説明

露光方法および露光装置

【課題】短時間で効率よく各着色層を形成でき、低コストで高品質なカラーフィルタ基板を製造することができる露光方法および露光装置を提供する。
【解決手段】感光剤Paが塗布されたガラス基板Wを基板ステージ20に載置し、感光剤Paが厚さの異なる3つのレジスト層R,G,Bを形成するように、ガラス基板Wに照射されるエネルギーを変えながらマスクMを介してガラス基板Wを露光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光方法および露光装置に関し、より詳細には、カラー液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタ基板の露光方法および露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタ基板のR、G、B着色層を形成する方法としては、ガラス基板上の膜を染料で染める従来の染色法に代わり、顔料を用いる顔料法が採用されている。現在では、ガラス基板上にブラックマトリックス(BM)を形成した後、R(赤)、G(緑)、B(青)の顔料分散レジストを塗布し、フォトリソグラフィ法により着色層を形成する顔料分散法が一般的である。
【0003】
また、顔料法としては、基板の透明導電層上に感光性塗膜を形成し、4段階の光透過率を有するマスクを介して露光した後、現像、電着塗装を色ごとに行なう電着法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−53010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、顔料分散法による着色層の形成は、図9に示すように、BM層が形成されたガラス基板上に顔料分散レジストを塗布した後、パターンが形成されたマスクを介して露光し、現像する工程をR、G、Bの各層ごとに順次行う必要がある。このため、R、G、Bの各層それぞれに対応した、3枚の高価な専用マスク、3台の露光装置(同機種)が必要となり、製造コストが嵩むという問題があった。また、完成までの工程数が多く、ガラス基板は、R、G、B層を形成するごとに専用の露光装置に搭載されるので、装置ごとに再現性のある誤差を持って露光され、形成されるパターンの精度が低下する可能性がある。
【0005】
また、特許文献1に記載の電着法によれば、4段階の光透過率を有するマスクを介して露光するため、露光工程は1回で済むものの、その後、光透過率が異なるパターンごとに専用の現像液を用いて現像し、更に各色の着色塗料を入れた電着浴で電着塗装する工程を、色ごとに繰り返して行なわなければならず、工程数が多くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、短時間で効率よく各着色層を形成でき、低コストで高品質なカラーフィルタ基板を製造することができる露光方法および露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の方法及び装置により達成される。
(1) 感光剤が塗布されたガラス基板を用意する工程と、
前記感光剤が特性の異なる少なくとも3つのレジスト層を形成するように、前記ガラス基板に照射されるエネルギーを変えながらマスクを介して前記ガラス基板を露光する工程と、
を備えることを特徴とする露光方法。
(2) 前記感光剤は、前記レジスト層の厚さによって透過する光の波長を制限する特性を有することを特徴とする(1)に記載の露光方法。
(3) 前記感光剤は、一定の膜厚で、前記照射されたエネルギーによって透過する光の波長を制限する特性を有することを特徴とする(1)に記載の露光方法。
(4) 前記マスクに描画されるパターンは、前記各レジスト層の間隔に対応した間隔を有しており、
前記露光工程は、前記特性の異なる少なくとも3つのレジスト層を形成するように、前記マスクと前記ガラス基板との相対的なステップ移動を伴って露光時間を変えながら前記マスクを介して前記ガラス基板を露光することを特徴とする(2)又は(3)に記載の露光方法。
(5) 前記マスクに描画されるパターンは、少なくとも光透過率が3段階に異なることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の露光方法。
(6) 前記マスクに描画されるパターンの材料は、波長干渉フィルタの特性を有する材料であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の露光方法。
