説明

静電容量型圧力センサ

【課題】所定のセンサ感度を有する静電容量型圧力センサをばらつきなく得ること。
【解決手段】ガラス基板11は、互いに対向する一対の主面11a,11bを有する。ガラス基板11の主面11b上には、固定電極である電極12が形成されている。電極12の外側の周囲には、ギャップ保持部材である柱状体13が設けられている。ガラス基板11の主面11b上には、可動電極である感圧ダイヤフラム14aを有するシリコン基板14が接合されている。シリコン基板14のガラス基板接合面側の凹部は、少なくとも電極14を収容できる大きさを有しており、シリコン基板14をガラス基板11に接合することにより、空間部(ギャップ)14cを構成する。すなわち、シリコン基板14の凹部の側面14dと感圧ダイヤフラム14aとにより空間部14cを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンダイヤフラムを感圧部とする静電容量型圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
この方式の圧力センサとしては、圧電素子を用いたピエゾ型圧力センサと静電容量型圧力センサがある。このなかで、消費電力が少なく、しかも温度に関して安定である静電容量型圧力センサが最近注目されている。
【0003】
図9は、従来の静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。図中31はシリコン基板を示す。シリコン基板31の一方の主面上には、ガラス領域32が形成されており、そのガラス領域32が部分的にシリコン基板31の厚さ方向に延在しており、シリコン基板31を複数の領域に分離している。シリコン基板31の一部31aが、ガラス領域32から露出している。
【0004】
シリコン基板の一部31aが露出している側の一方の主面上には、可動電極である感圧ダイヤフラム34aを有するシリコン基板34が接合されている。感圧ダイヤフラム34aは、両面に凹部が形成されており、シリコン基板31のガラス領域接合面側の凹部は空間部(ギャップ)34bを構成する。この空間部34b内のガラス領域32には、固定電極である電極33が形成されている。したがって、感圧ダイヤフラム34aと電極33との間に所定の静電容量が発生する。
【0005】
この静電容量型圧力センサに圧力がかかると、感圧ダイヤフラム34aが圧力に応じて変形する。このときの静電容量の変化を検出することにより、圧力を検出することができる。
【0006】
【特許文献1】特許第2574443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の静電容量型圧力センサにおいては、感圧ダイヤフラム34aをシリコンのエッチングにより形成する。したがって、感圧ダイヤフラム34aの形成の際のエッチングのばらつきにより、シリコン基板34に形成される凹部の深さがばらつく。すなわち、シリコン基板34の作製の際に、目的とする凹部の深さを得ることができない。このため、電極33と感圧ダイヤフラム34との間の距離が所望のものにならない。その結果、所定の静電容量型圧力センサの感度、すなわち圧力に対する静電容量の変化を得ることができない恐れがある。このため、静電容量型圧力センサの個体間で感度がばらついてしまうという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、所定のセンサ感度を有する静電容量型圧力センサをばらつきなく得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の静電容量型圧力センサは、ガラス基板上の電極と感圧ダイヤフラムとの間の静電容量の変化により圧力変化を検出する静電容量型圧力センサであって、相互に対向する一対の主面を有するガラス基板と、前記ガラス基板の一方の主面上に設けられた電極と、前記ガラス基板との間に空間を有するように前記電極と所定の間隔をおいて位置し、被測定圧力により変形する感圧ダイヤフラムを有する、前記一方の主面上に設けられたシリコン基板と、前記空間内で前記一方の主面側から設けられ、前記電極の高さよりも高い位置で前記感圧ダイヤフラムの変形の支点となる間隔保持部材と、を具備することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、電極と感圧ダイヤフラムとの間の距離にばらつきがあっても、間隔保持部材で支持された領域内においては所定の静電容量を安定して得ることができる。これにより、感圧ダイヤフラムと電極との間で正確に静電容量を検知することができ、静電容量の変化に対応する圧力を正確に検出することができる。その結果、所定のセンサ感度を有する静電容量型圧力センサをばらつきなく得ることができる。
【0011】
