説明

露光装置及び画像形成装置

【課題】第1の発光部の劣化により光量が低下しても露光量を維持することができる露光装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】露光ヘッド34は、主走査方向Xに沿って配置された複数の主露光光源用有機EL素子70と、複数の主露光光源用有機EL素子70と並列に配置された長尺状の副露光光源用有機EL素子72と、を備えている。主露光光源用有機EL素子70の光量はセンサ68で検出され、主露光光源用有機EL素子70の光量が低下しているときは副露光光源用有機EL素子72を発光させることにより露光ヘッド34の露光量が補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、感光体の周面に沿って透明なフレキシブル基板を湾曲させて配設し、フレキシブル基板上に形成された複数の有機EL(エレクトロルミネッセンス)発光部の光を感光体上の露光位置に集光させて露光する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−047012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、第1の発光部の劣化により光量が低下しても露光量を維持することができる露光装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係る露光装置は、潜像を保持する潜像保持体に向かって露光し、前記潜像保持体に形成された潜像が現像装置で現像される際に用いられる露光装置であって、前記潜像保持体の主走査方向に沿って配置された有機電界発光素子で構成され、前記潜像保持体に露光する第1の発光部と、前記主走査方向に沿って設けられ、前記第1の発光部とで前記潜像保持体に露光する露光量を補正する第2の発光部と、を有するものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の露光装置において、前記第2の発光部は、有機電界発光素子で構成されているものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の露光装置において、前記第1の発光部は、前記主走査方向に沿って複数配置されており、前記第2の発光部は、少なくとも1つ設けられ、各第2の発光部が複数の前記第1の発光部とで前記潜像保持体に露光する露光量を補正するものである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の露光装置において、前記第2の発光部は、複数の前記第1の発光部と並列に前記主走査方向に沿って配置された長尺状の1又は2以上の素子であるものである。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の露光装置において、前記第1の発光部の光量を検出する検出手段を備え、前記検出手段で検出された光量が低下した場合に不足分を補うように前記第2の発光部を発光させるものである。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の露光装置において、前記第2の発光部は、前記潜像保持体の電位が前記現像装置で現像されない電位の範囲内の光量で調整されており、前記第1の発光部の発光の際に前記第2の発光部が発光されるものである。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の露光装置において、前記第2の発光部の光量が一定で、前記潜像保持体を露光する光量が前記第1の発光部で調整されるものである。
【0012】
請求項8に記載の発明に係る画像形成装置は、潜像を保持する潜像保持体と、前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の露光装置と、前記潜像保持体に形成された潜像を現像剤により現像する現像装置と、を有するものである。
【0013】
請求項9に記載の発明に係る画像形成ユニットは、潜像を保持する潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電装置と、前記潜像保持体に形成された潜像を現像剤により現像する現像装置と、から選択される1つと、前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の露光装置と、を有し、画像形成装置に対し着脱可能であるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、第1の発光部の劣化により光量が低下しても、第2の発光部の発光により露光量を維持することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、第1の発光部と第2の発光部とを1つの基板で一体的に形成することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、1つの第2の発光部が複数の第1の発光部とで露光量を補正することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、複数の第1の発光部と第2の発光部とを一体的に形成し、1つの第2の発光部が複数の第1の発光部とで露光量を補正することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、第1の発光部の光量が低下しても、その光量の不足分を補うように第2の発光部を発光させることができる。