(7) 前記露光工程に使用される照明光学系は、露光光の波長をフィルタリングする機能を有することを特徴とする(6)に記載の露光方法。
(8) (1)〜(7)に記載の露光方法を備えたことを特徴とする露光装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の露光方法および露光装置によれば、感光剤が塗布されたガラス基板に対して、感光剤が特性の異なる少なくとも3つのレジスト層を形成するように、ガラス基板に照射されるエネルギーを変えながらマスクを介してガラス基板を露光する。これにより、レジスト層の特性により各着色層を形成でき、レジストの塗布や現像処理が一回で済み、工程数が低減されて短時間で効率よく複数の着色層を形成することができる。
【0009】
また、上記露光工程は、一枚のマスクで単一の露光装置によって行なうことができ、複数の露光装置を用いて露光する際の機差による誤差や、ガラス基板を各露光装置に取り付ける際の取り付け誤差が低減され、低コストで高品質なカラーフィルタ基板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る露光方法及び該露光方法を実現するのに好適な露光装置の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
先ず、本発明の各実施形態において使用される露光装置について説明する。図1は、大型のカラーフィルタ用ガラス基板(例えば、対角長が500mm以上)上にマスクの転写パターンを分割して近接露光するステップ式近接露光装置PEを示すものであり、露光パターンを有するマスクMをx、y、θ方向に移動可能に保持するマスクステージ10と、被露光材としてのガラス基板Wをx、y、z方向に移動可能に保持する基板ステージ20と、パターン露光用の光をマスクMを介して基板Wに照射する照明光学系40と、から主に構成されている。
【0012】
なお、カラーフィルタ用ガラス基板W(以下、「基板W」或は「カラーフィルタ基板W」と称する。)は、マスクMに対向配置されており、このマスクMに描かれた転写パターンを露光転写すべく表面(マスクMの対向面側)に感光剤が塗布されている。感光剤は、現像後のレジスト層の厚さによって透過する光の波長を制限する特性を有する。即ち、レジスト層の厚さを調整することにより、透過する光の色(例えば、R,G,B)を制御することが可能となる。
【0013】
光の波長λとレジスト層の厚さdとの関係は、光が強め合って明るくなる場合には、次の関係式が成立する。
2nd=(2m+1)λ/2 (m=0,1,2,・・・)
光の波長λは、赤(R)が620nm、緑(G)が530nm、青(B)が485nmであるので、各レジスト層の厚さ(d)は、感光剤の屈折率nによって算出される。
【0014】
照明光学系40は、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ41と、この高圧水銀ランプ41から照射された光を集光する凹面鏡42と、この凹面鏡42の焦点近傍に切替え自在に配置された二種類のオプチカルインテグレータ43と、光路の向きを変えるための平面ミラー45,46及び球面ミラー47と、この平面ミラー46とオプチカルインテグレータ43との間に配置されて照射光路を開閉制御する露光制御用シャッター44と、露光制御用シャッター44の下流側に配設されて照射された光の波長をフィルタリングする干渉フィルタ48と、を備える。
【0015】
干渉フィルタ48は、全波長を透過するフィルタf1と、波長の異なる光を選択的に透過させるフィルタf2,f3,f4を備えており、フィルタf2は波長365nmのi線のみを、フィルタf3は波長404.7nmのh線のみ、フィルタf4は波長436nmのg線のみをそれぞれ透過させる。
【0016】
そして、照明光学系40では、露光時に露光制御用シャッター44が開制御されると、高圧水銀ランプ41から照射された光が、図1に示す光路Lを経て、マスクステージ10に保持されるマスクM、さらには基板ステージ20に保持される基板Wの表面に対して垂直に、パターン露光用の平行光として照射される。これにより、マスクMの転写パターンが基板W上に露光転写される。
【0017】
マスクステージ10は、中央部に矩形形状の開口11aが形成されるマスクステージベース11と、マスクステージベース11の開口11aにx軸,y軸,θ方向に移動可能に装着され、マスクMを保持するマスク保持枠12と、マスクステージベース11の上面に設けられ、マスク保持枠12をx軸,y軸,θ方向に移動させるマスク位置調整機構13とを備える。