本発明の静電容量型圧力センサにおいては、前記間隔保持部材は、前記空間内のガラス基板上に前記感圧ダイヤフラムに接触する高さで設けられたことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、感圧ダイヤフラムと固定電極との間の距離を間隔保持部材の厚みで制御することになる。間隔保持部材が感圧ダイヤフラムに接触するように設けられているので、ガラス基板、間隔保持部材及び感圧ダイヤフラムで空間を構成することができる。間隔保持部材は成膜工程により精度良く形成されるので、この空間は精度良く形成される。固定電極と感圧ダイヤフラムとの間の距離は、エッチングのばらつきにより個体差があるが、間隔保持部材の膜厚は精度良く設けることができるので、間隔保持部材で支持された領域内では空間部の間隔(ギャップ)が個体間でも変わらない。したがって、電極と感圧ダイヤフラムとの間の距離にばらつきがあっても、間隔保持部材で支持された領域内においては所定の静電容量を安定して得ることができる。
【0013】
また、本発明の静電容量型圧力センサにおいては、間隔保持部材は前記電極の周囲に導電性材料で構成されたことが好ましい。
【0014】
この構成では、ガラス基板とシリコン基板との間の接合の際にアライメントずれがあっても、空間は正確に形成されているので、感圧ダイヤフラムと間隔保持部材と固定電極との間で静電容量が形成されるため、感圧ダイヤフラムと電極との間で正確に静電容量を検知することができ、静電容量の変化に対応する圧力を正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガラス基板上の電極と感圧ダイヤフラムとの間の静電容量の変化を圧力変化として検出する静電容量型圧力センサにおいて、被測定圧力により変形する可動電極である感圧ダイヤフラムと、ガラス基板上に形成された固定電極との間の空間内に両者の間隔を保持する間隔保持部材を設けるので、所定のセンサ感度を有する静電容量型圧力センサをばらつきなく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者らは、感圧ダイヤフラムの作製の際に生じるエッチングのばらつきや、シリコン基板とガラス基板との接合の際に生じる位置合わせずれにより起こる静電容量に関する影響に着目し、精度良く形成できる成膜工程を用いて間隔保持部材を形成して感圧ダイヤフラムと固定電極との間の間隔(ギャップ)を保持することで静電容量のばらつきを抑制することを見出し本発明をするに至った。
【0017】
すなわち、本発明の骨子は、ガラス基板上の電極と感圧ダイヤフラムとの間の静電容量の変化により圧力変化を検出する静電容量型圧力センサにおいて、被測定圧力により変形する可動電極である感圧ダイヤフラムと、ガラス基板上に形成された固定電極との間の空間内に両者の間隔を保持する間隔保持部材を設けることにより、所定のセンサ感度を有する静電容量型圧力センサをばらつきなく得ることである。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、間隔保持部材が感圧ダイヤフラムに接触しない高さで設けられた場合について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。図2は、図1に示す静電容量型圧力センサの平面図である。図1においては、説明を簡単にするために、固定電極や可動電極に電気的に接続する配線を省略する。
【0019】
図中11はガラス基板を示す。ガラス基板11は、互いに対向する一対の主面11a,11bを有する。ガラス基板11の主面11b上には、固定電極である電極12が形成されている。電極12の外側の周囲には、間隔保持部材である柱状体13が設けられている。
【0020】
ガラス基板11の主面11b上には、被測定圧力により変形する可動電極である感圧ダイヤフラム14aを有するシリコン基板14が接合されている。感圧ダイヤフラム14aは、シリコン基板14の両面からエッチングなどによりそれぞれ凹部を形成することにより設けられている。シリコン基板14のガラス基板接合面側の凹部は、少なくとも電極14を収容できる大きさを有しており、シリコン基板14をガラス基板11に接合することにより、空間部(ギャップ)14cを構成する。すなわち、感圧ダイヤフラム14aがガラス基板11との間に空間を有するように、電極12と所定の間隔をおいて位置し、シリコン基板14の凹部の側面14dと感圧ダイヤフラム14aとにより空間部14cを構成する。これにより、感圧ダイヤフラム14aと電極12との間に所定の間隔が設けられ、感圧ダイヤフラム14aと電極12との間に静電容量が発生する。
【0021】
ガラス基板11の主面11bとシリコン基板との界面は、高い密着性を有することが好ましい。ガラス基板11の主面11b上にシリコン基板14を搭載して、陽極接合処理を施すことにより、密着性を高くすることができる。これにより、感圧ダイヤフラム14aとガラス基板11の主面11bとの間で構成する空間部14c内の気密性を高く保つことができる。なお、陽極接合処理とは、所定の温度(例えば400℃以下)で所定の電圧(例えば300V〜1kV)を印加することにより、シリコンとガラスとの間に大きな静電引力が発生して、界面で化学結合を起こさせる処理をいう。このような陽極接合を効率良く行うために、ガラス基板11のガラス材料としては、少なくともナトリウムを含むガラス材料(例えばパイレックス(登録商標)ガラス)であることが好ましい。