【0019】
請求項6、7に記載の発明によれば、露光量を補正するためのフィードバックを最小限に抑えることができる。
【0020】
請求項8、9に記載の発明によれば、潜像保持体を露光するときに、第1の発光部の劣化により光量が低下しても、第2の発光部の発光により露光量を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、第1実施形態に係る露光ヘッドを備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る露光ヘッドの構成を示す概略図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る露光ヘッドから発光される光が感光体ドラムに結像される状態を模式的に示した模式図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る露光ヘッドの構成を示す概略平面図である。
【図5】図5は、ボトムエミッション型の主露光光源用有機EL素子及び副露光光源用有機EL素子の構成を示す概略図である。
【図6】図6は、感光体ドラムの表面電位と露光ヘッドによる露光エネルギーとの関係の一例を示すグラフである。
【図7】図7は、感光体ドラムの表面電位と露光ヘッドによる露光エネルギーとの関係の他の例を示すグラフである。
【図8】図8は、第2実施形態に係る露光ヘッドの構成を示す概略平面図である。
【図9】図9は、第3実施形態に係る露光ヘッドの構成を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0023】
(画像形成装置10の全体構成)
まず、第1実施形態に係る露光ヘッドを備えた画像形成装置10の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す概略図である。
【0024】
本実施形態に係る画像形成装置10は、図1に示されるように、各構成部品を収容する装置筐体11と、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pにトナー画像を形成する画像形成部14と、記録媒体収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成部14によって形成されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置18と、定着装置18によってトナー画像が定着された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部(図示省略)と、を備えている。
【0025】
記録媒体収容部12、画像形成部14、搬送部16及び定着装置18は、装置筐体11に収容されている。
【0026】
画像形成部14は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kと、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kで形成されたトナー画像が転写される中間転写体の一例としての中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する一次転写部材の一例としての一次転写ロール26と、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を記録媒体Pに転写する二次転写部材の一例としての二次転写ロール28と、を備えている。
【0027】
画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kは、潜像を保持する潜像保持体の一例として、一方向(図1において時計回り方向)へ回転する感光体ドラム30をそれぞれ有している。
【0028】
各感光体ドラム30の周囲には、感光体ドラム30の回転方向上流側から順に、感光体ドラム30の表面を帯電させる帯電装置32と、帯電した感光体ドラム30の表面を露光して感光体ドラム30の表面に静電潜像を形成する露光装置の一例としての露光ヘッド34と、感光体ドラム30の表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置36と、トナー画像が中間転写ベルト24に転写された後の感光体ドラム30の表面に残留しているトナーを除去する除去装置40と、が設けられている。
【0029】