【0018】
マスクステージベース11は、基板ステージ側の装置ベース50上に立設される複数の支柱51に支持されており、マスクステージベース11と支柱51との間に設けられたz軸粗動機構52(図2参照)によりマスクステージベース11は装置ベース50に対して昇降可能である。
【0019】
マスク保持枠12には、マスクMの転写パターンが描かれていない周縁部を吸着するための図示しない複数の吸引ノズルが下面に開設されており、図示しない真空吸着機構によってマスクMを着脱自在に保持する。
【0020】
マスク位置調整機構13は、マスク保持枠12を駆動する各種シリンダ13x、13x、13y等のアクチュエータと、マスクステージベース11とマスク保持枠12との間に設けられた図示しないガイド機構等により、マスク保持枠12をx軸,y軸,θ方向に移動させる。
【0021】
また、マスクステージ10は、マスクMと基板Wとの対向面間の所定のギャップを測定する複数のギャップセンサ17(本実施形態では、8個)と、マスクM側の図示しないアライメントマークと基板W側の図示しないアライメントマークとを撮像して、マスクMと基板Wとの平面ずれ量を検出する光学検出系である複数のアライメントカメラ18(本実施形態では、4個)と、マスクMを必要に応じて遮蔽するマスキングアパーチャ19と、をさらに備える。なお、ギャップセンサ17とアライメントカメラ18は、マスク保持枠12の辺部に沿って駆動可能に配置されてもよい。また、図では、マスキングアパーチャ19は、開口11aのx方向の両端部のみ示されているが、y方向の両端部にも設けられている。
【0022】
基板ステージ20は、基板Wを保持する基板保持部21と、基板保持部21を装置ベース50に対してx、y、z方向に移動する基板移動機構22と、を備える。
【0023】
基板保持部21は、上面に基板Wを吸引するための図示しない複数の吸引ノズルが開設されており、図示しない真空吸着機構によって基板Wを着脱自在に保持する。基板移動機構22は、基板保持部21の下方に、y軸テーブル23、y軸送り機構24、x軸テーブル25、x軸送り機構26、及びz−チルト調整機構27を備える。
【0024】
y軸送り機構24は、図2に示すように、リニアガイド28と送り駆動機構29とを備えて構成され、y軸テーブル23の裏面に取り付けられたスライダ30が、転動体(図示せず)を介して装置ベース50上に延びる2本の案内レール31に跨架されると共に、モータ32とボールねじ装置33とによってy軸テーブル23を案内レール31に沿って駆動する。
【0025】
なお、x軸送り機構26もy軸送り機構24と同様の構成を有し、x軸テーブル25をy軸テーブル23に対してx方向に駆動する。また、z−チルト調整機構27は、くさび状の移動体34,35と送り駆動機構36とを組み合わせてなる可動くさび機構をx方向の一端側に1台、他端側に2台配置することで構成される。なお、送り駆動機構29,36は、モータとボールねじ装置とを組み合わせた構成であってもよく、固定子と可動子とを有するリニアモータであってもよい。また、z-チルト調整機構27の設置数は任意である。
【0026】
これにより、基板移動機構22は、基板保持部21をx方向及びy方向に送り駆動するとともに、マスクMと基板Wとの間のギャップを微調整するように、基板保持部21をz軸方向に微動且つチルト調整する。
【0027】
基板保持部21のx方向側部とy方向側部にはそれぞれバーミラー61,62が取り付けられ、また、装置ベース50のy方向端部とx方向端部には、計3台のレーザー干渉計63,64,65が設けられている。これにより、レーザー干渉計63,64,65からレーザー光をバーミラー61,62に照射し、バーミラー61,62により反射されたレーザー光を受光して、レーザー光とバーミラー61,62により反射されたレーザー光との干渉を測定し、基板ステージの位置を検出する。
【0028】
制御装置70は、図3に示すように、アライメントカメラ18、ギャップセンサ17、レーザー干渉計63,64,65からの検出信号を検出値として読み込むためのA/D変換機能を有する入力インターフェース回路70aと、演算処理装置70bと、ROM,RAM等の記憶装置70cと、演算処理装置70bで得られた制御信号を、マスク位置調整機構13、基板移動機構22、z軸粗動機構52、露光制御用シャッター44、干渉フィルタ48の各駆動回路に出力する出力インターフェース回路70dとを備えている。