【0022】
柱状体13は、図2から分かるように、ガラス基板11の主面11b、シリコン基板14の凹部側面14d及び感圧ダイヤフラム14aで構成される空間部14c内に設けられる。この柱状体13は、円盤形状を有する電極12の外側に、電極12から所定の間隔をおいてリング状に設けられている。本実施の形態においては、柱状体13はリング状に連続して設けられているが、本発明においては、柱状体13は、電極12から所定の間隔をおいて、電極12の周りに複数個設けても良い。この場合、柱状体13の作用を発揮させることを考慮すると、できるだけ多く設けることが好ましい。
【0023】
柱状体13は、空間部14c内のガラス基板11上に設けられている。このとき、柱状体13は、感圧ダイヤフラム14aに接触しない高さで設けられる。すなわち、柱状体13の上面と感圧ダイヤフラム14aとの間は距離t2だけ離れている。この距離t2は、シリコン基板14をエッチングする際のばらつきによりエッチング深さt1が変化することから、種々変化する値である。また、柱状体13を構成する材料としては、プラスチック材料、酸化物材料などの絶縁性材料でも良く、アルミニウムのような金属材料などの導電性材料でも良い。
【0024】
このような構成を有する静電容量型圧力センサにおいては、感圧ダイヤフラム14aとガラス基板11上の電極12との間に所定の静電容量を有する。この静電容量型圧力センサに圧力がかかると、感圧ダイヤフラム14aが圧力に応じて変形し、これにより、感圧ダイヤフラム14aが変位する。このとき、感圧ダイヤフラム14aとガラス基板11上の電極12との間の静電容量が変化する。したがって、この静電容量をパラメータとして、その変化を圧力変化とすることにより、圧力を検出することができる。
【0025】
この構成においては、感圧ダイヤフラム14aが圧力を受けて距離t2分だけ変位すると、感圧ダイヤフラム14aが柱状体13に接触する。感圧ダイヤフラム14aがそれ以上の圧力を受けると、柱状体13の内面13aと上面とでなす角部を支点として感圧ダイヤフラム14aが変形するようになる。柱状体13と感圧ダイヤフラム14aとの間の距離t2は、エッチングのばらつきにより個体差があるが、柱状体13を精度良く設けることができるので、柱状体13間の距離Dの領域では空間部14cの間隔(ギャップ)が個体間でも変わらない。したがって、柱状体13と感圧ダイヤフラム14aとの間の距離t2にばらつきがあっても、柱状体13間の距離Dの領域においては所定の静電容量を安定して得ることができる。このため、感圧ダイヤフラム15aと電極14との間で正確に静電容量を検知することができ、静電容量の変化に対応する圧力を正確に検出することができる。このように、本実施の形態においては、所定のセンサ感度を有する静電容量型圧力センサをばらつきなく得ることができる。
【0026】
本実施の形態においては、柱状体13をガラス基板11の主面11b上に設けた場合について説明しているが、本発明においては、柱状体13が感圧ダイヤフラム14aに接触しない状態で、柱状体13を電極12上に設けても良い。この場合においても、柱状体13間の距離Dの領域では空間部14cの間隔(ギャップ)が個体間で変わらずに所定の静電容量を得ることができるので、所定のセンサ感度を有する静電容量型圧力センサをばらつきなく得ることができる。
【0027】
次に、本実施の形態の静電容量型圧力センサの製造方法について説明する。図3(a),(b)は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサのガラス基板側の製造を説明するための断面図である。また、図4(a),(b)は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサのシリコン基板側の製造を説明するための断面図である。
【0028】
まず、図3(a)に示すように、ガラス基板11の主面11b上に、固定電極である電極12を形成する。この場合、まず、ガラス基板11の主面11b上に電極材料であるクロムを被着し、その上にレジスト膜を形成し、電極形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜を露光・現像し、残存したレジスト膜をマスクとしてエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。このとき、エッチング液としては、例えば硝酸第二セリウム+過塩素酸+水を用いる。
【0029】