感光体ドラム30、帯電装置32、露光ヘッド34、現像装置36及び除去装置40は、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kに収容されてユニット化されている。画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kは、装置筐体11に着脱可能に設けられたプロセスカートリッジとされており、交換可能となっている。
【0030】
なお、感光体ドラム30、帯電装置32、露光ヘッド34、現像装置36及び除去装置40の全てがユニット化される必要は無い。例えば、感光体ドラム30、帯電装置32及び現像装置36の少なくとも1つと、露光ヘッド34とが、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kに収容されてユニット化されていても良い。
【0031】
中間転写ベルト24は、二次転写ロール28に対向する対向ロール42、駆動ロール44及び複数の支持ロール46によって支持され、感光体ドラム30と接触しながら一方向(図1において反時計回り方向)へ循環移動するようになっている。
【0032】
一次転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで、感光体ドラム30に対向している。一次転写ロール26と感光体ドラム30との間には、感光体ドラム30上のトナー画像が中間転写ベルト24に一次転写される一次転写位置が形成される。この一次転写位置は、現像装置36と除去装置40との間に設けられている。この一次転写位置において、一次転写ロール26が感光体ドラム30の表面のトナー画像を圧接力と静電力により中間転写ベルト24に転写するようになっている。
【0033】
二次転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで対向ロール42と対向している。二次転写ロール28と対向ロール42との間には、中間転写ベルト24上のトナー画像が記録媒体Pに二次転写される二次転写位置が形成される。この二次転写位置において、二次転写ロール28が中間転写ベルト24の表面のトナー画像を圧接力と静電力により記録媒体Pに転写するようになっている。
【0034】
搬送部16は、記録媒体収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール50と、送出ロール50によって送り出された記録媒体Pを二次転写位置へ搬送する複数の搬送ロール対52と、を備えている。
【0035】
定着装置18は、二次転写位置より搬送方向下流側に配置されており、二次転写位置で転写されたトナー画像を記録媒体Pへ定着させる。
【0036】
二次転写位置より搬送方向下流側であって、定着装置18よりも搬送方向上流側には、定着装置18に記録媒体Pを搬送する搬送部材の一例としての搬送ベルト54が配置されている。
【0037】
以上の構成により、本実施形態に係る画像形成装置10では、まず記録媒体収容部12から送り出された記録媒体Pが、搬送ロール対52によって二次転写位置へ送り込まれる。
【0038】
一方、中間転写ベルト24には、画像形成ユニット22C、22M、22Y、22Kで形成された各色のトナー画像が重ねられて、カラー画像が形成される。二次転写位置へ送り込まれた記録媒体Pは、中間転写ベルト24上に形成されたカラー画像が転写される。
【0039】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置18へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置18により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、記録媒体排出部(図示省略)へ排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0040】
なお、画像形成装置の構成としては、上記の構成に限られず、例えば、中間転写体を有さない直接転写型の画像形成装置でもよく、種々の構成とすることが可能である。
【0041】
(露光ヘッド34の構成)
次に、露光ヘッド34の構成を説明する。図2、図3及び図4は、第1実施形態に係る露光ヘッド34の構成を示す概略図である。
【0042】
各露光ヘッド34は、図2及び図3に示されるように、感光体ドラム30の軸方向に沿った主走査方向Xに長尺状に形成された基板60と、発光素子アレイの一例としての有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子アレイ62と、有機EL素子アレイ62により生成された光を集光し、被照射面たる感光体ドラム30の表面に結像する結像素子アレイの一例としてのセルフォックレンズアレイ64と、を備えている。
【0043】
基板60は、絶縁性を有する基板で形成され、例えば、ガラス基板や樹脂基板で構成されている。
【0044】
図4に示されるように、有機EL素子アレイ62は、主走査方向Xに沿って配置された第1の発光部の一例としての複数の主露光光源用有機EL素子70と、複数の主露光光源用有機EL素子70の副走査方向Y(主走査方向Xと直交する方向)へ一列に配置された第2の発光部の一例としての副露光光源用有機EL素子72と、を備えている。なお、有機EL素子は、有機電界発光素子の一例である。