【0029】
制御装置70は、照明光学系40のシャッター開制御、基板移動機構22の送り制御、ステップ送り誤差量の演算、アライメント調整時の補正量の演算、ギャップ調整時のz−チルト調整機構27の駆動制御、本装置に組み込まれた殆どのアクチュエータの駆動及び所定の演算処理をマイクロコンピュータやシーケンサ等を用いたシーケンス制御を基本として実行する。
【0030】
上記構成のステップ式近接露光装置PEでは、マスク保持枠12にマスクMが保持され、基板保持部21に基板Wが保持された状態で、制御装置70がアライメントカメラ18、ギャップセンサ17、レーザー干渉計63,64,65の検出信号に基づき、マスク位置調整機構13を駆動制御して基板保持部21に対するマスクMの初期位置を合わせ、z軸粗動機構52、z−チルト調整機構27を駆動制御してマスクMと基板Wとの対向面間を所定のギャップに調整して、互いに近接配置する。
【0031】
そして、露光制御用シャッター44を所定の時間だけ開くと、照明光学系40からのパターン露光用の光が、マスクMを介して基板Wに照射される。これにより、マスクMの転写パターンが基板Wに露光転写される。
【0032】
ここで、本発明のカラーフィルタの製造方法は、図4に示すように、ブラックマトリクス層BMが形成された基板Wに感光剤Paを均一に塗布(S1)し、上記したステップ式近接露光装置PEの基板ステージ20に基板Wを搭載した後、パターン露光用の光をマスクMを介して照射して感光剤Paを露光し(S2)、更に現像して(S3)、複数の着色層(R,G,B着色層)を形成するものである。ここで、本発明の第1及び第2実施形態の基板Wに塗布される感光剤Paは、上述したようにレジスト層の厚さによって透過する光の波長を制限する特性を有するので、露光する際にガラス基板に照射されるエネルギーを変えることでレジスト層の厚さを変化させ、各着色層を形成する。以下、具体的な露光方法の各実施形態について説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図5は、第1実施形態における露光方法を模式的に示した図である。先ず、ブラックマトリクス層BMが形成された上にポジ型の感光剤Paが均一の厚さで塗布された基板Wを用意し、この基板Wを基板ステージ20の基板保持部21上に載置する(図5(a)参照)。なお、ブラックマトリクス層BMは、フォトリソグラフィ法等により所定の間隔で形成されている。
【0034】
その後、図5(b)に示すように、マスクステージ10のマスク保持枠12に装着されたマスクMに対して基板Wをアライメント調整、ギャップ調整し、露光制御用シャッター44を開くことで、照明光学系40からのパターン露光用の光が、マスクMを介して基板Wに照射され、マスクMの転写パターンが基板Wに露光転写される。
【0035】
本実施形態で使用されるマスクMの下面には、クロム等によりパターンが描画されており、ブラックマトリクス層BMのパターンピッチP1(図5(e)参照)の整数倍のパターンピッチP(本実施形態では、3×P1)で露光光を透過させる窓部80が形成されている。なお、図5の奥行き方向の窓部80も、カラーフィルタの配列に応じて、パターンピッチPで形成されている。
【0036】
図5(b)では、窓部80と対向する基板Wの位置に、一定の照度Lを持った露光光が露光時間t1の間照射されるので、エネルギー量W1(=L×t1)が基板Wに照射され、現像後に厚さH1分だけのレジストが残る。
【0037】
次いで、図5(c)に示すように、基板移動機構22によりマスクMと基板Wとを相対的にパターンピッチP1だけ所定方向に移動させた後、露光制御用シャッター44をT1より短い露光時間t2だけ露光する。これにより、エネルギー量W2(=L×t2)が基板Wに照射され、現像後に厚さH2分だけのレジストが残る。
【0038】
同様に、図5(d)に示すように、基板移動機構22により更にマスクMと基板Wとを相対的にパターンピッチP1だけ所定方向に移動させて、露光制御用シャッター44をt2より短い露光時間t3だけ露光する。これにより、エネルギー量W3(=L×t3)が基板Wに照射され、現像後に厚さH3分だけのレジストが残る。
【0039】
