度Tから前記閾値電圧Vthを求めるとともに、前記記憶部が記憶する前記基準温度での前記係数Kの値、前記温度変化率dK/dTと前記測定温度から前記係数Kを求める請求項3または4に記載の露光ヘッド。
【請求項6】
前記発光素子の光を検出する光検出部を備え、
前記パラメーター決定ユニットは、前記光検出部の検出光量に基づいて前記係数Kおよび前記閾値電圧Vthを求める請求項2に記載の露光ヘッド。
【請求項7】
前記発光素子の光を検出する光検出部を備え、
前記制御部は、前記係数K、前記閾値電圧Vthおよび前記次数nを記憶する記憶ユニットを有し、前記記憶ユニットが記憶する前記係数K、前記閾値電圧Vth、前記次数nおよび前記光検出部の検出結果を用いて前記数式から前記ゲート電圧を算出する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項8】
前記トランジスターは薄膜トランジスターである請求項1ないし7のいずれか一項に記載の露光ヘッド。
【請求項9】
印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を発生するトランジスターおよび前記トランジスターから前記電流の供給を受けて発光する発光素子を有する露光ヘッドと、
数式
P=K(Vg−Vth)n
P:前記発光素子の光量
K:係数
n:1より大きい次数
に基づいて求めた前記ゲート電圧Vgを前記トランジスターに印加して、前記発光素子の光量を制御する制御部と、
前記発光素子が発光する光により潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像を現像する現像部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
発光素子と、
印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を前記発光素子に供給するトランジスターと、
数式
P=K(Vg−Vth)n
P:前記発光素子の光量
K:係数
n:1より大きい次数
に基づいて求めた前記ゲート電圧Vgを前記トランジスターに印加して、前記発光素子の光量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記制御部は、前記係数Kおよび前記閾値電圧Vthを求めるパラメーター決定ユニットと、前記次数nを記憶する記憶ユニットと、を有し、前記パラメーター決定ユニットが求めた前記係数K、前記閾値電圧Vth、および前記記憶ユニットが記憶する前記次数nを用いて前記数式から前記ゲート電圧を算出する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記発光素子が配設された基板と、
前記基板の温度Tを測定する温度測定部と、
を備え、
前記パラメーター決定ユニットは、前記温度測定部の測定温度Tに基づいて前記係数Kおよび前記閾値電圧Vthを求める請求項2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
光を結像して被露光面に照射する結像光学系を備え、
前記発光素子は第1の方向に配設されて、前記結像光学系により結像される光を発光し、
前記温度測定部は、前記発光素子が配設された範囲を前記第1の方向に含み且つ当該範囲よりも前記第1の方向に広い領域に渡って前記基板に配設され、温度により抵抗が変化する抵抗部材の抵抗値から温度を求める請求項3に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
前記記憶ユニットは、基準温度での前記閾値電圧Vthの値、前記基準温度での前記係数Kの値、前記閾値電圧Vthの温度変化率dVth/dTおよび前記係数Kの温度変化率dK/dTを記憶しており、
前記パラメーター決定ユニットは、前記記憶部が記憶する前記基準温度での前記閾値電圧Vthの値、前記温度変化率dVth/dTおよび前記測定温度Tから前記閾値電圧Vthを求めるとともに、前記記憶部が記憶する前記基準温度での前記係数Kの値、前記温度変化率dK/dTと前記測定温度から前記係数Kを求める請求項3または4に記載の露光ヘッド。
【請求項6】
前記発光素子の光を検出する光検出部を備え、
前記パラメーター決定ユニットは、前記光検出部の検出光量に基づいて前記係数Kおよび前記閾値電圧Vthを求める請求項2に記載の露光ヘッド。
【請求項7】
前記発光素子の光を検出する光検出部を備え、
前記制御部は、前記係数K、前記閾値電圧Vthおよび前記次数nを記憶する記憶ユニットを有し、前記記憶ユニットが記憶する前記係数K、前記閾値電圧Vth、前記次数nおよび前記光検出部の検出結果を用いて前記数式から前記ゲート電圧を算出する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項8】
前記トランジスターは薄膜トランジスターである請求項1ないし7のいずれか一項に記載の露光ヘッド。
【請求項9】
印加されたゲート電圧Vgおよび閾値電圧Vthに応じた電流を発生するトランジスターおよび前記トランジスターから前記電流の供給を受けて発光する発光素子を有する露光ヘッドと、
数式
P=K(Vg−Vth)n
P:前記発光素子の光量
K:係数
n:1より大きい次数
に基づいて求めた前記ゲート電圧Vgを前記トランジスターに印加して、前記発光素子の光量を制御する制御部と、
前記発光素子が発光する光により潜像が形成される潜像担持体と、
前記潜像を現像する現像部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−11612(P2012−11612A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148617(P2010−148617)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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