【0045】
主露光光源用有機EL素子70は、画素数(ドット数)に応じて基板60に複数配列されている。主露光光源用有機EL素子70は、平面視にて略正方形状に形成されており、主走査方向Xに沿ってほぼ等間隔で配置されている。副露光光源用有機EL素子72は、基板60に主走査方向Xに沿って複数の主露光光源用有機EL素子70と並列に配置された長尺状(帯状)の素子である。副露光光源用有機EL素子72は、主走査方向Xに沿った辺が長くされた矩形状に形成されている。本実施形態では1本の副露光光源用有機EL素子72で構成されている。
【0046】
主露光光源用有機EL素子70から発光される光量は、帯電装置32(図1参照)によって帯電された感光体ドラム30を露光して静電潜像を形成するための光量に設定されている。副露光光源用有機EL素子72は、主露光光源用有機EL素子70が劣化して光量が低下したときに主露光光源用有機EL素子70の光量を補うものであり、主露光光源用有機EL素子70の光量よりも小さい光量に調整されている。
【0047】
副露光光源用有機EL素子72は、主走査方向Xに沿って配置された複数の主露光光源用有機EL素子70の列とほぼ平行に配置されており、複数の主露光光源用有機EL素子70を1つの副露光光源用有機EL素子102で補正するように構成されている。
【0048】
図2及び図3に示されるように、基板60には、主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72を駆動する駆動回路の一例としてのドライバIC66が複数設けられている。ドライバIC66は、複数の主露光光源用有機EL素子70と副露光光源用有機EL素子72を個別に駆動するようになっている。
【0049】
セルフォックレンズアレイ64は、結像素子の一例としてのロッドレンズ64Aが複数配列されて構成されており、複数の主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72の光射出側に配置されている。
【0050】
セルフォックレンズアレイ64では、1ドットの主露光光源用有機EL素子70に対して複数のロッドレンズ64Aで正立等倍結像するように、各ロッドレンズ64Aが2次元状に配列されている。従って、各主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72からの光は、対応する複数のセルフォックレンズアレイ64を介して感光体ドラム30の表面に結像される。このように、主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72から発光される光によって、感光体ドラム30が露光されて静電潜像が形成される。
【0051】
また、露光ヘッド34には、主露光光源用有機EL素子70から発光される光量を検出する検出手段の一例としてのセンサ68が設けられている。センサ68から出力される検出信号はドライバIC66に入力され、ドライバIC66によって主露光光源用有機EL素子70の光量の低下に基づき、副露光光源用有機EL素子72から発光される光量が制御されるようになっている。
【0052】
図6には、露光ヘッド34の露光エネルギー(光量)と感光体ドラム30の表面電位との関係のグラフが示されている。このグラフに示されるように、主露光光源用有機EL素子70の劣化により主露光光源用有機EL素子70の露光エネルギーが低下したときは、露光時の感光体ドラム30の表面電位が所定の現像電位まで下がらない可能性がある。このため、本実施形態では、主露光光源用有機EL素子70の光量が低下しているときは、露光時の感光体ドラム30が所定の現像電位となるように副露光光源用有機EL素子72の発光が制御される。具体的には、センサ68で検出された主露光光源用有機EL素子70の光量に基づき、主露光光源用有機EL素子70の光量の低下分を補う(補足する)ように副露光光源用有機EL素子72を発光させ、露光時の感光体ドラム30を所定の現像電位とするような制御が行われる。
【0053】
なお、主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72に組み合わせる光学レンズとしては、セルフォックレンズアレイ64に限られず、シリンドリカルレンズを組み合わせても良い。また、個々の主露光光源用有機EL素子70上にマイクロレンズを接合しても良い。
【0054】
(主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72の構成)
次に、主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72の構成を説明する。
【0055】
主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72の構成としては、後述の発光層84から発生する光を基板60側から取り出すボトムエミッション型の有機EL素子と、発光層から発生する光を基板60とは反対側から取り出すトップエミッション型の有機EL素子とがある。本実施形態では、ボトムエミッション型の有機EL素子を用いた例について説明する。なお、露光ヘッド34は、ボトムエミッション型の有機EL素子に限定するものではなく、トップエミッション型の有機EL素子を用いてもよい。