そして、図5(e)に示すように、マスクMと基板Wとを相対的にステップ移動させ、露光時間を変えながら3回の露光を行った基板Wは、現像を行って露光部分の感光剤Paを除去することにより、未露光部分である第1〜第3レジスト層B,G,Rが残り、第1レジスト層Bは青色に帯びるB着色層を、第2レジスト層Gは緑色に帯びるG着色層を、第3レジスト層Rは赤色に帯びるR着色層を形成する。また、ブラックマトリクス層BM上のフォトスペーサ形成部分は多重に露光されているため、現像後にレジストは残らない。なお、マスクMと基板Wとの相対的なステップ移動は、マスク位置調整機構13によって行われてもよい。
【0040】
したがって、本実施形態による露光方法及び露光装置によれば、感光剤Paが塗布されたガラス基板を基板ステージ20に載置すると共に、各レジスト層B,G,Rの間隔に対応した間隔の窓部80を設けたパターンで描画されたマスクMを使用し、所定のパターンピッチP1でマスクMとガラス基板Wとの相対的なステップ移動を行ないながら、露光時間t1、t2、t3でマスクMを介してガラス基板Wを露光するので、厚さの異なる第1〜第3レジスト層B,G,Rが形成され、R,G,B着色層を構成する。即ち、露光時間によって基板Wに照射するエネルギー量を制御して、厚さの異なるレジスト層B、G,Rを形成する。これにより、レジスト層の厚さにより各着色層を形成でき、レジストの塗布や現像処理が一回で済み、工程数が低減されて短時間で効率よく複数の着色層を形成することができる。
【0041】
また、上記露光工程は、一枚のマスクで単一の露光装置によって行なうことができ、従来のような複数の露光装置を用いて露光する際の機差による誤差や、ガラス基板を各露光装置に取り付ける際の取り付け誤差が低減され、低コストで高品質なカラーフィルタ基板を製造することができる。
【0042】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態における露光方法を模式的に示した図である。第1実施形態と同様、先ず、ブラックマトリクス層BMが形成された上にポジ型の感光剤Paが均一の厚さで塗布された基板Wを用意し、この基板Wを基板ステージ20の基板保持部21上に載置する(図6(a)参照)。
【0043】
その後、図6(b)に示すように、パターンごとに光の透過率が異なるマスクMを使用し、マスクステージ10のマスク保持枠12に装着されたマスクMに対して基板Wをアライメント調整、ギャップ調整し、露光制御用シャッター44を開くことで、パターン露光用の光がマスクMを介して基板Wに照射され、マスクMの転写パターンが基板Wに露光転写される。
【0044】
具体的に、本実施形態のマスクMは、B着色層を形成するための第1パターン84の透過率を80%、G着色層を形成するための第2パターン85の透過率を50%、R着色層を形成するための第3パターン86の透過率を10%としている。上記パターン以外の部分の透過率は100%である。
【0045】
これにより、第1パターン84を透過した露光光は、照明光学系40から照射されるエネルギーの80%がガラス基板Wに照射されて、現像後に厚さH1分だけのレジストが残る。また、第2パターン85を透過した露光光は、照明光学系40から照射されるエネルギーの50%がガラス基板Wに照射されて、現像後に厚さH2分だけのレジストが残る。更に、第3パターン86を透過した露光光は、照明光学系40から照射されるエネルギーの10%がガラス基板Wに照射されて、現像後に厚さH3分だけのレジストが残る。このように、パターンごとに異なるエネルギーの露光光が照射された基板Wを現像して露光部分の感光剤Paを除去すると、未露光部分である第1〜第3レジスト層B、G、Rが残り、カラーフィルタ基板WのR,G,B着色層が形成される(図6(c)参照)。
【0046】
したがって、本実施形態による露光方法及び露光装置によれば、感光剤Paが塗布されたガラス基板を基板ステージ20に載置すると共に、光の透過率が異なるパターンが描画されたマスクMをマスクステージ10に装着し、1回の露光でR,G,B着色層が形成される。従って、第1実施形態の効果に加え、パターンズレが生じる余地が全くなく、より高精度のカラーフィルタ基板Wの製作が可能となる。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0047】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態における露光方法を模式的に示した図である。本発明の第3実施形態の基板Wに塗布される感光剤Pa´は、一定の膜厚で、照射されるエネルギーによって透過する光の波長を制限する特性を有しており、露光する際にガラス基板に照射されるエネルギーを変えることでレジスト層の厚さを変化させ、各着色層を形成する。本実施形態では、先ず、ブラックマトリクス層BMが形成された上にネガ型の感光剤Pa´が均一の厚さで塗布された基板Wを用意し、この基板Wを基板ステージ20の基板保持部21上に載置する(図7(a)参照)。