次いで、図3(b)に示すように、ガラス基板11の主面11b上の電極12の外側に柱状体13を形成する。このとき、柱状体13の高さは、後述するシリコン基板の空間部側の凹部14dの深さよりも小さくなるように設定する。この場合、まず、ガラス基板11の主面11b上に柱状体13の材料であるアルミニウムを被着し、その上にレジスト膜を形成し、柱状体形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜を露光・現像し、残存したレジスト膜をマスクとしてエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。このとき、エッチング液としては、例えばリン酸+酢酸+水を用いる。
【0030】
次いで、図4(a)に示すように、シリコン基板14の一方の主面に空間部用の凹部14dを形成する。シリコン基板14の凹部14dは、ガラス基板11上の電極12を囲繞できる程度に電極12よりも大きく形成する。この場合、例えばTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)の20%液を用いて、60℃で5〜8分程度エッチングすることによりシリコン基板14に凹部14dを形成する。このときのエッチング条件は、凹部14dの深さが柱状体13よりも大きくなるように設定する。
【0031】
次いで、図4(b)に示すように、シリコン基板14の他方の主面にテーパ面14eを有する凹部14bを形成する。この場合、例えばTMAHの20%液を用いて、90℃で300分程度エッチングすることによりシリコン基板14に凹部14bを形成する。これにより、シリコン基板14に感圧ダイヤフラム14aが形成される。
【0032】
なお、本実施の形態では、エッチングとしてウェットエッチングを用いた場合について説明しているが、エッチングとしてドライエッチングを用いても良い。
【0033】
次いで、被測定圧力により変形する感圧ダイヤフラム14aを有するシリコン基板14を、感圧ダイヤフラム14aが電極12と所定の間隔をおいて位置するように、ガラス基板11の主面11b上に接合して図1に示す静電容量型圧力センサを得る。このとき、両面にそれぞれ凹部14b,14dを有するシリコン基板14を、テーパ面14eを有する凹部14bが上になるように、すなわちテーパ面14eを有しない凹部14dがガラス基板11と対面するようにしてガラス基板11の主面11b上に載置し、陽極接合処理を施す。このとき、シリコン基板14及びガラス基板11に対して、約350℃以下の加熱下で約500V程度の電圧を印加することにより行う。これによりシリコン基板14とガラス基板11との間の界面での密着性がより高くなり、空間部14cの気密性を向上させることができる。
【0034】
このようにして得られた静電容量型圧力センサは、柱状体13間の距離Dの領域では空間部14cの間隔(ギャップ)が個体間で変わらずに所定の静電容量を得ることができる。したがって、本実施の形態によれば、所定のセンサ感度を有する静電容量型圧力センサをばらつきなく得ることができる。
【0035】
図5は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサに配線を設けた構成を示す断面図である。この構成においては、空間部14c内のガラス基板11上に形成された電極12がシリコン基板14の外側に引き出されて、固定電極用の端子12aを形成している。また、シリコン基板14の上面には、可動電極用の端子12bが形成されている。
【0036】
このような端子12aを形成する場合、ガラス基板11の配線引き出し領域にエッチングなどにより凹部を形成し、次いで固定電極用の電極材料を、凹部を含めてガラス基板11上に被着する。電極材料を上述したようにしてパターニングした後に、配線引き出し領域上にガラス材料を被着する。また、端子12bを形成する場合、図4(b)に示すようにシリコン基板14を加工した後に、シリコン基板14の他方の主面14f上に電極材料を被着し、その上にレジスト膜を形成し、電極形成領域にレジスト膜が残るように、そのレジスト膜を露光・現像し、残存したレジスト膜をマスクとしてエッチングし、その後残存したレジスト膜を除去する。
【0037】
このように固定電極用端子12a及び可動電極用端子12bを形成することにより、外部機器と電気的に接続することができる。これらの固定電極用端子12a及び可動電極用端子12bを設ける場所は、図5に示す位置に限定されず、ガラス基板11の主面11a側に設けても良く、ガラス基板11とシリコン基板14の界面の位置に設けても良い。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態では、間隔保持部材が感圧ダイヤフラムに接触するように設けられた場合について説明する。図6は、本発明の実施の形態2に係る静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。なお、図6において、図1と同じ部分については図1と同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図6においても、説明を簡単にするために、固定電極や可動電極に電気的に接続する配線を省略する。