【0056】
(有機EL素子の構成)
まず、主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72の構成を説明する。図5には、ボトムエミッション型の主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72の構成が示されている。なお、図5は、図4に示す露光ヘッド34の主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72の副走査方向Y(主走査方向Xと直交する方向)に沿った縦断面図である。
【0057】
図5に示されるように、主露光光源用有機EL素子70は、光透過性の基板60の表面に形成された陽極80Aと、陽極80Aの表面に形成された正孔注入層82Aと、正孔注入層82Aの表面に形成され発光領域となる発光層84Aと、発光層84Aの表面に形成され電子を注入する陰極86Aと、陰極86Aの表面に形成された反射層88Aと、を備えている。さらに、反射層88Aの表面には封止層90が形成されており、封止層90は、陽極80A、正孔注入層82A、発光層84A、陰極86A、反射層88Aの側部を囲むように形成されている。すなわち、主露光光源用有機EL素子70は、基板60上に陽極80A、正孔注入層82A、発光層84A、陰極86A、反射層88A、封止層90の順で積層された構成となっている。
【0058】
陽極80Aは、それぞれの主露光光源用有機EL素子70(図4参照)毎に分割して設けられており、発光領域に流れる電流が個別に制御される。陽極80Aの形状は、主露光光源用有機EL素子70の発光領域と対応するように矩形状に形成されている。
【0059】
陰極86Aは、複数の陽極80Aと対をなすように主走査方向Xに沿って帯状に延びており、主露光光源用有機EL素子70の全ての発光領域に対して共通に形成されている。
【0060】
一方、副露光光源用有機EL素子72は、基板60上に陽極80B、正孔注入層82B、発光層84B、陰極86B、反射層88B、封止層90の順で積層された構成である。陽極80B、正孔注入層82B、発光層84B、陰極86B、反射層88Bは、平面視にて主走査方向Xに沿って長尺矩形状に形成されている。
【0061】
本実施形態では、主露光光源用有機EL素子70と副露光光源用有機EL素子72における陽極80Aと陽極80B、正孔注入層82Aと正孔注入層82B、発光層84Aと発光層84B、陰極86Aと陰極86B、反射層88Aと反射層88Bは同じ材料で形成されている。以下、共通する部材を記載するときは、符号の後側のA、Bを省略する場合がある。
【0062】
陽極80は、光を透過する透過性を有しており、発光層84から発生する光を基板60側から取り出すことを許容する。陽極80には、例えば、SnO2、In2O3、ITO(Indium-Tin-Oxide)、IZO:Al(IZO:Indium-Zinc-Oxide)などの導電性金属酸化物が用いられる。なお、陽極80の材料は、上記に限られるものではない。また、陽極80の厚さは、例えば、100nmとされる。なお、陽極80の厚さは、これに限られるものではない。
【0063】
正孔注入層82には、陰極86と陽極80との間に電圧が印加されることにより、陽極80側から正孔が注入される。正孔注入層82には、例えば、フタロシアニン類(CuPcなどを含む)またはインダンスレン系化合物などの低分子材料、MTDATA(4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、ポリアニリン、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート)等の高分子材料等が用いられる。なお、正孔注入層82の材料としては、上記に限られるものでない。また、正孔注入層82の厚さは、例えば、30nmとされる。なお、正孔注入層82の厚さは、これに限られるものではない。なお、正孔注入層82と陽極80との間には、正孔注入効率を高めるために正孔輸送層などを配置しても良い。
【0064】
発光層84には、陰極86と陽極80との間に電圧が印加されることにより、陰極86側から電子が注入される。また、発光層84には、正孔注入層82に注入された正孔が移動し、この正孔と電子とが発光層84で結合することにより、発光層84が発光する。
【0065】
発光層84としては、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、又はオキサジアゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又はポリアセチレン誘導体等が挙げられる。なお、発光層84の材料としては、上記に限られるものでない。また、発光層84の厚さは、例えば、50nmとされる。なお、発光層84の厚さは、これに限られるものではない。
【0066】