【0048】
その後、図7(b)に示すように、マスクステージ10のマスク保持枠12に装着されたマスクMに対して基板Wをアライメント調整、ギャップ調整し、干渉フィルタ48を制御しながら露光制御用シャッター44を開くことで、特定波長の露光光が、マスクMを介して基板Wに照射され、マスクMの転写パターンが基板Wに露光転写される。
【0049】
本実施形態に使用されるマスクMに描画されるパターンの材料は、波長干渉フィルタの特性を有しており、パターンごとに透過可能な光の波長が異なる。具体的には、R着色層を形成するための第1パターン81は波長365nmのi線のみを透過させ、G着色層を形成するための第2パターン82は波長404.7nmのh線のみを透過させ、B着色層を形成するための第3パターン83は波長436nmのg線のみを透過させる。
【0050】
具体的に、干渉フィルタ48を回転させて波長365nmのi線のみを透過させるフィルタf2を有効とした後、露光制御用シャッター44を所定時間だけ開いて、波長λ1の露光光(i線)を基板Wに照射する。i線は、マスクMの第1パターン81だけを透過してガラス基板Wに照射される。次いで、干渉フィルタ48を回転させて波長404.7nmのh線のみを透過させるフィルタf3を有効とした後、露光制御用シャッター44を所定時間だけ開いてh線を基板Wに照射する。h線は、マスクMの第2パターン82だけを透過してガラス基板Wに照射される。更に、干渉フィルタ48を回転させて波長436nmのg線のみを透過させるフィルタf4を有効とした後、露光制御用シャッター44を所定時間だけ開いてg線を基板Wに照射する。g線は、マスクMの第3パターン83だけを透過してガラス基板Wに照射される。
【0051】
これにより、強いエネルギーを有するi線が照射された感光剤Pa´は、露光により照射されるエネルギーによって赤色を帯びる特性を有する第3レジスト層Rを形成し、中間的なエネルギーを有するh線が照射された感光剤Pa´は、露光により照射されるエネルギーによって緑色を帯びる特性を有する第2レジスト層Gを形成し、更に弱いエネルギーを有するg線が照射された感光剤Pa´は、露光により照射されるエネルギーによって青色を帯びる特性を有する第1レジスト層Bを形成する。このように、パターンごとに異なるエネルギーの露光光が照射された基板Wを現像して未露光部分の感光剤Pa´を除去すると、露光部分である第1〜第3レジスト層B,G,Rが残り、カラーフィルタ基板WのR,G,B着色層が形成される(図7(c)参照)。なお、第1〜第3レジスト層R,G,Bを露光するためのi線、g線、h線は、露光光源に基づくエネルギー分布によって適宜選択される。
【0052】
したがって、本実施形態による露光方法及び露光装置によれば、感光剤Pa´が塗布されたガラス基板Wを基板ステージ20に載置すると共に、それぞれ透過させる光の波長が異なるパターンが描画されたマスクMを使用し、干渉フィルタ48を回転させて照射する光の波長を変更しながら3回露光する。これにより、基板W及びマスクMを移動させることなく基板Wを露光して照射されたエネルギーによって特性の異なる第1〜第3レジスト層B,G,Rが形成され、R,G,B着色層を形成することができる。従って、第1実施形態の効果に加え、基板W又はマスクMの移動に伴う位置決め誤差が生じないため、より高精度のカラーフィルタ基板Wの製作が可能となる。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0053】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
上記の各実施形態において、露光装置は、近接露光装置として説明したが、これに限定されず、ミラープロジェクション式露光装置、レンズ投影式露光装置であってもよい。また、逐次式、走査式(スキャン)などの露光方法に拘わらず、実現可能である。
【0054】
また、基板Wに塗布される感光剤は、いずれの実施形態においてもネガ型・ポジ型が適宜選択可能である。
さらに、第1及び第2実施形態では、レジスト層の厚さによって透過する光の波長を制限する特性を有する感光剤が、第3実施形態では、一定の膜厚で、照射されたエネルギーによって透過する光の波長を制限する特性を有する感光剤が使用されているが、各実施形態においていずれの特性を有する感光剤が使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るステップ式近接露光装置を説明するための斜視図である。