【0039】
ガラス基板11の主面11b上には、固定電極である電極12が形成されている。電極12の外側の周囲には、ギャップ保持部材である柱状体15が設けられている。 柱状体15は、実施の形態1と同様に、ガラス基板11の主面11b、シリコン基板14の凹部側面14d及び感圧ダイヤフラム14aで構成される空間部14c内に設けられる。この柱状体15は、図2に示すように、円盤形状を有する電極12の外側に、電極12から所定の間隔をおいてリング状に設けられている。本実施の形態においては、柱状体15はリング状に連続して設けられているが、本発明においては、柱状体15は、電極12から所定の間隔をおいて、電極12の周りに複数個設けても良い。この場合、柱状体15の作用を発揮させることを考慮すると、できるだけ多く設けることが好ましい。
【0040】
柱状体15は、空間部14c内のガラス基板11上に設けられている。このとき、柱状体15は、感圧ダイヤフラム14aに接触するように設けられる。また、柱状体15を構成する材料としては、アルミニウムのような金属材料などの導電性材料を用いる。
【0041】
このような構成を有する静電容量型圧力センサにおいては、感圧ダイヤフラム14aとガラス基板11上の電極12との間に所定の静電容量を有する。この静電容量型圧力センサに圧力がかかると、感圧ダイヤフラム14aが圧力に応じて変形する。これにより、感圧ダイヤフラム14aが変位する。このとき、感圧ダイヤフラム14aとガラス基板11上の電極12との間の静電容量が変化する。したがって、この静電容量をパラメータとして、その変化を圧力変化とすることにより、圧力を検出することができる。
【0042】
この構成においては、感圧ダイヤフラム14aが圧力を受けると、柱状体15の内面15aと上面とでなす角部を支点として感圧ダイヤフラム14aが変形するようになる。このように、柱状体15は精度良く設けることができるので、柱状体15間の距離Dの領域では空間部14cの間隔(ギャップ)が個体間でも変わらない。したがって、柱状体15間の距離Dの領域においては所定の静電容量を安定して得ることができる。したがって、感圧ダイヤフラム15aと電極14との間で正確に静電容量を検知することができ、静電容量の変化に対応する圧力を正確に検出することができる。このように、本実施の形態においては、所定のセンサ感度を有する静電容量型圧力センサをばらつきなく得ることができる。
【0043】
また、この構成によれば、柱状体15が感圧ダイヤフラム14aに接触するように設けられ、しかも導電性材料で構成されているので、ガラス基板11、柱状体15及び感圧ダイヤフラム14aで空間部14cを構成することができる。柱状体15は成膜工程により精度良く形成されるので、この空間部14cは精度良く形成される。このため、ガラス基板11とシリコン基板14との間の接合の際にアライメントずれがあっても、空間部14cは正確に形成されているので、感圧ダイヤフラム15aと電極14との間で正確に静電容量を検知することができ、静電容量の変化に対応する圧力を正確に検出することができる。
【0044】
上記構成を有する静電容量型圧力センサを製造する場合、シリコン基板14の空間部側の凹部14dの深さとほぼ同じ高さで柱状体15を設けて、柱状体15が感圧ダイヤフラム14aに接触させること以外は実施の形態1と同様に行う。
【0045】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
図7に示す装置を用いて、図1、図6及び図9に示す構成の静電容量型圧力センサにおける静電容量のばらつきについて調べた。図7は、静電容量型圧力センサの静電容量を測定するための装置の概略構成を示す図である。
【0046】
図7に示す装置は、静電容量型圧力センサ22を収容するチャンバ21と、チャンバ21内に供給する加圧ガスであるN2ガスの供給源であるN2ガス源23と、静電容量型圧力センサ22の可動電極及び固定電極に電気的接続して静電容量を測定するLCRメータ25とから主に構成されている。チャンバ21とN2ガス源23との間はガス供給管24で連通しており、静電容量型圧力センサ22とLCRメータ25との間は配線26,27で接続されている。
【0047】
この装置内に図1に示す静電容量型圧力センサ(実施例1)、図6に示す静電容量型圧力センサ(実施例2)及び図9に示す静電容量型圧力センサ(従来例)を個別に載置し、N2ガス源23からの加圧ガスの供給量を変えて圧力を徐々に高くしながら静電容量を測定した。このとき、それぞれの静電容量型圧力センサについてサンプル数3でそれぞれ測定した。その結果を図8に示す。
【0048】
図8(a)は図9に示す静電容量型圧力センサ(従来例)の静電容量と圧力との関係を示す特性図である。この静電容量型圧力センサ(従来例)では、それぞれのサンプルについて同様に圧力に応じて静電容量が変化しているが、静電容量の絶対値が異なり(図中X)、静電容量がばらついていることが分かる。これは、それぞれのサンプルについてシリコン基板14の空間部14c側の凹部14dのエッチングにばらつきがあるからであると考えられる。