陰極86は、光を透過する透過性を有している必要性はない。主露光光源用有機EL素子70では、発光層84で発生した光を基板60側から取り出すためである。本実施形態では、陰極86は、一層で構成されている。なお、陰極86は複数層で構成されていてもよい。
【0067】
陰極86は、例えば、Caで構成されている。なお、陰極86の材料は、上記に限られるものではない。陰極86の材料としては、例えば、SnO2、In2O3、ITO、IZO:Alなどの導電性金属酸化物を用いてもよい。陰極86の厚さは、例えば、30nmとされる。なお、陰極86の厚さは、これに限られるものではない。また、陰極86と発光層84との間には、電子注入効率を高めるための電子注入層や電子輸送層などを配置しても良い。
【0068】
反射層88は、発光層84からの光を発光層84側に反射する。反射層88には、例えば、Al、Ag、Mo、W、Ni、Crなどが用いられている。なお、反射層88の材料としては、上記に限られるものではない。また、反射層88の厚さは、例えば、150nmとされる。なお、反射層88の厚さは、これに限られるものではない。
【0069】
なお、主露光光源用有機EL素子70の発光領域の幅W1(主走査方向X及び副走査方向Y)は、例えば、露光ヘッド34の解像度によるが600dpi時で20μm程度、1200dpi時で10μm程度である。また、副露光光源用有機EL素子72の発光領域の幅W2(副走査方向Y)は、例えば、20μm 程度である。
【0070】
次に、本実施形態の露光ヘッド34の作用について説明する。
【0071】
露光ヘッド34では、主露光光源用有機EL素子70の発光により感光体ドラム30が露光されて静電潜像が形成される際に、主露光光源用有機EL素子70から発光される光量がセンサ68で検出される。すなわち、露光ヘッド34による露光時に主露光光源用有機EL素子70から発光される光量がモニターされている。
【0072】
図6に示されるように、主露光光源用有機EL素子70の劣化により露光エネルギー(光量)が所定値L1よりも低下したときは、主露光光源用有機EL素子70の露光エネルギーを補足するように副露光光源用有機EL素子72を発光させる。これによって、主露光光源用有機EL素子70から発光される光と副露光光源用有機EL素子72から発光される光を合わせることで、所定の露光エネルギーL1に補正される。このため、主露光光源用有機EL素子70及び副露光光源用有機EL素子72による感光体ドラム30の露光によって所定の現像電位V1が得られる。
【0073】
このような露光ヘッド34では、1つの副露光光源用有機EL素子72で複数の主露光光源用有機EL素子70の光量が補正される。
【0074】
また、本実施形態の変形例に係る露光ヘッド34として、副露光光源用有機EL素子72の光量を、感光体ドラム30の電位が現像装置36で現像されない電位の範囲内となる光量で調整し、副露光光源用有機EL素子72を初期から発光させるようにしてもよい。例えば、主露光光源用有機EL素子70の劣化による光量の低下を予め想定しておき、その光量の低下を補うように副露光光源用有機EL素子72をほぼ一定の光量で発光させるようにしてもよい。
【0075】
具体的には、図7に示されるように、副露光光源用有機EL素子72を初期からほぼ一定の現像しない光量で発光させ、複数の主露光光源用有機EL素子70の光量を変化させることで、感光体ドラム30が所定の現像電位V1となるように制御してもよい。このような制御により、副露光光源用有機EL素子72の光量制御が不要となり、光量補正のためのドライバIC66へのフィードバックが簡単になる。
【0076】
なお、本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【0077】
次に、図8を用いて、第2実施形態に係る露光ヘッドについて説明する。
【0078】
なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0079】
図8に示されるように、露光ヘッド34を構成する有機EL素子アレイ100は、主走査方向Xに沿って配置された複数の主露光光源用有機EL素子70の副走査方向Yの片側に、主走査方向Xに複数に分割された第2の発光部の一例としての複数の副露光光源用有機EL素子112を備えている。すなわち、副露光光源用有機EL素子102は、第1実施形態の副露光光源用有機EL素子72(図4参照)に比べて主走査方向Xの長さが短く形成された矩形状の素子である。複数列の副露光光源用有機EL素子102は、主走査方向Xに沿って配置された複数の主露光光源用有機EL素子70の列とそれぞれほぼ平行に配置されており、第1実施形態よりも少ない数の主露光光源用有機EL素子70を1つの副露光光源用有機EL素子102で補正するようになっている。
【0080】
このような有機EL素子アレイ100では、複数列の副露光光源用有機EL素子102のうち、主露光光源用有機EL素子70の補正に必要な副露光光源用有機EL素子102のみを発光させるような制御が行われる。
【0081】
次に、図9を用いて、第3実施形態に係る露光ヘッドについて説明する。
【0082】
なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0083】