【図2】図1に示すステップ式近接露光装置の正面図である。
【図3】本発明に係る近接露光装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る液晶ディスプレイパネル用基板の製造手順を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の露光方法を模式的に説明するための図であり、(a)はガラス基板を基板ステージに載置する状態を、(b)は第1レジスト層が露光される状態を、(c)は第2レジスト層が露光される状態を、(d)は第3レジスト層が露光される状態を、(e)は各レジスト層を露光した基板が現像された状態を示す。
【図6】第2実施形態の露光方法を模式的に説明するための図であり、(a)はガラス基板を基板ステージに載置する状態を、(b)はパターンごとに光の透過率が異なるマスクを介して基板を露光する状態を、(c)は各レジスト層を露光した基板が現像された状態を示す。
【図7】第3実施形態の露光方法を模式的に説明するための図であり、(a)はガラス基板を基板ステージに載置する状態を、(b)はパターンごとに透過光の波長が異なるマスクを介して基板を露光する状態を、(c)は各レジスト層を露光した基板が現像された状態を示す。
【図8】従来の液晶ディスプレイパネル用基板の製造手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
10 マスクステージ
20 基板ステージ
40 照明光学系
48 干渉フィルタ
M マスク
P マスクのパターンピッチ(レジスト層の間隔に対応した間隔)
P1 パターンピッチ
Pa 感光剤
PE ステップ式近接露光装置
R レジスト層
G レジスト層
B レジスト層
t1,t2,t3 シャッター開放時間(露光時間)
W 基板(ガラス基板、カラーフィルタ基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光剤が塗布されたガラス基板を用意する工程と、
前記感光剤が特性の異なる少なくとも3つのレジスト層を形成するように、前記ガラス基板に照射されるエネルギーを変えながらマスクを介して前記ガラス基板を露光する工程と、
を備えることを特徴とする露光方法。
【請求項2】
前記感光剤は、前記レジスト層の厚さによって透過する光の波長を制限する特性を有することを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項3】
前記感光剤は、一定の膜厚で、前記照射されたエネルギーによって透過する光の波長を制限する特性を有することを特徴とする請求項1に記載の露光方法。
【請求項4】
前記マスクに描画されるパターンは、前記各レジスト層の間隔に対応した間隔を有しており、
前記露光工程は、前記特性の異なる少なくとも3つのレジスト層を形成するように、前記マスクと前記ガラス基板との相対的なステップ移動を伴って露光時間を変えながら前記マスクを介して前記ガラス基板を露光することを特徴とする請求項2又は3に記載の露光方法。
【請求項5】
前記マスクに描画されるパターンは、少なくとも光透過率が3段階に異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の露光方法。
【請求項6】
前記マスクに描画されるパターンの材料は、波長干渉フィルタの特性を有する材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の露光方法。
【請求項7】
前記露光工程に使用される照明光学系は、露光光の波長をフィルタリングする機能を有することを特徴とする請求項6に記載の露光方法。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の露光方法を備えたことを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−139761(P2008−139761A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328179(P2006−328179)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】