【0049】
図8(b)は図1に示す静電容量型圧力センサ(実施例1)の静電容量と圧力との関係を示す特性図である。この静電容量型圧力センサ(実施例1)では、低圧力でそれぞれのサンプルについて静電容量がばらついているが、ある圧力(図中Y)からすべてのサンプルの静電容量の絶対値が揃って、静電容量がばらついていないことが分かる。これは、図8(b)のYの地点で、柱状体13の内面13aと上面とでなす角部を支点として感圧ダイヤフラム14aが変形するようになったからであると考えられる。これにより、シリコン基板14の空間部14c側の凹部14dのエッチングのばらつきがあっても、柱状体13間の距離Dの領域における空間部14cの間隔が変わらず、静電容量はばらつかない。
【0050】
図8(c)は図6に示す静電容量型圧力センサ(実施例2)の静電容量と圧力との関係を示す特性図である。この静電容量型圧力センサ(実施例2)では、低圧力からすべてのサンプルの静電容量の絶対値が揃って、静電容量がばらついていないことが分かる。これは、低圧力から柱状体15の内面15aと上面とでなす角部を支点として感圧ダイヤフラム14aが変形するようになったからであると考えられる。これにより、シリコン基板14の空間部14c側の凹部14dのエッチングのばらつきがあっても、柱状体15間の距離Dの領域における空間部14cの間隔が変わらず、静電容量はばらつかない。
【0051】
本発明は上記実施の形態1,2に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態1,2で説明した数値や材質については特に制限はなく、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す静電容量型圧力センサの平面図である。
【図3】(a),(b)は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサのガラス基板側の製造を説明するための断面図である。
【図4】(a),(b)は、本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサのシリコン基板側の製造を説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る静電容量型圧力センサに配線を設けた構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。
【図7】静電容量型圧力センサの静電容量を測定するための装置の概略構成を示す図である。
【図8】(a)〜(c)は、静電容量型圧力センサの静電容量と圧力との関係を示す特性図である。
【図9】従来の静電容量型圧力センサの概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
11 ガラス基板
11a,11b 主面
12 電極
12a,12b 端子
13,15 柱状体
13a,15a 内面
14 シリコン基板
14a 感圧ダイヤフラム
14b,14d 凹部
14c 空間部
14e テーパ面
14f 上面
21 チャンバ
22 静電容量型圧力センサ
23 N2ガス源
24 ガス供給管
25 LCRメータ
26,27 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上の電極と感圧ダイヤフラムとの間の静電容量の変化により圧力変化を検出する静電容量型圧力センサであって、
相互に対向する一対の主面を有するガラス基板と、前記ガラス基板の一方の主面上に設けられた電極と、前記ガラス基板との間に空間を有するように前記電極と所定の間隔をおいて位置し、被測定圧力により変形する感圧ダイヤフラムを有する、前記一方の主面上に設けられたシリコン基板と、前記空間内で前記一方の主面側から設けられ、前記電極の高さよりも高い位置で前記感圧ダイヤフラムの変形の支点となる間隔保持部材と、を具備することを特徴とする静電容量型圧力センサ。
【請求項2】
前記間隔保持部材は、前記空間内の前記感圧ダイヤフラムに接触するように設けられたことを特徴とする請求項1記載の静電容量型圧力センサ。
【請求項3】
前記間隔保持部材が前記電極の周囲に導電性材料で構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の静電容量型圧力センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−29802(P2006−29802A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204636(P2004−204636)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】