図9に示されるように、露光ヘッド34を構成する有機EL素子アレイ110は、主走査方向Xに沿って配置された複数の主露光光源用有機EL素子70の副走査方向Yの両側に、主走査方向Xに複数に分割された第2の発光部の一例としての複数の副露光光源用有機EL素子112を備えている。すなわち、副露光光源用有機EL素子112は、第1実施形態の副露光光源用有機EL素子72(図4参照)に比べて主走査方向Xの長さが短く形成された長尺状の矩形状の素子である。複数列の副露光光源用有機EL素子112は、主走査方向Xに沿って配置された複数の主露光光源用有機EL素子70の列とそれぞれほぼ平行に配置されている。
【0084】
このような有機EL素子アレイ110では、第1実施形態よりも少ない数の主露光光源用有機EL素子70を副走査方向Yの両側の副露光光源用有機EL素子112で補正するような制御が行われる。
【0085】
なお、第1〜第3実施形態の主露光光源用有機EL素子と副露光光源用有機EL素子の形状及び配列に限定するものではなく、他の形状及び配列に変更が可能である。
【0086】
また、第1〜第3実施形態の露光ヘッドでは、第2の発光部として有機EL素子を用いたが、これに限定するものではなく、LEDなど他の第2の発光部を用いてもよい。
【実施例】
【0087】
次に、露光ヘッドの実施例について説明する。
【0088】
<実施例1、2>
実施例1、2では、図4及び図5に示されるように、基板60としてのガラス基板に、ITO(Indium-Tin-Oxide)を20μm幅、20μmピッチでパターニングをした主露光光源用の陽極80Aと、その主露光光源用の陽極80Aの副走査方向Yへ20μm幅でライン状に1列パターニングした副露光光源用の陽極80Bと、を形成する。次に、正孔注入層82A、82Bとして、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート)をスピンコート法により10nm均一に塗布する。さらに、発光層84A、84Bとして、キシレンに「化1」に示す構造式の発光材料を1wt%溶解し、その塗布液をスピンコート法により塗布して80nmの膜を作製した。最後に主露光光源用の陽極80Aと直交するように開口部が20μm幅のマスクを、副露光光源用の陽極80Bを覆うように開口部が40μm幅のマスクをそれぞれ用い、陰極86A、86BとしてのCa、反射層88A、88BとしてのAlを順次蒸着した。これによって、基板60上に主走査方向Xに沿って配置された複数の主露光光源用有機EL素子70と、複数の主露光光源用有機EL素子70と並列に配置されたライン状の副露光光源用有機EL素子72と、を形成した。
【0089】
【化1】

【0090】
<実施例3、4>
実施例3、4では、図8及び図5に示されるように、基板60としてのガラス基板に、ITO(Indium-Tin-Oxide)を20μm幅、20μmピッチでパターニングをした主露光光源用の陽極80Aと、その主露光光源用の陽極80Aの副走査方向Yへ20μm幅でライン状に複数列パターニングした副露光光源用の陽極80Bと、を形成する。次に、正孔注入層82A、82Bとして、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート)をスピンコート法により10nm均一に塗布する。さらに、発光層84A、84Bとして、キシレンに「化1」に示す構造式の発光材料を1wt%溶解し、その塗布液をスピンコート法により塗布して80nmの膜を作製した。最後に主露光光源用の陽極80Aと直交するように開口部が20μm幅のマスクを、副露光光源用の陽極80Bをそれぞれ個別に覆うように開口部が40μm幅のマスクを用い、陰極86A、86BとしてのCa、反射層88A、88BとしてのAlを順次蒸着した。これによって、基板60上に主走査方向Xに沿って配置された複数の主露光光源用有機EL素子70と、複数の主露光光源用有機EL素子70と並列に配置された複数列の副露光光源用有機EL素子102と、を形成した。
【0091】
<比較例1>
基板60としてのガラス基板に、ITO(Indium Tin Oxide)を20μm幅、20μmピッチでパターニングをした主露光光源用の陽極80Aを形成する(図5の主露光光源用有機EL素子70を参照)。次に、正孔注入層82Aとして、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート)をスピンコート法により10nm均一に塗布する。さらに、発光層84Aとして、キシレンに「化1」に示す構造式の発光材料を1wt%溶解し、その塗布液をスピンコート法により塗布して80nmの膜を作製した。最後に開口部が20μm幅のマスクを用い、陰極86AとしてのCa、反射層88AとしてのAlを順次蒸着した。これによって、基板60上に主走査方向Xに沿って配置された複数の主露光光源用有機EL素子70を形成した。この比較例1では、副露光光源用有機EL素子は設けられていない。
【0092】
(露光ヘッドの評価)
次に、実施例1〜4、比較例1で得られた露光ヘッドの評価について説明する。
【0093】
この評価では、実施例1〜4、比較例1で得られた露光ヘッドの露光光源に対し、一定光量(6000cd/m2)を保持した場合の露光光源の寿命を評価した。露光方法は、実施例1、3では、主露光光源用有機EL素子70の光量をセンサ68で検出してその光量の低下分を補足するように副露光光源用有機EL素子72、102を発光させる方法で行った。実施例2、4では、現像装置で現像されない電位の範囲内のほぼ一定の光量で副露光光源用有機EL素子72、102を初期から発光させておき、主露光光源用有機EL素子70の光量を調整する方法で行った。露光光源の寿命の評価は、露光光源の発光を持続させて露光光源の輝度を測定し、一定輝度を保持した露光時間(h)でそれぞれ5回評価し、平均値を算出した。その結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1に示されるように、実施例1〜4は、比較例1に比べて、露光ヘッドとしての寿命(h)が長いことがわかった。また、実施例2、4は、初期から主露光光源用有機EL素子の発光量を抑えることで、実施例1、3よりも露光ヘッドとしての寿命(h)がさらに長くなることがわかった。
【符号の説明】
【0096】
10 画像形成装置
14 画像形成部
30 感光体ドラム(潜像保持体)
32 帯電装置
34 露光ヘッド(露光装置)
36 現像装置
60 基板
62 有機EL素子アレイ
68 センサ(検出手段)
70 主露光光源用有機EL素子(第1の発光部)
72 副露光光源用有機EL素子(第2の発光部)
80A 陽極
80B 陽極
82A 正孔注入層
82B 正孔注入層
84A 発光層
84B 発光層
86A 陰極
86B 陰極
100 有機EL素子アレイ
102 副露光光源用有機EL素子(第2の発光部)
110 有機EL素子アレイ
112 副露光光源用有機EL素子(第2の発光部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を保持する潜像保持体に向かって露光し、前記潜像保持体に形成された潜像が現像装置で現像される際に用いられる露光装置であって、
前記潜像保持体の主走査方向に沿って配置された有機電界発光素子で構成され、前記潜像保持体に露光する第1の発光部と、
前記主走査方向に沿って設けられ、前記第1の発光部とで前記潜像保持体に露光する露光量を補正する第2の発光部と、
を有する露光装置。
【請求項2】
前記第2の発光部は、有機電界発光素子で構成されている請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1の発光部は、前記主走査方向に沿って複数配置されており、
前記第2の発光部は、少なくとも1つ設けられ、各第2の発光部が複数の前記第1の発光部とで前記潜像保持体に露光する露光量を補正する請求項1又は請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記第2の発光部は、複数の前記第1の発光部と並列に前記主走査方向に沿って配置された長尺状の1又は2以上の素子である請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記第1の発光部の光量を検出する検出手段を備え、
前記検出手段で検出された光量が低下した場合に不足分を補うように前記第2の発光部を発光させる請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第2の発光部は、前記潜像保持体の電位が前記現像装置で現像されない電位の範囲内の光量で調整されており、前記第1の発光部の発光の際に前記第2の発光部が発光される請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記第2の発光部の光量が一定で、前記潜像保持体を露光する光量が前記第1の発光部で調整される請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
潜像を保持する潜像保持体と、
前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の露光装置と、
前記潜像保持体に形成された潜像を現像剤により現像する現像装置と、
を有する画像形成装置。
【請求項9】
潜像を保持する潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電装置と、前記潜像保持体に形成された潜像を現像剤により現像する現像装置と、から選択される1つと、
前記潜像保持体に光を照射して潜像を形成する請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の露光装置と、
を有し、画像形成装置に対し着脱可能である画像形成ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−194672(P2011−194672A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62989(P2010−62989)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】